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  • 特開-低摩擦樹脂被覆ワイヤロープ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172059
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】低摩擦樹脂被覆ワイヤロープ
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/643 20060101AFI20231129BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20231129BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20231129BHJP
   C08L 83/10 20060101ALI20231129BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231129BHJP
   B32B 15/02 20060101ALI20231129BHJP
   D06M 15/507 20060101ALI20231129BHJP
   D06M 13/402 20060101ALI20231129BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
D06M15/643
C08L21/00
C08L101/00
C08L83/10
B32B27/00 101
B32B15/02
D06M15/507
D06M13/402
D06M15/263
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083612
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】390010814
【氏名又は名称】株式会社誠和
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】日向野 基
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4L033
【Fターム(参考)】
4F100AB01
4F100AB01A
4F100AB03
4F100AB03A
4F100AK01
4F100AK01B
4F100AK41
4F100AK41B
4F100AK48
4F100AK48B
4F100AK52
4F100AK52B
4F100AL09
4F100AL09B
4F100BA02
4F100BA07
4F100EH17
4F100GB51
4F100JB16
4F100JB16B
4F100JK09
4F100JK09B
4J002BN17X
4J002CF10W
4J002CP17X
4J002EP016
4J002FD176
4J002GT00
4L033AA09
4L033AB01
4L033AB03
4L033AC15
4L033BA71
4L033CA18
4L033CA46
4L033CA59
(57)【要約】
【課題】樹脂への減摩剤配合時に見られる樹脂内部滑性の増大による、樹脂被覆ワイヤロープの曲げ時応力及びプーリー等との接触圧力による被覆樹脂の型崩れを抑制し、ワイヤロープ芯線の屈曲耐久性に優れ、接触する部材との摩擦抵抗が少ない低摩擦樹脂被覆ワイヤロープを提供する。
【解決手段】熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂から選ばれる基本ポリマーに対して、脂肪酸アミド、及びラジカル重合可能な単量体由来の重合体(樹脂成分)とシリコーンとを互いに結合して得られるシリコーン含有共重合体から選ばれる少なくとも1種を含有する低摩擦樹脂組成物をワイヤロープに被覆してなる低摩擦樹脂被覆ワイヤロープ;及び熱可塑性エラストマーとシリコーンとを含有する低摩擦樹脂組成物であって、シリコーンの配合量が全低摩擦樹脂組成物に対して1重量%以下である低摩擦樹脂組成物をワイヤロープに被覆してなる低摩擦樹脂被覆ワイヤロープ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂から選ばれる基本ポリマーに対して、脂肪酸アミド、及びラジカル重合可能な単量体由来の重合体(樹脂成分)とシリコーンとを互いに結合して得られるシリコーン含有共重合体から選ばれる少なくとも1種を含有する低摩擦樹脂組成物をワイヤロープに被覆してなる低摩擦樹脂被覆ワイヤロープ。
【請求項2】
熱可塑性エラストマーとシリコーンとを含有する低摩擦樹脂組成物であって、シリコーンの配合量が全低摩擦樹脂組成物に対して1重量%以下である低摩擦樹脂組成物をワイヤロープに被覆してなる低摩擦樹脂被覆ワイヤロープ。
【請求項3】
低摩擦樹脂組成物が可塑剤を含有しない請求項1又は2記載の低摩擦樹脂被覆ワイヤロープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低摩擦樹脂被覆ワイヤロープに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂被覆電線はもとより、動索として使用される駆動用ワイヤロープには、接触摩擦低減、ほこり、薬品からの保護、ワイヤロープ撚り付け油の逸散防止等のワイヤロープ寿命及び機能の向上の目的で、樹脂被覆ワイヤロープが広く使用されている。
電線及び駆動用ワイヤロープ等を含めたケーブル被覆全般に使用されている樹脂は、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ナイロン6、11、12及びそれらとポリエーテルなどのソフトセグメントとのブロック共重合体(ポリアミドエラストマー)のナイロン系樹脂、高耐候、耐薬品性の必要とされる場合にはポリエステル樹脂、PVDF、ETFE、PFA等のフッ素系樹脂などが広く使用されている。
【0003】
そのような中で、特に寒冷地屋外及び夏季炎天下農業用温室内で使用する駆動用ワイヤロープは100℃から-50℃に至る高温から極低温における極めて広範囲の温度環境下で取り扱われ、被覆樹脂についてもその全温度域で密着性、耐磨耗性及び耐屈曲疲労性がまず第一に要求され、駆動用ワイヤロープ被覆樹脂として実用化されている樹脂は軽負荷の場合にはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が、高負荷の場合にはナイロン11、12及びそれらとポリエーテルとのブロック共重合体(ポリアミドエラストマー)による被覆が市場のほとんどを占めている。
【0004】
また、耐候性、耐薬品性及び耐磨耗性、耐屈曲疲労性のバランスのとれた被覆樹脂としてポリエステルエラストマー同士のブレンド組成物を含む各種ポリエステル共重合体組成物が広く知られており、特許文献1~18に記載されているような射出成形及び押出成形向け、あるいはケーブル被覆向け専用として様々な組成物が開発され、電線等のケーブル被覆に使用されているものもある。
【0005】
更に、特許文献19には、主に農業用施設温室内外において太陽光環境下で低温域から高温域にかけて高荷重で連続的に使用される樹脂被覆ワイヤロープの被覆樹脂として使用可能な密着性、耐候性、耐薬品性に優れ、かつ低温域での屈曲特性にも優れた、高硬度の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物、及び前記熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物で被覆された樹脂被覆ワイヤロープが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2005-511886号公報
【特許文献2】特公平6-53841号公報
【特許文献3】特公昭63-23225号公報
【特許文献4】特公昭63-48899号公報
【特許文献5】特開平5-239198号公報
【特許文献6】特開2001-254006号公報
【特許文献7】特許第2849011号公報
【特許文献8】特開平11-66959号公報
【特許文献9】特開2003-192880号公報
【特許文献10】特許第3674722号公報
【特許文献11】特開平11-172531号公報
【特許文献12】特開2002-253306号公報
【特許文献13】特許第3678867号公報
【特許文献14】特開2001-240663号公報
【特許文献15】特開2001-253032号公報
【特許文献16】特許第3083136号公報
【特許文献17】国際公開第2007/029768号パンフレット
【特許文献18】特公平3-80170号公報
【特許文献19】特許第5268797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、農業用温室内で使用する駆動用ワイヤロープは、保温、遮光、遮熱を目的としたフィルム、カーテンを開閉するために主として使用され、その装置構造上、駆動用ワイヤロープとフィルム、カーテン及びその他構造部材とが接触し(擦れ)、駆動用ワイヤロープそのものの屈曲耐久性を確保しながらも、接触部材の擦れによる損傷を抑制することが求められている。
【0008】
そのため、本発明は、樹脂被覆ワイヤロープに関して、樹脂への減摩剤配合時に見られる樹脂内部滑性の増大による、樹脂被覆ワイヤロープの曲げ時応力及びプーリー等との接触圧力による被覆樹脂の型崩れを抑制し、ワイヤロープ芯線の屈曲耐久性にも優れ、更にワイヤロープが接触する部材との摩擦抵抗が少なく安定した使用及び接触する部材の耐久性向上が可能な低摩擦樹脂被覆ワイヤロープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂から選ばれる基本ポリマーに対して、脂肪酸アミド、及びラジカル重合可能な単量体由来の重合体(樹脂成分)とシリコーンとを互いに結合して得られるシリコーン含有共重合体から選ばれる少なくとも1種を含有する低摩擦樹脂組成物をワイヤロープに被覆してなる低摩擦樹脂被覆ワイヤロープ。
(2)熱可塑性エラストマーとシリコーンとを含有する低摩擦樹脂組成物であって、シリコーンの配合量が全低摩擦樹脂組成物に対して1重量%以下である低摩擦樹脂組成物をワイヤロープに被覆してなる低摩擦樹脂被覆ワイヤロープ。
