IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

特開2023-172073液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置
<>
  • 特開-液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 図1
  • 特開-液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 図2
  • 特開-液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 図3
  • 特開-液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 図4
  • 特開-液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 図5
  • 特開-液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 図6
  • 特開-液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 図7
  • 特開-液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 図8
  • 特開-液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 図9
  • 特開-液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 図10
  • 特開-液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 図11
  • 特開-液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 図12
  • 特開-液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 図13
  • 特開-液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 図14
  • 特開-液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 図15
  • 特開-液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 図16
  • 特開-液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 図17
  • 特開-液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172073
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20231129BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231129BHJP
   B41J 2/18 20060101ALN20231129BHJP
【FI】
B41J2/14 305
B41J2/01 301
B41J2/14 611
B41J2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083631
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 優
(72)【発明者】
【氏名】奥井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】福澤 祐馬
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA28
2C056EB30
2C056FA04
2C056FA13
2C056HA05
2C056HA15
2C056KB16
2C057AL24
2C057AN05
2C057AR16
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】複数の駆動回路の温度が均一に冷却すること。
【解決手段】液体噴射ヘッドは、噴射方向へ液体を噴射する複数のヘッドチップを備える液体噴射ヘッドであって、気体供給機構から供給される気体を液体噴射ヘッドの内部に導入するための導入部と、導入部に供給された気体を液体噴射ヘッドの外部へ排出するための排出部と、複数のヘッドチップの夫々に設けられた複数の駆動回路と、を備え、複数の駆動回路は、第1ヘッドチップを駆動するための第1駆動回路と、第2ヘッドチップを駆動するための第2駆動回路とを含み、導入部から排出部まで気体が流れる気体経路は、導入部に接続された第1経路と、排出部に接続された第2経路と、第1経路と第2経路とを接続する第1分岐経路と、第1分岐経路を経由しないように第1経路と第2経路とを接続する第2分岐経路と、を有し、第1駆動回路は第1分岐経路に配置され、第2駆動回路は第2分岐経路に配置される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射方向へ液体を噴射する複数のヘッドチップを備える液体噴射ヘッドであって、
