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2023-171979複合成形体、及び複合成形体用ゴム組成物
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  • -複合成形体、及び複合成形体用ゴム組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171979
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】複合成形体、及び複合成形体用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/08 20060101AFI20231129BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20231129BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B32B25/08
C08L23/08
C08K5/098
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167866
(22)【出願日】2020-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】大場 矢登
(72)【発明者】
【氏名】藤井 遥平
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK24A
4F100AK42B
4F100AK42C
4F100AK62A
4F100AL09A
4F100AN02A
4F100AP00B
4F100AP00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100CA23B
4F100CA23C
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100JB04B
4F100JB04C
4F100JB10A
4F100JK06
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4J002BB051
4J002BB152
4J002BB162
4J002BB172
4J002BB192
4J002BL003
4J002DA030
4J002DA040
4J002DE070
4J002DE100
4J002DJ010
4J002EF050
4J002EG026
4J002EG036
4J002EG046
4J002EK030
4J002EU190
4J002EV040
4J002EV130
4J002EV270
4J002EX030
4J002FD010
4J002FD030
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD170
4J002FD340
4J002GF00
4J002GG00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴムを含む成形体とその他の成形体とを有し、これら2種の成形体が高い接着強度で直接接着された複合成形体を提供する。
【解決手段】ゴム成形体10と、ゴム成形体10に直接接着された被着体20とを備える複合成形体1Aが開示される。ゴム成形体10は、エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴム、及び下記式(1):

で表される不飽和カルボン酸金属塩を含むゴム組成物の加硫物である。被着体20が、20MPa0.5以上38MPa0.5以下のハンセン溶解度パラメータを有する高HSP高分子材料を含む成形体であってもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成形体と、
前記ゴム成形体に直接接着された被着体と、
を備え、
前記ゴム成形体が、エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴム、及び、下記式(1):
【化1】

で表され、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を示し、Mは金属元素を示し、nは1~3の整数を示し、n個のカルボキシラートイオンのうち一部が水酸化物イオンに置き換わっていてもよい、不飽和カルボン酸金属塩を含むゴム組成物の加硫物であり、
前記ゴム組成物における前記不飽和カルボン酸金属塩の含有量が、前記エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴムの含有量100質量部に対して1~30質量部であり、
前記被着体が、
20MPa0.5以上38MPa0.5以下のハンセン溶解度パラメータを有する高HSP高分子材料を含む成形体、又は、
20MPa0.5未満のハンセン溶解度パラメータを有する低HSP高分子材料、及び23.5MPa0.5以上のハンセン溶解度パラメータを有する高HSPフィラーを含み、前記高HSPフィラーの含有量が、前記低HSP高分子材料の含有量100質量部に対して5~200質量部である、成形体である、
複合成形体。
【請求項2】
前記ゴム成形体をJIS K6258で規定された100℃の試験用潤滑油No.3油に22時間浸漬したときの体積変化率が65~160%である、請求項1に記載の複合成形体。
【請求項3】
前記ゴム成形体がシート状で、前記被着体が木材シートであり、
シート状の前記ゴム成形体が2枚の前記木材シートの間に挟まれている、請求項1又は2に記載の複合成形体。
【請求項4】
被着体に直接接着されたゴム成形体を形成することによって前記ゴム成形体及び前記被着体を備える複合成形体を製造するために用いられる、複合成形体用ゴム組成物であって、
当該ゴム組成物が、エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴム、及び、下記式(1):
【化2】

で表され、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を示し、Mは金属元素を示し、nは1~3の整数を示し、n個のカルボキシラートイオンのうち一部が水酸化物イオンに置き換わっていてもよい、不飽和カルボン酸金属塩を含み、
当該ゴム組成物における前記不飽和カルボン酸金属塩の含有量が、前記エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴムの含有量100質量部に対して1~30質量部であり、
前記被着体が、