(3)低摩擦樹脂組成物が可塑剤を含有しない前記(1)又は(2)に記載の低摩擦樹脂被覆ワイヤロープ。
【発明の効果】
【0010】
本発明の低摩擦樹脂被覆ワイヤロープは、樹脂への減摩剤配合時に見られる樹脂内部滑性の増大による、樹脂被覆ワイヤロープの曲げ時応力及びプーリー等との接触圧力による被覆樹脂の型崩れを抑制し、ワイヤロープ芯線の屈曲耐久性にも優れ、更にワイヤロープが接触する部材との摩擦抵抗が少なく安定した使用及び接触する部材の耐久性向上が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は屈曲耐久性試験(芯線)を説明するための参考図である。
図2図2は屈曲耐久性試験(被覆変形)を説明するための参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、低摩擦樹脂組成物の基本樹脂として、熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂から選ばれる樹脂を単独で又は組み合わせて用いる。
熱可塑性エラストマーとしては、特に制限はないが、例えば熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマーが挙げられる。
以下に、熱可塑性ポリエステルエラストマーの好ましい態様について説明する。
【0013】
(ポリエステルエラストマーブロック共重合体A)
本発明に用いる重合体Aは、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成誘導体とジオールから形成されるポリエステルからなる結晶性ハードセグメントとポリエーテル及び/又はポリエステルから形成される非晶性ソフトセグメントとのブロック共重合体であるポリエステルエラストマーブロック共重合体A-1及び芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成誘導体とジオールから形成されるポリエステルからなる結晶性ポリエステルA-2から選ばれる。
【0014】
本発明に用いるポリエステルエラストマーブロック共重合体A-1は、JIS K 7244-4に従って1Hzにおける動的粘弾性測定にて測定された動的損失正接(tanδ)極大温度又はDSCにて測定されたガラス転移温度が0℃以上、好ましくは0℃以上48℃以下、更に好ましくは7.5℃以上24℃以下である。
JIS K 7244-4に従って1Hzにおける動的粘弾性測定にて測定された動的損失正接(tanδ)極大温度とDSC(示差走査熱量測定)にて測定されたにおけるガラス転移温度はほぼ等しい。
【0015】
本発明に用いるポリエステルエラストマーブロック共重合体A-1は、非晶性ソフトセグメントとしてのポリエーテル及び/又はポリエステル共重合量が好ましくは33.5重量%未満、更に好ましくは10重量%以上25重量%以下、ショアD硬度(JIS K7215に準拠)が好ましくは59D以上、更に好ましくは67.5D以上75D以下の比較的剛性の高い(プラスチック的な)ポリエステルエラストマーブロック共重合体である。
ポリエステルエラストマーブロック共重合体A-1の曲げ弾性率(ASTM D790に準拠)は、好ましくは500MPa以上1000MPa以下、更に好ましくは525MPa以上750MPa以下である。
ポリエステルエラストマーブロック共重合体Aは単独でも、2種以上を組み合わせてもよい。
【0016】
本発明に用いる結晶性ポリエステルA-2は、JIS K 7244-4に従って1Hzにおける動的粘弾性測定にて測定された動的損失正接(tanδ)極大温度又はDSCにて測定されたガラス転移温度が0℃以上、好ましくは0℃以上78℃以下、更に好ましくは0℃以上48℃以下であり、曲げ弾性率(ASTM D790に準拠)が好ましくは1000MPa以上2500MPa以下、更に好ましくは1000MPa以上1500MPa以下である。
【0017】
結晶性ポリエステルA-2としては、例えば、「結晶性ハードセグメント芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成誘導体」として後述する芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成誘導体と、「結晶性ハードセグメントジオール」として後述するジオールから形成されるポリエステル、好ましくはポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、更に好ましくはポリブチレンテレフタレートが挙げられる。
結晶性ポリエステルA-2は単独でも、2種以上を組み合わせてもよい。
【0018】
本発明に用いる重合体Aとしては、前記ポリエステルエラストマーブロック共重合体A-1及び前記結晶性ポリエステルA-2を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
本発明に用いる重合体Aは、重合体Aを構成するそれぞれの重合体の前記動的損失正接(tanδ)極大温度又は前記ガラス転移温度と重合体A全体に対する重量分率を乗じた値の総和が0℃以上48℃以下、好ましくは7.5℃以上24℃以下であり、それぞれの重合体の非晶性ソフトセグメント共重合量と重合体A全体に対する重量分率を乗じた値の総和が10重量%以上30重量%以下、好ましくは10重量%以上25重量%以下である。
【0019】
(ポリエステルエラストマーブロック共重合体B)
本発明に用いる重合体Bは、JIS K 7244-4に従って1Hzにおける動的粘弾性測定にて測定された動的損失正接(tanδ)極大温度又はDSCにて測定されたガラス転移温度が0℃未満である。
少量での動的貯蔵弾性率(E´)の改善及び樹脂のべたつきを抑制するためには、前記動的損失正接(tanδ)極大温度又は前記ガラス転移温度は、好ましくは-60℃以上-12.5℃以下、更に好ましくは-60℃以上-35℃以下である。
【0020】
本発明に用いる重合体Bは、ポリエステル共重合量が好ましくは33.5重量%以上80重量%未満、更に好ましくは50重量%以上70重量%以下、ショアD硬度(JIS K7215に準拠)が好ましくは27D以上59D未満、更に好ましくは38D以上55D以下の柔軟性の高い(ゴム的な)ポリエステルエラストマーブロック共重合体である。
本発明に用いる重合体Bの曲げ弾性率(ASTM D790に準拠)は、好ましくは25MPa以上300MPa以下、更に好ましくは50MPa以上210MPa以下である。
本発明に用いる重合体Bは単独でも、2種以上を組み合わせてもよい。
【0021】
本発明に用いる重合体Bは、重合体Bを構成するそれぞれの重合体の前記動的損失正接(tanδ)極大温度又は前記ガラス転移温度と重合体B全体に対する重量分率を乗じた値の総和が-70℃以上0℃未満、好ましくは-60℃以上-12.5℃以下、更に好ましくは-60℃以上-35℃以下、かつそれぞれの重合体の非晶性ソフトセグメント共重合量と重合体B全体に対する重量分率を乗じた値の総和が33.5重量%以上80重量%以下、好ましくは35重量%以上65重量%以下である。
【0022】
(結晶性ハードセグメント芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成誘導体)
前記重合体A及び前記重合体Bに用いられる芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成誘導体は、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、ジフェニル-4,4´-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸、あるいはこれらのエステル形成誘導体などであるが、低温特性に有利な前記動的損失正接(tanδ)極大温度又は前記ガラス転移温度が低くできるテレフタル酸及び又はテレフタル酸ジメチルを用いるのが最も好ましい。
【0023】
(結晶性ハードセグメントジオール)
前記重合体A及び前記重合体Bに用いられるジオールは、分子量300以下のエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール(1,4-ブタンジオール)、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどの脂環式ジオール、キシリレングリコール、4,4´-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4´-ジヒドロキシ-p-ターフェニル、4,4´-ジヒドロキシ-p-クォーターフェニルなどの芳香族ジオールであるが、低温特性に有利な前記動的損失正接(tanδ)極大温度又は前記ガラス転移温度が低くできる1,4-ブタンジオールを用いるのが最も好ましい。
【0024】
前記重合体A及び前記重合体Bに用いられる芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成誘導体及びジオールは、結晶性ハードセグメントの軟質化のため、それぞれ2種類以上を併用した共重合ポリエステルであってもよい。また、3官能以上の多官能カルボン酸成分、多官能オキシ酸成分及び多官能ヒドロキシ成分などを共重合したポリエステルであってもよい。
【0025】
(非晶性ソフトセグメント)
前記ポリエステルエラストマーブロック共重合体A-1及び前記重合体Bに用いられる非晶性ソフトセグメントのポリエーテル(ポリオキシアルキレン類)は、数平均分子量300から6000程度のポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドプロピレンオキシド共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドテトラヒドロフラン共重合体などであるが、耐熱性、耐水性、低温特性、弾性回復性、機械強度などの総合特性からポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを用いるのが最も好ましい。
【0026】
