(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172038
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】開閉装置および折戸装置
(51)【国際特許分類】
E05D 3/12 20060101AFI20231129BHJP
E05F 1/12 20060101ALI20231129BHJP
E06B 3/48 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
E05D3/12 A
E05F1/12
E06B3/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083591
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000137959
【氏名又は名称】株式会社ムラコシ精工
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】東 陽太
(72)【発明者】
【氏名】菊地 健
【テーマコード(参考)】
2E015
2E050
【Fターム(参考)】
2E015AA01
2E015BA09
2E015BA11
2E015CA13
2E015CB01
2E015CB02
2E015CB04
2E015FA01
2E050AA03
2E050BA04
2E050CA04
2E050EB01
(57)【要約】
【課題】簡易な構成かつ組み立て容易でありながら自動的に折戸を開閉可能な開閉装置およびそれを用いた折戸装置を提供する。
【解決手段】本発明の開閉装置においては、ベースプレートと、2つに折り畳み可能で開閉自在な第1扉体および第2扉体とそれぞれ対応するように前記ベースプレートに固定された一対のセンターカムと、前記一対のセンターカムに対して摺動可能に配置された一対のスライドカムと、前記センターカムに対して前記スライドカムを押し付けるように付勢力を付与する弾性体と、前記一対のセンターカムのそれぞれに対して回動自在に取り付けられ、前記一対のスライドカムおよび前記弾性体を収容する一対のケースプレートと、を備え、前記付勢力により前記スライドカムが前記センターカムに押し付けられた状態で摺動しながら回動したとき、前記第1扉体および前記第2扉体が開状態と閉状態との間で遷移する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
2つに折り畳み可能で開閉自在な第1扉体および第2扉体とそれぞれ対応するように前記ベースプレートに固定された一対のセンターカムと、
前記一対のセンターカムに対して摺動可能に配置された一対のスライドカムと、
前記センターカムに対して前記スライドカムを押し付けるように付勢力を付与する弾性体と、
前記一対のセンターカムのそれぞれに対して回動自在に取り付けられ、前記一対のスライドカムおよび前記弾性体を収容する一対のケースプレートと、
を備え、
前記付勢力により前記スライドカムが前記センターカムに押し付けられた状態で摺動しながら回動したとき、前記第1扉体および前記第2扉体が開状態と閉状態との間で遷移する
開閉装置。
【請求項2】
前記スライドカムは、前記付勢力により前記センターカムに押し付けられたときに前記開状態または前記閉状態を維持する定位置と、前記第1扉体または前記第2扉体に対する外力によって前記定位置に戻ろうとする非定位置と、の間で回動する
請求項1に記載の開閉装置。
【請求項3】
前記定位置において前記スライドカムは前記センターカムに対して2箇所で押し付けられ、前記非定位置において前記スライドカムは前記センターカムに対して1箇所で押し付けられる
請求項2に記載の開閉装置。
【請求項4】
前記弾性体は、前記付勢力を付与する圧縮コイルバネである
請求項1に記載の開閉装置。
【請求項5】
2つに折り畳み可能で開閉自在な第1扉体および第2扉体からなる扉体と、
前記第1扉体および前記第2扉体とそれぞれ対応するように前記ベースプレートに固定された一対のセンターカムと、前記一対のセンターカムに対して摺動可能に配置された1対のスライドカムと、前記センターカムに対して前記スライドカムを押し付けるように付勢力を付与する弾性体と、前記一対のセンターカムのそれぞれに対して回動自在に取り付けられ、前記一対のスライドカムおよび前記弾性体を収容する一対のケースプレートと、前記ケースプレートに取り付けられる一対のケースベースと、を備える開閉装置と、
前記一対のケースベースを介して前記第1扉体および前記第2扉体に対して固定されるヒンジと、を備え、
前記開閉装置において前記付勢力により前記スライドカムが前記センターカムに押し付けられた状態で摺動しながら回動したとき、前記第1扉体および前記第2扉体が開状態と閉状態との間で遷移する
折戸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、2枚の折戸を自動的に開閉する開閉装置および折戸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2枚の扉を2つ折りにして開閉する折戸装置がある(例えば、特許文献1参照。)。この折戸装置は、2枚の扉を自動的に閉扉できるようにした蝶番を有している。この折戸装置の蝶番には渦巻きバネが収納されており、この渦巻きバネの復元力によって自動的に閉扉することができるようになされている。
【0003】
この折戸装置は、蝶番がパネル体からはみ出ることがなく、また、蝶番をパネル体に容易に取り付けることができる等、美観および作業性に優れている。
【0004】
また、第1扉と第2扉が180度および平行状態になった場合に係合保持されるように構成され、折戸を閉成位置および全開位置に確実に固定するため、ラッチ円盤に配設されたラッチ爪と対向する閉成位置および全開位置にそれぞれ係合部を備え、ラッチ爪と係合部とが係合することにより折戸を保持する回転折れ戸が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-332633号公報
【特許文献2】特開2015-212493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された折戸装置においては、扉を完全に閉じ切るためには、強い渦巻きバネを使用する必要があり、長時間使用すると渦巻きバネの耐久性が落ちてしまい、開閉動作を繰り返し行うと破損するおそれがあった。