20MPa0.5以上38MPa0.5以下のハンセン溶解度パラメータを有する高HSP高分子材料を含む成形体、又は、
20MPa0.5未満のハンセン溶解度パラメータを有する低HSP高分子材料、及び23.5MPa0.5以上のハンセン溶解度パラメータを有する高HSPフィラーを含み、前記高HSPフィラーの含有量が、前記低HSP高分子材料の含有量100質量部に対して5~200質量部である、成形体である、
複合成形体用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム成形体がシート状で、前記被着体が木材シートであり、
シート状の前記ゴム成形体が2枚の前記木材シートの間に挟まれている、複合成形体を製造するために用いられる、
請求項4に記載の複合成形体用ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴムを含む成形体を備える複合成形体、及び複合成形体用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴム等のエチレン-α-オレフィン系共重合体ゴムを含む成形体が、金属部材との組み合わせにより複合成形体を形成するために用いられることがある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/045454号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴムを含む成形体は、その他の材料に対する接着性が不足することが多い。そのため、エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴムを含む成形体は、通常、その他の材料の成形体と接着剤を介して接着される。しかし、工程数の削減、又は接着剤の塗布ムラ等に起因する不良品の発生抑制等の点から、2種の成形体を、接着剤を用いずに直接接着できることが望ましい。
【0005】
そこで本発明の一側面は、エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴムを含む成形体とその他の成形体とを有し、これら2種の成形体が高い接着強度で直接接着された複合成形体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、ゴム成形体と、前記ゴム成形体に直接接着された被着体とを備える、複合成形体を提供する。前記ゴム成形体が、エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴム、及び、下記式(1):
【化1】

で表される不飽和カルボン酸金属塩を含むゴム組成物の加硫物である。式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を示し、Mは金属元素を示し、nは1~3の整数を示し、n個のカルボキシラートイオンのうち一部が水酸化物イオンに置き換わっていてもよい。前記ゴム組成物における前記不飽和カルボン酸金属塩の含有量は、前記エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴムの含有量100質量部に対して1~30質量部である。前記被着体は、20MPa0.5以上38MPa0.5以下のハンセン溶解度パラメータを有する高HSP高分子材料を含む成形体、又は、20MPa0.5未満のハンセン溶解度パラメータを有する低HSP高分子材料、及び23.5MPa0.5以上のハンセン溶解度パラメータを示す高HSPフィラーを含み、前記高HSPフィラーの含有量が、前記低HSP高分子材料の含有量100質量部に対して5~200質量部である、成形体である。
【0007】
本発明の別の一側面は、被着体に直接接着されたゴム成形体を形成することによって前記ゴム成形体及び前記被着体を備える複合成形体を製造するために用いられる、複合成形体用ゴム組成物を提供する。当該ゴム組成物は、エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴム、及び上記不飽和カルボン酸金属塩を含む。当該ゴム組成物における前記不飽和カルボン酸金属塩の含有量は、前記エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴムの含有量100質量部に対して1~30質量部である。前記被着体は、20MPa0.5以上38MPa0.5以下のハンセン溶解度パラメータを有する高HSP高分子材料を含む成形体、又は、20MPa0.5未満のハンセン溶解度パラメータを有する低HSP高分子材料、及び23.5MPa0.5以上のハンセン溶解度パラメータを示す高HSPフィラーを含み、前記高HSPフィラーの含有量が、前記低HSP高分子材料の含有量100質量部に対して5~200質量部である、成形体である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面によれば、エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴムを含む成形体とその他の成形体とを有し、これら2種の成形体が高い接着強度で直接接着された複合成形体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】複合成形体の一実施形態を示す断面図である。
図2】複合成形体の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
図1は、複合成形体の一実施形態を示す断面図である。図1に示される複合成形体1Aは、シート状のゴム成形体10と、1枚のシート状の被着体20とを備える。ゴム成形体10は、被着体20と直接接着されている。ゴム成形体10は、接着剤を介さずに被着体20と直接接している。
【0012】
図2は、複合成形体の他の一実施形態を示す断面図である。図2に示される複合成形体1Bは、シート状のゴム成形体10と、2枚のシート状の被着体21,22とを備える。シート状のゴム成形体10は、対向配置された2枚のシート状の被着体21,22の間に挟まれている。
【0013】
ゴム成形体10は、エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴム、及び不飽和カルボン酸金属塩を含むゴム組成物の加硫物である。
【0014】
エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴムは、エチレン及びα-オレフィンをモノマー単位として含む共重合体である。α-オレフィンは、炭素数3~20のα-オレフィンであってもよい。炭素数3~20のα-オレフィンの例として、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、及び1-デセンのような直鎖状オレフィン;3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、及び4-メチル-1-ペンテンのような分岐オレフィン;ビニルシクロヘキサン;並びに、これらから選ばれる2以上の化合物の組合せが挙げられる。入手の容易性の観点から、α-オレフィンはプロピレン又は1-ブテンであってもよく、プロピレンであってもよい。
【0015】
エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴムは、非共役ポリエンをモノマー単位として更に含む、エチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴムであってもよい。非共役ポリエンは、炭素数3~20の非共役ポリエンであってもよい。炭素数3~20の非共役ポリエンの例として、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、及び7-メチル-1,6-オクタジエンのような鎖状非共役ジエン;5-エチリデン-2-ノルボルネン、シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラインデン、5-ビニルノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、5,9,13-トリメチル-1,4,8,12-テトラデカジエン、4-エチリデン-12-メチル-1,11-ペンタデカジエン及び6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネンのような環状非共役ジエン;2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン、1,3,7-オクタトリエン、6,10-ジメチル-1,5,9-ウンデカトリエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、13-エチル-9-メチル-1,9,12-ペンタデカトリエン、5,9,8,14,16-トリメチル-1,7,14-ヘキサデカトリエン、及び1,4,9-デカトリエンのようなトリエン;並びに、これらから選ばれる2以上の化合物の組合せが挙げられる。非共役ポリエンは、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン又はこれらの組合せであってもよい。
【0016】
不飽和カルボン酸金属塩は、下記式(1)で表される化合物である。式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を示し、Mは金属元素を示し、nは1~3の整数を示す。式(1)で表される不飽和カルボン酸金属塩は、n個のカルボキシラートイオンとn価の金属カチオンMn+とから形成された塩であってもよく、n個のカルボキシラートイオンのうち一部が水酸化物イオンに置き換わっていてもよい。
【化2】
【0017】
式(1)中のMは、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛、又はアルミニウムであってもよく、亜鉛であってもよい。R又はRとしての炭化水素基は、例えばアルキル基であってもよく、その炭素数が1~10であってもよい。R及びRが水素原子であってもよい。nは2又は3であってもよい。不飽和カルボン酸金属塩が、例えば、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、及びアクリル酸アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよく、下記式(1A)で表されるアクリル酸亜鉛であってもよい。
【化3】
【0018】
ゴム組成物における不飽和カルボン酸金属塩の含有量は、エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴムの含有量100質量部に対して1~30質量部であり、5~25質量部であってもよい。
【0019】
ゴム組成物は、エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴム及び不飽和カルボン酸金属塩以外の成分を更に含んでもよい。ただし、ゴム組成物におけるエチレン-α-オレフィン系共重合体ゴム及び不飽和カルボン酸金属塩の合計の含有量は、後述の無機フィラー及び軟化剤を除く成分の合計質量を基準として、通常、50~100質量%、60~100質量%又は70~100質量%である。
【0020】
ゴム組成物は、ゴムの架橋又は加硫のための架橋剤を更に含んでもよい。架橋剤は、例えば、有機過酸化物、硫黄、硫黄化合物、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド縮合体、又はこれらから選ばれる2種以上の組み合わせを含んでもよい。
【0021】
有機過酸化物の例としては、ケトンパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、アルキルパーエステル、パーカーボネート、パーオキシジカーボネート、及びパーオキシエステルが挙げられる。
【0022】
有機過酸化物の具体例として、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,2,4-トリメチルペンチル-2-ハイドロパ-オキサイド、ジイソプロピルベンゾハイドロパーオキサイド、クメンパーオキサイド、t-ブチルパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン、イソブチルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、及びp-クロロベンゾイルパーオキサイドが挙げられる。有機過酸化物として、単独の化合物、又は2種以上の化合物を用いてもよい。
【0023】
