(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172010
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】指標算出装置、指標算出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20231129BHJP
【FI】
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083546
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】小川 俊夫
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA03
(57)【要約】
【課題】がん検診情報やレセプト情報を用いて、自動的にがん検診精度管理指標を算出することができる指標算出装置を提供する。
【解決手段】指標算出装置1は、がん検診の結果、がん検診の受診者を識別する受診者識別子、及び受診年月を含む複数のがん検診情報が記憶されるがん検診記憶部11と、傷病名、診療行為、医薬品、診療の受診者を識別する受診者識別子、及び診療年月を含む複数のレセプト情報が記憶されるレセプト記憶部12と、複数のレセプト情報を少なくとも用いて、所定の種類のがんに関するがん患者の受診者や精検受診者を特定する受診者特定部13と、受診者特定部13による特定結果と、複数のがん検診情報とを用いて、所定の種類のがんに関するがん検診精度管理指標を算出する算出部14とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん検診の結果、がん検診の受診者を識別する受診者識別子、及び受診年月を含む複数のがん検診情報が記憶されるがん検診記憶部と、
傷病名、診療行為、医薬品、診療の受診者を識別する受診者識別子、及び診療年月を含む複数のレセプト情報が記憶されるレセプト記憶部と、
複数のレセプト情報を少なくとも用いて、所定の種類のがんに関する特定の受診者を特定する受診者特定部と、
前記受診者特定部によって特定された受診者と、複数のがん検診情報とを用いて、前記所定の種類のがんに関するがん検診精度管理指標を算出する算出部と、を備えた指標算出装置。
【請求項2】
前記受診者特定部は、診療が前記所定の種類のがんに関する診療である場合における傷病名、診療行為、医薬品に関する条件と、複数のレセプト情報とを用いて、前記所定の種類のがんの診療を受診した受診者を、当該所定の種類のがんのがん患者として特定する第1の特定部を有しており、
前記算出部は、前記所定の種類のがんについて、がん患者であり、がん検診の結果が陽性である受診者の数と、がん患者であり、がん検診の結果が陰性である受診者の数と、がん患者ではなく、がん検診の結果が陽性である受診者の数と、がん患者ではなく、がん検診の結果が陰性である受診者の数とのうち、2以上の受診者の数を用いてがん検診精度管理指標を算出する、請求項1記載の指標算出装置。
【請求項3】
前記第1の特定部は、前記所定の種類のがんに関するがん検診の受診年月から所定の期間以内に、当該所定の種類のがんの初回の診療を受けた受診者を、当該所定の種類のがんのがん患者として特定する、請求項2記載の指標算出装置。
【請求項4】
がん検診精度管理指標は、要精検率、がん発見率、陽性反応適中度、がん有病率、感度、特異度から選ばれる1以上の指標である、請求項2記載の指標算出装置。
【請求項5】
前記受診者特定部は、診療が前記所定の種類のがんに関する精密検査である場合における診療行為に関する条件と、複数のレセプト情報とを用いて、前記所定の種類のがんの精密検査を受診した受診者を、当該所定の種類のがんの精検受診者として特定する第2の特定部を有しており、
前記算出部は、がん検診の結果が陽性である受診者の数と、がん検診の結果が陽性である、精検受診者の数とを用いて精検受診率を算出する、請求項1から請求項4のいずれか記載の指標算出装置。
【請求項6】
前記所定の種類のがんの精検受診者の特定に用いられる条件は、診療が前記所定の種類のがんに関する精密検査である場合における傷病名、診療行為に関する条件である、請求項5記載の指標算出装置。
【請求項7】
前記第2の特定部は、前記所定の種類のがんに関するがん検診の受診年月から所定の期間以内に、当該所定の種類のがんの精密検査を受けた受診者を、当該所定の種類のがんの精検受診者として特定する、請求項5記載の指標算出装置。
【請求項8】
がん検診の結果、がん検診の受診者を識別する受診者識別子、及び受診年月を含む複数のがん検診情報が記憶されるがん検診記憶部と、傷病名、診療行為、医薬品、診療の受診者を識別する受診者識別子、及び診療年月を含む複数のレセプト情報が記憶されるレセプト記憶部と、受診者特定部と、算出部とを用いて処理される指標算出方法であって、
前記受診者特定部が、複数のレセプト情報を少なくとも用いて、所定の種類のがんに関する特定の受診者を特定するステップと、
前記算出部が、前記受診者を特定するステップにおいて特定された受診者と、複数のがん検診情報とを用いて、前記所定の種類のがんに関するがん検診精度管理指標を算出するステップと、を備えた指標算出方法。
【請求項9】
がん検診の結果、がん検診の受診者を識別する受診者識別子、及び受診年月を含む複数のがん検診情報が記憶されるがん検診記憶部と、傷病名、診療行為、医薬品、診療の受診者を識別する受診者識別子、及び診療年月を含む複数のレセプト情報が記憶されるレセプト記憶部とにアクセス可能なコンピュータを、
複数のレセプト情報を少なくとも用いて、所定の種類のがんに関する特定の受診者を特定する受診者特定部、
前記受診者特定部によって特定された受診者と、複数のがん検診情報とを用いて、前記所定の種類のがんに関するがん検診精度管理指標を算出する算出部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん検診情報やレセプト情報を用いて、がん検診精度管理指標を算出する指標算出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
わが国では、市町村が地域がん検診を提供しているのに加えて、保険者が中心となって職域でもがん検診を提供している。また近年、検診結果やレセプト(診療報酬明細書)などが電子データとして残されているため、それらの情報を利用した分析や情報処理なども行われている(例えば、特許文献1,2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-057170号公報
【特許文献2】特開2020-106882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、職域で提供されているがん検診では、精度管理がほとんど実施されていない。一方、市町村では精度管理を行っているが、精度管理指標の把握を一部、電話確認などの手作業で行っており、多大な労力が必要になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、がん検診情報やレセプト情報を用いて、自動的にがん検診精度管理指標を算出することができる指標算出装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様による指標算出装置は、がん検診の結果、がん検診の受診者を識別する受診者識別子、及び受診年月を含む複数のがん検診情報が記憶されるがん検診記憶部と、傷病名、診療行為、医薬品、診療の受診者を識別する受診者識別子、及び診療年月を含む複数のレセプト情報が記憶されるレセプト記憶部と、複数のレセプト情報を少なくとも用いて、所定の種類のがんに関する特定の受診者を特定する受診者特定部と、受診者特定部によって特定された受診者と、複数のがん検診情報とを用いて、所定の種類のがんに関するがん検診精度管理指標を算出する算出部と、を備えたものである。
このような構成により、がん検診情報やレセプト情報を用いて、所定の種類のがんに関するがん検診精度管理指標を自動的に算出することができる。したがって、人手で算出する必要がなくなり、人的な労力を大幅に軽減することができる。また、職域のがん検診の結果についても精度管理を行うことができるようになるため、例えば、保険者が、適切ながん検診の提供と効率的な活用を実現できるようになり、その結果として、がん検診の質の向上に繋がることが期待される。
【0007】
