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特開2023-171992表皮形状調整装置および表皮形状調整装置を用いた内装部材の製造方法
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  • 特開-表皮形状調整装置および表皮形状調整装置を用いた内装部材の製造方法 図1
  • 特開-表皮形状調整装置および表皮形状調整装置を用いた内装部材の製造方法 図2
  • 特開-表皮形状調整装置および表皮形状調整装置を用いた内装部材の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171992
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】表皮形状調整装置および表皮形状調整装置を用いた内装部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 23/04 20060101AFI20231129BHJP
   F26B 25/00 20060101ALI20231129BHJP
   B29C 39/20 20060101ALI20231129BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20231129BHJP
   B29C 44/24 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
F26B23/04 B
F26B23/04 C
F26B25/00 A
B29C39/20
B29C44/00 A
B29C44/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083508
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柚木崎 傑
【テーマコード(参考)】
3L113
4F204
4F214
【Fターム(参考)】
3L113AA01
3L113AB06
3L113AC10
3L113AC76
3L113BA32
3L113CA06
3L113CA09
3L113CB06
3L113CB35
3L113CB40
3L113DA24
4F204AB02
4F204AD05
4F204AD08
4F204AD35
4F204AG03
4F204AG20
4F204EA01
4F204EB01
4F204EB11
4F204EB22
4F204EF27
4F204EK13
4F204EK17
4F214AB02
4F214AD05
4F214AD08
4F214AD35
4F214AG03
4F214AG20
4F214UA01
4F214UB01
4F214UB22
4F214UD13
4F214UD17
4F214UF27
(57)【要約】
【課題】遠赤外線を用いた新規の表皮形状調整装置を提供する。
【解決手段】表皮形状調整装置は、内装部材の表皮を形成する樹脂シートが配置される支台と、前記樹脂シートに向けて遠赤外線を照射する照射装置と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内装部材の表皮を形成する樹脂シートが配置される支台と、
前記樹脂シートに向けて遠赤外線を照射する照射装置と、
を備える、
表皮形状調整装置。
【請求項2】
前記支台は、前記内装部材の基材を支持するとともに、前記基材の意匠面側に、前記内装部材の表皮を形成する前記樹脂シートが重ねて配置され、
前記照射装置は、前記樹脂シートが配置される側から前記樹脂シートに向けて遠赤外線を照射する
請求項1に記載の表皮形状調整装置。
【請求項3】
前記照射装置が前記意匠面に沿って複数配置される、
請求項2に記載の表皮形状調整装置。
【請求項4】
前記照射装置と、前記樹脂シートとの距離を調整する調整機構をさらに備える、
請求項1に記載の表皮形状調整装置。
【請求項5】
前記樹脂シートが配置される側から前記樹脂シートに向けて気体を噴射する噴射装置をさらに備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載の表皮形状調整装置。
【請求項6】
前記照射装置を第1時間稼働させ、前記噴射装置を第2時間稼働させる制御装置をさらに備える、
請求項5に記載の表皮形状調整装置。
【請求項7】