【0007】
また、特許文献1に記載された折戸装置においては、転動体と可動駒との間に隙間が生じているため、第1扉と第2扉を可動した際、転動体と可動駒との隙間に指を挟むおそれがあった。
【0008】
さらに、特許文献2に記載された回転折れ戸においては、第1扉および第2扉を180度状態および平行状態に保持することを目的としており、第1扉および第2扉を自動的に開閉することはできないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成かつ組み立て容易でありながら折戸を自動的に開閉可能な開閉装置およびそれを用いた折戸装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の開閉装置においては、ベースプレートと、2つに折り畳み可能で開閉自在な第1扉体および第2扉体とそれぞれ対応するように前記ベースプレートに固定された一対のセンターカムと、前記一対のセンターカムに対して摺動可能に配置された一対のスライドカムと、前記センターカムに対して前記スライドカムを押し付けるように付勢力を付与する弾性体と、前記一対のセンターカムのそれぞれに対して回動自在に取り付けられ、前記一対のスライドカムおよび前記弾性体を収容する一対のケースプレートと、を備え、前記付勢力により前記スライドカムが前記センターカムに押し付けられた状態で摺動しながら回動したとき、前記第1扉体および前記第2扉体が開状態と閉状態との間で遷移する。
【0011】
本発明において、前記スライドカムは、前記付勢力により前記センターカムに押し付けられたときに前記開状態または前記閉状態を維持する定位置と、前記第1扉体または前記第2扉体に対する外力によって前記定位置に戻ろうとする非定位置と、の間で回動することが好ましい。
【0012】
本発明において、前記定位置において前記スライドカムは前記センターカムに対して2箇所で押し付けられ、前記非定位置において前記スライドカムは前記センターカムに対して1箇所で押し付けられることが好ましい。
【0013】
本発明の折戸装置において、前記弾性体は、前記付勢力を付与する圧縮コイルバネである。
【0014】
本発明において折戸装置は、2つに折り畳み可能で開閉自在な第1扉体および第2扉体からなる扉体と、前記第1扉体および前記第2扉体とそれぞれ対応するように前記ベースプレートに固定された一対のセンターカムと、前記一対のセンターカムに対して摺動可能に配置された一対のスライドカムと、前記センターカムに対して前記スライドカムを押し付けるように付勢力を付与する弾性体と、前記一対のセンターカムのそれぞれに対して回動自在に取り付けられ、前記一対のスライドカムおよび前記弾性体を収容する一対のケースプレートと、前記ケースプレートに取り付けられる一対のケースベースと、を備える開閉装置と、前記一対のケースベースを介して前記第1扉体および第2扉体に固定されるヒンジと、を備え、前記開閉装置において前記付勢力により前記スライドカムが前記センターカムに押し付けられた状態で摺動しながら回動したとき、前記第1扉体および前記第2扉体が開状態と閉状態との間で遷移する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る態様によれば、簡易な構成かつ組み立て容易でありながら折戸を自動的に開閉可能な開閉装置およびそれを用いた折戸装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る折戸装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る折戸装置が半分開いた状態を示す斜視図、上面図、および、正面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る折戸装置が完全に開いた状態を示す斜視図、上面図、および、正面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る折戸装置からガイドレールが取り外された状態を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る折戸装置の開閉装置およびヒンジの分解斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る折戸装置のヒンジの構成を示す斜視図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る折戸装置に組み込まれている開閉装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る開閉装置の構成を示す縦断面図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る開閉装置の構成を示す分解斜視図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る開閉装置においてベースプレートにケースプレート、センターカムおよびスライドカムが組み付けられた状態を示す斜視図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る開閉装置のセンターカムの構成を示す図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係る開閉装置のスライドカムの構成を示す図である。
【
図13】本発明の実施の形態に係る開閉装置の開状態および閉状態の説明に供する断面図である。
【
図14】本発明の他の実施の形態に係る開閉装置の開状態および閉状態の説明に供する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.実施の形態の概要
まず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0018】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態にかかる開閉装置(10)において、ベースプレート(101)と、2つに折り畳み可能で開閉自在な第1扉体(2a)および第2扉体(2b)とそれぞれ対応するように前記ベースプレート(101)に固定された一対のセンターカム(108)と、前記一対のセンターカム(108)に対して摺動可能に配置された一対のスライドカム(109)と、前記センターカム(108)に対して前記スライドカム(109)を押し付けるように付勢力を付与する弾性体(112)と、前記一対のセンターカム(108)のそれぞれに対して回動自在に取り付けられ、前記一対のスライドカム(109)および前記弾性体(112)を収容する一対のケースプレート(102)と、を備え、前記付勢力により前記スライドカム(109)が前記センターカム(108)に押し付けられた状態で摺動しながら回動したとき、前記第1扉体(2a)および前記第2扉体(2b)が開状態と閉状態との間で遷移する。
