(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171951
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】電気浸食シール層を有するマイクロセルを備えている有益剤送達システム
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
A61M37/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023173603
(22)【出願日】2023-10-05
(62)【分割の表示】P 2022526362の分割
【原出願日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】62/941,216
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516101190
【氏名又は名称】イー インク カリフォルニア, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】レイ リウ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】有益剤送達システムを提供する。
【解決手段】有益剤送達システムであって、それによって、有益剤150が、要求に応じて送達され得、および/または、異なる濃度の種々の異なる有益剤150が、同じシステムから送達され得る、有益剤送達システム。有益剤送達システムは、複数のマイクロセル130A、130B、130Cを備えているマイクロセル層を含み、マイクロセルは、担体140および有益剤150で充填される。マイクロセルは、開口部を含み、開口部は、ポリマーと金属材料とを備えているシール層160が架かっている。マイクロセル層およびシール層160を横断した電場の印加は、シール層160からの金属材料170の移動および多孔性シール層175の生成をもたらし、有益剤150が有益剤送達システムから放出されることを可能にする。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、本明細書に開示される他の特許および特許出願の全てに加えて、参照することによってその全体として組み込まれる2019年11月27日に出願された米国仮特許出願第62/941,216号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
有益剤の制御された徐放のための方法論の開発は、これまでの数十年の間に大きな関心を集めている。これは、医薬品、栄養補助剤、農産用栄養剤、および関連する物質、化粧剤、芳香剤、空気処置剤、および種々の分野における多くの他の有益剤を含む、多種多様な有益剤に関して当てはまる。医薬品の経皮送達は、皮膚障壁を横断して移動することが可能である薬物に関して効果的であることが証明されている。例えば、少量のニコチンが、エチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体中にニコチンを懸濁させる経皮パッチを用いて、長期間の期間にわたって送達されることができる。例えば、GlaxoSmithKline(Brentford,UK)製Nicoderm-CQ(登録商標)を参照されたい。他の例は、生活空間および自動車内の空気品質を改良するための芳香剤および消臭剤、より効率的な食糧生産のための土壌中の肥料、および微生物増殖を軽減するための表面上の殺生物剤の徐放を含む。制御された徐放送達システムは、固体、液体、および気体等の異なる形態における種々の有益剤の異なる条件下における異なる場所への送達を伴い得る。
【0003】
要求に応じて有益剤の送達を提供する種々の送達システムが、これまでの数十年の間に開発されている。例えば、Chrono Therapeutics(Hayward,CA)は、現在、ニコチンを送達するためのマイクロポンプ対応スマート経皮パッチを試験している。それにもかかわらず、対応するデバイスは、大型であり、衣服を通して非常に大きい膨らみとして可視である。したがって、要求に応じて有益剤を送達するための小型で、単純で、安価で、汎用性があり、安全な送達システムの必要性が、存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低電力送達システムを提供することによってこの必要性に対処し、それによって、有益剤または有益剤の混合物が、要求に応じて放出され得る。加えて、下で説明されるように、本発明は、異なる時間に同じ送達システムから種々の量の有益剤を送達すること、および同じ有益剤送達システムから同じ時間または異なる時間に複数の有益剤を送達することを行うためのシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一側面では、本発明は、伝導性層と、複数のマイクロセルを備えているマイクロセル層であって、各マイクロセルは、開口部を含む、マイクロセル層と、各マイクロセルの開口部に架かっているシール層と、電極層とを備えている有益剤送達システムである。担体と有益剤とを備えている媒体が、複数のマイクロセルに含まれる。
【0006】
シール層は、ポリマー材料と、金属材料とを備えている。伝導性層、マイクロセル層、シール層、および電極層は、互いの上に垂直にスタックされる。伝導性層、マイクロセル層、シール層、および電極層は、この順序において互いの上に垂直にスタックされ得る。複数のマイクロセルおよびシール層は、伝導性層と電極層との間に配置される。有益剤送達システムは、伝導性層および電極層に結合された電圧源をさらに備え得る。電圧が伝導性層および電極層に結合される電圧源から印加されると、結果として生じる電流が、媒体を通して流動し得る。電圧が伝導性層および電極層に結合される電圧源から印加されると、金属材料が、シール層から除去され、多孔性のシール層を生成する。電極層は、多孔性であり得る。
【0007】
一実施形態では、シール層のポリマー材料は、アクリレートと、メタクリレートと、ポリカーボネートと、ポリビニルアルコールと、セルロースと、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)と、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)と、ポリ塩化ビニリデンと、アクリロニトリルと、非結晶性ナイロンと、配向ポリエステルと、テレフタレートと、ポリ塩化ビニルと、ポリエチレンと、ポリプロピレンと、ポリウレタンと、アルギン酸塩と、ポリスチレンとを備え得る。シール層の金属材料は、金属粒子、金属ワイヤ、金属ファイバ、金属薄片、金属ロッド、金属凝集体、または金属ディスクであり得る。金属粒子、金属ワイヤ、金属ファイバ、金属ロッド、および金属凝集体の最小寸法は、約1μm~約100μmであり得る。金属薄片および金属ディスクは、約1nm~約200nmの平均厚と、100nm~約500μmの平均直径とを有し得る。シール層の金属材料は、金属ナノ粒子、金属ナノワイヤ、金属ナノファイバ、またはそれらの組み合わせでもあり得る。金属ナノ粒子、金属ナノワイヤ、および金属ナノファイバの最小寸法は、約20nm~約1μmであり得る。シール層の金属材料は、銀、銅、白金、金、亜鉛、ニッケル、クロム、またはそれらの組み合わせ等の金属要素を備え得る。
【0008】
一実施形態では、マイクロセルは、種々の有益剤を含み得る。有益剤は、医薬品、ワクチン、抗体、ホルモン、タンパク質、核酸、栄養補助剤、栄養剤、化粧剤、芳香剤、消臭剤、農薬、空気処置剤、保存料、抗菌剤、および他の有益剤であり得る。
【0009】
一実施形態では、有益剤は、担体中で溶解または分散させられ得る。担体は、水、有機化合物、シリコーン化合物、またはそれらの組み合わせであり得る。有機化合物は、アルコール、エステル、アミド、エーテル、カルボン酸、炭化水素、または他の有機化合物であり得る。有機化合物は、DMSO、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、オクタン、ノナン、クエン酸トリエチル、炭酸エチレン、または、炭酸ジメチル等の有機溶媒であり得る。
【0010】
複数のマイクロセルに含まれる媒体は、媒体の重量比で0.01重量%超、または0.1重量%超、1重量%超の有益剤を含み得る。媒体は、媒体の重量比で0.001重量%~99.99重量%、0または0.01重量%~99重量%、または0.1重量%~95重量%の有益剤を含む、または、5重量%~60重量%の有益剤を形成し得る。
【0011】
有益剤送達システムの別の実施形態では、マイクロセルは、有益剤または有益剤の混合物を含み得る。本発明は、複数のマイクロセルを含むので、同じ有益剤送達システム内に、有益剤の異なる組み合わせまたは異なる濃度を有する類似の組み合わせを含む異なるマイクロセルを有することが可能である。例えば、システムは、第1の有益剤を含む第1のマイクロセルと、第2の有益剤を含む第2のマイクロセルとを含み得るか、または、システムは、第1の濃度の有益剤を含む第1のマイクロセルと、第2の濃度の同じ有益剤を含む第2のマイクロセルとを含み得る。他の実施形態では、システムは、有益剤を含む第1のマイクロセルと、補助剤を含む第2のマイクロセルとを含み得る。有益剤、添加剤、および濃度の他の組み合わせも、当業者に明白であろう。
【0012】
