(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172016
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】情報管理システムおよび情報管理方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20231129BHJP
G06Q 10/0875 20230101ALI20231129BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20231129BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q10/08 332
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083558
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 健一郎
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA57
3C100AA68
3C100AA70
3C100BB05
3C100BB15
3C100BB17
3C100BB27
3C100CC03
3C100DD05
3C100DD22
5L049AA06
5L049CC04
(57)【要約】
【課題】容易に製品の不良原因を調査することが可能な情報管理方法を提供する。
【解決手段】情報管理方法は、各工程によって使用された対象部品の個体を識別する部品シリアルナンバーと、当該工程によって製造された中間品(または製品)の個体を識別するユニットシリアルナンバー(または製品シリアルナンバー)とを当該工程の作業順に従って取得するステップを備える。情報管理方法は、BOMデータベースにおいて、取得された順に、部品シリアルナンバーを対象部品の階層に登録するステップと、BOPデータベースにおいて、取得された順に、ユニットシリアルナンバー(または製品シリアルナンバー)を当該工程の階層に登録するステップとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を構成する1以上の部品の階層構造を示すBOMデータベースと、
前記製品を生産するための1以上の工程の階層構造を示すBOPデータベースと、
前記1以上の工程の各々について、当該工程によって製造された中間品または前記製品の個体を識別する第1識別情報と、当該個体の品質に関する品質データセットとを対応付ける品質データベースと、
前記1以上の工程の各々から、前記1以上の部品のうち当該工程によって使用された対象部品の個体を識別する第2識別情報と、当該工程によって製造された前記中間品または前記製品に対応する前記第1識別情報とを当該工程の作業順に従って取得する取得部と、
登録部と、を備え、
前記登録部は、
前記1以上の工程の各々から前記第2識別情報が取得されたことに応じて、前記BOMデータベースの前記対象部品の階層に、前記取得部によって取得された順に前記第2識別情報を登録し、
前記1以上の工程の各々から前記第1識別情報が取得されたことに応じて、前記BOPデータベースの当該工程の階層に、前記取得部によって取得された順に前記第1識別情報を登録する、情報管理システム。
【請求項2】
前記BOMデータベースおよび前記BOPデータベースを用いて、前記製品の対象個体を構成する前記1以上の部品の各個体の前記第2識別情報を検索する検索部をさらに備える、請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項3】
前記BOMデータベースは、前記1以上の部品の各個体について、当該個体の前記第2識別情報と、当該個体の供給元を識別する第3識別情報とを対応付ける供給元データを含み、
前記情報管理システムは、
前記BOMデータベースに基づいて、前記検索部によって検索された前記第2識別情報に対応する前記第3識別情報を特定し、特定した前記第3識別情報によって示される前記供給元に、前記検索部によって検索された前記第2識別情報によって示される前記個体の品質の問い合わせを送信する問合部をさらに備える、請求項2に記載の情報管理システム。
【請求項4】
前記品質データセットは、複数の項目の各々を示す項目データを含み、
前記情報管理システムは、
前記複数の項目の各々について前記製品の供給先への提供可否を示す提供可否データベースと、
前記供給先から前記製品の対象個体の品質の問い合わせを受けたことに応じて、回答情報を生成し、生成した回答情報を前記供給先に送信する回答部と、をさらに備え、
前記回答部は、
前記品質データベースから、前記対象個体の前記品質データセットを読み出し、
前記提供可否データベースに基づいて、提供可能な1以上の項目を特定し、
読み出した前記品質データセットから、特定した前記1以上の項目の各々に対応する前記項目データを抽出し、
抽出した前記項目データを前記回答情報に含める、請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項5】
製品を構成する1以上の部品の階層構造を示すBOMデータベースと、
前記製品を生産するための1以上の工程の階層構造を示すBOPデータベースと、
前記1以上の工程の各々について、当該工程によって製造された中間品または前記製品の個体を識別する第1識別情報と、当該個体の品質に関する品質データセットとを対応付ける品質データベースと、を用いた情報管理方法であって、
前記1以上の工程の各々から、前記1以上の部品のうち当該工程によって使用された対象部品の個体を識別する第2識別情報と、当該工程によって製造された前記中間品または前記製品に対応する前記第1識別情報とを当該工程の作業順に従って取得するステップと、
前記1以上の工程の各々から前記第2識別情報が取得されたことに応じて、前記BOMデータベースの前記対象部品の階層に、取得された順に前記第2識別情報を登録するステップと、
前記1以上の工程の各々から前記第1識別情報が取得されたことに応じて、前記BOPデータベースの当該工程の階層に、取得された順に前記第1識別情報を登録するステップと、を備える、情報管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報管理システムおよび情報管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製品の生産管理のため、BOM(Bill of Material)、BOP(Bill of Process)等が用いられている。例えば、特開2018-36899号公報(特許文献1)には、BOMの編集を支援するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、製品または中間品の各個体について、当該個体の品質に関するデータが蓄積される。品質に関するデータは、BOMおよびBOPとは別のデータベースに蓄積される。BOM、BOPおよび品質に関するデータは、例えば製品の不良原因の調査のために利用され得る。しかしながら、BOM、BOPおよび品質に関するデータは、分散して配置され、連携されていない。そのため、製品の不良原因を調査しにくいという問題がある。
【0005】
本開示は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、容易に製品の不良原因を調査することが可能な情報管理システムおよび情報管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一例によれば、情報管理システムは、BOMデータベースと、BOPデータベースと、品質データベースと、取得部と、登録部と、を備える。BOMデータベースは、製品を構成する1以上の部品の階層構造を示す。BOPデータベースは、製品を生産するための1以上の工程の階層構造を示す。品質データベースは、1以上の工程の各々について、当該工程によって製造された中間品または製品の個体を識別する第1識別情報と、当該個体の品質に関する品質データセットとを対応付ける。取得部は、1以上の工程の各々から、1以上の部品のうち当該工程によって使用された対象部品の個体を識別する第2識別情報と、当該工程によって製造された中間品または製品に対応する第1識別情報とを当該工程の作業順に従って取得する。登録部は、1以上の工程の各々から第2識別情報が取得されたことに応じて、BOMデータベースの対象部品の階層に、取得部によって取得された順に第2識別情報を登録する。登録部は、1以上の工程の各々から第1識別情報が取得されたことに応じて、BOPデータベースの当該工程の階層に、取得部によって取得された順に第1識別情報を登録する。
【0007】
この開示によれば、工程の作業順に従って、第1識別情報および第2識別情報が取得される。そして、取得された順に、第1識別情報および第2識別情報がBOPデータベースおよびBOMデータベースにそれぞれ登録される。そのため、ユーザは、BOPデータベースおよびBOMデータベースにおける、第1識別情報および第2識別情報の登録順を確認することにより、製品の対象個体を構成する中間品および部品が容易に特定される。さらに、ユーザは、品質データベースに基づいて、製品または中間品の各個体の品質に関する品質データセットを特定できる。そのため、ユーザは、不良品の個体の第1識別情報をキーとして、当該個体の品質、当該個体を構成する中間品の品質、当該個体を構成する部品の個体などを特定できる。これにより、ユーザは、容易に製品の不良原因を調査することができる。
