(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172061
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ワイパ機構
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
B41J2/165 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083615
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】矢森 雄大
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EC56
2C056FA13
2C056HA24
2C056JB02
2C056JB03
2C056JB04
2C056JB07
(57)【要約】
【課題】ワイパ機構において、ワイプ後のインクジェットヘッドの側面にインクが残留するのを抑制する。
【解決手段】ワイパ機構1は、インクジェットヘッド111のノズル列111bが設けられたヘッド面111aをワイプ方向D1にワイプする第1ワイパ11及び第2ワイパ12を備える。第1ワイパ11は、第2ワイパ12よりもワイプ方向D1における下流側において、ヘッド面111aをワイプする。第1ワイパ11の先端11aは、ワイプ方向D1に直交するヘッド面111aの幅方向D2における両端に切り欠き部分11bを有し、第2ワイパ12の先端12aよりも幅方向D2における幅が狭い。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドのノズル列が設けられたヘッド面をワイプ方向にワイプする第1ワイパ及び第2ワイパを備え、
前記第1ワイパは、前記第2ワイパよりも前記ワイプ方向における下流側において、前記ヘッド面をワイプし、
前記第1ワイパの先端は、前記ワイプ方向に直交する前記ヘッド面の幅方向における両端に切り欠き部分を有し、前記第2ワイパの先端よりも前記幅方向における幅が狭い
ことを特徴とするワイパ機構。
【請求項2】
前記第1ワイパの先端は、前記幅方向における幅が前記ヘッド面よりも狭く、当該ヘッド面のうち前記ノズル列を含む一部をワイプする
ことを特徴とする請求項1記載のワイパ機構。
【請求項3】
前記第1ワイパと前記第2ワイパとは、ワイプ時において互いに接触しない
ことを特徴とする請求項1記載のワイパ機構。
【請求項4】
前記第1ワイパは、ワイプ時において、前記ヘッド面に接触不可能な長さで設けられているか又は前記第2ワイパよりも前記ヘッド面に対する当接圧が弱い
ことを特徴とする請求項1記載のワイパ機構。
【請求項5】
前記ヘッド面のワイプに伴う弾性変形時において、
前記第1ワイパと前記第2ワイパとが接触せず、且つ、前記第1ワイパの少なくとも前記先端は、ワイプに伴う弾性変形前の前記第2ワイパと同じ位置、又は、当該位置とワイプに伴って弾性変形したときの前記第2ワイパとの間に位置する
ことを特徴とする請求項1記載のワイパ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドのノズル列が設けられたヘッド面をワイプするワイパ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドのノズル列が設けられたヘッド面(例えば底面)をワイプするワイパ機構を備えるインクジェット印刷装置が知られている。このようなインクジェット印刷装置において、1枚目のワイパが、ヘッド面との間に表面張力でインクを吸着する隙間を隔てて配置され、2枚目のワイパが、インク液滴等を擦り取るようにヘッド面と隙間なく配置されたインクジェット印刷装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイパ機構において、例えばゴム製ブレードで成る単一のワイパのみによってヘッド面をワイプする場合、ヘッド面に対する当接圧が強いと、ヘッド面のクリーニング性能は向上するが、ヘッド面の耐久性が低下する。
【0005】
そこで、上述のように複数のワイパを用いることによって、クリーニング性能向上及び耐久性維持の両立を図ることが考えられる。但し、上述のように1枚目のワイパをインクジェットヘッドのヘッド面との間に表面張力でインク液滴等を吸着するわずかな隙間を隔てて配置するのは困難であり、また、隙間の大きさのバラつきに起因する効果(吸着性能等)のバラつきが大きい。
【0006】
ところで、単一のワイパのみを用いる場合も、複数のワイパを用いる場合も、インクジェットヘッドの両端からはみ出したワイパ上部から、インクジェットヘッドの側面にインクが広がる(膨らむ)ことで、インクジェットヘッドの側面にインクが付着する。このようにインクジェットヘッドの側面に付着するインクは、ワイプされたインク量が多いほど増加する。また、ワイパがワイプ後にインクジェットヘッドを抜ける際にも、ワイパとインクジェットヘッドとの間に溜まったインクが液滴となって飛散することでも、インクジェットヘッドの側面(ワイプ方向の下流側の面)にインクが付着する。インクジェットヘッドの側面にインクが残留すると、用紙の搬送の気流や振動などによってインクがヘッド面に流入することで、吐出不良が生じたり或いは搬送される用紙にインクが付着したりする。
【0007】