気体供給機構から供給される気体を前記液体噴射ヘッドの内部に導入するための1又は複数の導入部と、
前記1又は複数の導入部に供給された気体を前記液体噴射ヘッドの外部へ排出するための排出部と、
前記複数のヘッドチップの夫々に設けられた複数の駆動回路と、
を備え、
前記複数のヘッドチップは、第1ヘッドチップと、第2ヘッドチップと、を含み、
前記複数の駆動回路は、前記第1ヘッドチップを駆動するための第1駆動回路と、前記第2ヘッドチップを駆動するための第2駆動回路と、を含み、
前記1又は複数の導入部から前記排出部まで気体が流れる気体経路は、
前記1又は複数の導入部に接続された第1経路と、
前記排出部に接続された第2経路と、
前記第1経路と前記第2経路とを接続する第1分岐経路と、
前記第1分岐経路を経由しないように前記第1経路と前記第2経路とを接続する第2分岐経路と、を有し、
前記第1駆動回路は、前記第1分岐経路に配置され、
前記第2駆動回路は、前記第2分岐経路に配置される、
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記第1経路は、前記複数のヘッドチップを収容する第1収容空間と、前記1又は複数の導入部から前記第1収容空間とを連通させる連通部と、を含み、
前記第1分岐経路及び前記第2分岐経路の夫々は、前記第1収容空間に接続される、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記第1ヘッドチップ及び前記第2ヘッドチップに接続された第1中継基板を更に備え、
前記第2経路は、前記第1中継基板を収容する第2収容空間を含み、
前記第1分岐経路及び前記第2分岐経路の夫々は、前記第2収容空間に接続される、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記複数のヘッドチップに対して前記噴射方向とは反対方向に積層され、前記第1収容空間と前記第2収容空間との間に配置された第1部材と、
前記第1中継基板と前記第1ヘッドチップとを接続するとともに前記第1駆動回路が設けられた第1配線基板と、
前記第1中継基板と前記第2ヘッドチップとを接続するとともに前記第2駆動回路が設けられた第2配線基板と、
を更に備え、
前記第1部材には、
前記噴射方向に貫通し、前記第1配線基板が挿入される第1貫通孔と、
前記噴射方向に貫通し、前記第2配線基板が挿入される第2貫通孔と、が形成され、
前記第1分岐経路は、前記第1貫通孔であり、
前記第2分岐経路は、前記第2貫通孔である、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記液体噴射ヘッドの前記噴射方向とは反対方向を向く第1面を画定する第2部材を更に備え、
前記1又は複数の導入部は、前記第2部材の前記第1面に設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記第2部材の前記第1面には、液体を前記液体噴射ヘッドの内部に導入するための液体導入部が設けられる、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記排出部は、前記噴射方向とは反対方向に向かって気体を前記液体噴射ヘッドの外部へ排出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記第1分岐経路及び前記第2分岐経路は、前記噴射方向において前記1又は複数の導入部と前記第1収容空間との間に配置され、
前記連通部と前記第2経路とは、互いに直接的に連通しない、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
前記噴射方向に直交する方向に見て、前記連通部と前記第2経路とは重なる、
ことを特徴とする請求項8に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
前記噴射方向に見た平面視において、前記1又は複数の導入部は、前記第1中継基板に重なり、
前記連通部は、前記噴射方向に直交する方向に延在する部分を含み、
前記平面視において、前記部分の両端のうち前記導入部から遠い一端は、前記第1中継基板に重ならない、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項11】
前記噴射方向に見た平面視において、前記連通部の前記第1収容空間に接続される端部は、前記複数のヘッドチップに重ならない、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項12】
前記噴射方向に見た平面視において、前記連通部の前記第1収容空間に接続される端部は、前記複数のヘッドチップに重ならず、
前記液体噴射ヘッドの外壁には、前記第1中継基板、又は、前記第1中継基板に接続される第2中継基板が挿入される配線用開口が形成され、