前記樹脂シートを重ねる工程と、
前記樹脂シートに向けて前記照射装置から遠赤外線を照射する工程と、
前記樹脂シートに向けて気体を噴射する工程と、
前記樹脂シートと前記内装部材の基材との間に発泡材料を射出する工程と、
を備える、
請求項1の表皮形状調整装置を用いた内装部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表皮形状調整装置およびこの表皮形状調整装置を用いた内装部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、遠赤外線装置を乾燥装置として用いる例が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特表2008-502872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、被乾燥物を乾燥させる目的のために、遠赤外線を用いている。しかし、特許文献1は、表皮形状を調整するために遠赤外線を用いる点が開示されていない。
【0005】
本開示の課題は、遠赤外線を用いた新規の表皮形状調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る表皮形状調整装置は、内装部材の表皮を形成する樹脂シートが配置される支台と、前記樹脂シートに向けて遠赤外線を照射する照射装置と、を備える。
【0007】
本開示の一態様に係る上記の表皮形状調整装置を用いた内装部材の製造方法は、前記樹脂シートをセットする工程と、前記樹脂シートに向けて前記照射装置から遠赤外線を照射する工程と、前記樹脂シートに向けて気体を噴射する工程と、前記樹脂シートと前記内装部材の基材との間に発泡樹脂を射出する工程と、を備える。
【0008】
この表皮形状調整装置によれば、遠赤外線を用いて表皮形状を調整できる。また、この表皮形状調整装置を用いた内装部材の製造方法によれば表皮形状が調整できるため、内装部材を精度よく製造できる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、遠赤外線を用いた新規の表皮形状調整装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態における表皮形状調整装置の正面図。
図2】本開示の実施形態における表皮形状調整装置の上面図。
図3】本開示の実施形態における表皮形状調整装置を用いた内装部材の製造方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態について、図を参照しながら説明する。なお、表皮形状調整装置1の正面から見て、右側を右、左側を左、上側を上、下側を下と明細書および図面に記す。また、表皮形状調整装置1の正面から見て手前側(図2の下側)を前、奥側(図2の上側)を後と明細書および図面に記す。
【0012】
図1および図2に示すように、表皮形状調整装置1は、支台2と、照射装置4と、噴射装置6と、調整機構8と、制御装置10と、を備える。本実施形態では、自動車のインパネ(内装部材の一例)に使用される表皮の樹脂シート12を、インパネの基材14の意匠面形状に調整するための表皮形状調整装置1を例に説明する。
【0013】
支台2は、内装部材の基材14を支持するとともに、基材14の意匠面14a側に、内装部材の表皮を形成する樹脂シート12が重ねて配置される。本実施形態では、支台2は、インパネの基材14が、意匠面14a側が上面となるように配置される板状部材である。基材14は、支台2に取り付けられた支持金具2aによって支持される。樹脂シート12は、基材14の上方にむいた意匠面14aの上に重ねて配置される。
【0014】
支台2は、4つの脚2bの下端のそれぞれに車輪2cが設けられ、少なくとも前後方向に移動可能に配置される。支台2は、樹脂シート12が配置されたのち、照射装置4の後方に向かって移動し、照射装置4の下に配置される。
【0015】
照射装置4は、樹脂シート12が配置される側から樹脂シート12に向けて遠赤外線を照射する装置である。樹脂シート12に遠赤外線が照射されると、樹脂シート12が瞬時に加熱され、樹脂シート12の水分を乾燥させて除去する。これによって、樹脂シート12の含水率低下に伴う収縮を誘引することができる。
【0016】