本発明の目的は、ワイプ後のインクジェットヘッドの側面にインクが残留するのを抑制することができるワイパ機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様では、ワイパ機構は、インクジェットヘッドのノズル列が設けられたヘッド面をワイプ方向にワイプする第1ワイパ及び第2ワイパを備え、前記第1ワイパは、前記第2ワイパよりも前記ワイプ方向における下流側において、前記ヘッド面をワイプし、前記第1ワイパの先端は、前記ワイプ方向に直交する前記ヘッド面の幅方向における両端に切り欠き部分を有し、前記第2ワイパの先端よりも前記幅方向における幅が狭い。
【発明の効果】
【0009】
前記態様によれば、ワイプ後のインクジェットヘッドの側面にインクが残留するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施の形態におけるインクジェット印刷装置の内部構造を示す正面図である。
【
図2】一実施の形態におけるインクジェット印刷装置の主要な制御構成を示す図である。
【
図3】一実施の形態に係る、ワイプ位置にあるワイパ機構を示す正面図である。
【
図4】一実施の形態に係るワイパ機構を示す平面図である。
【
図6】一実施の形態における第1ワイパ及び第2ワイパを示す正面図である。
【
図7】一実施の形態における第1ワイパ及び第2ワイパの位置関係を説明するためのインクジェットヘッドの底面図である。
【
図8】一実施の形態におけるワイプ動作を説明するためのワイパユニットの右側面図である。
【
図9】一実施の形態におけるワイプ動作を説明するためのワイパユニットの斜視図である。
【
図10】一実施の形態の第1変形例における第1ワイパ及び第2ワイパを示す正面図である。
【
図11】一実施の形態の第2変形例における第1ワイパ及び第2ワイパを示す正面図である。
【
図12】一実施の形態の第3変形例における第1ワイパ及び第2ワイパを示す正面図である。
【
図13】他の実施の形態におけるワイプ動作を説明するためのワイパユニットの右側面図である。
【
図14】他の実施の形態におけるワイプ時における第1ワイパ及び第2ワイパの拡大右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係るワイパ機構について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、一実施の形態におけるインクジェット印刷装置100の内部構造を示す正面図である。
【0013】
図2は、インクジェット印刷装置100の主要な制御構成を示す図である。
【0014】
なお、
図1及び後述する
図3~
図14に示す前後、上下、及び左右の各方向は、媒体の一例である用紙Pの印刷時における搬送方向を右方向、第1ワイパ11及び第2ワイパ12のワイプ方向D1を前方向とした場合の一例にすぎないが、例えば、前後方向及び左右方向が水平方向であり、上下方向が鉛直方向である。
【0015】
図1に示すように、インクジェット印刷装置100は、ワイパ機構1と、印刷部110と、吸着搬送部120と、外部給紙部130と、内部給紙部141~143と、搬送ローラ対151~155と、レジストローラ対156とを備える。また、
図2に示すように、インクジェット印刷装置100は、更に、制御部161と、記憶部162と、操作パネル部163と、スキャナ164と、排紙部165とを備える。なお、
図1には、外部給紙部130及び内部給紙部141~143から印刷部110へ続く搬送経路を太い実線で示す。
【0016】
図1に示す印刷部110は、複数のインクジェットヘッド111を有する。
図4に示すように、用紙Pの搬送方向(右方向)に直交する主走査方向(前後方向)に沿って千鳥状に並べられた6個のインクジェットヘッド111が2組、計12個配置されている。すなわち、前後方向に沿って配列された1組6個のインクジェットヘッド111は、それぞれ左右方向における位置を交互にずらして配置されている。一例ではあるが、一方の組の6個のインクジェットヘッド111は、2色(例えば、ブラック(K)及びシアン(C))のインクを吐出し、他方の組の6個のインクジェットヘッド111は、上記一方の組とは異なる色の2色(例えば、マゼンタ(M)及びイエロー(Y))のインクを吐出する。
【0017】
図1に示すように、吸着搬送部120は、印刷部110に対向するように配置されている。吸着搬送部120は、例えば用紙Pを吸着しながら、搬送ベルトによって用紙Pを搬送する。なお、吸着搬送部120は、
図1に示す印刷位置と、この印刷位置よりも下方の
図3に示すワイプ位置と、このワイプ位置よりも下方の図示しない待機位置とに移動可能であるとよい。また、ワイパ機構1は、
図3に示すようにワイプ時において印刷部110の下方に位置し、
図1に示すように印刷時において印刷部110の下方から退避した位置に位置する。
【0018】
外部給紙部130及び内部給紙部141~143は、給紙トレイ131,141a,142a,143aと、スクレーパローラ132,141b,142b,143bと、ピックアップローラ133,141c,142c,143cとを有する。
【0019】
給紙トレイ131,141a,142a,143aには、複数の用紙Pが積載される。
【0020】
スクレーパローラ132,141b,142b,143bは、給紙トレイ131,141a,142a,143aに積載された複数の用紙Pのうち最上位に位置する用紙Pを繰り出して搬送する繰り出しローラである。
【0021】