前記ポリエステルエラストマーブロック共重合体A-1及び前記重合体Bに用いられる非晶性ソフトセグメントのポリエステルは、開環重合体(例えば、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトンなど)、脂肪族ジカルボン酸と炭素数2から12程度の脂肪族ジオールとからの誘導体(例えば、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリヘキシレンセバケートなど)、フタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸と炭素数5以上の脂肪族ジオールとからなる芳香族ポリエステル(例えば、ポリヘキシレンイソフタレート、ポリヘキシレンフタレートなど)であるが、非晶性ポリエステルのなかで低温特性に優れたポリ(ε-カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリヘキシレンセバケート、ポリヘキシレンイソフタレートを用いるのが好ましい。
【0027】
前記ポリエステルエラストマーブロック共重合体A-1及び前記重合体Bに用いられる非晶性ソフトセグメントは前記動的損失正接(tanδ)極大温度又は前記ガラス転移温度及びソフトセグメント量の範囲内で、それぞれ2種類以上を併用した(共重合又は溶融混合した)ポリエステルエラストマーブロック共重合体でもよい。
【0028】
(重合体A及び重合体Bの製造)
本発明に用いるポリエステルエラストマーブロック共重合体A-1、結晶性ポリエステルA-2及び前記重合体Bの製造方法は特に限定されるものではなく公知の方法で製造することができる。例えば、結晶性ポリエステルA-2の製造方法としてジカルボン酸アルコールジエステルとグリコール及びポリオキシアルキレングリコールを触媒の存在下でエステル交換反応させ、反応生成物を重縮合させる方法、ジカルボン酸とグリコール及びポリオキシアルキレングリコールを触媒の存在下でエステル反応させ、反応生成物を重縮合させる方法などが挙げられ、ポリエステルエラストマーブロック共重合体A-1及び前記重合体Bの製造方法としてジカルボン酸又はジカルボン酸アルコールジエステルとグリコールをエステル反応又はエステル交換反応させ結晶性セグメントを作成し、ポリオキシアルキレングリコールを添加してエステル交換反応させ非晶性ソフトセグメントを共重合させる方法;結晶性セグメントと非晶性ソフトセグメントを付加反応させる方法、鎖連結剤で結合させる方法又はそれぞれの反応生成物を溶融混合させる方法などが挙げられる。
【0029】
(好ましいポリエステルエラストマーブロック共重合体)
本発明に用いるポリエステルエラストマーブロック共重合体としては、ポリブチレンテレフタレートからなる結晶性ハードセグメントと、ポリアルキレンエーテルグリコールのテレフタル酸エステルからなる非晶性ソフトセグメントが交互に結合したブロック共重合体が好ましい。
【0030】
前記の好ましいポリエステルエラストマーブロック共重合体は、結晶性ハードセグメントが次式(I):
[-COCCO-O(CHO-]
(式中、-COCCO-はテレフタロイル基を表す。)
で示され、非晶性ソフトセグメントが次式(II):
[-COCCO-O{(CHO}-]
(式中、-COCCO-はテレフタロイル基を表す。)
で示される。
【0031】
前記の好ましいポリエステルエラストマーブロック共重合体としては、例えばハイトレルTMシリーズ(東レ・デュポン社製)が市販されており、当該市販品を用いることができる。
例えば、ハイトレルTM7277は、ガラス転移温度(DSC)12℃、ショアD硬度(JIS K7215に準拠)72、曲げ弾性率(ASTM D790に準拠)539MPaであり、ポリエステルエラストマーブロック共重合体Aとして好適に用いることができる。又はイトレルTM4047は、ガラス転移温度(DSC)-40℃、ショアD硬度(JIS K7215に準拠)40、曲げ弾性率(ASTM D790に準拠)70.6MPaであり、ハイトレルTM5557は、ガラス転移温度(DSC)-20℃、ショアD硬度(JIS K7215に準拠)55、曲げ弾性率(ASTM D790に準拠)210MPaであり、ハイトレルTM3046は、ガラス転移温度(DSC)-69℃、ショアD硬度(JIS K7215に準拠)27、曲げ弾性率(ASTM D790に準拠)23.5MPaであり、ポリエステルエラストマーブロック共重合体Bとして好適に用いることができる。
【0032】
以下に、熱可塑性ポリアミドエラストマーの好ましい態様について説明する。
本発明に用いるポリアミドエラストマーは、ポリアミドを主成分とするハードセグメントと、ポリオール等を主成分とするソフトセグメントを有するブロック共重合体である。
前記ポリアミドエラストマーのハードセグメントを構成するポリアミドとしては、例えば、ジアミン成分とジカルボン酸成分から導かれるポリアミド、ラクタム類の開環重合によるポリアミド、アミノカルボン酸から導かれるポリアミド、これらの共重合ポリアミド、これらの混合ポリアミドのいずれでもよい。前記ジアミン成分としては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2,3,4もしくは2,4,4-トリメチレンヘキサメチレンジアミン、1,3-もしくは1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p-アミノヘキシル)メタン、フェニルジアミン、m-キシレンジアミン、p-キシレンジアミン等の脂肪族、脂環族又は芳香族のジアミンが挙げられ、ジカルボン酸成分としては、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの脂肪族、脂環族又は芳香族のジカルボン酸が挙げられる。また、前記ラクタム類としては、カプロラクタム、ラウリルラクタム等が挙げられる。また、前記アミノカルボン酸としては、ω-アミノカプロン酸、ω-アミノエナン酸、アミノウンデカン酸、1,2-アミノドデカン酸などが挙げられる。
【0033】
前記ポリアミドエラストマーを構成するハードセグメントは、主成分である前記ポリアミド以外にも、ポリエステル、ポリオレフィン、及び、ポリウレタンなどからなる、ポリアミド以外のハードセグメントを2種以上組み合わせてもよい。そのため、ハードセグメントと後述のポリオールを主成分とするソフトセグメントとの結合は、アミド結合、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合などから選ばれた少なくとも1種である。このため、ハードセグメントの分子末端は、ソフトセグメントの分子末端官能基と反応性を有する官能基で変性されている必要がある。これらの官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、酸無水物基、オキサゾリン基、エポキシ基、イソシアネート基、ウレア基などがある。
【0034】
また、前記ポリアミドエラストマーのソフトセグメントを構成するポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及び、これらの変性物が挙げられる。これらには、ポリエーテルポリオールのセグメントを有するポリエーテルエステルアミド; ポリエーテルポリオールのセグメントを有するポリエーテルエステルアミドイミド; ポリエーテルポリオールのセグメントを有するポリエーテルエステル; ポリエーテルポリオールのセグメントを有するポリエーテルアミド、ポリエーテルウレタン、ポリエーテルウレア等が含まれるが、好ましくは、ポリエーテルポリオールである。
【0035】
前記ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルをそれぞれ重合させて得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、又は、これらの共重合ポリエーテル等が挙げられる。
【0036】
前記ポリエステルポリオールとしては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環族ジカルボン酸が挙げられる。また、ジカルボン酸のエステル化合物、又は、酸無水物と、ジオールとの縮合反応で得られるポリエステルポリオール、ε-カプロラクトン等のラクトンモノマーの開環重合で得られるポリラクトンジオール等が挙げられる。なお、前記のジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,4-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2,2-ジメチロールヘプタン等が挙げられ、これらは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
また、ポリエステルエーテルポリオールとして、前記脂肪族ジカルボン酸、前記芳香族ジカルボン酸、前記脂肪族ジカルボン酸、及び、そのエステル化合物、又は、酸無水物と、ジエチレングリコール、プロピレンオキサイド付加物などのグリコール等、又は、これらの混合物との縮合反応物などが挙げられる。
【0038】
また、ポリカーボネートポリオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,4-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2,2-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール等の多価アルコールの1種又は2種以上と、炭酸エチレン、炭酸ジエチル等を反応させて得られるポリカーボネートポリオール等が挙げられる。また、ポリカプロラクトンポリオールとポリヘキサメチレンカーボネートとの共重合体であってもよい。
【0039】
本発明に用いるポリアミドエラストマーの前記ハードセグメントと前記ソフトセグメントの比率は、ハードセグメント/ソフトセグメント=10~60質量%/40~90質量%の範囲であることが好ましく、ポリアミドエラストマーの硬度は、ショアDで好ましくは59D以上、更に好ましくは67.5D以上75D以下の範囲である。
本発明に用いるポリアミドエラストマーの製造方法は、従来から使用されている公知のものがいずれも使用できる。
【0040】