別の側面では、本発明は、(1)(a)伝導性層と、(b)複数のマイクロセルを備えているマイクロセル層であって、各マイクロセルは、開口部を含み、担体と、有益剤とを含むマイクロセル層と、(c)各マイクロセルの開口部に架かり、ポリマー材料と、金属材料とを備えているシール層と、(d)電極層と、(e)電圧源とを備え、伝導性層、マイクロセル層、シール層、および電極層は、互いの上に垂直にスタックされ、マイクロセル層およびシール層は、伝導性層と電極層との間に配置され、電圧源は、伝導性層および電極層に結合される、有益剤送達システムを提供するステップと、(2)伝導性層と電極層との間に電圧電位差を印加し、極性を有する電場を発生させ、伝導性層に隣接するマイクロセルの表面上への金属材料の移動を引き起こすステップとを含む有益剤送達システムを動作させる方法である。電圧が、印加されると、結果として生じる電流が、媒体を通して流動する。印加された電圧電位の選択によって、有益剤の送達の率が、制御され得る。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
有益剤送達システムであって、前記有益剤送達システムは、
伝導性層と、
複数のマイクロセルを備えているマイクロセル層であって、各マイクロセルは、開口部を含み、担体と有益剤とを備えている媒体が、前記複数のマイクロセルに含まれる、マイクロセル層と、
前記各マイクロセルの前記開口部に架かっているシール層であって、前記シール層は、ポリマー材料と、金属材料とを備えている、シール層と、
電極層と
を備え、
前記伝導性層、前記マイクロセル層、前記シール層、および前記電極層は、互いの上に垂直にスタックされ、前記マイクロセル層および前記シール層は、前記伝導性層と前記電極層との間に配置されている、有益剤送達システム。
(項目2)
前記伝導性層および前記電極層に結合された電圧源をさらに備えている、項目1に記載の有益剤送達システム。
(項目3)
電圧が前記伝導性層と前記電極層との間に電圧源から印加されると、前記金属材料が、前記シール層から除去され、多孔性の前記シール層を生成する、項目1に記載の有益剤送達システム。
(項目4)
前記伝導性層、前記マイクロセル層、前記シール層、および前記電極層は、この順序において互いの上に垂直にスタックされ、前記電極層は、多孔性である、項目1に記載の有益剤送達システム。
(項目5)
前記シール層のポリマー材料は、アクリレート、メタクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル、非結晶性ナイロン、配向ポリエステル、テレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、およびアルギン酸塩から成る群から選択される、項目1に記載の有益剤送達システム。
(項目6)
前記シール層の前記金属材料は、金属粒子、金属ワイヤ、金属ファイバ、金属薄片、金属ロッド、金属凝集体、および金属ディスクから成る群から選択される、項目1に記載の有益剤送達システム。
(項目7)
前記シール層の前記金属材料は、銀、銅、金、白金、亜鉛、クロム、ニッケル、またはそれらの組み合わせを備えている、項目1に記載の有益剤送達システム。
(項目8)
前記シール層は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、ドーパント、および伝導性ポリマーから成る群から選択される伝導性材料をさらに備えている、項目1に記載の有益剤送達システム。
(項目9)
前記担体は、液体、半固体、ゲル、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、項目1に記載の有益剤送達システム。
(項目10)
前記担体は、水、有機化合物、シリコーン化合物、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、項目1に記載の有益剤送達システム。
(項目11)
前記複数のマイクロセルは、医薬品、ワクチン、抗体、ホルモン、タンパク質、核酸、栄養補助剤、栄養剤、化粧剤、芳香剤、消臭剤、農薬、空気処置剤、抗菌剤、および保存料から成る群から選択される有益剤を含む、項目1に記載の有益剤送達システム。
(項目12)
前記シール層は、有益剤をさらに備えている、項目1に記載の有益剤送達システム。
(項目13)
前記シール層および前記電極層は、1つの層に統合されている、項目4に記載の有益剤送達システム。
(項目14)
前記シール層と前記電極層との間に多孔性拡散層または率制御層をさらに備えている、項目4に記載の有益剤送達システム。
(項目15)
前記電極層および前記多孔性拡散層は、1つの層に統合されている、項目14に記載の有益剤送達システム。
(項目16)
前記シール層と前記電極層との間に配置された接着層をさらに備えている、項目4に記載の有益剤送達システム。
(項目17)
前記接着層と前記電極層との間に配置された多孔性拡散層をさらに備えている、項目16に記載の有益剤送達システム。
(項目18)
前記多孔性拡散層および前記接着層は、1つの層に統合され、前記統合された層は、10
-10
Ohm・cm未満の体積抵抗率を有する、項目17に記載の有益剤送達システム。
(項目19)
有益剤送達システムを動作させる方法であって、前記方法は、
有益剤送達システムを提供するステップであって、
前記有益剤送達システムは、(a)伝導性層と、(b)複数のマイクロセルであって、各マイクロセルは、開口部を含み、担体と有益剤とを含む、複数のマイクロセルと、(c)前記各マイクロセルの開口部に架かっているシール層であって、前記シール層は、ポリマー材料と、金属材料とを備えている、シール層と、(d)電極層と、(e)電圧源とを備え、
前記伝導性層、前記マイクロセル層、前記シール層、および前記電極層は、互いの上に垂直にスタックされ、前記マイクロセル層および前記シール層は、前記伝導性層と前記電極層との間に配置され、前記電圧源は、前記伝導性層および前記電極層に結合されている、ステップと、
前記伝導性層と前記電極層との間に電圧電位差を印加し、極性を有する電場を発生させるステップと
を含み、
前記電場は、前記伝導性層に隣接する前記マイクロセルの表面上への前記金属材料の移動を引き起こす、方法。
(項目20)
前記印加された電圧電位の選択によって、前記有益剤の送達の率を制御するステップをさらに含む、項目19に記載の有益剤送達システムを動作させる方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aは、伝導性層と、有益剤を含む複数のマイクロセルと、金属材料を伴うシール層と、電極層とを含む有益剤送達システムのある実施形態を図示する。
【0014】
【
図1B】
図1Bは、連続伝導性層と、有益剤を含む複数のマイクロセルと、多孔性シール層と、電圧源とを含む有益剤送達システムのある実施形態を図示する。
図1Bに描写されるシステムでは、有益剤は、マイクロセルのうちの1つの多孔性シール層を通過し、所望の場所に送達され得る。
【0015】
【
図2】
図2は、伝導性層と、有益剤を含む複数のマイクロセルと、金属材料を伴うシール層と、連続電極層とを含む有益剤送達システムの別の実施形態を図示する。
【0016】
【
図3】
図3Aおよび3Bは、シール層の金属材料の移動に関する潜在的機序を図示する。
【0017】
【
図4】
図4は、同じ送達システム内に複数の異なるタイプの有益剤および/または複数の濃度の有益剤を含む有益剤送達システムを図示する。
【0018】
【
図5】
図5は、ロールツーロールプロセスを使用して本発明のマイクロセルを作製する方法を示す。
【0019】
【
図6-1】
図6Aおよび6Bは、熱硬化性前駆体でコーティングされた導体膜のフォトマスクを通したフォトリソグラフィ露光を使用した活性分子送達システムのためのマイクロセルの生産を詳述する。
【0020】
【
図6-2】
図6Cおよび6Dは、有益剤送達システムのためのマイクロセルがフォトリソグラフィを使用して製作される代替実施形態を詳述する。
図6Cおよび6Dでは、上部露光および底部露光の組み合わせが、使用され、不透過性のベース導体膜を通して、1つの横方向の壁が上部フォトマスク露光によって硬化させられ、別の横方向壁が底部露光によって硬化させられることを可能にする。このプロセスは、マイクロセル壁が、横運動実施形態との使用のために、種々の多孔性で調製されることを可能にする。
【0021】
【
図7】
図7A-7Dは、有益剤送達システム内で使用されるべきマイクロセルのアレイを充填するステップおよびシールするステップを図示する。
【0022】
【
図8】
図8は、印加された電場によってアクティブにされ得る複数のマイクロセルと、金属材料を備えているシール層とを含む有益剤送達システムのある実施形態を図示する。マイクロセルは、電極によってアクティブにされる一方、皮膚(または他の伝導性基質)の伝導性は、接地電極を提供する。
【0023】
【
図9】
図9は、複数のマイクロセルと、金属材料を備えているシール層とを含む有益剤送達システムのある実施形態を図示する。
図9では、スイッチが、無線受信機に結合され、ユーザが、マイクロセルをアクティブにし、モバイルフォンまたは他の無線デバイス上のアプリケーションを用いて有益剤の送達をトリガすることを可能にする。
【0024】
【
図10】
図10は、複数のマイクロセルと、金属材料を備えているシール層とを含む有益剤送達システムのある実施形態を図示する。
図10では、複数の電極が、無線受信機に結合され、それによって、アプリケーションが所望の有益剤の送達をアクティブにすることを可能にするマトリクスドライバに結合される。
【0025】
【
図11】
図11および12は、有益剤が、マイクロセルの中だけではなく、接着層および/または有益剤装填層等の他の層の中にも装填される有益剤送達システムのある実施形態を図示する。異なる組み合わせの有益剤も、送達システムの異なるエリア内に含まれることができる。
【
図12】
図11および12は、有益剤が、マイクロセルの中だけではなく、接着層および/または有益剤装填層等の他の層の中にも装填される、有益剤送達システムのある実施形態を図示する。異なる組み合わせの有益剤も、送達システムの異なるエリア内に含まれることができる。
【0026】