ピックアップローラ133,141c,142c,143cは、スクレーパローラ132,141b,142b,143bによって繰り出された用紙Pを搬送する。
【0022】
搬送ローラ対151~155は、内部給紙部141~143からレジストローラ対156までの間の搬送経路に配置されている。
【0023】
レジストローラ対156には、外部給紙部130及び内部給紙部141~143から搬送される用紙Pが突き当てられる。これにより、用紙Pの斜行が修正される。
【0024】
図2に示す制御部161は、インクジェット印刷装置100全体の動作を制御する演算処理装置として機能するプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit)を有し、ワイパ駆動部40、印刷部110、吸着搬送部120等のインクジェット印刷装置100の各部の動作を制御する。
【0025】
記憶部162は、例えば、所定の制御プログラムが予め記録されている読み出し専用半導体メモリであるROM(Read Only Memory)、プロセッサが各種の制御プログラムを実行する際に必要に応じて作業用記憶領域として使用される随時書き込み読み出し可能な半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)、ハードディスク装置などである。
【0026】
操作パネル部163は、例えば、各種操作を行うための操作キー、タッチパネル、各種情報を表示するディスプレイなどを有することで、インクジェット印刷装置100の入力部及び表示部の一例として機能する。
【0027】
スキャナ164は、原稿から画像データを読み取る。
【0028】
排紙部165は、
図1には図示しないが、印刷部110によって印刷が行われた用紙Pが積載される排紙トレイと、この排紙トレイに用紙Pを排出する排出ローラとを有する。
【0029】
図3は、ワイプ位置にあるワイパ機構1を示す正面図である。
【0030】
【0031】
【0032】
図6は、第1ワイパ11及び第2ワイパ12を示す正面図である。
【0033】
図7は、第1ワイパ11及び第2ワイパ12の位置関係を説明するためのインクジェットヘッド111の底面図である。
【0034】
図3~
図7及び後述する
図8~
図14に示す前後、上下、及び左右の各方向は、ワイパ機構1が
図3に示すように印刷部110と吸着搬送部120との間にある状態の方向である。
【0035】
図4に示すように、ワイパ機構1は、ワイパユニット10と、2つのガイド部20と、インク受け部30と、ワイパ駆動部40とを備える。
【0036】
ワイパユニット10は、例えば4つの第1ワイパ11と、例えば4つの第2ワイパ12と、これらの第1ワイパ11及び第2ワイパ12を支持する単一のワイパ支持部材13とを有する。
【0037】
図5に示す第1ワイパ11及び第2ワイパ12は、例えば、ゴム製の弾性体からなるワイパブレードである。第1ワイパ11は、第2ワイパ12よりもワイプ方向D1における下流側に設けられている。すなわち、第1ワイパ11は、第2ワイパ12よりも先にヘッド面111aをワイプする。なお、後述する
図8に示すように、第1ワイパ11は、ヘッド面111aに当接しない高さで設けられているが、ヘッド面111aのパージインクPIを掻き取ることができるため、ヘッド面111aをワイプするといえる。
【0038】
第1ワイパ11及び第2ワイパ12は、
図7に示すインクジェットヘッド111のインクを吐出するノズル列111bが設けられたヘッド面111a(例えば底面)を、用紙Pの搬送方向(右方向)とは直交するワイプ方向D1(前方向)にワイプする。なお、
図7には、第1ワイパ11及び第2ワイパ12を2点鎖線(想像線)で示す。
【0039】
例えば、ヘッド面111aは、図示はしないが、ポリイミド樹脂によって形成されノズル列111bが設けられたノズル面と、このノズル面を保護する保護プレートの底面とを含む。なお、ヘッド面111aは、撥インク膜がコーティングされているとよい。
【0040】
上述のように6個ずつ2組のインクジェットヘッド111が千鳥状に配置されていることによって、インクジェットヘッド111は、
図4に示すように左右方向に計4列に並んでいる。そのため、第1ワイパ11及び第2ワイパ12は、1列(3個)のインクジェットヘッド111の
図7に示すヘッド面111aをワイプするために4つずつ配置されている。
【0041】
図5に示すように、第1ワイパ11は及び第2ワイパ12は、ワイプ前の状態で、ワイプ方向D1にワイパ間隔L3の間隔を隔てて設けられ、ワイパ支持部材13からヘッド面111aに直交する上方向に延びる。ワイプ前における第1ワイパ11の上端である先端11a(
図6参照)は、ヘッド面111aよりも下方に位置する。そのため、第1ワイパ11は、ワイプ時において、ヘッド面111aに接触不可能な長さで設けられているといえ、ヘッド面111aに非接触(
図8参照)となる。一方、第2ワイパ12の上端である先端12aは、ヘッド面111aよりも上方に位置する。これにより、第2ワイパ12は、ワイプ時に湾曲した状態(
図8参照)でヘッド面111aをワイプする。
【0042】
図6に示すように、第1ワイパ11の先端11aは、ワイプ方向D1に直交するヘッド面111aの幅方向D2における両端に切り欠き部分11bを有する。この切り欠き部分11bは、例えば、第1ワイパ11の先端11aと側面との間の角を斜めにカットすることにより形成されている。切り欠き部分11bについて、切り欠き幅をL1、切り欠き高さをL2とする。なお、第1ワイパ11は、切り欠き部分11bにおいて、この切り欠き部分11bの下部よりも幅方向D2における幅が狭くなっている。
