IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カシオ計算機株式会社の特許一覧

特開2023-171959電子管楽器及び楽音生成装置、楽音生成方法、プログラム
<>
  • 特開-電子管楽器及び楽音生成装置、楽音生成方法、プログラム 図1
  • 特開-電子管楽器及び楽音生成装置、楽音生成方法、プログラム 図2
  • 特開-電子管楽器及び楽音生成装置、楽音生成方法、プログラム 図3
  • 特開-電子管楽器及び楽音生成装置、楽音生成方法、プログラム 図4
  • 特開-電子管楽器及び楽音生成装置、楽音生成方法、プログラム 図5
  • 特開-電子管楽器及び楽音生成装置、楽音生成方法、プログラム 図6
  • 特開-電子管楽器及び楽音生成装置、楽音生成方法、プログラム 図7
  • 特開-電子管楽器及び楽音生成装置、楽音生成方法、プログラム 図8
  • 特開-電子管楽器及び楽音生成装置、楽音生成方法、プログラム 図9
  • 特開-電子管楽器及び楽音生成装置、楽音生成方法、プログラム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171959
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】電子管楽器及び楽音生成装置、楽音生成方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/00 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
G10H1/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174072
(22)【出願日】2023-10-06
(62)【分割の表示】P 2021141218の分割
【原出願日】2019-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(74)【代理人】
【識別番号】100171882
【弁理士】
【氏名又は名称】北庄 麗絵子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博之
(57)【要約】
【課題】アコースティック管楽器における演奏に、より近似した発音特性や演奏効果を再現することができる電子管楽器、及び、当該電子管楽器に適用される楽音生成装置、その制御方法、制御プログラムを提供する。
【解決手段】電子管楽器の演奏に伴う指穴スイッチの運指操作により音高が決定され、吹奏圧センサにより息の吹き込み(吹き始め)が検出されたタイミングで、当該音高に応じたノイズ音(呼気音)の発音が開始される。そして、吹奏圧センサにより検出される吹奏圧が、オン閾値以上になった場合には、ノイズ音(呼気音)の発音に並行して、当該音高に応じたピッチ音(楽音)の発音が開始される。そして、吹奏圧がオフ閾値未満になった場合には、ピッチ音(楽音)の発音を停止して、ノイズ音(呼気音)のみの発音が継続される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹奏圧を検出する吹奏圧センサと、
楽音の音高を指定するキースイッチと、
呼気音に対応する第1信号を発生させる第1音源と、
前記キースイッチにより指定された前記音高を有する前記楽音に対応する第2信号を発生させる第2音源と、
前記キースイッチへの操作に基づいて、前記第1音源による前記第1信号の発生を開始させ、前記吹奏圧センサにより検出される前記吹奏圧に基づいて、前記第2音源による前記第2信号の発生を開始させるとともに、前記吹奏圧に基づいて、前記第1信号による前記呼気音を発音させる際の音量及び前記第2信号による前記楽音を発音させる際の音量を制御する制御部と、
を備える楽音生成装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の楽音生成装置において、
前記制御部は、
前記第1音源により、前記キースイッチにより指定された前記音高に応じたノイズ音成分を有する前記第1信号を発生させるように制御する楽音生成装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の楽音生成装置において、
前記制御部は、
前記キースイッチにより前記楽音の音高が決定されたタイミングで、前記第1信号の発生を開始させるように前記第1音源を制御する楽音生成装置。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載の楽音生成装置において、
前記第1音源が発生した前記第1信号を入力し、前記呼気音が指定された音量となるように前記第1信号を調整して出力する第1音量設定部と、
前記第2音源が発生した前記第2信号を入力し、前記楽音が指定された音量となるように前記第2信号を調整して出力する第2音量設定部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1音量設定部に対して指定する音量と前記第2音量設定部に対して指定する音量とを、それぞれ異なる前記吹奏圧に基づく条件で制御する楽音生成装置。
【請求項5】
前記請求項4に記載の楽音生成装置において、
前記制御部は、
前記吹奏圧センサにより検出される前記吹奏圧に応じて、前記第1音量設定部により設定される前記呼気音の音量の変化特性と、前記第2音量設定部により設定される前記楽音の音量の変化特性とが異なるように制御する楽音生成装置。
【請求項6】
前記請求項4又は5に記載の楽音生成装置において、
前記制御部は、
前記吹奏圧センサにより検出される前記吹奏圧が予め設定された閾値未満の場合には、前記第2信号による前記楽音を発生させることなく、前記第1信号による前記呼気音のみを発生させ、
前記吹奏圧が前記閾値以上の場合には、前記第1信号による前記呼気音を発生させるとともに、前記第2信号による前記楽音を発生させ、前記第2音量設定部により前記吹奏圧に基づいて前記楽音の音量を設定するように制御する楽音生成装置。
【請求項7】
前記請求項6に記載の楽音生成装置において、
前記制御部は、
前記吹奏圧センサにより検出される前記吹奏圧が前記閾値未満の場合であっても、前記第1信号による前記呼気音が発音可能な音量に設定されるように前記第1音量設定部を制御する楽音生成装置。
【請求項8】
前記請求項6又は7に記載の楽音生成装置において、
前記制御部は、
前記吹奏圧センサにより検出される前記吹奏圧が前記閾値以上になった後、前記閾値未満になった場合には、前記第2信号による前記楽音の発音を停止するように前記第2音量設定部を制御し、前記第1信号による前記呼気音の発音を継続するように前記第1音量設定部を制御する楽音生成装置。
【請求項9】
前記請求項1乃至8のいずれかに記載の楽音生成装置と、
演奏のための息が吹き込まれるマウスピースと、
前記マウスピースに吹き込まれた息の量に応じた前記吹奏圧に基づいて、前記音量が設定された前記呼気音、又は、前記音量が設定された前記呼気音及び前記楽音が合成された楽器音を発音する発音部と、
を備える電子管楽器。
【請求項10】
吹奏圧を検出する吹奏圧センサと、楽音の音高を指定するキースイッチと、呼気音に対応する第1信号を発生させる第1音源と、前記キースイッチにより指定された前記音高を有する前記楽音に対応する第2信号を発生させる第2音源と、を有する楽音生成装置の楽音生成方法であって、