【
図13】
図13は、有益剤送達システムのシール層の外側表面の顕微鏡画像である。シール層は、金属ナノファイバを備えている。
【0027】
【
図14A】
図14Aは、システムを横断した電場の印加の前の有益剤送達システムの複数のマイクロセルの外側表面の写真画像であり、画像は、シール層と反対側の複数のマイクロセルの外側表面を表す。
【0028】
【
図14B】
図14Bは、システムを横断した電場の印加の後の有益剤送達システムの複数のマイクロセルの外側表面の写真画像であり、画像は、シール層と反対側の複数のマイクロセルの外側表面を表し、電場は、有益剤送達システムの左側に印加され、右側に、いかなる電場も、印加されなかった。
【0029】
【
図15A】
図15Aは、システムを横断した電場の印加の前の有益剤送達システムの複数のマイクロセルの内側表面の顕微鏡画像であり、画像は、シール層の除去の後に入手された。
【0030】
【
図15B】
図15Bは、システムを横断した電場の印加の後の有益剤送達システムの複数のマイクロセルの内側表面の顕微鏡画像であり、画像は、シール層の除去の後に入手された。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、有益剤送達システムを提供し、それによって、有益剤が、要求に応じて放出され得、および/または、種々の異なる有益剤が、同じシステムから送達され得、および/または、異なる濃度の有益剤が、同じシステムから送達され得る。本発明は、医薬品、ワクチン、抗体、ホルモン、タンパク質、核酸、栄養剤、栄養補助剤、化粧剤、芳香剤、消臭剤、空気処置剤、農薬、空気処置剤、抗菌剤、保存料、および他の有益剤を送達するために使用されることができる。医薬品および化粧剤は、患者に経皮的に送達され得る。しかしながら、本発明は、概して、有益剤を動物に送達するためにも使用され得る。例えば、本発明は、輸送中のウマに鎮静薬を送達することができる。加えて、本発明は有益剤を他の表面または空間に送達するためにも使用され得る。
【0032】
有益剤送達システムの「接着層」は、システムの2つの他の層の間に接着接続を確立する、層である。接着層は、200nm~5mmまたは1μm~100μmの厚さを有し得る。
【0033】
「多孔性拡散層」は、0.2nmより大きい平均細孔径を有する有益剤送達システムの層である。「率制御層」は、0.2nmまたはそれより小さい平均細孔径を有する有益剤送達システムの層である。
【0034】
本発明の一実施形態では、有益剤送達システムは、伝導性層と、マイクロセル層と、シール層と、電極層とを含む。伝導性層、マイクロセル層、シール層、および電極層は、互いの上に垂直にスタックされる。好ましい実施形態では、伝導性層、マイクロセル層、シール層、および電極層は、この順序において互いの上に垂直にスタックされる。有益剤送達システムは、伝導性層を電極層と接続する電圧源も備え得る。
【0035】
マイクロセル層は、媒体を含む複数のマイクロセルを備えている。複数のマイクロセルの各々は、0.01nLを上回る、0.05nLを上回る、0.1nLを上回る、1nLを上回る、10nLを上回る、または100nLを上回る容積を有し得る。有益剤製剤である媒体は、担体と、有益剤とを備えている。媒体は、媒体の重量比で0.01重量%超、または0.1重量%超、または1重量%超の有益剤を含み得る。媒体は、媒体の重量比で0.001重量%~99.99重量%、または0.01重量%~99重量%、または0.1重量%~95重量%、または5重量%~60重量%の有益剤を含み得る。
【0036】
担体は、液体、半固体、ヒドロゲル等のゲル、またはそれらの組み合わせであり得る。担体は、水、有機化合物、シリコーン化合物、またはそれらの組み合わせを備え得る。有機化合物は、アルコール、エステル、アミド、エーテル、カルボン酸、炭化水素、および他の有機化合物であり得る。有機化合物は、DMSO、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、オクタン、ノナン、クエン酸トリエチル、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、および他の有機溶媒等の有機溶媒であり得る。有機化合物は、生体適合性の非極性液体であり得る。有機化合物は、植物油、果実油、または堅果油等の天然油であり得る。シリコーン化合物は、シリコーン油であり得る。他の実施形態では、担体は、水または水性緩衝液等の水性液体であり得る。媒体中の担体の含有量は、媒体の重量比で約1重量%~約99重量%、好ましくは、約5重量%~約95重量%、より好ましくは、約10重量%~約90重量%であり得る。媒体は、ポリマー材料も備え得る。一例では、有益剤は、マイクロセル内に添加される前、ポリマー材料内に分散させられ得る。
【0037】
媒体は、電荷制御剤、レオロジー改質剤、およびキレート剤等の添加剤も含み得る。電荷制御剤は、典型的に、例えば、好ましくは、非極性鎖(典型的に、炭化水素鎖)に付着させられた正イオン基または負イオン基等のイオン基または他の極性基を備えている分子である。レオロジー改質剤は、化合物、典型的に、媒体の粘度を所望の値に調節するポリマー材料である。キレート剤は、金属カチオンをキレートすることが可能である化合物である。キレート剤の存在は、シール層からの金属材料の移動を促進し得る。キレート剤の非限定的な例は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)、アミノトリス(メチレンホスホン酸)(ATMP)、1,3-ジアミノ-2-プロパノール四酢酸(DTPA)、ジピコリン酸(DPA)、およびエチレンジアミン-N,N´-ビス(2-ヒドロキシフェニル酢酸)(EDDHA)を含む。媒体は、媒体の重量比で0.001重量%~5重量%、または0.01重量%~3重量%、または0.1重量%~1重量%のキレート剤を含み得る。
【0038】
マイクロセルは、開口部を含む。マイクロセル開口部の最大寸法は、30μm~300μm、または30μm~180μm、または約80μm~150μmであり得る。シール層は、各マイクロセルの開口部に架かっている。シール層は、ポリマー材料と、金属材料とを備えている。金属材料は、金属粒子と、金属ワイヤと、金属ファイバと、金属薄片と、金属ロッドと、金属凝集体と、金属ディスクと、それらの組み合わせとを含み得る。金属材料は、金属ナノ粒子と、金属ナノワイヤと、金属ナノファイバと、それらの組み合わせとを含み得る。金属材料は、金属コーティングシリカ粒子、金属コーティング半導体粒子、金属コーティングガラスビーズ、または金属コーティングプラスチックビーズとしてシール層内に存在し得る。シール層の金属材料は、銀、銅、白金、金、亜鉛、ニッケル、クロム、またはそれらの組み合わせ等の金属要素を備え得る。シール層は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、または伝導性ポリマー等の伝導性材料も備え得る。金属材料の最小寸法は、1nm~1mm、または20nm~500μm、または30nm~100μmであり得る。金属ワイヤ、金属ファイバ、金属ロッド、および金属凝集体の場合、最小寸法は、1μm~100μm、または2μm~50μm、または5μm~20μmであり得る。金属薄片および金属ディスクは、1nm~200nmまたは5nm~100nmの平均厚と、100nm~500nmまたは150nm~300nmの平均直径とを有し得る。シール層の金属材料は、金属ナノ粒子、金属ナノワイヤ、および金属ナノファイバの形態にあり得る。これらの場合、ナノ構造の最小寸法は、20nm~1μm、または50nm~500nm、または75nm~250nmであり得る。金属材料の含有量は、アクティブにされていないシール層の重量比で約1重量%~約90重量%、好ましくは、約3重量%~約70重量%、より好ましくは、約5重量%~約40重量%であり得る。シール層は、500nm~3mmまたは1μm~100μmの厚さを有し得る。
【0039】
複数のマイクロセルおよびシール層は、伝導性層と電極層との間に配置される。電極層は、単一の電極を備え得る。電極層は、行と、列とを有する金属材料からのメッシュであり得る。電極層は、独立してアドレスされ得る複数の電極(ピクセル電極とも呼ばれる)も備え得る。ピクセル電極の平均最大寸法は、約4μm~約4mm、好ましくは、約10μm~約500μm、より好ましくは、約50~約200μmであり得る。電極層は、連続伝導性材料も備え得る。連続伝導性材料は、酸化インジウムスズ(ITO)導体ライン等の事前に形成される導体膜であり得る。銀またはアルミニウム等の他の伝導性材料も、使用され得る。電極層の厚さは、500nm~5mmまたは1μm~500μmであり得る。ITO等の連続伝導性材料の場合、電極層の厚さは、0.1nm~1μmまたは1nm~100nmであり得る。電極層は、0.2nmより大きい、または10nmより大きい、または100nmより大きい、または1μmより大きい、10μmより大きい、または100μmより大きい平均細孔径を有する多孔性であり得る。電極層は、0.2nm未満の平均細孔径も有し得る。一般に、平均細孔径が小さいほど、送達システムからの有益剤の送達の率が、より小さくなる。
【0040】
伝導性層は、連続伝導性材料を備え得る。連続伝導性材料は、酸化インジウムスズ(ITO)導体ライン等の事前に形成された導体膜であり得る。銀またはアルミニウム等の他の伝導性材料も、使用され得る。この場合、電極層の厚さは、0.1nm~1μmまたは1nm~100nmであり得る。伝導性層は、行と、列とを有する金属材料のメッシュも備え得る。それは、独立してアドレスされ得るピクセル電極等の複数の電極も備え得る。これらの場合、伝導性層の厚さは、500nm~5mmまたは1μm~500μmであり得る。
【0041】
有益剤送達システムは、最初は、