前記排出部は、前記第2経路の一端のみに接続された前記配線用開口である、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項13】
前記1又は複数の導入部の数は、前記複数のヘッドチップの数よりも少ない、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項14】
前記1又は複数の導入部の数は、1つである、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項15】
前記駆動回路は、液体を噴射するための駆動素子を駆動するための駆動信号を供給するか否かを選択可能なスイッチング素子を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項16】
前記複数のヘッドチップは、第3ヘッドチップを含み、
前記複数の駆動回路は、前記第3ヘッドチップを駆動するための第3駆動回路を含み、
前記気体経路は、前記第1分岐経路及び前記第2分岐経路を経由しないように前記第1経路と前記第2経路とを接続する第3分岐経路を有し、
前記第3駆動回路は、前記第3分岐経路に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドの前記1又は複数の導入部に気体を供給する前記気体供給機構と、
を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像を示す画像データに基づいて、インク等の液体を印刷用紙等の媒体に噴射することにより、媒体に画像を形成する液体噴射装置が知られている。例えば、特許文献1には、複数のヘッドチップと、複数のヘッドチップの夫々を駆動させるための複数の駆動回路とを有し、複数の駆動回路のうち最も発熱量が大きい駆動回路を、吸気口の最も近くに配置する液体噴射装置が開示されている。最も発熱量が大きい駆動回路を吸気口に最も近くに配置することにより、最も発熱量が大きい駆動回路を効率よく冷却できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-99835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、画像データが示す画像によっては、吸気口に最も近くに配置された駆動回路の発熱量が、他の駆動回路の発熱量よりも大きいとは必ずしも限らない。従って、上述した従来の液体噴射ヘッドでは、複数の駆動回路を均一に冷却することができない虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の好適な態様に係る液体噴射ヘッドは、噴射方向へ液体を噴射する複数のヘッドチップを備える液体噴射ヘッドであって、気体供給機構から供給される気体を前記液体噴射ヘッドの内部に導入するための1又は複数の導入部と、前記1又は複数の導入部に供給された気体を前記液体噴射ヘッドの外部へ排出するための排出部と、前記複数のヘッドチップの夫々に設けられた複数の駆動回路と、を備え、前記複数のヘッドチップは、第1ヘッドチップと、第2ヘッドチップと、を含み、前記複数の駆動回路は、前記第1ヘッドチップを駆動するための第1駆動回路と、前記第2ヘッドチップを駆動するための第2駆動回路と、を含み、前記1又は複数の導入部から前記排出部まで気体が流れる気体経路は、前記1又は複数の導入部に接続された第1経路と、前記排出部に接続された第2経路と、前記第1経路と前記第2経路とを接続する第1分岐経路と、前記第1分岐経路を経由しないように前記第1経路と前記第2経路とを接続する第2分岐経路と、を有し、前記第1駆動回路は、前記第1分岐経路に配置され、前記第2駆動回路は、前記第2分岐経路に配置される、ことを特徴とする。
【0006】
本発明の好適な態様に係る液体噴射装置は、前述の態様の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドの前記1又は複数の導入部に気体を供給する前記気体供給機構と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る液体噴射装置100を例示する模式図。
図2】実施形態に係る液体噴射ヘッド10を有する液体噴射モジュール140の斜視図。
図3図2に示す液体噴射ヘッド10の分解斜視図。
図4】液体噴射ヘッド10の有するヘッドチップ14の流路を模式的に示す平面図。
図5】液体噴射ヘッド10の有するヘッドチップ14の断面図。
図6】液体噴射ヘッド10内の経路を模式的に示す図。
図7】フィルターユニット11、ヘッド基板12、及び、ホルダーユニット13の分解斜視図。
図8】液体噴射ヘッド10の平面図。
図9図8のA-A断面を示す断面図。
図10】固定板15を不図示にした場合の液体噴射ヘッド10の底面図。
図11図8のB-B断面を示す断面図。
図12図8のC-C断面をV2方向に見た図。
図13図8のD-D断面を示す断面図。
図14】フィルタープレートSu1、保護ケース16、及び、コネクター基板17を不図示にした場合の液体噴射ヘッド10の平面図。
図15図14の状態からフィルタープレートSu2を更に不図示にした場合の液体噴射ヘッド10の平面図。