前記キースイッチへの操作に基づいて、前記第1音源による前記第1信号の発生を開始させ、前記吹奏圧センサにより検出される前記吹奏圧に基づいて、前記第2音源による前記第2信号の発生を開始させるとともに、前記吹奏圧に基づいて、前記第1信号による前記呼気音を発音させる際の音量及び前記第2信号による前記楽音を発音させる際の音量を制御する楽音生成方法。
【請求項11】
吹奏圧を検出する吹奏圧センサと、楽音の音高を指定するキースイッチと、呼気音に対応する第1信号を発生させる第1音源と、前記キースイッチにより指定された前記音高を有する前記楽音に対応する第2信号を発生させる第2音源と、を有する楽音生成装置のプログラムであって、
コンピュータに、
前記キースイッチへの操作に基づいて、前記第1音源による前記第1信号の発生を開始させ、前記吹奏圧センサにより検出される前記吹奏圧に基づいて、前記第2音源による前記第2信号の発生を開始させるとともに、前記吹奏圧に基づいて、前記第1信号による前記呼気音を発音させる際の音量及び前記第2信号による前記楽音を発音させる際の音量を制御させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子管楽器における楽音生成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アコースティック楽器の形状や演奏方法、発音特性を模した電子楽器が知られている。例えばサクソフォン等のアコースティック管楽器においては、演奏者がマウスピースに息を吹き込むことによりリードを振動させて発音させる。このとき、演奏者がキースイッチを操作することにより指定した音高の楽音が発音される前に、マウスピースに吹き込んだ息(呼気)に起因する呼気音が必ず発生する。そのため、電子楽器においても、これに近似した発音特性や演奏効果を再現する手法が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、電子楽器の楽音発生装置に関し、演奏者による息の吹き込みが開始されてから、指定された音高の楽音が発音されるまでの間は、呼気音に相当するノイズ音を発生させることが記載されている。ここでは、息の吹き込みに伴う振動信号のピッチや振幅レベルを検出して、振幅レベルが所定値以上になるとノイズ音が発音される。その後、ピッチ検出が確定されると、ノイズ音に替えて検出されたピッチ及び運指状態に基づいて決定される音高の楽音が発音される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-212578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載された楽音発生装置においては、息の吹き込みに伴う振幅レベル及びピッチの検出に基づいて、ノイズ音の発音やノイズ音から楽音への切り替えが制御されている。そのため、吹き込まれる息の量が少ない場合には、ノイズ音が発生されなかったり、ピッチが適切に検出されなかったりして、アコースティック楽器に近似した発音特性や演奏効果を再現することができない場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、アコースティック管楽器における演奏に、より近似した発音特性や演奏効果を再現することができる電子管楽器、及び、当該電子管楽器に適用される楽音生成装置、楽音生成方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る楽音生成装置は、
吹奏圧を検出する吹奏圧センサと、
楽音の音高を指定するキースイッチと、
呼気音に対応する第1信号を発生させる第1音源と、
前記キースイッチにより指定された前記音高を有する前記楽音に対応する第2信号を発生させる第2音源と、
前記キースイッチへの操作に基づいて、前記第1音源による前記第1信号の発生を開始させ、前記吹奏圧センサにより検出される前記吹奏圧に基づいて、前記第2音源による前記第2信号の発生を開始させるとともに、前記吹奏圧に基づいて、前記第1信号による前記呼気音を発音させる際の音量及び前記第2信号による前記楽音を発音させる際の音量を制御する制御部と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アコースティック管楽器における演奏に、より近似した発音特性や演奏効果を再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る電子管楽器の全体構造を示す外観図である。
図2】一実施形態に係る電子管楽器のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3】一実施形態に係る電子管楽器に適用される楽音生成方法を説明するための機能ブロック図である。
図4】一実施形態に係る電子管楽器の制御方法の一例を示すフローチャート(メインフロー)である。
図5】一実施形態に適用されるノイズ音源の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図6】一実施形態に適用されるピッチ音源の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図7】アコースティック管楽器における楽器音の一例を示す波形図である。
図8】一実施形態に係る電子管楽器の制御方法により実現される楽器音の一例を示す波形図である。
図9】一実施形態に係る電子管楽器の楽音生成方法の変形例を説明するための機能ブロック図である。
図10】一実施形態の変形例に係る電子管楽器の制御方法に適用される音量設定変換テーブルの例を示す変換特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子管楽器及び楽音生成装置、楽音生成方法並びにプログラムの実施形態について図面を参照しながら詳しく説明する。
(電子管楽器)
図1は、本発明の一実施形態に係る電子管楽器の全体構造を示す外観図である。
【0011】
本発明が適用される電子管楽器100は、例えば、図1に示すように、アコースティック管楽器のサクソフォンの形状を模した外形を有している。電子管楽器100は、管状の楽器本体1の一端側(図面上方端側)にマウスピース10が取り付けられ、他端側(図面下方端側)に楽音が放出される放音部2が設けられている。マウスピース10には、少なくとも、マウスピース10の吹込口から吹き込まれる演奏者の息の圧力(吹奏圧)を検出する吹奏圧センサが設けられている。また、楽器本体1の放音部2側の内部には、楽音を発音するスピーカ5が設けられている。楽器本体1の一側面(例えば図面右方側の側面)には、運指操作により音高を指定する複数の指穴スイッチ3が配置されている。また、楽器本体1の他の側面(例えば図面手前側の側面)には、電子管楽器100の演奏状態等を制御するための各種の操作スイッチや電源スイッチを有する操作部4が設けられている。また、図示を省略するが、楽器本体1には、マウスピース10に設けられたセンサから出力される検出信号や、指穴スイッチ3により指定される音高、操作部4から出力される制御信号に基づいて、スピーカ5から発音する楽音の音程や音量、音色等を制御する制御部が設けられている。
【0012】
図2は、本実施形態に係る電子管楽器のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
本実施形態に係る電子管楽器100は、例えば図2に示すように、CPU110と、ROM120と、RAM130と、吹奏圧センサ140と、指穴スイッチ150と、操作スイッチ160と、音源LSI170と、発音部180とを有している。これらは直接、又は、間接的にバス190に接続され、バス190を介して相互に接続されている。ここで、吹奏圧センサ140は、ADC145を介してバス190に接続され、指穴スイッチ150は、GPIO155を介してバス190に接続され、発音部180は、DAC185を介してバス190に接続されている。なお、本実施形態に示す構成は、本発明に係る電子管楽器を実現するための一例であり、この構成に限定されるものではない。