本発明に用いるポリアミドエラストマーの重量平均分子量の下限値、及び、上限値は特に限定されるものではないが、下限値としては、30,000以上が好ましく、40,000以上がより好ましく、50,000以上が更に好ましい。また、上限値としては、1,000,000以下が好ましく、900,000以下がより好ましく、800,000以下が更に好ましい。
【0041】
本発明に用いるポリアミドエラストマーの溶融粘度の下限値、及び、上限値は特に限定されるものではないが、下限値として、測定温度200℃における、せん断速度100sec-1におけるせん断の溶融粘度は、80Pa・s以上であることが好ましく、90Pa・s以上であることがより好ましく、100Pa・s以上であることが更に好ましい。また、上限値として、300,000Pa・s以下が好ましく、200,000Pa・s以下がより好ましく、100,000Pa・s以下が更に好ましい。
【0042】
本発明に好ましく使用されるポリアミドエラストマーの代表的なものとしては、アルケマ社製の「ペバックス」、宇部興産社製の「ウベスタXPA」等が商業的に入手されるものとして挙げられる。これらのポリアミドエラストマーは、各々単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
以下に、熱可塑性樹脂の好ましい態様について説明する。
本発明に用いる熱可塑性樹脂としては、特に制限はないが、好ましくは熱可塑性ポリアミド樹脂が挙げられる。
前記熱可塑性ポリアミド樹脂としては、前述の熱可塑性ポリアミドエラストマーのハードセグメントを形成するポリアミドを挙げることができる。熱可塑性ポリアミド樹脂としては、具体的には、ε-カプロラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド6)、ウンデカンラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド11)、ラウリルラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド12)、ジアミンと二塩基酸とを重縮合したポリアミド(アミド66)、メタキシレンジアミンを構成単位として有するポリアミド(アミドMX)等を例示することができる。
【0044】
アミド6は、例えば、{CO-(CH-NH}で表すことができる。アミド11は、例えば、{CO-(CH10-NH}で表すことができる。アミド12は、例えば、{CO-(CH11-NH}で表すことができる。アミド66は、例えば、{CO(CHCONH(CHNH}で表すことができる。ここで、nは繰り返し単位数を表す。
アミド6の市販品としては、例えば、宇部興産社製の「UBEナイロン」シリーズ(例えば、1022B、1011FB等)、アミド11の市販品としては、例えば、アルケマ社製の「Rilsan B」シリーズ、アミド12の市販品としては、例えば、宇部興産社製の「UBEナイロン」シリーズ(例えば、UBESTATM3020U、3030U、3035U等)、アミド66の市販品としては、例えば、旭化成社製の「レオナ」シリーズ(例えば、1300S、1700S等)、アミドMXの市販品としては、例えば、三菱ガス化学社製の「MXナイロン」シリーズ(例えば、S6001、S6021、S6011等)があるが、適正硬度の観点から(ショアDで好ましくは59D以上、更に好ましくは67.5D以上75D以下の範囲)アミド11及びアミド12を用いるのが好ましい。
【0045】
熱可塑性ポリアミド樹脂は、前記の構成単位のみからなるホモポリマーであってもよく、前記の構成単位と他のモノマーとのコポリマーであってもよい。コポリマーの場合、各熱可塑性ポリアミド樹脂における前記構成単位の含有率は、40質量%以上であることが好ましい。
【0046】
本発明に用いる低摩擦樹脂組成物は、熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂から選ばれる基本ポリマーに対して、脂肪酸アミド、及びラジカル重合可能な単量体由来の重合体(樹脂成分)とシリコーンとを互いに結合して得られるシリコーン含有共重合体から選ばれる少なくとも1種、又は、熱可塑性エラストマーから選ばれる基本ポリマーに対して、シリコーンを配合してなる。
【0047】
本発明に用いる脂肪酸アミドとしては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、ビス脂肪酸アミド等が挙げられる。本発明の低摩擦樹脂被覆ワイヤロープの耐傷付性に優れることから、不飽和脂肪酸アミドが好ましい。
不飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ブラシジン酸アミド、エライジン酸アミド等が挙げられる。本発明の低摩擦樹脂被覆ワイヤロープの耐傷付性に優れることから、エルカ酸アミド、オレイン酸アミドが好ましく、エルカ酸アミドがより好ましい。
飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド等が挙げられる。
ビス脂肪酸アミドとしては、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等のビス脂肪酸アミド;ステアリルエルカ酸アミド、オレイルパルミチン酸アミド等が挙げられる。
脂肪酸アミドは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
本発明に用いるシリコーン含有共重合体は、ラジカル重合可能な単量体由来の重合体(樹脂成分)とシリコーン(シリコーン成分)とを互いに結合して得られるブロック又はグラフト共重合体である。共重合体を構成するシリコーン成分高分子鎖はアクリル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、フェノール基などで高分子鎖末端や一部側鎖を変性したシリコーンを用い、シリコーンと反応させる樹脂成分高分子鎖はアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが用いられる。
例として樹脂成分高分子鎖がアクリル樹脂の場合には、前記ラジカル重合可能な単量体とは、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、芳香族アルケニル、メタクリル酸アミド、及びアクリル酸アミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。前記単量体は単独で、又は複数を組合せて使用することができる。
【0049】
メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3-ブチレングリコール、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸トルイル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸2-メトキシエチル、メタクリル酸3-メトキシブチル、メタクリル酸2-アミノエチル、2-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2-メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、メタクリル酸トリフルオロメチル、メタクリル酸ペンタフルオロエチル、メタクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル、メタクリル酸トリイソプロピルシリル等を挙げることができる。
【0050】
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸3-メトキシブチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、2-アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、2-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリル酸トリフルオロメチル、アクリル酸ペンタフルオロエチル、アクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル、アクリル酸3-ジメチルアミノエチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸ラウリル、アルキル変性ジペンタエリスリトールのアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、アクリル酸カルビトール、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アクリル酸テトラエチレングリコール、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート、アクリル酸1,9-ノナンジオール、アクリル酸1,4-ブタンジオール、2-プロペノイックアシッド〔2-〔1,1-ジメチル-2-〔(1-オキソ-2-プロペニル)オキシ〕エチル〕-5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル〕メチルエステル、アクリル酸1,6-ヘキサンジオール、ペンタエリスリトールトリアクリレート、2-アクリ
ロイルオキシプロピルハイドロジェンフタレート、3-メトキシアクリル酸メチル、アクリル酸アリル、アクリル酸トリイソプロピルシリル等を挙げることができる。
【0051】
芳香族アルケニルとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン等を挙げることができる。
【0052】
これらのラジカル重合可能な単量体のうち、重合性の観点から、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-メトキシエチルを好適に使用することができる。
【0053】
