(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172069
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】半導体発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/08 20100101AFI20231129BHJP
H01L 33/38 20100101ALI20231129BHJP
【FI】
H01L33/08
H01L33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083626
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 瞬一
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 直史
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA21
5F241CA05
5F241CA40
5F241CA74
5F241CA87
5F241CA88
5F241CA93
5F241CB11
5F241CB15
5F241CB23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の発光素子を備え、発光素子内に流れる電流分布を均一化することが可能な半導体発光装置を提供する。
【解決手段】透光性の基板12と、第1の導電型を有する第1の半導体層、発光層、第2の導電型を有する第2の半導体層、第1の半導体層上に形成された第1の電極PE、及び第2の半導体層上に形成された第2の電極NEを各々が有し、基板上に列をなして配された複数の発光素子13A~13Eと、列の一端側の発光素子における第1の電極PEを露出する第1の開口OP1及び他端側の第2の電極NEを露出する第2の開口OP2を形成するように、基板上で複数の発光素子を覆う絶縁層と、第1の開口を覆い絶縁層上の1の領域に亘って形成され、第1の電極と電気的に接続されている第1の電極パッドと、第2の開口を覆い絶縁層上の1の領域と離間した他の領域に亘って形成され、第2の電極と電気的に接続されている第2の電極パッドと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の基板と、
前記基板上に形成された第1の導電型を有する第1の半導体層、前記第1の半導体層上に形成された発光層、前記発光層上に形成され且つ前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有する第2の半導体層、前記第1の半導体層上に形成された第1の電極、及び前記第2の半導体層上に形成された第2の電極、を各々が有し、前記基板上に列をなして配された複数の発光素子と、
前記複数の発光素子のうちの前記列の一端側の発光素子における前記第1の電極を露出する第1の開口及び前記複数の発光素子のうちの前記列の他端側の発光素子における前記第2の電極を露出する第2の開口を形成するように、前記基板上で前記複数の発光素子を覆う絶縁層と、
前記第1の開口を覆い且つ前記第1の開口から前記絶縁層上の1の領域に亘って形成され、前記第1の電極と電気的に接続されている第1の電極パッドと、
前記第2の開口を覆い且つ前記第2の開口から前記絶縁層上の1の領域と離間した他の領域に亘って形成され、前記第2の電極と電気的に接続されている第2の電極パッドと、
を有する半導体発光装置。
【請求項2】
前記複数の発光素子の各々の上面形状は、前記列に沿った方向を短手方向とする長方形であり、前記第1の電極及び前記第2の電極は前記複数の発光素子の各々の長手方向に沿って伸張していることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記列に沿って隣接する発光素子の一方の発光素子の前記第1の電極から他方の発光素子の前記第2の電極に亘って夫々形成され且つ前記絶縁層に覆われた複数の渡り配線を有することを特徴とする請求項2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記複数の渡り配線は、前記複数の発光素子の各々を直列に接続し、各々が前記複数の発光素子の各々の前記長手方向に沿って伸張していることを特徴とする請求項3に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記第1の開口及び前記第2の開口は、前記複数の発光素子の上面の前記長手方向の辺に亘って形成されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記1の開口は前記長手方向の辺の一端から前記長手方向の辺の中途まで延在し、前記第2の開口は前記長手方向の辺の他端から前記長手方向の辺の中途まで延在し、前記第1の電極パッド及び前記第2の電極パッドは、前記列に沿って前記複数の発光素子上に亘っていることを特徴とする請求項2に記載の半導体発光装置。