また、本発明の一態様による指標算出装置では、受診者特定部は、診療が所定の種類のがんに関する診療である場合における傷病名、診療行為、医薬品に関する条件と、複数のレセプト情報とを用いて、所定の種類のがんの診療を受診した受診者を、所定の種類のがんのがん患者として特定する第1の特定部を有しており、算出部は、所定の種類のがんについて、がん患者であり、がん検診の結果が陽性である受診者の数と、がん患者であり、がん検診の結果が陰性である受診者の数と、がん患者ではなく、がん検診の結果が陽性である受診者の数と、がん患者ではなく、がん検診の結果が陰性である受診者の数とのうち、2以上の受診者の数を用いてがん検診精度管理指標を算出してもよい。
このような構成により、例えば、要精検率、がん発見率、陽性反応適中度などのがん検診精度管理指標を算出することができる。
【0008】
また、本発明の一態様による指標算出装置では、第1の特定部は、所定の種類のがんに関するがん検診の受診年月から所定の期間以内に、所定の種類のがんの初回の診療を受けた受診者を、所定の種類のがんのがん患者として特定してもよい。
このような構成により、がん検診と関連があると考えられるレセプト情報を用いて、がん患者を特定することができ、がん検診精度管理指標の精度を向上させることができるようになる。
【0009】
また、本発明の一態様による指標算出装置では、がん検診精度管理指標は、要精検率、がん発見率、陽性反応適中度、がん有病率、感度、特異度から選ばれる1以上の指標であってもよい。
【0010】
また、本発明の一態様による指標算出装置では、受診者特定部は、診療が所定の種類のがんに関する精密検査である場合における診療行為に関する条件と、複数のレセプト情報とを用いて、所定の種類のがんの精密検査を受診した受診者を、所定の種類のがんの精検受診者として特定する第2の特定部を有しており、算出部は、がん検診の結果が陽性である受診者の数と、がん検診の結果が陽性である、精検受診者の数とを用いて精検受診率を算出してもよい。
このような構成により、精検受診率を算出することができる。
【0011】
また、本発明の一態様による指標算出装置では、所定の種類のがんの精検受診者の特定に用いられる条件は、診療が所定の種類のがんに関する精密検査である場合における傷病名、診療行為に関する条件であってもよい。
このような構成により、診療行為に関する条件に加えて傷病名に関する条件をも用いて、精検受診者を特定することになる。
【0012】
また、本発明の一態様による指標算出装置では、第2の特定部は、所定の種類のがんに関するがん検診の受診年月から所定の期間以内に、所定の種類のがんの精密検査を受けた受診者を、所定の種類のがんの精検受診者として特定してもよい。
このような構成により、がん検診と関連があると考えられるレセプト情報を用いて、精検受診者を特定することができ、がん検診精度管理指標である精検受診率の精度を向上させることができるようになる。
【0013】
また、本発明の一態様による指標算出方法は、がん検診の結果、がん検診の受診者を識別する受診者識別子、及び受診年月を含む複数のがん検診情報が記憶されるがん検診記憶部と、傷病名、診療行為、医薬品、診療の受診者を識別する受診者識別子、及び診療年月を含む複数のレセプト情報が記憶されるレセプト記憶部と、受診者特定部と、算出部とを用いて処理される指標算出方法であって、受診者特定部が、複数のレセプト情報を少なくとも用いて、所定の種類のがんに関する特定の受診者を特定するステップと、算出部が、受診者を特定するステップにおいて特定された受診者と、複数のがん検診情報とを用いて、所定の種類のがんに関するがん検診精度管理指標を算出するステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様による指標算出装置等によれば、がん検診情報やレセプト情報を用いて、所定の種類のがんに関するがん検診精度管理指標を自動的に算出することができる。したがって、人手で算出する必要がなくなり、人的な労力を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態による指標算出装置の構成を示すブロック図
【
図2】同実施の形態による指標算出装置の動作を示すフローチャート
【
図3】同実施の形態による指標算出装置の動作を示すフローチャート
【
図4】同実施の形態による指標算出装置の動作を示すフローチャート
【
図5】同実施の形態におけるがん検診精度管理指標について説明するための図
【
図6】同実施の形態におけるコンピュータシステムの外観一例を示す模式図
【
図7】同実施の形態におけるコンピュータシステムの構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による指標算出装置、及び指標算出方法について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による指標算出装置は、がん検診情報とレセプト情報を用いて、自動的にがん検診精度管理指標を算出するものである。
【0017】
図1は、本実施の形態による指標算出装置1の構成を示すブロック図である。本実施の形態による指標算出装置1は、がん検診記憶部11と、レセプト記憶部12と、受診者特定部13と、算出部14と、出力部15とを備える。また、受診者特定部13は、第1の特定部21と、第2の特定部22とを備える。なお、指標算出装置1は、例えば、パーソナル・コンピュータなどの汎用の装置であってもよく、がん検診精度管理指標を算出するための専用の装置であってもよい。また、指標算出装置1は、例えば、スタンドアロンの装置であってもよく、サーバ・クライアントシステムにおけるサーバ装置であってもよい。
【0018】
がん検診記憶部11では、複数のがん検診情報が記憶される。がん検診情報は、ある受診者が受診したがん検診に関する情報であり、がん検診の結果と、がん検診の受診者を識別する受診者識別子と、がん検診の受診年月とを少なくとも含む情報である。なお、がん検診の結果、受診者識別子、受診年月は、厳密にはがん検診の結果等を示す情報であるが、ここでは単にがん検診の結果等と呼ぶものとする。がん検診の結果には、例えば、がん検診の結果が陽性であるのか陰性であるのかが含まれていてもよい。がん検診の結果は、どの種類のがんに関する検診の結果であるのかが分かるようになっていることが好適である。そのため、がん検診情報では、例えば、がんの種類ごとにがん検診の結果が含まれていてもよい。また、がん検診記憶部11では、例えば、がんの種類ごとにがん検診情報が記憶されていてもよい。また、例えば、がん検診精度管理指標を算出する対象となるがんの種類に対応するがん検診情報のみが、がん検診記憶部11で記憶されていてもよい。
【0019】
受診者識別子は、受診者を識別できる情報であれば特に限定されないが、例えば、被保険者の識別子を含んでいてもよい。受診者識別子は、例えば、勤務先や自治体などの事業所を識別する記号(事業所整理記号)と、その事業所において被保険者を識別する番号と、受診者の生年月日とを含んでいてもよい。受診者が被保険者である場合には、記号及び番号は、受診者本人の記号及び番号であり、受診者が被保険者の被扶養者である場合には、記号及び番号は、受診者の扶養者である被保険者の記号及び番号であってもよい。また、受診者識別子には、例えば、受診者の氏名が含まれてもよい。
【0020】
がん検診情報は、例えば、がんの有無を調べる専用の検査に関する情報であってもよく、定期健康診断に含まれる検査項目のうち、がんの有無についても知ることができる検査項目に関する情報であってもよい。がんの有無を調べる専用の検査とは、例えば、大腸がんの有無を調べるための便潜血検査などである。がんの有無についても知ることができる検査項目とは、例えば、肺結核に関する検査であるが、肺がんの有無も知ることができる胸部X線検査や、胃潰瘍や十二指腸潰瘍に関する検査であるが、胃がんの有無も知ることができる上部消化管X線検査(いわゆるバリウム検査)などである。
【0021】
レセプト記憶部12では、複数のレセプト情報が記憶される。レセプト情報は、ある受診者が医療機関で受診した診療の診療報酬明細書の情報であり、診療に関する傷病名、診療行為、医薬品と、診療の受診者を識別する受診者識別子と、診療年月とを少なくとも含む情報である。なお、傷病名、診療行為、医薬品等は、厳密には傷病名を示す情報、診療行為を示す情報、医薬品を示す情報等であるが、ここでは単に傷病名等と呼ぶものとする。このレセプト情報は、医療機関から審査支払機関を介して保険者に提出される情報である。レセプト情報に含まれる受診者識別子も、例えば、がん検診情報に含まれる受診者識別子と同様のものであってもよい。なお、レセプト記憶部12で記憶されているレセプト情報、すなわち電子データであるレセプト情報には、通常、傷病名、診療行為、医薬品などに対応したコードも含まれている。したがって、レセプト情報に含まれる傷病名等を検索する際には、そのコードを用いて検索することができる。