ゴム組成物及びこれから形成されたゴム成形体10は、無機フィラーを更に含んでもよい。無機フィラーは、通常、補強剤としてゴム組成物に加えられる。無機フィラーは、例えば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、マイカ、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、リグニン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、又はこれらから選ばれる2種以上の組み合わせであってもよい。カーボンブラックの例としては、SRF、GPF、FEF、MAF、ISAF、SAF、FT、及びMTが挙げられる。シリカの例としては、乾式法シリカ、湿式法シリカ、合成ケイ酸塩系シリカ、及びコロイダルシリカが挙げられる。ゴム組成物又はゴム成形体10における無機フィラーの含有量は、エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴム100質量部に対して、10質量部以上であってもよく、200質量部以下、150質量部以下であってもよい。
【0024】
ゴム組成物は、例えば、軟化剤、架橋助剤、及び加工助剤等のその他の成分を更に含んでもよい。
【0025】
軟化剤の例としては、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン等のパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、石油アスファルト、ワセリン、コールタールピッチ、ヒマシ油、アマニ油、サブ、密ロウ、及びリシノール酸が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。ゴム組成物における軟化剤の含有量は、エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴム100質量部に対して、10質量部以上であってもよく、150質量部以下、又は100質量部以下であってもよい。
【0026】
架橋助剤は、分子内に2個以上の二重結合を有する化合物を含んでいてもよい。架橋助剤として、例えば、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、トルイレンビスマレイミド、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、p-キノンジオキシム、ニトロベンゼン、ジフェニルグアニジン、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びアリルメタクリレートが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。ゴム組成物における架橋助剤の含有量は、エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴム100質量部に対して、0.05質量部以上20質量部以下、又は0.1質量部以上8質量部以下であってもよい。
【0027】
加工助剤としては、例えば、オレイン酸、パルミチン酸及びステアリン酸等の脂肪酸;ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム及びステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩;脂肪酸エステル;エチレングリコール及びポリエチレングリコール等のグリコールが挙げられる。これらは単独で又は組み合わせて用いることが可能である。ゴム組成物における加工助剤の含有量は、エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上10質量部以下、又は0.3質量部以上8質量部以下であってもよい。
【0028】
ゴム組成物が、エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴム以外のゴム成分を更に含んでもよい。ゴム組成物に含まれ得るゴム成分の例としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、及びブチルゴムが挙げられる。ゴム組成物におけるエチレン-α-オレフィン系共重合体ゴム以外のゴム成分の含有量は、エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴム100質量部に対して、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、10質量部以下、又は5質量部以下であってもよい。
【0029】
ゴム組成物は、例えば、エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴムと、不飽和カルボン酸金属塩と、必要により加えられるその他の成分とを含む混合物を混練することにより、得ることができる。混練は、ミキサー、ニーダー及び二軸押出機等の密閉式混練機を用いて行うことができる。混練時間は1分以上60分以下であってもよい。混練温度は40℃以上200℃以下であってもよい。エチレン-α-オレフィン系共重合体ゴムと、パラフィン系オイル、及びナフテン系オイル等のプロセスオイルとを混合して得られる油展ゴムを、ゴム組成物の製造に用いてもよい。
【0030】
被着体20,21,22は、20MPa0.5以上38MPa0.5以下のハンセン溶解度パラメータを有する高HSP高分子材料を含む成形体であってもよい。
ここで、ハンセン溶解度パラメータ(以下「HSP値」ということがある。)は、下記式(10):
HSP値=(δD)+(δP)+(δH) ・・・(10)
で算出される値である。式(10)中、δD、δP、及び、δHは以下の3次元のパラメータである。
δD:London分散力項
δP:分子分極項(双極子間力項)
δH:水素結合項
【0031】
HSP値は、例えば、A User’s Handbook,Second Edition,C.M.Hansen(2007),Taylor and Francis Group,LLC(HSPiPマニュアル)を参照して算出することができる。δD、δPおよびδHは、例えば、コンピュータソフトウェアHansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)を用いることによって、高分子材料の化学構造式から計算することができる。
【0032】
高HSP高分子材料は、熱可塑性樹脂であってもよく、例えば、ポリエチレンテレフタラートなどのポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース、ヘミセルロース、及びリグニンから選ばれる少なくとも1種であってもよい。成形体が、セルロース等を含む木材であってもよい。被着体20,21,22は木材シートであることができ、その場合、複合成形体1A,1Bを合板材料として用いることができる。
【0033】
被着体20,21,22としての成形体における高HSP高分子材料の含有量は、成形体(被着体20,21,22)の質量を基準として、60~100質量%、70~100質量%、80~100質量%、又は90~100質量%であってもよい。
