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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171994
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】光照射装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 65/00 20060101AFI20231129BHJP
   H01J 61/30 20060101ALI20231129BHJP
   B01J 19/12 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H01J65/00 C
H01J61/30 Z
B01J19/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083511
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】大図 将人
(72)【発明者】
【氏名】竹元 史敏
【テーマコード(参考)】
4G075
【Fターム(参考)】
4G075AA29
4G075AA30
4G075AA62
4G075BA04
4G075BA05
4G075CA33
4G075DA02
4G075EB31
4G075EB37
4G075EC21
4G075ED04
4G075FA03
4G075FB06
(57)【要約】
【課題】被処理物の表面の処理ムラを適切に抑制することができる光照射装置を提供する。
【解決手段】光照射装置10は、エキシマランプ12と、エキシマランプ2を収容し、光取出し口11aが形成されたランプハウス11と、を備え、光取出し口11aから放射される光を、一定の搬送方向に搬送される被処理物30の表面に照射する。エキシマランプ12は、発光管13と、発光管13における光取出し口11aに対向する外表面に設けられ、第1の開口周期で開口が形成された外部電極14と、を備える。エキシマランプ12と被処理物30との間には、第2の開口周期で開口が形成され、被処理物30に照射される光を減光する減光部材15が配置されている。外部電極14の開口を形成する素線14aおよび減光部材15の開口を形成する素線15aの少なくとも一方は、搬送方向に対して斜めに交差する方向に延びている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキシマランプと、該エキシマランプを収容し、光取出し口が形成されたランプハウスと、を備え、前記光取出し口から放射される紫外線を、一定の搬送方向に搬送される被処理物の表面に照射する光照射装置において、
前記エキシマランプは、発光管と、前記発光管における前記光取出し口に対向する外表面に設けられ、第1の開口周期で開口が形成された外部電極と、を備え、
前記エキシマランプと前記被処理物との間に、第2の開口周期で開口が形成され、前記被処理物に照射される前記紫外線を減光する減光部材が配置され、
前記外部電極の開口を形成する素線および前記減光部材の開口を形成する素線の少なくとも一方が、前記搬送方向に対して斜めに交差する方向に延びていることを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記外部電極および前記減光部材のうちの一方の部材が、前記搬送方向に延びる前記素線を有し、他方の部材の前記素線のそれぞれが、前記搬送方向に対して斜めに交差する方向に延びていることを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記被処理物の表面の法線方向から見た場合に、前記他方の部材の前記素線のそれぞれが、前記搬送方向に延びる前記素線のうち隣接する複数の前記素線と交差することを特徴とする請求項2に記載の光照射装置。
【請求項4】
複数の前記減光部材が重ねて配置されており、
前記外部電極および複数の前記減光部材のうちのいずれか1つの部材が、前記搬送方向に延びる前記素線を有し、残りの部材の前記素線のそれぞれが、前記搬送方向に対して斜めに交差する方向に延びていることを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記減光部材は、複数の前記素線を互いに交差させたメッシュ構造を有することを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項6】