【0008】
上述の開示において、情報管理システムは、BOMデータベースおよびBOPデータベースを用いて、製品の対象個体を構成する1以上の部品の各個体の第2識別情報を検索する検索部をさらに備える。
【0009】
この開示によれば、ユーザは、検索部による検索結果を確認することにより、不良品の個体の構成する部品の個体を容易に特定できる。
【0010】
上述の開示において、BOMデータベースは、1以上の部品の各個体について、当該個体の第2識別情報と、当該個体の供給元を識別する第3識別情報とを対応付ける供給元データを含む。情報管理システムは、BOMデータベースに基づいて、検索部によって検索された第2識別情報に対応する第3識別情報を特定し、特定した第3識別情報によって示される供給元に、検索部によって検索された第2識別情報によって示される個体の品質の問い合わせを送信する問合部をさらに備える。
【0011】
この開示によれば、ユーザは、不良品を構成する部品の個体の品質を容易に確認できる。
【0012】
上述の開示において、品質データセットは、複数の項目の各々を示す項目データを含む。情報管理システムは、複数の項目の各々について製品の供給先への提供可否を示す提供可否データベースと、供給先から製品の対象個体の品質の問い合わせを受けたことに応じて、回答情報を生成し、生成した回答情報を供給先に送信する回答部と、をさらに備える。回答部は、品質データベースから、対象個体の品質データセットを読み出し、提供可否データベースに基づいて、提供可能な1以上の項目を特定する。回答部は、読み出した品質データセットから、特定した1以上の項目の各々に対応する項目データを抽出し、抽出した項目データを回答情報に含める。
【0013】
この開示によれば、提供可の項目に対応する項目データを含む回答情報を即座に回答することができる。
【0014】
本開示の別の例によれば、情報管理方法は、BOMデータベースと、BOPデータベースと、品質データベースと、を用いる。BOMデータベースは、製品を構成する1以上の部品の階層構造を示す。BOPデータベースは、製品を生産するための1以上の工程の階層構造を示す。品質データベースは、1以上の工程の各々について、当該工程によって製造された中間品または製品の個体を識別する第1識別情報と、当該個体の品質に関する品質データセットとを対応付ける。情報管理方法は、第1~第3のステップを備える。第1のステップは、1以上の工程の各々から、1以上の部品のうち当該工程によって使用された対象部品の個体を識別する第2識別情報と、当該工程によって製造された中間品または製品に対応する第1識別情報とを当該工程の作業順に従って取得するステップである。第2のステップは、1以上の工程の各々から第2識別情報が取得されたことに応じて、BOMデータベースの対象部品の階層に、取得された順に第2識別情報を登録するステップである。第3のステップは、1以上の工程の各々から第1識別情報が取得されたことに応じて、BOPデータベースの当該工程の階層に、取得された順に第1識別情報を登録するステップである。この開示によっても、ユーザは、容易に製品の不良原因を調査することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、ユーザは、容易に製品の不良原因を調査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施の形態に係る情報管理方法の概要を示す図である。
【
図2】製品の不良の原因を調査するために利用される従来のシステムを示す図である。
【
図3】実施の形態に係る情報管理システムの構成の一例を示す図である。
【
図4】実施の形態に係るサーバのハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【
図5】実施の形態に係る製造コントローラのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図6】情報管理システム1Aの機能構成の一例を示す図である。
【
図7】情報管理システム1Bの機能構成の一例を示す図である。
【
図8】データベース群に含まれるデータベースの一例を示す図である。
【
図9】
図6に示すサーバのBOMデータベースおよびBOPデータベースの一例を示す図である。
【
図10】
図6に示すサーバのBOPデータベースおよびBOEデータベースの一例を示す図である。
【
図11】
図6に示すサーバのBOMデータベースのデータ項目を示す図である。
【
図12】ハウジングユニット組立工程に対応する品質データベースの一例を示す図である。
【
図13】モータ検査工程に対応する品質データベースの一例を示す図である。
【
図14】ハウジング成型工程に対応する品質データベースの一例を示す図である。
【
図15】ハウジング検査工程に対応する品質データベースの一例を示す図である。
【
図16】
図7に示す提供可否データベースの一例を示す図である。
【
図17】事前処理の流れを示すフローチャートである。
【
図18】情報管理処理の流れを示すフローチャートである。
【
図19】使用された部品の部品シリアルナンバーが登録されたBOMデータベースの一例を示す図である。
【
図20】
図18に示すステップS21のサブルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図21】モータの不良原因の調査手法を説明する図である。
【
図22】回答処理の流れを示すフローチャートである。
【
図23】BOMデータベースの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。以下で説明される各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0018】
§1 適用例
図1は、本実施の形態に係る情報管理方法の概要を示す図である。
図1に示されるように、情報管理方法は、BOMデータベース51と、BOPデータベース52と、品質データベース60と、を用いて、企業2の生産に関する情報を管理する。
【0019】
BOMデータベース51は、企業2において生産される製品を構成する1以上の部品の階層構造(ツリー構造)を示す。BOPデータベース52は、製品を生産するための1以上の工程の階層構造を示す。
【0020】
品質データベース60は、企業2において生産される製品または中間品の個体を識別する第1識別情報と、当該個体の品質に関する品質データセットとを対応付ける。中間品には、製品を構成するユニットも含まれる。以下、中間品の個体を識別する第1識別情報として「ユニットシリアルナンバー」が用いられ、製品の個体を識別する第1識別情報として「製品シリアルナンバー」が用いられるものとする。
【0021】
品質データセットは、製品または中間品の個体の品質に関する情報を示し、品質を直接的に示すデータ、製品または中間品の品質に間接的に関連する情報を示すデータを含む。製品または中間品の品質を直接的に示すデータは、例えば加工の良否を示す検査データ、製品または中間品の特性(寸法、電気的性質など)を示すデータなどを含む。製品または中間品の品質に間接的に関連する情報を示すデータは、例えば工場内の設備データ、加工・組立作業の履歴データ、作業者名を示す作業者データ、タイムスタンプ(作業開始タイムスタンプ、作業終了タイムスタンプなど)、加工方法データ、材料を示すデータ、加工条件データなどを含む。
【0022】
情報管理方法は、BOMデータベース51と、BOPデータベース52と、品質データベース60と、を連携させるために、以下のステップ(1)~(3)を含む。
【0023】
ステップ(1):企業2の1以上の工程の各々から、当該工程によって使用された対象部品の個体を識別する第2識別情報と、当該工程によって製造された中間品(または製品)の個体を識別するユニットシリアルナンバー(または製品シリアルナンバー)とを当該工程の作業順に従って取得する。以下、第2識別情報として、「部品シリアルナンバー」が用いられるものとする。
【0024】
ステップ(2):企業2の1以上の工程の各々から部品シリアルナンバーが取得されたことに応じて、BOMデータベース51において、取得された順に、部品シリアルナンバーを対象部品の階層に登録する。
【0025】
ステップ(3):企業2の1以上の工程の各々からユニットシリアルナンバー(または製品シリアルナンバー)が取得されたことに応じて、BOPデータベース52において、取得された順に、ユニットシリアルナンバー(または製品シリアルナンバー)を当該工程の階層に登録する。
【0026】
図1に示す例では、「ハウジングユニット組立工程」から、「ハウジングユニット組立工程」によって使用される対象部品「ハウジング」の部品シリアルナンバー「HA4354」が取得される。これに応じて、ステップ(2)において、部品シリアルナンバー「HA4354」がBOMデータベース51における部品「ハウジング」の階層に登録される。さらに、「ハウジングユニット組立工程」からユニットシリアルナンバー「000003」が取得される。これに応じて、ステップ(3)において、ユニットシリアルナンバー「000003」がBOPデータベース52における「ハウジングユニット組立工程」の階層に登録される。
【0027】
さらに、
図1に示す例では、その後、「モータ組立工程」から製品シリアルナンバー「MA0003」が取得される。これに応じて、ステップ(3)において、製品シリアルナンバー「MA00003」がBOPデータベース52における「モータ組立工程」の階層に登録される。
【0028】