【0019】
〔2〕開閉装置(10)において、前記スライドカム(109)は、前記付勢力により前記センターカム(108)に押し付けられたときに前記開状態または前記閉状態を維持する定位置と、前記第1扉体(2a)または前記第2扉体(2b)に対する外力によって前記定位置に戻ろうとする非定位置と、の間で回動することが好ましい。
【0020】
〔3〕前記定位置において前記スライドカム(109)は前記センターカム(108)に対して2箇所で押し付けられ、前記非定位置において前記スライドカム(109)は前記センターカム(108)に対して1箇所で押し付けられることが好ましい。
【0021】
〔4〕前記弾性体(112)は、前記付勢力を付与する圧縮コイルバネである。
【0022】
〔5〕本発明において折戸装置(1)は、2つに折り畳み可能で開閉自在な第1扉体(2a)および第2扉体(2b)からなる扉体(2)と、前記第1扉体(2a)および第2扉体(2b)とそれぞれ対応するように前記ベースプレート(101)に固定された一対のセンターカム(108)と、前記一対のセンターカム(108)に対して摺動可能に配置された一対のスライドカム(109)と、前記センターカム(108)に対して前記スライドカム(109)を押し付けるように付勢力を付与する弾性体(112)と、前記一対のセンターカム(108)のそれぞれに対して回動自在に取り付けられ、前記一対のスライドカム(109)および前記弾性体(112)を収容する一対のケースプレート(102)と、前記ケースプレート(102)に取り付けられる一対のケースベース(105)と、を備える開閉装置(10)と、前記一対のケースベース(105)を介して前記第1扉体および第2扉体に固定されるヒンジ(3)と、を備え、前記開閉装置(10)において前記付勢力により前記スライドカム(109)が前記センターカム(108)に押し付けられた状態で摺動しながら回動したとき、前記第1扉体(2a)および前記第2扉体(2b)が開状態と閉状態との間で遷移する。
【0023】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の代表的な第1の実施の形態にかかる開閉装置および折戸装置の構成について
図1乃至
図13を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は例示であり、本発明の範囲において、種々の形態をとり得る。
【0024】
なお、説明の都合上、開閉方向を左右方向または水平方向と言う場合があるものとする。すなわち、扉体を開く矢印a方向を開方向または左方向、扉体を閉じる矢印b方向を閉方向または右方向とする。また、扉体の開閉方向(矢印ab方向)と垂直な重力方向(矢印cd方向)を上下方向と言う場合があるものとする。すなわち、扉体の上側または上方を矢印c方向、扉体の下側または下方を矢印d方向とする。
【0025】
さらに、扉体の開閉方向(矢印ab方向)と垂直な奥行方向(矢印ef方向)を前後方向と言う場合があるものとする。すなわち扉体が紙面の手前側から奥側へ向かう矢印e方向を奥側、扉体が紙面の奥側から手前側へ向かう矢印f方向を手前側とする。但し、この左右方向、上下方向および前後方向は、説明の便宜上用いられるのであって、扉体の使用状況によっては異なる方向として定義することができる。
【0026】
(2-1)第1の実施の形態
<折戸装置>
図1乃至
図5に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る折戸装置1は、第1扉体2aおよび第2扉体2bからなる扉体2と、第1扉体2aの左上角部および第2扉体2bの右上角部の双方に跨るように取り付けられたヒンジ3と、当該ヒンジ3と一体に取り付けられた開閉装置10(
図1および
図5)と、家屋等の開口枠部の上枠に固定されたガイドレール4と、を備えている。なお、図示は省略するが、第1扉体2aの左下角部および第2扉体2bの右下角部にも同様にヒンジが取り付けられている。
【0027】
扉体2は、第1扉体2aおよび第2扉体2bからなり、第1扉体2aが第2扉体2bよりも大きく形成されている。因みに、大きなサイズの第1扉体2aを親扉2a、小さなサイズの第2扉体2bを子扉2bと呼ぶ場合があるものとする。
【0028】
図1乃至
図3に示すように、扉体2は、第1扉体2aおよび第2扉体2bがヒンジ3を介して折り畳みまたは延ばされることにより開閉可能である。具体的には、手前側(矢印f方向)にいるユーザが第1扉体2aの戸先側を手前側に引く、または、奥側(矢印e方向)にいるユーザが第1扉体2aの戸先側を手前側へ押すことにより、ヒンジ3を介して扉体2を開いた状態(以下、これを「開状態」とも言う。)にすることができる。また、同様に、ユーザは扉体2が開いた状態から逆の動作を行うことにより扉体2を閉じた状態(以下、これを「閉状態」とも言う。)にすることができる。
【0029】
ガイドレール4は、扉体2の閉状態(第1扉体2aおよび第2扉体2bが直線状に延びた状態)における長さと同じ長さに形成されており、家屋等の開口枠部の上枠に沿って固定されている。
【0030】
ガイドレール4は、下側(矢印d方向)が開口する断面コ字形状に形成されており、その内側を第1扉体2aと係合されたランナー(図示せず)が走行する。なお、ガイドレール4、ランナー、第1扉体2aとの係合状態や動作については一般的であり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0031】
図4に示すように、第1扉体2aは、木製または金属等からなる第1扉本体部21aと、その第1扉本体部21aの上側において一体に固定された第1扉収容部22aとを有している。第1扉収容部22aは、木製または金属等からなり、開閉装置10の一部を収容可能とするべく内側が空洞になっている。なお、第1扉収容部22aは、開閉装置10の一部だけではなくヒンジ3のアーム3pについても収容可能であり、側方からアーム3pは目視不能である。