【0043】
第1ワイパ11の先端11aの幅方向Dにおける幅は、第2ワイパ12の先端12aの幅方向D2における幅よりも狭い。なお、
図6において、第1ワイパ11の切り欠き部分11bよりも下部における幅方向D2の幅は、第2ワイパ12の幅方向Dにおける幅と同一であるが、異なっていてもよい。
【0044】
図7に示すように、第1ワイパ11の先端11aは、ヘッド面111aのワイプ時に、幅方向D2における両端から幅方向D2の内側に間隔Gを隔てて位置し、ヘッド面111aのうちノズル列111bを含む一部のみをワイプする。一方、第1ワイパ11の切り欠き部分11bよりも下部及び第2ワイパ12は、ヘッド面111aよりも幅方向D2に大きく、第2ワイパ12は、ヘッド面111aの幅方向D2における全体をワイプする。なお、第1ワイパ11の先端11aは、ヘッド面111aのワイプ時に、ヘッド面111aの幅方向D2における一端のみから幅方向D2の内側に間隔Gを隔てて位置し、ヘッド面111aの片側の端部をワイプしてもよいが、上述のようにヘッド面111aの幅方向D2における両端から幅方向D2の内側に間隔Gを隔てて位置していることが望ましい。また、第2ワイパ12は、ヘッド面111aの幅方向D2における全体をワイプしなくてもよいが、ヘッド面111aの幅方向D2における全体をワイプすることが望ましい。
【0045】
ここで、上述の
図6に示す切り欠き幅L1は、上述のように第1ワイパ11の先端11aが第2ワイパ12の先端12aよりも幅が狭くなるように設定されるとよいが、切り欠き幅L1が長すぎると、第1ワイパ11によってヘッド面111aをワイプできる領域が狭くなってしまう。この場合、第2ワイパ12によってヘッド面111aをワイプするときのインク量が増えてしまう。
【0046】
次に、上述の
図6に示す切り欠き高さL2は、0よりも大きければ効果を発揮するが、後述するように第1ワイパ11の切り欠き部分11bと第2ワイパ12との間で働くインクの表面張力によって、切り欠き部分11bと第2ワイパ12との間でインクを保持できる程度の長すぎない寸法であるとよい。
【0047】
次に、上述の
図5に示すワイパ間隔L3は、0よりも大きければ効果を発揮するが、この寸法が大きくなるほどインクの表面張力で切り欠き部分11bと第2ワイパ12との間でインクを保持できずに崩れやすくなる。そのため、ワイパ間隔L3は、第1ワイパ11及び第2ワイパ12のワイプ速度や振動などに耐えてインクを保持できる程度の間隔であるとよい。
【0048】
図4に示すように、ワイパ支持部材13には、上述の4つの第1ワイパ11及び4つの第2ワイパ12が一体に設けられている。なお、第1ワイパ11及び第2ワイパ12は、ワイパ支持部材13とは別体に設けられ、ワイパ支持部材13に取り付けられていてもよい。
【0049】
図4及び
図5に示すように、ワイパ支持部材13には、例えば、左右一対のネジ孔13a,13aが前後方向に貫通して設けられている。
【0050】
2つのガイド部20のそれぞれは、前後方向に延びる例えばネジ軸であり、ワイパ支持部材13のネジ孔13a,13aを貫通するように配置されている。そのため、ガイド部20が回転することによって、ワイパユニット10が前後方向であるワイプ方向D1に移動可能となる。
【0051】
インク受け部30は、インクジェットヘッド111から紙粉や埃などとともに落下する
図8に示すパージインクPIを受ける。
【0052】
インク受け部30内のインクは、ワイパ機構1が
図1に示す退避位置において傾くことにより、
図4に示すインク受け部30の排出部30bから、図示はしないが廃液経路を経て廃液収容部へ流れるとよい。インク受け部30は、例えば、上方に開口する直方体形状を呈する。そのため、インク受け部30の内部底面がインク受け面30aとなる。なお、インク受け部30は、ガイド部20の前端を回転可能に支持する。
【0053】
ワイパ駆動部40は、例えば2つのモータ41を有する。
【0054】
モータ41は、ワイパユニット10(第1ワイパ11及び第2ワイパ12)を駆動する駆動手段(アクチュエータ)の一例であり、例えば、ガイド部20に接着によって結合されている。モータ41は、ガイド部20を回転させることによって、上述のようにワイパユニット10を前後に移動させる。なお、単一のモータ41が、例えば駆動ベルトを回転させることによって、この駆動ベルト内のプーリを介して2つのガイド部20を回転させてもよい。或いは、単一のモータ41及び単一のガイド部20のみが配置され、この単一のガイド部20がワイパユニット10を前後方向に移動させてもよい。
【0055】
次に、第1ワイパ11及び第2ワイパ12を用いたワイプ動作について説明する。なお、このワイプ動作は、例えば、所定の印刷枚数ごと若しくは経過時間ごとに、又は
図2に示す操作パネル部163におけるユーザの操作に基づいて、行われるとよい。
【0056】
図8及び
図9は、ワイプ動作を説明するためのワイパユニット10の右側面図及び斜視図である。
【0057】
まず、第1ワイパ11及び第2ワイパ12がインクジェットヘッド111のヘッド面111aをワイプする前に、
図3に示すように、吸着搬送部120が
図1に示す印刷位置よりも下方に移動し、ワイパ機構1が印刷部110と吸着搬送部120との間に移動する。また、インクジェットヘッド111は、ノズル列111bから
