IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ルネサスエレクトロニクス株式会社の特許一覧

特開2023-172020半導体装置及び半導体装置の製造方法
<>
  • 特開-半導体装置及び半導体装置の製造方法 図1
  • 特開-半導体装置及び半導体装置の製造方法 図2
  • 特開-半導体装置及び半導体装置の製造方法 図3
  • 特開-半導体装置及び半導体装置の製造方法 図4
  • 特開-半導体装置及び半導体装置の製造方法 図5
  • 特開-半導体装置及び半導体装置の製造方法 図6
  • 特開-半導体装置及び半導体装置の製造方法 図7
  • 特開-半導体装置及び半導体装置の製造方法 図8
  • 特開-半導体装置及び半導体装置の製造方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172020
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20231129BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H01L21/60 301P
H01L21/88 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083565
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 翔太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 望
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕治
【テーマコード(参考)】
5F033
5F044
【Fターム(参考)】
5F033HH07
5F033HH09
5F033HH13
5F033PP15
5F033PP28
5F033QQ08
5F033QQ11
5F033RR04
5F033VV07
5F044AA15
5F044EE04
5F044EE06
5F044EE11
5F044FF05
5F044FF06
(57)【要約】
【課題】ボンディングパッドとボンディングワイヤとの間の接合信頼性を改善可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、ボンディングパッドを有する最上層の配線を構成している第1金属膜を備える。第1金属膜の結晶粒界における不純物の濃度は、第1金属膜中の結晶粒内における不純物の濃度よりも高い。第1金属膜に含まれている結晶粒の最大粒径は、5μm未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンディングパッドを有する最上層の配線を構成している第1金属膜を備え、
前記第1金属膜の結晶粒界における不純物の濃度は、前記第1金属膜中の結晶粒内における前記不純物の濃度よりも高く、
前記第1金属膜に含まれている結晶粒の最大粒径は、5μm未満である、半導体装置。
【請求項2】
前記第1金属膜は、第1金属元素を含み、
前記第1金属膜中の前記第1金属元素の含有量は、99質量パーセント以上であり、
前記第1金属元素は、アルミニウム又は銅である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1金属元素は、アルミニウムであり、
前記第1金属膜は、第2金属元素をさらに含み、
前記第2金属元素は、銅、シリコン及びパラジウムの少なくともいずれかである、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記不純物は、酸素、窒素及び炭素の少なくともいずれかである、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記不純物は、酸素であり、
前記第1金属膜の結晶粒内における酸素の濃度は、0.6原子パーセント以上かつ0.8原子パーセント以下であり、
前記第1金属膜の結晶粒界における酸素の濃度は、0.9原子パーセント以上かつ1.5原子パーセント以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ボンディングパッド上に配置されている第2金属膜をさらに備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2金属膜は、無電解めっき膜である、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2金属膜は、前記ボンディングパッド上に配置されている第1膜を有し、