【0013】
CPU(中央演算処理装置)110は、上述した制御部に対応し、ROM120に記憶された所定のプログラムを実行することにより、次のような制御を行う。すなわち、CPU110は、指穴スイッチ150の運指操作により指定される音高の楽音を再生するように音源を制御する。また、CPU110は、演奏時に吹奏圧センサ140により検出される吹奏圧や、操作スイッチ160から出力される制御信号に基づいて、再生される楽音の音程や音量、音色等を制御する。加えて、本実施形態においては、CPU110は、吹奏圧センサ140により検出された吹奏圧に基づいて、指穴スイッチ150により指定される音高の楽音が発音される期間、及び、その前後の期間に、所定の音高及び音量を有する呼気音を発音させる制御を行う。なお、CPU110及び後述する音源LSI170において実行される楽音生成方法については、詳しく後述する。
【0014】
ROM(リードオンリーメモリ)120には、電子管楽器100の演奏時の各種動作を制御するために、CPU110により実行される制御プログラムが記憶されている。特に、本実施形態においては、後述する楽音生成方法を実現するためのアルゴリズムが組み込まれた楽音生成プログラムが記憶されている。
【0015】
また、ROM120には、後述する音源LSI170において楽音や呼気音を生成する際に用いる音源データとして、楽音を生成するためのピッチ音成分の波形データと、呼気音を生成するためのノイズ音成分の波形データとが、個別の波形テーブルの形式で記憶されている。これらの音源データは、例えばアコースティック管楽器や各種の楽器を実際に演奏した際のPCM(Pulse code modulation)録音波形から、楽音に対応するピッチ音成分の波形データと、呼気音に対応するノイズ音成分の波形データとを分離、抽出することにより取得される。ここでは、特定の音高におけるピッチ音の基本周波数とその倍音成分となる波形データを、ピッチ音成分の波形データとし、原音となるPCM録音波形から当該音高におけるピッチ音成分の波形データを差し引いた波形データを、ノイズ音成分の波形データとして、分離、抽出する。このような波形データの抽出処理は、例えば周知の周波数分析手段である櫛型フィルタを用いることにより実現される。
【0016】
RAM(ランダムアクセスメモリ)130は、電子管楽器100の演奏時にCPU110が制御プログラムを実行する際に生成されるデータや、吹奏圧センサ140により検出される吹奏圧を順次取り込んで一時保存する。なお、上述したROM120に記憶される音源データは、RAM130に保存されているものであってもよい。
【0017】
吹奏圧センサ140は、演奏者がマウスピース10を口に咥えて演奏する際に、マウスピース10の吹込口から吹き込まれた息の量に基づく吹奏圧を検出する。吹奏圧センサ140によりアナログ電圧値として検出される吹奏圧は、ADC(アナログデジタルコンバータ)145によりデジタル電圧値に変換されて、CPU110に取り込まれる。
【0018】
なお、本実施形態においては、マウスピース10又はその周辺に設けられるセンサとして吹奏圧センサ140のみを示したが、演奏時の吹奏状態を検出するための各種のセンサが設けられているものであってもよい。具体的には、演奏者が発声した音声を検出するボイスセンサや、マウスピース10のリードを噛む圧力を検出するバイトセンサ、唇の接触位置を検出するリップセンサ、リードへの舌の接触状態を検出するタンセンサ等が設けられる。
【0019】
指穴スイッチ150は、図1に示した指穴スイッチ3に対応し、演奏者の運指操作により指定された音高に応じたオン、オフ信号を出力する。このオン、オフ信号は、GPIO(General Purpose Input/Output;汎用入出力)170を介してCPU110に取り込まれる。操作スイッチ160は、図1に示した操作部4に対応し、放音部2から放出される楽音の音色や音量を設定する制御信号を出力する。この制御信号は、CPU110に取り込まれる。
【0020】
音源LSI170は、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)を有し、CPU110からの指示により、ROM120に記憶された音源データから所定の波形データを抽出して、ピッチ音成分からなる楽音とノイズ音成分からなる呼気音とが合成されたデジタル音響信号を生成する。上述したように、本実施形態においては、音源LSI170において使用される音源として、楽音に対応するピッチ音成分の波形データが記憶されたピッチ音源と、呼気音に対応するノイズ音成分の波形データが記憶されたノイズ音源とが個別に設けられている。音源LSI170は、指穴スイッチ150により指定される音高、及び、吹奏圧センサ140により取得された吹奏圧に基づいて、上記の個別の音源を用いてそれぞれ所定のタイミングで生成した楽音と呼気音の波形データを加算して、デジタル音響信号として発音部180に送出する。ここで、呼気音は、楽音の発音期間、及び、その前後を含む期間に発音されるように生成のタイミングが設定される。
【0021】
発音部180は、図1に示したスピーカ5を有し、音源LSI170により生成されたデジタル音響信号が、DAC(デジタルアナログコンバータ)によりデジタル信号からアナログ信号に変換された後、スピーカ5から所定の音量で楽器音として発音される。
【0022】
(電子管楽器の制御方法)
次に、本実施形態に係る電子管楽器における制御方法について説明する。ここで、以下に説明する電子管楽器の制御方法は、上述した電子管楽器100のCPU110及び音源LSI170において、特定のアルゴリズムが組み込まれた楽音生成プログラムを実行することにより実現される楽音生成方法を含むものである。
【0023】
図3は、本実施形態に係る電子管楽器に適用される楽音生成方法を説明するための機能ブロック図である。また、図4は、本実施形態に係る電子管楽器の制御方法の一例を示すフローチャート(メインフロー)である。図5は、本実施形態に適用されるノイズ音源の制御方法の一例を示すフローチャートであり、図6は、本実施形態に適用されるピッチ音源の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【0024】
本実施形態に係る電子管楽器100においては、図3に示す機能ブロックを有する楽音生成装置により、後述する楽音生成処理が実行される。本実施形態に係る楽音生成装置には、各音高に対応するピッチ音成分の波形データが記憶された楽音PCM音源224を有するピッチ音源と、各音高に対応するノイズ音成分の波形データが記憶された呼気音PCM音源214を有するノイズ音源とが個別に設けられている。
【0025】
また、楽音生成装置には、指穴スイッチ150から出力されるオン、オフ信号に基づいて、ソフトウェア的に構成された指穴スイッチ-ピッチ変換器210により、発音する楽音の音高情報である発音ピッチを取得する運指検出手段が設けられている。ここで、指穴スイッチ-ピッチ変換器210は、指穴スイッチ150から出力されるオン、オフ信号に対して、どの音を発生するかを一義的に決定する対照テーブル(ウェーブテーブル)を参照することにより、発音ピッチを決定する。この発音ピッチは、ピッチ信号としてノイズ音源に直接送出されるとともに、ソフトウェア的に構成された閾値回路220を介してピッチ音源に送出される。