【0022】
がん検診情報やレセプト情報に含まれる受診者識別子は、例えば、上記したように、記号、番号、及び生年月日等を含む情報であってもよく、または、それらの情報に対応する、がん検診精度管理指標を算出するための独自の個人識別子であってもよい。後者の場合には、がん検診情報やレセプト情報に含まれる記号、番号、及び生年月日等に対応する個人識別子である受診者識別子ががん検診情報やレセプト情報に追加された後に、各処理が行われてもよい。また、例えば、保険者が企業である場合には、その企業が被保険者や扶養家族を識別するための個人識別子を独自に付与していることもある。この場合には、受診者識別子はその個人識別子であってもよい。
【0023】
がん検診記憶部11やレセプト記憶部12に情報が記憶される過程は問わない。例えば、記録媒体を介して情報ががん検診記憶部11等で記憶されるようになってもよく、通信回線等を介して送信された情報ががん検診記憶部11等で記憶されるようになってもよく、または、入力デバイスを介して入力された情報ががん検診記憶部11等で記憶されるようになってもよい。がん検診記憶部11やレセプト記憶部12は、不揮発性の記録媒体によって実現されることが好適であるが、揮発性の記録媒体によって実現されてもよい。記録媒体は、例えば、半導体メモリや磁気ディスク、光ディスクなどであってもよい。
【0024】
受診者特定部13は、レセプト記憶部12で記憶されている複数のレセプト情報を少なくとも用いて、所定の種類のがんに関する特定の受診者を特定する。受診者特定部13は、複数のレセプト情報に加えて、がん検診記憶部11で記憶されている複数のがん検診情報をも用いて、所定の種類のがんに関する特定の受診者を特定してもよい。所定の種類のがんとは、例えば、胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんのいわゆる五大がんのいずれかであってもよく、または、その他のがんであってもよい。また、受診者特定部13は、例えば、複数の種類のがんのそれぞれについて特定の受診者を特定してもよい。受診者特定部13によって特定される特定の受診者は、例えば、がん患者の受診者であってもよく、がんの精検受診者であってもよい。本実施の形態では、受診者特定部13が、がん患者の受診者を特定する第1の特定部21と、がんの精検受診者を特定する第2の特定部22とを備える場合について主に説明するが、受診者特定部13は、第1の特定部21及び第2の特定部22のうち、一方のみを備えていてもよい。すなわち、受診者特定部13は、がん患者、及びがんの精検受診者のうち、一方のみを特定するものであってもよい。
【0025】
第1の特定部21は、診療が所定の種類のがんに関する診療である場合における傷病名、診療行為、医薬品に関する条件と、レセプト記憶部12で記憶されている複数のレセプト情報とを用いて、所定の種類のがんの診療を受診した受診者を、その所定の種類のがんのがん患者として特定する。その条件は、レセプト情報に対応する診療が、所定の種類のがんの診療であるかどうかを判断するために用いられる条件である。レセプト情報に対応する診療とは、例えば、レセプト情報によって診療報酬が請求される対象となる診療のことであってもよい。その条件は、例えば、所定の種類のがんの診療に対応する傷病名と診療行為とに関する第1の条件と、その所定の種類のがんの診療に対応する傷病名と医薬品とに関する第2の条件とを含んでいてもよい。そして、第1の特定部21は、第1の条件及び第2の条件の少なくとも一方を満たすレセプト情報の受診者を、所定の種類のがんのがん患者として特定してもよい。第1の特定部21は、条件を用いることによって、所定の種類のがんの診療が行われたレセプト情報を特定し、その特定したレセプト情報に含まれる受診者識別子で識別される受診者を、その所定の種類のがんのがん患者として特定することになる。
【0026】
ここで、第1の条件及び第2の条件を用いる理由について説明する。1個のレセプト情報には、通常、ある受診者に関する1か月分の診療に関する傷病名、診療行為、医薬品が含まれているが、傷病名については、過去の診療に関する傷病名がそのまま残っていることがあり、また疑い症例の傷病名が含まれることもある。そのため、傷病名だけの条件にすると、すでに治療が完了しているがんや、疑い症例のがんの傷病名に応じてがん患者の特定が行われる可能性がある。したがって、そのようなことを回避するため、第1の条件のように、傷病名と診療行為とをセットにした条件にすることが好適である。また、医薬品については、肺がんと大腸がんなどのように複数のがんに効く薬もあるため、医薬品だけの条件にすると、所定の種類のがんのがん患者を適切に特定できないことになる。そのため、第2の条件のように、傷病名と医薬品とをセットにした条件にすることが好適である。
【0027】
第1の特定部21によるがん患者の特定の処理について、より具体的な例を用いて説明する。この具体例では、所定の種類のがんが「胃がん」であるとする。この場合には、例えば、胃がんの診療に対応する傷病名「胃の悪性新生物」(C16)等や、診療行為「胃切除術(単純切除術)」(150165210)、「腹腔鏡下胃切除術(単純切除術)」(150323410)等、医薬品「テガフール200mgカプセル」(610461179)、「フルオロウラシル50mg1gシロップ用」(610461237)等があらかじめ図示しない記録媒体で記憶されているものとする。なお、括弧内の情報は、傷病名コードや診療行為コード、医薬品コードである。条件の判断にコードを用いる場合には、胃がんの診療に対応する傷病名コード、診療行為コード、医薬品コードのみが記憶されていてもよい。なお、所定のがんの種類の診療に対応する傷病名、診療行為、医薬品(あるいは、それらのコード)の一覧は、がんの種類ごとに、適宜、医師等が選定して、図示しない記録媒体で記憶されていてもよい。また、所定の種類のがんの診療に対応する傷病名、及び診療行為の一覧に含まれるいずれかの傷病名、及び診療行為が含まれることが第1の条件であり、所定の種類のがんの診療に対応する傷病名、及び医薬品の一覧に含まれるいずれかの傷病名、及び医薬品が含まれることが第2の条件であると考えてもよい。
【0028】
そして、第1の特定部21は、胃がんの診療に対応する傷病名及び診療行為を含むレセプト情報、並びに、胃がんの診療に対応する傷病名及び医薬品を含むレセプト情報を、胃がんの診療のレセプト情報として特定する。具体的には、次のようにして、がんの診療に対応するレセプト情報が特定されてもよい。すなわち、第1の特定部21は、レセプト情報ごとに、胃がんの診療に対応する傷病名、診療行為、医薬品が含まれるかどうかに応じて傷病名フラグ、診療行為フラグ、医薬品フラグをそれぞれ設定する。なお、傷病名フラグ、診療行為フラグ、医薬品フラグはそれぞれ、胃がんの診療に対応する傷病名、診療行為、医薬品がレセプト情報に含まれる場合に「1」となり、そうでない場合に「0」となるフラグである。例えば、第1の特定部21は、あるレセプト情報について、胃がんの診療に対応する複数の医薬品コードのそれぞれを検索キーとして検索を行い、少なくともいずれかの検索キーについてヒットした場合に医薬品フラグ「1」を設定し、すべての検索キーについてヒットしなかった場合に医薬品フラグ「0」を設定する。また、第1の特定部21は、傷病名や診療行為についても同様の処理を行う。このようにして、レセプト情報ごとに、胃がんの診療に対応する傷病名フラグ、診療行為フラグ、医薬品フラグが設定されることになる。
【0029】
次に、第1の特定部21は、フラグを設定した後のレセプト情報について、次の論理演算を行い、がん診療フラグを算出する。ここで、次式の「×」「+」はそれぞれ論理積、論理和である。したがって、第1及び第2の条件の少なくとも一方が満たされる場合に、がん診療フラグは「1」になり、そうでない場合に、がん診療フラグは「0」になる。このようにして、レセプト情報ごとに、胃がんの診療に対応するがん診療フラグが特定されることになる。
がん診療フラグ=(傷病名フラグ×診療行為フラグ)+(傷病名フラグ×医薬品フラグ)
【0030】