図1Aに描写されるような有益剤に対して不浸透性である(または低い浸透率を有する)シール層を有する複数のマイクロセルを備えている。伝導性層と電極層の電極との間の電圧の印加時、シール層の金属材料が、シール層から除去される。それは、マイクロセルを通して移動し、伝導性層に隣接するマイクロセルの内側表面上に堆積させられ得る。印加される電圧は、約1~約240V、好ましくは、約5~約130V、より好ましくは、約20~約80Vであり得る。電圧の印加の持続時間は、約1秒~約120分、好ましくは、約10秒~約60分、より好ましくは、約1分~約30分であり得る。電圧が、伝導性層と電極層との間の電圧源から印加されると、結果として生じる電流が、媒体を通して流動し得る。電場の印加に伴って、シール層の金属材料が、アノードに近接する対応する金属塩に対して酸化する可能性が高い。金属塩は、マイクロセル内の媒体中に溶解され得、次いで、それは、カソードの近傍で、その金属形態に還元され、伝導性層に隣接するマイクロセルの内側表面上に堆積させられ得る。このプロセスは、
図1Bに描写されるように、シール層内に多孔性を生成し、マイクロセルをアクティブにする。結果として、マイクロセルの有益剤は、
図1Bの矢印が示すように、シール層に隣接する表面から、対応するマイクロセルから退出し、所望の表面または空間上に送達され得る。アクティブにされたマイクロセルのシール層の多孔性は、対応するシール層の総体積あたりの細孔の総体積として決定される約0.01%~約80%、好ましくは、約0.5%~約50%、より好ましくは、約1%~約20%であり得る。金属の移動およびマイクロセルのアクティブ化をトリガする電圧の極性は、電極層の電極が、正電位(アノード)を有するようなものである。電圧の印加によってシール層内に多孔性を生成するための能力は、要求に応じて有益剤の送達を可能にする。有益剤送達システムは、要求に応じて独立してアクティブにされ得る複数のマイクロセルを備え得るので、システムは、異なる時間に可変の量の有益剤を送達する柔軟性を有する。加えて、マイクロセルアレイは、異なる有益剤が装填され、それによって、要求に応じて、異なるまたは相補的な有益剤を送達するための機構を提供し得る。
【0042】
医薬化合物の経皮送達等のより従来の用途に加えて、有益剤送達システムは、農産用栄養剤を送達するための基礎となり得る。マイクロセルアレイは、水耕栽培システムと共に使用され得る大きいシートに製作されることができるか、または、それらは、Mebiol,Inc.(Kanagawa,Japan)によって実証されるもの等のヒドロゲル膜農法の中に統合されることができる。有益剤送達システムはまた、スマートパッケージの構造的な壁の中に組み込まれることもできる。送達システムは、例えば、新鮮な野菜または他の物品を含むパッケージの中への抗酸化剤の長時間放出を行うことを可能にする。そのようなパッケージングは、ある食品および他の物品の貯蔵寿命を劇的に改良し得、さらに、パッケージが開放されるまで、鮮度を維持するために必要な量の抗酸化剤のみを要求するであろう。
【0043】
有益剤送達システムの概観が、
図1Aに示される。システムは、複数のマイクロセル(130A、130B、130C)を備えているマイクロセル層を含み、各マイクロセルは、担体140と、有益剤150とを備えている媒体(有益剤製剤)を含む。
図1A(また、
図1B、2、3、7、8、9、10、11、および12)が、有益剤150を担体と異なる相を含意し得る別個の巨視的実体として表している場合でも、この表現は、担体中の溶液の形態または任意の他の形態にある分子状態で存在する有益剤の選択肢を含むと仮定されるべきであり、有益剤の存在は、別個の相として見掛け上可視ではない。そのような例は、マイクロ乳濁液、ナノ乳濁液、コロイド分散液等を含む。各マイクロセルは、下でより詳細に説明されるポリマー母材から形成されるアレイの一部である。有益剤送達システムは、典型的に、湿気の進入および物理的な相互作用に対する構造的支持および保護を提供するための基材層110を含むであろう。基材層は、1μm~5mmまたは25μm~300μmの厚さを有し得る。マイクロセルの一部は、シール層160が架かっている開口部を有するであろう。シール層は、アクリレート、メタクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAAm)、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル、非結晶性ナイロン、配向ポリエステル、テレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、またはアルギン酸塩を備えているもの等、種々の天然または非天然ポリマーから構成され得る。シール層は、金属粒子、金属ワイヤ、金属ファイバ、金属薄片、金属ロッド、金属凝集体、金属ディスク、またはそれらの組み合わせの形態にある金属材料も備え得る。シール層は、ナノ粒子、金属ナノワイヤ、または金属ナノファイバの形態にある金属材料を備え得る(170)。シール層は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、または伝導性ポリマー等の追加の伝導性材料も備え得る。シール層内で使用され得る伝導性ポリマーの非限定な例は、PEDOT-PSS、ポリアセチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンビニレン、またはそれらの組み合わせを含む。シール層は、マイクロセルの媒体中に含まれる有益剤と同じまたは異なる有益剤も備え得る。有益剤は、シール層組成が調製されるとき、および、シール層が有益剤送達システムの調製中に使用される前、シール層内に組み込まれ得る。マイクロセルの水平断面は、異なる形状、例えば、正方形、丸みを帯びた形状、またはハニカム構造等の多角形を有し得る。
【0044】
複数のマイクロセル(130A、130B、130C)およびシール層160が、伝導性層120と電極層190との間に配置される。電極層190は、行と、列とを有する金属材料からのメッシュであり得る。電極層は、複数の電極も備え得る。電極層は、複数の電極195を備え得る。多くの場合、システムは、加えて、接着層180を含むであろう。電極層とシール層とは、1つの層に統合され得る。
図1Aでは、接着層は、シール層と電極層との間に存在する。接着層および電極層は、有益剤に対して多孔性であり得る。接着層は、200nm~5mmまたは1μm~100μmの厚さを有し得る。
【0045】
図1Bは、マイクロセルのアクティブ化の後の有益剤送達システムのある例を示す。上で説明されるように、アクティブ化は、マイクロセルを横断した電圧210の印加を介して生じ、金属材料170の移動につながる。金属材料170の移動は、開放チャネル175を有する層を生成する。したがって、アクティブにされたマイクロセルに隣接するシール層は、多孔性の状態になる。より具体的に、
図1Bでは、最も左のマイクロセル130Aの開口部に架かっているシール層部分は、最初に存在する金属材料170が移動し、開放チャネル175を生成しているので、多孔性である。この移動は、伝導性層120に隣接するマイクロセル130Aの表面上での金属材料178の堆積をもたらす。
図1Bに示されるように、マイクロセル130A内に存在する有益剤は、(矢印が示すような)現在多孔性であるシール層を通してマイクロセルから退出し得、所望の表面または空間上に送達されることができる。有益剤の送達の率は、種々の方法によって制御されることができる。例は、シール層内の金属材料の含有量と、シール層内に分散させられた金属材料の最小寸法のサイズとを含む。これらのパラメータは、シール層の多孔性に影響を及ぼす。典型的に、シール層内の金属材料の含有量が大きいほど、および、金属材料の最小寸法が大きいほど、シール層は、より多孔性であり、送達の率は、より高いであろう。送達の率に影響を及ぼし得る他のパラメータは、有益剤および担体の性質と、担体組成物中の有益剤の濃度とを含む。有益剤送達システムにおいて率制御層を含むことも、下でより詳細に説明されるように、送達の率を制御し得る。有益剤は、分子形態において、すなわち、担体中の溶液として、および/または、分散液または乳濁液として異なる相にある実体として、マイクロセス内に存在し得る。後者の場合(異なる相)では、分散液または乳濁液の粒子または液滴サイズも、送達の率に影響を及ぼすであろう。有益剤の送達の持続時間も、シール層の金属材料の移動の率およびシール層内の多孔性の生成の率に影響を及ぼすであろう印加される電圧の大きさによって制御されることができる。より高い電圧の印加は、典型的に、有益剤の送達のより高い率をもたらす。有益剤の有用である物理的形態は、有益剤送達システムから退出する実際の物理的形態から独立して、ガス状であり得る。例えば、芳香剤の分子は、気化し、それらが検出される前にユーザの鼻の匂いセンサに到達する。したがって、本種類の有益剤は、液体として、または気体として送達システムから退出し得る。
【0046】
マイクロセルのアクティブ化は、
図3Aおよび3Bに図示されるように、伝導性層120と対応する電極195との間に印加される電圧によって達成される。電圧の印加は、マイクロセルの媒体を通して流動する電流をもたらす。
図3Aおよび3Bに図示される実施形態では、マイクロセルのシール層160は、ポリマー材料を備え、銀ナノファイバ170が、
図3Aに図示されるように分散させられている。印加される電圧210は、電極195が正の極性を有するようなものである。シール層の銀ナノファイバは、移動し、マイクロセルの内側表面上に再び堆積させられる(178)。これは、マイクロセルの媒体中に溶解し得、伝導性層120に向かって移動し得る銀カチオン(Ag+)を含む銀塩に対する銀ナノファイバの酸化の結果である可能性が高い。金属材料の酸化から発生させられた電子も、伝導性層120と電極195との間の電気的結合を介して伝導性層120に向かって移動し得る。
