IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 高級アルコール工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-紫外線吸収剤含有化粧料 図1
  • 特開-紫外線吸収剤含有化粧料 図2
  • 特開-紫外線吸収剤含有化粧料 図3
  • 特開-紫外線吸収剤含有化粧料 図4
  • 特開-紫外線吸収剤含有化粧料 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171967
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】紫外線吸収剤含有化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20231128BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20231128BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231128BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
A61K8/37
A61Q17/04
A61Q19/00
A61Q5/00
A61K8/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】書面
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023174744
(22)【出願日】2023-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】391066319
【氏名又は名称】高級アルコール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】苔口 由貴
(72)【発明者】
【氏名】古畑 あやめ
(72)【発明者】
【氏名】花田 奈緒美
(57)【要約】
【課題】本発明は、紫外線吸収剤と組み合わせて使用するための油剤、および紫外線吸収剤を含有する化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】紫外線吸収剤と組み合わせてジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを使用する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線吸収剤と組み合わせて使用するための、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを含有する剤。
【請求項2】
エステルを構成する脂肪酸が分岐飽和脂肪酸である、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
脂肪酸が、エチルヘキサン酸またはイソノナン酸である、請求項2に記載の剤。
【請求項4】
エステルが、ヘキサエステルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の剤。
【請求項5】
紫外線吸収剤が、トリアジン誘導体、安息香酸誘導体、およびジベンゾイルメタン誘導体から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の剤。
【請求項6】
紫外線吸収剤が、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンである、請求項5に記載の剤。
【請求項7】
紫外線吸収剤およびジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを含む化粧料。
【請求項8】
エステルを構成する脂肪酸が分岐飽和脂肪酸である、請求項7に記載の化粧料。
【請求項9】
脂肪酸が、エチルヘキサン酸またはイソノナン酸である、請求項8に記載の化粧料。
【請求項10】
エステルが、ヘキサエステルである、請求項7~9のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項11】
紫外線吸収剤が、トリアジン誘導体、安息香酸誘導体、およびジベンゾイルメタン誘導体から選択される、請求項7~10のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項12】
紫外線吸収剤が、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンである、請求項11に記載の化粧料。
【請求項13】
皮膚または毛髪用である、請求項7~12のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項14】
液体、乳液、シェイクタイプ、ジェル、クリーム、ペースト、スティック、エアゾルまたはスプレーの形状である、請求項7~13のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項15】
液体、乳液、シェイクタイプ、ジェル、クリーム、またはペーストの形状である、請求項14に記載の化粧料。
【請求項16】
サンケア化粧料である、請求項7~15のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項17】
紫外線吸収剤をジペンタエリスリトール脂肪酸エステルと混合し、加熱して溶解することを含む、請求項7~16のいずれか一項に記載の化粧料の製造方法。
【請求項18】
ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを、紫外線吸収剤を含む組成物に配合することを含む、紫外線吸収効果の向上方法。
【請求項19】
ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを含む、紫外線吸収効果向上剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線吸収剤を含む化粧料を製造するための、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを含む剤;紫外線吸収剤およびジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを含む化粧料;および紫外線吸収剤を含む化粧料を製造におけるジペンタエリスリトール脂肪酸エステルの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線(波長域:約290~400nm)の人体への影響は昔からよく知られており、更に、近年の肌に対する意識改革(日やけ防止によって肌を白く保つ、日やけによる肌の老化を防ぎたい等)により、日常的に日やけ止め効果のある化粧料を使用する人が増えている。UV-B(290~320nm)はサンバーンや老化、皮膚がんの要因と言われ、UV-A(320~400nm)は、サンターン、皮膚老化の要因と言われている。
【0003】
日やけ止め効果のある化粧料には、肌を紫外線から防御するために、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が配合されている。
紫外線散乱剤は、酸化チタンや酸化亜鉛等の無機顔料が汎用的に使用されており、紫外線を物理的に遮蔽することによって、広い範囲の紫外線から皮膚を保護することが可能である。紫外線散乱剤は安全性が高い点で好まれる。
【0004】
紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン類、ケイ皮酸エステル類、サリチル酸類、パラアミノ安息香酸類などが挙げられ、これらは一般的に有機化合物である。その特異な構造により、極大吸収を示す紫外線の波長が異なるため、幾つかの成分を併用することで、幅広い紫外線を防御することができる。紫外線吸収剤には、塗布時のきしみ感が小さく、塗布時に白浮きし難いという利点がある。
【0005】
一般的に、紫外線吸収剤を含有する化粧料を製造するために、様々な油剤が用いられている(特許文献1)。また、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンの紫外線吸収剤の可溶化剤としてベンゾトリアゾールが提案され(特許文献2)、多糖脂肪酸エステルと、特定のIOB値の油剤を有機紫外線吸収剤と組み合わせて、有機紫外線吸収剤の結晶析出を抑制することなどが提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2018/225768号
【特許文献2】国際公開第2011/086124号
【特許文献3】特開2019-178126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
紫外線吸収剤との併用に適した油剤、および紫外線吸収剤を配合した化粧料を提供することを目的とする。
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため、鋭意研究を重ねる中で、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルが、紫外線吸収剤との併用に適していることを発見し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下[1]~[19]に関する。
[1]
紫外線吸収剤と組み合わせて使用するための、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを含有する剤。
[2]
エステルを構成する脂肪酸が分岐飽和脂肪酸である、[1]に記載の剤。
[3]
脂肪酸が、エチルヘキサン酸またはイソノナン酸である、[2]に記載の剤。
[4]
エステルが、ヘキサエステルである、[1]~[3]のいずれかに記載の剤。
[5]
紫外線吸収剤が、トリアジン誘導体、安息香酸誘導体、およびジベンゾイルメタン誘導体から選択される、[1]~[4]のいずれかに記載の剤。
[6]
紫外線吸収剤が、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンである、[5]に記載の剤。
【0010】
[7]
紫外線吸収剤およびジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを含む化粧料。
[8]
エステルを構成する脂肪酸が分岐飽和脂肪酸である、[7]に記載の化粧料。
[9]
脂肪酸が、エチルヘキサン酸またはイソノナン酸である、[8]に記載の化粧料。
[10]
エステルが、ヘキサエステルである、[7]~[9]のいずれかに記載の化粧料。
[11]
紫外線吸収剤が、トリアジン誘導体、安息香酸誘導体、およびジベンゾイルメタン誘導体から選択される、[7]~[10]のいずれかに記載の化粧料。
[12]
紫外線吸収剤が、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンである、[11]に記載の化粧料。
【0011】
[13]
皮膚または毛髪用である、[7]~[12]のいずれかに記載の化粧料。
[14]
液体、乳液、シェイクタイプ、ジェル、クリーム、ペースト、スティック、エアゾルまたはスプレーの形状である、[7]~[13]のいずれかに記載の化粧料。
[15]
液体、乳液、シェイクタイプ、ジェル、クリーム、またはペーストの形状である、[14]に記載の化粧料。
[16]
サンケア化粧料である、[7]~[15]のいずれかに記載の化粧料。
【0012】
[17]
紫外線吸収剤をジペンタエリスリトール脂肪酸エステルと混合し、加熱して溶解することを含む、[7]~[16]のいずれかに記載の化粧料の製造方法。
[18]
ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを、紫外線吸収剤を含む組成物に配合することを含む、紫外線吸収効果の向上方法。
[19]
ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを含む、紫外線吸収効果向上剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、紫外線吸収剤との併用に適した油剤を提供することができる。