【0026】
ノイズ音源においては、運指検出手段からピッチ信号が送出されたタイミングで、当該ピッチ信号に基づいて、呼気音に対応するノイズ音(ノイズ音成分の波形データの信号;第1信号)が直ちに生成される。一方、ピッチ音源においては、閾値回路220からピッチ信号が送出されたタイミングで、楽音に対応するピッチ音(ピッチ音成分の波形データの信号;第2信号)が生成される。ここで、閾値回路220は、運指検出手段から送出されたピッチ信号を一時保存するとともに、吹奏圧センサ140により検出される吹奏圧を、予め設定された閾値(オン閾値、オフ閾値)と比較して、その比較結果に基づいて、当該ピッチ信号をピッチ音源に出力するか否かを決定する。
【0027】
ここで、本実施形態(図3)においては、運指検出手段から送出されるピッチ信号が、ノイズ音源及びピッチ音源において、音高を指定する役割と、ノイズ音やピッチ音を発生させるタイミングを指定する役割との両方を有している場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、ノイズ音源及びピッチ音源の各音源に対して、音高を指定する信号と、ノイズ音やピッチ音を発生させるタイミングを指定する信号とを別々に入力するものであってもよい。
【0028】
ノイズ音源において生成されたノイズ音、及び、ピッチ音源において生成されたピッチ音は、それぞれ乗算器216、226により、吹奏圧センサ140により検出される吹奏圧に応じた音量に設定される。音量が設定されたノイズ音とピッチ音は加算されて、楽器音として発音部180から発音される。ここで、乗算器216、226は、例えば、吹奏圧センサ140により検出される吹奏圧が高くなるほど、ノイズ音及びピッチ音の音量が線形的(リニア)に大きくなるように設定する。この吹奏圧に対するノイズ音及びピッチ音の音量を設定する際の変化特性は、同一の線形性を有するものであってもよいし、異なる線形性を有するものであってもよい。また、乗算器216、226は、吹奏圧が「0」の状態(すなわち、マウスピース10に息が吹き込まれていない状態)では、ノイズ音及びピッチ音の音量を「0」に設定して、実質的に発音を停止させる。
【0029】
以下、図3の機能ブロック、及び、図4図6のフローチャートを参照しながら、本実施形態に係る電子管楽器の制御方法(楽音生成方法)について具体的に説明する。
電子管楽器の制御方法においては、図4のフローチャートに示すように、まず、CPU110は、演奏者による電子管楽器100の演奏に先立って、RAM130の一時保存データを消去して初期化する(ステップS102)。その後、演奏者が指穴スイッチ150を操作して所望の音高を指定すると、CPU110は、GPIO155を介して、指穴スイッチ150のオン、オフ信号を読み込む(ステップS104)。CPU110は、読み込んだ指穴スイッチ150のオン、オフ信号に基づいて、指穴スイッチ-ピッチ変換器210により、発音する楽音の発音ピッチ(音高情報)を取得する(ステップS106)。取得された発音ピッチは、ピッチ信号としてノイズ音源に直接送出されるとともに、閾値回路220にも送出されて一時保存される。
【0030】
一方、演奏者が指穴スイッチ150を操作するタイミングに合わせて、マウスピース10の吹込口から息を吹き込むと、CPU110は、吹奏圧センサ140により検出された吹奏圧に対応した電圧値を、ADC145を介して読み込む(ステップS108)。
【0031】
次いで、CPU110は、音源LSI170によりノイズ音源及びピッチ音源を制御して、次のようなノイズ音源制御処理(ステップS110)及びピッチ音源制御処理(ステップS112)を並行して実行する。
【0032】
ノイズ音源制御処理においては、図5のフローチャートに示すように、CPU110は、まず、ステップS106において取得された今回の発音ピッチが、前回の発音ピッチと同じか否かを判定する(ステップS202)。今回の発音ピッチが前回と同じではない場合(ステップS202のNo)には、CPU110からの指示により音源LSI170は、一時保存されている前回の発音開始アドレスをリセットする(ステップS204)。その後、音源LSI170は、ソフトウェア的に構成されたピッチ-アドレス発生器212を用いて、指穴スイッチ-ピッチ変換器210からピッチ信号として出力される今回の発音ピッチに応じた発音開始アドレスを演算する(ステップS206)。ここで、発音開始アドレスは、各音高に対応するノイズ音成分の波形データが記憶された呼気音PCM音源214において、指穴スイッチ-ピッチ変換器210からピッチ信号として出力される発音ピッチに応じたノイズ音成分の波形データを抽出する際の、記憶領域のアドレスである。
【0033】
次いで、音源LSI170は、演算された発音開始アドレスに基づいて、呼気音PCM音源214から再生する呼気音に対応するノイズ音成分の波形データを読み込む(ステップS208)。一方、ステップS202において、今回の発音ピッチが前回と同じである場合(ステップS202のYes)には、音源LSI170は、一時保存されている前回の発音ピッチに応じた発音開始アドレスに基づいて、呼気音PCM音源214から再生する呼気音に対応するノイズ音成分の波形データを読み込む(ステップS208)。
【0034】
次いで、音源LSI170は、乗算器216により、呼気音PCM音源214から読み込まれたノイズ音成分の波形データに、ステップS108において吹奏圧センサ140により検出された吹奏圧に応じた値(音量設定値)を乗算させて、呼気音演算波形データを生成する(ステップS210)。その後、音源LSI170は、ノイズ音源制御処理を終了して、図4に示したメインフローに戻る。
【0035】
これにより、運指操作により指定された音高に基づく発音ピッチが決定されてピッチ信号として送出されると、当該音高に応じたノイズ音成分を有する呼気音が直ちに生成されるとともに、当該呼気音がマウスピース10に吹き込まれた息の量(吹奏圧)に応じた音量に設定される。
【0036】
また、ピッチ音源制御処理においては、図6のフローチャートに示すように、CPU110は、まず、電子管楽器100が演奏に伴う楽音に対応するピッチ音を発音している状態(発音状態がオン)にあるか否かを判定する(ステップS302)。発音状態がオフの場合(ステップS302のNo)には、CPU110からの指示により音源LSI170は、閾値回路220により、ステップS108において吹奏圧センサ140により検出された吹奏圧(図6中では「センサ出力」と表記)を、予め設定されたオン閾値と比較する(ステップS304)。吹奏圧センサ140により検出された吹奏圧がオン閾値未満である場合(ステップS304のNo)には、音源LSI170は、楽音に対応するピッチ音を生成することなく、楽音の音量を規定する値を「0」に設定した後(ステップS326)、ピッチ音源制御処理を終了して、図4に示したメインフローに戻る。
【0037】
一方、吹奏圧センサ140により検出された吹奏圧がオン閾値以上である場合(ステップS304のYes)には、音源LSI170は、一時保存されている前回の発音開始アドレスをリセットし(ステップS306)、CPU110は、電子管楽器100の発音状態をオンに設定する(ステップS308)。その後、音源LSI170は、ソフトウェア的に構成されたピッチ-アドレス発生器222を用いて、指穴スイッチ-ピッチ変換器210からピッチ信号として出力された今回の発音ピッチに応じた発音開始アドレスを演算する(ステップS310)。ここで、ステップS106において取得された今回の発音ピッチは、上述したように、ピッチ信号として閾値回路220に送出されて一時保存され、閾値回路220における比較処理(ステップS304)の結果に応じてピッチ-アドレス発生器222に出力される。また、発音開始アドレスは、各音高に対応するピッチ音成分の波形データが記憶された楽音PCM音源224において、指穴スイッチ-ピッチ変換器210からピッチ信号として出力される発音ピッチに応じたピッチ音成分の波形データを抽出する際の、記憶領域のアドレスである。