図3Bでは、このプロセスの結果が、図示される。銀カチオンは、伝達された電子によって伝導性層に隣接するマイクロセルの内側表面上で銀金属に還元され得る。金属銀は、次いで、マイクロセルの内側表面上に堆積させられる(178)。シール層からの銀ナノファイバ170の移動は、シール層160上に開放チャネル175を生成し、マイクロセルをアクティブにし、マイクロセル内に存在する有益剤の送達を可能にする。
【0047】
有益剤の送達の率を調整することに加えて、本発明のマイクロセル構成物は、
図4に図示されるように、異なる有益剤のアレイまたは異なる濃度のアレイを作製することに適している。マイクロセルは、電極のアクティブマトリクスを用いて個々にアクティブにされ得るので、要求に応じて種々の有益剤を提供すること、および複雑な投与プロファイルを生産することが、可能である。インクジェットまたは他の流体システムを用いた注入を使用することによって、個々のマイクロセルが、充填され、種々の異なる有益剤が有益剤送達システム内に含まれることを可能にすることができる。例えば、本発明のシステムは、4つの異なる濃度のニコチンを含み、それによって、異なる投薬量が日中の異なる時間に送達されることを可能にし得る。例えば、起床直後は、最も濃縮された投与量が、送達され(濃灰色部)、続いて、日中、ユーザが別のさらに濃縮された投与量を必要とする時間まで、はるかに低い漸減する投与量が続き得る(斑点部)。同じマイクロセル内に異なる有益剤を含むことも、可能である。例えば、
図4に図示されるシステムは、送達システムと接触する皮膚のエリア内の腫脹および掻痒を低減させるために鎮痛剤(縞)も含み得る。当然ながら、種々の組み合わせも、可能であり、種々のマイクロセルは、医薬品、栄養補助食品、栄養剤、補助剤、ビタミン、ワクチン、ホルモン、化粧剤、芳香剤、保存料等を含み得る。さらに、マイクロセルの配置は、分布させられないこともある。むしろ、マイクロセルは、まとめて充填され得、それは、充填およびアクティブ化をより容易にする。他の実施形態では、より小さいマイクロセルアレイが、同じ媒体、すなわち、同じ濃度の同じ有益剤を有するもので充填され得、次いで、より小さいアレイは、より大きいアレイにまとめられ、本発明の送達システムを作製し得る。
【0048】
図2によって図示される別の実施形態では、有益剤送達システムは、伝導性層290と、複数の電極(130A、130B、130C)を備えているマイクロセル層と、金属材料170を備えているシール層160と、電極層220とを含む。伝導性層290、マイクロセル層、シール層160、および電極層220は、互いの上に垂直にスタックされる。本実施形態では、伝導性層290は、(ピクセル電極等の)複数の電極295を備え得るか、または、それは、行と、列とを有する金属材料からのメッシュを備え得る。有益剤送達システムは、基材層211と、電極層を多孔性の伝導性層と接続する電圧源(
図2に図示せず)とを備え得る。複数のマイクロセルは、有益剤150を含む。本実施形態では、電極層は、(ITO等の)連続伝導性材料であり得る。電極層およびシール層は、1つの層に統合され得る。
【0049】
(マイクロセルを構成するための技法) マイクロセルは、米国特許第6,933,098号に開示されているようなバッチ式プロセスまたは連続的ロールツーロールプロセスのいずれかで形成され得る。後者は、有益剤送達および電気泳動ディスプレイを含む種々の用途における使用のためのコンパートメントの生産のための連続的、低コスト、高スループットの製造技術を提供する。本発明との使用に好適であるマイクロセルアレイは、
図5に図示されるように、マイクロエンボスを用いて生成されることができる。オス型金型500が、ウェブ504の上方か、またはウェブ504の下方(図示せず)のいずれかに設置され得るが、しかしながら、代替の配置も、可能である。例えば、米国特許第7,715,088号(参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)を参照されたい。伝導性基質が、デバイスのための基材となるポリマー基質上に導体膜501を形成することによって、構成され得る。熱可塑性物質、熱硬化性物質、またはそれらの前駆体を備えている組成物502が、次いで、導体膜上にコーティングされる。熱可塑性または熱硬化性前駆体層が、ローラ、プレート、またはベルトの形態にあるオス型金型によって、熱可塑性または熱硬化性前駆体層のガラス移行温度より高温でエンボス処理される。
【0050】
マイクロセルの調製のための熱可塑性または熱硬化性前駆体は、多官能アクリレートまたはメタクリレート、ビニルエーテル、エポキシドおよびオリゴマーまたはそれらのポリマー等であり得る。多官能性エポキシドおよび多官能アクリレートの組み合わせも、望ましい物理的機械的特性を達成するために非常に有用である。ウレタンアクリレートまたはポリエステルアクリレート等の可撓性を授ける架橋性オリゴマーが、エンボス処理されたマイクロセルの撓曲抵抗を改良するために添加され得る。組成物は、ポリマーと、オリゴマーと、モノマーと、添加剤と、またはオリゴマーと、モノマーと、添加剤とのみを含み得る。このクラスの材料に関するガラス移行温度(すなわち、Tg)は、通常、約-70℃~約150℃、好ましくは、約-20℃~約50℃の範囲に及ぶ。マイクロエンボスプロセスは、典型的に、Tgより高温で行われる。金型が押し付ける加熱されたオス型金型または加熱された筐体基質が、マイクロエンボスの温度および圧力を制御するために使用され得る。
【0051】
図5に示されるように、前駆体層が硬化させられている間またはその後、マイクロセルのアレイ503をあらわにするために、金型が、取り外される。前駆体層の硬化は、冷却、溶媒蒸発、放射線による架橋結合、加熱、または加湿によって遂行され得る。熱硬化性前駆体の硬化がUV照射によって遂行される場合、UVは、2つの図に示されるように、ウェブの底部または上部から透過性の導体膜上に放射され得る。代替として、UVランプが、金型の内側に設置され得る。この場合、金型は、UV光が、事前にパターン化されたオス型金型を通して熱硬化性前駆体層上に放射することを可能にするように透過性でなければならない。オス型金型は、後にエッチングまたは電気鍍着のいずれかが続く、ダイヤモンド旋削プロセスまたはフォトレジストプロセス等の任意の適切な方法によって調製され得る。オス型金型のためのマスタテンプレートが、電気鍍着等の任意の適切な方法によって製造され得る。電気鍍着の場合、ガラス基部が、クロムインコネル等のシード金属の薄層(典型的に、3,000Å)でスパッタリング処理される。金型は、次いで、フォトレジスト層でコーティングされ、UVに露光される。マスクが、UVとフォトレジスト層との間に設置される。フォトレジストの露光エリアが、硬化させられた状態になる。非露光エリアが、次いで、適切な溶媒を用いてそれらを洗浄することによって除去される。残りの硬化フォトレジストが、乾燥させられ、再び、シード金属の薄層でスパッタリング処理される。マスタは、次いで、電鋳できる状態になる。電鋳のために使用される典型的材料は、ニッケルコバルトである。代替として、マスタは、電鋳または無電解ニッケル析出によって、ニッケルから作製されることができる。金型の床は、典型的に、約50~400ミクロンである。マスタは、1997年のSPIE Proc.のVol.3099の76-82ページの「Replication techniques for micro-optics」に説明されるような、電子ビーム描画、乾式エッチング、化学エッチング、レーザ描画、またはレーザ干渉を含む他のマイクロエンジニアリング技法を使用して作製されることもできる。代替として、金型は、プラスチック、セラミック、または金属を使用して、光機械加工によって作製されることができる。
【0052】
UV硬化性樹脂組成物を適用することに先立って、金型は、離型プロセスを補助するための離型剤を用いて処置され得る。UV硬化性樹脂は、分注されることに先立って、脱気され得、随意に、溶媒を含み得る。溶媒は、存在する場合、容易に蒸発する。UV硬化性樹脂は、コーティング、浸漬、傾注等の任意の適切な手段によってオス型金型の上に分注される。ディスペンサは、移動式または固定式であり得る。導体膜が、UV硬化性樹脂の上に重ねられる。必要である場合、圧力が、樹脂とプラスチックとの間の適切な接合を確実にするように、かつマイクロセルの床の厚さを制御するように印加され得る。圧力は、積層ローラ、真空成型、プレス加工デバイス、または任意の他の同様の手段を使用して印加され得る。オス型金型が、金属であり、不透過性である場合、プラスチック基質は、典型的に、樹脂を硬化させるために使用される化学線に対して透過性である。逆に、オス型金型が、透過性であり得る場合、プラスチック基質は、化学線に対して不透過性であり得る。成型された特徴の移送シート上への良好な転写を得るために、導体膜は、UV硬化性樹脂への良好な粘着力を有する必要があり、金型表面に対する良好な離型特性を有するべきである。
【0053】
本発明のためのマイクロセルアレイは、典型的に、酸化インジウムスズ(ITO)導体ライン等の事前に形成された導体膜を含むが、しかしながら、銀またはアルミニウム等の他の伝導性材料も、使用され得る。伝導性層は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアラミド、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ポリスルホン、エポキシ、およびそれらの合成物等の基質によって裏打ちされ得るか、または、それに統合され得る。導体膜は、照射硬化性のポリマー前駆体層でコーティングされ得る。膜および前駆体層は、次いで、マイクロセル壁構造を形成するために照射に対して画像様に露光される。露光に続いて、前駆体材料が、非露光エリアから除去され、導体膜/支持ウェブに接合される硬化させられたマイクロセル壁を残す。画像様露光は、フォトマスクを通したUVまたは他の形態の放射線によって遂行され、導体膜上にコーティングされる照射硬化性材料の露光の画像または所定のパターンを生産し得る。概して、要求されないが、透過性マスク部分が、ITOライン間の空間と整列し、不透過性マスク部分が、(マイクロセルのセル床面積を対象とした)ITO材料と整列するように、マスクが、導体膜、すなわち、ITOラインに対して位置付けられ、整列させられ得る。