図16図15の状態からフィルタープレートSu3を更に不図示にした場合の液体噴射ヘッド10の平面図。
図17】第1変形例に係る液体噴射ヘッド10-A内の経路を模式的に示す図。
図18】第5変形例に係る液体噴射ヘッド10-B内の経路を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法及び縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限らない。
【0009】
以下の説明は、便宜上、互いに交差するX軸、Y軸及びZ軸を適宜に用いて行う。また、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向と反対の方向がX2方向である。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向がY1方向及びY2方向である。また、Z軸に沿って互いに反対の方向がZ1方向及びZ2方向である。
【0010】
1.第1実施形態
1-1.液体噴射装置100
図1は、第1実施形態に係る液体噴射装置100を例示する模式図である。液体噴射装置100は、液体の一例であるインクを液滴として媒体Mに噴射するインクジェット方式の印刷装置である。本実施形態の液体噴射装置100は、インクを噴射する複数のノズルNが媒体Mの幅方向での全範囲にわたり分布する、いわゆるライン方式の印刷装置である。媒体Mは、典型的には印刷用紙である。なお、媒体Mは、印刷用紙に限定されず、例えば、樹脂フィルム又は布帛等の任意の材質の印刷対象でもよい。
【0011】
図1に示すように、液体噴射装置100は、液体容器110と、制御ユニット120と、搬送機構130と、液体噴射モジュール140と、循環機構150と、気体供給機構160とを有する。
【0012】
液体容器110は、インクを貯留する容器である。液体容器110の具体的な態様としては、例えば、液体噴射装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、及び、インクを補充可能なインクタンクが挙げられる。なお、液体容器110に貯留されるインクの種類は任意である。
【0013】
本実施形態の液体容器110は、図示しないが、第1液体容器と第2液体容器とを含む。第1液体容器には、第1インクが貯留される。第2液体容器には、第1インクと異なる種類の第2インクが貯留される。例えば、第1インク及び第2インクは、互いに異なる色のインクである。なお、第1インクと第2インクとが同じ種類のインクであってもよい。
【0014】
制御ユニット120は、液体噴射装置100の各要素の動作を制御する。制御ユニット120は、例えば、CPU又はFPGA等の1又は複数の処理回路と、半導体メモリー等の1又は複数の記憶回路とを含む。CPUは、Central Processing Unitの略語である。FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略語である。当該記憶回路には、各種プログラム及び各種データが記憶される。当該処理回路は、当該プログラムを実行するとともに当該データを適宜使用することにより各種制御を実現する。
【0015】
搬送機構130は、制御ユニット120による制御のもとで、媒体Mを方向DMに搬送する。本実施形態の方向DMは、Y2方向である。図1に示す例では、搬送機構130は、X軸に沿って長尺な搬送ローラーと、当該搬送ローラーを回転させるモーターと、を含む。なお、搬送機構130は、搬送ローラーを用いる構成に限定されず、例えば、媒体Mを外周面に静電力等により吸着させた状態で搬送するドラム又は無端ベルトを用いる構成でもよい。
【0016】
液体噴射モジュール140は、制御ユニット120による制御のもとで、液体容器110から循環機構150を介して供給されるインクを複数のノズルNの夫々からZ2方向に媒体Mに噴射する。Z2方向は、「噴射方向」の一例である。また、本実施形態のZ2方向は、鉛直方向である。但し、Z2方向と鉛直方向とが異なっていてもよい。液体噴射モジュール140は、X軸の方向における媒体Mの全範囲にわたり複数のノズルNが分布するように配置される複数の液体噴射ヘッド10を有するラインヘッドである。つまり、複数の液体噴射ヘッド10の集合体は、X軸に沿う方向に延びる長尺なラインヘッドを構成する。なお、1つの液体噴射ヘッド10の有する複数のノズルNがX軸に沿う方向での媒体Mの全範囲にわたり分布するように配置されてもよく、この場合、例えば、液体噴射モジュール140は、当該1つの液体噴射ヘッド10で構成される。
【0017】
液体噴射モジュール140には、循環機構150を介して液体容器110が接続される。循環機構150は、制御ユニット120による制御のもとで、液体噴射モジュール140にインクを供給するとともに、液体噴射モジュール140から排出されるインクを液体噴射モジュール140への再供給のために回収する機構である。循環機構150は、例えば、インクを貯留するサブタンクと、サブタンクから液体噴射モジュール140にインクを供給するための流路と、液体噴射モジュール140からインクをサブタンクに回収するための流路と、インクを適宜に流動させるためのポンプと、を有する。これらは、前述の第1液体容器及び第2液体容器の夫々について容器ごとに設けられる。以上の循環機構150の動作により、インクの粘度上昇を抑えたり、インク内の気泡の滞留を低減したりすることができる。