ステップ(1)では、工程の作業順に従って、ユニットシリアルナンバー(または製品シリアルナンバー)および部品シリアルナンバーが取得される。さらに、ステップ(2),(3)において、取得された順に、ユニットシリアルナンバー(または製品シリアルナンバー)および部品シリアルナンバーがBOPデータベース52およびBOMデータベース51にそれぞれ登録される。そのため、BOPデータベース52およびBOMデータベース51における、ユニットシリアルナンバー、製品シリアルナンバーおよび部品シリアルナンバーの登録順を確認することにより、製品の対象個体を構成する中間品および部品が容易に特定される。
【0029】
例えば、ユーザは、BOPデータベース52において3番目に登録されている製品シリアルナンバー「MA00003」の製品は、BOPデータベース52において3番目に登録されているユニットシリアルナンバー「000003」の中間品から製造されていることを容易に特定できる。同様に、ユーザは、ユニットシリアルナンバー「000003」の中間品には、BOMデータベース51において3番目に登録されている部品シリアルナンバー「HA4354」の部品が含まれることを容易に特定できる。
【0030】
さらに、ユーザは、品質データベース60に基づいて、製品または中間品の各個体の品質に関する品質データセットを特定できる。
【0031】
そのため、ユーザは、不良品の個体の製品シリアルナンバーをキーとして、当該個体の品質、当該個体を構成する中間品の品質、当該個体を構成する部品の個体などを特定できる。これにより、ユーザは、容易に製品の不良原因を調査することができる。
【0032】
§2 具体例
<従来のトレーサビリティシステム>
図2は、製品の不良の原因を調査するために利用される従来のシステムを示す図である。
図2に示されるように、企業は、製品の生産管理のシステムとして、ERP(Enterprise Resource Planning)システム3と、MES(Manufacturing Execution System)4と、製造管理システム5と、を有する。さらに、企業は、BOMデータベース、BOPデータベースおよびBOE(Bill of Equipment)データベースを含むデータベース群950と、製品の品質を示す品質データベース960と、を有する。
【0033】
ERPシステム3は、経営の生産計画と、当該生産計画に沿った部品調達と、を監視する。部品は、BOMデータベースから特定される。ERPシステム3は、部品のサプライヤに部品番号、納期、数量を指定し、部品を発注する。
【0034】
MES4は、ERPシステム3によって管理される生産計画により、生産スケジュール、差立て、品質、部品在庫、製品在庫、保全、設備などの工場の生産オペレーションに必要な情報を管理し、これらの情報に基づいて生産指示を生成する。MES4は、BOPデータベースおよびBOEデータベースを用いて、これらの情報を管理する。
【0035】
製造管理システム5は、MES4からの生産指示により、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)、センサデバイスなどを用いて、加工組立ライン、工程、設備を制御する。また、製品の製造に必要な作業指示書は、BOMデータベースおよびBOPデータベースを用いて作成され、作業者に配布される。
【0036】
品質データベース960は、工場内の設備データ、加工・組立作業の履歴、タイムスタンプ、加工データ、製品の良否など検査データ、シリアルナンバー、ロット番号などを示す。これらの情報は、設備、作業者、製造管理システム5を構成するPLCおよびセンサデバイスから取得される。
【0037】
図2に示されるように、BOMデータベース、BOPデータベースおよびBOEデータベースを含むデータベース群950と、製品の品質を示す品質データベース960とは、連携されていない。すなわち、情報の分断が発生している。そのため、不良の原因の調査に手間がかかる。
【0038】
<情報管理システムの全体構成>
図3は、実施の形態に係る情報管理システムの構成の一例を示す図である。
図3に示されるように、情報提供システム8は、企業ごとの情報管理システムを備える。
図3に示される情報提供システム8は、情報管理システム1A,1B,・・・を備える。情報管理システム1A,1B,・・・は、インターネットを介して互いに情報を提供する。以下、情報管理システム1A,1B,・・・を特に区別しない場合、情報管理システム1A,1B,・・・の各々を「情報管理システム1」と称する。
【0039】
情報管理システム1Aは、製品6Aを製造するメーカーに配置される。情報管理システム1Bは、製品6Bを製造する部品サプライヤに配置される。製品6Bは、製品6Aの部品として利用され、情報管理システム1Aが配置されるメーカーに納入される。なお、情報提供システム8は、情報管理システム1A,1B以外に、製品6Aの部品を供給する他の部品サプライヤに配置される情報管理システム1をさらに備え得る。
【0040】
各企業の情報管理システム1は、当該企業によって生産される製品に関する情報を管理するサーバと、当該製造の生産を制御する製造コントローラと、を備える。すなわち、情報管理システム1Aは、製品6Aに関する情報を管理するサーバ100Aと、製品6Aの生産を制御する製造コントローラ200Aと、を備える。情報管理システム1Bは、製品6Bに関する情報を管理するサーバ100Bと、製品6Bの生産を制御する製造コントローラ200Bと、を備える。以下、サーバ100A,100B,・・・を特に区別しない場合、サーバ100A,100B,・・・の各々を「サーバ100」と称する。製造コントローラ200A,200B,・・・を特に区別しない場合、製造コントローラ200A,200B,・・・の各々を「製造コントローラ200」と称する。サーバ100A,100B,・・・は、例えばインターネットを介して互いに通信可能である。製造コントローラ200は、例えばPLCによって実現される。
【0041】
<サーバのハードウェア構成>
図4は、実施の形態に係るサーバのハードウェア構成の一例を示す模式図である。
図4に示されるように、サーバ100は、典型的には、汎用的なコンピュータアーキテクチャに従う構造を有する。具体的には、サーバ100は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)などのプロセッサ101と、メモリ102と、ストレージ103と、表示コントローラ104と、入力インターフェイス105と、通信インターフェイス106と、を含む。これらの各部は、バスを介して、互いにデータ通信可能に接続される。
【0042】
プロセッサ101は、ストレージ103に記憶されている各種のプログラムをメモリ102に展開して実行することで、本実施の形態に従う各種処理を実現する。
【0043】
メモリ102は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性の記憶装置であり、ストレージ103から読み出されたプログラムなどを記憶する。
【0044】
ストレージ103は、典型的には、ハードディスクトライブなどの不揮発性の磁気記憶装置である。ストレージ103は、プロセッサ101で実行される管理プログラム130を記憶する。ストレージ103にインストールされる管理プログラム130は、メモリカードなどに格納された状態で流通する。
【0045】
表示コントローラ104は、表示装置140と接続されており、プロセッサ101からの内部コマンドに従って、各種の情報を表示するための信号を表示装置140へ出力する。
【0046】
入力インターフェイス105は、プロセッサ101とキーボード、マウス、タッチパネル、専用コンソールなどの入力装置150との間のデータ伝送を仲介する。すなわち、入力インターフェイス105は、ユーザが入力装置150を操作することで与えられる操作指令を受け付ける。
【0047】
通信インターフェイス106は、プロセッサ101と外部デバイス(例えば製造コントローラ200、他のサーバ100)との間におけるデータ伝送を仲介する。ストレージ103に格納される管理プログラム130は、通信インターフェイス106を介して、配信サーバなどからダウンロードされてもよい。
【0048】
上述のような汎用的なコンピュータアーキテクチャに従う構造を有するコンピュータを利用する場合には、本実施の形態に係る機能を提供するためのアプリケーションに加えて、コンピュータの基本的な機能を提供するためのOS(Operating System)がインストールされていてもよい。この場合には、本実施の形態に係るプログラムは、OSの一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の順序およびタイミングで呼出して処理を実行するものであってもよい。すなわち、本実施の形態に係るプログラム自体は、上記のようなモジュールを含んでおらず、OSと協働して処理が実行される場合もある。
【0049】
なお、代替的に、管理プログラム130の実行により提供される機能の一部もしくは全部を専用のハードウェア回路として実装してもよい。
【0050】
<製造コントローラのハードウェア構成>
図5は、実施の形態に係る製造コントローラのハードウェア構成例を示すブロック図である。
図5に示されるように、製造コントローラ200は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)などのプロセッサ201と、チップセット202と、主メモリ203と、ストレージ204と、制御系ネットワークコントローラ205と、情報系ネットワークコントローラ206と、メモリカードインターフェイス208とを含む。
【0051】