エキシマランプと、該エキシマランプを収容し、光取出し口が形成されたランプハウスと、を備え、前記光取出し口から放射される紫外線を、一定の搬送方向に搬送される被処理物の表面に照射する光照射装置において、
前記エキシマランプは、発光管と、前記発光管における前記光取出し口に対向する外表面に設けられ、第1の開口周期で開口が形成された外部電極と、を備え、
前記エキシマランプと前記被処理物との間に、第2の開口周期で開口が形成され、前記被処理物に照射される前記紫外線を減光する減光部材が配置され、
前記減光部材の開口は、前記紫外線の照射によって、前記被処理物の表面に周期的な線状パターンを有するように形成されており、
前記外部電極の開口を形成する素線および前記線状パターンの少なくとも一方が、前記搬送方向に対して斜めに交差する方向に延びるように、前記外部電極と前記遮光部材とが位置していることを特徴とする光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物に光を照射し、当該被処理物の表面を処理する光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板の表面改質や化粧シートの艶消しのために、被処理物である基板や化粧シートの表面にエキシマランプから放射される紫外線を照射する光照射装置が使用されている。このような光照射装置においては、被処理物の材質等によって、照射する紫外線の量を調整する必要がある。
【0003】
紫外線の照射量を調整する方法としては、エキシマランプへの入力電力を変える方法が挙げられる。
例えば特許文献1は、放電容器の外表面に一対のメッシュ状の外部電極が設けられたエキシマランプを開示する。このエキシマランプは、外部電極に高周波高電圧を印加することにより放電容器内で誘電体バリア放電を発生させ、紫外線を放射する。
エキシマランプへの入力電力を小さくすることでエキシマランプから放射される紫外線量を少なくすることが可能である。しかしながら、入力電力を小さくしすぎるとエキシマランプが点灯しなくなるため、減光量には限度がある。
【0004】
そこで、光源と被処理物との間に例えばメッシュ状の減光部材を配置することで、光照射量を減少させる技術がある。
例えば特許文献2は、被処理物を載置するステージと光源との間に、被処理物表面に照射される光の面内光強度分布を補正する補正部材を配置する技術を開示する。ここで、補正部材は、貫通メッシュ構造あるいは多数の貫通穴構造であり、貫通部の面内分布(開口率)を変化させることで、被処理物表面の光の面内光強度分布を所望の面内光強度分布とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-243435号公報
【特許文献2】特開2012-49305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エキシマランプから放射される光を、減光部材を介して被処理物に照射した場合、被処理物の表面には、エキシマランプの外部電極のパターンと減光部材のパターンの2つの影ができる。
これら2つのパターンが、平行かつ開口周期が異なるパターンである場合、2つの影が被処理物上で重なることでモアレが発生する。このモアレ縞の方向が被処理物の搬送方向と一致する場合、被処理物を搬送しながら光処理した結果、モアレ縞の明暗の影響を強く受け、被処理物の表面に縞状の処理ムラが発生する。
【0007】
そこで、本発明は、被処理物の表面の処理ムラを適切に抑制することができる光照射装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る光照射装置の一態様は、エキシマランプと、該エキシマランプを収容し、光取出し口が形成されたランプハウスと、を備え、前記光取出し口から放射される紫外線を、一定の搬送方向に搬送される被処理物の表面に照射する光照射装置において、前記エキシマランプは、発光管と、前記発光管における前記光取出し口に対向する外表面に設けられ、第1の開口周期で開口が形成された外部電極と、を備え、前記エキシマランプと前記被処理物との間に、第2の開口周期で開口が形成され、前記被処理物に照射される前記紫外線を減光する減光部材が配置され、前記外部電極の開口を形成する素線および前記減光部材の開口を形成する素線の少なくとも一方が、前記搬送方向に対して斜めに交差する方向に延びている。
