(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017203
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】運動精度評価装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/00 20060101AFI20230131BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
B23Q17/00 Z
B23Q17/24 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121301
(22)【出願日】2021-07-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】入野 成弘
【テーマコード(参考)】
3C029
【Fターム(参考)】
3C029EE02
(57)【要約】
【課題】工作機械の直線送り軸について、運動誤差が許容範囲内にある領域を使用可能領域として抽出する運動精度評価装置を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの直線送り軸を有する運動機構部を備えた工作機械20において、この運動機構部の運動精度を評価する評価装置1である。評価装置1は、直線送り軸に関わる運動誤差の測定データを記憶する測定データ記憶部2と、測定データ記憶部2に格納された測定データを解析して、直線送り軸について、その運動誤差が許容範囲内に収まる送り軸方向の領域を使用可能領域として抽出する評価部3と、評価部3によって抽出された使用可能用域に係る情報を外部に出力する出力部6とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの直線送り軸を有する運動機構部を備えた工作機械において、前記運動機構部の運動精度を評価する評価装置であって、
前記直線送り軸に関わる運動誤差の測定データを記憶する測定データ記憶部と、
前記測定データ記憶部に格納された測定データを解析して、前記直線送り軸について、その運動誤差が許容範囲内に収まる送り軸方向の領域を使用可能領域として抽出する評価部と、
前記評価部によって抽出された使用可能領域に係る情報を外部に出力する出力部とを備えていることを特徴とする運動精度評価装置。
【請求項2】
NCプログラムを記憶するNCプログラム記憶部と、
前記NCプログラム記憶部に格納されたNCプログラムを解析して、ワークに対して設定された基準位置を基準とした工具の動作領域を抽出するとともに、抽出した工具の動作領域と、前記評価部により抽出された使用可能領域とを重ね合わせる処理を実行して、前記動作領域と使用可能領域とが重なり合う状態での、前記送り軸方向における前記ワークの基準位置を認識するワーク位置設定部とを備え、
前記出力部は、更に、前記ワーク位置設定部によって認識された前記送り軸方向の前記ワークの基準位置を外部に出力するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の運動精度評価装置。
【請求項3】
少なくとも1つの直線送り軸を有する運動機構部を備えた工作機械において、前記運動機構部の運動精度を評価する評価装置であって、
前記直線送り軸に関わる運動誤差について、複数回繰り返して測定された測定データ群を記憶する測定データ記憶部と、
前記測定データ記憶部に格納された複数の測定データ群を解析して、前記直線送り軸について、その運動誤差が許容範囲内に収まる送り軸方向の領域を許容領域として抽出する一方、運動誤差が許容範囲内に収まらない送り軸方向の領域を許容外領域として抽出し、更に、測定データ群間の繰り返し誤差が所定の基準範囲内に収まる送り軸方向の領域を再現可能領域として抽出する一方、繰り返し誤差が所定の基準範囲内に収まらない送り軸方向の領域を再現不可領域として抽出とともに、前記送り軸方向において、許容領域であり且つ再現可能領域である領域を使用可能領域と評価し、許容外領域であり且つ再現可能領域である領域を補正可能領域と評価し、前記再現不可領域を使用不可領域と評価する評価部と、
前記評価部によって評価された情報を外部に出力する出力部とを備えていることを特徴とする運動精度評価装置。
【請求項4】
NCプログラムを記憶するNCプログラム記憶部と、
前記NCプログラム記憶部に格納されたNCプログラムを解析して、ワークに対して設定された基準位置を基準とした工具の動作領域を抽出するとともに、抽出した工具の動作領域と、前記評価部により抽出された使用可能領域及び補正可能領域とを重ね合わせる処理を実行して、前記動作領域と、使用可能領域及び補正可能領域の少なくとも一方とが重なり合う状態での、前記送り軸方向における前記ワークの基準位置を認識するワーク位置設定部とを備え、
前記出力部は、更に、前記ワーク位置設定部によって認識された前記ワークの基準位置を外部に出力するように構成されていることを特徴とする請求項3記載の運動精度評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の運動機構部の運動精度を評価する評価装置に関し、更に詳しくは、測定された運動精度を基に、該当する送り軸の動作領域の内、使用可能な領域を抽出する評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械の運動機構部の運動精度を測定する装置の一例として、特開2019-206043号公報に開示された測定装置、及びこれを用いた測定方法が知られている。
図2及び