【0054】
(フォトリソグラフィ) マイクロセルは、フォトリソグラフィを使用しても生産されることもできる。マイクロセルアレイを製作するためのフォトリソグラフィプロセスが、
図6Aおよび5Bに図示される。
図6Aおよび6Bに示されるように、マイクロセルアレイ600が、マスク606を通して投影された画像に対応する壁601bを形成するために、マスク606を通したUV光(または代替として、他の形態の放射線、電子ビーム等)への公知の方法によって導体電極膜602上にコーティングされた放射線硬化性材料601aの露光によって、調製され得る。ベース導体膜602が、好ましくは、塑性材料を備え得る支持基質ベースウェブ603上に搭載される。
【0055】
図6Aのフォトマスク606では、暗色の正方形部604が、不透過性エリアを表し、暗色の正方形部の間の空間が、マスク606の透過性エリア605を表す。UVは、透過性エリア605を通して放射線硬化性材料601a上に照射する。露光が、好ましくは、直接、放射線硬化性材料601a上に実施され、すなわち、UVは、基質603またはベース導体602を通過しない(上部露光)。この理由のために、基質603または導体602のいずれも、UVまたは他の採用される放射線波長に対して透過性である必要はない。
【0056】
図6Bに示されるように、露光エリア601bが、硬化させられた状態になり、非露光エリア(マスク606の不透過性エリア604によって保護される)が、次いで、適切な溶媒または現像液によって除去され、マイクロセル607を形成する。溶媒または現像液は、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、アセトン、イソプロパノール等の放射線硬化性材料を分解またはその粘性を低減させるために一般的に使用されるものから選択される。マイクロセルの調製は、導体膜/基質支持ウェブの真下にフォトマスクを設置することによって同様に遂行され得、この場合、UV光は、フォトマスクを通して底部から照射し、基質は、放射線に対して透過性である必要がある。
【0057】
(画像様露光) 画像様露光による本発明のマイクロセルアレイの調製のためのさらに別の代替方法が、
図6Cおよび6Dに図示される。不透過性の導体ラインが使用されるとき、導体ラインは、底部からの露光のためのフォトマスクとして使用されることができる。耐久性マイクロセル壁が、導体ラインに対して垂直である不透過性ラインを有する第2のフォトマスクを通した上部からの追加の露光によって形成される。
図6Cは、本発明のマイクロセルアレイ610を生産するための上部および底部露光原理の両方の使用を図示する。ベース導体膜612は、不透過性であり、線状パターン化されている。ベース導体612および基質613上にコーティングされた放射線硬化性材料611aが、第1のフォトマスクとしての役割を果たす導体の線状パターン612を通して、底部から露光される。第2の露光が、導体ライン612に対して垂直である線状パターンを有する第2のフォトマスク616を通して、「上」面から実施される。ライン614の間の空間615は、UV光に対して実質的に透過性である。このプロセスでは、壁材料611bが、底部から上に1つの横向きに硬化させられ、かつ上部から下に垂直方向に硬化させられ、接合し、一体型のマイクロセル617を形成する。
図6Dに示されるように、非露光エリアが、次いで、上で説明されるように、溶媒または現像液によって除去され、マイクロセル617をあらわにする。
【0058】
マイクロセルは、マイクロセルとの良好な親和性を有し、かつ媒体と相互作用しない、熱可塑性エラストマから構成され得る。有用である熱可塑性エラストマの例は、ABAおよび(AB)n型のジブロック、トリブロック、およびマルチブロック共重合体を含む(式中、Aは、スチレン、α-メチルスチレン、エチレン、プロピレン、またはノルボルネンであり、Bは、ブタジエン、イソプレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ジメチルシロキサン、またはプロピレンスルフィドであり、AおよびBは、化学式において同じであることはできない。数nは、≧1であり、好ましくは1~10である)。特に有用であるものは、SB(ポリ(スチレン-b-ブタジエン))、SBS(ポリ(スチレン-b-ブタジエン-b-スチレン))、SIS(ポリ(スチレン-b-イソプレン-b-スチレン))、SEBS(ポリ(スチレン-b-エチレン/ブチレン-b-スチレン))ポリ(スチレン-b-ジメチルシロキサン-b-スチレン)、ポリ(α-メチルスチレン-b-イソプレン)、ポリ(α-メチルスチレン-b-イソプレン-b-α-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン-b-プロピレンスルフィド-b-α-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン-b-ジメチルシロキサン-b-α-メチルスチレン)等のスチレンまたはox-メチルスチレンのジブロックまたはトリブロック共重合体である。(Kraton Polymer(Houston,Tex.)製)Kraton DおよびG series等の商業的に利用可能なスチレンブロック共重合体は、特に、有用である。ポリ(エチレン-コ-プロピレン-コ-5-メチレン-2-ノルボルネン)等の結晶性ゴムまたは(Exxon Mobil(Houston,Tex.)製)Vistalon 6505等のEPDM(エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー)ゴム、およびそれらのグラフト共重合体も、非常に有用であることが見出されている。
【0059】
熱可塑性エラストマは、マイクロセル内の担体と非混和性であり、かつ担体のそれを下回る比重を示す溶媒または溶媒混合物中に溶解され得る。低表面張力溶媒が、マイクロセル壁および流体に優るそれらのより良好な湿潤特性により、オーバーコーティング組成物として好ましい。35ダイン/cmより低い表面張力を有する溶媒または溶媒混合物が、好ましい。30ダイン/cmより低い表面張力が、より好ましい。好適な溶媒は、アルカン(好ましくは、ヘプタン、オクタン、またはExxon Chemical Company製のIsopar溶媒、ノナン、デカン等のC6-12シクロアルカンおよびそれらの異性体)、シクロアルカン(好ましくは、シクロヘキサンおよびデカリン等のC6-12シクロアルカン等)、アルキルベンゼン(好ましくは、トルエン、キシレン等のモノ-またはジ-C1-6アルキルベンゼン等)、アルキルエステル(好ましくは、酢酸エチル、酢酸イソブチル等のC2-5アルキルエステル等)およびC3-5アルキルアルコール(イソプロパノール等およびそれらの異性体等)を含む。アルキルベンゼンと、アルカンとの混合物は、特に、有用である。
【0060】
ポリマー添加剤に加えて、ポリマー混合物は、湿潤剤(界面活性剤)も含み得る。湿潤剤(3M Company製のFC界面活性剤、DuPont製のZonylフッ素系界面活性剤、フルオロアクリレート、フルオロメタクリレート、フルオロ置換長鎖アルコール、ペルフルオロ置換長鎖カルボン酸、およびそれらの誘導体、およびOsi(Greenwich,Conn.)製のSilwetシリコーン界面活性剤等)も、マイクロセルへのシーラントの粘着力を改良し、より柔軟なコーティングプロセスを提供するために、組成物中に含まれ得る。架橋剤(例えば、4,4´-ジアジドジフェニルメタンおよび2,6-ジ(4-アジドベンザール)-4-メチルシクロヘキサノン等のビスアジド)、加硫剤(例えば、2-ベンゾチアゾリルジスルフィドおよびテトラメチルチウラムジスルフィド)、多官能性モノマーまたはオリゴマー(例えば、ヘキサンジオール、ジアクリレート、トリメチロールプロパン、トリアクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート)、熱開始剤(例えば、過酸化ジラウロイル、過酸化ベンゾイル)、および光開始剤(例えば、Ciba-Geigy製のイソプロピルチオキサントン(ITX)、Irgacure 651、およびIrgacure 369)を含む他の原料も、オーバーコーティングプロセス中またはその後の架橋結合または重合反応によって、シール層の物理的機械的特性を向上させるために非常に有用である。
【0061】
マイクロセルは、生産された後、有益剤と担体との適切な組み合わせで充填される。マイクロセルアレイ70は、上で説明される方法のうちのいずれかによって調製され得る。
図7A-7Dの断面図に示されるように、マイクロセル壁71が、基材層73および伝導性層72から上向きに延び、開放したセルを形成する。ある実施形態では、伝導性層72は、基材層73上または基材層73において形成される。
図7A-7Dは、伝導性層72が、連続的であり、基材層73の上方に伸びることを示すが、伝導性層72が、連続的であり、基材層73の下方またはその中に伸びること、または、それがマイクロセル壁71によって中断されることも、可能である。充填することに先立って、マイクロセルアレイ70は、使用に先立って有益剤が損なわれないことを確実にするために、清掃され、殺菌され得る。
【0062】