【0032】
同様に、第2扉体2bは、木製または金属等からなる第2本体部21bと、その第2扉本体部21bの上側において一体に固定された第2扉収容部22bとを有している。第2扉収容部22bについても、木製または金属等からなり、開閉装置10の一部を収容可能とするべく内側が空洞となっている。なお、第2扉収容部22bについても、開閉装置10の一部だけではなくヒンジ3のアーム3qについても収容可能であり、側方からアーム3qは目視不能である。
【0033】
また、第1扉体2aと第2扉体2bとの間には、扉体2がヒンジ3を介して開閉動作する際に生じる隙間を塞ぐための目隠しとなるブラインドレール23が設けられている。ブラインドレール23は、第1扉体2aに取り付けられた第1目隠部23a、および、第2扉体2bに取り付けられた第2目隠部23bを有し、第1扉体2aおよび第2扉体2bの開閉に合わせて第1目隠部23aと第2目隠部23bとの間で折り曲げ可能である。
【0034】
図4および
図5に示すように、ヒンジ3は、開閉装置10の上側(矢印c方向)に取り付けられた状態で、第1扉体2aの第1扉収容部22aにアーム3pが収容され、第2扉体2bの第2扉収容部22bにアーム3qが収容された状態で開閉装置10に保持されている。
【0035】
図1に示すように、実際上、第1扉収容部22aおよび第2扉収容部22bの上側(矢印c方向)にガイドレール4が取り付けられるため、ヒンジ3のアーム3pおよびアーム3qは外方から目視不能となって外観デザイン性に優れた構成である。
【0036】
図6(A)および(B)に示すように、ヒンジ3は、平面視楕円形状の上側(矢印c方向)が開口したギアケース3aと、ギアケース3aに収納された2つのギア3ga、3gbと、そのギア3ga、3gbとそれぞれ一体に取り付けられたアーム3p、3qとを有している。
【0037】
ギアケース3aは、互いに噛合した2つのギア3ga、3gbを収容する一方、2つのギア3ga、3gbと一体に取り付けられたアーム3p、3qを露出した状態で保持している。2つのギア3ga、3gbの上側(矢印c方向)には、カバー3cが取り付けられている。カバー3cは、2つのギア3ga、3gbの噛合する部分にゴミ等の異物が侵入すること、および、ギア3ga、3gbを上側から支持してギア自体のずれ防止、すなわちギア3ga、3gbが上下方向へ移動することを防ぐ等の蓋の役割を有している。
【0038】
アーム3p、3qは、所定の長さを有し、開閉装置10に取り付けるための4個の貫通孔を有している。すなわちヒンジ3は、アーム3p、3qにおける4個の貫通孔、および、後述するケースベース105における腕部107の4個の貫通孔107h(
図7)を介してビス等により第1扉体2a、第2扉体2bに固定される。
【0039】
<開閉装置>
図7乃至
図9に示すように、開閉装置10は、ベースプレート101、ケースプレート102(下側ケースプレート103および上側ケースプレート104)、ケースベース105(カバー部106および腕部107)、センターカム108、スライドカム109、カシメシャフト111、カム用バネ112、皿小ねじ113、114、115を備えている。
【0040】
<ベースプレート>
ベースプレート101は、2つの円盤部が連結された平板形状を有し、センターカム108およびスライドカム109を支持する土台となる部品であり、ケースプレート102およびセンターカム108を取り付けるための2個の貫通孔101ha、101hbを有している。
【0041】
なお、ベースプレート101は、ベースプレート101に対してケースプレート102を回動自在に支持するカシメシャフト111の先端部分が挿通するための貫通孔101hcを有している。ただし、ベースプレート101の貫通孔101hcは、カシメシャフト111の先端部分が貫通孔101hcに挿通される場合に限らず、カシメシャフト111の軸部よりも直径の小さな先端部分だけが挿入される大きさの内径からなる貫通孔101hcを有するようにしてもよい。この場合、ベースプレート101は、貫通孔101hcに対してカシメシャフト111が所定の長さ以上入り込むことを防止することができる。
【0042】
なお、ベースプレート101は、ブラインドレール23の上側(矢印c方向)の端面(以下、これを「上端面」と言う。)の上に配置される(
図4)。ただし、ベースプレート101は、ブラインドレール23の上端面に固定されることはない。
【0043】
<ケースプレート>
ケースプレート102は、下側ケースプレート103および上側ケースプレート104が組み合わされた形成体である。下側ケースプレート103は、上側(矢印c方向)に開口し、かつ、センターカム108の側に向かって開口した略箱形状を有している。
【0044】
下側ケースプレート103は、底部103b、側壁部103s、および、背壁部103zを有している。底部103bは、矩形状の平坦な底面部103bdと、その底面部103bdからセンターカム108に向かって細長く突出した平坦な突起部103btを有し、その突起部103btにはカシメシャフト111を挿通させるための貫通孔103bthが形成されている。つまり、突起部103btの貫通孔103bthの内径は、カシメシャフト111の直径よりも僅かに大きく形成されている。
【0045】
また下側ケースプレート103には、底部103bの両側端部から上側(矢印c方向)に向かってそれぞれ延びる側壁部103sが形成されている。
【0046】
下側ケースプレート103は、底部103bの突起部103btとは反対側の端部から上側(矢印c方向)に向かって延びる矩形状の背壁部103zを有し、その背壁部103zのほぼ中央には皿小ねじ113の頭部を収納可能な大きさのザグリ孔103zhが形成されている。下側ケースプレート103の背壁部103zは、側壁部103sよりも高く形成されている。
【0047】
上側ケースプレート104は、下側ケースプレート103とほぼ同様の大きさ及び形状を有しており、下側(矢印d方向)に開口し、かつ、センターカム108の側に向かって開口した略箱形状を有している。つまり上側ケースプレート104は、下側ケースプレート103を上下反転したような形状である。
【0048】
上側ケースプレート104は、底部104b、側壁部104s、および、背壁部104zを有している。底部104bは、矩形状の平坦な底面部104bdと、その底面部104bdからセンターカム108に向かって細長く突出した平坦な突起部104btを有し、その突起部104btにはカシメシャフト111を挿通させるための貫通孔104bthが形成されている。つまり、突起部104btの貫通孔104bthの内径は、カシメシャフト111の直径よりも僅かに大きく形成されている。