図8に示すようにパージインクPIを吐出する。これにより、ノズル列111bから吐出されたパージインクPIが複数箇所に集まって点在する。
【0058】
その後、第1ワイパ11及び第2ワイパ12がワイプ方向D1に移動する。これにより、第1ワイパ11及び第2ワイパ12によってワイプされたパージインクPI等(例えば、パージインクPI、もともとヘッド面111aに付着していたインク、これらのインクに含まれる紙粉や埃など)は、第1ワイパ11及び第2ワイパ12を伝って、上述の
図4及び
図5に示すインク受け部30のインク受け面30aに重力方向に落下する。なお、
図8及び
図9では第1ワイパ11によってワイプされた後のパージインクPIの図示は省略する。
【0059】
第1ワイパ11と第2ワイパ12とは、ワイプ時において互いに接触しない。但し、第1ワイパ11と第2ワイパ12とは、
図9に示すように、第1ワイパ11の切り欠き部分11bと第2ワイパ12の幅方向D2における端部との間でパージインクPIの表面張力が働いてパージインクPIが保持されるように、ワイプ時において接近していることが望ましい。
【0060】
ここで、切り欠き部分11bが設けられることによって、第2ワイパ12の幅方向D2における両端部によってワイプされたパージインクPIが、表面張力によって、ワイプ方向D1から第1ワイパ11の幅方向D2における中心側及び下方側へ傾斜した方向へ、切り欠き部分11bに向かって引っ張られる(少し移動する)。これにより、第2ワイパ12の幅方向D2における両端部付近のパージインクPIの量が減る。
【0061】
第2ワイパ12によってワイプされたパージインクPIが第1ワイパ11に接触すると、パージインクPIは、第1ワイパ11に濡れ広がろうとする力(第2ワイパ12から第1ワイパ11へ移動する方向(ワイプ方向D1)の力)と第2ワイパ12に留まろうとする力(第1ワイパ11から第2ワイパ12へ移動する方向の力)が釣り合う場所まで移動する(重心が移動して形状が変わる)。
【0062】
上述のように、パージインクPIが第2ワイパ12から第1ワイパ11に向かってパージインクPIの表面張力で動くが、この表面張力とは、液体と大気との界面に発生する力であり、液体の表面積を減じようとする、すなわち液体が真球になろうとする方向に力が働く。第2ワイパ12の幅方向D2における端部付近のパージインクPIが、第1ワイパ11に少し移動することで出来るだけ真球に近くなろうとするためである。
【0063】
ところで、上述のとおり、
図7に示すように、第1ワイパ11の先端11aは、ヘッド面111aのワイプ時に、ヘッド面111aの幅方向D2における両端から幅方向D2の内側に間隔Gを隔てて位置する。そのため、第1ワイパ11によってワイプされたパージインクPIは、
図9に示すようにインクジェットヘッド111の側面に付着しにくい。特に、第1ワイパ11の切り欠き部分11bと第2ワイパ12の幅方向D2における端部との間にパージインクPIの表面張力が働いている場合には、より一層、パージインクPIがインクジェットヘッド111の側面に付着しにくい。
【0064】
上述のように、第1ワイパ11は、ワイプ時においてヘッド面111aに接触不可能な長さで設けられている。そのため、第1ワイパ11によってワイプされた後、パージインクPIは、ヘッド面111aに薄い液膜として残る。
【0065】
その後、薄い液膜となったパージインクPIは、第2ワイパ12によってワイプされる。第2ワイパ12は、ヘッド面111aの幅方向D2における全体をワイプするが、一部のパージインクPIが既に第1ワイパ11によってワイプされているため、インクジェットヘッド111の側面にパージインクPIが付着しにくい。なお、第2ワイパ12は、第1ワイパ11によってワイプされないヘッド面111aの幅方向D2の端部に残るパージインクPI等を、第2ワイパ12の幅方向D2における端部においてワイプするため、第2ワイパ12の幅方向D2における端部の側面を伝ってパージインクPI等がインク受け部30のインク受け面30aに重力方向に落下しやすい。
【0066】
第1ワイパ11及び第2ワイパ12がすべてのインクジェットヘッド111のヘッド面111aをワイプした後には、インクジェットヘッド111がピエゾ素子を駆動させて各ノズル列111bからインクを吐出させるフラッシング動作により、ノズル列111bでのインクの混色を改善することが可能である。その後、
図3に示す吸着搬送部120が下方に移動し、ワイパ機構1が
図1に示す退避位置に移動する。また、吸着搬送部120は、印刷が行われる場合には印刷部110に近接する位置まで上昇し、印刷が行われない場合には更に下方の待機位置へ移動する。なお、ワイパユニット10(第1ワイパ11及び第2ワイパ12)は、
図1に示すワイパ機構1の退避位置において、次のワイプ動作に備えてワイプ方向D1の上流側に戻っている状態であることが望ましい。
【0067】
図10~
図12は、本実施の形態の第1~第3変形例における第1ワイパ51,61,71及び第2ワイパ12を示す正面図である。
【0068】
図10~
図12に示す第1ワイパ51,61,71は、切り欠き部分51b,61b,71bの形状において、
図6に示す第1ワイパ11と相違する。
【0069】
図10に示す第1ワイパ51の先端51aは、幅方向D2における両端に切り欠き部分51bを有する。この切り欠き部分51bは、第1ワイパ51の先端51aと側面との間の角を矩形状にカットすることにより形成されている。
【0070】