また、本発明は、紫外線吸収剤を含む化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】溶解性試験の結果を示す図である。
図2】溶解性試験の結果を示す図である。
図3】化粧料の安定性を示す顕微鏡観察結果を示す写真である。
図4】化粧料の使用感(くずれ感)を示す図である。
図5】化粧料の使用感(のばしやすさ)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、一態様において、紫外線吸収剤と組み合わせて使用するための、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを含有する剤を提供する。
本発明は、一態様において、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを含有する、紫外線吸収効果向上剤も提供する。
本発明は、一態様において、紫外線吸収剤およびジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを含む化粧料を提供する。
【0016】
本発明は、一態様において、紫外線吸収剤をジペンタエリスリトール脂肪酸エステルと混合し、加熱して溶解することを含む、化粧料の製造方法を提供する。
本発明は、一態様において、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを、紫外線吸収剤を含む組成物に配合することを含む、紫外線吸収効果の向上方法も提供する。
ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを紫外線吸収剤と組み合わせることにより、紫外線吸収効果を高めること、具体的には、SPF値および/またはUVAPF値を向上させることができる。
【0017】
<ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル>
ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルは、ジペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステルであり、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、ペンタエステルおよびヘキサエステルを含む。
本発明の一態様において、化粧料原料としての取り扱い易さ(ハンドリング性の良さ)、化粧料原料としての透明性、および/または紫外線吸収剤の溶解性の観点から、室温(25℃)で液体であるジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
【0018】
本発明の一態様において、化粧料原料としての取り扱い易さおよび/または紫外線吸収剤の溶解性の観点から、エステルを構成する脂肪酸は、炭素数5~18、好ましくは炭素数8~18の脂肪酸であることが好ましい。
本発明の一態様において、化粧料原料としての取り扱い易さおよび/または紫外線吸収剤の溶解性の観点から、分岐飽和脂肪酸であることが好ましく、特に、炭素数5~18、好ましくは炭素数8~18の分岐飽和脂肪酸であることが好ましい。具体例としては、イソノナン酸、エチルヘキサン酸、イソステアリン酸、ネオペンタン酸が挙げられる。
【0019】
本発明の一態様において、化粧料原料としての取り扱い易さ、および様々な化粧料原料との相性の良さの観点から、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルは、ヘキサエステルであることが好ましい。
したがって、本発明の好ましい態様において、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルは、ジペンタエリスリトールと炭素数5~18の分岐飽和脂肪酸とのヘキサエステルであり、具体例としては、ヘキサイソノナン酸ジペンタエリスリチル、ヘキサイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、ヘキサエチルヘキサン酸ジペンタエリスリチル、ヘキサネオペンタン酸ジペンタエリスリチルが挙げられる。
【0020】
ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルは、ジペンタエリスリトールと脂肪酸とを常法で反応させることで得ることができ、また市販されているものを用いることができる。
例えば、高級アルコール工業社のヘキサイソノナン酸ジペンタエリスリチル(製品名:ハイルーセント DPIN6)を使用することができる。
【0021】
<紫外線吸収剤>
本発明において用いられる紫外線吸収剤は、特に限定されず、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において用いられる紫外線吸収剤は、UV-A吸収剤であっても、UV-B吸収剤であってもよい。
本発明において用いられる紫外線吸収剤は、液状であっても、固体状であってもよい。
【0022】
液状の紫外線吸収剤の例としては、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルおよびオクトクリレンが挙げられる。
一方、多くの紫外線吸収剤は、室温(25℃)で固体であり、一般的に化粧料における溶解の課題を有することが多い。したがって、本発明の油剤と併用する紫外線吸収剤が、25℃で固体である紫外線吸収剤である場合に、本発明の高い効果が期待できると考えられる。
【0023】
本発明の一態様において、本発明の油剤と併用する紫外線吸収剤が、優れた紫外線吸収効果を有するが、難溶解性である紫外線吸収剤である場合に、本発明の高い効果が期待されると考えられる。
比較的難溶性である紫外線吸収剤としては、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンなどのトリアジン誘導体、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルなどの安息香酸誘導体、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンなどのジベンゾイルメタン誘導体、オキシベンゾン-3などのベンゾフェノン誘導体などが挙げられる。