プロセッサ201は、ストレージ204に格納された各種プログラムを読み出して、主メモリ203に展開して実行することで、制御対象を制御するための制御演算を実現する。チップセット202は、プロセッサ201と各コンポーネントとのデータ伝送などを制御する。
【0052】
ストレージ204には、基本的な処理を実現するためのシステムプログラム210と、制御演算を実現するためのユーザプログラム211と、が格納される。
【0053】
制御系ネットワークコントローラ205は、制御系ネットワークを介して、制御対象とのデータのやり取りを制御する。
【0054】
情報系ネットワークコントローラ206は、情報系ネットワークを介して、外部機器(サーバ100を含む)とのデータのやり取りを制御する。
【0055】
メモリカードインターフェイス208は、メモリカード220を着脱可能に構成されており、メモリカード220に対してデータを書き込み、メモリカード220から各種データ(ユーザプログラムなど)を読み出すことが可能になっている。
【0056】
図5には、プロセッサ201がプログラムを実行することで必要な処理が提供される構成例を示したが、これらの提供される処理の一部または全部を、専用のハードウェア回路(例えば、ASICまたはFPGAなど)を用いて実装してもよい。あるいは、製造コントローラ200の主要部を、汎用的なアーキテクチャに従うハードウェア(例えば、汎用パソコンをベースとした産業用パソコン)を用いて実現してもよい。この場合には、仮想化技術を用いて、用途の異なる複数のOSを並列的に実行させるとともに、各OS上で必要なアプリケーションを実行させるようにしてもよい。
【0057】
<情報管理システムの機能構成>
図6は、情報管理システム1Aの機能構成の一例を示す図である。
図7は、情報管理システム1Bの機能構成の一例を示す図である。
【0058】
図6に示す製造コントローラ200Aの制御対象は、製品6A(
図3参照)としてモータを製造する複数の工程を含む。モータは、ハウジングユニットと、エンドキャップユニットと、ローターユニットとが組み合わされることにより製造される。そのため、製造コントローラ200Aの制御対象は、ハウジングユニット組立工程301と、エンドキャップユニット組立工程302と、ローターユニット組立工程303と、モータ組立工程304と、モータ検査工程305と、を含む。
【0059】
ハウジングユニット組立工程301には、コードリーダ401とレーザマーカ411とが設けられる。エンドキャップユニット組立工程302には、コードリーダ402とレーザマーカ412とが設けられる。ローターユニット組立工程303には、コードリーダ403とレーザマーカ413とが設けられる。モータ組立工程304には、コードリーダ404とレーザマーカ414とが設けられる。モータ検査工程305には、コードリーダ405が設けられる。
【0060】
コードリーダ401~405の各々は、対応する工程に搬送される部品、中間品または製品のQRコード(登録商標)を読み取る。QRコードは、部品、中間品または製品を識別するシリアルナンバーを示す。例えば、コードリーダ401は、ハウジングユニット組立工程301に搬送されるハウジングにマーキングされたQRコードを読み取り、読み取ったQRコードによって示される部品シリアルナンバーを出力する。コードリーダ405は、モータ検査工程305に搬送されるモータにマーキングされたQRコードを読み取り、読み取ったQRコードによって示される製品シリアルナンバーを出力する。
【0061】
レーザマーカ411~414は、対応する工程から出力される中間品または製品にQRコード(登録商標)をマーキングする。QRコードは、中間品または製品を識別するシリアルナンバーを示す。レーザマーカ411~414によってマーキングされるQRコードは、製造コントローラ200Aまたは対応する工程に設置された設備によってユニークに指定される。例えば、レーザマーカ414は、モータ組立工程304によって製造されたモータに、製品シリアルナンバーをマーキングする。
【0062】
製造コントローラ200Aは、工程に設置される設備との間でデータの入出力処理を行なうIO処理部21Aを備える。IO処理部21Aは、製造コントローラ200Aが備えるプロセッサ201(
図5参照)がユーザプログラム211を実行することにより実現される。
【0063】
IO処理部21Aは、例えば、各工程に設置される設備に対して、動作指令を示すデータ、中間品または製品にマーキングすべきQRコードを示すデータなどを出力する。
【0064】
IO処理部21Aは、各工程から、当該工程によって製造される中間品または製品の品質に関する1以上の項目データを取得する。項目データは、品質に関連する項目の値、内容などを示す。1以上の項目データには、対応する個体のシリアルナンバー(ユニットシリアルナンバーまたは製品シリアルナンバー)が付加される。例えば、IO処理部21Aは、項目データとして、コードリーダ401~405がQRコードを読み取った時刻を示すデータ(タイムスタンプ)、加工条件を示すデータ、加工方法を示すデータ、品質の良否を示すデータなどを受ける。
【0065】
さらに、IO処理部21Aは、各工程から、当該工程によって使用された部品の個体を識別する部品シリアルナンバーと、当該工程によって製造された中間品または製品の個体を識別するユニットシリアルナンバー(または製品シリアルナンバー)とを当該工程の作業順に従って取得する取得部として動作する。具体的には、IO処理部21Aは、各工程に設置されるコードリーダが部品のQRコードを読み取るたびに、当該QRコードによって示される部品シリアルナンバーを取得する。IO処理部21Aは、各工程に設置されるレーザマーカがQRコードを中間品または製品にマーキングするたびに、当該QRコードによって示されるユニットシリアルナンバーまたは製品シリアルナンバーを取得する。
【0066】
例えば、IO処理部21Aは、ハウジングユニット組立工程301から、ハウジングユニット組立工程301によってハウジングユニットの個体が製造されるたびに、当該ハウジングユニットの個体に使用された部品の個体を識別する部品シリアルナンバーと、当該ハウジングユニットの個体を識別するユニットシリアルナンバーと、を取得する。また、IO処理部21Aは、モータ組立工程304から、モータの個体が製造されるたびに、当該個体にマーキングした製品シリアルナンバーを取得する。
【0067】
図7に示す製造コントローラ200Bの制御対象は、製品6B(
図3参照)としてハウジングを製造する複数の工程を含む。ハウジングは、製品6Aであるモータの部品として利用される。具体的には、製造コントローラ200Bの制御対象は、板金プレス型抜き工程306と、ハウジング成型工程307と、ハウジング検査工程308と、を含む。
【0068】
板金プレス型抜き工程306には、コードリーダ406とレーザマーカ416とが設けられる。ハウジング成型工程307には、コードリーダ407とレーザマーカ417とが設けられる。ハウジング検査工程308には、コードリーダ408が設けられる。
【0069】
コードリーダ406~408の各々は、対応する工程に搬送される部品、中間品または製品のQRコードを読み取る。QRコードは、部品、中間品または製品を識別するシリアルナンバーを示す。例えば、コードリーダ406は、板金プレス型抜き工程306に搬送される金属板にマーキングされたQRコードを読み取り、読み取ったQRコードによって示される部品シリアルナンバーを出力する。コードリーダ408は、製造されたハウジングにマーキングされたQRコードを読み取り、読み取ったQRコードによって示される製品シリアルナンバーを出力する。
【0070】
レーザマーカ416,417は、対応する工程から出力される中間品または製品にQRコードをマーキングする。QRコードは、中間品または製品を識別するシリアルナンバーを示す。レーザマーカ416,417によってマーキングされるQRコードは、製造コントローラ200Bまたは対応する工程に設置された設備によってユニークに指定される。
【0071】
製造コントローラ200Bは、各工程に設置される設備との間でデータの入出力処理を行なうIO処理部21Bを備える。IO処理部21Bは、製造コントローラ200Bが備えるプロセッサ201(
図5参照)がユーザプログラム211を実行することにより実現される。
【0072】
IO処理部21Bは、例えば、工程に設置される設備に対して、動作指令を示すデータ、中間品または製品にマーキングすべきQRコードを示すデータなどを出力する。
【0073】
IO処理部21Bは、各工程から、当該工程によって製造される中間品または製品の各個体の品質に関する1以上の項目データを取得する。項目データは、品質に関連する項目の値、内容などを示す。1以上の項目データには、対応する個体のシリアルナンバー(ユニットシリアルナンバーまたは製品シリアルナンバー)が付加される。例えば、IO処理部21Bは、項目データとして、コードリーダ406~408がQRコードを読み取った時刻を示すデータ(作業開始タイムスタンプ)、加工条件を示すデータ、加工方法を示すデータ、品質を表すパラメータ(寸法など)の値を示すデータなどを受ける。
【0074】
さらに、IO処理部21Bは、各工程から、1以上の部品のうち当該工程によって使用された部品の個体を識別する部品シリアルナンバーと、当該工程によって製造された中間品または製品の個体を識別するユニットシリアルナンバー(または製品シリアルナンバー)とを当該工程の作業順に従って取得する取得部として動作する。具体的には、IO処理部21Bは、各工程に設置されるコードリーダが部品のQRコードを読み取るたびに、当該QRコードによって示される部品シリアルナンバーを取得する。IO処理部21Bは、各工程に設置されるレーザマーカがQRコードを中間品または製品にマーキングするたびに、当該QRコードによって示されるユニットシリアルナンバーまたは製品シリアルナンバーを取得する。