照射装置4は、意匠面14aに沿って複数配置される。本実施形態では、左右方向に5個並んで配置され、右側の前方に1個追加で配置される。それぞれの照射装置4は、門型のフレーム4aによって支持される。本実施形態の表皮形状調整装置1では、遠赤外線を樹脂シート12全体に照射できるように、樹脂シート12の形状に沿って配置される。これによって、遠赤外線を樹脂シート12に満遍に照射することができる。
【0017】
また、それぞれの照射装置4は、フレーム4aから取り外し可能である。このため、例えば、樹脂シート12に遠赤外線の照射が不要な部分がある場合、その部分に対応する位置の照射装置4を取り外すことができる。より具体的には、例えば、図2に示すように、インパネの基材14のメーターフード部分14bに対応する位置のメーターフード部樹脂シート12aは、遠赤外線の照射が不要であるとする。この場合、複数の照射装置4のうち、メーターフード部分14bに対応する照射装置4bについては、取り外す。これによって、メーターフード部樹脂シート12aには、遠赤外線が照射されず、乾燥させないようにすることができる。
【0018】
あるいは、複数の照射装置4は、制御装置10によってそれぞれ別々に作動が制御されてもよい。これによって、例えばメーターフード部分14bに対応する照射装置4bのみ、作動させない、または遠赤外線の出力を弱めるようにすることができる。この結果、メーターフード部樹脂シート12aの部分のみ乾燥させない、または乾燥の程度を弱くすることができる。いずれにせよ、照射装置4を意匠面14aに沿って複数配置することによって、それぞれの照射装置4の取り外し、またはそれぞれの照射装置4の作動を調整することができる。これによって、樹脂シート12の特定の場所のみ乾燥させる(もしくは乾燥させない)ことや、乾燥の程度を樹脂シート12の部位ごとに調整できる。なお、上記実施形態では、メーターフード部樹脂シート12aを例に説明したが、樹脂シート12の部位はこれに限らず、いかなる部位であってもよい。
【0019】
噴射装置6は、樹脂シート12が配置される側から樹脂シート12に向けて気体を噴射する。本実施形態では噴射装置6は、空気が通過する管に、樹脂シート12に向けた複数の孔6aが設けられる。噴射装置6は、孔6aからコンプレッサによって加圧した空気を噴射するエアブロー装置である。また、本実施形態では噴射装置6は、樹脂シート12が配置される位置よりも上方かつ照射装置4の下方の位置に管が固定され、この管から樹脂シート12に向けて気体を噴射する。これによって、加熱した樹脂シート12を空気によって冷却することができる。噴射装置6は、本実施形態の構造に限らず、樹脂シート12に気体を噴射できる装置であれば、どのような構造であってもよい。
【0020】
照射装置4と樹脂シート12の間に湿度が高い空気が介在する場合、照射装置4が射出する遠赤外線のエネルギーがこの湿度の高い空気に含まれる水分子を温めることに使用されてしまう。このようなエネルギー損失を防止するため、噴射装置6は、照射装置4と樹脂シート12との間に空気を噴射する。これによって、噴射装置6は、照射装置4と樹脂シート12の空気を入れ替える。この結果、遠赤外線照射の効果を高めることができる。
【0021】
調整機構8は、樹脂シート12と照射装置4との距離Dを調整する機構である。本実施形態では、支台2の4つの脚2bと支台2との間にリフト機構が設けられる。調整機構8では、脚2bに対して支台2を持ち上げることによって、樹脂シート12から照射装置4までの距離Dを変更できる。距離Dは、例えば照射装置4を作動させた際の、樹脂シート12の表面温度の上昇具合に応じて調整される。調整機構8は、本実施形態の構造に限らず、距離Dを変化させることができる機構であればどのような構造であってもよい。
【0022】
制御装置10は、照射装置4および噴射装置6に電気的に接続され、照射装置4および噴射装置6の作動時間を制御する。制御装置10は、実際にはメモリ、演算装置などを有するマイクロコンピュータである。制御装置10は、照射装置4を第1時間稼働させ、噴射装置6を第2時間稼働させる。第1時間は、例えば30秒から70秒である。第2時間は例えば40秒から80秒である。第1時間は、樹脂シート12の表面温度の上昇具合に応じて適宜変更可能な値である。また、第2時間は、樹脂シート12の表面温度の下降具合に応じて適宜変更可能な値である。本実施形態では、制御装置10は、照射装置4を第1時間稼働させたのち、噴射装置6を第2時間稼働させる。しかし、制御装置10は、照射装置4を稼働させている最中に、噴射装置6を稼働させてもよい。これによって、遠赤外線のエネルギー損失を抑制できる。