【0049】
また上側ケースプレート104には、下側ケースプレート103と同様、底部104bの両側端部から下側(矢印d方向)に向かってそれぞれ延びる側壁部104sが形成されている。
【0050】
上側ケースプレート104は、底部104bの突起部104tとは反対側の端部から下側(矢印d方向)に向かって延びる矩形状の背壁部104zを有し、その背壁部104zのほぼ中央には皿小ねじ113の雄ネジ部と螺合する雌ネジ孔104zhが形成されている。上側ケースプレート104の背壁部104zは、側壁部104sよりも高く形成されている。
【0051】
なお、上側ケースプレート104の底面部104bdには、ケースベース105のカバー部106に取り付けられる際、皿小ねじ115の雄ネジ部と螺合する雌ネジ孔104bdhが形成されている。
【0052】
図10(A)および(B)に示すように、ケースプレート102は、下側ケースプレート103の背壁部103zの内側に上側ケースプレート104の背壁部104zが来るように重ね合わされ、ザグリ孔103zhと雌ネジ孔104zhとを対向配置した状態で皿小ねじ113により螺合されて一体化される。
【0053】
このときケースプレート102においては、下側ケースプレート103の側壁部103sと上側ケースプレート104の側壁部104sとが上下方向(矢印cd方向)において対向配置され、後述するスライドカム109を収容可能な空間が形成される。
【0054】
<ケースベース>
ケースベース105は、ケースプレート102に取り付けられると共に、扉体2の第1扉体2aおよび第2扉体2bおよびヒンジ3のアーム3p、3qに取り付けられる部材である。
【0055】
ケースベース105は、下側(矢印b方向)が開口した略半楕円筒形状のカバー部106と、カバー部106の端部で一体化された腕部107とを備えている。カバー部106は、ケースプレート102およびセンターカム108等を覆って隠すカバーとして機能し、上端面106aの所定位置に皿小ねじ115の頭部を収容するザグリ孔106hを有している。
【0056】
腕部107は、所定の長さを有する略直方体形状の部材である。腕部107の下端面107bとカバー部106の上端面106aとがほぼ同一面となっている。すなわち、腕部107は、カバー部106と段違いに形成されている。
【0057】
なお腕部107の上端面107aには、4個の貫通孔107hが設けられており、扉体2の第1扉体2a、第2扉体2b、ヒンジ3のアーム3p、3q、および、ケースベース105が一体に取り付けられるために用いられる。
【0058】
<センターカム>
センターカム108は、
図11に示すように、平面視略矩形状を有し、基部1081と、天板部1082と、底板部1083と、天板部1082と底板部1083との間に挟まれた状態で一体化された略角柱状のカム部1085を備えている。
【0059】
センターカム108の基部1081は、上下方向(矢印cd方向)に延びる略角柱状部分である。基部1081は、上端面および下端面を貫通する2つの貫通孔1081hを有している。この貫通孔1081hの内周面には、2個の皿小ねじ114の雄ネジ部と螺合する雌ネジ部が形成されている。
【0060】
したがって、センターカム108は、ベースプレート101の貫通孔101ha、101hbから挿通された2個の皿小ねじ114を基部1081に設けられた2個の貫通孔1081hの雌ネジ部と螺合することにより当該ベースプレート101に対して回転不能な状態で固定される。
【0061】
センターカム108の天板部1082は、基部1081の上側(矢印c方向)の端部から水平方向に沿って延びる矩形状部分であり、底板部1083は、基部1081の下側(矢印d方向)の端部から水平方向に沿って延びる矩形状部分である。天板部1082および底板部1083は、同一形状かつ同一の大きさを有しており、互いに対向配置されている。
【0062】
天板部1082は、基部1081の上端面と同一面上ではなく、その上端面から所定の距離だけ下方に下がった位置に設けられている。同様に、底板部1083についても、基部1081の下端面1081bと同一面上ではなく、その下端面1081bから所定の距離だけ上方に上がった位置に設けられている。具体的には、基部1081の下端面1081bと底板部1083の下端面1083bとの間の距離は、ケースプレート120における下側ケースプレート103の底部103bの厚さよりも大きく設定されている。
【0063】
したがって、ベースプレート101に固定されたセンターカム108に対してケースプレート102がカシメシャフト111を介して取り付けられる際、ベースプレート101とセンターカム108の基部1081の下端面1081bとの隙間に下側ケースプレート103の底部103bの突起部103tがベースプレート101と非接触状態で配置可能となる。
【0064】
一方、センターカム108の基部1081の上端面に上側ケースプレート104の突起部104tが配置された際、基部1081の上端面と突起部104tの上端面とがほぼ同一面となる。
【0065】
天板部1082および底板部1083の間には、カム部1085が一体化された状態で設けられている。カム部1085は、天板部1082および底板部1083と同様に基部1081の中央から水平方向に延びる略角柱状部分であるが、天板部1082および底板部1083よりは水平方向の長さが短く形成されている。すなわち、カム部1085は、天板部1082および底板部1083から外方へ突出することなく凹んでいる状態である。
【0066】
カム部1085は、後述するスライドカム109が摺接しながら回動するための平坦な2つのカム面1085a、および、滑らかに湾曲した曲線状の2つのカム面1085cを有している。平坦なカム面1085aの両側端部に曲線状のカム面1085cがそれぞれ繋がっており、全体的に略U字状のカム面1085acとなっている。
【0067】
なお、カム部1085は、2つのカム面1085aの間に、当該カム面1085aよりも僅かに突出した弧状の突出面1085pを有している。ただし、突出面1085pは、後述するスライドカム109と接触することのない面であり、貫通孔1087を形成した際にカム部1085の肉厚を確保するために突出した部分の面に過ぎない。
【0068】