本発明に用いるシリコーン含有共重合体の構成成分であるシリコーン成分高分子鎖(以下、場合により「シリコーン系重合体」という。)は、多官能性オルガノポリシロキサンであり、1分子中に少なくとも2つ以上の官能基を有し、かつ主鎖にシロキサン結合を有するポリマーであればよく、-(Si-O)-(nは1以上の整数)で示される構造を有する重合体である。シリコーン系重合体の官能基は、ポリマー分子の末端、側鎖のいずれか、又は、両方に有していてもよいが、前記ラジカル重合可能な単量体由来の重合体と結合させてブロック共重合体とする場合には両末端に官能基を有することが好ましく、グラフト共重合体とする場合には片末端又は側鎖に官能基を有するシリコーン系重合体を用いる。
【0054】
シリコーン系重合体としては、以下のシロキサンポリマーを主鎖構造に有し、かつ官能基を有するポリマーを挙げることができる:ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(ジエチルシロキサン)、ポリ(ジフェニルシロキサン)、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、ポリ(メチルエチルシロキサン)、ポリ(エチルフェニルシロキサン)、ポリ(メチル-トリフルオロエチル-シロキサン)、ポリ(メチル-ペンタフルオロプロピル-シロキサン)、(ジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサン)共重合体、(ジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサン)共重合体、(ジメチルシロキサン-ジエチルシロキサン)共重合体等。
シリコーン系重合体の高分子鎖構造としては、価格、入手性及び重合反応の容易さの観点から、ポリ(ジオルガノシロキサン)が好ましく、特にポリ(ジメチルシロキサン)が好ましい。
【0055】
シリコーン系重合体の分子量は特に限定されないが、最終的に得られるシリコーン含有共重合体の分子量から、重量平均分子量(Mw)が100~50000、特に250~25000の範囲にあることが好ましい。樹脂成分高分子鎖がアクリル樹脂の場合のシリコーン系重合体の市販品としては、日信化学工業株式会社製のシャリーヌRシリーズ、樹脂成分高分子鎖がエチレン・アクリル酸エチル共重合体(EMMA樹脂)の場合には、東レ・ダウコーニング社製のBY27-219等が挙げられ、これらを利用することができる。
【0056】
本発明においては、前記シリコーン含有共重合体に代えて、又はこれと組み合わせて、その他のシリコーン(シリコーン単体)を用いることができる。
前記その他のシリコーンは、特に制限はないが、樹脂組成物内での保持性(あまりに早期にブリードアウトし過ぎないこと)、分散性を考慮すると、例えば、ポリ(ジオルガノシロキサン)の官能基の一部(側鎖又は末端)をクロロフェニル基、アルキル基、脂肪酸エステル基、ニトリル基、カルボキシルアルキル基、アミノ基、フルオロアルキル基等で置換した変性シリコーン(前記シリコーン含有共重合体で、共重合体化するために使用するシリコーン系重合体を含むものであるが)を使用することも好ましい。
【0057】
また、前記樹脂組成物内での保持性(あまりに早期にブリードアウトし過ぎないこと)に欠点を持つポリ(ジオルガノシロキサン)、特にポリ(ジメチルシロキサン)であっても、分子の高分子量化に伴う物理的移行制限を発揮させた超高分子量化シリコーンを使用することも好ましく、重量平均分子量(Mw)が400000~700000程度の超高分子量シリコーンを用いることが更に好ましい。超高分子量シリコーンは、過酷な条件における耐摩耗性等が高く、ほとんどブリードアウトしないことが示されている。しかしながら、シリコーン全体にいえることではあるが、特に、超高分子量シリコーンは、エラストマー及び樹脂への少量配合時の分散性悪化が目立つため、予め熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーに予備分散させたマスターバッチ材や乾式シリカを含浸させたマスターバッチ材として事前混錬を行ったものを用いてワイヤロープに被覆することが好ましく、市販品としては、例えば、超高分子量シリコーンを各種熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーに混合させた東レ・ダウコーニング社製のBY27シリーズや旭化成ワッカーシリコーン株式会社製のGENIOPLASTTM PELLET S等が挙げられる。
【0058】
本発明に用いる低摩擦樹脂組成物には、前記した成分以外に、例えば、エチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル(主鎖)、スチレン・アクリル酸ステアリル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(側鎖)共重合体等を適量配合し、低摩擦樹脂組成物内での脂肪酸アミドの保持性(早期にブリードアウトし過ぎないこと)及び樹脂被覆ワイヤロープとして成形後に屈曲させた場合における被覆樹脂変形性を改善することができる。エチレン・プロピレン共重合体ゴム以外には、エチレン・オクテン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・5-エチリデンー2-ノルボルネン共重合体ゴム(EPDM)等、エチレン・アクリル酸エチル共重合体以外には、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸グリシジル共重合体等、エチレン・アクリル酸エチル(主鎖)、スチレン・アクリル酸ステアリル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(側鎖)共重合体以外には、エチレン・メタクリル酸メチル(主鎖)、スチレン・アクリル酸ブチル・メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル(側鎖)共重合体等を用いることができる。
【0059】
本発明に用いる低摩擦樹脂組成物は、本発明の効果の点から、可塑剤を含有しないことが好ましい。
本発明に用いる低摩擦樹脂組成物における脂肪酸アミドの配合量は、全低摩擦樹脂組成物に対して、通常0.05~5重量%、好ましくは0.075~2.5重量%であり、前記ラジカル重合可能な単量体由来の重合体とシリコーンとを互いに結合して得られるシリコーン含有共重合体の配合量は、全低摩擦樹脂組成物に対して、シリコーンとして、通常0.1~2.5重量%、好ましくは0.2~2重量%である。
【0060】
本発明に用いる低摩擦樹脂組成物における前記シリコーン含有共重合体以外のシリコーン単体の配合量は、内部滑性効果(可塑化効果)の抑制、被覆樹脂の屈曲耐久性の確保の点から、全低摩擦樹脂組成物に対して、シリコーンとして、1重量%以下であることが必要であり、好ましくは0.25~1重量%である。
【0061】
本発明に用いる低摩擦樹脂組成物の混合方法は公知の方法を用いることができる。前記低摩擦樹脂組成物をミキサー、ブレンダーなどの混合機によりドライブレンドして押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール機に供給して溶融混練する方法、また、必要に応じて後縮合による粘度調整の工程を付加する方法などであるが、単純混合としてはワイヤロープ被覆時の押出機による混練を兼ねた混合でもよい。
【0062】
本発明に用いる前記低摩擦樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、前記エチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル(主鎖)、スチレン・アクリル酸ステアリル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(側鎖)共重合体等及び前記シリコーン含有共重合体における樹脂成分高分子鎖を含め、公知のヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系、芳香族アミン系などの酸化防止剤、ベンゾフェノン系、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系などの耐光剤、結晶化促進剤、結晶核剤、潤滑剤、帯電防止剤、導電性改良剤、耐加水分解改良剤、多官能架橋剤、金属劣化防止剤、難燃剤、着色剤、シリカ、タルク、炭酸カルシウムなどの強化材などの各種添加剤及び成形加工性、クリープ弾性改善などの目的で、本発明の目的を損なわない範囲で公知のエポキシ化合物、ポリカルボジイミド化合物並びに耐衝撃性改善などの目的で、本発明の目的を損なわない範囲で公知のポリウレタンなどの各種他樹脂を適量配合することができる。
【0063】
なお、前記エチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル(主鎖)、スチレン・アクリル酸ステアリル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(側鎖)共重合体等及び前記シリコーン含有共重合体における樹脂成分高分子鎖を含めた前記添加剤及び各種他樹脂の任意的成分の合計配合量は、好ましくは全低摩擦樹脂組成物に対して15重量%以下、更に好ましくは7.5重量%以下である。
【実施例0064】
本発明をより具体的かつ詳細に説明するために以下に実施例及び比較例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
基準例1(〔F-1〕熱可塑性ポリエステルエラストマーのみ)
〔F-1〕熱可塑性ポリエステルエラストマーとして、ポリエステルエラストマーブロック共重合体である東レ・デュポン社製ハイトレルTM7277(ガラス転移温度(DSC)12℃、ショアD硬度(JIS K7215に準拠)72、曲げ弾性率(ASTM D790に準拠)539MPa):100重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルTM21UV(ハイトレル専用耐候剤マスターバッチ):5重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルマスターバッチPER(F)オレンジ(ハイトレル専用オレンジ色着色剤マスターバッチ):3重量部とをワイヤロープ被覆時にミキサーで予め混合し、押出機による混練を加え、外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