【請求項7】
前記複数の発光素子の各々の前記第1の半導体層は、下部及び前記下部の上面から上方に突出する上部を有し、前記第1の電極は、前記下部の上面の前記上部が形成されている領域を除く領域に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体発光装置。
【請求項8】
前記第1の電極パッド及び前記第2の電極パッドは、所定の間隔で互いに離隔していることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
【請求項9】
前記第1の電極パッド及び前記第2の電極パッドの各々は、Alを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を含む半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光装置の多様化にともない発光素子も様々な種類が開発されている。例えば、複数の発光素子が接続された発光装置が開示されている。特許文献1には、基板上においてワイヤを介して互いに直列接続された複数の発光素子と、当該複数の発光素子のうち一端側の発光素子に隣接して配された電極パッド及び他端側の発光素子に隣接して配された電極パッドとを有する発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている発光装置においては、基板上の複数の発光素子が配されている領域とは別の領域に電極パッドが配されている。そのため、発光装置としてのサイズが大きくなってしまうことが問題の1つとしてあげられる。
【0005】
また、特許文献1に開示されている発光装置においては、複数の発光素子の各々がワイヤを介して直列接続されている。そのため、隣接する発光素子のうち一方の発光素子から他方の発光素子に電流が流れた際に、当該発光素子内の電流分布において部分的に偏りが生じてしまうことが問題の1つとしてあげられる。
【0006】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、複数の発光素子を備えつつも、発光素子内に流れる電流分布を均一化することが可能な半導体発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による半導体発光装置は、透光性の基板と、基板上に形成された第1の導電型を有する第1の半導体層、第1の半導体層上に形成された発光層、発光層上に形成され且つ第1の導電型と反対の第2の導電型を有する第2の半導体層、第1の半導体層上に形成された第1の電極、及び第2の半導体層上に形成された第2の電極、を各々が有し、基板上に列をなして配された複数の発光素子と、複数の発光素子のうちの列の一端側の発光素子における第1の電極を露出する第1の開口及び複数の発光素子のうちの列の他端側の発光素子における第2の電極を露出する第2の開口を形成するように、基板上で複数の発光素子を覆う絶縁層と、第1の開口を覆い且つ第1の開口から絶縁層上の1の領域に亘って形成され、第1の電極と電気的に接続されている第1の電極パッドと、第2の開口を覆い且つ第2の開口から絶縁層上の1の領域と離間した他の領域に亘って形成され、第2の電極と電気的に接続されている第2の電極パッドと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】実施例1に係る発光装置の製造工程の一部を示す断面図である。
【
図4】実施例1に係る発光装置の製造工程の一部を示す断面図である。
【
図5】実施例1に係る発光装置の製造工程の一部を示す断面図である。
【
図6】実施例1に係る発光装置の製造工程の一部を示す断面図である。
【
図7】実施例1に係る発光装置の製造工程の一部を示す断面図である。
【
図8】実施例1に係る発光装置の製造工程の一部を示す断面図である。
【
図9】実施例1に係る発光装置の製造工程の一部を示す断面図である。