【0034】
被着体20,21,22は、20MPa0.5未満のHSP値を有する低HSP高分子材料、及び23.5MPa0.5以上のHSP値を有する高HSPフィラーを含む成形体であってもよい。この成形体における高HSPフィラーの含有量は、低HSP高分子材料の含有量100質量部に対して5質量部以上、8質量部以上、又は13質量部以上であってもよく、200質量部以下、150質量部以下、又は100質量部以下であってもよい。
【0035】
低HSP高分子材料は、ゴムであってもよく、その例としては、フッ素ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、及びブタジエンゴムが挙げられる。
【0036】
高HSPフィラーは、例えば、シリカ、グラスファイバー、セルロースナノファイバー、タルク、酸化チタン、炭酸マグネシウム、及び炭酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種であってもよい。高HSPフィラーは、表面改質によって高いHSP値が付与されたものであってもよい。HSP値が23.5MPa0.5以上である材料によって形成された表面を有するフィラーは、高HSPフィラーとして用いることができる。
【0037】
低HSP高分子材料及び高HSPフィラーを含む成形体が、23.5MPa0.5未満のHSP値を有する低HSPフィラーを更に含んでいてもよい。ただし、低HSP高分子材料及び高HSPフィラーを含む成形体における低HSPフィラーの含有量は、通常、低HSP高分子材料の含有量100質量部に対して150質量部以下、100質量部以下、又は80質量部以下である。低HSPフィラーの例としては、カーボンブラックが挙げられる
【0038】
ゴム成形体10をJIS K6258で規定された100℃の試験用潤滑油No.3油(IRM903)に22時間浸漬したときの体積変化率ΔVが、65%以上、70%以上、又は75%以上であってもよく、160%以下、150%以下、又は140%以下であってもよい。体積変化率ΔVがこの範囲にあると、ゴム成形体が柔軟性を保ちつつ、ゴム成形体に油が付着しても膨潤が抑制され、それによりゴム成形体と被着体との接着界面の変形が抑制され、その結果、ゴム成形体と被着体とが剥離し難いより優れた複合成形体を得ることができる。
【0039】
複合成形体1A,1Bは、ゴム成形体10を形成するための複合成形体用ゴム組成物を用いて製造することができる。複合成形体1A,1Bは、例えば、未加硫のゴム組成物からなる予備成形体と、被着体20又は被着体21,22とを直接接着させ、予備成形体及び被着体20又は被着体21,22を有する予備複合体を、例えば、射出成形機、圧縮成形機、熱空気加硫装置等の成形機によって加熱することによって、ゴム組成物の加硫物であるゴム成形体10と被着体20又は被着体21,22とを有する複合成形体1A又は1Bを形成する工程を含む方法によって、製造することができる。被着体20,21,22もゴム成形体である場合、例えば、ゴム成形体10を形成するための未加硫の予備成形体と、被着体20,21,22を形成するための未加硫の予備成形体とを直接接触させ、これら予備成形体を有する予備複合体を加熱及び加圧する工程を含む方法によって、製造することができる。予備複合体から複合成形体を形成するための加熱温度及び圧力は、十分な接着強度等が得られるように調整される。例えば、加熱温度は100~220℃であってもよい。加熱の時間は0.5~60分であってもよい。
【0040】
ゴム成形体及び被着体から構成される複合成形体の形態は、図1及び図2に例示される形態に限定されない。複合成形体が2以上のゴム成形体を有していてもよい。複合成形体が、管状のゴム成形体及び被着体から構成される管状体であってもよい。管状の複合成形体は、例えばホースとして用いられる。
【0041】
ゴム成形体及び被着体のサイズ及び厚さは、複合成形体の用途等に応じて適宜決定することができる。ゴム成形体の最大厚さは、例えば0.1~50mmであってもよい。
【実施例0042】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0043】
原材料
<エチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴム>
・エスプレンE501A(商品名、住友化学株式会社):エチレン-プロピレン-5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体ゴム(EPDM)
・エスプレンE505A(商品名、住友化学株式会社):エチレン-プロピレン-5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体ゴム(EPDM)
<フッ素ゴム>
・ダイエルG-902(商品名、ダイキン工業株式会社)
<アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)>
・Nipol 1042(商品名、日本ゼオン株式会社)
<スチレンブタジエンゴム(SBR)>
・Nipol 1502(商品名、日本ゼオン株式会社)
<クロロプレンゴム(CR)>
・ショウプレンW(商品名、昭和電工株式会社)
<カーボンブラック(CB)>
・旭60UG(商品名、旭カーボン社)
・旭50G(商品名、旭カーボン社)
・旭15(商品名、旭カーボン社)
・旭70(商品名、旭カーボン社)
<シリカフィラー>
・Nipsil VN3(商品名、東ソー・シリカ株式会社)
・Nipsil AQ(商品名、東ソー・シリカ株式会社)
<プロセスオイル>
・ダイアナプロセスオイルPW380(商品名、出光興産株式会社)
・ダイアナプロセスオイルPW90(商品名、出光興産株式会社)
・ViVatec 500(商品名、スターリーオイル株式会社)
・DOP(フタル酸ジオクチル、田岡化学工業株式会社)
・サンセン4240(商品名、日本サン石油株式会社)
<アクリル酸亜鉛>
・ZDA-90(商品名、浅田化学工業株式会社)
<メタクリル酸亜鉛>
<老化防止剤>
・アンテージMB(商品名、川口化学工業株式会社)
・アンテージRD(商品名、川口化学工業株式会社)
・アンテージ6C(商品名、川口化学工業株式会社)
<共架橋剤>
・トリアリルイソシアヌレート(TAIC)
<硫黄>
<有機過酸化物>
・パークミルD-40(商品名、ジクミルパーオキシド、日本油脂株式会社)
・パークミルD-40MB(商品名、ジクミルパーオキシド、日本油脂株式会社)
・パーヘキサC-40(商品名、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、日本油脂株式会社)