【0038】
次いで、音源LSI170は、演算された発音開始アドレスに基づいて、楽音PCM音源224から再生する楽音に対応するピッチ音成分の波形データを読み込む(ステップS312)。次いで、音源LSI170は、乗算器226により、楽音PCM音源224から読み込まれたピッチ音成分の波形データに、ステップS108において吹奏圧センサ140により検出された吹奏圧に応じた値(音量設定値)を乗算させて、楽音演算波形データを生成する(ステップS314)。その後、音源LSI170は、ピッチ音源制御処理を終了して、図4に示したメインフローに戻る。
【0039】
これにより、電子管楽器100が楽音を発音していない状態では、演奏者がマウスピース10に吹き込んだ息の量(吹奏圧)が所定の閾値(オン閾値)以上になるタイミングで、運指操作により指定した音高に応じたピッチ音成分を有する楽音の生成が開始される。また、このとき、当該楽音がマウスピース10に吹き込まれた息の量(吹奏圧)に応じた音量に設定される。
【0040】
また、ステップS302において、電子管楽器100の発音状態がオンの場合(ステップS302のYes)には、CPU110からの指示により音源LSI170は、閾値回路220により、吹奏圧センサ140により検出された吹奏圧を、予め設定されたオフ閾値と比較する(ステップS322)。ここで、オフ閾値は、上記のオン閾値と同一であってもよいし、異なる値に設定されているものであってもよい。吹奏圧センサ140により検出された吹奏圧がオフ閾値未満である場合(ステップS322のYes)には、CPU110は、発音状態をオフに設定する(ステップS324)。そして、音源LSI170は、楽音に対応するピッチ音を生成することなく、楽音の音量を規定する値を「0」に設定した後(ステップS326)、ピッチ音源制御処理を終了して、図4に示したメインフローに戻る。
【0041】
一方、吹奏圧センサ140により検出された吹奏圧がオフ閾値以上である場合(ステップS322のNo)には、音源LSI170は、現在の発音状態で使用されている発音ピッチに応じた発音開始アドレスに基づいて、楽音PCM音源224からピッチ音成分の波形データを読み込む(ステップS312)。次いで、音源LSI170は、読み込まれたピッチ音成分の波形データに、吹奏圧センサ140により検出された吹奏圧に応じた値(音量設定値)を乗算させて、楽音演算波形データを生成する(ステップS314)。その後、音源LSI170は、ピッチ音源制御処理を終了して、図4に示したメインフローに戻る。
【0042】
これにより、電子管楽器100が楽音を発音している状態で、演奏者がマウスピース10に吹き込んだ息の量(吹奏圧)が所定の閾値(オフ閾値)以上である場合には、運指操作により指定した音高に応じた楽音を生成する処理、及び、当該楽音を吹き込んだ息の量(吹奏圧)に応じた音量に設定する処理が継続される。すなわち、現在の楽音を発音する発音状態が維持される。また、電子管楽器100が発音している状態で、吹き込んだ息の量(吹奏圧)が所定の閾値(オフ閾値)未満になると、楽音の発音が停止される。
【0043】
次いで、図4に示したメインフローに戻って、音源LSI170は、上述したノイズ音源制御処理(ステップS110)により生成された呼気音演算波形データと、ピッチ音源制御処理(ステップS112)により生成された楽音演算波形データとを加算して、デジタル音響信号として出力する。そして、CPU110は、音源LSI170から出力されたデジタル音響信号を、DAC185を介してアナログ信号に変換し、発音部180から発音させる(ステップS114)。これにより、運指操作により指定された音高に応じたノイズ音成分を有する呼気音とピッチ音成分を有する楽音とが合成された楽器音が、マウスピース10に吹き込んだ息の量(吹奏圧)に応じた音量に制御されてスピーカ5から発音される。
【0044】
以下、CPU110及び音源LSI170が、上述したノイズ音源制御処理及びピッチ音源制御処理を含むステップS104~S114の処理を繰り返し実行することにより、楽器音がスピーカ5から連続的に発音されて楽曲が演奏される。なお、図4に示したフローチャートにおいては図示を省略したが、CPU110は、上述した一連の処理動作(ステップS102~S114)の実行中に、演奏が中断又は終了する状態の変化を検出した場合や、プログラム実行中の異常が発生した場合等には、処理動作を強制的に終了する。
【0045】
次に、本実施形態に係る電子管楽器の制御方法(楽音生成方法)により実現される楽器音について具体的に説明する。
図7は、アコースティック管楽器における楽器音の一例を示す波形図であり、図8は、本実施形態に係る電子管楽器の制御方法(楽音生成方法)により実現される楽器音(呼気音と楽音との合成波形)の一例を示す波形図である。
【0046】
まず、アコースティック管楽器における楽器音について説明する。アコースティック管楽器を演奏するために、演奏者がマウスピースから息を吹き込むと、図7に示すように、最初は息が弱い状態(すなわち、息の量が少なく吹奏圧が低い状態)であるため、息を吹き込む際の呼気音のみが発生する(時刻t1~)。次いで、息が強く吹き込まれた状態(すなわち、息の量が多くなり吹奏圧が高い状態)になると、マウスピースのリードが振動して演奏者が指穴スイッチにより指定した音高の楽音が発生する(時刻t2~)。そして、吹き込む息が次第に弱く(すなわち、息の量が少なくなって吹奏圧が低い状態に)なると、楽音が途絶えて呼気音のみが残り(時刻t3~)、最終的には呼気音も途絶えて消音する(時刻t4)。
【0047】
ここで、アコースティック管楽器においては、マウスピースに息をゆっくり吹き込めば、呼気音が長く発生してから楽音が鳴り始める。これに対して、息を強く吹き込めば呼気音が短く発生してから楽音が鳴り始めることになる。すなわち、演奏者がマウスピースに息を吹き込んでから、指穴スイッチにより指定した音高の楽音が発生するまでにタイムラグ(遅延)が必然的に生じる。そのため、演奏者は、演奏する楽曲に合わせて楽音を発生させるために、音高を指定する運指操作とマウスピースへの息の吹き始めのタイミングを楽音の発生タイミングよりも早くするように演奏を行う必要がある。
【0048】
このように、アコースティック管楽器においては、演奏のタイミングや状態によって呼気音と楽音の発音タイミングが異なる。また、アコースティック管楽器において、マウスピースに息を吹き込んでいる状態では常に呼気音が発生しているので、人間が聴覚を介して認識する楽器音というのは、指穴スイッチにより指定された音高の楽音と呼気音とが混合した音ということになる。
【0049】
そこで、本実施形態においては、上述したように、音源データとして、例えばアコースティック管楽器を実際に演奏した際のPCM録音波形から、楽音に対応するピッチ音成分の波形データと、呼気音に対応するノイズ音成分の波形データとを分離、抽出して、それぞれの波形データを個別に記憶した音源(ピッチ音源、ノイズ音源)を備えている。
【0050】