【
図10】実施例1に係る発光装置の製造工程の一部を示す断面図である。
【
図11】実施例1に係る発光装置の使用例を示す発光装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図面において同一の構成要素については同一の符号を付け、重複する構成要素の説明は省略する。
【実施例0010】
図1及び
図2を参照しつつ、実施例1に係る発光装置10の構成について説明する。
図1は、実施例1に係る発光装置10の上面図である。また、
図2は、
図1に示した発光装置10の2-2線に沿った断面図である。以下、説明の簡便化のために、
図1及び
図2に示すようにXYZ軸を定義する。
図1及び
図2においては、X軸が発光装置10の左右方向、Y軸が発光装置10の前後方向、Z軸が発光装置10の上下方向として説明する。
【0011】
[発光装置の概要]
実施例1に係る発光装置10は、基板12と、基板12の上面に列をなして配された5つの発光素子13A、13B、13C、13D及び13E(以後、13A~13Eを区別しない場合は単に発光素子13と記載する)と、発光素子13A~13Eの各々を覆う第1の絶縁層17及び第2の絶縁層21と、隣接する発光素子13A~13Eの各々を電気的に接続する渡り配線18と、各々が第1の絶縁層17及び第2の絶縁層21を覆いつつ一部の発光素子と電気的に接続されている第1の電極パッド23及び第2の電極パッド24と、を含んで構成される。
【0012】
[基板]
基板12は、上面形状が矩形を有し、絶縁性及び透光性を有する平板状の板状体である。基板12は、その上面(一方の平板面)に発光素子13A~13Eを備えている。また、基板12は、発光素子13A~13Eを構成する半導体結晶の成長基板でもある。また、基板12の下面(他方の平板面)は発光装置10の出光面である。
【0013】
基板12としては、単結晶のサファイア(Al2O3)、窒化アルミ(AlN)や窒化ガリウム(GaN)等を用いることができる。本実施例では基板12として単結晶のサファイアを用いている。
【0014】
なお、基板12の左右方向の辺を辺12X、前後方向の辺を辺12Yとして以後説明を進める。
【0015】
[発光素子]
発光素子13A~13Eの各々は互いに等価な長方形をしており、短辺が矩形の基板12の1対の対向した辺12Xに沿って配置され、長辺が基板12の他の1対の対向した辺12Yに沿って配置されている。また発光素子13A~13Eは、辺12Xに沿った方向に、この順に列をなしかつ互いに離間して配置されている。言い換えれば、発光素子13A~13Eの各々は、上面視において、長辺が基板12の辺12Yに沿った短冊状を有し、辺12X方向に並列して並んでいる。
【0016】
発光素子13の各々は、GaN等の窒化物系半導体からなり、n型半導体層14、発光層15及びp型半導体層16を有する半導体構造層EMと、p側電極PEと、n側電極NEとを含んで構成された発光ダイオード(LED:Light Emission Diode)である。言い換えれば、発光素子13の各々は、発光素子13の内領域に発光素子13の外形に沿った長方形の半導体構造層EMを備えた発光ダイオードである。
【0017】
n型半導体層14は、基板12の上面に配された平板状の下部14Aと、下部14Aの短辺に沿った方向における中央部付近から突出している上部14Bとを備えた電導キャリアが電子(第1の導電型)である半導体層(第1の導電層)である。また、n型半導体層14の上部14Bを有する領域は半導体構造層EMの下層部でもある。言い換えれば、n型半導体層14は、メサ形状の構造(以下、メサ構造とも称する)を有している。
【0018】
発光層15は、n型半導体層14の上部14Bの上面に亘って形成されている電子とホールの再結合で光を放出する半導体層である。発光層15は、例えば、450nmをピーク波長とする青色光を放出する。
【0019】
p型半導体層16は、発光層15の上面に亘って形成されている電導キャリアがホール(第2の導電型)である半導体層(第2の導電層)である。
【0020】
なお、n型半導体層14、発光層15及びp型半導体層16には、不純物を添加した半導体層、不純物を添加しない半導体層、層間の歪みを緩和する歪み緩和層、結晶組成を徐変する組成傾斜層、量子効果を有する量子井戸層、キャリアの拡散を抑えるバリア層、n側電極又はp側電極との接触抵抗を低減するコンタクト層等を目的に応じて適宜含むことができる。
【0021】