前記第1膜は、無電解ニッケルめっき膜である、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2金属膜は、前記第1膜上に配置されている第2膜をさらに有し、
前記第2膜は、無電解金めっき膜である、
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2金属膜は、前記第1膜上に配置されている第2膜と、前記第2膜上に配置されている第3膜をさらに有し、
前記第2膜は、無電解パラジウムめっき膜であり、
前記第3膜は、無電解金めっき膜である、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項11】
ボンディングワイヤをさらに備え、
前記ボンディングワイヤは、前記第2金属膜に接合されている、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記ボンディングワイヤは、第3金属元素を含み、
前記ボンディングワイヤ中の前記第3金属元素の含有量は、99質量パーセント以上であり、
前記第3金属元素は、アルミニウム、銅、銀及び金のいずれかである、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
ボンディングワイヤをさらに備え、
前記ボンディングワイヤは、前記ボンディングパッドに接合されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第1金属膜の硬さは、0.8GPa以上である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第1金属膜を覆っている保護膜をさらに備え、
前記保護膜には、前記ボンディングパッドを露出させる開口が形成されており、
前記開口の幅は、300μm以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項16】
第1金属膜をスパッタリングにより成膜する工程と、
前記第1金属膜をパターンニングすることにより、ボンディングパッドを有する最上層の配線を形成する工程とを備え、
前記スパッタリングが行われる際、スパッタガスに酸素ガスが添加される、半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記スパッタガス中の前記酸素ガスの含有量は、0.025体積パーセント以上かつ0.25体積パーセント以下である、請求項16に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2014-187073号公報(特許文献1)には、半導体装置が記載されている。特許文献1に記載の半導体装置は、配線と、OPM(Over Pad Metallurgy)膜とを有している。配線は、最上層の配線である。配線は、ボンディングパッドを有している。配線は、アルミニウム合金より形成されている。OPM膜は、ボンディングパッド上に配置されている。ボンディングパッドには、OPM膜を介在させてボンディングワイヤが接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-187073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の半導体装置では、ボンディングパッドとボンディングワイヤとの間の接合信頼性に改善の余地がある。その他の課題及び新規な特徴は、本明細書の記載及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の半導体装置は、ボンディングパッドを有する最上層の配線を構成している第1金属膜を備える。第1金属膜の結晶粒界における不純物の濃度は、第1金属膜中の結晶粒内における不純物の濃度よりも高い。第1金属膜に含まれている結晶粒の最大粒径は、5μm未満である。
【発明の効果】
【0006】
ボンディングパッドとボンディングワイヤとの間の接合信頼性を改善可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】半導体装置DEV1の断面図である。
図2】半導体装置DEV1の製造方法を示す工程図である。
図3】スパッタリング工程S1を説明する断面図である。
図4】配線パターンニング工程S2を説明する断面図である。
図5】保護膜形成工程S3を説明する断面図である。
図6】OPM膜形成工程S4を説明する断面図である。
図7】半導体装置DEV2の断面図である。