【0009】
このように、エキシマランプと被処理物との間に配置した減光部材によって、被処理物に照射される紫外線を減光するので、被処理物に応じた紫外線量で光照射処理を行うことができる。また、エキシマランプの外部電極の開口を形成する素線と、減光部材の開口を形成する素線との少なくとも一方が、被処理物の搬送方向に対して斜めに交差する方向に延びた構成とするので、外部電極の素線による影と減光部材の素線による影とが被処理物上で重なったとしても、被処理物の搬送方向に延びるモアレ縞(縞模様)は発生しない。
仮に、被処理物上に当該被処理物の搬送方向に延びるモアレ縞が発生していると、上記搬送方向に搬送しながら光照射処理を行った被処理物の表面では処理ムラが発生する。これに対して、本装置では、上記処理ムラの発生を適切に抑制することができる。
【0010】
また、上記の光照射装置において、前記外部電極および前記減光部材のうちの一方の部材が、前記搬送方向に延びる前記素線を有し、他方の部材の前記素線のそれぞれが、前記搬送方向に対して斜めに交差する方向に延びていてもよい。
このように、外部電極の素線と減光部材の素線のどちらか一方が搬送方向に延びている場合でも、素線同士に角度を持たせることで、被処理物の搬送方向に対して角度を持ってモアレを発生させることができる。そのため、上記搬送方向に搬送しながら光照射処理を行った被処理物の表面における処理ムラを適切に抑制することができる。
【0011】
さらに、上記の光照射装置において、前記被処理物の表面の法線方向から見た場合に、前記他方の部材の前記素線のそれぞれが、前記搬送方向に延びる前記素線のうち隣接する複数の前記素線と交差してもよい。
例えば、外部電極の素線が搬送方向に延びている場合、減光部材の素線が外部電極のパターンの開口を周期的に遮る場合に処理ムラとして問題となり得る。減光部材の素線のそれぞれが、隣接する複数の外部電極の素線と交差するようにすることで、減光部材の素線によって外部電極のパターンの各開口を均等に塞ぐことができる。この場合、被処理物の表面には搬送方向に対して斜めのモアレ縞を発生させることができ、搬送方向に搬送しながら光照射処理を行った被処理物の表面では処理ムラが発生しない。
【0012】
また、上記の光照射装置において、複数の前記減光部材は重ねて配置されており、前記外部電極および複数の前記減光部材のうちのいずれか1つの部材が、前記搬送方向に延びる前記素線を有し、残りの部材の前記素線のそれぞれが、前記搬送方向に対して斜めに交差する方向に延びていてもよい。
この場合、被処理物の表面における処理ムラを抑制しつつ、複数の減光部材によって被処理物に照射される紫外線量を所望量に調整することができる。
【0013】
さらにまた、上記の光照射装置において、前記減光部材は、複数の前記素線を互いに交差させたメッシュ構造を有していてもよい。
この場合、エキシマランプの発光管が割れた場合であっても、被処理物に破片が飛び散らないようにすることができる。
【0014】
また、本発明に係る光照射装置の一態様は、エキシマランプと、該エキシマランプを収容し、光取出し口が形成されたランプハウスと、を備え、前記光取出し口から放射される光を、一定の搬送方向に搬送される被処理物の表面に照射する光照射装置において、前記エキシマランプは、発光管と、前記発光管における前記光取出し口に対向する外表面に設けられ、第1の開口周期で開口が形成された外部電極と、を備え、前記エキシマランプと前記被処理物との間に、第2の開口周期で開口が形成され、前記被処理物に照射される前記光を減光する減光部材が配置され、前記減光部材の開口は、前記紫外線の照射によって、前記被処理物の表面に周期的な線状パターンを有するように形成されており、前記外部電極の開口を形成する素線および前記線状パターンの少なくとも一方が、前記搬送方向に対して斜めに交差する方向に延びるように、前記外部電極と前記遮光部材とが位置している。
【0015】