図3に示すように、この測定装置10は、4つのレーザ測長器11及びミラー15から構成され、例えば、
図2に示すような、工作機械20の運動精度を測定する。
【0003】
尚、この例の工作機械20は、上面がワーク載置面(所謂テーブル)となったベッド21と、門形をしたフレーム22と、サドル23とから構成される。フレーム22は、その水平部がベッド21の上方に位置するように配設されるとともに、その2つの垂直部がそれぞれベッド21の側部に係合して、全体としてY軸方向に移動可能になっている。また、サドル23は、フレーム22の水平部に係合し、この水平部に沿ってX軸方向に移動可能となっており、このサドル23には、主軸24がZ軸方向に移動可能に、且つ、Z軸と平行な軸線を中心に回転可能に保持されている。前記X軸、Y軸及びZ軸は、相互に直交する基準軸であり、この基準軸に対応した各送り軸がX軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)によって構成されている。
【0004】
そして、前記測定装置10の4つのレーザ測長器11を、ベッド21上にほぼ等間隔に設置し、前記ミラー15を主軸24に装着した状態で、前記工作機械20の前記X軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)の運動精度を測定する。
【0005】
具体的には、前記X軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)をそれぞれ一定間隔毎に位置決め制御することにより、3次元空間内を一定間隔で格子状に分割した各格子点に前記ミラー15を位置決めし、各格子点において、各レーザ測長器11からミラー15にレーザ光を照射するとともに、その反射光をレーザ測長器11に受光することにより、各レーザ測長器11によってミラー15との間の距離を測定する。
【0006】
そして、以上のようにして得られた測定データを基に、3辺測量法の原理に従って、3次元空間内の前記各格子点におけるミラー15の位置を算出し、算出した位置データ及び当該位置データを解析することによって、運動誤差を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述のようにして測定された工作機械の運動精度が、所定の許容範囲内に無い場合、このままでは、高精度な加工が実現できない可能性が高いため、従来は、運動機構部である前記X軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)を修理して、その運動精度を回復させるようにしていた。
【0009】
ところが、運動機構部を修理するには、工作機械の全体的なオーバーホールが必要であり、そのためには、長時間に亘って、工作機械を停止させなければならない、という問題があった。
【0010】
その一方、例えば、送り装置を構成するボールねじの一部が摩耗しているために、運動精度が悪化している場合、当該ボールねじの摩耗したところ以外の領域については、良好な運動精度が維持されている。そして、この場合、良好な運動精度が維持された領域では、高精度な加工を実現することが可能である。
【0011】
したがって、各送り装置の動作領域において、その運動精度が許容範囲内にあるところと、許容範囲内に無いところが分かれば、オペレータは、運動精度が許容範囲内にあるところを用いた加工を行うことで、高精度な加工を実現することができて便利である。そして、このような対応を採ることができれば、工作機械をオーバーホールするために停止させることなく、長時間、稼働させることができ、その稼働率を向上させることができる。
【0012】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、工作機械の直線送り軸について、運動誤差が許容範囲内にある領域を使用可能領域として抽出する運動精度評価装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、
少なくとも1つの直線送り軸を有する運動機構部を備えた工作機械において、前記運動機構部の運動精度を評価する評価装置であって、
前記直線送り軸に関わる運動誤差の測定データを記憶する測定データ記憶部と、
前記測定データ記憶部に格納された測定データを解析して、前記直線送り軸について、その運動誤差が許容範囲内に収まる送り軸方向の領域を使用可能領域として抽出する評価部と、
前記評価部によって抽出された使用可能領域に係る情報を外部に出力する出力部とを備えた運動精度評価装置に係る。
【0014】
この態様(第1の態様)の運動精度評価装置によれば、予め、適宜測定装置によって、工作機械の運動機構部を構成する直線送り軸の運動精度が測定され、得られた測定データが前記測定データ記憶部に格納される。
【0015】
そして、前記評価部により、前記測定データ記憶部に格納された測定データが解析され、前記直線送り軸について、その運動誤差が許容範囲内に収まる送り軸方向の領域が、使用可能領域として抽出され、抽出された使用可能領域に係る情報が前記出力部によって外部に出力される。
【0016】
この運動精度評価装置によれば、直線送り軸について、その運動誤差が許容範囲内に収まる領域が、使用可能領域として抽出され、抽出された使用可能領域に係る情報が出力部によって外部に出力されるので、オペレータは、出力情報から、直線送り軸の動作領域において、その運動精度が許容範囲内にあるところと、許容範囲内にないところを容易に認識することができる。
【0017】