加えて、本実施形態においては、上述した楽音生成方法を実行することにより、図8に示すように、演奏時の指穴スイッチ150の運指操作により音高が決定されたタイミング(図中(a))で、ノイズ音源から当該音高に応じた波形データが抽出されて呼気音に対応するノイズ音が生成される。生成されたノイズ音は、吹奏圧センサ140により検出される吹奏圧に応じた音量に設定されて発音部180から発音される(図中(b):時刻t11~)。
【0051】
吹奏圧センサ140により検出される吹奏圧が所定のオン閾値以上となる範囲(図中(c);発音可能ブレス域)では、ピッチ音源から当該音高に応じた波形データが抽出されて楽音に対応するピッチ音が生成される。このとき、ノイズ音源においては呼気音に対応するノイズ音が継続して生成される。これらのピッチ音及びノイズ音は、吹奏圧センサ140により検出される吹奏圧に応じた音量に設定された後、加算されて、ピッチ音とノイズ音とが合成された楽器音が発音部180から発音される(図中(b)、(d):時刻t12~t13)。
【0052】
そして、楽音に対応するピッチ音が発音されている状態で、吹奏圧センサ140により検出される吹奏圧が所定のオフ閾値未満になると、ピッチ音の生成が停止されて、ノイズ音のみが継続して生成される。このノイズ音は、吹奏圧センサ140により検出される吹奏圧に応じた音量に設定されて発音部180から発音される(図中(b):時刻t13~)。
【0053】
これにより、図7に示したようなアコースティック管楽器における楽器音と同様に、少なくとも楽音に対応するピッチ音が発音される期間の前後に、呼気音に対応するノイズ音が発音される波形モデルが再現される(図中(e))。
【0054】
ここで、図8(a)、(b)、(e)に示したように、呼気音に対応するノイズ音は、指穴スイッチ150の運指操作により音高(ピッチ)が決定されたタイミングで直ちに発音が開始される。そのため、音源LSI170は、吹奏圧センサ140により検出される吹奏圧が極めて小さい値であっても、指定された音高に応じたノイズ音が発音部180から発音されるように、ノイズ音源におけるノイズ音の生成処理、及び、乗算器216における音量設定処理が制御される。このように、吹奏圧がゼロ近辺の極めて小さい状態においては、一般に、吹奏圧センサ140における検出性能に起因するアナログノイズ成分が相対的に大きい状態となり、この成分が発音部180から発音されるノイズ音に含まれることになる。本発明においては、吹奏圧が極めて小さい状態においてもノイズ音を発生させることが目的の一つでもあるので、このようなアナログノイズ成分も、より効果的なノイズ音を発音させるうえで有効に寄与する。
【0055】
上述したように、本実施形態においては、電子管楽器の演奏に伴う指穴スイッチの運指操作により音高が決定され、吹奏圧センサにより息の吹き込み(吹き始め)が検出されたタイミングで、当該音高に応じたノイズ音(呼気音)の発音が開始される。このとき、吹奏圧センサにより検出される吹奏圧が、予め設定されたオン閾値未満の場合には、ノイズ音の音量が吹奏圧に応じて線形的に制御される。そして、吹奏圧がオン閾値以上になった場合には、ノイズ音(呼気音)の発音に並行して、当該音高に応じたピッチ音(楽音)の発音が開始されるとともに、その際の吹奏圧に応じてピッチ音及びノイズ音の音量が線形的に制御される。そして、吹奏圧がオフ閾値未満になった場合には、ピッチ音(楽音)の発音を停止して、ノイズ音(呼気音)のみの発音が継続される。
【0056】
これにより、本実施形態においては、アコースティック管楽器の演奏時における呼気音から楽音を発音するまで、及び、楽器音の発音中から楽音が途絶え呼気音のみが発音されるまで、のそれぞれの遷移に対して、より近似する発音特性や演奏効果を再現することができ、実際のアコースティック管楽器に近似する演奏感を有する電子楽器を実現することができる。
【0057】
なお、本実施形態においては、指穴スイッチの運指操作により指定される音高に応じたノイズ音(すなわち、ピッチ音成分を有する呼気音)を生成させる手法として、予め各音高におけるノイズ音成分の波形データをノイズ音源として記憶しておき、指定された音高に応じた波形データを抽出する手法を示した。本発明はこれに限定されるものではなく、例えばノイズ音源にノイズ音成分の基本となる波形データを記憶しておき、指定された音高に応じた周波数特性を有するバンドパスフィルタを用いて当該波形データの周波数帯域を制限することにより、音高に応じたノイズ音を生成するものであってもよい。この場合においても、指定された音高に応じたノイズ音(呼気音)を発音させることができ、実際のアコースティック管楽器に近似する発音特性や演奏効果を再現することができる。
【0058】
(変形例)
次に、上述した実施形態の変形例について説明する。
図9は、本実施形態に係る電子管楽器の楽音生成方法の変形例を説明するための機能ブロック図であり、図10は、本実施形態の変形例に係る電子管楽器の制御方法(楽音生成方法)に適用される音量設定変換テーブルの例を示す変換特性図である。
【0059】
上述した実施形態においては、図3に示した乗算器216、226において、吹奏圧センサ140により検出される吹奏圧が高くなるほど、呼気音に対応するノイズ音、及び、楽音に対応するピッチ音の音量が大きくなるように線形的(リニア)に制御する場合について説明した。本実施形態の変形例においては、吹奏圧に対するノイズ音の音量の設定が、非線形的な変換特性に基づいて制御される。すなわち、吹奏圧に対する呼気音の音量を設定する際の変化特性(非線形的)が、楽音の音量を設定する際の変化特性(線形的)とは異なるように設定されている。
【0060】
本変形例においては、例えば図9に示すように、上述した実施形態に示した楽音生成装置(図3の機能ブロック)において、吹奏圧センサ140により検出された吹奏圧が音量制御部230を介して、ノイズ音源側の乗算器216に入力される。音量制御部230は、吹奏圧センサ140により検出される吹奏圧に対して、非線形の変換特性を有する音量設定変換テーブルを参照して、音量設定値を抽出、設定する。乗算器216は、ノイズ音源において生成されたノイズ音に、この非線形性を有する音量設定値を乗算することによりノイズ音の音量を設定する。一方、乗算器226は、上述した実施形態と同様に、ピッチ音源において生成されたピッチ音に、吹奏圧に対して線形性を有する音量設定値を乗算することによりピッチ音の音量を設定する。
【0061】
ここで、音量制御部230は、例えば図10(a)、(b)に示すような、カーブ特性を有する音量設定変換テーブルを備えている。図10(a)に示す音量設定変換テーブルは、マウスピース10への息の吹き始め(吹奏圧「0」の状態)から、例えば上述した閾値回路220に設定されるオン閾値THon付近までは、吹奏圧に対する音量設定値の変換特性が略線形性を有している。一方、楽音に対応するピッチ音が発音されるオン閾値THon以上の吹奏圧の範囲では、オン閾値THon付近の音量設定値(上限値)に収束する変換特性を有している。これにより、楽音に対応するピッチ音が発音されるまでは、吹奏圧に応じてノイズ音の音量が線形的に変化し、ピッチ音が発音された後には、ノイズ音の音量が一定に抑えられるので、ピッチ音(楽音)が相対的に強調されて、アコースティック管楽器に近似する発音特性や演奏効果を再現することができる。
【0062】
また、図10(b)に示す音量設定変換テーブルは、図10(a)と同様に、息の吹き始めからオン閾値THon付近までは、変換特性が略線形性を有し、オン閾値THon以上の吹奏圧の範囲では、音量設定値が小さくなる、又は、オン閾値THon付近よりも小さい音量設定値(下限値)に収束する変換特性を有している。これにより、ピッチ音が発音された後には、ノイズ音の音量が低く抑えられるので、ピッチ音(楽音)が相対的により強調される。一般に、アコースティック管楽器の楽器音に対して、人間の聴覚はピッチ音が大きくなるとノイズ音が相対的に小さくなるように認識する。したがって、図10(b)に示す音量設定変換テーブルを適用した場合には、アコースティック管楽器により近似する発音特性や演奏効果を再現することができる。