特に、多くの溶媒に難溶解性である紫外線吸収剤としては、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンが挙げられる。
【0024】
本発明において、あらゆる紫外線吸収剤を使用することができ、これらは市販されている。
例えば、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンは、BASF社からTinosorb Sの製品名で販売されている。これは、粉末状の成分であり、UV-A、B両波の幅広い波長領域の紫外線を吸収し、紫外線防御効果に優れ、光安定性が高く、有用な紫外線吸収剤であるが、様々な有機溶媒に対する溶解性に乏しい。
したがって、本願発明の効果が期待される紫外線吸収剤である。
【0025】
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルは、BASF社からUvinul A Plus Granularの製品名で販売されている。これは固体状の成分であり、光安定性が高い紫外線吸収剤であり、汎用性の高い紫外線吸収剤である。
そのほか代表的なUV-A吸収剤としては、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン(製品例:PARSOL 1789(DSM(株))、オキシベンゾン-3(製品例:ESCALOL 567(アシュランド・ジャパン(株))などが世界中で長年使用されてきた。
【0026】
<その他の成分>
また、化粧料の使用感や安定性のために、本発明の化粧料は、その他のエステル油、動植物油脂、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油などの油剤を含んでもよい。
また、本発明の化粧料は、紫外線阻害剤を含んでもよい。
本発明の化粧料は、上記成分以外にも、必要に応じて、通常化粧料に配合される成分、例えば、水、界面活性剤、増粘・ゲル化剤、固形化剤(ワックス類)、ロウ類、高分子、アルコール類、保湿剤(多価アルコール類など)、酸化防止剤、防腐・抗菌・殺菌剤、キレート剤、pH調整剤、薬効成分(ビタミン類など)、香料、色素、無機粉体(酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄など)などを含んでもよい。
【0027】
<化粧料>
本発明の化粧料は、固体、液体、乳液、シェイクタイプ、ジェル、クリーム、ペースト、スティック、エアゾルまたはスプレーなどのあらゆる形状であり得るが、一態様において、紫外線吸収剤の溶解性の向上が求められる、液体、乳液、シェイクタイプ、ジェル、クリーム、ペースト、スティック、エアゾルまたはスプレーなどの形状であることが好ましい。
本発明の別の態様において、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルが優れた使用感を与える観点から、本発明の化粧料は、液状、乳液、シェイクタイプ、ジェル、クリーム、ペーストなどの形状であることが好ましい。
【0028】
本発明の特定の態様において、本発明の化粧料は、O/W型UVクリームである。ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを使用することで、SPF値および/またはUVAPF値が高いことに加え、さっぱりとした使用感で、塗りのばしやすいO/W型UVクリームを提供することができる。
本発明の特定の態様において、本発明の化粧料は、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンおよびジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、特に、ヘキサイソノナン酸ジペンタエリスリチルを含む。
【0029】
化粧料における紫外線吸収剤の配合量は、配合規制の範囲内で、適宜選択することができるが、典型的には、0.1~10wt%、好ましくは2.0~8.0wt%、より好ましくは2.5~6.0wt%である。
本発明の一態様において、本発明の化粧料は、1.0wt%以上、好ましくは2.0wt%以上、より好ましくは2.5wt%以上の紫外線吸収剤を含む。
本発明の一態様において、本発明の化粧料は、1.0wt%以上、好ましくは1.5wt%以上、より好ましくは2.0wt%以上のビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを含む。
【0030】
化粧料におけるジペンタエリスリトール脂肪酸エステルの配合量は、特に限定されず、求められる化粧料のタイプ等に基づいて、適宜選択することができるが、典型的には、0.1~20.0wt%、好ましくは1.0~17.0wt%、より好ましくは2.0~15.0wt%である。
【0031】
本発明の一態様において、紫外線吸収剤がビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンである場合には、その配合量は0.1~6.0wt%、より好ましくは1.0~3.0wt%であり、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルの配合量は2.0~15.0wt%、より好ましくは3.0~12.0wt%である。
【0032】
紫外線吸収剤とジペンタエリスリトール脂肪酸エステルとの重量比は、十分な量を化粧料に添加し、紫外線吸収剤を溶解させる観点から、1:9~4:6、好ましくは2:8~3.5:6.5である。
本発明は一態様において、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンとジペンタエリスリトール脂肪酸エステルとの重量比は1:9~4:6、好ましくは2:8~3:7である。
【0033】
本発明は、紫外線吸収剤を含有する化粧料の製造に用いるための、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルの使用にも関する。
より具体的には、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンなどの難溶性の紫外線吸収剤を含有する化粧料の製造に用いるための、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルの使用にも関する。