センターカム108は、天板部1082、カム部1085、および、底板部1083を全て貫通した貫通孔1087を有し、その貫通孔1087に対してケースプレート102およびスライドカム109を保持するためのカシメシャフト111が挿通される。すなわち、センターカム108の貫通孔1087は、カシメシャフト111の直径よりも僅かに大きく形成されている。
【0069】
また、センターカム108の貫通孔1087には、下側ケースプレート103の突起部103btの貫通孔103bthおよび上側ケースプレート104の突起部104btの貫通孔104bthが対向するように配置される。したがって、上側ケースプレート104、センターカム108、および、下側ケースプレート103を貫通するようにカシメシャフト111が挿通される。
【0070】
<カシメシャフト>
カシメシャフト111は、ベースプレート101の貫通孔101hcの内径よりも僅かに小さい直径を有する塑性変形可能な金属からなる軸状部材である。カシメシャフト111の先端部分は、上側ケースプレート104、センターカム108、および、下側ケースプレート103を挿通した後、ベースプレート101の貫通孔101hcに挿通される。このときベースプレート101から下方に飛び出たカシメシャフト111の先端部分が潰されて塑性変形することにより、ベースプレート101の下面にカシメられる。
【0071】
このとき、ベースプレート101の上端面からカシメシャフト111の頭部111aの下端面までの距離は、ケースプレート102における上側ケースプレート104の上端面から下側ケースプレート103の下端面までの距離よりも大きい。したがって、ケースプレート102の下側ケースプレート103がベースプレート101と接触することはない。
【0072】
その結果、
図10(A)および(B)に示すように、センターカム108に対してスライドカム109を収容したケースプレート102がカシメシャフト111により保持された場合、下側ケースプレート103がベースプレート101と非接触状態であるため、センターカム108に対してケースプレート102が摺動抵抗のない状態で滑らかに回動可能となる。
【0073】
<スライドカム>
スライドカム109は、
図12(A)乃至(E)に示すように、樹脂等の材料によって形成され、略直方体形状の本体部1091と、当該本体部1091と一体化され、センターカム108に対して摺接する略直方体形状の摺接部1092とを備えている。
【0074】
本体部1091においては、摺接部1092とは反対側の背面1091bに、2つの収納孔1091hが水平方向(矢印ab方向)に沿って並列に設けられている。この収納孔1091hは、所定の深さを有する有底の孔であり、後述するカム用バネ112を収容するために用いられる。収納孔1091hの深さは、カム用バネ112の長さよりも短い。
【0075】
したがって、本体部1091の2つの収納孔1091hに2個のカム用バネ112が収容された場合、完全には収容されずにカム用バネ112の半分程度が本体部1091の背面1091bから後方に飛び出た状態となる(
図13参照。)。
【0076】
摺接部1092は、本体部1091よりも全体的に小さな略直方体形状を有しており、本体部1091の正面1091aの中央に設けられている。摺接部1092は、センターカム108のカム面1085a、1085cと接触して摺動する平坦な2つの摺接面1092a、および、2つの摺接面1092aの間に凹状に形成された凹面1092rを有する。
【0077】
摺接部1092の凹面1092rは、センターカム108のカム部1085における突出面1085pに対応して形成されたものであり、センターカム108のカム部1085とは接触しない面である。
【0078】
<カム用バネ>
カム用バネ112は、スライドカム109の本体部1091の収納孔1091hに収容される圧縮コイルバネである。カム用バネ112は、その一端が本体部1091の収納孔1091hに収容される一方、他端が収容孔1091hから突出して、ケースプレート102における上側ケースプレート104の背壁部104zに接触した状態で配置される。
【0079】
すなわち、カム用バネ112は、センターカム108のカム部1085に対してスライドカム109の摺接部1092を押し付けるように付勢し、センターカム108のカム部1085とスライドカム109の摺接部1092との接触状態を維持するように作用する。
【0080】
<開閉装置の組み付け手順>
このような構成の開閉装置10を組み立てる組み付け手順について次に説明する。最初に、センターカム108、スライドカム109、および、ケースプレート102を組み付ける。
【0081】
具体的には、センターカム108のカム部1085に対してスライドカム109の摺接部1092を接触させる。このときスライドカム109は、センターカム108の天板部1082と底板部1083の間に入り込むことになるので、スライドカム109の上下方向の移動が規制された状態となる。続いて、スライドカム109の本体部1091の収納孔1091hに2個のカム用バネ112の一端側を収容する。
【0082】
その状態において、センターカム108、スライドカム109、および、カム用バネ112の3体を下側ケースプレート103の上に配置すると共に、カム用バネ112の後端側を上側ケースプレート104の背壁部104zの内側面に押し当てるように上側ケースプレート104と下側ケースプレート103とを対向配置する。この段階で、ケースプレート102の中にスライドカム109が収容され、当該スライドカム109がセンターカム108に対してカム用バネ112により付勢された状態となる。
【0083】
その後、下側ケースプレート103の背壁部103zのザグリ孔103zhと、上側ケースプレート104の背壁部104zの雌ネジ孔104zhとを対向配置した状態で皿小ねじ113により螺合することによって、下側ケースプレート103および上側ケースプレート104の両者が一体化されてケースプレート102が形成される。
【0084】
そして、ベースプレート101の貫通孔101hcと、下側ケースプレート103の貫通孔103bthと、センターカム108の貫通孔1087と、上側ケースプレート104の貫通孔104bthとが全て対向するように配置した状態で、全ての貫通孔にカシメシャフト111を挿通すると、カシメシャフト111の先端部分がベースプレート101の下方から飛び出るので、その飛び出た部分をカシメる。これにより、スライドカム109を収容したケースプレート102がカシメシャフト111を介して水平方向へ回動自在に保持されることになる。