【0063】
図10(a)、(b)に示したような音量設定変換テーブルは、例えばアコースティック管楽器を実際に演奏した際の、ノイズ音成分の相対的な音量変化の傾向に近似するカーブ特性に基づいて作成される。なお、本変形例に係る音量制御部230は、例えば変換特性が異なる音量設定変換テーブルを複数備え、演奏者が操作スイッチ160等を操作することにより、音量設定変換テーブルを任意に切り替えたり、変換特性を調整したりすることができるものであってもよい。
【0064】
また、上述した実施形態においては、電子管楽器100の演奏時における息の吹き始めから楽音の発音までの間に、指穴スイッチ150の運指操作により指定される音高に応じたノイズ音(呼気音)を発音する場合について説明した。本実施形態の他の変形例においては、ノイズ音に加え、指穴スイッチ150の操作音を発音させる制御を行う。一般に、アコースティック管楽器において運指操作により音高を指定する際には、指穴スイッチの操作音(「カタカタ」や「カチカチ」等の機械音)が発生する。そこで、本変形例においては、予め録音された、或いは、生成された指穴スイッチの操作音を記憶しておき、指穴スイッチ150の操作タイミングに同期させて、当該操作音を発生させた後、上述した楽音生成方法によりノイズ音やピッチ音を発生させる。これにより、実際のアコースティック管楽器に近似する演奏感を有する電子楽器を実現することができる。
【0065】
なお、上述した実施形態においては、一連の楽音生成処理を音源LSI170により実行する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、音源LSI170と同等の機能を備えたCPU110により楽音生成処理を実行するものであってもよい。
【0066】
また、上述した実施形態及び変形例においては、ノイズ音源により生成されたノイズ音を、乗算器216により吹奏圧に応じた音量に設定する際の変化特性として、吹奏圧の変化に対して音量設定値が線形性や非線形性(カーブ特性)を有して連続的に変化する場合について説明した。本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、吹奏圧の変化に対して音量設定値が段階的に変化するものであってもよい。その場合、例えば、吹奏圧がオン閾値未満の場合にはノイズ音の発音が可能な、比較的小さい一定の音量に設定され、オン閾値以上の場合には比較的大きい音量であって、かつ、吹奏圧に応じた音量に設定されるものであってもよい。
【0067】
また、上述した実施形態においては、サクソフォン型の外形を有する電子管楽器100を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明は、演奏時の呼気の吹奏圧を検出して、発音される楽音の音量を制御する構成を有する電子楽器であれば、クラリネット型やトランペット型等の他のアコースティック管楽器を模したものであってもよい。
【0068】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とを含むものである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0069】
(付記)
[1]
吹奏圧を検出する吹奏圧センサと、
楽音の音高を指定するキースイッチと、
呼気音に対応する第1信号を発生させる第1音源と、
前記キースイッチにより指定された前記音高を有する前記楽音に対応する第2信号を発生させる第2音源と、
前記キースイッチへの操作に基づいて、前記第1音源による前記第1信号の発生を開始させ、前記吹奏圧センサにより検出される前記吹奏圧に基づいて、前記第2音源による前記第2信号の発生を開始させるとともに、前記吹奏圧に基づいて、前記第1信号による前記呼気音を発音させる際の音量及び前記第2信号による前記楽音を発音させる際の音量を制御する制御部と、
を備える楽音生成装置。
【0070】
[2]
前記[1]に記載の楽音生成装置において、
前記制御部は、
前記第1音源により、前記キースイッチにより指定された前記音高に応じたノイズ音成分を有する前記第1信号を発生させるように制御する楽音生成装置。
【0071】
[3]
前記[1]又は[2]に記載の楽音生成装置において、
前記制御部は、
前記キースイッチにより前記楽音の音高が決定されたタイミングで、前記第1信号の発生を開始させるように前記第1音源を制御する楽音生成装置。
【0072】
[4]
前記[1]乃至[3]のいずれかに記載の楽音生成装置において、
前記第1音源が発生した前記第1信号を入力し、前記呼気音が指定された音量となるように前記第1信号を調整して出力する第1音量設定部と、
前記第2音源が発生した前記第2信号を入力し、前記楽音が指定された音量となるように前記第2信号を調整して出力する第2音量設定部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1音量設定部に対して指定する音量と前記第2音量設定部に対して指定する音量とを、それぞれ異なる前記吹奏圧に基づく条件で制御する楽音生成装置。
【0073】
[5]
前記[4]に記載の楽音生成装置において、
前記制御部は、
前記吹奏圧センサにより検出される前記吹奏圧に応じて、前記第1音量設定部により設定される前記呼気音の音量の変化特性と、前記第2音量設定部により設定される前記楽音の音量の変化特性とが異なるように制御する楽音生成装置。
【0074】
[6]
前記[4]又は[5]に記載の楽音生成装置において、
前記制御部は、
前記吹奏圧センサにより検出される前記吹奏圧が予め設定された閾値未満の場合には、前記第2信号による前記楽音を発生させることなく、前記第1信号による前記呼気音のみを発生させ、
前記吹奏圧が前記閾値以上の場合には、前記第1信号による前記呼気音を発生させるとともに、前記第2信号による前記楽音を発生させ、前記第2音量設定部により前記吹奏圧に基づいて前記楽音の音量を設定するように制御する楽音生成装置。
【0075】
[7]
前記[6]に記載の楽音生成装置において、
前記制御部は、
前記吹奏圧センサにより検出される前記吹奏圧が前記閾値未満の場合であっても、前記第1信号による前記呼気音が発音可能な音量に設定されるように前記第1音量設定部を制御する楽音生成装置。
【0076】
[8]
前記[6]又は[7]に記載の楽音生成装置において、
前記制御部は、
前記吹奏圧センサにより検出される前記吹奏圧が前記閾値以上になった後、前記閾値未満になった場合には、前記第2信号による前記楽音の発音を停止するように前記第2音量設定部を制御し、前記第1信号による前記呼気音の発音を継続するように前記第1音量設定部を制御する楽音生成装置。
【0077】
[9]
前記[1]乃至[8]のいずれかに記載の楽音生成装置と、
演奏のための息が吹き込まれるマウスピースと、
前記マウスピースに吹き込まれた息の量に応じた前記吹奏圧に基づいて、前記音量が設定された前記呼気音、又は、前記音量が設定された前記呼気音及び前記楽音が合成された楽器音を発音する発音部と、
を備える電子管楽器。
【0078】
[10]
吹奏圧を検出する吹奏圧センサと、楽音の音高を指定するキースイッチと、呼気音に対応する第1信号を発生させる第1音源と、前記キースイッチにより指定された前記音高を有する前記楽音に対応する第2信号を発生させる第2音源と、を有する楽音生成装置の楽音生成方法であって、