図8】半導体装置DEV3の断面図である。
図9】半導体装置DEV4の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0009】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る半導体装置を説明する。第1実施形態に係る半導体装置を、半導体装置DEV1とする。
【0010】
<半導体装置DEV1の構成>
以下に、半導体装置DEV1の構成を説明する。
【0011】
図1は、半導体装置DEV1の断面図である。図1に示されるように、半導体装置DEV1は、層間絶縁膜ILDと、配線WL(第1金属膜)と、保護膜PVと、OPM膜OPM1(第2金属膜)と、OPM膜OPM2とを有している。なお、図1中では、層間絶縁膜ILDよりも下層にある構造の図示が省略されている。半導体装置DEV1は、パワーデバイスである。パワーデバイスの具体例としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。但し、半導体装置DEV1は、IGBTに限られない。
【0012】
層間絶縁膜ILDは、最上層の層間絶縁膜である。層間絶縁膜ILDは、例えば、シリコン酸化物(SiO)により形成されている。配線WLは、層間絶縁膜ILD上に配置されている。配線WLは、最上層の配線である。配線WLは、ボンディングパッドBP1と、ボンディングパッドBP2とを有している。半導体装置DEV1がIGBTである場合、ボンディングパッドBP1及びボンディングパッドBP2は、それぞれゲート電極及びエミッタ電極である。
【0013】
配線WLは、主成分として、第1金属元素を含んでいる。すなわち、配線WL中の第1金属元素の含有量は、99パーセント以上である。第1金属元素は、例えば、アルミニウム(Al)である。第2金属元素は、銅(Cu)であってもよい。配線WL2は、第2金属元素を含んでいてもよい。第1金属元素がアルミニウムである場合、第2金属元素は、例えば、シリコン(Si)、銅(Cu)及びパラジウム(Pd)の少なくともいずれかである。
【0014】
配線WLは、不純物を含んでいる。この不純物は、例えば、酸素(O)である。この不純物は、窒素(N)又は炭素(O)であってもよい。すなわち、配線WLは、不純物として、酸素、窒素及び炭素の少なくともいずれかを含んでいればよい。
【0015】
配線WLは、多結晶体である。配線WLの結晶粒界における不純物の濃度は、配線WLの結晶粒内における不純物の濃度よりも高い。配線WLに含まれている不純物が酸素である場合、配線WLの結晶粒内における酸素の濃度が0.6原子パーセント以上かつ0.8原子パーセント以下であることが好ましく、配線WLの結晶粒界における酸素の濃度が0.9原子パーセント以上かつ1.5原子パーセント以下であることが好ましい。
【0016】
配線WLの結晶粒界における不純物の濃度及び配線WLの結晶粒内における不純物の濃度は、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)を用いて測定される。この測定が行われる際の電子ビームのスポット径は、1μm以下とされる。配線WLの結晶粒界における不純物の濃度及び配線WLの結晶粒内における不純物の濃度は、3点の測定点において測定が行われ、その平均値が算出される。
【0017】
配線WLに含まれている結晶粒の最大粒径は、5μm未満である。配線WLに含まれている結晶粒の最大粒径は、4μm未満であることが好ましい。配線WLに含まれている結晶粒の最大値は、EBSD(Electron Back Scattered Electron)法により測定される。より具体的には、第1に、配線WLの断面において、EBSD像が取得される。このEBSD像は、倍率が1500倍であり、サイズが50μm×50μmである。第2に、上記のEBSD像中の最も粒径が大きい結晶粒が特定されるとともに、当該結晶粒の面積をπ/4で除した値の平方根が計算される。この平方根が、配線WLに含まれている結晶粒の最大粒径と見做される。
【0018】
配線WLの硬さは、0.8GPa以上であることが好ましい。配線WLの硬さは、ISO14577に規定されているナノインデンテーション硬さ試験により測定される。このナノインデンテーション硬さ試験が行われる際の試験条件は、測定温度が室温、圧子の押し込み深さが配線WLの厚さの10パーセント程度とされる。配線WLの硬さは、10点の測定点において測定が行われ、その平均値が算出される。
【0019】