そして、直線送り軸の動作領域の内、運動精度が許容範囲内にあるところを用いた加工を行うことで、高精度な加工を実現することができる。斯くして、このような加工を行うことで、オーバーホールなどの対応を取ることなく、工作機械を長時間に亘って稼働させることができ、その稼働率を向上させることができる。尚、許容範囲内にない領域については、この領域での加工を避けることで、不良品が生産されるのを回避することができる。
【0018】
また、上記第1の態様の運動精度評価装置では、
NCプログラムを記憶するNCプログラム記憶部と、
前記NCプログラム記憶部に格納されたプログラムを解析して、ワークに対して設定された基準位置を基準とした工具の動作領域を抽出するとともに、抽出した工具の動作領域と、前記評価部により抽出された使用可能領域とを重ね合わせる処理を実行して、前記動作領域と使用可能領域とが重なり合う状態での、前記送り軸方向における前記ワークの基準位置を認識するワーク位置設定部とを、更に備え、
前記出力部は、更に、前記ワーク位置設定部によって認識された前記送り軸方向の前記ワークの基準位置を外部に出力するように構成された態様(第2の態様)を採ることができる。
【0019】
この第2の態様の運動精度評価装置では、予め、実行すべきNCプログラムがNCプログラム記憶部に格納される。そして、前記ワーク位置設定部により、まず、前記NCプログラム記憶部に格納されたNCプログラムが解析され、ワークに対して設定された基準位置を基準とした工具の動作領域が抽出される。次に、ワーク位置設定部は、抽出した工具の動作領域と、評価部により抽出された使用可能領域とを重ね合わせる処理を実行して、動作領域と使用可能領域とが重なり合う状態での、前記送り軸方向における前記ワークの基準位置を認識する。そして、認識された基準位置が、出力部によって、外部に出力される。
【0020】
斯くして、この運動精度評価装置によれば、オペレータは、当該NCプログラムを用いて当該ワークを加工する際に、前記出力部から出力される情報を基に、直線送り軸の動作領域の内、運動精度が許容範囲内にあるところを用いて加工可能な、送り軸方向におけるワークの基準位置を認識することができるので、実際に加工を実行する際に、ワークの基準位置が認識された位置となるようにワークを配置することで、運動精度が許容範囲内にあるところを用いた高精度な加工を実現することができる。
【0021】
また、本発明は、少なくとも1つの直線送り軸を有する運動機構部を備えた工作機械において、前記運動機構部の運動精度を評価する評価装置であって、
前記直線送り軸に関わる運動誤差について、複数回繰り返して測定された測定データ群を記憶する測定データ記憶部と、
前記測定データ記憶部に格納された複数の測定データ群を解析して、前記直線送り軸について、その運動誤差が許容範囲内に収まる送り軸方向の領域を許容領域として抽出する一方、運動誤差が許容範囲内に収まらない送り軸方向の領域を許容外領域として抽出し、更に、測定データ群間の繰り返し誤差が所定の基準範囲内に収まる送り軸方向の領域を再現可能領域として抽出する一方、繰り返し誤差が所定の基準範囲内に収まらない送り軸方向の領域を再現不可領域として抽出とともに、前記送り軸方向において、許容領域であり且つ再現可能領域である領域を使用可能領域と評価し、許容外領域であり且つ再現可能領域である領域を補正可能領域と評価し、前記再現不可領域を使用不可領域と評価する評価部と、
前記評価部によって評価された情報を外部に出力する出力部とを備えた運動精度評価装置に係る。
【0022】
この態様(第3の態様)の運動精度評価装置によれば、予め、適宜測定装置によって、工作機械の運動機構部を構成する直線送り軸の運動精度が複数回繰り返して測定され、測定された複数の測定データ群が前記測定データ記憶部に格納される。
【0023】
そして、前記評価部により、前記測定データ記憶部に格納された複数の測定データ群が解析され、前記直線送り軸について、その運動誤差が許容範囲内に収まる送り軸方向の領域が許容領域として抽出され、一方、運動誤差が許容範囲内に収まらない送り軸方向の領域が許容外領域として抽出され、更に、測定データ群間の繰り返し誤差が所定の基準範囲内に収まる送り軸方向の領域が再現可能領域として抽出され、一方、繰り返し誤差が所定の基準範囲内に収まらない送り軸方向の領域が再現不可領域として抽出される。
【0024】
ついで、前記評価部は、前記送り軸方向において、許容領域であり且つ再現可能領域である領域を使用可能領域と評価し、許容外領域であり且つ再現可能領域である領域を補正可能領域と評価し、前記再現不可領域を使用不可領域と評価する。そして、前記評価部によって評価された情報が前記出力部から外部に出力される。
【0025】
斯くして、この運動精度評価装置によれば、直線送り軸の動作領域が、使用可能領域、補正可能領域及び使用不可領域として区分けされるので、オペレータは、これらの情報から、直線送り軸の動作領域の各区域がどのような領域であるかを容易に認識することができる。そして、直線送り軸の動作領域の内、使用可能領域を用いた加工を行うことで、何らの対策を講じることなく、高精度な加工を実現することができる。
【0026】
また、直線送り軸の動作領域の内、補正可能な領域では、測定データを基に算出される補正量によって直線送り軸の動作を補正することにより、当該領域においても高精度な加工を実現することができる。そして、このような加工を行うことで、オーバーホールなどの対応を取ることなく、工作機械を長時間に亘って稼働させることができ、その稼働率を向上させることができる。尚、使用不可領域については、この領域での加工を避けることで、不良品が生産されるのを回避することができる。
【0027】
上記第3の態様の運動精度評価装置では、
NCプログラムを記憶するNCプログラム記憶部と、