また、半導体構造層EMの対向する2つの長辺の間隔(幅)は、基板12の上面から発光層15の下面に至るn型半導体層14の厚みの20倍から100倍としている。この範囲とすることで、半導体構造層EMに流れる電流の偏りを抑制できる。本実施例のn型半導体層14の厚みは3μmなので半導体構造層EMの幅を150μmとしている。
【0022】
また、半導体構造層EMは、n型半導体層14の下部14Aの中央部付近に設けなくてもよい。例えば、n型半導体層14の下部14Aの上面にn側電極NEを設けられる面があればよく、半導体構造層EMをn側電極が設けてない側へ寄せて設けることもできる。
【0023】
n側電極NEは、n型半導体層14の下部14Aの上面に形成されており、上面形状が半導体構造層EMの長辺及び短辺に沿った長方形の電極である。また、n側電極NEは、発光素子13A~13Eの並びにおいて同一な側面側に設けてある。
【0024】
また、n側電極NEは、下部14Aの上面において、上部14Bの側面から所定距離だけ離隔した位置に形成されている。
【0025】
n側電極NEは、n型半導体層14の下部14Aの上面にチタン(Ti)、アルミ(Al)、Ti及び金(Au)がこの順で積層されて形成されている。
【0026】
n側電極NEは、n型半導体層14との間で良好なオーミックコンタクトを形成するオーミック電極として機能する。
【0027】
p側電極PEは、p型半導体層16の上面に形成されており、上面形状が半導体構造層EMの長辺及び短辺に沿った長方形の電極である。
【0028】
また、p側電極PEは、p型半導体層16の上面において、半導体構造層EMの縁から所定距離だけ離隔して形成されている。
【0029】
p側電極PEは、p型半導体層16の上面に透光性を有する酸化インジウムスズ(ITO)電極と、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、Ti及びAuからなる金属層とがこの順で積層されて形成されている。
【0030】
p側電極PEのITO電極は、p型半導体層16との間で良好なオーミックコンタクトを形成するオーミック電極として機能する。
【0031】
また、Ni、Agからなる金属層は、上記した発光層15から放出される青色光を反射させる反射層として機能する。すなわち、上記金属層は、発光層15から放出されてp側電極PEに向かって進行する青色光を基板12側へと反射させる。従って、基板12の下面(発光装置10の出光面)からは、発光層15から放出されて上記反射層によって反射された青色光とそのまま基板12に進行した青色光とが出射される。
【0032】
なお、n側電極NE及びp側電極PEの長辺は、半導体構造層EMの長辺と略平行になるように形成している。また、n側電極NE及びp側電極PEの長辺の長さは略等しい長さとしている。この構成により、半導体構造層EMの長辺方向(Y方向)及び短辺方向(X方向)において略均一に電流を流すことができる。
【0033】
[第1の絶縁層]
第1の絶縁層17は、基板12の上面において、発光素子13A~13Eの各々の表面全体を覆っている絶縁性を有する二酸化ケイ素(SiO2)からなる被覆層である。第1の絶縁層17は、p型半導体層16の上面に形成されているp側電極PEの一部を露出する開口OP1を有している。開口OP1は、p側電極PEの長手方向に亘って形成されており、上面形状が細長い長方形を有している。
【0034】
また、第1の絶縁層17は、n型半導体層14の下部14Aの上面に形成されているn側電極NEの一部を露出する開口OP2を有している。開口OP2は、n側電極NEの長手方向に亘って形成されており、上面形状が細長い長方形を有している。
【0035】
[渡り配線]
渡り配線18は、各々が隣り合う発光素子のn側電極NEとp側電極PEとを接続している金属配線である。具体的には、渡り配線18は、隣り合う発光素子の一方の開口OP2から他方の開口OP1に亘って、当該開口OP1と開口OP2との間にある第1の絶縁層17の上面に形成されている。すなわち、渡り配線18は、上面形状が短冊状を有している。なお、
図1においては、図の煩雑化を避けるために渡り配線18を省略している。
【0036】
渡り配線18は、
図2に示すように、発光素子13Aのn側電極NEと発光素子13Bのp側電極PEとを電気的に接続し、発光素子13Bのn側電極NEと発光素子13Cのp側電極PEとを電気的に接続し、発光素子13Cのn側電極NEと発光素子13Dのp側電極PEとを電気的に接続し、発光素子13Dのn側電極NEと発光素子13Eのp側電極PEとを電気的に接続している。