【0085】
続いて、ケースベース105におけるカバー部106の貫通孔106hに皿小ねじ115を挿通させ、上側ケースプレート104における底面部104bdの雌ネジ孔104bdhと螺合させることにより、ケースベース105とケースプレート102とを結合する。これにより、センターカム108に対してケースプレート102を介してケースベース105が回動自在に取り付けられたことになる。
【0086】
最後に、ベースプレート101にセンターカム108を固定する。具体的には、ベースプレート101の貫通孔101ha、101hbに対して下方から2個の皿小ねじ114を挿通し、センターカム108における基部1081の貫通孔1081hの内周面に形成された雌ネジ部と螺合させることにより当該センターカム108をベースプレート101に対して回転不能な状態で固定する。
【0087】
このときベースプレート101にセンターカム108の基部1081が当接されているが、下側ケースプレート103の突起部103btについてはベースプレート101の上端面に対して接触していない状態にあるため、ケースプレート102がベースプレート101に対して摺動抵抗のない状態で回動可能となる。
【0088】
このようにベースプレート101、ケースプレート102、ケースベース105、センターカム108、スライドカム109、および、カム用バネ112が全て取り付けられて開閉装置10が完成する。
【0089】
この開閉装置10は、ケースベース105の腕部107の貫通孔107hを介してヒンジ3と共に第1扉体2aの第1扉収容部22aおよび第2扉体2bの第2扉収容部22bに対して図示しないネジやボルト等の締結具によって固定される。これにより開閉装置10が取り付けられた折戸装置1が完成する。
【0090】
<作用および効果>
第1の実施の形態における開閉装置10では、
図13(A)に示すように、第1扉体2aおよび第2扉体2bが直線状に並ぶ閉状態において(
図1)、スライドカム109における摺接部1092の2つの摺接面1092aは、センターカム108におけるカム部1085の2つの平坦なカム面1085aと2箇所で接触している。
【0091】
このとき、スライドカム109は、カム用バネ112の付勢力によりセンターカム108に押し付けられているので、ユーザが第1扉体2aを引いたり、押す等の外力を与えない限り閉状態が定位置として維持される。
【0092】
ユーザにより第1扉体2aが操作されると、扉体2はヒンジ3を介して第1扉体2aおよび第2扉体2bの境界部分で折れた後(
図2)に開状態となる(
図3)。このとき開閉装置10では、
図13(B)に示すように、スライドカム109における摺接部1092の2つの摺接面1092aがセンターカム108におけるカム部1085の2つの平坦なカム面1085aから曲線状のカム面1085cへと摺動しながら移動する。
【0093】
第1扉体2aおよび第2扉体2bが完全に開いた開状態または閉状態と開状態との間の中間状態になったとき(
図3)、
図13(B)に示すように、スライドカム109における摺接部1092の2つの摺接面1092aのうち一方だけがセンターカム108におけるカム部1085の曲線状のカム面1085cと1箇所で接触する。
【0094】
この場合、2個のカム用バネ112が強く縮んでスライドカム109がセンターカム108に対して強く押し付けられるが、スライドカム109における摺接部1092の一方の摺接面1092aだけが接触しているので、2個のカム用バネ112による押付力にアンバランスが生じる。
【0095】
また、スライドカム109における摺接部1092の一方の摺接面1092aだけが接触しているカム面1085cは曲面であるため、カム用バネ112による付勢力によってカム面1085cの曲面に倣うように当該スライドカム109が移動し始める。
【0096】
すなわち、センターカム108におけるカム部1085の曲線状のカム面1085cは平坦なカム面1085aに向かって緩やかに傾斜しているので、スライドカム109における摺接部1092はカム部1085と摺動した状態で緩やかに回動し再び閉状態に戻る(
図1、および、
図13(A))。
【0097】
このようにスライドカム109のセンターカム108に対してスライドカム109における摺接部1092の一方の摺接面1092aが1箇所で接触する一方、他方の摺接面1092aが接触しないという接点の偏りが生じるので、2個のカム用バネ112による付勢力によってスライドカム109は閉状態すなわち定位置に戻ろうとする。つまり、第1扉体2aおよび第2扉体2bが完全に開いた開状態、または、開状態と閉状態との中間状態においては、2個のカム用バネ112の付勢力によってスライドカム109が定位置に戻ろうとする不安定な非定位置にある。
【0098】
したがって開閉装置10のスライドカム109は、2個のカム用バネ112の付勢力によりセンターカム108に押し付けられたときに閉状態を維持する定位置と、第1扉体2aに対する操作(外力)によってスライドカム109が回動したときにセンターカム108に対する摺接部1092の接点の偏りによって定位置に戻ろうとする非定位置との間で回動することになる。
【0099】
したがって開閉装置10では、扉体2の第1扉体2aおよび第2扉体2bを閉状態から開状態にした後、ユーザは何ら操作することなく、センターカム108、スライドカム109、および、カム用バネ112の付勢力によって自動的に閉状態に戻すことができる。
【0100】
つまり開閉装置10では、カム用バネ112の付勢力によりスライドカム109がセンターカム108に押し付けられた状態で摺動しながら回動することにより、第1扉体2aおよび第2扉体2bが開状態と閉状態との間を自在に行き来することができる。
【0101】
また開閉装置10においては、センターカム108とスライドカム109との摺接する部分がケースベース105のカバー部106によって覆われているので、ユーザの指が挟まれるといったリスクを予め回避することができる。
【0102】
さらに開閉装置10では、従来のように渦巻きバネを用いるのではなく、圧縮コイルバネからなる2個のカム用バネ112を用いることにより、必要以上に強い圧縮コイルバネを用いる必要がなくなり、耐久性を落とすことなく、扉体2の開閉動作を繰り返し行っても破損のリスクを低減することができる。
【0103】