マイクロセルは、次に、担体74と有益剤75との組み合わせで充填される。上で述べられるように、異なるマイクロセルが、異なる有益剤を含み得る。疎水性の有益剤を送達するためのシステムでは、組み合わせは、生体適合性油またはある他の生体適合性疎水性担体をベースとしたものであり得る。例えば、組み合わせは、植物油、果実油、または堅果油を備え得る。他の実施形態では、シリコーン油が、使用され得る。親水性の有益剤を送達するためのシステムでは、組み合わせは、水、リン酸緩衝液または極性有機溶媒等の他の水性媒体をベースとしたものであり得る。組み合わせは、液体である必要はないが、しかしながら、ヒドロゲルおよび他の基質等のゲルおよび半固体材料が、有益剤を送達するために好適であり得る。
【0063】
マイクロセルは、種々の技法を使用して充填され得る。多数の近隣するマイクロセルが同一の組成物で充填されるべきいくつかの実施形態では、マイクロセルをマイクロセル壁71の深度まで充填するために、ブレードコーティングが、使用され得る。種々の異なる組成物が種々の近傍のマイクロセルの中に充填されるべき他の実施形態では、マイクロセルを充填するために、インクジェットタイプの微量注入法が、使用されることができる。さらに他の実施形態では、マイクロセルのアレイを正しい組成物で充填するために、マイクロニードルアレイが、使用され得る。充填は、一段階プロセスまたは多段階プロセスで行われ得る。例えば、セル全てが、ある量の担体で部分的に充填され得る。部分的に充填されたマイクロセルは、次いで、担体と送達されるべき1つ以上の有益剤とを備えている組成物で充填される。
【0064】
図7Cに示されるように、充填後、マイクロセルは、金属ナノ粒子、金属ナノワイヤ、または金属ナノファイバ等の金属材料を備えているポリマー組成物76を適用することによって、シールされる。いくつかの実施形態では、シールプロセスは、熱、乾燥した高温の空気、またはUV照射への暴露を伴い得る。大部分の実施形態では、ポリマーは、担体74および有益剤75に対して不溶性であるか、または、低い溶解性を有するべきである。シール層76のポリマー組成物は、生体適合性でもあり、マイクロセル壁71の側面または上部に付着させられるように選択されることができる。接着剤も、電極層をシール層上に取り付けるために使用されることができる。接着剤も、導電性であり得る。シール層のための好適な生体適合性接着剤は、2016年10月30日に出願され、「Method for Sealing Microcell Containers with Phenethylamine Mixtures」と題された米国特許出願第15/336,841号(参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)に説明されるもの等のフェネチルアミン混合物である。故に、最終マイクロセル構造は、大部分は、漏出に対して不浸透性であり、層間剥離、またはシール層または電極層の分離を伴わず、撓曲に耐えることが可能である。
【0065】
代替実施形態では、種々の個々のマイクロセルが、反復的フォトリソグラフィを使用することによって、所望の混合物で充填され得る。このプロセスは、典型的に、空のマイクロセルのアレイをポジ型フォトレジストの層でコーティングすることと、ポジ型フォトレジストを画像様露光することによって、ある数のマイクロセルを選択的に開放することとを含み、後、フォトレジストを現像することと、開放されたマイクロセルを所望の混合物で充填することと、充填されたマイクロセルをシールプロセスによってシールすることとが、続く。これらのステップが、繰り返され、他の混合物で充填されたシールされたマイクロセルを作成し得る。この手順は、所望の比率または濃度の混合物を有するマイクロセルの大きいシートの形成を可能にする。
【0066】
マイクロセル70が充填された後、シールされたアレイは、複数の電極77を備えている電極層で積層され得る。電極層は、好ましくは、感圧接着剤、ホットメルト接着剤、または熱、湿気、または放射線硬化性接着剤であり得る接着層で電極層77を事前コーティングすることによって、有益剤に対して多孔性であり得る。積層接着剤は、後者が放射線に対して透過性である場合、上部伝導層を通したUV等の放射線によって後硬化させられ得る。他の実施形態では、複数の電極が、マイクロセルのシールされたアレイに直接接合され得る。いくつかの実施形態では、生体適合性接着剤が、次いで、アセンブリに積層される。生体適合性接着剤は、デバイスをユーザ上で移動可能な状態に保ちながら、有益剤が通過することを可能にするであろう。好適な生体適合性接着剤は、3M(Minneapolis,MN)から入手可能である。
【0067】
送達システムは、いったん構成されると、保護を提供するための剥離シートで覆われ得る。剥離シートも、接着剤を含み得る。有益剤送達システムは、可撓性であり得る。これは、それが破損することなく、ある程度まで折曲され得ること、すなわち、薄いゴムシートに類似する特性を意味する。有益剤送達システムは、自律システムであることができ、それは、ハンドバッグ等の小さい空間内で容易に輸送されることができ、動作させるための小型バッテリであり得る電力のみを必要とする。
【0068】
いくつかの実施形態では、伝導性層および電極層をシステムの両側に提供することは、必要ではないであろう。例えば、
図8に示されるように、有益剤送達システム80は、電圧源81を含み得、それは、送達システムが取り付けられる(82)表面に接地される。これは、特に、皮膚の自然コンダクタンスが接地電位を提供するために十分である薬物の経皮送達のために有用であり得る。したがって、金属材料が、シール層から除去されるであろう。それは、媒体を介して移動し得、それは、マイクロセルの反対の内側表面上に金属として堆積させられ得る。これは、
図8に示されるように、電極77のうちの少なくとも1つへの電圧の印加によって達成される。電極層が、複数の電極を備え、それによって、個々の「ピクセル」電極が、例えば、電気光学ディスプレイにおけるように行/列ドライバを用いてアドレスされ得ることを理解されたい。
【0069】
有益剤送達システムの進化した実施形態は、回路網を含み、有益剤送達システムが、スマートフォンまたはスマートウォッチ等の二次デバイス92を用いて無線でアクティブにされることを可能にするであろう。
図9に示されるように、単純なシステムが、ユーザが、電子/デジタルスイッチをアクティブにすることを可能にし、それは、電場に電子/デジタルスイッチ94を開放させ、それは、電場が送達されるようにし、それによって、シール層の金属材料の移動を引き起こし、多孔性シール層を生成し、それを通して、有益剤が、所望の表面または空間まで送達されることができ、ユーザにある用量の有益剤を与えるであろう。別の実施形態では、すなわち、
図10に示されるように、有益剤送達システムは、電極層の複数の電極を独立して制御するコントローラ104を含む。コントローラ104は、二次デバイス102から無線信号を受信することも可能であり得る。
図10の実施形態は、ユーザが、例えば、送達される有益剤のタイプおよび所望の時間における量を制御することを可能にするであろう。二次デバイス102上のアプリケーションを使用することによって、時刻に基づいて有益剤の量を修正するように有益剤送達システムをプログラムすることが可能であり得る。他の実施形態では、アプリケーションは、生体認証センサ、例えば、フィットネストラッカに動作可能に接続され、それによって、アプリケーションは、例えば、ユーザの脈拍数があらかじめ設定された閾値を超過した場合、1回分の投薬量がオフにされるようにし得る。
【0070】
図9および10の有益剤送達システムを駆動すると、NFC、Bluetooth(登録商標)、WIFI、または他の無線通信機能がオンにされ、ユーザが、所望のマイクロセルをアクティブにするために、マイクロセルを横断した印加された電圧を操作することを可能にする。アクティブ化は、有益剤送達システムが所望の表面または場所上に適用される前または後、開始されることができる。加えて、有益剤放出調節が必要であるとき、随時、達成されることができる。マイクロセルのアクティブ化は、スマートウォッチまたはスマートフォンによって制御されるので、異なるアクティブ化ステータスにおけるマイクロセルの全てに関する割合およびエリアが、把握され、それは、システムアクティブ化の時間および投与された有益剤の量を含む使用データの全てが、ユーザまたは医療提供者に利用可能となるであろうことを意味する。したがって、システムは、有益剤送達を調節するために、ユーザまたは別の人物(すなわち、医師または医療提供者)に精密な制御を提供し得る。全てのマイクロセルが、独立してアクティブにされ得るので、システムは、プログラム可能である。すなわち、所望されるとき、複数のマイクロセルの各々をアクティブにすることによって、有益剤送達全体が、プログラムされることができる。有益剤を経皮的に送達するように設計される有益剤送達システムに関して、有益剤が、ある期間にわたって放出されるように制御され得るので、皮膚炎症が、軽減されることができる。加えて、薬物送達アプリケーションでは、システムをアクティブにするために使用されるスマートデバイスが、データ共有のために医師と遠隔で通信し得るので、患者の順守が、効果的に行われることができる。
【0071】
異なる有益剤が有益剤送達システムの追加の層にそれらの有益剤を添加することによって送達され得るので、本発明がマイクロセル内の有益剤の組み合わせに限定されないことを理解されたい。
図11は、順に、基材層110と、伝導性層120と、複数のマイクロセル層135と、金属材料を備えているシール層と、接着層180と、電極層と、剥離シート115とを備えている有益剤送達システムを例示する。
図11に示されるように、有益剤が、例えば、接着層内に存在し得る。
【0072】