前記NCプログラム記憶部に格納されたNCプログラムを解析して、ワークに対して設定された基準位置を基準とした工具の動作領域を抽出するとともに、抽出した工具の動作領域と、前記評価部により抽出された使用可能領域及び補正可能領域とを重ね合わせる処理を実行して、前記動作領域と、使用可能領域及び補正可能領域の少なくとも一方とが重なり合う状態での、前記送り軸方向における前記ワークの基準位置を認識するワーク位置設定部とを、更に備え、
前記出力部は、更に、前記ワーク位置設定部によって認識された前記ワークの基準位置を外部に出力するように構成された態様(第4の態様)を採ることができる。
【0028】
この第4の態様の運動精度評価装置では、予め、実行すべきNCプログラムがNCプログラム記憶部に格納される。そして、前記ワーク位置設定部により、まず、前記NCプログラム記憶部に格納されたNCプログラムが解析され、ワークに対して設定された基準位置を基準とした工具の動作領域が抽出される。次に、ワーク位置設定部は、抽出した工具の動作領域と、評価部により抽出された使用可能領域及び補正可能領域とを重ね合わせる処理を実行して、動作領域と、使用可能領域及び補正可能領域の少なくとも一方とが重なり合う状態での、前記送り軸方向における前記ワークの基準位置を認識する。そして、認識された基準位置が、出力部によって、外部に出力される。
【0029】
斯くして、この運動精度評価装置によれば、オペレータは、当該NCプログラムを用いて当該ワークを加工する際に、前記出力部から出力される情報を基に、ワークの基準位置が認識された位置となるようにワークを配置することで、ワークを高精度に加工することができる。即ち、工具の動作領域と使用可能領域とが重なる状態となるように、ワークを配置すれば、何らの対策を講じることなく、高精度な加工を実現することができる。また、工具の動作領域と補正可能領域とが重なるように、ワークを配置すれば、測定データを基に算出される補正量で直線送り軸の動作を補正することにより、高精度な加工を実現することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る運動精度評価装置によれば、直線送り軸について、その運動誤差が許容範囲内に収まる領域が、使用可能領域として抽出され、抽出された使用可能領域に係る情報が出力部によって外部に出力されるので、オペレータは、出力情報から、直線送り軸の動作領域において、その運動精度が許容範囲内にあるところと、許容範囲内にないところを容易に認識することができる。
【0031】
そして、直線送り軸の動作領域の内、運動精度が許容範囲内にあるところを用いた加工を行うことで、高精度な加工を実現することができる。斯くして、このような加工を行うことで、オーバーホールなどの対応を取ることなく、工作機械を長時間に亘って稼働させることができ、その稼働率を向上させることができる。尚、許容範囲内にない領域については、この領域での加工を避けることで、不良品が生産されるのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施形態に係る運動精度評価装置などの概略構成を示したブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る測定装置等を示した斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る測定装置等を示した正面図である。
【
図4】運動誤差を生じさせる誤差パラメータを示した説明図である。
【
図8】本実施形態の運動精度評価装置における評価、及びこれに基づく対応を説明するための説明図である。
【
図9】本実施形態の運動精度評価装置における評価、及びこれに基づく対応を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0034】
図1に示すように、本例の運動精度評価装置1は、測定データ記憶部2、評価部3、NCプログラム記憶部4、ワーク位置設定部5及び出力部6を備えている。尚、この運動精度評価装置1は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成され、前記評価部3、ワーク位置設定部5及び出力部6はコンピュータプログラムによってその機能が実現され、後述する処理を実行する。また、前記測定データ記憶部2及びNCプログラム記憶部4はRAMなどの適宜記憶媒体から構成される。
【0035】
前記測定データ記憶部2には、前記測定装置10によって測定された工作機械20の運動精度に関するデータが予め格納される。尚、前記測定装置10及び工作機械20は、上述した従来例のものと同じ構成を備えるものである。繰り返しにはなるが、以下、その概略を説明する。
【0036】
前記工作機械20は、所謂、立形のマシニングセンタであり、上面がワーク載置面となったベッド21と、門形をしたフレーム22と、サドル23などを備えて構成され、フレーム22は、その水平部がベッド21の上方に位置するように配設されるとともに、その2つの垂直部がそれぞれベッド21の側部に係合して、全体としてY軸方向に移動可能になっている。
【0037】
また、サドル23は、フレーム22の水平部に係合し、この水平部に沿ってX軸方向に移動可能となっており、当該サドル23には、主軸24がZ軸方向に移動可能に、且つ、Z軸と平行な軸線を中心に回転可能に保持されている。そして、ベッド21にワークが載置され、主軸24に工具が装着された状態で、主軸24がX軸、Y軸及びZ軸に移動することにより、ワークが加工される。
【0038】
尚、前記X軸、Y軸及びZ軸は、相互に直交する基準軸であり、この基準軸に対応した各直線送り軸が、それぞれX軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)によって構成されている。