この論理演算の結果によってがん診療フラグが「1」になったレセプト情報が、胃がんの診療に関するレセプト情報であり、がん診療フラグが「0」になったレセプト情報が、胃がんの診療と関係のないレセプト情報である。したがって、がん診療フラグが「1」であるレセプト情報に含まれる受診者識別子で識別される受診者が、胃がんのがん患者となる。そのため、例えば、第1の特定部21は、がん診療フラグが「1」であるレセプト情報から、それぞれ受診者識別子を読み出し、その受診者識別子を、胃がんのがん患者の受診者識別子として一時的に記憶してもよい。
【0031】
なお、第1の特定部21は、所定の種類のがんに関するがん検診の受診年月から所定の期間以内に、所定の種類のがんの初回の診療を受けた受診者を、その所定の種類のがんのがん患者として特定してもよい。この場合には、上記のように診療年月を考慮しないで特定されたがん患者は、がん患者の候補者(以下、「がん患者候補」と呼ぶこともある。)となる。そして、第1の特定部21は、上記のようにして特定した所定の種類のがんに関するあるがん患者候補について、傷病名、診療行為、医薬品に関する条件(例えば、第1及び第2の条件の少なくともいずれか)を満たすレセプト情報(例えば、がん診療フラグが「1」であるレセプト情報)であって、そのがん患者候補の受診者識別子が含まれるレセプト情報を特定し、その特定したレセプト情報の最も古い診療年月を特定する。この診療年月が、初回の診療を受けた年月となる。そして、その所定の種類のがんのがん検診の結果を含むがん検診情報であって、そのがん患者候補の受診者識別子が含まれると共に、特定した診療年月から所定の期間以内(例えば、1年以内など)の受診年月を含むがん検診情報が存在する場合に、第1の特定部21は、その受診者識別子で識別されるがん患者候補を、所定の種類のがんのがん患者としてもよい。なお、特定した診療年月から所定の期間以内の受診年月は、その診療年月よりも以前の受診年月であるとする。このようにすることで、がん検診と因果関係があると考えられるがん患者を特定することができるようになる。このように、がん検診の受診年月や初回の診療年月を用いて特定されるがん患者は、がん検診精度管理指標の算出対象となるがん患者であると考えてもよい。
【0032】
第2の特定部22は、診療が所定の種類のがんに関する精密検査である場合における傷病名、診療行為に関する条件と、レセプト記憶部12で記憶されている複数のレセプト情報とを用いて、所定の種類のがんの精密検査を受診した受診者を、その所定の種類のがんの精検受診者(すなわち、精密検査の受診者)として特定する。その条件は、レセプト情報に対応する診療が、所定の種類のがんの精密検査であるかどうかを判断するために用いられる条件である。その条件は、例えば、所定の種類のがんの精密検査に対応する傷病名と診療行為に関する条件であってもよい。この条件を第3の条件と呼ぶこともある。そして、第2の特定部22は、第3の条件を満たすレセプト情報の受診者を、所定の種類のがんの精検受診者として特定してもよい。第2の特定部22は、条件を用いることによって、所定の種類のがんの精密検査が行われたレセプト情報を特定し、その特定したレセプト情報に含まれる受診者識別子で識別される受診者を、その所定の種類のがんの精検受診者として特定することになる。
【0033】
第2の特定部22による精検受診者の特定の処理について、より具体的な例を用いて説明する。この具体例でも、所定の種類のがんが「胃がん」であるとする。この場合には、例えば、胃がんの精密検査に対応する傷病名「胃の悪性新生物」(C16)等や、診療行為「内視鏡下生検法」(160098210)等があらかじめ図示しない記録媒体で記憶されているものとする。なお、括弧内の情報は、傷病名コードや診療行為コードである。条件の判断にコードを用いる場合には、胃がんに対応する傷病名コード、診療行為コードのみが記憶されていてもよい。また、所定のがんの種類の精密検査に対応する傷病名、診療行為(あるいは、それらのコード)の一覧は、がんの種類ごとに、適宜、医師等が選定して、図示しない記録媒体で記憶されていてもよい。また、所定の種類のがんの精密検査に対応する傷病名、及び診療行為の一覧に含まれるいずれかの傷病名、及び診療行為が含まれることが第3の条件であると考えてもよい。
【0034】
そして、第2の特定部22は、胃がんの精密検査に対応する傷病名及び診療行為を含むレセプト情報を、胃がんの精密検査のレセプト情報として特定する。具体的には、次のようにして、がんの精密検査に対応するレセプト情報が特定されてもよい。すなわち、第2の特定部22は、レセプト情報ごとに、胃がんの精密検査に対応する傷病名、診療行為が含まれるかどうかに応じて傷病名フラグ、診療行為フラグをそれぞれ設定する。なお、傷病名フラグ、診療行為フラグはそれぞれ、胃がんの精密検査に対応する傷病名、診療行為が含まれる場合に「1」となり、そうでない場合に「0」となるフラグである。例えば、第2の特定部22は、あるレセプト情報について、胃がんの精密検査に対応する複数の診療行為コードのそれぞれを検索キーとして検索を行い、少なくともいずれかの検索キーについてヒットした場合に診療行為フラグ「1」を設定し、すべての検索キーについてヒットしなかった場合に診療行為フラグ「0」を設定する。また、第2の特定部22は、傷病名についても同様の処理を行う。このようにして、レセプト情報ごとに、胃がんの精密検査に対応する傷病名フラグ、診療行為フラグが設定されることになる。
【0035】
次に、第2の特定部22は、フラグを設定した後のレセプト情報について、次の論理演算を行い、がん精検フラグを算出する。ここで、次式の「×」は論理積である。したがって、第3の条件が満たされる場合に、がん精検フラグは「1」になり、そうでない場合に、がん診療フラグは「0」になる。このようにして、レセプト情報ごとに、胃がんの精密検査に対応するがん精検フラグが特定されることになる。
がん精検フラグ=(傷病名フラグ×診療行為フラグ)
【0036】
この論理演算の結果によってがん精検フラグが「1」になったレセプト情報が、胃がんの精密検査に関するレセプト情報であり、がん精検フラグが「0」になったレセプト情報が、胃がんの精密検査と関係のないレセプト情報である。したがって、がん精検フラグが「1」であるレセプト情報に含まれる受診者識別子で識別される受診者が、胃がんの精検受診者となる。そのため、例えば、第2の特定部22は、がん精検フラグが「1」であるレセプト情報から、それぞれ受診者識別子を読み出し、その受診者識別子を、胃がんの精検受診者の受診者識別子として一時的に記憶してもよい。
【0037】
なお、第2の特定部22は、所定の種類のがんに関するがん検診の受診年月から所定の期間以内に、所定の種類のがんの精密検査を受けた受診者を、その所定の種類のがんの精検受診者として特定してもよい。この場合には、上記のように診療年月を考慮しないで特定された精検受診者は、精検受診者の候補者(以下、「精検受診者候補」と呼ぶこともある。)となる。そして、第2の特定部22は、上記のようにして特定した所定の種類のがんに関するある精検受診者候補について、傷病名、診療行為に関する条件(すなわち、第3の条件)を満たすレセプト情報(例えば、がん精検フラグが「1」であるレセプト情報)に含まれる診療年月を特定する。この診療年月が、精密検査を受けた年月となる。そして、その所定の種類のがんに関するがん検診情報であって、その精検受診者候補の受診者識別子が含まれると共に、特定した診療年月から所定の期間以内(例えば、1年以内など)の受診年月を含むがん検診情報が存在する場合に、第2の特定部22は、その受診者識別子で識別される精検受診者候補を、所定の種類のがんの精検受診者としてもよい。なお、特定した診療年月から所定の期間以内の受診年月は、その診療年月よりも以前の受診年月であるとする。このようにすることで、がん検診と因果関係があると考えられる精検受診者を特定することができるようになる。このように、がん検診の受診年月や精密検査の診療年月を用いて特定される精検受診者は、がん検診精度管理指標の算出対象となる精検受診者であると考えてもよい。
【0038】
第1及び第2の特定部21,22が診療年月を考慮した特定を行う際に用いる所定の期間は、上記したように、例えば、1年であってもよく、それ以外の半年や1年半、2年などであってもよい。通常、がん検診は、定期的に行われるため、所定の期間は、がん検診の間隔程度の期間に設定されることが好適であり、上記のように、1年程度に設定されることが好適である。
【0039】