保護膜PVは、配線WLを覆うように、層間絶縁膜ILD上に配置されている。保護膜PVは、例えばポリイミドにより形成されている。保護膜PVには、開口OP1及び開口OP2が形成されている。開口OP1は、保護膜PVを厚さ方向に沿って貫通している。開口OP1からは、ボンディングパッドBP1が露出している。開口OP2は、保護膜PVを厚さ方向に沿って貫通している。開口OP2からは、ボンディングパッドBP2が露出している。
【0020】
開口OP1の開口幅を、幅W1とする。開口OP2の開口幅を、幅W2とする。幅W1は、幅W2よりも小さい。幅W1は、好ましくは、300μm以下である。幅W1は、例えば90μm以上である。幅W2は、好ましくは、1000μm以上である。幅W2は、例えば10000μm以下である。
【0021】
OPM膜OPM1は、開口OP1から露出しているボンディングパッドBP1上に配置されている。OPM膜OPM1は、例えば、無電解ニッケルめっき膜OPM1aと、無電解パラジウムめっき膜OPM1bと、無電解金めっき膜OPM1cとを有している。
【0022】
無電解ニッケルめっき膜OPM1aは、ニッケル(Ni)を含む無電解めっき膜(無電解めっきにより形成されている膜)である。無電解ニッケルめっき膜OPM1aは、開口OP1から露出しているボンディングパッドBP1上に配置されている。
【0023】
無電解パラジウムめっき膜OPM1bは、パラジウムを含む無電解めっき膜である。無電解パラジウムめっき膜OPM1bは、無電解ニッケルめっき膜OPM1a上に配置されている。無電解金めっき膜OPM1cは、金(Au)を含む無電解めっき膜である。無電解金めっき膜OPM1cは、無電解パラジウムめっき膜OPM1b上に配置されている。OPM膜OPM1は、無電解パラジウムめっき膜OPM1bを有していなくてもよい。この場合、無電解金めっき膜OPM1cは、無電解ニッケルめっき膜OPM1a上に配置されている。
【0024】
OPM膜OPM2は、開口OP2から露出しているボンディングパッドBP2上に配置されている。OPM膜OPM2は、OPM膜OPM1と同様の膜構成になっている。すなわち、OPM膜OPM2は、例えば、無電解ニッケルめっき膜OPM2aと、無電解パラジウムめっき膜OPM2bと、無電解金めっき膜OPM2cとを有している。無電解ニッケルめっき膜OPM2aは、ニッケルを含む無電解めっき膜である。
【0025】
無電解ニッケルめっき膜OPM2aは、開口OP2から露出しているボンディングパッドBP2上に配置されている。無電解パラジウムめっき膜OPM2bは、パラジウムを含む無電解めっき膜である。無電解パラジウムめっき膜OPM2bは、無電解ニッケルめっき膜OPM2a上に配置されている。無電解金めっき膜OPM2cは、金を含む無電解めっき膜である。無電解金めっき膜OPM2cは、無電解パラジウムめっき膜OPM2b上に配置されている。OPM膜OPM2は、無電解パラジウムめっき膜OPM2bを有していなくてもよい。この場合、無電解金めっき膜OPM2cは、無電解ニッケルめっき膜OPM2a上に配置されている。
【0026】
無電解ニッケルめっき膜OPM1aの厚さ及び無電解ニッケルめっき膜OPM2aの厚さを、それぞれ厚さT1及び厚さT2とする。厚さT1及び厚さT2は、例えば、配線WLに含まれている結晶粒の最大粒径の0.5倍以上である。
【0027】
半導体装置DEV1は、ボンディングワイヤBWと、クリップCLと、接合層JLとをさらに有していてもよい。
【0028】
ボンディングワイヤBWは、主成分として、第3金属元素を含んでいる。すなわち、ボンディングワイヤBW中の第3金属元素の含有量は、99質量パーセント以上である。第3金属元素は、アルミニウム、銅、銀(Ag)及び金のいずれかである。ボンディングワイヤBWの一方端は、ボール部になっている。ボンディングワイヤBWは、ボール部において、OPM膜OPM1に接合されている。すなわち、ボンディングワイヤBWは、OPM膜OPM1を介してボンディングパッドBP1に接合されている。
【0029】
クリップCLは、例えば銅又は銅合金により形成されている。クリップCLは、接合層JLにより、ボンディングパッドBP2に接合されている。接合層JLは、例えば錫(Sn)合金等のはんだ合金である。図示されていないが、ボンディングパッドBP1はボンディングワイヤBWを介してリードフレーム等に電気的に接続されており、ボンディングパッドBP2はクリップCL及び接合層JLを介してリードフレーム等に電気的に接続されている。
【0030】
<半導体装置DEV1の製造方法>
以下に、半導体装置DEV1の製造方法を説明する。
【0031】
図2は、半導体装置DEV1の製造方法を示す工程図である。図2に示されるように、半導体装置DEV1の製造方法は、スパッタリング工程S1と、配線パターンニング工程S2と、保護膜形成工程S3と、OPM膜形成工程S4と、パッケージング工程S5とを有している。