【0037】
すなわち、渡り配線18は、発光素子13A~13Eの各々を電気的に直列に接続している。言い換えれば、発光素子13A~13Eの各々は、渡り配線18の各々を介して互いにその配列順に直列に接続されている。従って、発光素子13A上の開口OP1から露出しているp側電極PEが当該直列接続の一端の電極となっており、発光素子13E上の開口OP2から露出しているn側電極NEが当該直列接続の他端の電極となっている。
【0038】
渡り配線18は、第1の絶縁層17、p側電極PE及びn側電極NE上においてNi及びAlがこの順で積層されて形成されている。当該渡り配線18は、発光層15から出射される光を反射する金属が好ましい。例えば、Alの代わりにAg、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)などを用いることができる。また、渡り配線18を短冊状とすることで発光素子13A~13Eの発光素子間に流れる電流を均一化できる。
【0039】
[第2の絶縁層]
第2の絶縁層21は、渡り配線18の各々を覆っている絶縁性を有するSiO2からなる被覆層である。
【0040】
上述のように、第1の絶縁層17が発光素子13A~13Eの各々を覆い、第2の絶縁層21が発光素子13A~13Eの各々を互いに接続する渡り配線18の各々を覆っている。従って、発光素子13A~13Eは、基板12上において、発光素子13A上の開口OP1及び発光素子13E上の開口OP2を介してのみ、第1の絶縁層17及び第2の絶縁層21から露出しており、外部と導通可能になっている。
【0041】
[第1の電極パッド]
第1の電極パッド23は、発光素子13A上の開口OP1から露出しているp側電極PEを覆うように形成されている電極パッドである。第1の電極パッド23は、発光素子13A上の開口OP1を覆うと共に、発光素子13Aを覆う第1の絶縁層17の上面から発光素子13B上を経て、発光素子13Cを覆っている第2の絶縁層21の上面に至るまで形成されている。
【0042】
すなわち、第1の電極パッド23は、発光素子13A上の開口OP1から露出しているp側電極PEを介して、発光素子13Aと電気的に接続されている。従って、第1の電極パッド23は、外部からの電力の供給を受けてp側電極PEを介して発光素子13Aのp型半導体層16に電圧を印加するアノード電極として機能する。
【0043】
本実施例において、第1の電極パッド23は、上面形状が基板12の辺12Xに沿った方向を短手方向としかつ基板12の辺12Yに沿った方向を長手方向とする長方形を有する電極パッドとなっている。
【0044】
また、本実施例において、第1の電極パッド23は、p側電極PE、第1の絶縁層17及び第2の絶縁層21上に、Ni、Al、Ti及びAuがこの順で積層されて形成されている。
【0045】
[第2の電極パッド]
第2の電極パッド24は、発光素子13E上の開口OP2から露出しているn側電極NEを覆うように第1の電極パッド23と離隔して形成されている電極パッドである。第2の電極パッド24は、発光素子13E上の開口OP2を覆うと共に、発光素子13Eを覆う第1の絶縁層17の上面から発光素子13D上を経て、発光素子13Cを覆っている第1の絶縁層17の上面に至るまで形成されている。
【0046】
すなわち、第2の電極パッド24は、発光素子13E上の開口OP2から露出しているn側電極NEを介して、発光素子13Eと電気的に接続されている。従って、第2の電極パッド24は、外部からの電力の供給を受けてn側電極NEを介して発光素子13Eのn型半導体層14に電圧を印加するカソード電極として機能する。
【0047】
本実施例において、第2の電極パッド24は、上面形状が基板12の辺12Xに沿った方向を短手方向としかつ基板12の辺12Yに沿った方向を長手方向とする長方形を有する電極パッドとなっている。
【0048】
また、本実施例において、第2の電極パッド24は、第1の電極パッド23と同様に、n側電極NE、第1の絶縁層17及び第2の絶縁層21上に、Ni、Al、Ti及びAuがこの順で積層されて形成されている。
【0049】
なお、第1の電極パッド23及び第2の電極パッド24を構成するAl層は、発光素子13A~13Eの各々から出射され第1の絶縁層17の外側に滲み出ようとする青色光を反射させる反射層として機能する。また、Ti層は、当該Ti層上のAu層の一部がAl層に拡散することを防ぐバリア層としても機能する。
【0050】