また、第1及び第2の特定部21,22によるがん患者や精検受診者の特定は、結果として特定されたがん患者や精検受診者が誰であるのかが分かるのであれば、その方法は問わないが、例えば、がん患者の受診者識別子や、精検受診者の受診者識別子を特定することであってもよい。受診者識別子の特定は、例えば、受診者識別子を読み出して記録媒体等に蓄積することであってもよく、特定対象の受診者識別子に対して、特定したことを示すフラグ等の情報を設定することであってもよい。
【0040】
算出部14は、受診者特定部13によって特定された受診者と、複数のがん検診情報とを用いて、所定の種類のがんに関するがん検診精度管理指標を算出する。算出部14は、例えば、複数の種類のがんのそれぞれについてがん検診精度管理指標を算出してもよい。受診者特定部13による特定結果によって、各受診者が、がん患者であるかどうかや精検受診者であるかどうかが示される。また、がん検診情報によって、各受診者のがん検診の結果が陽性であるのか陰性であるのかが示される。したがって、算出部14は、これらの情報を用いることによって、がん検診精度管理指標を算出することができる。算出対象のがん検診精度管理指標は、例えば、要精検率、がん発見率、陽性反応適中度、がん有病率、感度、特異度、精検受診率から選ばれる1以上の指標であってもよく、その他の指標であってもよい。以下、第1の特定部21による特定結果を用いたがん検診精度管理指標の算出と、第2の特定部22による特定結果を用いたがん検診精度管理指標の算出とについてそれそれ説明する。なお、受診者特定部13が第1及び第2の特定部21,22のうち、一方のみを備えている場合には、算出部14は、その一方の特定部の特定結果を用いたがん検診精度管理指標の算出のみを行ってもよい。
【0041】
算出部14は、第1の特定部21による特定結果と、複数のがん検診情報とに基づいて、所定の種類のがんについて、がん患者であり、がん検診の結果が陽性である受診者の数(すなわち、
図5におけるAの人数)と、がん患者であり、がん検診の結果が陰性である受診者の数(すなわち、
図5におけるBの人数)と、がん患者ではなく、がん検診の結果が陽性である受診者の数(すなわち、
図5におけるCの人数)と、がん患者ではなく、がん検診の結果が陰性である受診者の数(すなわち、
図5におけるDの人数)とのうち、2以上の受診者の数を用いてがん検診精度管理指標を算出してもよい。この指標は、例えば、要精検率、がん発見率、陽性反応適中度、がん有病率、感度、特異度から選ばれる1以上の指標であってもよい。
【0042】
Aの人数は、第1の特定部21によって、所定の種類のがんのがん患者と判断され、かつ、がん検診情報によって、その所定の種類のがんのがん検診の結果が陽性であることが示される受診者の人数である。Bの人数は、第1の特定部21によって、所定の種類のがんのがん患者と判断され、かつ、がん検診情報によって、その所定の種類のがんのがん検診の結果が陰性であることが示される受診者の人数である。算出部14は、例えば、所定の種類のがんのがん検診を受診した受診者の受診者識別子と、そのがん検診の結果との組を特定し、その特定した組から、第1の特定部21によって、その所定の種類のがんのがん患者と判断された受診者の受診者識別子を含む組を抽出してもよい。その結果、所定の種類のがんについて、がん患者である、がん検診の受診者を識別する受診者識別子と、がん検診の結果との組を抽出することができる。そして、算出部14は、例えば、その抽出した組において、がん検診の結果が陽性である組の個数をカウントすることによってAの人数を特定し、がん検診の結果が陰性である組の個数をカウントすることによってBの人数を特定してもよい。
【0043】
Cの人数は、第1の特定部21によって、所定の種類のがんのがん患者であると判断されておらず、かつ、がん検診情報によって、その所定の種類のがんのがん検診の結果が陽性であることが示される受診者の人数である。Dの人数は、第1の特定部21によって、所定の種類のがんのがん患者であると判断されておらず、かつ、がん検診情報によって、その所定の種類のがんのがん検診の結果が陰性であることが示される受診者の人数である。算出部14は、例えば、所定の種類のがんのがん検診を受診した受診者の受診者識別子と、そのがん検診の結果との組を特定し、その特定した組から、第1の特定部21によって、その所定の種類のがんのがん患者と判断された受診者の受診者識別子を含む組を除去してもよい。その結果、所定の種類のがんについて、がん患者ではない、がん検診の受診者を識別する受診者識別子と、がん検診の結果との組を特定することができる。そして、算出部14は、例えば、その特定した組において、がん検診の結果が陽性である組の個数をカウントすることによってCの人数を特定し、がん検診の結果が陰性である組の個数をカウントすることによってDの人数を特定してもよい。
【0044】
なお、上記説明から明らかなように、A~Dの各人数を加算した結果は、がん検診の受診者の合計人数となる。以下、A~Dの人数を用いたがん検診精度管理指標について説明する。なお、説明の便宜上、A~Dの人数をそれぞれ単にA~Dと呼ぶことにする。
【0045】
[要精検率]
要精検率は、がん検診の受診者のうち、精検が必要と判断された人の割合であり、次式によって算出される。
要精検率=(A+C)/(A+B+C+D)
【0046】
[がん発見率]
がん発見率は、がん検診の受診者のうち、がんが発見された人の割合であり、次式によって算出される。
がん発見率=A/(A+B+C+D)
【0047】
[陽性反応適中度]
陽性反応適中度は、要精検者のうち、がんが発見された人の割合であり、次式によって算出される。
陽性反応適中度=A/(A+C)
【0048】
[がん有病率]
がん有病率は、がん検診の受診者のうち、がんである人の割合であり、次式によって算出される。
がん有病率=(A+B)/(A+B+C+D)
【0049】
[感度]
感度(真陽性率)は、がん患者のうち、がん検診で陽性と判断された人の割合であり、次式によって算出される。
感度=A/(A+B)
【0050】
[特異度]
特異度(真陰性率)は、がんでない受診者のうち、がん検診で陰性と判断された人の割合であり、次式によって算出される。
特異度=D/(C+D)
【0051】
算出部14は、A~Dのすべての人数を用いて、要精検率、がん発見率、陽性反応適中度、がん有病率、感度、特異度のすべての指標を算出してもよく、または、それらのうち一部の指標を算出してもよい。後者の場合には、算出部14は、A~Dのうち、必要な人数のみを算出してもよい。例えば、感度のみを算出する場合には、算出部14は、A,Bの人数のみを算出してもよい。
【0052】
算出部14は、第2の特定部22による特定結果と、複数のがん検診情報とに基づいて、所定の種類のがんについて、がん検診の結果が陽性である受診者の数と、がん検診の結果が陽性である、精検受診者の数とを用いて精検受診率を算出してもよい。この精検受診率も、がん検診精度管理指標の一つである。算出部14は、例えば、所定の種類のがんのがん検診について、がん検診の結果が陽性である受診者の受診者識別子を特定してもよい。この特定された受診者識別子の個数が、所定の種類のがんに関する、がん検診の結果が陽性である受診者の数となる。また、算出部14は、例えば、特定した受診者識別子から、第2の特定部22によって、その所定の種類のがんの精検受診者と判断された受診者の受診者識別子を抽出してもよい。この抽出された受診者識別子の個数が、所定の種類のがんに関する、がん検診の結果が陽性である精検受診者の数となる。
【0053】
精検受診率は、がん検診の結果が陽性である受診者(A+C)のうち、精検受診者の割合であり、次式によって算出される。
精検受診率=がん検診の結果が陽性である精検受診者数/がん検診の結果が陽性である受診者数
【0054】
出力部15は、算出部14によって算出されたがん検診精度管理指標を出力する。ここで、この出力は、例えば、表示デバイス(例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなど)への表示でもよく、所定の機器への通信回線を介した送信でもよく、プリンタによる印刷でもよく、スピーカによる音声出力でもよく、記録媒体への蓄積でもよく、他の構成要素への引き渡しでもよい。なお、出力部15は、出力を行うデバイス(例えば、表示デバイスや通信デバイスなど)を含んでもよく、または含まなくてもよい。また、出力部15は、ハードウェアによって実現されてもよく、または、それらのデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0055】