このように、エキシマランプと被処理物との間に配置した減光部材によって、被処理物に照射される紫外線を減光するので、被処理物に応じた紫外線量で光照射処理を行うことができる。また、エキシマランプの外部電極の開口を形成する素線と、減光部材により形成される線状パターンとの少なくとも一方が、被処理物の搬送方向に対して斜めに交差する方向に延びた構成とするので、外部電極の素線による影と減光部材による線状パターンとが被処理物上で重なったとしても、被処理物の搬送方向に延びるモアレ縞(縞模様)は発生しない。そのため、上記搬送方向に搬送しながら光照射処理を行った被処理物の表面での処理ムラの発生を適切に抑制することができる。
例えば減光部材は、板状部材に上記第2の開口周期で貫通孔が形成された貫通孔構造とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、被処理物の搬送方向に延びるモアレ縞の発生を抑制し、被処理物の表面の処理ムラを適切に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態における光照射装置の概略構成例を示す断面図である。
図2】エキシマランプと減光部材との配置例を示す図である。
図3】ランプ電極と減光部材との配置例を示す図である。
図4】開口周期の説明図である。
図5】電極素線とメッシュ素線とのイメージ図である。
図6】平行モアレの説明図である。
図7】回転モアレの説明図である。
図8】電極素線に対してメッシュ素線の角度が小さい場合の配置例である。
図9】電極素線に対してメッシュ素線の角度が大きい場合の配置例である。
図10】ランプ電極の構成を説明するための図である。
図11】電極素線とメッシュ素線との交差角度の説明図である。
図12】減光部材の別の例を示す図である。
図13】減光部材の別の例を示す図である。
図14】外部電極と減光部材との別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態では、一定の搬送方向に搬送される被処理物(ワーク)の表面に対してエキシマランプから放射される紫外線を照射し、ワーク表面の表面改質や艶消しを行う光照射装置について説明する。ここで、ワークは、基板や化粧シート等とすることができる。
なお、本実施形態では、表面改質や艶消しを行う光照射装置について説明するが、一定の搬送方向に搬送されるワークの表面に対してエキシマランプから放射される紫外線を照射して、ワーク表面を処理する光照射装置であればよく、用途は上記に限定されない。
【0019】
図1は、本実施形態における光照射装置10の概略構成例を示す断面図である。
図1に示すように、光照射装置10は、例えば金属製のランプハウス11を備える。ランプハウス11は、エキシマランプ12を収容する。ランプハウス11の下面におけるエキシマランプ12の発光面に対向する位置には、光取出し口11aとなる開口が形成されている。
以下の説明においては、エキシマランプ12の幅方向をX方向、エキシマランプ12の長手方向(管軸方向)をY方向、X方向およびY方向に直交する方向をZ方向とする。本実施形態に係る光照射装置10は、Z方向を上下方向として配置される。
【0020】
光照射装置10の下方には、ワーク30を搬送する搬送機構20が配置される。搬送機構20は、複数のローラと、各ローラを回転駆動する不図示の駆動部と、を備える。ワーク30は、搬送機構20のローラに載置され、当該ローラが回転駆動されることによりX方向に搬送される。光照射装置10は、光取出し口11aの直下に搬送されたワーク30に対して紫外線を照射する。紫外線が照射されたワーク30は、搬送機構20によって搬出される。
搬送機構20は、複数のローラにより連続性を有するフィルムを搬送する、所謂ロールtoロール式の搬送機構とすることができる。なお、搬送機構20は、ロールtoロール式の搬送機構に限定されない。例えば搬送機構20は、ワーク30を保持するステージと、当該ステージをX方向に移動させる駆動部と、を備える構成であってもよい。
【0021】
エキシマランプ12は、発光管13を備える。発光管13は、紫外線に対して透過性を有する材料(例えば石英ガラス)により形成されている。或いは、発光管13は、真空紫外線から紫外線に対して透過性を有する材料(例えば合成石英ガラス)により形成されていてもよい。発光管13は、Z方向に対向配置された上壁および下壁を有する、断面が扁平な矩形管状である。