図11に示す第1ワイパ61の先端61aが有する切り欠き部分61bは、第1ワイパ61の先端61aと側面との間の角を窪んだR形状(円弧状)にカットすることにより形成されている。
【0071】
図12に示す第1ワイパ71の先端71aが有する切り欠き部分71bは、第1ワイパ71の先端71aと側面との間の角を膨らんだR形状(円弧状)にカットすることにより形成されている。
【0072】
これらの
図10~
図12に示す第1~第3変形例における第1ワイパ51,61,71のように、切り欠き部分51b,61b,71bの形状は特に制限されない。
【0073】
以上説明した本実施の形態では、ワイパ機構1は、インクジェットヘッド111のノズル列111bが設けられたヘッド面111aをワイプ方向D1にワイプする第1ワイパ11及び第2ワイパ12を備える。第1ワイパ11は、第2ワイパ12よりもワイプ方向D1における下流側において、ヘッド面111aをワイプする。第1ワイパ11の先端11aは、ワイプ方向D1に直交するヘッド面111aの幅方向D2における両端に切り欠き部分11bを有し、第2ワイパ12の先端12aよりも幅方向D2における幅が狭い。
【0074】
このように、第1ワイパ11の先端11aが、切り欠き部分11bを有し、第2ワイパ12の先端12aよりも幅が狭いため、パージインクPIが第1ワイパ11によってワイプされて第1ワイパ11の幅方向D2における両端からインクジェットヘッド111の側面に回り込むのを抑制することができる。また、第1ワイパ11に切り欠き部分11bが設けられることによって、第1ワイパ11の先端11aの幅(切り欠き幅L1)が狭くなったり高さ(切り欠き高さL2)が低くなったりするため、切り欠き部分11bと第2ワイパ12との間にパージインクPIの表面張力が働いてパージインクPIが切り欠き部分11bと第2ワイパ12との間に保持されると、第2ワイパ12の上部からパージインクPIがヘッド面111aの外側に広がったり膨らんだりする体積が増えるのを回避することができる。これによっても、パージインクPIがインクジェットヘッド111の側面に回り込むのを抑制することができる。よって、本実施の形態によれば、ワイプ後のインクジェットヘッド111の側面にインクが残留するのを抑制することができる。これにより、用紙P等の媒体の搬送の気流や振動などによって、インクジェットヘッド111の側面に残留したパージインクPIがヘッド面111aに流入し、吐出不良が生じたり或いは搬送される媒体にインクが付着したりするのを抑制することもできる。また、第2ワイパ12の先端12aは、第1ワイパ11の先端11aよりも幅が広いため、第1ワイパ11によってワイプされないパージインクPIをワイプすることができる。なお、切り欠き部分11bと第2ワイパ12との間にパージインクPIの表面張力が働く場合には、第1ワイパ11及び第2ワイパ12がインクジェットヘッド111をワイプした後にも第1ワイパ11と第2ワイパ12との間にパージインクPIが保持されるため、ワイプ直後にインクジェットヘッド111の側面である前面(ワイプ方向D1における下流側の面)にパージインクPIが残留するのを抑制することもできる。
【0075】
また、本実施の形態では、第1ワイパ11の先端11aは、幅方向D2における幅がヘッド面111aよりも狭く、このヘッド面111aのうちノズル列111bを含む一部をワイプする。
【0076】
このように、第2ワイパ12よりも先にヘッド面111aをワイプする第1ワイパ11がヘッド面111aのうちノズル列111bを含む一部のみをワイプするため、第1ワイパ11によってワイプされたパージインクPIが第1ワイパ11の上部から溢れてインクジェットヘッド111の側面に回り込むのを抑制することができる。したがって、ワイプ後のインクジェットヘッド111の側面にインクが残留するのをより一層抑制することができる。
【0077】
また、本実施の形態では、前記第1ワイパと前記第2ワイパとは、ワイプ時において互いに接触しない。
【0078】
これにより、第1ワイパ11と第2ワイパ12との間にパージインクPIが溜まるため、第2ワイパ12からインクジェットヘッド111の側面にパージインクPIが回り込むのを抑制することができる。また、切り欠き部分11bと第2ワイパ12との間でパージインクPIの表面張力を働かせることができる場合には、第2ワイパ12からインクジェットヘッド111の側面にパージインクPIが回り込むのを、より確実に抑制することができる。また、第1ワイパ11によってワイプされることで薄い液膜となったパージインクPI等が、ヘッド面111aの撥インク性でヘッド面111aの一部に凝集される前に、第2ワイパ12によってワイプされる。そのため、第2ワイパ12がヘッド面111aのパージインクPI等の無い領域をワイプ(空ワイプ)することに起因する、クリーニング性能の低下やヘッド面111aの劣化を防止することができる。また、第1ワイパ11と第2ワイパ12とが接触しないことによって、第1ワイパ11と第2ワイパ12との接触部分の剛性が幅方向D2の一部のみで高まることに起因するクリーニング性能の低下を防止することができるとともに第2ワイパ12によって第1ワイパ11と第2ワイパ12との間のパージインクPI等を確実にワイプすることができる。
【0079】
また、本実施の形態では、第1ワイパ11は、ワイプ時において、ヘッド面111aに接触不可能な長さで設けられている。
【0080】
これにより、第1ワイパ11によってワイプされた後のパージインクPIは、ヘッド面111aに薄い液膜(液残り)として均一に拡がる。そのため、第2ワイパ12によってパージインクPIを確実にワイプすることができる。また、ヘッド面111aの耐久性を維持することができる。