・パーヘキサ25B-40(商品名、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、日本油脂株式会社)
<加硫促進剤>
・レノグランCBS-80(商品名、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、ラインケミー社)
・レノグランTMTD-80(商品名、テトラメチルチウラムジスルフィド、ラインケミー社)
・レノグランTMTM-80(商品名、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ラインケミー社)
・レノグランZDBC-80(商品名、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ラインケミー社)
・ソクシノールD(商品名、1,3-ジフェニルグアニジン、住友化学株式会社)
・レノグランETU-80(商品名、N,N’-エチレンチオウレア、ラインケミー社)
・レノグランMBTS-75(商品名、ジベンゾチアジルジスルフィド、ラインケミー社)
<酸化亜鉛>
<ステアリン酸>
<シランカップリング剤>
・Si75(商品名、Evonik Degussa社)
<酸化マグネシウム>
・キョーワマグ150(商品名、協和化学工業株式会社)
【0044】
原材料のHSP値
原材料として用いられた高分子材料及びフィラーのHSP値が以下に示される。高分子材料のHSP値は、上述のHSPiPマニュアルを参照し、コンピュータソフトウェアHansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)を用いて算出されたδD、δPおよびδHから求められた計算値である。木材のHSP値は、セルロースについて計算された値である。カーボンブラック(CB)のHSP値は、「Determination of Hansen parameters for particles Astandardized routine based on analytical centrifugation, Appendix A」に記載の文献値である。シリカのHSP値は、特開2017-186476号公報に記載の文献値である。
ポリエチレンテレフタラート(PET):22.1MPa0.5
ポリウレタン(PU):21.9MPa0.5
ポリアミド6(PA6):24MPa0.5
ポリアミド12(PA12):21.1MPa0.5
木材:32.3MPa0.5
フッ素ゴム:13.3MPa0.5
NBR:19.9MPa0.5
SBR:17.7MPa0.5
CR:17.7MPa0.5
CB:23.1MPa0.5
シリカ:25.7MPa0.5
【0045】
(検討1:EPDM/熱可塑性樹脂)
1-1.EPDM組成物の調製
EPDM組成物1-1(EPDM1-1)
100質量部のEPDM(エスプレンE501A)、100質量部のカーボンブラック(旭60UG)、50質量部のプロセスオイル(ダイアナプロセスオイルPW380)、5質量部の酸化亜鉛、及び1質量部のステアリン酸をバンバリーミキサーを用いて混練した。得られた混練物256質量部と6.75質量部のパークミルD-40とをオープンロールを用いて混練し、EPDM組成物1-1を得た。
【0046】
EPDM組成物1-2(EPDM1-2)
100質量部のEPDM(エスプレンE501A)、100質量部のカーボンブラック(旭60UG)、50質量部のプロセスオイル(ダイアナプロセスオイルPW380)、5質量部の酸化亜鉛、及び1質量部のステアリン酸をバンバリーミキサーを用いて混練した。得られた混練物256質量部と6.50質量部のパーヘキサC-40とをオープンロールを用いて混練し、EPDM組成物1-2を得た。
【0047】
EPDM組成物1-3(EPDM1-3)
100質量部のEPDM(エスプレンE501A)、100質量部のカーボンブラック(旭60UG)、50質量部のプロセスオイル(ダイアナプロセスオイルPW380)、5質量部の酸化亜鉛、1質量部のステアリン酸、老化防止剤(1質量部のアンテージMB及び0.25質量部のアンテージRD)、及び10質量部のアクリル酸亜鉛(ZDA-90)をバンバリーミキサーを用いて混練した。得られた混練物267.3質量部と6.75質量部のパークミルD-40とをオープンロールを用いて混練し、EPDM組成物1-3を得た。
【0048】
EPDM組成物1-4(EPDM1-4)
100質量部のEPDM(エスプレンE501A)、100質量部のカーボンブラック(旭60UG)、50質量部のプロセスオイル(ダイアナプロセスオイルPW380)、5質量部の酸化亜鉛、1質量部のステアリン酸、老化防止剤(1質量部のアンテージMB及び0.25質量部のアンテージRD)、及び10質量部のアクリル酸亜鉛(ZDA-90)をバンバリーミキサーを用いて混練した。得られた混練物267.3質量部と6.5質量部のパーヘキサC-40とをオープンロールを用いて混練し、EPDM組成物1-4を得た。
【0049】
EPDM組成物1-5(EPDM1-5)
100質量部のEPDM(エスプレンE501A)、100質量部のカーボンブラック(旭60UG)、50質量部のプロセスオイル(ダイアナプロセスオイルPW380)、5質量部の酸化亜鉛、1質量部のステアリン酸、老化防止剤(1質量部のアンテージMB及び0.25質量部のアンテージRD)、及び20質量部のアクリル酸亜鉛(ZDA-90)をバンバリーミキサーを用いて混練した。得られた混練物277.3質量部と6.75質量部のパークミルD-40とをオープンロールを用いて混練し、EPDM組成物1-5を得た。
【0050】
EPDM組成物1-6(EPDM1-6)
100質量部のEPDM(エスプレンE501A)、100質量部のカーボンブラック(旭60UG)、50質量部のプロセスオイル(ダイアナプロセスオイルPW380)、5質量部の酸化亜鉛、1質量部のステアリン酸、老化防止剤(1質量部のアンテージMB及び0.25質量部のアンテージRD)、及び20質量部のアクリル酸亜鉛(ZDA-90)をバンバリーミキサーを用いて混練した。得られた混練物277.3質量部と6.5質量部のパーヘキサC-40とをオープンロールを用いて混練し、EPDM組成物1-6を得た。
【0051】
EPDM組成物1-7(EPDM1-7)
100質量部のEPDM(エスプレンE501A)、100質量部のカーボンブラック(旭60UG)、50質量部のプロセスオイル(ダイアナプロセスオイルPW380)、5質量部の酸化亜鉛、1質量部のステアリン酸、老化防止剤(1質量部のアンテージMB及び0.25質量部のアンテージRD)、及び10質量部のメタクリル酸亜鉛をバンバリーミキサーを用いて混練した。得られた混練物267.3質量部と6.5質量部のパーヘキサC-40とをオープンロールを用いて混練し、EPDM組成物1-7を得た。