発光管13の内部には、放電によってエキシマ分子を形成する放電用ガスが封入されている。発光管13における上壁の外表面および下壁の外表面には、それぞれ外部電極14が設けられている。一対の外部電極14の一方は高電圧供給電極であり、他方は接地電極である。外部電極14は、所定の開口周期(第1の開口周期)で開口が形成された網目状の光透過性の電極であり、網目の隙間から光が透過するように構成されている。
この場合、外部電極14の開口とは、外部電極14を形成する素線で区画された光透過部位のことである。外部電極14の開口とは、例えば、外部電極14を形成する素線で周囲を囲まれた内側の開口のことであり、後述する図3の符号14b、図5の符号14b、図12の符号14bで示す部分のことである。
【0022】
一対の外部電極14の形状は、それぞれ異なっていてもよい。例えば、発光管13の上壁の外表面に設けられる外部電極14は、光を通過させる必要がないため、ベタ状の電極であってもよい。また、発光管13の下壁の外表面に設けられる外部電極14、すなわちワーク30に対向する外部電極14は、光を透過させることができ、所定の開口周期で開口が形成された電極であればよく、例えば、スリットが周期的に設けられた電極などであってもよい。
外部電極14を形成する材料は、例えば、金や白金、または、これらの含む合金等を採用し得る。
【0023】
なお、本実施形態では、光照射装置10が2つのエキシマランプ12を備える場合について説明するが、エキシマランプ12の数は1つ以上であればよい。
また、本実施形態では、エキシマランプ12は、その長手方向がワーク30の搬送方向(X方向)に対して直交するように配置される場合について説明するが、エキシマランプ12の配置は上記に限定されるものではない。
【0024】
エキシマランプ12とワーク30との間には、ワーク30に照射される紫外線を減光する減光部材15が配置されている。減光部材15は、ランプハウス11の光取出し口11aに配置することができる。減光部材15は、所定の開口周期(第2の開口周期)で開口が形成された網目状のメッシュ部材である。
この場合、遮光部材15の開口とは、遮光部材15を形成する素線で区画された光透過部位のことである、後述する図3の符号15b、図5の符号15b、図13の符号15fで示す部分のことである。
エキシマランプ12から放射された紫外線は、減光部材15を介して光取出し口11aから放出される。このとき、エキシマランプ12から放射された紫外線は、減光部材15の開口率に応じて減光される。
【0025】
減光部材15は、図2に示すように、エキシマランプ12の下方において、垂れ下がらないように支持部材16により支持することができる。例えば減光部材15は、支持部材16で挟んで溶接されていてもよい。
なお、本実施形態では、減光部材15がランプハウス11の光取出し口11aに配置されている場合について説明するが、上記に限定されるものではなく、減光部材15は、エキシマランプ12とワーク30との間に配置されていればよい。例えば減光部材15は、ランプハウス11の内部に配置されていてもよいし、ランプハウス11の外部に配置されていてもよい。
【0026】
本実施形態において、ワーク30に対向する外部電極(以下、「ランプ電極」という。)14は、図3に示すように、X方向およびY方向にそれぞれ平行な素線(以下、「電極素線」という。)14aによって多数の開口14bが周期的に形成された網目状電極である。
また、本実施形態において、減光部材15は、図3に示すように、X方向およびY方向に対してそれぞれ所定の角度をなす素線(以下、「メッシュ素線」という。)15aによって多数の開口15bが周期的に形成されたメッシュ部材である。
そして、本実施形態では、外部電極14の開口周期(第1の開口周期)と、減光部材15の開口周期(第2の開口周期)とは異なる。図4は、減光部材15のイメージAと外部電極14のイメージBとを示す図である。この図4に示すように、開口周期は、隣接する開口の中心間距離α、βで規定することができる。あるいは、開口周期は、素線(15aまたは14a)が延びる方向に対して直交する方向(図4の左右方向)において、素線の線幅と開口幅とを足し合わせた距離a、bで規定することもできる。
【0027】
図5は、電極素線14aとメッシュ素線15bとのイメージ図である。
なお、本来、エキシマランプ12のランプ電極14と減光部材15とは、ワーク30の表面の法線方向(Z方向)から見て重なって配置されているが、この図5では説明のために位置をずらして示している。また、この図5では、ランプ電極14の開口14bおよび減光部材15の開口15bを誇張して示しており、開口14bと開口15bとの寸法比は、実際の寸法比とは異なる。