【0075】
例えば、IO処理部21Bは、板金プレス型抜き工程306から、金属板から金属片が型抜きされるたびに、当該金属板の個体を識別する部品シリアルナンバーと、当該金属片の個体を識別するユニットシリアルナンバーと、を取得する。また、IO処理部21Bは、ハウジング成型工程307から、ハウジングの個体が製造されるたびに、当該ハウジングの個体にマーキングした製品シリアルナンバーを取得する。
【0076】
図6および
図7に示されるように、サーバ100A,100Bは、同様の機能構成を有する。すなわち、
図6に示すサーバ100Aは、登録部10Aと、データ解析部11Aと、問合/回答部12Aと、データベース群50Aと、品質データベース60Aと、提供可否データベース70Aと、を備える。
図7に示すサーバ100Bは、登録部10Bと、データ解析部11Bと、問合/回答部12Bと、データベース群50Bと、品質データベース60Bと、提供可否データベース70Bと、を備える。以下、データベース群50A,50Bを特に区別しない場合、データベース群50A,50Bの各々を「データベース群50」と称する。提供可否データベース70A,70Bを特に区別しない場合、提供可否データベース70A,70Bの各々を「提供可否データベース70」と称する。
【0077】
登録部10A、データ解析部11Aおよび問合/回答部12Aは、サーバ100Aのプロセッサ101(
図4参照)が管理プログラム130を実行することにより実現される。データベース群50A、品質データベース60Aおよび提供可否データベース70Aは、サーバ100Aのメモリ102およびストレージ103によって実現される。登録部10B、データ解析部11Bおよび問合/回答部12Bは、サーバ100Bのプロセッサ101が管理プログラム130を実行することにより実現される。データベース群50B、品質データベース60Bおよび提供可否データベース70Bは、サーバ100Bのメモリ102およびストレージ103によって実現される。
【0078】
図8は、データベース群に含まれるデータベースの一例を示す図である。
図8に示されるように、データベース群50は、BOMデータベース51と、BOPデータベース52と、BOEデータベース53と、第1対応付けデータベース54と、第2対応付けデータベース55と、を含む。
【0079】
BOMデータベース51は、製品を構成する1以上の部品の階層構造を示す。例えば、サーバ100AのBOMデータベース51は、モータを構成する1以上の部品の階層構造を示す。一方、サーバ100BのBOMデータベース51は、ハウジングを構成する1以上の部品の階層構造を示す。
【0080】
BOPデータベース52は、製品を生産するための1以上の工程の階層構造を示す。BOEデータベース53は、製品を生産するための1以上の設備の階層構造を示す。
【0081】
第1対応付けデータベース54は、製品を生産するための1以上の工程の各々と、当該工程において使用される部品との対応関係を示す。第2対応付けデータベース55は、1以上の工程の各々と、当該工程において使用される設備との対応関係を示す。
【0082】
図9は、
図6に示すサーバのBOMデータベースおよびBOPデータベースの一例を示す図である。
図9に示されるように、サーバ100AのBOMデータベース51Aは、製品であるモータを構成する部品「ハウジングユニット」,「エンドキャップユニット」,「ローターユニット」,「ハウジング」,「マグネット」,「エンドベル」,「ブラシ」,「コイル」,「コア」,「シャフト」の階層構造を示す。サーバ100AのBOPデータベース52Aは、モータを製造するための工程「ハウジングユニット組立」,「エンドキャップユニット組立」,「ローターユニット組立」,「モータ組立」,「ハウジングを固定する」,「マグネットを取り付ける」,「エンドベルを固定する」,「ブラシを取付ける」,「シャフトを固定する」,「コアをはめ込む」,「電線をコアに巻く」の階層構造を示す。
【0083】
第1対応付けデータベース54Aは、BOMデータベース51Aによって示される部品と、BOPデータベース52Aによって示される工程とを対応付ける。例えば、第1対応付けデータベース54Aは、部品「ハウジング」と、部品「ハウジング」を用いる工程「ハウジングを固定する」とを対応付ける。このように、第1対応付けデータベース54Aによって、BOMデータベース51AとBOPデータベース52Aとが関連付けられる。
【0084】
図10は、
図6に示すサーバのBOPデータベースおよびBOEデータベースの一例を示す図である。
図10に示されるように、サーバ100AのBOEデータベース53Aは、製品であるモータを製造するための設備「ステーション1」,「ステーション2」,「ステーション3」,「ステーション4」,「固定治具1」,「作業台1」,「固定治具2」,「作業台2」,「固定治具3」,「圧入機」,「巻線機」の階層構造を示す。
【0085】
第2対応付けデータベース55Aは、BOPデータベース52Aによって示される工程と、BOEデータベース53Aによって示される設備とを対応付ける。例えば、第2対応付けデータベース55Aは、工程「ハウジングを固定する」と、当該工程において使用される設備「固定治具1」および「作業台1」とを対応付ける。このように、第2対応付けデータベース55Aによって、BOPデータベース52AとBOEデータベース53Aとが関連付けられる。
【0086】
BOMデータベース51は、各部品の各個体について、当該個体の部品シリアルナンバーと、当該個体の供給元を識別する第3識別情報とを対応付ける供給元データを含む。以下、第3識別情報として「サプライヤ番号」が用いられるものとする。
【0087】
図11は、
図6に示すサーバのBOMデータベースのデータ項目を示す図である。
図11に示されるように、BOMデータベース51Aは、データ項目「サプライヤ番号」,「納入された部品シリアルナンバー」によって構成される供給元データ56Aを含む。具体的には、供給元データ56Aは、部品番号「S6500」の部品「ハウジング」を供給する供給元のサプライヤ番号「D0001A」と、当該部品の個体を識別する部品シリアルナンバー「HA4300」-「HA4600」とを対応付ける。さらに、供給元データ56Aは、部品番号「S6501」の部品「ハウジング」を供給する供給元のサプライヤ番号「D0023B」と、当該部品の個体を識別する部品シリアルナンバー「HB5000」-「HB5100」とを対応付ける。
【0088】
図6に示す品質データベース60Aは、製造コントローラ200Aの制御対象の各工程について、当該工程によって製造された中間品(または製品)の個体を識別するユニットシリアルナンバー(または製品シリアルナンバー)と、当該個体の品質に関する品質データセットとを対応付ける。品質データセットは、複数の項目の各々を示す項目データを含む。
【0089】
図12は、ハウジングユニット組立工程に対応する品質データベースの一例を示す図である。
図12に示す品質データベース60A_1は、ハウジングユニットの各個体について、ユニットシリアルナンバーと、項目「工程番号」,「作業者名」,「作業開始タイムスタンプ」の各々を示す項目データと、を対応付ける。項目「工程番号」は、対応するユニットシリアルナンバーの個体が製造された工程を識別する。項目「作業者名」は、対応するユニットシリアルナンバーの個体を製造した作業者を識別する。項目「作業開始タイムスタンプ」は、対応するユニットシリアルナンバーの個体に対する作業の開始時刻を示す。
【0090】
図13は、モータ検査工程に対応する品質データベースの一例を示す図である。
図13に示す品質データベース60A_2は、モータの各個体について、製品シリアルナンバーと、項目「工程番号」,「作業者名」,「作業開始タイムスタンプ」,「良否判定結果」の各々を示す項目データと、を対応付ける。項目「良否判定結果」は、対応する製品シリアルナンバーの個体の良否を示す。
【0091】
図6に示す品質データベース60Bは、製造コントローラ200Bの制御対象の各工程について、当該工程によって製造された中間品または製品の個体を識別するユニットシリアルナンバー(または製品シリアルナンバー)と、当該個体の品質に関する品質データセットとを対応付ける。品質データセットは、複数の項目の各々を示す項目データを含む。
【0092】
図14は、ハウジング成型工程に対応する品質データベースの一例を示す図である。
図14に示す品質データベース60B_1は、ハウジングの各個体について、ユニットシリアルナンバーと、項目「工程番号」,「作業者名」,「作業開始タイムスタンプ」,「加工条件」,「加工方法」の各々を示す項目データと、を対応付ける。項目「加工条件」は、対応するユニットシリアルナンバーの個体を製造するときの加工条件を示す。項目「加工方法」は、対応するユニットシリアルナンバーの個体を製造するときの加工方法を示す。
【0093】
図15は、ハウジング検査工程に対応する品質データベースの一例を示す図である。
図15に示す品質データベース60B_2は、ハウジングの各個体について、製品シリアルナンバーと、項目「工程番号」,「作業者名」,「作業開始タイムスタンプ」,「測定寸法」,「歪み」の各々の項目データと、を対応付ける。項目「測定寸法」は、対応する製品シリアルナンバーの個体の寸法を示す。項目「歪み」は、対応する製品シリアルナンバーの個体の歪み量を示す。
【0094】