【0032】
スパッタリング工程S1に先立って、層間絶縁膜ILD及びそれよりも下層にある構造が形成されている。層間絶縁膜ILD及びそれよりも下層にある構造は、従来公知の方法により形成されるため、ここでは説明を省略する。
【0033】
図3は、スパッタリング工程S1を説明する断面図である。図3に示されるように、スパッタリング工程S1では、層間絶縁膜ILD上に、配線WLの構成材料が成膜される。このスパッタリングに用いられるスパッタガスは、例えば、アルゴン(Ar)ガスと、酸素ガス(O)とを含んでいる。なお、配線WLに不純物として窒素を導入する場合には酸素ガスに代えて窒素ガス(N)が用いられ、配線WLに不純物として炭素を導入する場合には酸素ガスに代えて炭素を含むガス(一酸化炭素(CO)、メタン(CH)等)が用いられる。スパッタガス中の酸素ガスの含有量は、好ましくは、0.025体積パーセント以上かつ0.25体積パーセント以下である。
【0034】
図4は、配線パターンニング工程S2を説明する断面図である。配線パターンニング工程S2では、図4に示されるように、スパッタリング工程S1において成膜された配線WLの構成材料がパターンニングされる。配線パターンニング工程S2では、第1に、成膜された配線WLの構成材料上に、レジストパターンが形成される。このレジストパターンは、フォトレジストを露光及び現像することにより形成される。第2に、このレジストパターンをマスクとして、成膜された配線WLの構成材料がドライエッチングされる。これにより、ボンディングパッドBP1及びボンディングパッドBP2を有する配線WLが形成されることになる。
【0035】
図5は、保護膜形成工程S3を説明する断面図である。図5に示されるように、保護膜形成工程S3では、保護膜PVの構成材料が、配線WLを覆うように層間絶縁膜ILD上に塗布される。第2に、塗布された保護膜PVの構成材料が露光及び現像されることにより、開口OP1及び開口OP2が形成される。第3に、加熱により塗布された保護膜PVの構成材料が硬化され、保護膜PVが形成される。
【0036】
図6は、OPM膜形成工程S4を説明する断面図である。図6に示されるように、OPM膜形成工程S4では、OPM膜OPM1及びOPM膜OPM2が、開口OP1から露出しているボンディングパッドBP1上及び開口OP2から露出しているボンディングパッドBP2上に形成される。OPM膜OPM1及びOPM膜OPM2は、例えば、無電解めっきを行うことにより形成される。
【0037】
パッケージング工程S5では、ボンディングワイヤBWによりリードフレーム等とOPM膜OPM1とが接続されるとともに、クリップCLによりリードフレーム等とOPM膜OPM2とが接続される。これにより、図1に示される構造の半導体装置DEV1が形成されることになる。
【0038】
<半導体装置DEV1の効果>
以下に、半導体装置DEV1の効果を、比較例に係る半導体装置と対比しながら説明する。比較例に係る半導体装置を、半導体装置DEV2とする。
【0039】
図7は、半導体装置DEV2の断面図である。図7に示されるように、半導体装置DEV2は、層間絶縁膜ILDと、配線WLと、保護膜PVと、OPM膜OPM1と、OPM膜OPM2とを有している。半導体装置DEV2では、配線WLが、ボンディングパッドBP1とボンディングパッドBP2とを有している。半導体装置DEV2では、配線WLの結晶粒界における酸素の濃度が、配線WLの結晶粒内における酸素濃度と同程度になっている。また、半導体装置DEV2では、配線WLに含まれている結晶粒の最大粒径が、5μm以上になっている(17μm程度になっている)。
【0040】
アルミニウムの特定の結晶面上では、無電解ニッケルめっき膜が成長しにくい。配線WLは多結晶体であるため、そのような特定の結晶面がボンディングパッドBP1の表面及びボンディングパッドBP2の表面に存在することがある。そのような特定の結晶面がボンディングパッドBP1の表面及びボンディングパッドBP2の表面に存在しても、厚さT1及び厚さT2を配線WLに含まれている結晶粒の最大粒径の0.5倍以上とすれば、無電解ニッケルめっき膜OPM1a及び無電解ニッケルめっき膜OPM2aが横方向に成長することで、当該特定の結晶面上が無電解ニッケルめっき膜OPM1a及び無電解ニッケルめっき膜OPM2aにより覆われることになる。
【0041】