【0028】
この図5に示すように、ランプ電極14の電極素線14aは、ワーク30の搬送方向(X方向)に延びる素線と、ワーク30の搬送方向に対して直交する方向(Y方向)に延びる素線とにより構成されている。そして、減光部材15のメッシュ素線15aは、X方向およびY方向に対してそれぞれ斜めに交差する方向に延びる素線により構成されている。
このように、減光部材15のメッシュ素線15aは、ワーク30の搬送方向に対して斜めに交差する方向に延びている。
【0029】
エキシマランプ12から放射される光を、減光部材15を介してワーク30に照射した場合、ワーク30の表面には、ランプ電極14のパターンと減光部材15のパターンの2つの影ができる。仮に、これら2つのパターンが、平行かつ開口周期が異なるパターンである場合、2つの影がワーク30上で重なるとモアレ(平行モアレ)が発生する。
そして、このモアレ縞の方向がワーク30の搬送方向であるX方向と一致する場合、ワーク30をX方向に搬送しながら光照射処理した結果、ワーク30の表面にX方向に延びる縞状の処理ムラが発生してしまう。
【0030】
図6に示すパターンP11およびパターンP12は、それぞれX方向に平行かつ等間隔なパターンであり、パターンP11とパターンP12とは、パターンの間隔が異なる。このような2つのパターンP11、P12を重ね合わせると、パターンP13のように、X方向のモアレ縞が発生する。
【0031】
仮に、ランプ電極14がX方向に伸びる素線を有し、減光部材15が、ランプ電極14の素線とは異なる周期でX方向に伸びる素線を有する場合、ランプ電極14のX方向に延びる素線によりパターンP11のようなパターンがワーク30上に形成され、減光部材15のX方向に延びる素線によりパターンP12のようなパターンがワーク30上に形成される。そのため、ワーク30上には、パターンP13のように搬送方向に平行なモアレ縞が発生することになる。つまり、ワーク30上におけるY方向の光強度分布は、周期状の光強度分布となる。このモアレ縞の明暗は、ワーク30をX方向に搬送しながら光照射処理することで強調され、処理ムラとなって発生する。
【0032】
なお、ランプ電極14および減光部材15によりワーク30上に形成されるパターンが、XY方向に交差する格子状パターンである場合、ワーク30上にはY方向のモアレ縞も発生する。しかしながら、ワーク30をX方向に搬送しながら光照射処理を行うことで、当該モアレ縞によるX方向の周期状の光強度分布は均一化されるため、処理ムラは発生しない。ワーク30上にX方向のモアレ縞が発生する場合に、処理ムラとして問題となり得る。
【0033】
つまり、電極素線14aとメッシュ素線15aとがそれぞれワーク30の搬送方向であるX方向に伸び、かつ、各素線の開口周期が異なる場合に、モアレによる処理ムラが発生する。
そこで、本実施形態では、上述したように、電極素線14aをX方向と平行に配置し、メッシュ素線15aをX方向に対して斜めに配置する。
図7に示すパターンP21はX方向に平行かつ等間隔なパターン、パターンP22はX方向に対して斜めかつ等間隔なパターンである。このような2つのパターンP21、P22を重ね合わせると、パターンP23のように、X方向に対して斜め方向のモアレ縞(回転モアレ)が発生する。
【0034】
本実施形態では、ランプ電極14がX方向に伸びる素線を有し、減光部材15がX方向に対して斜めに交差する方向に伸びる素線を有する。そのため、ランプ電極14のX方向に延びる素線によりパターンP21のようなパターンがワーク30上に形成され、減光部材15のX方向に対して斜めに交差する方向に延びる素線によりパターンP22のようなパターンがワーク30上に形成される。その結果、ワーク30上には、パターンP13のように搬送方向に対して斜めにモアレ縞が発生することになる。
そのため、X方向に搬送しながら光照射処理したワーク30の表面では、処理ムラは発生しない。
【0035】
このように、メッシュ素線15aをX方向に対して斜めに交差する方向に配置することで、X方向のモアレ縞が発生しないようにすることができ、処理ムラを抑制することができる。
ただし、メッシュ素線15aのX方向に対する角度が比較的小さい場合、メッシュ素線15aが、X方向に延びるランプ電極14の開口(電極開口)を周期的に遮ることになる。そのため、処理ムラを高精度に抑制することができない。