上述のように、発光装置10においては、アノード電極としての第1の電極パッド23が直列接続の一端をなす発光素子13Aに開口OP1から露出しているp側電極PEを介して接続され、カソード電極としての第2の電極パッド24が直列接続の他端をなす発光素子13Eに開口OP2から露出しているn側電極NEを介して接続されている。
【0051】
従って、本実施例においては、第1の電極パッド23及び第2の電極パッド24を介して発光素子13A及び発光素子13Eに電圧が印加されることにより、直列に接続されている発光素子13A~13Eの各々の半導体構造層EM内に電流が流れ(
図2中矢印方向)、発光層15から青色光が放出される。
【0052】
本実施例の発光装置10によれば、各々の発光素子13A~13Eのn側電極NE及びp側電極PEを半導体構造層EMの長辺に平行に配置している。また、n側電極NE及びp側電極PEの長さを等しくしている。従って、
図2中の矢印に示すように電流は半導体構造層EMの短手方向にn側電極NE及びp側電極PEの幅(長さ)で均等に流れる。言い換えれば、電流が半導体構造層EM内を局部的に流れることがなく、局部劣化を防止できると同時に均一な発光を可能としている。
【0053】
また、発光装置10は、発光素子13A~13Eの5つを直列接続しているので高い電圧系(例えば18V系)の駆動回路で点灯することができる。
【0054】
また、発光装置10は、反射層を含む第1の電極パッド23及び第2の電極パッド24を発光素子13A~13Eの各々を覆うように配置し、かつ第1の電極パッド23と第2の電極パッド24の離間部を発光素子13Cのp側電極PE上に設けている。従って、発光素子13A~13Eから第1の電極パッド23及び第2の電極パッド24側へ放射された青色光を基板12側(発光装置10の出光面側)へ反射することができるので発光装置10の光出力を高くできる。
【0055】
[発光装置の作製方法]
ここで、
図3~
図10を参照しつつ、本実施例における発光装置10の作製方法について説明する。
図3~
図10の各々は、発光装置10の製造工程の一部を示す発光装置10の断面図である。
【0056】
まず、
図3に示すように、成長用基板としての基板12上に、n型半導体層14、発光層15及びp型半導体層16となるn型半導体層14M、発光層15M及びp型半導体層16Mがこの順で積層された半導体層形成済み基板を用意しておく。
【0057】
初めに、
図4に示すように、分割された半導体構造層EMを形成する(ステップS1:発光領域分割工程)。具体的には、半導体構造層EMを形成する領域を覆い、それ以外の領域を露出するようにレジストマスクを形成する。
【0058】
そして、リアクティブ・イオン・エッチング(RIE)法にてレジストマスクの開口部(レジストマスクが形成されていない部分)から露出している形成済みの半導体積層をn型半導体層14Mが露出するまでエッチング処理する。その後、レジストマスクを除去することにより、
図4に示すように、分割された半導体構造層EMが形成できる。
【0059】
次に、
図5に示すように、基板12上のn型半導体層14Mを分割して発光素子13A~13Eの各々の素子領域を形成する(ステップS2:素子領域分割工程)。具体的には、発光素子13A~13Eとなる領域を覆い、それ以外の領域を露出するようにレジストマスクを形成する。
【0060】
そして、RIE法にてレジストマスクの開口部から露出しているn型半導体層14Mを基板12が露出するまでエッチング処理する。その後、レジストマスクを除去することにより、
図5に示すように、基板12の上面に発光素子13A~13Eとなる領域が形成できる。
【0061】
次に、
図6に示すように、発光素子13の各々のp型半導体層16上にp側電極PEを形成する(ステップS3:p側電極形成工程)。具体的には、p型半導体層16の上面を開口部としたレジストマスクを形成し、スパッタ法にてITO膜を成膜する。続いて、ITO膜上にEB(イオンビーム)法にてNi及びAgをこの順で成膜する。続いて、成膜したNi及びAg層上にEB法にてTi及びAuをこの順で成膜する。
【0062】
そして、レジストマスクを除去することにより、
図6に示すように、p型半導体層16上に形成されたp側電極PEを得ることができる。なお、p側電極PEの表層に用いる金属層としては、Auに代えてPt、Pd又はRhを成膜してもよい。
【0063】
次に、