【0039】
前記測定装置10は、4つのレーザ測長器11、ミラー15及び演算部(図示せず)から構成され、工作機械20の運動精度を測定する。例えば、前記4つのレーザ測長器11を、前記ベッド21上にほぼ等間隔に設置し、前記ミラー15を主軸24に装着した状態で、前記工作機械20の前記X軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)の運動精度を測定する。
【0040】
より具体的には、前記X軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)をそれぞれ一定間隔毎に位置決め制御することにより、3次元空間内を一定間隔で格子状に分割した各格子点に所定の経路(ルート)で前記ミラー15を位置決めし、各格子点において、各レーザ測長器11からミラー15にレーザ光を照射するとともに、その反射光をレーザ測長器11で受光することにより、各レーザ測長器11によって、ミラー15との間の距離を測定する。
【0041】
尚、前記レーザ測長器11は、
図3に示す基準球12の中心点を中心として、レーザ干渉計13を旋回移動可能に構成されており、前記ミラー15の移動に併せてレーザ干渉計13を旋回移動させることで、当該ミラー15を自動追尾することができるように構成されている。
【0042】
そして、前記演算部(図示せず)は、このようにして得られる距離データを基に、3辺測量法の原理に従って、3次元空間内の前記各格子点におけるミラー15の位置を算出し、得られた位置データに基づき、また、この位置データを解析することにより、前記X軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)について、例えば、
図4に示した各運動誤差を算出する。
【0043】
尚、
図4に示した各運動誤差の定義は以下の通りである。
E
XXは、X軸送り装置のX軸方向における位置決め誤差、
E
YYは、Y軸送り装置のY軸方向における位置決め誤差、
E
ZZは、Z軸送り装置のZ軸方向における位置決め誤差、
E
YXは、X軸送り装置のX軸-Y軸平面における真直誤差(Y軸方向)、
E
ZXは、X軸送り装置のX軸-Z軸平面における真直誤差(Z軸方向)、
E
XYは、Y軸送り装置のY軸-X軸平面における真直誤差(X軸方向)、
E
ZYは、Y軸送り装置のY軸-Z軸平面における真直誤差(Z軸方向)、
E
XZは、Z軸送り装置のZ軸-X軸平面における真直誤差(X軸方向)、
E
YZは、Z軸送り装置のZ軸-Y軸平面における真直誤差(Y軸方向)、
E
AXは、X軸送り装置におけるX軸まわりの角度誤差、
E
AYは、Y軸送り装置におけるX軸まわりの角度誤差、
E
AZは、Z軸送り装置におけるX軸まわりの角度誤差、
E
BXは、X軸送り装置におけるY軸まわりの角度誤差、
E
BYは、Y軸送り装置におけるY軸まわりの角度誤差、
E
BZは、Z軸送り装置におけるY軸まわりの角度誤差、
E
CXは、X軸送り装置におけるZ軸まわりの角度誤差、
E
CYは、Y軸送り装置におけるZ軸まわりの角度誤差、
E
CZは、Z軸送り装置におけるZ軸まわりの角度誤差、
E
A(0Y)Zは、Z軸送り装置と理想のY軸との直角誤差、
E
B(0Z)Xは、X軸送り装置と理想のZ軸との直角誤差、
E
C(0X)Yは、Y軸送り装置と理想のX軸との直角誤差である。
【0044】
以上のようにして算出される運動誤差の一例を
図5、
図6及び
図7に示している。
【0045】
また、本例では、前記X軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)により、所定の順方向の経路(順ルート)でミラー15を移動させて、前記各格子点に位置決めしながら、各レーザ測長器11により測長した後、ミラー15を逆方向の経路(逆ルート)で移動させて、前記各格子点に位置決めしながら、各レーザ測長器11により測長する。即ち、順ルート及び逆ルートについて、2回繰り返して各格子点において測長を行う。
【0046】
そして、前記演算部(図示せず)は、繰り返し測定によって得られた距離データを基に、順ルートの位置データ、及び逆ルートの位置データを算出し、算出された各ルートに係る位置データ群に基づき、また、当該各位置データ群を解析することにより、前記X軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)について、上述した各運動誤差を算出する。斯くして、算出された前記X軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)のそれぞれについて、そのルートごとの各運動誤差に係るデータが前記測定データ記憶部2に格納される。
【0047】
また、前記NCプログラム記憶部4は、NC(数値制御)プログラムを記憶する機能部であり、前記工作機械20で用いられるNCプログラムが予め格納される。
【0048】
前記評価部3は、前記測定データ記憶部2に格納されたデータを参照して、前記X軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)のそれぞれについて、対応する運動誤差を確認し、全ての運動誤差が所定の許容範囲内に収まる送り軸方向の領域を許容領域として抽出し、各運動誤差の一つでも前記許容範囲内に収まらない送り軸方向の領域を許容外領域として抽出する。尚、前記許容範囲は、求められる加工精度に応じて、各運動誤差についてそれぞれ設定される。
【0049】