【0052】
1-2.EPDMシートの体積変化率
JIS K6258に準拠した耐油性試験により、各EPDM組成物から形成されたEPDMシートの体積変化率を測定した。各EPDM組成物を、プレス成型機(商品名:PSF-B010、関西ロール社製)を用いて、加圧力10MPa、設定温度150℃又は170℃で表1記載のプレス時間で加硫し、厚み2mmのEPDMシートを得た。得られたEPDMシートから、縦40mm、横25mm、厚み2mmの試験片を切り出した。次いで、この試験片の空気中での重量m1と、純水中での重量m2を測定した。測定には自動比重計(東洋精機社製)を用いた。次いで、試験片を潤滑油(商品名:IRM903、日本サン石油社製)に浸漬させた。このときの潤滑油の温度は100℃、浸漬時間は22時間であった。浸漬終了後、試験片の表面に付着した余分な潤滑油を取り除き、試験片の空気中及び水中での重量m3及びm4を上記と同様の方法で測定した。重量の測定値を下記の式に代入し、試験片の体積変化率(ΔV)を算出した。2個の試験片について体積変化率を測定した。表1又は表7に示されるΔVは、2個の試験片のΔVの平均値である。ΔVの値が小さいほど、成形体の耐油性が優れることを意味する。
ΔV={(m3-m4)-(m1-m2)}/(m1-m2)×100
ΔV:体積変化率(%)
m1:浸漬前の空気中の重量(mg)
m2:浸漬前の水中の重量(mg)
m3:浸漬後の空気中の重量(mg)
m4:浸漬後の水中の重量(mg)
【0053】
【表1】
【0054】
1-3.複合成形体の作製と接着強度測定
試験1
EPDM組成物1-1、1-3又は1-5から形成された厚さ2mmのEPDMシートと、被着体としてのポリエチレンテレフタラート(PET)シート(厚さ3mm)とを重ね、それらの積層体である予備複合体を150℃で20分、熱プレスすることにより、加硫されたEPDMシートと、PETシートとが互いに直接接着した複合成形体を得た。得られた複合成形体から幅25mmの短冊状の試験片を切り出した。試験片の短辺側の端部から、EPDMシートとPETシートをそれぞれ試験片の面方向に対して90度の方向に引き剥がす180度剥離試験によって、接着強度(N/mm)を測定した。測定結果が表2に示される。
【0055】
【表2】
【0056】
試験2
EPDM組成物1-1、1-3又は1-5から形成された厚さ6mmのEPDMシートと、被着体としてのポリウレタン(PU)ゴムシート(厚さ3mm)とを重ね、それらの積層体である予備複合体を150℃で20分、熱プレスすることにより、加硫されたEPDMシートと、PUゴムシートとが互いに直接接着した複合成形体を得た。得られた複合成形体を用いて試験1と同様の方法によって接着強度(N/mm)を測定した。測定結果が表3に示される。
【0057】
【表3】
【0058】
試験3
EPDM組成物1-2、1-4又は1-6から形成された厚さ6mmのEPDMシートと、被着体としてのポリアミド6(PA6)シート(厚さ6mm)とを重ね、それらの積層体である予備複合体を170℃で20分、熱プレスすることにより、加硫されたEPDMシートと、PA6シートとが互いに直接接着した複合成形体を得た。得られた複合成形体を用いて試験1と同様の方法によって接着強度(N/mm)を測定した。測定結果が表4に示される。
【0059】
【表4】
【0060】
試験4
EPDM組成物1-1、1-3又は1-7から形成された厚さ2mmのEPDMシートと、被着体としてのポリアミド12(PA12)シート(厚さ3mm)とを重ね、それらの積層体である予備複合体を150℃で20分、熱プレスすることにより、加硫されたEPDMシートと、PA12シートとが互いに直接接着した複合成形体を得た。得られた複合成形体を用いて試験1と同様の方法によって接着強度(N/mm)を測定した。測定結果が表5に示される。
【0061】
【表5】
【0062】
試験5
EPDM組成物1-1又は1-3から形成された厚さ2mmのEPDMシートと、被着体としてのスギ木材シート(厚さ5mm)とを重ね、それらの積層体である予備複合体を150℃で20分、熱プレスすることにより、加硫されたEPDMシートと、スギ木材シートとが互いに直接接着した複合成形体を得た。得られた複合成形体を用いて試験1と同様の方法によって接着強度(N/mm)を測定した。測定結果が表6に示される。
【0063】
【表6】
【0064】
(検討2:EPDM/シリカ含有低極性ゴム)
2-1.EPDM組成物の調製
表7に示される配合比のEPDM組成物を以下の手順で調整した。
EPDM組成物2-1(EPDM2-1)
100質量部のEPDM(エスプレンE505A)、50質量部のカーボンブラック(旭50G)、1質量部のステアリン酸、5質量部の酸化亜鉛、及び10質量部のプロセスオイル(ダイアナプロセスオイルPW90)をバンバリーミキサーを用いて混練した。得られた混練物166質量部と、硫黄1.2質量部と、加硫促進剤(2.5質量部のレノグランCBS-80、1.25質量部のレノグランTMTD-80、及び1.25質量部のレノグランZDBC-80)とをオープンロールを用いて混練し、EPDM組成物2-1を得た。
【0065】
EPDM組成物2-2(EPDM2-2)
100質量部のEPDM(エスプレンE505A)、50質量部のカーボンブラック(旭50G)、1質量部のステアリン酸、5質量部の酸化亜鉛、及び10質量部のプロセスオイル(ダイアナプロセスオイルPW90)をバンバリーミキサーを用いて混練した。得られた混練物166質量部と、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)1.5質量部と、パークミルD-40MBの6.75質量部とをオープンロールを用いて混練し、EPDM組成物2-2を得た。
【0066】
EPDM組成物2-3(EPDM2-3)
100質量部のEPDM(エスプレンE505A)、50質量部のカーボンブラック(旭50G)、1質量部のステアリン酸、5質量部の酸化亜鉛、10質量部のプロセスオイル(ダイアナプロセスオイルPW90)、及び10質量部のアクリル酸亜鉛をバンバリーミキサーを用いて混練した。得られた混練物176質量部と、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)1.5質量部と、パークミルD-40MBの6.75質量部とをオープンロールを用いて混練し、EPDM組成物2-3を得た。
【0067】
2-2.EPDMシートの体積変化率
各EPDM組成物から形成されるEPDMシートの耐油性試験による体積変化率を、「1-2.EPDMシートの体積変化率」に記載の方法と同様の方法で測定した。結果が表7に示される。