【0018】
制御ユニット120は、液体噴射ヘッド10の噴射動作を制御する。具体的には、制御ユニット120は、画像を示す画像データImgを、パーソナルコンピューター又はデジタルカメラ等のホストコンピューターから受信する。制御ユニット120は、受信した画像データImgに基づいて、液体噴射ヘッド10を駆動するための駆動信号Comと、液体噴射ヘッド10を制御するための制御信号SIとを、液体噴射ヘッド10に対して供給する。そして、液体噴射ヘッド10は、制御信号SIによる制御のもとで駆動信号Comにより駆動され、液体噴射ヘッド10に設けられた複数のノズルNの一部又は全部から、Z2方向にインクを噴射させる。すなわち、液体噴射ヘッド10は、搬送機構130による媒体Mの搬送に連動して、複数のノズルNの一部又は全部からインクを噴射させて、当該噴射されたインクを媒体Mの表面に着弾させることで、媒体Mの表面に所望の画像を形成する。なお、ノズルNについては、図4及び図5において後述する。
【0019】
気体供給機構160は、液体噴射ヘッド10に気体を供給するため、より具体的には、後述する駆動回路18iを冷却するための機構である。気体供給機構160は、気体を貯留する気体貯留部162と、気体貯留部162に貯留された気体を供給するための送気チューブ164と、気体の供給量を調整するポンプ166とを有する。
【0020】
気体供給機構160が供給する気体の種類は、特に限定されないが、例えば、空気、窒素やアルゴン等の不活性ガスを用いることが好ましい。更に、気体供給機構160が供給する気体の種類は、水蒸気量が4g/m以下であることが好ましく、更に、3g/m以下であることがより好ましく、1g/m以下であれば最も好ましい。
【0021】
気体貯留部162は、内部に貯留されている気体の温度を調整するための調節装置を備えている。調節装置は、例えば、気体貯留部162内の気体の温度を検出する温度センサーと、気体貯留部162内の温度を冷却する冷却機構と、温度センサーが検出した温度に基づいて、気体貯留部162内の気体の温度が所望の温度になるように冷却機構を駆動させる制御装置と、を備える。但し、気体貯留部162は、調節装置を有さなくてもよい。
【0022】
送気チューブ164は、液体噴射ヘッド10の個数に分岐された複数の分岐部分を有する。送気チューブ164の一端が気体貯留部162に接続され、複数の分岐部分の夫々の端部が複数の液体噴射ヘッド10の夫々に接続される。気体供給機構160は、インクのミスト又は紙粉等の異物を液体噴射ヘッド10の内部に侵入させないように、送気チューブ164を介して液体噴射ヘッド10に気密に接続される。
【0023】
ポンプ166は、送気チューブ164の間に設けられる。ポンプ166は、制御ユニット120の制御のもとで、液体噴射ヘッド10に供給する気体の供給量を調節する。
【0024】
1-2.液体噴射モジュール140
図2は、実施形態に係る液体噴射ヘッド10を有する液体噴射モジュール140の斜視図である。図2に示すように、液体噴射モジュール140は、支持体41と複数の液体噴射ヘッド10とを有する。支持体41は、複数の液体噴射ヘッド10を支持する部材である。図2に示す例では、支持体41は、金属等で構成される板状部材であり、複数の液体噴射ヘッド10を取り付けるための取付孔41aが設けられる。取付孔41aには、複数の液体噴射ヘッド10がX軸に沿う方向に並ぶ状態で挿入されており、各液体噴射ヘッド10は、支持体41に対してネジ止め等により固定される。図2では、2個の液体噴射ヘッド10が代表的に図示される。なお、液体噴射モジュール140における液体噴射ヘッド10の数は、任意である。また、支持体41の形状等も、図2に示す例に限定されず、任意である。
【0025】
1-3.液体噴射ヘッド10
図3は、図2に示す液体噴射ヘッド10の分解斜視図である。図3に示すように、液体噴射ヘッド10は、フィルターユニット11とヘッド基板12とホルダーユニット13と複数のヘッドチップ14_1、14_2、14_3、14_4、14_5及び14_6と固定板15と保護ケース16とコネクター基板17とを有する。これらは、Z2方向に向かって、コネクター基板17、保護ケース16、フィルターユニット11、ヘッド基板12、ホルダーユニット13、複数のヘッドチップ14_1、14_2、14_3、14_4、14_5及び14_6、固定板15の順に配置される。液体噴射ヘッド10の各要素は、接着剤又はネジ留め等により固定される。以下、液体噴射ヘッド10の各部を順次説明する。なお、以下では、ヘッドチップ14_1、14_2、14_3、14_4、14_5及び14_6の夫々をヘッドチップ14と記載する場合がある。第1実施形態では、液体噴射ヘッド10は、ヘッドチップ14を6個有するが、6個に限定されず、2個以上であればいくつ有してもよい。
【0026】