【0081】
図13は、他の実施の形態におけるワイプ動作を説明するためのワイパユニット210の右側面図である。
【0082】
図14は、他の実施の形態におけるワイプ時における第1ワイパ211及び第2ワイパ212の拡大右側面図である。
【0083】
図13に示すワイパユニット210は、
図4に示すワイパユニット10と同様に、例えば4つの第1ワイパ211と、例えば4つの第2ワイパ212と、これらの第1ワイパ211及び第2ワイパ212を支持するワイパ支持部材213とを有する。なお、
図13に示すワイパユニット210は、
図4に示すワイパユニット10と主に第1ワイパ211において相違し、その他は同様にすることができる。そのため、他の実施の形態の詳細な説明は省略する。
【0084】
第1ワイパ211は、
図13に示すワイプ時の状態及び図示しないワイプ前の状態のそれぞれで、ヘッド面111aに直交する上方向に対して、ワイパ支持部材213からワイプ方向D1とは反対方向(後方)に傾いて延びる。一方、第2ワイパ212は、
図13に示すワイプ時の状態では、ヘッド面111aに直交する上方向に対して、ワイパ支持部材213からワイプ方向D1とは反対方向(後方)に傾いて延びるが、図示しないワイプ前の状態では、ワイパ支持部材213からヘッド面111aに直交する上方向に延びる。ワイプ前における第1ワイパ211の先端211a及び第2ワイパ212の先端212aは、ヘッド面111aよりも上方に位置する。これにより、第2ワイパ212も第1ワイパ211と同様に、ワイプ時に湾曲した状態でヘッド面111aをワイプする。そして、第1ワイパ211がワイプ前の状態で傾いて延びるため、第2ワイパ212よりもヘッド面111aに対する当接圧が弱い。このように、第1ワイパ211の当接圧を第2ワイパ212の当接圧よりも弱くするためには、第1ワイパ211と第2ワイパ212とでワイプ前の角度を変更することのほか、例えば、第1ワイパ211のワイプ前の上下方向の長さ(自由長)を第2ワイパ212との比較で長くすること、第1ワイパ211の厚さ(ワイプ方向D1)を第2ワイパ212の厚さよりも薄くすること、第1ワイパ211と第2ワイパ212とで材質を変更することなども考えられる。
【0085】
第1ワイパ211の先端211aは、上述の一実施の形態における説明と同様に、切り欠き部分211bを有する。また、図示しないが、第1ワイパ211の先端211aの幅方向D2(
図4参照)における幅は、第2ワイパ212の先端212aにおける幅よりも狭く、例えば、ヘッド面111aの幅よりも狭い。
【0086】
ワイプ時には、第1ワイパ211及び第2ワイパ212がワイプ方向D1に移動する。これにより、第1ワイパ211及び第2ワイパ212によってワイプされたパージインクPI等(例えば、パージインクPI、もともとヘッド面111aに付着していたインク、これらのインクに含まれる紙粉や埃など)は、第1ワイパ211及び第2ワイパ212を伝って、上述の
図4及び
図5に示すインク受け部30のインク受け面30aに重力方向に落下する。なお、
図13では第1ワイパ211によってワイプされた後のパージインクPIの図示は省略する。また、
図14では、パージインクPIの図示を省略して
図13における第1ワイパ211及び第2ワイパ212を示す。
【0087】
図14に示すように、ヘッド面111aのワイプに伴う弾性変形時において、第1ワイパ211と第2ワイパ212とは接触しない。また、ヘッド面111aのワイプに伴う弾性変形時において、第1ワイパ211の少なくとも先端211aは、ワイプに伴う弾性変形前の第2ワイパ212-1(想像線である2点鎖線で図示)と同じ位置、又は、この位置とワイプに伴って弾性変形したときの第2ワイパ212(変形領域212b)との間に位置するとよい。このように、第1ワイパ211と第2ワイパ212とは、ワイプ時において接近していることが望ましい。
【0088】
一方、ヘッド面111aのワイプ前には、第1ワイパ211の先端211aは、第2ワイパ212の変形領域212bよりもワイプ方向D1の下流側に位置する。なお、第2ワイパ212の変形領域212bは、第2ワイパ212の先端を含む一部であり、第2ワイパ212は、ワイプ前の状態で、ワイパ支持部材213からヘッド面111aに直交する上方向に延びるため、第2ワイパ212の変形領域212bよりもワイパ支持部材213側の根元領域212cは、ヘッド面111aに直交する上方向に延びる。なお、第1ワイパ211の先端211aは、ヘッド面111aのワイプ時において、第2ワイパ212の根元領域212c(又は根元領域212cが延びる方向とヘッド面111aとの交点)とワイプ方向D1の位置が同じか又はワイプ方向D1の上流側に位置する。
【0089】
ここで、上述のように、第1ワイパ211は、第2ワイパ212よりもヘッド面111aに対する当接圧が弱い。そのため、第1ワイパ211によってワイプされた後、パージインクPIは、ヘッド面111aに薄い液膜として残る。
【0090】
その後、薄い液膜となったパージインクPIは、第2ワイパ212によってワイプされる。第2ワイパ212は、ヘッド面111aの幅方向D2における全体をワイプするが、一部のパージインクPIが既に第1ワイパ211によってワイプされているため、インクジェットヘッド111の側面にパージインクPIが付着しにくい。
【0091】