また、評価部3は、順ルートにおける運動誤差と逆ルートにおける運動誤差を比較することによって、繰り返し誤差を算出し、繰り返し誤差が所定の基準範囲内に収まる送り軸方向の領域を再現可能領域として抽出し、繰り返し誤差が所定の基準範囲内に収まらない送り軸方向の領域を再現不可領域として抽出する。この基準範囲も、求められる加工精度に応じて、各運動誤差についてそれぞれ設定される。
【0050】
そして、評価部3は、X軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)のそれぞれについて、その送り軸方向において、許容領域であり且つ再現可能領域である領域を使用可能領域と評価し、許容外領域であり且つ再現可能領域である領域を補正可能領域と評価し、許容外領域であり且つ前記再現不可領域を使用不可領域と評価する。そして、評価部3は、評価した各領域に係る情報を、前記出力部3を介して表示装置7に出力する。尚、表示装置7は、液晶ディスプレイなどからなり、前記各領域に係る情報を数字や図形などによって表示する。
【0051】
この許容領域、許容外領域、使用可能領域、再現可能領域、再現不可領域及び使用不可領域の概念を
図8に基づいて説明する。尚、
図8では、X軸送り装置(図示せず)がX軸方向のX
0~X
eの動作領域を有し、Y軸送り装置(図示せず)がY軸方向のY
0~Y
eの動作領域を有し、Z軸送り装置(図示せず)がZ軸方向のZ
0~Z
eの動作領域を有している。
【0052】
図8において、例えば、Z軸送り装置(図示せず)については、Z軸方向の全領域であるZ
0~Z
eの範囲で全ての運動誤差が前記許容範囲内に収まり、且つ繰り返し誤差が前記基準範囲内にあるとすると、当該Z軸送り装置(図示せず)については、Z
0~Z
eの範囲が許容領域[a]、且つ再現可能領域[ra]として抽出され、この範囲が使用可能領域[ua]である評価される。
【0053】
また、X軸送り装置(図示せず)では、X軸方向のX0~X1及びX2~Xeの範囲で全ての運動誤差が前記許容範囲内に収まっているものの、X1~X2の範囲で、少なくとも一つの運動誤差が許容範囲外となっているとし、また、このX1~X2の範囲での繰り返し誤差は前記基準範囲内に収まっているとすると、当該X軸送り装置(図示せず)については、X0~X1及びX2~Xeの範囲が許容領域[a]、且つ再現可能領域[ra]として抽出され、これらの範囲が使用可能領域[ua]であると評価される。一方、X1~X2の範囲は許容外領域[na]であり、且つ再現可能領域[ra]として抽出され、その結果、この範囲は補正可能領域[ca]であると評価される。
【0054】
また、Y軸送り装置(図示せず)では、Y軸方向のY0~Y1及びY2~Yeの範囲で全ての運動誤差が前記許容範囲内に収まっているものの、Y1~Y2の範囲で、少なくとも一つの運動誤差が前記許容範囲外となっているとし、また、このY1~Y2の範囲での繰り返し誤差が前記基準範囲外になっているとすると、当該Y軸送り装置(図示せず)については、Y0~Y1及びY2~Yeの範囲が許容領域[a]、且つ再現可能領域[ra]として抽出され、これらの範囲が使用可能領域[ua]であると評価される。一方、Y1~Y2の範囲は許容外領域[na]であり、且つ再現不可領域[nra]として抽出され、その結果、この範囲は使用不可領域[nua]であると評価される。
【0055】
以上から、
図8に示した例では、ベッド21の上面において、二点鎖線のハッチングを付した領域が補正可能領域[ca]であり、一点鎖線のハッチングを付した領域が使用不可領域[nua]であり、何も付していない領域が使用可能領域[ua]である。
【0056】
そして、以上のような情報が、評価部3から出力部6を介して表示装置7に出力され、表示される。
【0057】
前記ワーク位置設定部5は、前記NCプログラム記憶部4に格納されたNCプログラムを解析して、ワークに対して設定された基準位置を基準とした工具の動作領域を抽出するとともに、抽出した工具の動作領域と、前記評価部3により抽出された使用可能領域[ua]及び補正可能領域[ca]とを重ね合わせる処理を実行して、前記動作領域と、使用可能領域[ua]及び補正可能領域[ca]の少なくとも一方とが重なり合う状態での、前記送り軸方向における前記ワークの基準位置を認識する処理を行う。
【0058】
より具体的には、例えば、前記ワーク位置設定部5は、前記NCプログラム記憶部4に格納されたNCプログラムを解析して、その位置指令、送り速度指令等を基に、加工時の工具の動作領域であって、ワークに対して設定された基準位置を基準とした、X軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)における工具の動作領域を抽出する。
【0059】
図9は、工作機械20の運動誤差が
図8に示した状態と同じ状態を示したものであるが、例えば、ワーク位置設定部5は、NCプログラムを解析することによって、ワークWに対して設定される基準位置R
pを基準とした、X軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)における工具の動作領域[m
r]を抽出する。尚、
図9に示したワークWは円柱形状を有しており、NCプログラム上の基準位置(プログラム原点)R
pは、ワークWの上面の中心位置に設定されているものとする。X軸,Y軸,Z軸にそれぞれ平行なワーク座標系、即ち、x軸,y軸,z軸座標系おける基準位置R
pは、x=0,y=0,z=0である。また、
図9では、破線で示した角柱形状が工具の動作領域[m
r]を示している。
【0060】
そして、ワーク位置設定部5は、抽出した工具の動作領域[m
r]と、前記評価部3により抽出された使用可能領域[ua]及び補正可能領域[ca]とを重ね合わせる処理を実行して、動作領域[m