半導体装置DEV2では、例えば保護膜形成工程S3において行われる加熱により、配線WLに含まれている結晶粒が粗大化され、配線WLに含まれている結晶粒の最大粒径が17μm程度になっているため、厚さT1及び厚さT2を相当に厚くしない限り、無電解ニッケルめっき膜OPM1a及び無電解ニッケルめっき膜OPM2aに欠けが生じ、この欠けに起因してOPM膜OPM1及びOPM膜OPM2に欠けが生じる。ボンディングパッドBP1にはOPM膜OPM1を介してボンディングワイヤBWが接合されるが、OPM膜OPM1に生じた欠けを起点として、ボンディングワイヤBWがOPM膜OPM1から剥離してしまうことがある。このように、半導体装置DEV2では、ボンディングワイヤBWとボンディングパッドBP1との間の接合信頼性に改善の余地がある。
【0042】
なお、半導体装置DEV2でも、厚さT1及び厚さT2を大きくすることにより、無電解ニッケルめっき膜OPM1a及び無電解ニッケルめっき膜OPM2aが成長しにくい特定の結晶面上を無電解ニッケルめっき膜OPM1a及び無電解ニッケルめっき膜OPM2aで覆うことが可能である。しかしながら、この場合、無電解ニッケルめっき膜OPM1a及び無電解ニッケルめっき膜OPM2aの形成に伴う応力が増加し、半導体装置DEV2に反りが生じることがある。また、この場合、無電解ニッケルめっき膜OPM1a及び無電解ニッケルめっき膜OPM2aの形成に伴う製造コストが増加する。
【0043】
半導体装置DEV1では、スパッタリング工程S1において、スパッタガスに微量の酸素ガスが添加されている。そのため、配線WLの結晶粒界が若干酸化されており、配線WLの結晶粒界における酸素の濃度が配線WLの結晶粒内における酸素の濃度よりも高くなっている。その結果、半導体装置DEV1では、保護膜形成工程S3において加熱が行われても、酸化されている結晶粒界により相互拡散が抑制される結果、配線WLに含まれている結晶粒が粗大化しにくく、配線WLに含まれている結晶粒の最大粒径が5μm未満となる。
【0044】
配線WLの結晶粒界における酸素の濃度が配線WLの結晶粒内における酸素の濃度よりも高くなることにより配線WLに含まれている結晶粒の粗大化が抑制されることを確認するために、サンプル1及びサンプル2が準備された。サンプル1及びサンプル2では、配線WLを形成するためにアルミニウムのスパッタリングが行われた。表1に示されているように、サンプル1ではスパッタガス中の酸素ガスの含有量が0.05体積パーセントとされた。他方で、サンプル2では、スパッタガスがアルゴンのみを含み、酸素ガスを含んでいなかった。サンプル1及びサンプル2では、アルミニウムのスパッタリングが行われた後に、400℃で30分間のアニールが行われた。
【0045】
【表1】
【0046】
サンプル1では、スパッタリングにより成膜されたアルミニウムの結晶粒界における酸素の濃度が、スパッタリングにより成膜されたアルミニウムの結晶粒内における酸素濃度よりも高くなっていた。他方で、サンプル2では、スパッタリングにより成膜されたアルミニウムの結晶粒界における酸素の濃度が、スパッタリングにより成膜されたアルミニウムの結晶粒内における酸素濃度よりも低くなっていた。
【0047】
サンプル1では、スパッタリングにより成膜されたアルミニウムに含まれている結晶粒の最大粒径が、3.56μmであった。他方で、サンプル2では、スパッタリングにより成膜されたアルミニウムに含まれている結晶粒の最大粒径が、16.84μmであった。この比較から、配線WLの結晶粒界における酸素の濃度が配線WLの結晶粒内における酸素の濃度よりも高くなることにより配線WLに含まれている結晶粒の粗大化が抑制されることが確認される。なお、サンプル1では、結晶粒の粗大化が抑制されている結果、スパッタリングにより成膜されたアルミニウムの硬さがサンプル2よりも高くなっている。
【0048】
半導体装置DEV1では、配線WLに含まれている結晶粒の最大粒径が5μm未満となる結果、厚さT1及び厚さT2を大きくすることなく、無電解ニッケルめっき膜OPM1a(OPM膜OPM1)及び無電解ニッケルめっき膜OPM2a(OPM膜OPM2)に欠けが発生すること、ひいてはボンディングワイヤBWとボンディングパッドBP1との間の接合信頼性を改善することが可能である。なお、配線WLに含まれている不純物が窒素や炭素である場合も、配線WLの結晶粒界に存在する窒素や炭素が配線WLに含まれている結晶粒の粗大化を抑制するため、同様にボンディングワイヤBWとボンディングパッドBP1との間の接合信頼性を改善することが可能である。
【0049】
幅W1が小さくなると(より具体的には、幅W1が300μm以下になると)、ボンディングワイヤBWとOPM膜OPM1との接合面積が小さくなり、OPM膜OPM1に存在する欠けが接合信頼性に影響しやすくなる。半導体装置DEV1によると、幅W1が300μm以下になる場合であっても、ボンディングワイヤBWとボンディングパッドBP1との間の接合信頼性を改善することが可能である。