以下の記載において、ヘッドチップ14_xの構成要素を、当該構成要素を表すための符号として、添え字「_x」を付して表現することがある。xは、1から6までの整数である。なお、ホルダーユニット13は、「第1部材」の一例である。フィルターユニット11は、「第2部材」の一例である。ヘッド基板12は、「第1中継基板」の一例である。コネクター基板17は、「第2中継基板」の一例である。ヘッドチップ14_1、14_2、14_3、14_4、14_5及び14_6が、「複数のヘッドチップ」の一例である。
【0027】
フィルターユニット11は、循環機構150と複数のヘッドチップ14との間でインクを流すための流路が内部に設けられる構造体である。フィルターユニット11は、フィルタープレートSu1と、フィルタープレートSu2と、フィルタープレートSu3とを有する。フィルタープレートSu3、フィルタープレートSu2、及び、フィルタープレートSu1は、この順でZ1方向に積層される。フィルタープレートSu1のZ1方向を向く面Sa1には、図3に示すように、接続管11a、接続管11b、接続管11c、接続管11d、孔11e、及び、接続管11fが設けられる。面Sa1は、「第1面」の一例である。送気チューブ164の先端に形成された開口内に接続管11fが挿入されることで、液体噴射ヘッド10内に浮遊するインクのミストや紙粉が、後述する液体噴射ヘッド10内の気体経路APに侵入することを抑制できる。
【0028】
ここで、図3では図示を省略するが、フィルターユニット11の内部には、インクを流動させる複数の流路と、気体供給機構160から供給される気体を流動させる経路の一部である連通部C1の一部とを有する。連通部C1は、図6で後述する。本明細書では、インクが流動する道筋を「流路」と記載し、気体供給機構160から供給される気体が流動する道筋を「経路」と記載する。フィルターユニット11の内部においてインクを流動させる複数の流路は、第1供給流路CC1、第2供給流路CC2、第1排出流路CM1及び第2排出流路CM2等の流路である。第1供給流路CC1は、第1インクを複数のヘッドチップ14に供給するための流路である。第2供給流路CC2は、第2インクを複数のヘッドチップ14に供給するための流路である。これらの供給流路の夫々の途中には、異物等を捕捉するためのフィルターが設置される。第1排出流路CM1は、複数のヘッドチップ14から第1インクを排出するための流路である。第2排出流路CM2は、複数のヘッドチップ14から第2インクを排出するための流路である。なお、フィルターユニット11の流路及び経路については、後述の図7、及び、図15に基づいて説明する。
【0029】
接続管11a、11b、11c、11d、及び、11fは、Z1方向に突出する管体である。より具体的には、接続管11aは、第1供給流路CC1に第1インクを供給するための流路を構成する管体である。また、接続管11bは、第2供給流路CC2に第2インクを供給するための流路を構成する管体である。一方、接続管11cは、第1排出流路CM1から第1インクを排出するための流路を構成する管体である。また、接続管11dは、第2排出流路CM2から第2インクを排出するための流路を構成する管体である。接続管11fは、気体供給機構160から供給される気体を、液体噴射ヘッド10の内部に導入するための管体である。孔11eは、後述のコネクター12aを挿入するための孔である。
【0030】
第1実施形態では、気体供給機構160から供給される気体を導入する管体は、接続管11fの1つのみであるが、面Sa1には、気体供給機構160から供給される気体を導入する複数の管体が設けられてもよい。但し、気体供給機構160から供給される気体を導入する管体の数は、液体噴射ヘッド10が有するヘッドチップ14の数よりも少ないことが好ましい。なお、接続管11fの開口は、「1又は複数の導入部」の一例である。また、接続管11a、及び、11bの開口は、「液体を液体噴射ヘッドの内部に導入するための液体導入部」の一例である。
【0031】
ヘッド基板12は、複数のヘッドチップ14と後述のコネクター基板17とを電気的に接続するための実装部品である。ヘッド基板12は、例えば、リジッド配線基板である。ヘッド基板12は、フィルターユニット11とホルダーユニット13との間に配置されており、ヘッド基板12におけるフィルターユニット11と対向する面には、コネクター12aが設置される。コネクター12aは、後述のコネクター基板17に接続される接続部品である。また、ヘッド基板12には、4つの孔12b、4つの貫通孔12c、2つの切欠き12e、2つの切欠き12f、切欠き12g、切欠き12hが設けられる。4つの孔12bの夫々は、フィルターユニット11とホルダーユニット13との接続を許容するための孔である。2つの切欠き12fの夫々、切欠き12g、及び、切欠き12hも、フィルターユニット11とホルダーユニット13との接続を許容するための切欠きである。4つの貫通孔12cの夫々は、ヘッドチップ14とヘッド基板12とを接続する配線基板18hが挿入される孔である。2つの切欠き12eの夫々によって形成される空間にも、配線基板18hが挿入される。液体噴射ヘッド10は、4つの貫通孔12cの夫々に挿入される4つの配線基板18hと、2つの切欠き12eの夫々によって形成される空間とに挿入される2つの配線基板18hとを有する。貫通孔12cに配線基板18hに挿入されても、貫通孔12cは閉塞されない。これらの6つの配線基板18hは、ヘッド基板12のZ1方向を向く面に接続される。配線基板18hは、後述する圧電素子14eと電気的に接続される配線を含む部材である。