なお、開閉装置10は、その全体が第1扉体2aの第1扉収容部22aおよび第2扉体2bの第2扉収容部22bに収容されることになるので、折戸装置1として見た目の優れた外観デザインを実現することができる。
【0104】
(2-2)第2の実施の形態
図13との対応部分に同一符号を付した
図14(A)および(B)に示すように、第2の実施の形態における開閉装置10では、第1の実施の形態におけるセンターカム108とは異なる形状のセンターカム208を用いている。
【0105】
具体的には、センターカム208は、センターカム108と同様の基本形状を有するが、センターカム108のカム部1085とは異なる形状のカム部2085を備えていることが特徴である。この場合もカム部2085は、天板部1082および底板部1083から突出することなく凹んでいる。
【0106】
カム部2085は、スライドカム109が摺接しながら回動するための平坦な2つのカム面2085a、カム面2085aとは垂直に延びる平坦なカム面2085b、および、カム面2085aとカム面2085bとを繋ぎ所定角度に傾斜した傾斜面2085cを有している。なお、傾斜面2085cの代わりに滑らかに湾曲した曲線状の曲面であってもよい。
【0107】
またカム部2085には、カム面2085bから僅かに突出した突部2085pが設けられており、その突部2085pがスライカム109の回転を規制するストッパとして機能する。
【0108】
この場合、
図14(A)および(B)に示すように、デフォルトとして扉体2の第1扉体2aおよび第2扉体2bが完全に開いた開状態が定位置として維持されており、
図14(B)に示すように、扉体2の第1扉体2aおよび第2扉体2bが完全に閉じた閉状態(非定位置)になった場合でも、自動的に開状態に遷移する。
【0109】
図14(A)に示すように、第1扉体2aおよび第2扉体2bが並列した開状態において、スライドカム109における摺接部1092の2つの摺接面1092aは、センターカム208におけるカム部2085の2つの平坦なカム面2085aと2箇所で接触している。
【0110】
このとき、スライドカム109は、カム用バネ112の付勢力によりセンターカム208のカム部2085の平坦なカム面2085aに押し付けられているので、ユーザが第1扉体2aを操作しない限り開状態すなわち定位置が維持される。
【0111】
ユーザにより第1扉体2aが操作されると、ヒンジ3を介して第1扉体2aおよび第2扉体2bが展開して閉状態になる(
図14(B))。このとき開閉装置10では、スライドカム109がストッパとして機能する突部2085pに当接することにより第1扉体2aおよび第2扉体2bの動きが規制される。
【0112】
しかしながら、スライドカム109における摺接部1092の2つの摺接面1092aのうち一方だけがセンターカム208におけるカム部2085のカム面2085aと1箇所で接触し、他方の摺接面1092aは傾斜したカム面2085cと対向することになるため2個のカム用バネ112による押付力のアンバランスが生じる。
【0113】
このとき、センターカム208におけるカム部2085のカム面2085cは傾斜しているため、カム用バネ112による付勢力によってカム面2085cの傾斜面に倣うようにスライドカム109が移動し始め、当該スライドカム109の摺接部1092が摺動した状態で緩やかに回動し再び開状態に戻る(
図1、および、
図14(A))。
【0114】
これにより、第1扉体2aおよび第2扉体2bが閉状態のような非定位置で維持されることはなく、スライドカム109における摺接部1092はセンターカム208におけるカム部2085の平坦なカム面2085aと接触するように回動し、再び開状態に戻る(
図3、および、
図14(A))。
【0115】
このように第2の実施の形態における開閉装置10においても、扉体2の第1扉体2aおよび第2扉体2bを開状態(定位置)から閉状態(非定位置)にした後、ユーザは何ら操作することなく、センターカム208、スライドカム109、および、カム用バネ112の付勢力によって自動的に開状態に戻すことができる。
【0116】
3.他の実施の形態
なお、上述した第1および第2の実施の形態においては、2個のカム用バネ112を用いて自動的に開状態から閉状態へ、および、閉状態から開状態に戻すようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、カム用バネ112の個数については1個、または、3個等の単数または複数であってもよい。
【0117】
また、本発明の第1および第2の実施の形態においては、カム用バネ112として圧縮コイルバネを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、スライドカム109をセンターカム108および208に押し付ける付勢力を付与できれば、パイプ状の弾性体や、円柱状の弾性体を用いるようにしてもよい。
【0118】
さらに、本発明の第1および第2の実施の形態においては、第1の扉体2aの戸先側を手前側に引いたり、または、戸先側を奥側へ押すことにより、扉体2を開閉するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、第2の扉体2bに対して同様の操作を行った場合にも扉体2を開閉することができる。
【0119】
本発明に係る開閉装置10および折戸装置1は、上記実施の形態に限定されるものではない。なお、その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の開閉装置10および折戸装置1を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0120】
1……折戸装置、2…扉体、2a…第1扉体、2b…第2扉体、3…ヒンジ、3a…ギアケース、3c…カバー、3ga,3gb…ギア、3p,3q…アーム、4…ガイドレール、10…開閉装置、21a…第1扉本体部、22a…第1扉収容部、21b…第2扉本体部21bと、22b…第2扉収容部、23…ブラインドレール、23a…第1目隠部、23b…第2目隠部、101…ベースプレート、102…ケースプレート、103…下側ケースプレート、104…上側ケースプレート、105…ケースベース、108,208…センターカム、109…スライドカム、111…カシメシャフト、112…カム用バネ、113~115…皿小ねじ、106…カバー部、107…腕部、1081…基部、1082…天板部、1083…底板部、1085,2085…カム部、1091…本体部、1092…摺接部。