図7に示すように、発光素子13A~13Eとなる部分の各々のn型半導体層14の下部14Aの上面にn側電極NEを形成する(ステップS4:n側電極形成工程)。具体的には、下部14Aの上面のn側電極NEを形成する領域を開口部としたレジストマスクを形成し、EB法にてTi、Al、Ti及びAuをこの順で成膜する。
【0064】
そして、レジストマスクを除去することにより、
図7に示すように、n型半導体層14の下部14Aの上面に形成されたn側電極NEを得ることができる。なお、n側電極NEの表層に用いる金属層としては、Auに代えてPt、Pd又はRhを成膜してもよい。
【0065】
次に、
図8に示すように、開口OP1及び開口OP2を形成するように発光素子13A~13Eの各々を覆う第1の絶縁層17を形成する(ステップS5:第1の絶縁層形成工程)。具体的には、上記ステップS4までの処理を実施した基板12の加工面の全面に対してスパッタ法にてSiO
2層を形成する。そして、形成したSiO
2層に対して開口OP1及び開口OP2の各々に対応する領域を開口部とするレジストマスクを形成する。
【0066】
続いて、バッファードフッ酸にてレジストマスクの開口部のSiO
2層をエッチングして除去する。このとき、p側電極PE及びn側電極NEの最上面の金属層、すなわちAu層がエッチングストップ層となる。これにより、
図8に示すように、発光素子13A~13Eの各々上に開口OP1及び開口OP2を有する第1の絶縁層17を形成することができる。
【0067】
次に、
図9に示すように、隣接する2つの発光素子の一方の発光素子の開口OP1から露出しているp側電極PEと他方の発光素子の開口OP2から露出しているn側電極NEとを互いに電気的に接続する渡り配線18を形成する(ステップS6:渡り配線形成工程)。
【0068】
具体的には、第1の絶縁層17上において、発光素子13B~13Eの各々の開口OP1から露出しているp側電極PEと、発光素子13A~13Dの各々の開口OP2から露出しているn側電極NEとを開口部とするレジストマスクを形成する。
【0069】
続いて、上記開口部に対してEB法にてNi及びAlをこの順で成膜する。その後、レジストマスクを除去することにより、
図9に示すように、発光素子13A~13Eの各々を接続するように互いに形成された渡り配線18を得ることができる。
【0070】
次に、
図10に示すように、渡り配線18の各々を覆うように第2の絶縁層21を形成する(ステップS7:第2の絶縁層形成工程)。具体的には、発光素子13Aの開口OP1から露出しているp側電極PE及び発光素子13Eの開口OP2から露出しているn側電極NEの各々に対して、当該露出している電極の形状よりも一回り大きい開口を有するレジストマスクを形成する。
【0071】
続いて、上記処理を実施した基板12の加工面の全面にスパッタ法にてのSiO
2層を形成する。そして、上記したレジストマスクをリフトオフすることで剥離して、
図10に示すように、開口OP1から露出しているp側電極PEを有する発光素子13A及び開口OP2から露出しているn側電極NEを有する発光素子13Eを得ることができる。
【0072】
最後に、ステップS7にて作製した発光装置に第1の電極パッド23及び第2の電極パッド24を形成する(ステップS8:電極パッド形成工程)。具体的には、基板12上において第1の電極パッド23の形成面と第2の電極パッド24の形成面とを開口部としたレジストマスク形成する。
【0073】
そして、開口部にEB法にてNi、Al、Ti及びAuをこの順で成膜し、上記レジストマスクをリフトオフにより除去することにより、
図1及び
図2に示すように、第1の電極パッド23及び第2の電極パッド24が形成された発光装置10を得ることができる。すなわち、上記したステップS1~S8の工程により、本実施例に示した発光装置10を得ることができる。
【0074】
[発光装置の使用例]
ここで、
図11を用いて、本実施例における発光装置10の具体的な使用例について説明する。
図11は、発光装置10の使用例として、コンデンサ、抵抗、ICチップ等を実装する回路基板31の一部に実装した発光モジュール装置30の断面図である。本使用例は、発光装置10に波長変換部材32と遮光層34を備えた発光モジュール装置30とした後に回路基板31に実装した使用例である。
【0075】
発光モジュール装置30は、発光装置10の出光面の上面に、当該出光面と同形状の波長変換部材32がシリコーン樹脂等の透光性の接着層33を介して接着されている。また、発光モジュール装置30は、発光装置10と接着層33及び波長変換部材32の側面を覆う遮光層34を備えている。
【0076】