【0032】
ホルダーユニット13は、複数のヘッドチップ14を収容及び支持する構造体である。ホルダーユニット13は、例えば、樹脂材料又は金属材料等で構成される。ホルダーユニット13は、流路プレートDu1と、流路プレートDu2と、ホルダーDu3と、を有する。ホルダーDu3と、流路プレートDu2と、流路プレートDu1とは、この順でZ1方向に積層される。ホルダーユニット13には、Z軸に沿って貫通する6つの貫通孔13eが設けられる。更に、流路プレートDu1のZ1方向を向く面には、接続管13a、接続管13b、3つの接続管13c、3つの接続管13d、接続管13fが設けられる。ホルダーDu3には、液体噴射ヘッド10を支持体41に固定するためのフランジDu3aが設けられる。また、図示しないが、ホルダーユニット13のZ2方向を向く面には、複数のヘッドチップ14を収容する複数の凹部が設けられる。
【0033】
本実施形態では、ホルダーユニット13には、6個のヘッドチップ14_1~14_6が保持される。これらのヘッドチップ14は、ヘッドチップ14_1、14_4、14_2、14_5、14_3、14_6の順に、X2方向に並ぶ。ここで、ヘッドチップ14_1~14_3は、ヘッドチップ14_4~14_6に対してY1方向にずれた位置に配置される。ただし、ヘッドチップ14_1~14_6は、X1方向又はX2方向にみて互いに重なる部分を有する。また、ヘッドチップ14_1~14_6の後述する複数のノズルNの配列方向DNが互いに平行である。更に、ヘッドチップ14_1~14_6の夫々は、媒体Mの搬送方向である方向DMに対して配列方向DNが傾斜するように配置される。
【0034】
ここで、図示を省略するが、ホルダーユニット13の内部には、第1分配供給流路、第2分配供給流路、複数の第1個別排出流路、複数の第2個別排出流路及び複数のバイパス流路BP、並びに、気体供給機構160からの気体を流動させる経路の一部が設けられる。第1分配供給流路は、複数のヘッドチップ14に第1インクを供給するための分岐を有する流路である。第2分配供給流路は、複数のヘッドチップ14に第2インクを供給するための分岐を有する流路である。第1個別排出流路は、第1インクを排出するヘッドチップ14ごとに設けられ、ヘッドチップ14から排出される第1インクをフィルターユニット11の第1排出流路CM1に導入するための流路である。第2個別排出流路は、第2インクを排出するヘッドチップ14ごとに設けられ、ヘッドチップ14から排出される第2インクをフィルターユニット11の第2排出流路CM2に導入するための流路である。バイパス流路BPは、ヘッドチップ14ごとに2個ずつ設けられ、後述の第1共通液室R1と第2共通液室R2とを連通させる迂回流路である。なお、ホルダーユニット13の経路については、後述の図7図11、及び、図12に基づいて説明する。
【0035】
接続管13a、13b、13c、13d、及び、13fは、面Sa1からZ1方向に突出する管状の突起である。より具体的には、接続管13aは、ホルダーユニット13の第1分配供給流路に第1インクを供給するための流路を構成する管体であり、フィルターユニット11の第1供給流路CC1に連通する。また、接続管13bは、ホルダーユニット13の第2分配供給流路に第2インクを供給するための流路を構成する管体であり、フィルターユニット11の第2供給流路CC2に連通する。一方、接続管13cは、第1個別排出流路から第1インクを排出するための流路を構成する管体であり、フィルターユニット11の第1排出流路CM1に連通する。また、接続管13dは、第2個別排出流路から第2インクを排出するための流路を構成する管体であり、フィルターユニット11の第2排出流路に連通する。貫通孔13eは、ヘッドチップ14とヘッド基板12とを接続する配線基板18hが挿入される。貫通孔13eに配線基板18hが挿入されても、貫通孔13eは閉塞されない。接続管13fは、連通部C1に気体を供給するための経路を構成する管体であり、フィルターユニット11の連通部C1に連通する。
【0036】
各ヘッドチップ14は、インクを噴射する。具体的には、図3では図示を省略するが、各ヘッドチップ14は、第1インク又は第2インクを噴射する複数のノズルNを有する。これらのノズルNは、各ヘッドチップ14のZ2方向を向く面であるノズル面FNに設けられる。ヘッドチップ14の詳細については、後述の図4に基づいて説明する。
【0037】
固定板15は、複数のヘッドチップ14をホルダーユニット13に対して固定するための板部材である。具体的には、固定板15は、ホルダーユニット13との間に複数のヘッドチップ14を挟む状態で配置され、ホルダーユニット13に対して接着剤により固定される。固定板15は、例えば、金属材料等で構成される。固定板15には、当該複数のヘッドチップ14のノズルNを露出させるための複数の開口15aが設けられる。図3に示す例では、当該複数の開口15aは、ヘッドチップ14ごとに個別に設けられる。