【0036】
図8は、電極素線14aに対してメッシュ素線15aの角度が小さい場合の配置例である。
この図8に示すように、X方向に対するメッシュ素線15aの角度が小さいと、メッシュ素線15a全体で電極開口を遮る部分aと、メッシュ素線15aの一部で電極開口を遮る部分bとが発生することになる。すると、メッシュ素線15aが周期的に電極開口を塞ぐことになり、電極開口が塞がれた部分だけ照度が低くなるため、処理ムラとして発生し得る。
【0037】
一方、図9に示すように、電極素線14aに対してメッシュ素線15aの角度が大きい場合は、メッシュ素線15aが均等に電極開口を塞ぐことになる。そのため、全体として均一な照度減少となり、処理ムラを確実に防止することができる。
メッシュ素線15aが均等に電極開口を塞ぐためには、図9に示すように、各メッシュ素線15aが必ず電極開口を跨ぐ、すなわち、各メッシュ素線15aが必ずY方向に隣接する少なくとも2本の電極素線14aと交点を持つようにすればよい。
【0038】
図10に示すように、ランプ電極14のX方向における幅(ランプ電極幅)をW、Y方向に隣接する電極素線14aの間隔(電極開口幅)をAとした場合、メッシュ素線15aのX方向に対する角度θが下記(1)式の条件を満たす場合、図11に示すように、メッシュ素線15aが必ず電極開口を塞ぐ。
tanθ > A/W ………(1)
例えば、W=57.6mm、A=2.5mmの場合、θ>2.48°(θ>3°)であれば、メッシュ素線15aは必ず電極開口を塞ぐことになり、処理ムラは発生しない。
【0039】
なお、ランプ電極14のランプ電極幅Wおよび電極開口幅Aは一例であり、上記に限定されるものではない。また、図10に示す電極素線14aの線幅W1についても、任意の線幅とすることができる。例えば、線幅W1は0.2mmとすることができる。
また、減光部材15のメッシュ素線15aの線径、メッシュ開口幅および開口率も特に限定されるものではなく、所望の減光量に応じて適宜設計可能である。例えば、減光部材15としては、線径が0.23mm、メッシュ開口幅が0.278mm、開口率が29.9%、開口周期が0.508mmのメッシュ部材や、線径が0.1mm、メッシュ開口幅が0.154mm、開口率が36.5%、開口周期が0.254mmのメッシュ部材などを選択することができる。ここで、上記開口周期は、図4に示す距離a、bのことである。
【0040】
以上説明したように、本実施形態における光照射装置10は、第1の開口周期で開口が形成された外部電極14を備えるエキシマランプ12と、エキマランプ12と被処理物(ワーク)30との間に配置され、第1の開口周期とは異なる第2の開口周期で開口が形成された減光部材15と、を備え、エキシマランプ12から放射される紫外線を、減光部材15を介してワーク30の表面に照射する。ここで、外部電極14の開口を形成する素線(電極素線)14aは、ワーク30の搬送方向(X方向)に延び、減光部材15の開口を形成する素線(メッシュ素線)15aは、ワーク30の搬送方向(X方向)に対して斜めに交差する方向に延びている。
【0041】
このように、メッシュ素線15aが、ワーク30の搬送方向に対して斜めに配置されているため、ワーク30の搬送方向に沿ったモアレ縞の発生を抑制することができる。そのため、モアレによる処理ムラの発生を抑制することができる。
また、ワーク30の表面の法線方向から見た場合、メッシュ素線15aのそれぞれが、搬送方向に延びる電極素線14aのうち隣接する複数の電極素線14aと交差するように構成することができる。これにより、ワーク30の表面に、搬送方向に対して斜めのモアレ縞を発生させることができる。モアレの明暗を搬送方向に沿って順次出現させることができるので、搬送方向に搬送しながら光照射処理を行った被処理物の表面での処理ムラの発生を確実に防止することができる。
【0042】
ここで、減光部材15は、複数の素線を互いに交差させたメッシュ構造とすることができる。メッシュ構造の開口率を適宜設計することで、所望の減光量を実現することができる。
また、この減光部材15は、エキシマランプ12の発光管13が割れた場合に、ワーク30に破片が飛び散るのを抑制する役割を担うことができる。さらに、減光部材15をアースに落とすことで、当該減光部材15をシールド板として使用することができ、エキシマランプ12からの電磁波の影響を抑制することができる。