次に、指標算出装置1の動作について
図2のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)受診者特定部13の第1の特定部21は、レセプト記憶部12で記憶されている複数のレセプト情報を用いて、所定の種類のがんのがん患者を特定する。なお、第1の特定部21は、がん検診記憶部11で記憶されているがん検診情報をも用いて、がん患者を特定してもよい。この処理の詳細については、
図3のフローチャートを用いて後述する。
【0056】
(ステップS102)受診者特定部13の第2の特定部22は、レセプト記憶部12で記憶されている複数のレセプト情報を用いて、所定の種類のがんの精検受診者を特定する。なお、第2の特定部22は、がん検診記憶部11で記憶されているがん検診情報をも用いて、精検受診者を特定してもよい。この処理の詳細については、
図4のフローチャートを用いて後述する。
【0057】
(ステップS103)算出部14は、がん検診記憶部11で記憶されている複数のがん検診情報と、ステップS101,S102の特定結果とを用いてがん検診精度管理指標を算出する。
【0058】
(ステップS104)出力部15は、算出部14によって算出されたがん検診精度管理指標を出力する。そして、がん検診精度管理指標を算出する一連の処理は終了となる。
【0059】
なお、
図2のフローチャートにおける処理の順序は一例であり、同様の結果を得られるのであれば、各ステップの順序を変更してもよい。例えば、精検受診者の特定を行った後に、がん患者の特定を行ってもよい。また、複数の種類のがんについてがん検診精度管理指標が算出される場合には、がんの種類ごとにステップS101~S103の処理が繰り返して行われてもよい。
【0060】
図3は、
図2のフローチャートにおけるがん患者の特定の処理、すなわちステップS101の処理の詳細を示すフローチャートである。
(ステップS201)第1の特定部21は、カウンタiを1に設定する。
【0061】
(ステップS202)第1の特定部21は、レセプト記憶部12で記憶されているi番目のレセプト情報が、所定の種類のがんの診療に関するものであるかどうか判断する。そして、所定の種類のがんに関する診療である場合には、ステップS203に進み、そうでない場合には、ステップS204に進む。なお、第1の特定部21は、i番目のレセプト情報が、所定の種類のがんに関する第1及び第2の条件の少なくとも一方を満たす場合に、そのレセプト情報が所定の種類のがんの診療に関するものであると判断し、そうでない場合に、そのレセプト情報が所定の種類のがんの診療に関するものでないと判断してもよい。
【0062】
(ステップS203)第1の特定部21は、i番目のレセプト情報をがんの診療のレセプト情報に設定する。ステップS202,S203の処理は、例えば、上記説明のように、がん診療フラグを各レセプト情報に設定することによって行われてもよい。この場合には、がん診療フラグ「1」が設定されたレセプト情報が、がんの診療に関するレセプト情報である。
【0063】
(ステップS204)第1の特定部21は、カウンタiを1だけインクリメントする。
【0064】
(ステップS205)第1の特定部21は、レセプト記憶部12にi番目のレセプト情報が記憶されているかどうか判断する。そして、i番目のレセプト情報が記憶されている場合には、ステップS202に戻り、そうでない場合には、ステップS206に進む。
【0065】
(ステップS206)第1の特定部21は、がんの診療のレセプト情報に含まれる受診者を特定する。このようにして特定された受診者はがん患者候補となる。この受診者の特定は、ステップS203においてがんの診療のレセプト情報に設定された複数のレセプト情報からそれぞれ受診者識別子を読み出し、ユニーク処理によって重複を除去した結果の複数の受診者識別子を取得することによって行われてもよい。
【0066】
(ステップS207)第1の特定部21は、カウンタiを1に設定する。
【0067】
(ステップS208)第1の特定部21は、ステップS206で特定した複数の受診者のうち、i番目の受診者の初回の診療年月を特定する。この特定は、i番目の受診者の受診者識別子を含むがんの診療のレセプト情報、すなわちi番目の受診者の受診者識別子を含むと共に、がん診療フラグ「1」が設定されたレセプト情報に含まれる診療年月のうち、最も以前の(最も古い)診療年月を特定することによって行われてもよい。
【0068】
(ステップS209)第1の特定部21は、ステップS208で特定したi番目の受診者の初回の診療年月が、i番目の受診者のがん検診から所定の期間以内であるかどうか判断する。そして、初回の診療年月が、がん検診から所定の期間以内である場合には、ステップS210に進み、そうでない場合には、ステップS211に進む。なお、初回の診療年月が、がん検診の受診年月を始点として、そのがん検診の受診年月から所定の期間が経過した時点を終点とする期間に含まれる場合に、第1の特定部21は、初回の診療年月が、がん検診から所定の期間以内であると判断してもよい。がん検診の受診年月の特定は、例えば、i番目の受診者の受診者識別子と、所定の種類のがんのがん検診の結果とを含むがん検診情報を特定し、その特定したがん検診情報に含まれる受診年月を特定することによって行われてもよい。なお、i番目の受診者の受診者識別子と、所定の種類のがんのがん検診の結果とを含むがん検診情報が複数存在する場合には、少なくともいずれかのがん検診情報について、i番目の受診者の初回の診療年月が、がん検診の受診年月から所定の期間以内であるときに、ステップS209においてYesと判断されてもよい。
【0069】
(ステップS210)第1の特定部21は、i番目の受診者をがん患者に特定する。より具体的には、第1の特定部21は、i番目の受診者の受診者識別子をがん患者の受診者識別子として所定の記録媒体に蓄積してもよい。
【0070】
(ステップS211)第1の特定部21は、カウンタiを1だけインクリメントする。
【0071】
(ステップS212)第1の特定部21は、ステップS206で特定した受診者に、i番目の受診者が存在するかどうか判断する。そして、i番目の受診者が存在する場合には、ステップS208に戻り、そうでない場合には、
図2のフローチャートに戻る。
【0072】
なお、
図3のフローチャートにおいて、がん患者を特定する際に、がん検診の受診年月からの期間を考慮しなくてもよい。この場合には、ステップS207~S212の処理を行わなくてもよい。また、ステップS206で特定された受診者が、最終的ながん患者となってもよい。
【0073】
図4は、
図2のフローチャートにおける精検受診者の特定の処理、すなわちステップS102の処理の詳細を示すフローチャートである。
(ステップS301)第2の特定部22は、カウンタiを1に設定する。
【0074】
(ステップS302)第2の特定部22は、レセプト記憶部12で記憶されているi番目のレセプト情報が、所定の種類のがんに関する精密検査の診療に関するものであるかどうか判断する。そして、所定の種類のがんに関する精密検査の診療に関するものである場合には、ステップS303に進み、そうでない場合には、ステップS305に進む。なお、第2の特定部22は、i番目のレセプト情報が、所定の種類のがんに関する第3の条件を満たす場合に、そのレセプト情報が所定の種類のがんに関する精密検査の診療に関するものであると判断し、そうでない場合に、そのレセプト情報が所定の種類のがんに関する精密検査の診療に関するものでないと判断してもよい。
【0075】
(ステップS303)第2の特定部22は、i番目のレセプト情報の診療年月が、i番目のレセプト情報に含まれる受診者識別子を有するがん検診情報の受診年月から所定の期間以内であるかどうか判断する。そして、診療年月が、がん検診情報の受診年月から所定の期間以内である場合には、ステップS304に進み、そうでない場合には、ステップS305に進む。なお、i番目のレセプト情報の診療年月が、がん検診情報の受診年月を始点として、そのがん検診情報の受診年月から所定の期間が経過した時点を終点とする期間に含まれる場合に、第2の特定部22は、診療年月が、がん検診情報の受診年月から所定の期間以内であると判断してもよい。がん検診情報の受診年月の特定は、例えば、i番目のレセプト情報の受診者識別子と、所定の種類のがんのがん検診の結果とを含むがん検診情報を特定し、その特定したがん検診情報に含まれる受診年月を特定することによって行われてもよい。なお、i番目のレセプト情報の受診者識別子と、所定の種類のがんのがん検診の結果とを含むがん検診情報が複数存在する場合には、少なくともいずれかのがん検診情報について、i番目のレセプト情報の診療年月が、がん検診の受診年月から所定の期間以内であるときに、ステップS303においてYesと判断されてもよい。