図11のエリアAは、複数のマイクロセル層135および接着層180の中に装填されている2つの異なる有益剤を例示している。いくつかの実施形態では、2つの有益剤は、同時に送達され得る。それらは、異なる送達プロファイルも有し得る。システムは、異なる疎水性等の異なる物理的特性を伴う異なる有益剤を送達する方法も提供する。例えば、マイクロセルの担体が極性である場合、親水性の有益剤が、高装填量でマイクロセル内に装填されることができる。本実施形態では、接着層は、疎水性の有益剤を含み得る。故に、2つの有益剤の放出プロファイルも、ほぼ独立して調節されることができる。システムは、例えば、界面活性剤、カプセル等を伴う好ましくない可溶性を伴う有益剤を安定させる問題を克服する。
【0073】
図11のエリアBは、同じ有益剤が、マイクロセルおよび接着層180の両方の中に装填されたある実施形態を図示する。有益剤の特性に応じて、方法は、有益剤送達システムの中により大量の有益剤を装填することに役立つことができ、それは、有益剤の放出量を増大させ、放出プロファイルを制御することに役立つことができる。
【0074】
図11のエリアCは、有益剤の組み合わせが、マイクロセルの中か、接着層180の中か、または両方の層の中に装填されるある実施形態を図示する。マイクロセル組成物の有益剤と接着層内の有益剤とは、同じであることも、異なることもできる。マイクロセル製剤中の有益剤の数および接着層内の有益剤の数も、同じであることも、異なることもできる。
【0075】
有益剤装填層185が、
図12に示されるように、剥離シート115に隣接して、有益剤送達システムの中に含まれることができる。有益剤装填層185内の有益剤の量およびタイプは、マイクロセル内および/または接着層内での装填から独立し得る。有益剤は、接着層のいくつかの部分のみの中に導入されることができるか、または、それは、接着層180および有益剤装填層185の両方の中に存在することができる。有益剤装填層185は、多孔性であり得る。別の例では、有益剤装填層は、シール層160と接着層180との間に位置し得る。
【0076】
有益剤送達システムは、シール層と電極層との間に配置された多孔性拡散層または率制御層も備え得る。シール層に隣接して、接着層が存在する場合、多孔性拡散層または率制御層が、接着層と電極層との間に配置され得る。多孔性拡散層または率制御層および接着層は、10-10Ohm・cm未満または10-9Ohm・cm未満の体積抵抗率を有し得る1つの層に統合され得る。すなわち、多孔性拡散層または率制御層は、シール層と電極層との間に接着接続を確立する接着層としての役割も果たし得る。多孔性拡散層または率制御層、および電極層も、1つの層に統合され得る。
【0077】
多孔性拡散層は、0.2nmより大きい平均細孔径を有し得る。率制御層は、0.2nm以下の平均細孔径を有し得る。多孔性拡散層および率制御層は、その多孔性、細孔径、層厚、化学構造、および、それが構成される材料の極性によって、有益剤の送達の率を制御し得る。したがって、例えば、シール層に隣接して、または電極層に隣接して位置付けられ、ある多孔性レベルを有するポリエチレン等の非極性ポリマーを用いて作製される率制御層が、例えば、水中で溶解性または分散性である有益剤等、比較的に極性の有益剤の送達の率を低減させ得る。加えて、低多孔性またはより大きい厚さを有する率制御層も、有益剤の送達を減速させ得る。
【0078】
上で述べられるように、有益剤送達システムの種々の層は、単層に結合または統合され得る。例えば、接着層および隣接する電極層も、1つの層に統合され得る。同じことが、多孔性拡散層または率制御層および電極層の組み合わせ、シール層および有益剤装填層の組み合わせ、有益剤装填層および率制御層の組み合わせ等に当てはまり得る。
【0079】
ある実施形態では、本発明は、有益剤送達システムを動作させる方法である。有益剤送達システムは、(a)伝導性層と、(b)複数のマイクロセルであって、各マイクロセルは、開口部を含み、担体と、有益剤とを含む複数のマイクロセルと、(c)各マイクロセルの開口部に架かり、ポリマー材料と金属材料とを備えているシール層と、(d)電極層と、(e)電圧源とを備えている。電圧源は、伝導性層および電極層に結合される。伝導性層、マイクロセル層、シール層、および電極層は、互いの上に垂直にスタックされる。マイクロセル層およびシール層は、伝導性層と電極層との間に配置される。伝導性層、マイクロセル層、シール層、および電極層は、この順序において、互いの上に垂直にスタックされ得る。代替として、電極層、マイクロセル層、シール層、および伝導性層が、この順序において、互いの上に垂直にスタックされ得る。有益剤送達システムを動作させる方法は、有益剤送達システムを提供するステップと、伝導性層と電極層との間に電圧電位差を印加し、電場を発生させるステップとを含み、電場は、伝導性層に隣接するマイクロセルの表面上への金属材料の移動を引き起こす極性を有する。シール層の金属材料の本除去は、シール層に対する多孔性を生成し、有益剤の送達を可能にする。有益剤送達システムを動作させる方法は、印加された電圧電位の選択によって、有益剤の送達の率を制御するステップをさらに含み得る。より高い電圧電位は、シール層からの金属材料の除去の率を増大させることによって、有益剤の剥離のより高い率を可能にし、その多孔性の生成の時間を短縮させる。
【0080】
(実施例-芳香剤の要求に応じた送達)
【0081】
図1Aに表され得る有益剤送達システムが、構成された。システムは、順に、基材層と、伝導性層と、複数のマイクロセルと、シール層と、接着層と、電極層とを備えた。伝導性層は、インジウムおよび酸化スズの結合体を含んだ。複数のマイクロセルは、80重量%のクエン酸トリエチル溶媒中に20重量%のサリチル酸メチル芳香剤を含む媒体組成物(または内相)を含んだ。マイクロセルは、シール層の重量比で10重量%の銀金属ナノファイバを含むポリマー組成物を使用してシールされた。銀ナノファイバは、40nmの平均直径と、15μmの平均長とを有する。
図13は、マイクロセルがシールされた後に入手された銀ナノファイバを備えているシール層の顕微鏡写真である。複数の電極を備えている多孔性電極層が、最初に、接着性組成物でコーティングされ、シール層上に積層された。伝導性層は、電極層および電圧源に電気的に接続された。40Vの電圧が、有益剤送達システムの左半分部分に4分にわたって印加された。電圧は、電極層がアノード(正極性)であり、伝導性層がカソード(負極性)であるように、印加された。7人のパネリストが、電圧の印加の前後、30cmの距離からシステムを嗅ぐことによって、システムを評価した。彼らは、以下のような4つのスケールを使用することによって、有益剤送達システムをランク付けした。
3:強力な芳香剤の匂いが、アクティブ化の前の匂いと比較して、アクティブ化の後に感知された。
2:中程度の芳香剤の匂いが、アクティブ化の前の匂いと比較して、アクティブ化の後に感知された。
1:非常にわずかな芳香剤の匂いが、アクティブ化の前の匂いと比較して、アクティブ化の後に感知された。
0:いかなる匂いの差も、アクティブ化の前の匂いと比較して、アクティブ化の後に感知されなかった。
7人のパネリストに関する平均スコアは、2.6であった。したがって、パネリストは、アクティブ化の前の匂いと比較して、アクティブ化の前の匂いと比較して、システムのアクティブ化の後、有意な芳香剤の匂いが存在したことを感知した。
【0082】
構成された有益剤送達システムの写真画像が、電場の印加の前(
図14A)および後(
図14B)に、基材層の側から入手された。
図14Bでは、送達システムの左側のみがアクティブにされた。いかなる電圧も、送達システムの右部分に印加されなかった。
図14Aの画像および
図14Bの画像の右側の両方は、基材層が、薄い黄色の色を有していることを示す。対照的に、アクティブにされたシステムの部分に対応する
図14Bの左部分は、濃い金色である。より濃い色は、アクティブにされたマイクロセルの伝導性層に隣接するマイクロセルの内側表面上に堆積させられた金属銀層によるものであった。これは、アクティブ化の前にシール層内に存在した銀ナノファイバが、シール層から移動し、カソードの近傍に金属層として堆積したことの証拠である。
【0083】
図15Aおよび15Bは、それぞれ、アクティブにされていないマイクロセルおよびアクティブにされたマイクロセルの顕微鏡写真である。より具体的に、上で説明されるような有益剤送達システムにおける電圧の印加の後、シール層が、除去され、マイクロセルの開口部から見えるマイクロセル層の顕微鏡写真が、入手された。
図15Aの画像は、アクティブにされていないマイクロセルの内側表面に対応し、
図15Bの画像は、アクティブにされたマイクロセルの内側表面に対応する。アクティブにされていない部分の場合、六角形のマイクロセルが、かろうじて可視である。対照的に、アクティブにされた部分の場合、六角形のマイクロセルは、マイクロセルの表面上の銀の堆積が、伝導性層に隣接するマイクロセルの表面とマイクロセルの壁との間のコントラストを増大させるので、明白に可視である。これは、アクティブ化の前にシール層内に存在した銀ナノファイバが、シール層から移動し、伝導性層に隣接するマイクロセルの内側表面上に堆積したことの別の強い指示である。このプロセスは、多孔性シール層を生成し、それを通して、芳香剤材料が有益剤送達システムの近傍に送達され、パネリストによって芳香剤の匂いとして検出された。
【0084】
したがって、本発明は、担体と有益剤とを含む複数のマイクロセルと、ポリマー中に金属材料を備えているシール層とを含む有益剤送達システムを提供する。システム上での電圧の印加は、シール層の金属材料の移動および多孔性シール層の生成をもたらす。シール層の多孔性は、有益剤が有益剤送達システムから送達されることを可能にする。本開示は、限定するものではなく、説明されてはいないが、当業者に自明である本発明への他の修正も、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【外国語明細書】