【0023】
次に図3を用いて、本実施形態の内装部材の製造方法について説明する。
【0024】
図3(i)に示すように、第1の工程では、支台2に基材14をセットする。第2の工程では、セットした基材14の意匠面14aに重ねて樹脂シート12を配置する。その状態で、支台2を後方に押出し、樹脂シート12が照射装置4の下方に位置するまで支台2を進める。なお、図1に示す距離Dは、調整機構8によって予め調整されている。
【0025】
図3(ii)に示すように、第3の工程では、照射装置4の下方に配置した樹脂シート12に向けて、照射装置4から遠赤外線を第1時間照射し、樹脂シート12を加熱する。具体的には、制御装置10(図1参照)が照射装置4を第1時間稼働させることによって、遠赤外線を第1時間の間、樹脂シート12に照射する。
【0026】
図3(iii)に示すように、第4の工程では、加熱した樹脂シート12に向けて、噴射装置6から気体を噴射し冷却する。具体的には、制御装置10(図1参照)が噴射装置6を第2時間稼働させることによって、気体を第2時間の間、樹脂シート12に当てる。
【0027】
図3(iv)に示すように、第5の工程では、支台2を前方に移動させ、図3(v)に示すように、樹脂シート12を発泡成形型100にセットしたのち、基材14をその上に載せる。発泡成形型100は、発泡体を形成するための成形型である。発泡成形型100には、基材14の意匠面14aに沿ったキャビティーが形成される。樹脂シート12および基材14は、上下反転させた状態でキャビティーにセットされる。基材14と樹脂シート12とがキャビティーにセットされると、発泡成形型100の上型と下型とを閉じ、基材14と樹脂シート12との間に発泡樹脂材料(発泡材料の一例)が流し込まれる。
【0028】
図3(v)に示すように、第6の工程では、発泡成形型100の上型と下型を閉じ、樹脂シート12と基材14との間に発泡樹脂材料を射出し、発泡体を形成する。内装部材は、このようにして製造される。
【0029】
このような樹脂シート12は、例えば、熱可塑性ポリウレタンのような吸湿性を有する材料によって形成される。また、樹脂シート12は、基材14の意匠面14aの形状に合わせて形成される。しかし、このような樹脂シート12は、水分を含むと伸びる。樹脂シート12が伸びた状態では、上記の第5の工程において、発泡成形型100にセットする樹脂シート12にシワが発生しやすい。樹脂シート12にシワが発生すると、表皮と基材14との間に隙間が発生しやすい。また、内装部品の外観不良も発生しやすい。
【0030】
そこで従来は、樹脂シート12を乾燥炉に入れることで、このような樹脂シートの水分を除去していた。しかし、乾燥炉は、水分の除去までに時間がかかる。このため、複数の樹脂シート12を纏めて乾燥する必要がある。この結果、乾燥後から発泡体を形成する工程までの間に、再び樹脂シート12が水分を含んでしまうおそれがあった。
【0031】
一方、遠赤外線は、樹脂シート12中に含まれる水分を、素早く乾燥させ除去することに優れる。したがって、本実施形態の表皮形状調整装置1では、遠赤外線を樹脂シート12全体に照射できるように、樹脂シート12の形状に沿って照射装置4を配置している。これによって、短時間で樹脂シート12を乾燥させることができる。この結果、樹脂シート12を1枚ずつ乾燥させ、すぐに発泡成形型100にセットすることができる。これによって、樹脂シート12が水分を含む前に発泡成形型100にセットできる。この結果、樹脂シート12にシワが発生しにくい。
【0032】
以上説明した通り、本開示によれば遠赤外線を用いた新規の表皮形状調整装置1を提供できる。
【0033】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0034】
例えば、上記実施形態では、基材14の意匠面14a上に樹脂シート12を配置するが、樹脂シート12は必ずしも、基材14の上に配置する必要はない。樹脂シート12は、例えば、支台2の上に直接配置してもよい。
【0035】
また、上記実施形態では内装部材としてインパネを例に説明したが、アームレーストや、ドアトリムなどの自動車に用いる内装部材であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 :表皮形状調整装置
2 :支台
4 :照射装置
6 :噴射装置
8 :調整機構
10 :制御装置
12 :樹脂シート
14 :基材
14a :意匠面
D :距離
図1
図2
図3