【0043】
(変形例)
上記実施形態においては、減光部材15が1枚である場合について説明したが、減光部材15は複数枚であってもよい。この場合、複数の減光部材15をZ方向に重ねて配置する。この場合にも、複数枚重ねた減光部材15は、支持部材16で挟んで溶接してよい。また、複数枚の減光部材15は、各メッシュ素線15aが、それぞれX方向に対して斜めに交差する方向に延びるように配置するものとする。この場合、複数枚の減光部材15の各メッシュ素線15aのX方向に対する角度は、それぞれ異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0044】
また、上記実施形態においては、電極素線14aがX方向に延び、メッシュ素線15aがX方向に対して斜めに交差する方向に延びる場合について説明したが、メッシュ素線15aがX方向に延び、電極素線14aがX方向に対して斜めに交差する方向に延びていてもよい。ランプ電極14および減光部材15のうちの一方の部材が、X方向に延びる素線を有し、他方の部材の素線のそれぞれが、X方向に対して斜めに交差する方向に延びていれば、ワーク30上にはX方向に対する回転モアレを発生させることができる。
さらに、電極素線14aとメッシュ素線15aの両方がX方向に対して斜めに交差する方向に延びていてもよい。
つまり、電極素線14aおよびメッシュ素線15aは、ワーク30表面にX方向とは異なる方向のモアレ縞を発生させるか、モアレ縞を発生させないような方向に延びていればよい。これにより、上記実施形態のように処理ムラの発生を適切に抑制することができる。
【0045】
さらに、上記実施形態においては、減光部材15が網目状(メッシュ状)である場合について説明したが、上記に限定されるものではない。
減光部材は、例えば図12に示す減光部材15Aのように、板状部材に多数の貫通孔15cが形成された構成であってもよい。多数の貫通孔15cが、XY平面における第1方向および第2方向にそれぞれ一定のピッチで形成されている場合、ワーク30の表面には、減光部材15Aのパターンとして、第1方向および第2方向にそれぞれ延びる線状のパターンが形成される。上記の第1方向および第2方向をそれぞれX方向とは異なる方向とすることで、ワーク30上にX方向に対して斜めの線状パターンを形成することができ、減光部材として網目状の減光部材15を使用した場合と同様の効果が得られる。
つまり、減光部材は、紫外線の照射によってワーク30の表面に周期的な線状パターンを形成するような開口が形成された部材であってよい。この場合、電極素線14aおよび上記線状パターンの少なくとも一方が、X方向に対して斜めに交差する方向に延びていればよい。
【0046】
また、減光部材は、例えば図13に示す減光部材15Bのように、一方向のみに素線15dが張られた構成であってもよい。減光部材15Bは、隣接する素線15dと当該隣接する素線15dの端部同士を繋ぐ減光部材15Bの外枠15eとによって形成されるスリット状の開口15fが周期的に設けられた構成である。
この場合にも、電極素線14aおよび上記素線15dの少なくとも一方が、X方向に対して斜めに交差する方向に延びるように、外部電極14と遮光部材15Bとが位置していればよい。
【0047】
また、上記実施形態においては、外部電極14の開口周期(第1の開口周期)と、減光部材15の開口周期(第2の開口周期)とが異なる場合について説明したが、例えば図14に示すように、外部電極14の開口周期と減光部材15の開口周期とが同じであってもよい。この場合にも、外部電極14の開口を形成する素線および減光部材15の開口を形成する素線の少なくとも一方が、搬送方向(X方向)に対して斜めに交差する方向に延びていればよい。
【符号の説明】
【0048】
10…光照射装置、11…ランプハウス、11a…光取出し口、12…エキシマランプ、13…発光管、14…外部電極、14a…電極素線、14b…開口、15…減光部材、15a…メッシュ素線、15b…開口、16…支持部材、20…ワークステージ、30…被処理物(ワーク)
図1
図2
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図8
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