【0034】
本発明は、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを含有する、紫外線吸収剤を溶解するための剤を提供する。
本発明は、一態様において、ヘキサイソノナン酸ジペンタエリスリチルを含有する、紫外線吸収剤、とくに固体の紫外線吸収剤、より特にビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンなどの難溶性の紫外線吸収剤を溶解するための剤を提供する。
ここで、溶解の容易性の観点から、ヘキサイソノナン酸ジペンタエリスリチルが液状であることが好ましい。
【0035】
本発明の化粧料の製造方法は、紫外線吸収剤をジペンタエリスリトール脂肪酸エステルと混合し、加熱して溶解することを含む。
本発明の一態様において、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルが液状である場合、混合・溶解工程が容易であるため好ましい。
【0036】
本発明の一態様において、以下の工程を含む、液状、乳液、クリーム、ジェル、ペースト形状などの乳化化粧料の製造方法も提供する:
紫外線吸収剤、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、および任意のその他の油溶性成分を混合し、加熱して溶解すること、
得られた混合物を水溶性成分と混合すること。
【0037】
以下、本発明を実施例に基づいて、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的な思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。なお、本明細書において、特に明示しない場合には、%は重量%を意味する。
【実施例0038】
[試験例1:溶解性試験1]
紫外線吸収剤:Tinosorb S(ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン)、Uvinul A Plus Granular(ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル)について、それぞれ5、10、15、20、25、30、35、40wt%の濃度において、各種油剤における溶解性を以下の方法で評価した。
【0039】
1. 紫外線吸収剤および油剤を、撹拌子(直径15mm)を入れたマルエム製スクリュー管No.5(胴径×高さ:27.0×55mm)に計量(総量:10.0g)する。
2. 液温が85~90℃になるように、ホットスターラー上で1時間加熱溶解する(回転数:500rpm)。
3. 溶解直後に、撹拌子をピンセットで取り出す。
4. 一晩、室温で保管し、翌日の溶液の状態を目視確認する。
5. 溶解性に問題ない場合、冷蔵庫(5℃)に1か月保管し、溶液の状態(溶解・不溶(結晶析出))を目視確認する。
結果を図1に示す。
【0040】
試験例1において用いた油剤は、以下のとおりである:
ネオライト 100P(高級アルコール工業):ネオペンタン酸イソデシル
IPM-R(高級アルコール工業):ミリスチン酸イソプロピル
KAK IAL-V(高級アルコール工業):ラウリン酸イソアミル
KAK HL(高級アルコール工業):ラウリン酸ヘキシル
KAK DIBA(高級アルコール工業):アジピン酸ジイソブチル
KAK 99(高級アルコール工業):イソノナン酸イソノニル
IPIS(高級アルコール工業):イソステアリン酸イソプロピル
ICEH(高級アルコール工業):エチルヘキサン酸ヘキシルデシル
KAK DIOS(高級アルコール工業):コハク酸ジエチルヘキシル
KAK 139(高級アルコール工業):イソノナン酸イソトリデシル
KAK NDO(高級アルコール工業):ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール
ネオライト 180P(高級アルコール工業):ネオペンタン酸イソステアリル
NPDC(高級アルコール工業):ジカプリン酸ネオペンチルグリコール
ハイアクオスター DCS(高級アルコール工業):コハク酸ビスエトキシジグリコールNPDIN(高級アルコール工業):ジイソノナン酸ネオペンチルグリコール
TCG-M(高級アルコール工業):トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル
TOG(高級アルコール工業):トリエチルヘキサノイン
KAK TCIN(高級アルコール工業):イソノナン酸トリシクロデカンメチル
KAK TTO(高級アルコール工業):トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパンリソカスタ IOHS(高級アルコール工業):ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルKAK TTI(高級アルコール工業):トリイソステアリン酸トリメチロールプロパンハイルーセント DPIN6(高級アルコール工業):ヘキサイソノナン酸ジペンタエリスリチル
CRODAMOL AB(クローダジャパン株式会社):安息香酸アルキル(C12-15)
Uvinul MC80(BASFジャパン株式会社):メトキシケイヒ酸エチルヘキシル
【0041】
図1に示す結果から、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルである、ヘキサイソノナン酸ジペンタエリスリチルが、他のエステルに比べて紫外線吸収剤、特にビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンの溶解性に極めて優れていることが理解できる。
【0042】
[試験例2:溶解性試験2]
ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルとしてヘキサエチルヘキサン酸ジペンタエリスリチルを用いて、試験例1と同様に溶解性を評価した。
試験例1において用いた油剤以外に、以下の油剤の溶解性も評価した。