図6に示す提供可否データベース70Aは、製品であるモータについて、品質データベース60Aによって示される複数の項目の各々の供給先への提供可否を示す。同様に、
図7に示す提供可否データベース70Bは、製品であるハウジングについて、品質データベース60Bによって示される複数の項目の各々の供給先への提供可否を示す。
【0095】
図16は、
図7に示す提供可否データベースの一例を示す図である。
図16に示す提供可否データベース70Bは、提供可能な項目として項目「測定寸法」,「歪み」,・・・を示し、提供不可の項目として項目「加工条件」,「加工方法」,・・・を示す。
【0096】
図6に示す登録部10Aは、データベース群50Aに含まれるBOMデータベース51AおよびBOPデータベース52Aと、品質データベース60Aと、に対してデータを登録する。
図7に示す登録部10Bは、データベース群50Bに含まれるBOMデータベース51およびBOPデータベース52と、品質データベース60Bと、に対してデータを登録する。登録部10A,10Bの処理内容は同様であるため、以下に登録部10Aの処理についてのみ説明する。
【0097】
登録部10Aは、製造コントローラ200Aが各工程から1以上の項目データを取得したことに応じて、当該1以上の項目データを当該工程に対応する品質データベース60Aに登録する。
【0098】
また、登録部10Aは、製造コントローラ200Aが各工程から対象部品の部品シリアルナンバーを取得したことに応じて、部品シリアルナンバーをBOMデータベース51Aの対象部品の階層に登録する。具体的には、登録部10Aは、製造コントローラ200Aが各工程から部品シリアルナンバーを取得したことに応じて、第1対応付けデータベース54Aを用いて、当該工程において使用される対象部品を特定する。そして、登録部10Aは、BOMデータベース51Aにおいて、製造コントローラ200Aによって取得された順に、部品シリアルナンバーを対象部品の階層に登録する。
【0099】
さらに、登録部10Aは、製造コントローラ200Aが各工程から当該工程によって製造された中間品または製品のシリアルナンバーを取得したことに応じて、BOPデータベース52Aにおいて、取得された順に、シリアルナンバーを当該工程の階層に登録する。
【0100】
図6に示すデータ解析部11Aは、データベース群50Aおよび品質データベース60Aを用いたデータ解析を行なう。
図7に示すデータ解析部11Bは、データベース群50Bおよび品質データベース60Bを用いたデータ解析を行なう。
【0101】
例えば、データ解析部11Aは、BOMデータベース51A、BOPデータベース52Aおよび第1対応付けデータベース54Aを用いて、製品の対象個体を構成する1以上の部品の各個体の部品シリアルナンバーを検索する検索部として動作する。また、データ解析部11Aは、BOEデータベース53Aおよび第2対応付けデータベース55Aを用いて、対象個体を製造するために使用された設備を検索する。データ解析部11Bも同様の検索処理を実行する。
【0102】
図6に示す問合/回答部12Aは、他のサーバ100に対して問い合わせを送信したり、問い合わせに対する回答情報を他のサーバ100に送信したりする。
図7に示す問合/回答部12Bも、他のサーバ100に対して問い合わせを送信したり、問い合わせに対する回答情報を他のサーバ100に送信したりする。
【0103】
例えば、問合/回答部12Aは、BOMデータベース51Aに基づいて、データ解析部11Aによって検索された部品シリアルナンバーに対応するサプライヤ番号を特定する。そして、問合/回答部12Aは、特定したサプライヤ番号によって示される部品サプライヤのサーバ100(例えば、サーバ100B)に、データ解析部11Aによって検索された部品シリアルナンバーによって示される個体の品質の問い合わせを送信する。
【0104】
例えば、問合/回答部12Bは、製品であるハウジングの供給先から対象個体の品質の問い合わせを受けたことに応じて、回答情報を生成し、生成した回答情報を供給先に送信する。具体的には、問合/回答部12Bは、品質データベース60Bから、対象個体の品質データセットを読み出す。問合/回答部12Bは、提供可否データベース70Bに基づいて、供給先に提供可能な1以上の項目を特定する。問合/回答部12Bは、読み出した品質データセットから、特定した1以上の項目の各々に対応する項目データを抽出し、抽出した項目データを回答情報に含める。
【0105】
<事前処理の流れ>
図17は、事前処理の流れを示すフローチャートである。事前処理は、製品の生産開始前に実行される。
図17に示すフローチャートは、各情報管理システム1において実行される。
【0106】
まず、製品の設計者は、製品の図面を作成し、製品を構成する1以上の部品の各々を識別する部品番号および製品の構造に基づいて、BOMデータベース51を作成する(ステップS1)。
【0107】
次に、工程の設計者は、設計内容に基づいて、BOPデータベース52を作成し(ステップS2)、BOEデータベース53を作成する(ステップS3)。
【0108】
さらに、工程の設計者は、設計内容に基づいて、第1対応付けデータベース54を作成し(ステップS4)、第2対応付けデータベース55を作成する(ステップS5)。
【0109】
製品の納品担当者は、製品の供給先との契約内容に基づいて、当該製品の品質に関する複数の項目の各々の供給先への提供可否を示す提供可否データベース70を作成する(ステップS6)。これにより、事前処理が終了する。
【0110】
<生産開始後の情報管理処理の流れ>
図18は、情報管理処理の流れを示すフローチャートである。
図18に示すフローチャートは、例えばロットごとに実行される。以下、ロットごとに
図18に示すフローチャートが実行されるものとする。
【0111】
図18に示されるように、サーバ100のプロセッサ101は、対象ロットの製品に使用される部品の納入に応じて、BOMデータベース51に供給元データを登録する(ステップS11)。供給元データは、納入された部品の各個体について、当該個体の部品シリアルナンバーと、当該個体の供給元を識別するサプライヤ番号とを対応付ける。例えば、
図11に示されるように、BOMデータベース51Aに供給元データ56Aが登録される。
【0112】
次に、製造コントローラ200のプロセッサ201は、各工程に設置される設備の動作を制御することにより、対象ロットの生産を開始する(ステップS12)。
【0113】
次に、プロセッサ201は、各工程から、当該工程によって使用される部品の個体を識別する部品シリアルナンバーを取得する(ステップS13)。
【0114】
次にステップS14において、サーバ100のプロセッサ101は、各工程から部品シリアルナンバーが取得されたことに応じて、第1対応付けデータベース54を用いて、当該工程において使用される対象部品を特定する。そして、プロセッサ101は、BOMデータベース51の対象部品の階層に、製造コントローラ200によって取得された順に部品シリアルナンバーを登録する。
【0115】
図19は、使用された部品の部品シリアルナンバーが登録されたBOMデータベースの一例を示す図である。
図19には、テーブル形式で表されたBOMデータベース51Aが示される。
図19に示されるように、BOMデータベース51Aは、各工程から取得された部品シリアルナンバーを登録するためのデータ項目57Aを含む。部品シリアルナンバーは、取得された順にBOMデータベース51Aに登録される。そのため、
図19に示される例では、部品シリアルナンバー「HA4353」,「HA4354」,「HB5018」,・・・がこの順に工程から取得されたことが理解される。
【0116】
製造コントローラ200のプロセッサ201は、各工程において中間品または製品が製造されるたびに、当該中間品または製品の個体を識別するシリアルナンバー(ユニットシリアルナンバーまたは製品シリアルナンバー)を取得する(ステップS15)。プロセッサ201は、各工程から取得したシリアルナンバーをサーバ100に出力する。
【0117】
サーバ100のプロセッサ101は、各工程から間品または製品の個体を識別するシリアルナンバーが取得されたことに応じて、BOPデータベース52の当該工程の階層に、取得された順に当該シリアルナンバーを登録する(ステップS16)。
【0118】
製造コントローラ200のプロセッサ201は、各工程によって製造された中間品または製品の品質に関する1以上の項目データを取得する(ステップS17)。プロセッサ201は、各工程から取得した項目データをサーバ100に出力する。
【0119】
サーバ100のプロセッサ101は、各工程から中間品または製品の各個体に対応する1以上の項目データが取得されたことに応じて、当該工程に対応する品質データベース60に当該1以上の項目データを登録する(ステップS18)。
【0120】
プロセッサ101は、対象ロットの生産が完了したか否かを判断する(ステップS19)。プロセッサ101は、例えばMESからの生産計画に基づいて、対象ロットの生産が完了したか否かを判断すればよい。
【0121】
対象ロットの生産が完了していない場合(ステップS19でNO)、情報管理処理はステップS13に戻る。
【0122】
対象ロットの生産が完了した場合(ステップS19でYES)、プロセッサ101は、品質データベース60に基づいて、不良品が存在するか否かを判断する(ステップS20)。例えば、
図13に示す品質データベース60A_2に基づいて、プロセッサ101は、製品シリアルナンバー「MA0002」の個体が不良品であると判断する。不良品が存在しない場合(ステップS20でNO)、情報管理処理は終了する。