以上説明した他の実施の形態においても、上述の一実施の形態と同様の事項に関しては、同様の効果、すなわち、ワイプ後のインクジェットヘッド111の側面にインクが残留するのを抑制することができるという効果などを得ることができる。
【0092】
また、本実施の形態では、第1ワイパ211は、ワイプ時において、第2ワイパ212よりもヘッド面111aに対する当接圧が弱い。
【0093】
これにより、第1ワイパ211によってワイプされた後のパージインクPIは、ヘッド面111aに薄い液膜(液残り)として均一に拡がる。そのため、第2ワイパ212によってパージインクPIを確実にワイプすることができる。また、第1ワイパ211が薄い液膜のパージインクPIを隔ててヘッド面111aに当接しないことによって、ヘッド面111aの耐久性を維持することができる。
【0094】
また、本実施の形態では、ヘッド面111aのワイプに伴う弾性変形時において、第1ワイパ211と第2ワイパ212とが接触せず、且つ、第1ワイパ211の少なくとも先端211aは、ワイプに伴う弾性変形前の第2ワイパ212と同じ位置、又は、この位置とワイプに伴って弾性変形したときの第2ワイパ212(変形領域212b)との間に位置する。
【0095】
このように、第1ワイパ211の先端211aが第2ワイパ212(変形領域212b)にワイプ時に接近することによって、第1ワイパ211の切り欠き部分211bと第2ワイパ212との間でパージインクPIの表面張力を働かせやすくすることができる。したがって、第2ワイパ212からインクジェットヘッド111の側面にパージインクPIが回り込むのを、より確実に抑制することができる。また、第1ワイパ211によってワイプされることで薄い液膜となったパージインクPI等が、ヘッド面111aの撥インク性でヘッド面111aの一部に凝集される前に、第2ワイパ212によってワイプされる。そのため、第2ワイパ212がヘッド面111aのパージインクPI等の無い領域をワイプ(空ワイプ)することに起因する、クリーニング性能の低下やヘッド面111aの劣化を防止することができる。また、第1ワイパ211と第2ワイパ212とが接触しないことによって、第1ワイパ211と第2ワイパ212との接触部分の剛性が幅方向D2の一部のみで高まることに起因するクリーニング性能の低下を防止することができるとともに第2ワイパ212によって第1ワイパ211と第2ワイパ212との間のパージインクPI等を確実にワイプすることができる。
【0096】
なお、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0097】
[付記1]
インクジェットヘッドのノズル列が設けられたヘッド面をワイプ方向にワイプする第1ワイパ及び第2ワイパを備え、
前記第1ワイパは、前記第2ワイパよりも前記ワイプ方向における下流側において、前記ヘッド面をワイプし、
前記第1ワイパの先端は、前記ワイプ方向に直交する前記ヘッド面の幅方向における両端に切り欠き部分を有し、前記第2ワイパの先端よりも前記幅方向における幅が狭い
ことを特徴とするワイパ機構。
【0098】
[付記2]
前記第1ワイパの先端は、前記幅方向における幅が前記ヘッド面よりも狭く、当該ヘッド面のうち前記ノズル列を含む一部をワイプする
ことを特徴とする付記1記載のワイパ機構。
【0099】
[付記3]
前記第1ワイパと前記第2ワイパとは、ワイプ時において互いに接触しない
ことを特徴とする付記1記載のワイパ機構。
【0100】
[付記4]
前記第1ワイパは、ワイプ時において、前記ヘッド面に接触不可能な長さで設けられているか又は前記第2ワイパよりも前記ヘッド面に対する当接圧が弱い
ことを特徴とする付記1記載のワイパ機構。
【0101】
[付記5]
前記ヘッド面のワイプに伴う弾性変形時において、
前記第1ワイパと前記第2ワイパとが接触せず、且つ、前記第1ワイパの少なくとも前記先端は、ワイプに伴う弾性変形前の前記第2ワイパと同じ位置、又は、当該位置とワイプに伴って弾性変形したときの前記第2ワイパとの間に位置する
ことを特徴とする付記1記載のワイパ機構。
【符号の説明】
【0102】
1 ワイパ機構
10 ワイパユニット
11 第1ワイパ
11a 先端
11b 切り欠き部分
12 第2ワイパ
12a 先端
13 ワイパ支持部材
13a ネジ孔
20 ガイド部
30 インク受け部
30a インク受け面
30b 排出部
40 ワイパ駆動部
41 モータ
51,61,71 第1ワイパ
51a,61a,71a 先端
51b,61b,71b 切り欠き部分
100 インクジェット印刷装置
110 印刷部
111 インクジェットヘッド
111a ヘッド面
111b ノズル列
120 吸着搬送部
130 外部給紙部
131 給紙トレイ
132 スクレーパローラ
133 ピックアップローラ
141,142,143 内部給紙部
141a,142a,143a 給紙トレイ
141b,142b,143b スクレーパローラ
141c,142c,143c ピックアップローラ
151~155 搬送ローラ対
156 レジストローラ対
161 制御部
162 記憶部
163 操作パネル部
164 スキャナ
165 排紙部
210 ワイパユニット
211 第1ワイパ
211a 先端
211b 切り欠き部分
212 第2ワイパ
212-1 弾性変形前の第2ワイパ
212a 先端
212b 変形領域
212c 根元領域
213 ワイパ支持部材
D1 ワイプ方向
D2 幅方向
G 間隔
L1 切り欠き幅
L2 切り欠き高さ
L3 ワイパ間隔
P 用紙
PI パージインク