波長変換部材32は、発光装置10から入射される青色光によって励起されて黄色蛍光を発する蛍光体粒子を含んでいる。波長変換部材32は、母材としてのAl2O3と、当該母材内に含有されたセリウム(Ce)を発光中心としたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:Ce)の蛍光体粒子とを含んで構成される。
【0077】
遮光層34は、発光装置10から出射される青色光と、波長変換部材32で生じる黄色蛍光とを反射させる。すなわち、発光モジュール装置30の側面からの光漏れを抑え、波長変換部材32の上面から出光する光の出力を向上させる。
【0078】
遮光層34は、シリコーン樹脂に酸化チタン(TiO2)粒子を含有させた反射性の樹脂材からなる。遮光層34は、光反射性を有する材料から形成されていればよく、例えば、溶射アルミナによって形成されていてもよく、また、青色光及び黄色蛍光を反射させる誘電体多層膜によって形成されていてもよい。
【0079】
本発光モジュール装置30は、発光装置10(図中一点鎖線で囲んだ部分)を基にしているので、発光装置10の第1の電極パッド23及び第2の電極パッド24が発光モジュール装置30の第1の電極パッド及び第2の電極パッドになる。
【0080】
本実施例によれば、第1の電極パッド23及び第2の電極パッド24を接合部材36となるはんだペーストが塗布された回路基板31のアノード配線37及びカソード配線38上に、他の電子部品(チップ抵抗、チップコンデンサ、他)と同時に載置してリフローによって一括実装できる。
【0081】
また、第1の電極パッド23と第2の電極パッド24が等価なサイズ且つ対称に配置されているので、リフローの際に、発光モジュール装置30が倒立する現象(マンハッタン現象)を抑制できる。
発光装置40は、実施例1に係る発光装置10と第1の絶縁層17、第1の電極パッド23及び第2の電極パッド24の構成が異なっており、それ以外の点において実施例1と同様である。以下の説明においては、実施例1と異なる点について主に説明する。
また、第1の絶縁層17は、発光素子13Eのn型半導体層14の下部14Aの上面に形成されているn側電極NEの長辺方向の長さの半分未満を露出する開口OP4を有している。本実施例において、開口OP4は、n側電極NEの長手方向に沿って基板12の対向する1対の辺12Xの他辺の側から中央部付近まで延在している。言い換えれば、開口OP4は、n側電極NEの短手方向の一端から当該n側電極NEの中途までを露出するように延在している。
本実施例において、第1の電極パッド23は、上面形状が基板12の辺12Yに沿った方向を短手方向としかつ基板12の1対の辺12Xの片辺に隣接して沿った長方形を有する電極パッドとなっている。
本実施例において、第2の電極パッド24は、上面形状が基板12の辺12Yに沿った方向を短手方向としかつ基板12の1対の辺12Xの他辺に隣接して沿った長方形を有する電極パッドとなっている。
このように、本実施例において、第1の電極パッド23及び第2の電極パッド24は、発光素子13A~13Eの配列方向(X方向)を長手方向とするように、言い換えれば、発光素子13A~13Eの長手方向(Y方向)に直交するように、発光素子13A~13Eの各々上に亘って配されている。
従って、基板12の辺12X(左右方向)に対して辺12Y(前後方向)が長い場合であっても、第1の電極パッド23及び第2の電極パッド24を辺12Y方向に縦列配置できるので回路基板に安定した実装が可能になる。例えば、倒立現象の抑制、電極パッド間距離を広くして短絡の抑制などが可能となる。なお、第1の電極パッド23とp側電極PEとの接触長、及び第2の電極パッド24とn側電極NEとの接触長は実施例1よりも短くなるが、p側電極PE及びn側電極NEとp型半導体層16及びn型半導体層14との接触長は実施例1と同じなので、発光素子13A~13Eの各々に偏りなく電流を流すことができる。
本実施例によれば、発光装置40は、実施例1と同様に、発光装置として複数の素子を備えつつ、発光素子13A~13Eの各々内に流れる電流分布を均一化することができる。
なお、上述した実施例及び変形例における種々の数値、寸法、材料等は、例示に過ぎず、用途及び製造される発光装置に応じて、適宜選択することができる。例えば、1つの基板上に設ける発光素子の数を3、5、7、・・・と求められる駆動電圧に応じて適宜選択することができる。また例えば、短冊状に直列接続された発光素子群を複数行(並列)に配置することもできる。