KAK DIBA(高級アルコール工業):アジピン酸ジイソブチル
NIKKOL DIS(日光ケミカルズ株式会社):セバシン酸ジイソプロピル
結果を図2に示す。
この結果から、ヘキサエチルヘキサン酸ジペンタエリスリチルもまた、他のエステルに比べて紫外線吸収剤、特にビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンの溶解性に極めて優れていることが理解できる。
【0043】
[試験例3:化粧料における評価]
ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルおよび紫外線吸収剤を配合したUVクリーム
(O/W型)を常法により作製した。UVクリームの処方を以下表1に示す。
比較対象として、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルの代わりに、紫外線吸収剤の溶解性が中程度であるトリエチルヘキサノイン(TOG)を配合した比較処方も同様に作成した。
【0044】
【表1】
【0045】
成分1として使用した油剤、およびその各種物性は以下のとおりである。
【表2】
【0046】
各化粧料処方における効果について以下の方法により評価した。
<低温時の安定性評価>
処方A~Dを5℃に3日間保存し、システム生物顕微鏡(オリンパス(株))を用いて、結晶の有無を確認した。観察結果を図3に示す。
いずれの処方も結晶は析出せず、低温でもきれいなクリームであった。
したがって、本発明の化粧料は、安定性にも優れているといえる。
【0047】
<基本特性の測定>
処方A~DのpHをpHメーターD-74(堀場製作所(株))を用いて測定した。
処方A~Dの粘度を回転式粘度計ViscoQC 100-L、アントンパール・ジャパン(株)、回転速度:20rpm、スピンドルNo.:L4)を用いて測定した。
結果を表3に示す。
基本特性は同程度であることが理解できる。
【0048】
【表3】
【0049】
<SPF/UVAPF値の測定>
処方A~DのSPFおよびUVAPFを以下の方法で測定した。
1. 規定量(0.0385g、誤差≦±0.0005g)のサンプルをサンドブラストタイプのプレート(HELIOPLATE SB6)に計量し、指サックを付けた指で10秒程度掛けて均一に塗り広げる。その後、15分間暗所(室温)で放置した。
2. SPFアナライザー(UV-2000S、Labsphere社製)を用い、SPF/UVAPF値を測定した(測定は、n=3)。
結果を表4に示す。
【0050】
【表4】
【0051】
表4の結果から、TOG配合の処方Dに比べ、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル配合の処方A~Cのクリームが、SPF値・UVAPF値共に高いことが理解できる。したがって、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルをクリームに配合することで、SPF値やUVAPF値が向上する傾向にあると言える。
【0052】
<使用感の評価>
処方A~Dの粘弾性特性をレオメータ MCR 302((株)アントンパール・ジャパン)を使用して、35℃にて測定し、化粧料としての使用感の評価を行った。
UVクリームに変形を与えた際の、クリームの弾性・粘性を評価(ひずみ分散測定:n=2)した結果を図4に示す。
UVクリームのチキソトロピー性の評価(n=2)を図5に示す。
【0053】
表2にも示されるように、処方A~Cに配合したジペンタエリスリトール脂肪酸エステルは、それぞれ、332mPa・s、1212mPa・s、603mPa・sであるのに対し、処方Dに配合したTOGの粘度は31mPa・sであり、その粘度の差は大きい。
【0054】
図4は、クリームを塗布する際の「くずれ感」を表す図であり、G’とG”の交点のせん断ひずみが大きいと「くずれ感を感じにくい」との評価になる。
通常は、粘性が高い油剤を配合した方が、くずれ感を感じにくい傾向になると考えられるが、粘性が高いジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを含む処方A~Cは、TOG配合の処方Dと同様の「くずれ感」を有することが理解できる。
【0055】
図5は、クリームを塗布する際ののばしやすさを示す図である。
通常は、粘性が高い油剤を配合すると、重くなりやすい(のばしにくい)と考えられるが、粘性が高いジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを含む処方A~Cは、TOG配合の処方Dと同様の「のばしやすさ」を有することが理解できる。
【0056】
通常は、粘性が高い油剤を配合した場合、重くなりやすく、のばしにくい処方となるが、図5の結果から、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル配合の処方A~Cは、低粘度のTOG配合の処方Dと同様の使用感(のばしやすさ)を有し、予想外にのばしやすい使用感の化粧料であったことが理解できる。
【0057】
以上の結果から、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを紫外線吸収剤と組み合わせて用いることにより、高いSPF値・UVAPF値に加えて、好ましい使用感である、サンケア化粧料として好ましい処方を提供することができる。
【0058】
いかなる理論にも拘束されないが、本発明の化粧料は、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを使用することにより、紫外線吸収剤が溶解・分散されており、この化粧料を塗布した際に、紫外線吸収剤が均一に塗布されるため、優れた紫外線吸収効果が発揮されることができると考えられる。
よって、紫外線吸収剤と、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを併用することにより、紫外線吸収効果を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを用いることで、優れた紫外線吸収剤含有化粧料を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5