【0123】
不良品が存在する場合(ステップS20でYES)、プロセッサ101は、データ解析を実行する(ステップS21)。ステップS21の後、情報管理処理は終了する。
【0124】
<ステップS21のサブルーチン>
図20は、
図18に示すステップS21のサブルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【0125】
まず、サーバ100のプロセッサ101は、不良品の製品シリアルナンバーをキーとして、不良品に関連するデータを各種のデータベースから抽出する(ステップS31)。具体的には、プロセッサ101は、不良品を構成する中間品のユニットシリアルナンバー、不良品または不良品を構成する中間品に対応する品質データセット、不良品を構成する部品の部品シリアルナンバー、不良品を構成する部品の供給元を識別するサプライヤ番号、不良品の製造に用いられた工程を識別する工程番号、不良品の製造に用いられた設備を識別する設備番号などを抽出する。
【0126】
例えば、
図1に示す例の場合、不良品の製品シリアルナンバー「MA00002」は、BOPデータベース52において「モータ組立工程」の階層の2番目に登録されている。そのため、プロセッサ101は、不良品が2番目に製造されたものと判断する。その結果、プロセッサ101は、「ハウジングユニット組立工程」の階層の2番目に登録されているユニットシリアルナンバー「00002」のハウジングユニットを、不良品を構成する中間品として特定する。さらに、プロセッサは、BOMデータベース51の「ハウジング」の階層の2番目に登録されている部品シリアルナンバー「HB5018」のハウジングを、不良品を構成する部品として特定する。
【0127】
さらに、プロセッサ101は、
図12に示す品質データベース60A_1のユニットシリアルナンバー「000002」に対応する品質データセットを、不良品を構成する中間品の品質に関する品質データセットとして特定する。すなわち、プロセッサ101は、不良品を構成する中間品の製造を担当した作業者、作業開始時刻を特定する。
【0128】
さらに、プロセッサ101は、
図13に示す品質データベース60A_2の製品シリアルナンバー「MA00002」に対応する品質データセットを、不良品の品質に関する品質データセットとして特定する。すなわち、プロセッサ101は、不良品の製造を担当した作業者、作業開始時刻を特定する。
【0129】
さらに、プロセッサ101は、
図19に示すBOMデータベース51Aに含まれる供給元データ56Aにおいて部品シリアルナンバー「HB5018」に対応する「D0023B」を、不良品を構成する部品の供給元を識別するサプライヤ番号として特定する。
【0130】
次に、プロセッサ101は、ステップS31において抽出した情報を提供する(ステップS32)。具体的には、プロセッサ101は、特定した情報を示す画面を生成し、生成した画面を表示装置140(
図4参照)に表示させる。
【0131】
生産管理者は、提供された情報に基づいて、不良原因を調査する。上述したように、提供される情報は、不良品と不良品を構成する中間品および部品とに関する情報を含む。そのため、生産管理者は、容易に不良原因を調査できる。
【0132】
図21は、モータの不良原因の調査手法を説明する図である。
図21には、モータに生じ得る複数の原因候補のツリー構造が示される。
図21に示すツリー構造は、モータの構造、過去の不良原因の調査結果などに基づいて予め構築されている。
【0133】
図21に示されるように、「モータ性能のトルクの低下」の原因候補として、「コイルの電気的な断線」,「コアとマグネットのギャップの増大」,「軸受けの焼き付けの発生」,「軸受の摩耗」が挙げられる。「コアとマグネットのギャップの増大」の原因候補として、「ハウジングの形状の歪み」,「軸受の位置ずれによるシャフトの偏心」が挙げられる。「ハウジングの形状の歪み」の原因候補として、「ハウジングの加工作業のミス」が挙げられる。「軸受の位置ずれによるシャフトの偏心」の原因候補として、「シャフトに対する衝撃荷重の印加」が挙げられる。「シャフトに対する衝撃荷重の印加」の原因候補として、「ローターユニットの組立作業のミス」,「検査工程の作業ミス」が挙げられる。
【0134】
生産管理者は、
図21に示すツリー構造の末端に位置する原因候補について調査すればよい。生産管理者は、末端に位置する原因候補のうち一点鎖線で囲まれる原因候補「コイルの電気的な断線」,「軸受けの焼付きの発生」,「軸受の摩耗」が不良原因であるか否かについて、製品であるモータ自体を調査することにより確認すればよい。
【0135】
生産管理者は、末端に位置する原因候補のうち原因候補「ローターユニットの組立作業のミス」,「検査工程の作業ミス」が不良原因であるか否かについて、「ローターユニット組立工程」および「検査工程」の各々に対応する品質データセットを用いて確認する。具体的には、生産管理者は、品質データセットによって示される作業者に問い合わせることにより、原因候補「ローターユニットの組立作業のミス」,「検査工程の作業ミス」が不良原因であるか否かを確認できる。
【0136】
生産管理者は、末端に位置する原因候補のうち原因候補「ハウジングの加工作業のミス」が不良原因であるか否かについて、即座に確認できない。そのため、生産管理者は、部品サプライヤへの問い合わせ指示をサーバ100に入力する。
【0137】
次に、プロセッサ101は、部品サプライヤへの問い合わせ指示が入力装置150に入力されたか否かを判断する(ステップS33)。部品サプライヤへの問い合わせ指示が入力されない場合(ステップS33でNO)、ステップS21は終了する。
【0138】
部品サプライヤへの問い合わせ指示が入力された場合(ステップS33でYES)、プロセッサ101は、問い合わせ対象の部品の入力を受け付ける(ステップS34)。例えば、生産管理者は、原因候補「ハウジング部品の加工作業のミス」が不良原因である可能性がある場合、問い合わせ対象の部品として「ハウジング」を入力する。
【0139】
プロセッサ101は、入力に応じて、問い合わせ先の部品サプライヤを特定する(ステップS35)。具体的には、プロセッサ101は、不良品を構成する問い合わせ対象の部品の部品シリアルナンバーを特定する。
【0140】
例えば、問い合わせ対象の部品が「ハウジング」であり、不良品の製品シリアルナンバーが「MA00002」である場合、プロセッサ101は、
図1に示すBOMデータベース51およびBOPデータベース52に基づいて、部品シリアルナンバー「HB5018」を特定する。そして、プロセッサ101は、
図11に示すBOMデータベース51Aの供給元データ56Aに基づいて、部品シリアルナンバー「HB5018」に対応するサプライヤ番号「DB0023B」で識別される部品サプライヤを問い合わせ先として特定する。
図11に示すBOMデータベース51Aの例では、部品「ハウジング」として、正規品である部品番号「S6500」の部品と、代替品である部品番号「S6501」の部品とが存在する。サプライヤ番号「DB0023B」は、代替品を供給する部品サプライヤに対応する。そのため、問い合わせ先として、代替品を供給する部品サプライヤが特定される。
【0141】
次に、プロセッサ101は、問い合わせ文を生成し、生成した問い合わせ文を問い合わせ先に送信する(ステップS36)。プロセッサ101は、入力装置150への入力に応じて問い合わせ文を生成してもよいし、予め作成された定型文に問い合わせ対象の部品シリアルナンバーを組み込むことによって問い合わせ文を生成してもよい。
【0142】
その後、プロセッサ101は、問い合わせ先からの回答情報を受信する(ステップS37)。受信された回答情報は、表示装置140に表示される。ステップS37の後、ステップS21は終了する。
【0143】
<回答処理の流れ>
図22は、回答処理の流れを示すフローチャートである。
図22に示されるように、サーバ100のプロセッサ101は、他のサーバ100からの問い合わせを受信したか否かを判断する(ステップS41)。問い合わせを受信していない場合(ステップS41でNO)、回答処理はステップS41に戻る。
【0144】
問い合わせを受信した場合(ステップS41でYES)、プロセッサ101は、品質データベース60から、問い合わせにおいて指定されているシリアルナンバーの個体に対応する品質データセットを読み出す(ステップS42)。なお、ステップS42において、プロセッサ101は、指定されているシリアルナンバーと同一の製品シリアルナンバーに対応する品質データセットだけでなく、当該製品シリアルナンバーの製品を構成する中間品に対応する品質データセットも読み出す。製品シリアルナンバーの製品を構成する中間品のユニットシリアルナンバーの検索方法は、上述した通りである。
【0145】
次に、プロセッサ101は、提供可否データベース70に基づいて、供給先に対して提供可能な項目を特定する(ステップS43)。
【0146】
プロセッサ101は、ステップS42において読み出した品質データベースから提供可能な項目データのみを抽出する(ステップS44)。
【0147】
プロセッサ101は、抽出した項目データによって示される情報を含む回答情報を作成し、問い合わせ元に回答情報を送信する(ステップS45)。ステップS45の後、回答処理は終了する。
【0148】
<変形例>
上記の説明では、サーバ100がBOMデータベース51、BOPデータベース52、BOEデータベース53、品質データベース60、および提供可否データベース70を備えるものとした。しかしながら、これらのデータベースは、異なる装置に分散して配置されてもよい。