r]と、使用可能領域[ua]及び補正可能領域[ca]の少なくとも一方とが重なり合う状態での、X軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)、即ち、機械座標系(X軸,Y軸,Z軸座標系)における前記ワークWの基準位置R
p(X
a,Y
a,Z
a)を認識する処理を行う。
図9では、工具の動作領域[m
r]が補正可能領域[ca]に重なり合うように、ワークWの基準位置R
p(X
a,Y
a,Z
a)を設定している。そして、ワーク位置設定部5は、認識した基準位置R
p(X
a,Y
a,Z
a)に関する情報を、前記出力部6を介して表示装置7に出力し、出力された情報が表示装置7に表示される。
【0061】
以上の構成を備えた本例の運動精度評価装置1によれば、工作機械20の運動精度を基に、X軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)の各動作領域について、前記評価部3により、認識され、評価された許容領域[a],許容外領域[na],再現可能領域[ra],再現不可領域[nra],使用可能領域[ua],補正可能領域[ca]及び使用不可領域[nua]に係る情報が、出力部6を介して表示装置7に表示されるので、オペレータは、この情報を見ることで、X軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)の動作領域の内、どこの領域が何ら対策を講じることなく使用可能な領域(使用可能領域[ua])であるか、どの領域が補正することで使用可能な領域(補正可能領域[ca])であるか、どこの領域が使用できない領域(使用不可領域[nua])であるかを容易に認識することができる。
【0062】
そして、このような認識が得られることで、オペレータは、ワークWを使用可能な領域(使用可能領域[ua])に設置して加工を実行することで、高精度な加工を実現することができ、或いは、補正を要するものの、ワークWを補正可能な領域(補正可能領域[ca])に設置して加工を実行することで、同様に高精度な加工を実現することができる。そして、オペレータは、このような措置を講じることにより、使用不可な領域(使用不可領域[nua])を用いた加工を回避することができ、不良品が生産されるのを防止することができる。
【0063】
例えば、オペレータは、
図8において、破線で示すような、ベッド21上の使用不可領域[nua]にワークWを設置して加工を行うのを回避することができ、実線で示すように、ベッド21上の補正可能領域[ca]にワークWを設置することで、高精度な加工を実行することができる。そして、このような加工を行うことで、オーバーホールなどの対応を取ることなく、工作機械20を長時間に亘って稼働させることができ、その稼働率を向上させることができる。
【0064】
尚、
図8に示した例では、ベッド21上の大半の部分が補正可能領域[ca]であることから、ワークWをこの補正可能領域[ca]に設置して加工を行う例を示したが、これに限られるものではなく、使用可能領域[ua]がワークWを設置することができる広さを有しているのであれば、ワークWを使用可能領域[ua]に設置して加工を行うのが好ましい。また、ベッド21上に、使用可能領域[ua]及び補正可能領域[ca]の双方とも、ワークWを設置して加工を行うことができる程度の広さを有していなければ、言い換えれば、使用不可領域[nua]が大半を占める場合には、オペレータは、この工作機械20について、オーバーホールが必要であると判断することができる。
【0065】
また、本例の運動精度評価装置1では、NCプログラムを用いてワークWを加工する場合に、NCプログラムから認識される工具の動作領域[mr]が、工作機械20の使用可能領域[ua]及び補正可能領域[ca]の少なくとも一方と重なり合うような、ワークWの基準位置Rp(Xa,Ya,Za)が前記ワーク位置設定部5によって設定され、設定された基準位置Rp(Xa,Ya,Za)が前記表示装置7に表示されるので、当該NCプログラムを用いてワークWを加工する際に、オペレータは、表示装置7に表示された情報に基づいて、ワークWのX軸,Y軸,Z軸座標系における基準位置Rpが、設定位置(Xa,Ya,Za)となるようにワークWを位置合わせすることで、当該ワークWを高精度に加工することができる。
【0066】
即ち、例えば、工具の動作領域[mr]と使用可能領域[ua]とが重なる状態となるように、ワークWを配置すれば、何らの対策を講じることなく、高精度な加工を実現することができる。また、工具の動作領域[mr]と補正可能領域[ca]とが重なるように、ワークWを配置すれば、測定データを基に算出される補正量で、X軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)における動作を補正することによって、高精度な加工を実現することができる。
【0067】
尚、前記ワーク位置設定部5によって、ワークWの基準位置Rp(Xa,Ya,Za)が設定できない場合には、当該ワークWを加工することができないことを意味するので、オペレータは、不用意に、使用不可な領域(使用不可領域[nua])を用いた加工を実行するのを回避することができ、不良品が生産されるのを防止することができる。また、オペレータは、この工作機械20について、オーバーホールなどについて対策を検討することができる。
【0068】
以上、本発明の具体的な実施の形態について説明したが、本発明が採り得る態様は、何ら上例のものに限定されるものではない。
【0069】