【0065】
実施例1(〔F-1〕全低摩擦樹脂組成物に対して、〔B〕脂肪酸アミド混合物を0.46重量%、脂肪酸アミドとして0.093重量%配合)
〔F-1〕熱可塑性ポリエステルエラストマーとして、ポリエステルエラストマーブロック共重合体である東レ・デュポン社製ハイトレルTM7277:99.5重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルTM21UV(ハイトレル専用耐候剤マスターバッチ)5重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルマスターバッチPER(F)オレンジ(ハイトレル専用オレンジ色着色剤マスターバッチ)3重量部と(〔F-1〕として合計107.5重量部)、〔B-1〕エルカ酸アミド:0.1重量部と、〔B-2〕エチレン・プロピレン共重合体ゴム:0.05重量部、〔B-3〕エチレン・アクリル酸エチル共重合体:0.25重量部、〔B-4〕エチレン・アクリル酸エチル(主鎖)、スチレン・アクリル酸ステアリル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(側鎖)共重合体:0.1重量部とを(配合量換算〔F-1〕:100重量部、〔B-1〕:0.093重量部、〔B-2~B-4〕:0.38重量部)ワイヤロープ被覆時にミキサーで予め混合し、押出機による混練を加え、外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
【0066】
実施例2(〔F-1〕全低摩擦樹脂組成物に対して、〔B〕脂肪酸アミド混合物を0.93重量%、脂肪酸アミドとして0.19重量%配合)
〔F-1〕熱可塑性ポリエステルエラストマーとして、ポリエステルエラストマーブロック共重合体である東レ・デュポン社製ハイトレルTM7277:99重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルTM21UV(ハイトレル専用耐候剤マスターバッチ)5重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルマスターバッチPER(F)オレンジ(ハイトレル専用オレンジ色着色剤マスターバッチ)3重量部と(〔F-1〕として合計107重量部)、〔B-1〕エルカ酸アミド:0.2重量部と、〔B-2〕エチレン・プロピレン共重合体ゴム:0.1重量部、〔B-3〕エチレン・アクリル酸エチル共重合体:0.5重量部、〔B-4〕エチレン・アクリル酸エチル(主鎖)、スチレン・アクリル酸ステアリル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(側鎖)共重合体(エチレン・アクリル酸エチル80重量%、スチレン1重量%、アクリル酸ステアリル1重量%、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル18重量%;以下同様):0.2重量部とを(配合量換算〔F-1〕:100重量部、〔B-1〕:0.19重量部、〔B-2~B-4〕:0.75重量部)ワイヤロープ被覆時にミキサーで予め混合し、押出機による混練を加え、外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
【0067】
実施例3(〔F-1〕全低摩擦樹脂組成物に対して、〔B〕脂肪酸アミド混合物を1.85重量%、脂肪酸アミドとして0.37重量%配合)
〔F-1〕熱可塑性ポリエステルエラストマーとして、ポリエステルエラストマーブロック共重合体である東レ・デュポン社製ハイトレルTM7277:98重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルTM21UV(ハイトレル専用耐候剤マスターバッチ)5重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルマスターバッチPER(F)オレンジ(ハイトレル専用オレンジ色着色剤マスターバッチ)3重量部と(〔F-1〕として合計106重量部)、〔B-1〕エルカ酸アミド:0.4重量部と、〔B-2〕エチレン・プロピレン共重合体ゴム:0.2重量部、〔B-3〕エチレン・アクリル酸エチル共重合体:1重量部、〔B-4〕エチレン・アクリル酸エチル(主鎖)、スチレン・アクリル酸ステアリル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(側鎖)共重合体:0.4重量部とを(配合量換算〔F-1〕:100重量部、〔B-1〕:0.38重量部、〔B-2~B-4〕:1.51重量部)ワイヤロープ被覆時にミキサーで予め混合し、押出機による混練を加え、外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
【0068】
実施例4(〔F-1〕全低摩擦樹脂組成物に対して、〔B〕脂肪酸アミド混合物を3.7重量%、脂肪酸アミドとして0.74重量%配合)
〔F-1〕熱可塑性ポリエステルエラストマーとして、ポリエステルエラストマーブロック共重合体である東レ・デュポン社製ハイトレルTM7277:96重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルTM21UV(ハイトレル専用耐候剤マスターバッチ)5重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルマスターバッチPER(F)オレンジ(ハイトレル専用オレンジ色着色剤マスターバッチ)3重量部と(〔F-1〕として合計104重量部)、〔B-1〕エルカ酸アミド:0.8重量部と、〔B-2〕エチレン・プロピレン共重合体ゴム:0.4重量部、〔B-3〕エチレン・アクリル酸エチル共重合体:2重量部、〔B-4〕エチレン・アクリル酸エチル(主鎖)、スチレン・アクリル酸ステアリル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(側鎖)共重合体:0.8重量部とを(配合量換算〔F-1〕:100重量部、〔B-1〕:0.77重量部、〔B-2~B-4〕:3.08重量部)ワイヤロープ被覆時にミキサーで予め混合し、押出機による混練を加え、外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
【0069】
実施例5(〔F-1〕全低摩擦樹脂組成物に対して、〔A〕脂肪酸アミドを0.093重量%配合)
〔F-1〕熱可塑性ポリエステルエラストマーとして、ポリエステルエラストマーブロック共重合体である東レ・デュポン社製ハイトレルTM7277:99.9重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルTM21UV(ハイトレル専用耐候剤マスターバッチ)5重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルマスターバッチPER(F)オレンジ(ハイトレル専用オレンジ色着色剤マスターバッチ)3重量部と(〔F-1〕として合計107.9重量部)、〔A〕エルカ酸アミド:0.1重量部とを(配合量換算〔F-1〕:100重量部、〔A〕:0.093重量部)ワイヤロープ被覆時にミキサーで予め混合し、押出機による混練を加え、外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
【0070】
実施例6(〔F-1〕全低摩擦樹脂組成物に対して、〔A〕脂肪酸アミドを0.19重量%配合)
〔F-1〕熱可塑性ポリエステルエラストマーとして、ポリエステルエラストマーブロック共重合体である東レ・デュポン社製ハイトレルTM7277:99.8重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルTM21UV(ハイトレル専用耐候剤マスターバッチ)5重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルマスターバッチPER(F)オレンジ(ハイトレル専用オレンジ色着色剤マスターバッチ)3重量部と(〔F-1〕として合計107.8重量部)、〔A〕エルカ酸アミド:0.2重量部とを(配合量換算〔F-1〕:100重量部、〔A〕:0.19重量部)ワイヤロープ被覆時にミキサーで予め混合し、押出機による混練を加え、外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
【0071】
実施例7(〔F-1〕全低摩擦樹脂組成物に対して、〔A〕脂肪酸アミドを0.37重量%配合)
〔F-1〕熱可塑性ポリエステルエラストマーとして、ポリエステルエラストマーブロック共重合体である東レ・デュポン社製ハイトレルTM7277:99.6重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルTM21UV(ハイトレル専用耐候剤マスターバッチ)5重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルマスターバッチPER(F)オレンジ(ハイトレル専用オレンジ色着色剤マスターバッチ)3重量部と(〔F-1〕として合計107.6重量部)、〔A〕エルカ酸アミド:0.4重量部とを(配合量換算〔F-1〕:100重量部、〔A〕:0.37重量部)ワイヤロープ被覆時にミキサーで予め混合し、押出機による混練を加え、外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
【0072】
実施例8(〔F-1〕全低摩擦樹脂組成物に対して、〔A〕脂肪酸アミドを1.85重量%配合)
〔F-1〕熱可塑性ポリエステルエラストマーとして、ポリエステルエラストマーブロック共重合体である東レ・デュポン社製ハイトレルTM7277:98重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルTM21UV(ハイトレル専用耐候剤マスターバッチ)5重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルマスターバッチPER(F)オレンジ(ハイトレル専用オレンジ色着色剤マスターバッチ)3重量部と(〔F-1〕として合計106重量部)、〔A〕エルカ酸アミド:2重量部とを(配合量換算〔F-1〕:100重量部、〔A〕:1.89重量部)ワイヤロープ被覆時にミキサーで予め混合し、押出機による混練を加え、ダイ温度230℃で外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