【0149】
上記の説明では、
図19に示されるように、BOMデータベース51Aは、供給元データ56Aとは別に、使用された部品の部品シリアルナンバーが登録されるデータ項目57Aを含むものとした。この場合、部品シリアルナンバーは、データ項目57Aと供給元データ56Aとに重複して登録される。そのため、供給元データ56Aとデータ項目57Aとをまとめてもよい。
【0150】
図23は、BOMデータベースの変形例を示す図である。
図23に示すBOMデータベース51Aは、使用された部品の部品シリアルナンバーが登録されるデータ項目57Aと、使用された部品の供給元の部品サプライヤを識別するサプライヤ番号が登録されるデータ項目58Aと、を含む。この場合、データ項目57A,58Aに登録されるデータは、部品の各個体について、当該個体の部品シリアルナンバーと、当該個体の供給元を識別するサプライヤ番号とを対応付ける供給元データ59Aを構成する。
【0151】
サーバ100のプロセッサ101は、使用された部品の部品シリアルナンバーをBOMデータベース51Aに登録する際に、当該部品の供給元の部品サプライヤを識別するサプライヤ番号もBOMデータベース51Aに登録する。プロセッサ101は、部品サプライヤから納入された部品の部品シリアルナンバーの一覧と当該部品サプライヤを識別するサプライヤ番号とを対応付けたデータベースにアクセスすることにより、使用された部品に対応するサプライヤ番号を特定すればよい。
【0152】
上記の説明では、BOPデータベース52と品質データベース60とが1対1で対応付けられることを前提とした。しかしながら、企業では、1つの製品に対して、複数のラインが設置され得る。この場合、品質データベース60は、ラインごとに複数設けられ得る。これに対して、BOPデータベース52は、企業または工場に1つ設けられる。このような場合、BOPデータベース52は、ラインごとの工程の階層構造を示すように作成される。すなわち、BOPデータベース52において、各工程を識別する工程番号は、当該工程が設置されるラインと当該工程とを識別する。そして、あるラインのある工程からユニットシリアルナンバー(または製品シリアルナンバー)が取得されると、当該ユニットシリアルナンバー(または製品シリアルナンバー)は、BOPデータベース52において、当該ラインの当該工程に対応する階層に登録される。
【0153】
また、BOMデータベース51についても、ラインごとの部品の階層構造を示すように作成される。すなわち、BOMデータベース51において、各部品を識別する部品番号は、当該部品が使用されるラインと当該部品とを識別する。そして、あるラインのある工程から部品シリアルナンバーが取得されると、当該部品シリアルナンバーは、BOMデータベース51において、当該ラインの当該部品に対応する階層に登録される。
【0154】
これにより、BOMデータベース51およびBOPデータベース52と品質データベース60とが1対多で対応付けられる場合であっても、各ラインで製造された製品の対象個体を構成する部品を特定できる。
【0155】
§3 付記
以上のように、本実施の形態は以下のような開示を含む。
【0156】
(構成1)
製品を構成する1以上の部品の階層構造を示すBOMデータベース(51,51A)と、
前記製品を生産するための1以上の工程の階層構造を示すBOPデータベース(52,52A)と、
前記1以上の工程の各々について、当該工程によって製造された中間品または前記製品の個体を識別する第1識別情報と、当該個体の品質に関する品質データセットとを対応付ける品質データベース(60,60A,60B)と、
前記1以上の工程の各々から、前記1以上の部品のうち当該工程によって使用された対象部品の個体を識別する第2識別情報と、当該工程によって製造された前記中間品または前記製品に対応する前記第1識別情報とを当該工程の作業順に従って取得する取得部(21A,21B,201)と、
登録部(10A,10B,101)と、を備え、
前記登録部(10A,10B,101)は、
前記1以上の工程の各々から前記第2識別情報が取得されたことに応じて、前記BOMデータベース(51,51A)の前記対象部品の階層に、前記取得部によって取得された順に前記第2識別情報を登録し、
前記1以上の工程の各々から前記第1識別情報が取得されたことに応じて、前記BOPデータベース(52,52A)の当該工程の階層に、前記取得部によって取得された順に前記第1識別情報を登録する、情報管理システム(1,1A,1B)。
【0157】
(構成2)
前記BOMデータベース(51,51A)および前記BOPデータベース(52,52A)を用いて、前記製品の対象個体を構成する前記1以上の部品の各個体の前記第2識別情報を検索する検索部(11A,11B,101)をさらに備える、構成1に記載の情報管理システム(1,1A,1B)。
【0158】
(構成3)
前記BOMデータベース(51,51A)は、前記1以上の部品の各個体について、当該個体の前記第2識別情報と、当該個体の供給元を識別する第3識別情報とを対応付ける供給元データ(56A,59A)を含み、
前記情報管理システム(1,1A,1B)は、
前記BOMデータベース(51,51A)に基づいて、前記検索部(11A,11B,101)によって検索された前記第2識別情報に対応する前記第3識別情報を特定し、特定した前記第3識別情報によって示される前記供給元に、前記検索部によって検索された前記第2識別情報によって示される前記個体の品質の問い合わせを送信する問合部(12A,12B,101)をさらに備える、構成2に記載の情報管理システム(1,1A,1B)。
【0159】
(構成4)
前記品質データセットは、複数の項目の各々を示す項目データを含み、
前記情報管理システム(1,1A,1B)は、
前記複数の項目の各々について前記製品の供給先への提供可否を示す提供可否データベース(70A,70B)と、
前記供給先から前記製品の対象個体の品質の問い合わせを受けたことに応じて、回答情報を生成し、生成した回答情報を前記供給先に送信する回答部(12A,12B,101)と、をさらに備え、
前記回答部(12A,12B,101)は、
前記品質データベースから、前記対象個体の前記品質データセットを読み出し、
前記提供可否データベース(70A,70B)に基づいて、提供可能な1以上の項目を特定し、
読み出した前記品質データセットから、特定した前記1以上の項目の各々に対応する前記項目データを抽出し、
抽出した前記項目データを前記回答情報に含める、構成1から3のいずれかに記載の情報管理システム(1,1A,1B)。
【0160】
(構成5)
製品を構成する1以上の部品の階層構造を示すBOMデータベース(51,51A)と、
前記製品を生産するための1以上の工程の階層構造を示すBOPデータベース(52,52A)と、
前記1以上の工程の各々について、当該工程によって製造された中間品または前記製品の個体を識別する第1識別情報と、当該個体の品質に関する品質データセットとを対応付ける品質データベース(60,60A,60B)と、を用いた情報管理方法であって、
前記1以上の工程の各々から、前記1以上の部品のうち当該工程によって使用された対象部品の個体を識別する第2識別情報と、当該工程によって製造された前記中間品または前記製品に対応する前記第1識別情報とを当該工程の作業順に従って取得するステップ(S13,S15)と、
前記1以上の工程の各々から前記第2識別情報が取得されたことに応じて、前記BOMデータベース(51,51A)の前記対象部品の階層に、取得された順に前記第2識別情報を登録するステップ(S14)と、
前記1以上の工程の各々から前記第1識別情報が取得されたことに応じて、前記BOPデータベース(52,52A)の当該工程の階層に、取得された順に前記第1識別情報を登録するステップ(S16)と、を備える、情報管理方法。
【0161】
本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0162】
1,1A,1B 情報管理システム、2 企業、3 ERPシステム、4 MES、5 製造管理システム、6A,6B 製品、8 情報提供システム、10A,10B 登録部、11A,11B データ解析部、12A,12B 問合/回答部、21A,21B IO処理部、50,50A,50B,950 データベース群、51,51A BOMデータベース、52,52A BOPデータベース、53,53A BOEデータベース、54,54A 第1対応付けデータベース、55,55A 第2対応付けデータベース、56A,59A 供給元データ、57A,58A データ項目、60,60A,60B,960 品質データベース、70,70A,70B 提供可否データベース、100,100A,100B サーバ、101,201 プロセッサ、102 メモリ、103,204 ストレージ、104 表示コントローラ、105 入力インターフェイス、106 通信インターフェイス、130 管理プログラム、140 表示装置、150 入力装置、200,200A,200B 製造コントローラ、202 チップセット、203 主メモリ、205 制御系ネットワークコントローラ、206 情報系ネットワークコントローラ、208 メモリカードインターフェイス、210 システムプログラム、211 ユーザプログラム、220 メモリカード、301 ハウジングユニット組立工程、302 エンドキャップユニット組立工程、303 ローターユニット組立工程、304 モータ組立工程、305 モータ検査工程、306 板金プレス型抜き工程、307 ハウジング成型工程、308 ハウジング検査工程、401~408 コードリーダ、411~414,416,417 レーザマーカ。