【0076】
(ステップS304)第2の特定部22は、i番目のレセプト情報に含まれる受診者識別子で識別される受診者を精検受診者に特定する。より具体的には、第2の特定部22は、i番目のレセプト情報に含まれる受診者識別子を精検受診者の受診者識別子として所定の記録媒体に蓄積してもよい。
【0077】
(ステップS305)第2の特定部22は、カウンタiを1だけインクリメントする。
【0078】
(ステップS306)第2の特定部22は、i番目のレセプト情報がレセプト記憶部12で記憶されているかどうか判断する。そして、記憶されている場合には、ステップS302に戻り、そうでない場合には、
図2のフローチャートに戻る。
【0079】
なお、
図4のフローチャートにおいて、精検受診者を特定する際に、がん検診情報の受診年月からの期間を考慮しなくてもよい。この場合には、ステップS303の処理を行わなくてもよい。また、ステップS302においてがんの精密検査の診療に関するものであると判断されたi番目のレセプト情報に含まれる受診者識別子で識別される受診者が、精検受診者となってもよい。また、同じ受診者がステップS304で重複して精検受診者に特定されている可能性もあるため、例えば、一連の処理が終了した後に、精検受診者の受診者識別子についてユニーク処理が行われてもよい。また、ステップS304において、すでに精検受診者として特定されている受診者については、重ねての特定を行わないようにしてもよい。
【0080】
また、
図3、
図4の処理を行う際に、第1及び第2の特定部21,22が処理の対象とするレセプト情報は、例えば、所定の期間のレセプト情報に絞り込まれてもよい。また、
図3、
図4の処理を行う際に、第1及び第2の特定部21,22が処理の対象とするがん検診情報は、例えば、所定の期間のがん検診情報に絞り込まれてもよい。例えば、2020年に行われた健康診断に関するがん検診精度管理指標を算出したい場合には、がん検診記憶部11で記憶されている複数のがん検診情報のうち、2020年の受診年月を有するがん検診情報のみが、処理の対象となってもよい。
【0081】
ここで、本実施の形態による指標算出装置1の具体例について簡単に説明する。指標算出装置1の操作者が、胃がんに関するがん検診精度管理指標を算出する旨の指示を入力したとすると、それに応じて、受診者特定部13の第1の特定部21は、胃がんに関する第1または第2の条件を満たすレセプト情報を特定し、そのレセプト情報から受診者識別子を取得する(ステップS201~S206)。また、第1の特定部21は、特定した受診者識別子のそれぞれについて、初回の診療年月を特定すると共に、その初回の診療年月が、胃がんのがん検診の受診年月から1年以内であるかどうかを判断し、1年以内である場合に、その受診者識別子を胃がんのがん患者の受診者識別子として特定する(ステップS207~S212)。このようにして、胃がんのがん患者が特定されることになる(ステップS101)。
【0082】
また、受診者特定部13の第2の特定部22は、胃がんに関する第3の条件を満たすレセプト情報を特定し、その特定したレセプト情報に含まれる診療年月が、その特定したレセプト情報に対応する受診者に関する胃がんのがん検診の受診年月から1年以内であるかどうかを判断し、1年以内である場合に、そのレセプト情報に含まれる受診者識別子を胃がんの精検受診者の受診者識別子として特定する(ステップS301~306)。このようにして、胃がんの精検受診者が特定されることになる(ステップS102)。
【0083】
その後、算出部14は、胃がんに関する上記したA~Dの人数や、胃がんのがん検診の結果が陽性である受診者の人数、胃がんのがん検診の結果が陽性である胃がんの精検受診者の人数を特定し、それらの人数を用いてがん検診精度管理指標を算出して、出力部15に渡す(ステップS103)。出力部15は、受け取ったがん検診精度管理指標を出力する(ステップS104)。このようにして、操作者は、自動的に算出された、胃がんに関するがん検診精度管理指標について確認することができる。なお、胃がん以外のがんの種類についても、同様にしてがん検診精度管理指標が算出されてもよい。
【0084】
以上のように、本実施の形態による指標算出装置1によれば、がん検診情報やレセプト情報を用いて、所定の種類のがんに関するがん検診精度管理指標を自動的に算出することができる。したがって、人手で算出する必要がなくなり、人的な労力を大幅に軽減することができる。また、職域のがん検診の結果についても精度管理を行うことができるようになり、例えば、保険者が、適切ながん検診の提供と効率的な活用を実現できるようになり、その結果として、がん検診の質の向上に繋がることが期待される。
【0085】
また、第1の特定部21による特定結果を用いることによって、例えば、要精検率、がん発見率、陽性反応適中度などのがん検診精度管理指標を算出することができる。また、第2の特定部22による特定結果を用いることによって、精検受診率を算出することができる。また、がん検診の受診年月から所定の期間以内のレセプト情報を用いてがん検診精度管理指標を算出することによって、がん検診と因果関係があると考えられるレセプト情報を用いてがん検診精度管理指標を算出することになり、がん検診精度管理指標の精度を向上させることができる。
【0086】
なお、本実施の形態では、第1の特定部21が、がん検診の受診年月から所定の期間以内にがんの初回の診療を受けた受診者をがん患者として特定したり、第2の特定部22が、がん検診の受診年月から所定の期間以内にがんの精密検査を受けた受診者をがんの精検受診者として特定したりする場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。がん検診の受診年月からの期間を考慮しないでがん患者の特定や、がんの精検受診者の特定が行われてもよい。この場合であっても、例えば、がん検診の受診年月が特定の年月に集中しているときには、その受診年月から所定の期間以内のレセプト情報のみがレセプト記憶部12で記憶されるようにしたり、その受診年月から所定の期間以内のレセプト情報のみを処理の対象としたりすることによって、がん検診の受診年月からの期間を考慮した場合と同様の結果となるようにしてもよい。
【0087】
また、本実施の形態において、上記したように、受診者は通常、記号、番号、及び生年月日を用いることによって、一意に特定することができる。したがって、受診者識別子は、記号、番号、及び生年月日を含んでいてもよい。一方、一家族(すなわち、同じ記号及び番号に対応する複数人)に同じ生年月日の2人以上の人がいる場合、例えば、夫婦の生年月日が同じ場合や、双子がいる場合には、続柄をも用いて受診者を識別してもよい。この場合には、受診者識別子に記号、番号、生年月日、及び続柄が含まれてもよい。なお、レセプト情報には、受診者の続柄も含まれている。一方、がん検診情報には、受診者の続柄が含まれていないことが多いが、通常、がん検診情報は、適用データ(被保険者のマスタデータ)に紐づけられており、適用データには続柄も含まれているため、がん検診情報に対応する続柄も特定することができる。そのため、一家族に複数の同じ生年月日の人が存在する場合には、適用データを用いて続柄をも特定し、その続柄を含めて受診者を識別してもよい。この場合には、例えば、適用データに含まれる続柄を、がん検診情報に追加した後に、各処理が行われてもよい。また、例えば、続柄の含まれないがん検診情報と、そのがん検診情報に紐づけられている適用データに含まれる続柄とによって、続柄を含むがん検診情報が構成されていると考えてもよい。このように、がん検診情報やレセプト情報は、例えば、異なる2以上の情報から構成される情報であってもよい。また、適用データも用いられる場合には、指標算出装置1は、例えば、適用データが記憶される記憶部をさらに有していてもよく、または、装置の外部で記憶されている適用データにアクセス可能であってもよい。
【0088】