前記キースイッチへの操作に基づいて、前記第1音源による前記第1信号の発生を開始させ、前記吹奏圧センサにより検出される前記吹奏圧に基づいて、前記第2音源による前記第2信号の発生を開始させるとともに、前記吹奏圧に基づいて、前記第1信号による前記呼気音を発音させる際の音量及び前記第2信号による前記楽音を発音させる際の音量を制御する楽音生成方法。
【0079】
[11]
吹奏圧を検出する吹奏圧センサと、楽音の音高を指定するキースイッチと、呼気音に対応する第1信号を発生させる第1音源と、前記キースイッチにより指定された前記音高を有する前記楽音に対応する第2信号を発生させる第2音源と、を有する楽音生成装置のプログラムであって、
コンピュータに、
前記キースイッチへの操作に基づいて、前記第1音源による前記第1信号の発生を開始させ、前記吹奏圧センサにより検出される前記吹奏圧に基づいて、前記第2音源による前記第2信号の発生を開始させるとともに、前記吹奏圧に基づいて、前記第1信号による前記呼気音を発音させる際の音量及び前記第2信号による前記楽音を発音させる際の音量を制御させるプログラム。
【符号の説明】
【0080】
10 マウスピース
100 電子管楽器
110 CPU(制御部)
140 吹奏圧センサ
150 指穴スイッチ(キースイッチ)
160 操作スイッチ
170 音源LSI(制御部)
180 発音部
190 バス
210 指穴スイッチ-ピッチ変換器
212 ピッチ-アドレス発生器
214 呼気音PCM音源(第1音源)
216 乗算器(第1音量設定部)
220 閾値回路
222 ピッチ-アドレス発生器
224 楽音PCM音源(第2音源)
226 乗算器(第2音量設定部)
230 音量制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-11-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明に係る楽音生成装置は、
吹奏圧を検出する吹奏圧センサと、
楽音の音高を指定するキースイッチと、
呼気音に対応する第1信号を発生させる第1音源と、
前記キースイッチにより指定された前記音高を有する前記楽音に対応する第2信号を発生させる第2音源と、
前記吹奏圧が閾値未満の場合、前記第2信号による前記楽音を発生させることなく、前記第1信号による前記呼気音のみを吹奏圧に応じた音量で発生させ、前記吹奏圧が前記閾値以上の場合には、前記第2信号による楽音を発生させるとともに、前記第1信号による呼気音を一定の音量で発生させる制御部と、
を備える。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹奏圧を検出する吹奏圧センサと、
楽音の音高を指定するキースイッチと、
呼気音に対応する第1信号を発生させる第1音源と、
前記キースイッチにより指定された前記音高を有する前記楽音に対応する第2信号を発生させる第2音源と、
前記吹奏圧が閾値未満の場合、前記第2信号による前記楽音を発生させることなく、前記第1信号による前記呼気音のみを吹奏圧に応じた音量で発生させ、前記吹奏圧が前記閾値以上の場合には、前記第2信号による楽音を発生させるとともに、前記第1信号による呼気音を一定の音量で発生させる制御部と、
を備える楽音生成装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の楽音生成装置において、
前記制御部は、
前記第1音源により、前記キースイッチにより指定された前記音高に応じたノイズ音成分を有する前記第1信号を発生させるように制御する楽音生成装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の楽音生成装置において、
前記制御部は、
前記キースイッチにより前記楽音の音高が決定されたタイミングで、前記第1信号の発生を開始させるように前記第1音源を制御する楽音生成装置。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載の楽音生成装置において、
前記第1音源が発生した前記第1信号を入力し、前記呼気音が指定された音量となるように前記第1信号を調整して出力する第1音量設定部と、
前記第2音源が発生した前記第2信号を入力し、前記楽音が指定された音量となるように前記第2信号を調整して出力する第2音量設定部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1音量設定部に対して指定する音量と前記第2音量設定部に対して指定する音量とを、それぞれ異なる前記吹奏圧に基づく条件で制御する楽音生成装置。
【請求項5】
前記請求項4に記載の楽音生成装置において、
前記制御部は、
前記吹奏圧センサにより検出される前記吹奏圧に応じて、前記第1音量設定部により設定される前記呼気音の音量の変化特性と、前記第2音量設定部により設定される前記楽音の音量の変化特性とが異なるように制御する楽音生成装置。
【請求項6】
前記請求項4又は5に記載の楽音生成装置において、
前記制御部は、
前記吹奏圧が前記閾値以上の場合には、前記第2音量設定部により前記吹奏圧に基づいて前記楽音の音量を設定するように制御する楽音生成装置。
【請求項7】
前記請求項6に記載の楽音生成装置において、
前記制御部は、
前記吹奏圧センサにより検出される前記吹奏圧が前記閾値未満の場合であっても、前記第1信号による前記呼気音が発音可能な音量に設定されるように前記第1音量設定部を制御する楽音生成装置。
【請求項8】
前記請求項6又は7に記載の楽音生成装置において、
前記制御部は、
前記吹奏圧センサにより検出される前記吹奏圧が前記閾値以上になった後、前記閾値未満になった場合には、前記第2信号による前記楽音の発音を停止するように前記第2音量設定部を制御し、前記第1信号による前記呼気音の発音を継続するように前記第1音量設定部を制御する楽音生成装置。
【請求項9】
前記請求項1乃至8のいずれかに記載の楽音生成装置と、
演奏のための息が吹き込まれるマウスピースと、
前記マウスピースに吹き込まれた息の量に応じた前記吹奏圧に基づいて、前記音量が設定された前記呼気音、又は、前記音量が設定された前記呼気音及び前記楽音が合成された楽器音を発音する発音部と、
を備える電子管楽器。
【請求項10】
吹奏圧を検出する吹奏圧センサと、楽音の音高を指定するキースイッチと、呼気音に対応する第1信号を発生させる第1音源と、前記キースイッチにより指定された前記音高を有する前記楽音に対応する第2信号を発生させる第2音源と、を有する楽音生成装置の楽音生成方法であって、
前記吹奏圧が閾値未満の場合、前記第2信号による前記楽音を発生させることなく、前記第1信号による前記呼気音のみを吹奏圧に応じた音量で発生させ、前記吹奏圧が前記閾値以上の場合には、前記第2信号による楽音を発生させるとともに、前記第1信号による呼気音を一定の音量で発生させる楽音生成方法。
【請求項11】
吹奏圧を検出する吹奏圧センサと、楽音の音高を指定するキースイッチと、呼気音に対応する第1信号を発生させる第1音源と、前記キースイッチにより指定された前記音高を有する前記楽音に対応する第2信号を発生させる第2音源と、を有する楽音生成装置のプログラムであって、
コンピュータに、
前記吹奏圧が閾値未満の場合、前記第2信号による前記楽音を発生させることなく、前記第1信号による前記呼気音のみを吹奏圧に応じた音量で発生させ、前記吹奏圧が前記閾値以上の場合には、前記第2信号による楽音を発生させるとともに、前記第1信号による呼気音を一定の音量で発生させるプログラム。