【0050】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る半導体装置を説明する。第2実施形態に係る半導体装置を、半導体装置DEV3とする。ここでは、半導体装置DEV1と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0051】
<半導体装置DEV3の構成>
以下に、半導体装置DEV3の構成を説明する。
【0052】
図8は、半導体装置DEV3の断面図である。図8に示されるように、半導体装置DEV3は、層間絶縁膜ILDと、配線WLと、保護膜PVと、ボンディングワイヤBWとを有している。半導体装置DEV3では、配線WLが、ボンディングパッドBP1を有している。半導体装置DEV3では、保護膜PVに、開口OP1が形成されている。この点に関して、半導体装置DEV3の構成は、半導体装置DEV1の構成と共通している。
【0053】
半導体装置DEV3では、開口OP1から露出しているボンディングパッドBP1上にOPM膜OPM1が形成されていない。半導体装置DEV3では、ボンディングワイヤBWがボンディングパッドBP1に直接的に接合されている。これらの点に関して、半導体装置DEV3の構成は、半導体装置DEV1の構成と異なっている。なお、半導体装置DEV3は、例えば、LSI(Large Scale Integrated circuit)である。
【0054】
<半導体装置DEV3の効果>
以下に、半導体装置DEV3の効果を、比較例に係る半導体装置と対比しながら説明する。比較例に係る半導体装置を、半導体装置DEV4とする。
【0055】
図9は、半導体装置DEV4の断面図である。図9に示されるように、半導体装置DEV4は、層間絶縁膜ILDと、配線WLと、保護膜PVと、ボンディングワイヤBWとを有している。半導体装置DEV4では、配線WLが、ボンディングパッドBP1を有している。半導体装置DEV4では、保護膜PVに、開口OP1が形成されている。半導体装置DEV4では、開口OP1から露出しているボンディングパッドBP1上にOPM膜OPM1が形成されていない。半導体装置DEV4では、ボンディングワイヤBWがボンディングパッドBP1に直接的に接合されている。
【0056】
しかしながら、半導体装置DEV4では、配線WLの結晶粒界における不純物の濃度が配線WLの結晶粒内における不純物の濃度よりも高くなっていない。その結果、半導体装置DEV4では、配線WLに含まれている結晶粒の最大粒径が5μm以上になっており、配線WLの硬さが低くなっている。そのため、半導体装置DEV4では、ワイヤボンディングに伴って配線WLが変形してボンディングワイヤBWの直下にあるボンディングパッドBP1の厚さが小さくなり、ボンディングパッドBP1にクラックが生じやすい。このようなクラックは、ボンディングパッドBP1とボンディングワイヤBWとの接合信頼性を低下させる原因となる。
【0057】
他方で、半導体装置DEV3では、配線WLに含まれている結晶粒の最大粒径が5μm未満となっており、配線WLの硬さが高くなっている。そのため、半導体装置DEV3では、ワイヤボンディングに伴う配線WLの変形を抑制することにより、ボンディングワイヤBWの直下にあるボンディングパッドBP1の厚さが小さくなること、ひいてはボンディングパッドBP1にクラックが生じることを抑制可能である。そのため、半導体装置DEV3によると、ボンディングワイヤBWとボンディングパッドBP1との間の接合信頼性を改善可能である。
【0058】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0059】
BP1,BP2 ボンディングパッド、BW ボンディングワイヤ、CL クリップ、DEV1,DEV2,DEV3,DEV4 半導体装置、ILD 層間絶縁膜、JL 接合層、OP1,OP2 開口、OPM1 OPM膜、OPM1a 無電解ニッケルめっき膜、OPM1b 無電解パラジウムめっき膜、OPM1c 無電解金めっき膜、OPM2 OPM膜、OPM2a 無電解ニッケルめっき膜、OPM2b 無電解パラジウムめっき膜、OPM2c 無電解金めっき膜、PV 保護膜、S1 スパッタリング工程、S2 配線パターンニング工程、S3 保護膜形成工程、S4 形成工程、S5 パッケージング工程、T1,T2 厚さ、W1,W2 幅、WL,WL2 配線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9