また、本実施の形態では、所定の種類のがんの精検受診者の特定に用いられる条件が、診療がその所定の種類のがんに関する精密検査である場合における傷病名、診療行為に関する条件である場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。第2の特定部22は、少なくとも診療行為に関する条件を用いて精検受診者を特定してもよい。すなわち、第2の特定部22は、診療が所定の種類のがんに関する精密検査である場合における診療行為に関する条件と、複数のレセプト情報とを用いて、その所定の種類のがんの精密検査を受診した受診者を、その所定の種類のがんの精検受診者として特定してもよい。この場合には、次式のように、がん精検フラグは、診療行為フラグと等しくてもよい。
がん精検フラグ=診療行為フラグ
【0089】
特に限定されないが、例えば、大腸がんについては、診療行為のみの条件によって精検受診者を特定できる可能性がある。また、例えば、がんの種類に応じて、診療行為のみの条件と、傷病名、診療行為の条件とを切り替えて用いるようにしてもよい。特に限定されないが、例えば、大腸がんについては、診療行為のみの条件によって精検受診者を特定し、乳がんについては、傷病名、診療行為の条件によって精検受診者を特定してもよい。また、例えば、一つの種類のがんについても、診療行為のみの条件と、傷病名、診療行為の条件との両方を用いてもよい。この場合には、例えば、いずれかの条件を満たした診療を受診した受診者が、その種類のがんの精検受診者として特定されてもよい。
【0090】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0091】
また、上記実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、または、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
【0092】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いる閾値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していなくても、図示しない記録媒体において、一時的に、または長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、または、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、または、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0093】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いる閾値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していなくても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、または、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0094】
また、上記実施の形態において、指標算出装置1に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、または、別々のデバイスを有してもよい。
【0095】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、または、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。なお、上記実施の形態における指標算出装置1を実現するソフトウェアは、例えば、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、がん検診の結果、がん検診の受診者を識別する受診者識別子、及び受診年月を含む複数のがん検診情報が記憶されるがん検診記憶部と、傷病名、診療行為、医薬品、診療の受診者を識別する受診者識別子、及び診療年月を含む複数のレセプト情報が記憶されるレセプト記憶部とにアクセス可能なコンピュータを、複数のレセプト情報を少なくとも用いて、所定の種類のがんに関する特定の受診者を特定する受診者特定部、受診者特定部によって特定された受診者と、複数のがん検診情報とを用いて、所定の種類のがんに関するがん検診精度管理指標を算出する算出部として機能させるためのプログラムである。
【0096】
なお、上記プログラムにおいて、上記プログラムが実現する機能には、ハードウェアでしか実現できない機能は含まれない。例えば、情報を特定する特定部や、情報を出力する出力部などにおけるモデムやインターフェースカードなどのハードウェアでしか実現できない機能は、上記プログラムが実現する機能には少なくとも含まれない。
【0097】
また、このプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、CD-ROMなどの光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。
【0098】
また、このプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、または分散処理を行ってもよい。
【0099】
図6は、上記プログラムを実行して、上記実施の形態による指標算出装置1を実現するコンピュータの外観の一例を示す模式図である。上記実施の形態は、コンピュータハードウェア及びその上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されうる。
【0100】
図6において、コンピュータシステム900は、CD-ROMドライブ905を含むコンピュータ901と、キーボード902と、マウス903と、モニタ904とを備える。
【0101】
図7は、コンピュータシステム900の内部構成を示す図である。
図7において、コンピュータ901は、CD-ROMドライブ905に加えて、MPU(Micro Processing Unit)911と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM912と、MPU911に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶すると共に、一時記憶空間を提供するRAM913と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータを記憶するハードディスク914と、MPU911、ROM912等を相互に接続するバス915とを備える。なお、コンピュータ901は、LANやWAN等への接続を提供する図示しないネットワークカードを含んでいてもよい。
【0102】
コンピュータシステム900に、上記実施の形態による指標算出装置1の機能を実行させるプログラムは、CD-ROM921に記憶されて、CD-ROMドライブ905に挿入され、ハードディスク914に転送されてもよい。これに代えて、そのプログラムは、図示しないネットワークを介してコンピュータ901に送信され、ハードディスク914に記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAM913にロードされる。なお、プログラムは、CD-ROM921、またはネットワークから直接、ロードされてもよい。また、CD-ROM921に代えて他の記録媒体(例えば、DVD等)を介して、プログラムがコンピュータシステム900に読み込まれてもよい。
【0103】
プログラムは、コンピュータ901に、上記実施の形態による指標算出装置1の機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティプログラム等を必ずしも含んでいなくてもよい。プログラムは、制御された態様で適切な機能やモジュールを呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいてもよい。コンピュータシステム900がどのように動作するのかについては周知であり、詳細な説明は省略する。
【0104】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上より、本発明の一態様による指標算出装置等によれば、がん検診精度管理指標を自動的に算出できるという効果が得られ、がん検診精度管理指標を算出する装置等として有用である。
【符号の説明】
【0106】
1 指標算出装置
11 がん検診記憶部
12 レセプト記憶部
13 受診者特定部
14 算出部
15 出力部
21 第1の特定部
22 第2の特定部