【0073】
実施例9(〔F-1〕全低摩擦樹脂組成物に対して、〔C〕シリコーン含有グラフト共重合体を0.46重量%、シリコーンとして0.32重量%配合)
〔F-1〕熱可塑性ポリエステルエラストマーとして、ポリエステルエラストマーブロック共重合体である東レ・デュポン社製ハイトレルTM7277:99.5重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルTM21UV(ハイトレル専用耐候剤マスターバッチ)5重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルマスターバッチPER(F)オレンジ(ハイトレル専用オレンジ色着色剤マスターバッチ)3重量部と(〔F-1〕として合計107.5重量部)、〔C-1〕シリコーン:0.35重量部と、〔C-2〕メタクリル酸メチル:0.15重量部をラジカル重合させて得られる重合体を含有するシリコーン含有グラフト共重合体(〔C-1〕が主鎖、〔C-2〕が側鎖の共重合体(シリコーン:70重量%、アクリル樹脂:30重量%):0.5重量部とを(配合量換算〔F-1〕:100重量部、〔C-1〕:0.33重量部、〔C-2〕:0.14重量部)ワイヤロープ被覆時にミキサーで予め混合し、押出機による混練を加え、外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
【0074】
実施例10(〔F-1〕全低摩擦樹脂組成物に対して、〔C〕シリコーン含有グラフト共重合体を0.93重量%、シリコーンとして0.65重量%配合)
〔F-1〕熱可塑性ポリエステルエラストマーとして、ポリエステルエラストマーブロック共重合体である東レ・デュポン社製ハイトレルTM7277:99重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルTM21UV(ハイトレル専用耐候剤マスターバッチ)5重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルマスターバッチPER(F)オレンジ(ハイトレル専用オレンジ色着色剤マスターバッチ)3重量部と(〔F-1〕として合計107重量部)、〔C-1〕シリコーン:0.7重量部と、〔C-2〕メタクリル酸メチル:0.3重量部をラジカル重合させて得られる重合体を含有するシリコーン含有グラフト共重合体(〔C-1〕が主鎖、〔C-2〕が側鎖の共重合体(シリコーン:70重量%、アクリル樹脂:30重量%):0.5重量部とを(配合量換算〔F-1〕:100重量部、〔C-1〕:0.65重量部、〔C-2〕:0.28重量部)ワイヤロープ被覆時にミキサーで予め混合し、押出機による混練を加え、外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
【0075】
実施例11(〔F-1〕全低摩擦樹脂組成物に対して、〔C〕シリコーン含有グラフト共重合体を1.85重量%、シリコーンとして1.3重量%配合)
〔F-1〕熱可塑性ポリエステルエラストマーとして、ポリエステルエラストマーブロック共重合体である東レ・デュポン社製ハイトレルTM7277:98重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルTM21UV(ハイトレル専用耐候剤マスターバッチ)5重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルマスターバッチPER(F)オレンジ(ハイトレル専用オレンジ色着色剤マスターバッチ)3重量部と(〔F-1〕として合計106重量部)、〔C-1〕シリコーン:1.4重量部と、〔C-2〕メタクリル酸メチル:0.6重量部をラジカル重合させて得られる重合体を含有するシリコーン含有グラフト共重合体(〔C-1〕が主鎖、〔C-2〕が側鎖の共重合体(シリコーン:70重量%、アクリル樹脂:30重量%):0.5重量部とを(配合量換算〔F-1〕:100重量部、〔C-1〕:1.32重量部、〔C-2〕:0.57重量部)ワイヤロープ被覆時にミキサーで予め混合し、押出機による混練を加え、外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
【0076】
実施例12(〔F-1〕全低摩擦樹脂組成物に対して、〔B〕脂肪酸アミド混合物を0.93重量%、脂肪酸アミドとして0.19重量%、〔C〕シリコーン含有グラフト共重合体を0.93重量%、シリコーンとして0.65重量%配合)
〔F-1〕熱可塑性ポリエステルエラストマーとして、ポリエステルエラストマーブロック共重合体である東レ・デュポン社製ハイトレルTM7277:98重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルTM21UV(ハイトレル専用耐候剤マスターバッチ)5重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルマスターバッチPER(F)オレンジ(ハイトレル専用オレンジ色着色剤マスターバッチ)3重量部と(〔F-1〕として合計106重量部)、〔B-1〕エルカ酸アミド:0.2重量部と、〔B-2〕エチレン・プロピレン共重合体ゴム:0.1重量部、〔B-3〕エチレン・アクリル酸エチル共重合体:0.5重量部、〔B-4〕エチレン・アクリル酸エチル(主鎖)、スチレン・アクリル酸ステアリル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(側鎖)共重合体:0.2重量部と、〔C-1〕シリコーン:0.7重量部と、〔C-2〕メタクリル酸メチル:0.3重量部(〔C-1〕が主鎖、〔C-2〕が側鎖の共重合体(シリコーン:70重量%、アクリル樹脂:30重量%):1重量部)とを(配合量換算〔F-1〕:100重量部、〔B-1〕:0.19重量部、〔B-2~B-4〕:0.75重量部、〔C-1〕:0.66重量部、〔C-2〕:0.28重量部)ワイヤロープ被覆時にミキサーで予め混合し、押出機による混練を加え、外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
【0077】
実施例13(〔F-1〕全低摩擦樹脂組成物に対して、〔E〕シリコーンを0.69重量%配合)
〔F-1〕熱可塑性ポリエステルエラストマーとして、ポリエステルエラストマーブロック共重合体である東レ・デュポン社製ハイトレルTM7277:98.5重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルTM21UV(ハイトレル専用耐候剤マスターバッチ)5重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルマスターバッチPER(F)オレンジ(ハイトレル専用オレンジ色着色剤マスターバッチ)3重量部と、〔E〕東レ・ダウコーニング社製ポリエステルエラストマー専用シリコーンマスターバッチBY27-010(シリコーン50重量%+〔F-1〕ポリエステルエラストマー50重量%):1.5重量部(〔F-1〕として合計107.25重量部)を含有させた低摩擦樹脂組成物を(配合量換算〔F-1〕:100重量部、〔E〕シリコーン:0.7重量部)ワイヤロープ被覆時にミキサーで予め混合し、押出機による混練を加え、外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
【0078】
比較例1(〔F-1〕全低摩擦樹脂組成物に対して、〔E〕シリコーンを1.39重量%配合)
〔F-1〕熱可塑性ポリエステルエラストマーとして、ポリエステルエラストマーブロック共重合体である東レ・デュポン社製ハイトレルTM7277:97重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルTM21UV(ハイトレル専用耐候剤マスターバッチ)5重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルマスターバッチPER(F)オレンジ(ハイトレル専用オレンジ色着色剤マスターバッチ)3重量部と、〔E〕東レ・ダウコーニング社製ポリエステルエラストマー専用シリコーンマスターバッチBY27-010(シリコーン50重量%+〔F-1〕ポリエステルエラストマー50重量%):3重量部(〔F-1〕として合計106.5重量部)を含有させた低摩擦樹脂組成物を(配合量換算〔F-1〕:100重量部、〔E〕シリコーン:1.41重量部)ワイヤロープ被覆時にミキサーで予め混合し、押出機による混練を加え、外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
【0079】
比較例2(〔F-1〕全低摩擦樹脂組成物に対して、〔E〕シリコーンを4.63重量%配合)
〔F-1〕熱可塑性ポリエステルエラストマーとして、ポリエステルエラストマーブロック共重合体である東レ・デュポン社製ハイトレルTM7277:90重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルTM21UV(ハイトレル専用耐候剤マスターバッチ)5重量部と、東レ・デュポン社製ハイトレルマスターバッチPER(F)オレンジ(ハイトレル専用オレンジ色着色剤マスターバッチ)3重量部と、〔E〕東レ・ダウコーニング社製ポリエステルエラストマー専用シリコーンマスターバッチBY27-010(シリコーン50重量%+〔F-1〕ポリエステルエラストマー50重量%):10重量部(〔F-1〕として合計103重量部)を含有させた低摩擦樹脂組成物を(配合量換算〔F-1〕:100重量部、〔E〕シリコーン:4.85重量部)ワイヤロープ被覆時にミキサーで予め混合し、押出機による混練を加え、外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
【0080】
基準例2(〔F-2〕熱可塑性ポリアミドエラストマーのみ)