例えば、上例では、前記X軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)の運動精度を、順ルート及び逆ルートでそれぞれ測定して、2回繰り返し精度を得るようにしたが、このような態様に限られるものではなく、2回以上の繰り返し精度を確認しても良く、或いは、順ルートのみの1回の測定としても良い。
【0070】
そして、1回のみの測定の場合、前記評価部3は、許容領域[a]を使用可能領域[ua]と評価し、許容外領域[na]を使用不可領域[nua]と評価する。また、ワーク位置推定部5は、NCプログラムから認識される工具の動作領域[mr]と、前記評価部3により抽出された使用可能領域[ua]とを重ね合わせる処理を実行して、動作領域[mr]と使用可能領域[ua]とが重なり合う状態での、X軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)における前記ワークWの基準位置Rp(Xa,Ya,Za)を認識し、認識した基準位置Rp(Xa,Ya,Za)に関する情報を、前記出力部6を介して表示装置7に表示する。
【0071】
また、上例では、X軸送り装置(図示せず)、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず)のそれぞれについて、7種類の運動誤差を測定し、これに基づいて、前記各領域を抽出し、評価するようにしたが、これに限られるものではなく、各送り装置について、少なくとも1種類の運動誤差を測定し、これに基づいて、前記各領域を抽出し、評価するようにしても良い。
【0072】
また、上例では、測定装置10として、4つのレーザ測長器11を用いたが、これに限られるものではなく、工作機械の運動精度を測定できることができる測定装置であればよく、従来公知の各種の測定装置を用いることができる。
【0073】
また、上例では、運動精度の評価対象としての工作機械20を立形のマシニングセンタとしたが、評価対象としての工作機械はこれに限られるものではなく、横形のマシニングセンタや旋盤など、運動機構部として少なくとも一つの直線送り軸をする従来公知の各種の工作機械を適用することができる。
【0074】
繰返しになるが、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1 運動精度評価装置
2 測定データ記憶部
3 評価部
4 NCプログラム記憶部
5 ワーク位置設定部
6 出力部
7 表示装置
10 測定装置
11 レーザ測長器
15 ミラー
20 工作機械
【手続補正書】
【提出日】2021-12-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの直線送り軸を有する運動機構部を備えた工作機械において、前記運動機構部の運動精度を評価する評価装置であって、
NCプログラムを記憶するNCプログラム記憶部と、
前記直線送り軸に関わる運動誤差の測定データを記憶する測定データ記憶部と、
前記測定データ記憶部に格納された測定データを解析して、前記直線送り軸について、その運動誤差が許容範囲内に収まる送り軸方向の領域を使用可能領域として抽出する評価部と、
前記NCプログラム記憶部に格納されたNCプログラムを解析して、ワークに対して設定された基準位置を基準とした工具の動作領域を抽出するとともに、抽出した工具の動作領域と、前記評価部により抽出された使用可能領域とを重ね合わせる処理を実行して、前記動作領域と使用可能領域とが重なり合う状態での、前記送り軸方向における前記ワークの基準位置を認識するワーク位置設定部とを備えていることを特徴とする運動精度評価装置。
【請求項2】
前記ワーク位置設定部によって認識された前記送り軸方向の前記ワークの基準位置を外部に出力する出力部を備えていることを特徴とする請求項1記載の運動精度評価装置。
【請求項3】
少なくとも1つの直線送り軸を有する運動機構部を備えた工作機械において、前記運動機構部の運動精度を評価する評価装置であって、
前記直線送り軸に関わる運動誤差について、複数回繰り返して測定された測定データ群を記憶する測定データ記憶部と、
前記測定データ記憶部に格納された複数の測定データ群を解析して、前記直線送り軸について、その運動誤差が許容範囲内に収まる送り軸方向の領域を許容領域として抽出する一方、運動誤差が許容範囲内に収まらない送り軸方向の領域を許容外領域として抽出し、更に、測定データ群間の繰り返し誤差が所定の基準範囲内に収まる送り軸方向の領域を再現可能領域として抽出する一方、繰り返し誤差が所定の基準範囲内に収まらない送り軸方向の領域を再現不可領域として抽出とともに、前記送り軸方向において、許容領域であり且つ再現可能領域である領域を使用可能領域と評価し、許容外領域であり且つ再現可能領域である領域を補正可能領域と評価し、前記再現不可領域を使用不可領域と評価する評価部と、
前記評価部によって評価された情報を外部に出力する出力部とを備えていることを特徴とする運動精度評価装置。
【請求項4】
NCプログラムを記憶するNCプログラム記憶部と、
前記NCプログラム記憶部に格納されたNCプログラムを解析して、ワークに対して設定された基準位置を基準とした工具の動作領域を抽出するとともに、抽出した工具の動作領域と、前記評価部により抽出された使用可能領域及び補正可能領域とを重ね合わせる処理を実行して、前記動作領域と、使用可能領域及び補正可能領域の少なくとも一方とが重なり合う状態での、前記送り軸方向における前記ワークの基準位置を認識するワーク位置設定部とを備え、
前記出力部は、更に、前記ワーク位置設定部によって認識された前記ワークの基準位置を外部に出力するように構成されていることを特徴とする請求項3記載の運動精度評価装置。