【0068】
【表7】
【0069】
2-3.フッ素ゴム組成物の調製
表8に示される配合比のフッ素ゴム組成物を以下の手順で調整した。
フッ素ゴム組成物1(FKM-1)
100質量部のフッ素ゴム(ダイエルG-902)、20質量部のカーボンブラック(旭15)をオープンロールを用いて混練した。得られた混練物120質量部と、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)2.6質量部と、パーヘキサ25B-40の3.75質量部とをオープンロールを用いて混練し、フッ素ゴム組成物1を得た。
【0070】
フッ素ゴム組成物2(FKM-2)
100質量部のフッ素ゴム(ダイエルG-902)、1質量部のカーボンブラック(旭15)と、15質量部のシリカフィラー(Nipsil VN3)とをバンバリーミキサーを用いて混練した。得られた混練物116質量部と、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)2.6質量部と、パーヘキサ25B-40の3.75質量部とをオープンロールを用いて混練し、フッ素ゴム組成物2を得た。
【0071】
【表8】
【0072】
2-4.NBR組成物の調製
表9に示される配合比のNBR組成物を以下の手順で調整した。
NBR組成物1(NBR-1)
100質量部のNBR(Nipol 1042)、20質量部のカーボンブラック(旭50G)、1質量部のステアリン酸、5質量部の酸化亜鉛、1質量部の抗酸化剤(アンテージRD)、及び20質量部のフタル酸ジオクチル(DOP)をバンバリーミキサーを用いて混練した。得られた混練物202質量部と、硫黄0.5質量部と、加硫促進剤(2.5質量部のレノグランCBS-80)、及び1.25質量部のレノグランTMTD-80)とをオープンロールを用いて混練し、NBR組成物1を得た。
【0073】
NBR組成物2(NBR-2)
100質量部のNBR(Nipol 1042)、1質量部のカーボンブラック(旭50G)、15質量部のシリカフィラー(Nipsil VN3)、1質量部のステアリン酸、5質量部の酸化亜鉛、1質量部の抗酸化剤(アンテージRD)、及び20質量部のフタル酸ジオクチル(DOP)をバンバリーミキサーを用いて混練した。得られた混練物193質量部と、硫黄0.5質量部と、加硫促進剤(2.5質量部のレノグランCBS-80)、及び1.25質量部のレノグランTMTD-80)とをオープンロールを用いて混練し、NBR組成物2を得た。
【0074】
【表9】
【0075】
2-5.SBR組成物の調製
表10に示される配合比のSBR組成物を以下の手順で調整した。
SBR組成物1(SBR-1)
100質量部のSBR(Nipol 1502)、65質量部のカーボンブラック(旭70)、2質量部のステアリン酸、3質量部の酸化亜鉛、1.5質量部の抗酸化剤(アンテージ6C)、及び30質量部のプロセスオイル(ViVatec 50)をバンバリーミキサーを用いて混練した。得られた混練物201.5質量部と、硫黄2質量部と、加硫促進剤(1.875質量部のレノグランCBS-80、及び2質量部のソクシノールD)とをオープンロールを用いて加熱しながら混練し、SBR組成物1を得た。
【0076】
SBR組成物2(SBR-2)
100質量部のSBR(Nipol 1502)、1質量部のカーボンブラック(旭70)、65質量部のシリカフィラー(Nipsil AQ)、2質量部のステアリン酸、3質量部の酸化亜鉛、6質量部のシランカップリング剤(Si75)、1.5質量部の抗酸化剤(アンテージ6C)、及び30質量部のプロセスオイル(ViVatec 50)をバンバリーミキサーを用いて混練した。得られた混練物208.5質量部と、硫黄2質量部と、加硫促進剤(1.875質量部のレノグランCBS-80、及び2質量部のソクシノールD)とをオープンロールを用いて加熱しながら混練し、SBR組成物2を得た。
【0077】
【表10】
【0078】
2-6.CR組成物の調製
表11に示される配合比のCR組成物を以下の手順で調整した。
CR組成物1(CR-1)
100質量部のCR(ショウプレンW)、40質量部のカーボンブラック(旭60UG)、1質量部のステアリン酸、10質量部のプロセスオイル(サンセン4240)、4質量部の酸化マグネシウム(キョーワマグ150)、及び1質量部の老化防止剤(アンテージ6C)をバンバリーミキサーを用いて混練した。得られた混練物156質量部と、硫黄1質量部と、酸化亜鉛5質量部と、加硫促進剤(0.375質量部のレノグランTMTM-80、0.625質量部のレノグランETU-80、及び1.333質量部のレノグランMBTS-75)とをオープンロールを用いて加熱しながら混練し、CR組成物1を得た。
【0079】
CR組成物2(CR-2)
100質量部のCR(ショウプレンW)、1質量部のカーボンブラック(旭60UG)、1質量部のステアリン酸、50質量部のシリカフィラー(Nipsil VN3)、10質量部のプロセスオイル(サンセン4240)、4質量部の酸化マグネシウム(キョーワマグ150)、及び1質量部の老化防止剤(アンテージ6C)をバンバリーミキサーを用いて混練した。得られた混練物167質量部と、硫黄1質量部と、酸化亜鉛5質量部と、加硫促進剤(0.375質量部のレノグランTMTM-80、0.625質量部のレノグランETU-80、及び1.333質量部のレノグランMBTS-75)とをオープンロールを用いて加熱しながら混練し、CR組成物2を得た。
【0080】
【表11】
【0081】
2-7.複合成形体の作製と接着強度測定
各ゴム組成物を100℃以下に加熱しながら予備成形して、未加硫のEPDMシート及びその他のゴムシートを作製した。各EPDMシートと、被着体としてのその他の各ゴムシートとの組み合わせにより複合成形体を作製した。ゴムシートの組み合わせは表12~15に示される。EPDMシートとゴムシートとを重ね、これらの積層体である予備複合体を160℃で表12~15に示されるプレス時間の熱プレスによって圧着させた。形成された複合成形体から幅25mmの短冊状の試験片を切り出した。試験片の短辺側の端部から、2枚のゴムシートをそれぞれ試験片の面方向に対して90度の方向に引き剥がす180度剥離試験により、接着強度(N/mm)を測定した。表12~15に示されるように、アクリル酸亜鉛を含むEPDMシートと、低HSPのゴムと高HSPのフィラーとを含むその他のゴムシートとの組み合わせによる複合成形体は、顕著に高い接着強度を示すことが確認された。
【0082】
【表12】
【0083】
【表13】
【0084】
【表14】
【0085】
【表15】
【符号の説明】
【0086】
1A,1B…複合成形体、10…ゴム成形体、20,21,22…被着体。
図1
図2