〔F-2〕熱可塑性ポリアミドエラストマーとして、ポリアミド12エラストマーである宇部興産社製ウベスタTMXPA9068F1:100重量部を押出機による混練を加え、外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
【0081】
実施例14(〔F-2〕全低摩擦樹脂組成物に対して、〔B〕脂肪酸アミド混合物を2重量%、脂肪酸アミドとして0.4重量%配合)
〔F-2〕熱可塑性ポリアミドエラストマーとして、ポリアミド12エラストマーである宇部興産社製ウベスタTMXPA9068F1:98重量部と、〔B-1〕エルカ酸アミド:0.4重量部と、〔B-2〕エチレン・プロピレン共重合体ゴム:0.2重量部、〔B-3〕エチレン・アクリル酸エチル共重合体:1重量部、〔B-4〕エチレン・アクリル酸エチル(主鎖)、スチレン・アクリル酸ステアリル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(側鎖)共重合体:0.4重量部とを(配合量換算〔F-2〕:100重量部、〔B-1〕:0.41重量部、〔B-2~B-4〕:1.63重量部)ワイヤロープ被覆時にミキサーで予め混合し、押出機による混練を加え、外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
【0082】
基準例3(〔G-1〕熱可塑性ポリアミド樹脂のみ)
〔G-1〕熱可塑性ポリアミド樹脂として、ポリアミド12である宇部興産社製ウベスタTM3035Uを押出機による混練を加え、外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
実施例15(〔G-1〕全低摩擦樹脂組成物に対して、〔B〕脂肪酸アミド混合物を2重量%、脂肪酸アミドとして0.4重量%配合)
〔G-1〕熱可塑性ポリアミド樹脂として、ポリアミド12である宇部興産社製ウベスタTM3035U:98重量部と、〔B-1〕エルカ酸アミド:0.4重量部と、〔B-2〕エチレン・プロピレン共重合体ゴム:0.2重量部、〔B-3〕エチレン・アクリル酸エチル共重合体:1重量部、〔B-4〕エチレン・アクリル酸エチル(主鎖)、スチレン・アクリル酸ステアリル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(側鎖)共重合体:0.4重量部とを(配合量換算〔G-1〕:100重量部、〔B-1〕:0.41重量部、〔B-2~B-4〕:1.63重量部)ワイヤロープ被覆時にミキサーで予め混合し、押出機による混練を加え、外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
【0083】
参考例1(〔G-2〕可塑剤配合柔軟熱可塑性ポリアミド樹脂のみ)
〔G-2〕可塑剤配合柔軟熱可塑性ポリアミド樹脂として、可塑剤配合柔軟ポリアミド12である宇部興産社製ウベスタTM3030JFX3を押出機による混練を加え、外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
【0084】
参考例2(〔G-2〕全樹脂組成物に対して、〔B〕脂肪酸アミド混合物を1.96重量%、脂肪酸アミドとして0.39重量%配合)
〔G-2〕可塑剤配合柔軟熱可塑性ポリアミド樹脂として、可塑剤配合柔軟ポリアミド12である宇部興産社製ウベスタTM3030JFX3:100重量部と、〔B-1〕エルカ酸アミド:0.4重量部と、〔B-2〕エチレン・プロピレン共重合体ゴム:0.2重量部、〔B-3〕エチレン・アクリル酸エチル共重合体:1重量部、〔B-4〕エチレン・アクリル酸エチル(主鎖)、スチレン・アクリル酸ステアリル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(側鎖)共重合体:0.4重量部とを(配合量換算〔G-2〕:100重量部、〔B-1〕:0.4重量部、〔B-2~B-4〕:1.6重量部)ワイヤロープ被覆時にミキサーで予め混合し、押出機による混練を加え、外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープに、外径2.8mmになるように被覆した。
【0085】
参考例3(ワイヤロープ芯線のみ、屈曲耐久性試験(芯線)にのみ供試)
外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープをワイヤロープ撚り付け油に24時間浸漬後、余分な油を拭き取り裸のまま屈曲耐久性試験(芯線)に使用した。
【0086】
参考例4(PTFEフィルムのみ、摩擦係数測定試験にのみ供試)
ニチアス社製PTFEフィルム、ナフロンテープ9001(フィルム厚み:0.1mm)をそのまま摩擦係数測定試験に使用した。
【0087】
参考例5(ワイヤロープ芯線のみ、屈曲耐久性試験(芯線)にのみ供試)
外径1.5mmの7×7構成亜鉛めっき被覆硬鋼線製ワイヤロープを〔A〕エルカ酸アミド:2重量部を配合した撚り付け油に24時間浸漬後、余分な油を拭き取り裸のまま屈曲耐久性試験(芯線)に使用した。
【0088】
試験例
(1)摩擦係数測定試験〔X〕
後述する相手材より十分に広い面積の被覆樹脂組成物を平板状に成形したもの、又はワイヤロープに被覆した樹脂被覆ワイヤロープを裁断して密接して横に並べ、相手材としてSUS304製JIS平座金、外径22mm、内径10.5mm、厚さ1.6mm、実測重量2.95gの打ち抜き上面(エッジの丸い面)を接触させ、傾斜させて行き、相手材が滑り出した角度における正接値を摩擦係数測定値とした。
(2)屈曲耐久性試験(芯線)〔Y〕
図1に示すように、U溝径21mm、溝半径2.5mmのプーリーを用いて31kgの荷重を負荷し、ストローク70mm、繰り返し速度150往復/minで屈曲耐久性試験を実施し、芯線が破断した時点での回数を確認した。なお、回数上限を48時間稼働、432000回とした。
(3)屈曲耐久性試験(被覆変形)〔Z〕
図2に示すように、U溝径22.2mm、溝半径2.5mmのプーリー3個を用いて50kgの荷重を負荷し、ストローク140mm、繰り返し速度60往復/minで300回(往復)屈曲試験を実施してストローク中央近傍(ストローク両端より70mm近傍)の試験前後の被覆樹脂外径を測定し(断面方向において最大値と最小値を計測)、次式を用いて被覆樹脂変形度を算出して被覆樹脂の変形耐久性を確認した。
【0089】
【数1】
【0090】
(4)耐候性試験
スガ試験株式会社製メタリングバーチカルウェザーメーターMV3000を用いて、表1に示す条件で樹脂被覆ワイヤロープの耐候性試験を実施し、試験後、屈曲耐久性試験(芯線)〔Y〕を実施した。なお、耐候性試験機による照射紫外線を直接受ける部分は、樹脂被覆ワイヤロープ断面方向に対して紫外線ランプ側半面である。
【0091】
【表1】
【0092】
(5)効果・考察
試験結果を表2及び表3に示す。また、屈曲耐久性試験(芯線)において、「48時間稼働、432000回」の回数上限を設けず、最終的に破断した回数を表4に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
〔E〕シリコーンは、〔E〕シリコーンを極端に超高分子量化したシリコーン生ゴム(シリコーンゴム)の混錬性を向上させる目的で可塑剤として、また〔G〕熱可塑性樹脂の流動性を向上させる目的で流動性改良剤として一般的に使用されているが、〔F〕熱可塑性エラストマーに配合し、そのシリコーンの配合量が1重量%以下であれば、内部滑性効果(可塑化効果)が抑制され、被覆樹脂の屈曲耐久性が確保されることが確認された(実施例13)。
しかしながら、低い摩擦係数を追求し、〔E〕シリコーンの配合量を1重量%超とした場合には、前記内部滑性効果が大きく発現し、被覆樹脂の屈曲耐久性が劣るようになり、かつ芯線の屈曲耐久性も低下することが確認された(比較例1及び2)。
【0097】
〔A〕脂肪酸アミド、〔B〕脂肪酸アミド混合物、〔C〕シリコーン含有共重合体、又は〔D〕脂肪酸アミド又は脂肪酸アミド混合物とシリコーン含有共重合体との混合物を〔G〕熱可塑性樹脂又は〔F〕熱可塑性エラストマーに配合した場合には、〔E〕シリコーン配合では達成困難である、より低い摩擦係数を、被覆樹脂の屈曲耐久性、芯線の屈曲耐久性を確保した上で達成することが可能となった(実施例1~12及び14、15)。
〔A〕脂肪酸アミド又は〔B〕脂肪酸アミド混合物を用いた場合に関しては、〔B〕脂肪酸アミド混合物を用いた場合には〔A〕脂肪酸アミドを用いた場合と比較して、被覆変形度を抑えることが可能となった(実施例1~3及び5~7)。
〔D〕脂肪酸アミド又は脂肪酸アミド混合物とシリコーン含有共重合体との混合物を用いた場合には、極度に摩擦係数が低下した(実施例12)。
耐候性試験は紫外線と降雨に暴露させる試験であり、樹脂被覆されているワイヤロープに関しても、水分の侵入等によって芯線耐久性に影響を受けることが想定される。
〔B〕脂肪酸アミド混合物を配合した実施例3は、紫外線と降雨に対してワイヤロープ芯線を保護し、芯線の屈曲耐久性低下割合を大幅に改善することが確認された(表3)。
【0098】
可塑剤が配合された熱可塑性樹脂〔G-2〕(参考例1)は、柔軟性の低い(曲げ及び引張弾性率が大きく固い)熱可塑性樹脂〔G-1〕の柔軟性(柔らかさ)を大きく向上させる目的で、〔G-1〕に相当量の可塑剤が配合されている熱可塑性樹脂である(参考例2)。
【0099】
可塑剤が配合された熱可塑性樹脂の場合〔G-2〕(参考例1)には、相当量配合されている可塑剤が、被覆樹脂表面において減摩剤成分を対象物に効果的に接触させることを妨害し、摩擦係数を大きく低下させることはできなかったと推測されるが、被覆樹脂内部においては、柔軟性を確保しながら可塑剤の内部滑性効果を抑制し、高荷重における被覆変形性をある程度改善できること確認した(参考例2)。これは、樹脂組成物表面の低摩擦化及び絶対的被覆変形度を抑える効果は達成できないが、〔B〕脂肪酸アミド混合物における混合物による被覆変形度をある程度抑える効果と、ワイヤロープ芯線の屈曲耐久性については機能確保を発揮しているものと考えられる。
【0100】
〔A〕脂肪酸アミドを直接ワイヤロープ撚り付け油に配合すると潤滑油本来の潤滑機能が低下しワイヤロープ芯線の屈曲耐久性が低下したが(参考例3及び5)、〔A〕脂肪酸アミド等を被覆樹脂に配合するとワイヤロープ芯線の屈曲耐久性が向上することが確認された(表4)。
図1
図2