【0038】
保護ケース16は、コネクター基板17を保護するとともに、フィルターユニット11に対してコネクター基板17を固定するための部材である。保護ケース16は、例えば、樹脂材料等で構成される。保護ケース16は、部材16aと部材16bとを有する。部材16aは、XZ平面に延在する略平板の部材である。部材16aの4つの頂点の夫々の付近には、部材16bに取り付けるためのY1方向に延びる爪16cを有する。更に、部材16aには、コネクター基板17を押圧する押圧部材16dが設けられる。部材16aが部材16bに取り付けられることにより、保護ケース16には、Z軸に沿って保護ケース16を貫通する貫通孔16hが形成される。
【0039】
部材16bは、Z軸に貫通する開口を有する略直方体の部材である。部材16bのY2方向を向く面には、部材16aを取り付けるための切欠き16eが設けられる。更に、部材16bのX1方向及びX2方向の側面には、部材16aが有する4つの爪16cのうち、Z2方向に位置する2つの爪16cが挿入される切欠き16fが設けられる。更に、部材16bは、フィルターユニット11に固定するためのフランジ16gが設けられる。保護ケース16とフィルターユニット11とは、フランジ16gに形成された不図示の孔及びフィルターユニット11の面Sa1に形成された不図示のネジ孔にネジが挿入及び螺合されることで固定される。
【0040】
コネクター基板17は、制御ユニット120と前述のヘッド基板12とを電気的に接続するための実装部品である。コネクター基板17は、例えば、リジット配線基板である。コネクター基板17は、貫通孔16hに挿入される。貫通孔16hにコネクター基板17が挿入されても、貫通孔16hは閉塞されない。コネクター基板17のX1方向及びX2方向の側面には、部材16aが有する4つの爪16cのうち、Z1方向に位置する2つの爪16cが挿入される切欠き17aが設けられる。更に、コネクター基板17のY1方向を向く面のZ1方向の端部、及び、Y2方向を向く面のZ1方向の端部には、制御ユニット120と接続するためのコネクター17bが設けられる。また、コネクター基板17のY1方向を向く面のZ2方向の端部には、コネクター12aに接続されるコネクター17cが設けられる。
【0041】
1-4.ヘッドチップ14
図4は、液体噴射ヘッド10の有するヘッドチップ14の流路を模式的に示す平面図である。以下の説明は、便宜上、X軸、Y軸及びZ軸のほか、V軸及びW軸を適宜に用いて行う。また、V軸に沿う一方向がV1方向であり、V1方向と反対の方向がV2方向である。同様に、W軸に沿って互いに反対の方向がW1方向及びW2方向である。
【0042】
ここで、V軸は、後述の複数のノズルNの配列方向DNに沿う軸であり、Y軸をZ軸まわりに所定角度で回転させた軸である。W軸は、X軸をZ軸まわりに当該所定角度で回転させた軸である。従って、V軸及びW軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。また、当該所定角度、すなわち、V軸とY軸とのなす角度、又は、W軸とX軸とのなす角度は、例えば、40°以上60°以下の範囲内である。
【0043】
図4に示すように、ヘッドチップ14には、複数のノズルNと複数の個別流路PJと第1共通液室R1と第2共通液室R2とが設けられる。ここで、第1共通液室R1及び第2共通液室R2は、複数の個別流路PJを介して連通する。また、図4中の二点鎖線で示すように、第1共通液室R1及び第2共通液室R2には、バイパス流路BP1、BP2が接続される。以下、バイパス流路BP1及びBP2を、「バイパス流路BP」と総称することがある。バイパス流路BP1、BP2は、複数の個別流路PJを迂回して第1共通液室R1と第2共通液室R2とを連通させる流路であり、ホルダーユニット13に設けられる。
【0044】
ヘッドチップ14は、媒体Mに対向する表面を有し、当該表面には、図4に示すように、複数のノズルNが設けられる。複数のノズルNは、V軸に沿って配列される。複数のノズルNの夫々は、Z2方向にインクを噴射する。
【0045】
ここで、複数のノズルNの集合は、ノズル列Lnを構成する。また、複数のノズルNは、所定のピッチで等間隔に配列される。当該所定のピッチは、V軸に沿う方向における複数のノズルNの中心間の距離である。
【0046】
複数のノズルNの夫々には、個別流路PJが連通する。複数の個別流路PJの夫々は、W軸に沿って延びており、互いに異なるノズルNに連通する。複数の個別流路PJは、V軸に沿って配列される。
【0047】
図4に示すように、各個別流路PJは、圧力室Caと圧力室Cbとノズル流路Nfと個別供給流路Ra1と個別排出流路Ra2と第1連通流路Na1と第2連通流路Na2とを有する。
【0048】
各個別流路PJにおける圧力室Ca及び圧力室Cbの夫々は、W軸に沿って延びており、当該個別流路PJに連通するノズルNから噴射されるインクが貯留される空間である。図4に示す例では、複数の圧力室Caは、V軸に沿って配列される。同様に、複数の圧力室Cbは、V軸に沿って配列される。なお、各個別流路PJにおいて、V軸に沿う方向における圧力室Ca及び圧力室Cbの位置は、図4に示す例では互いに同じであるが、互いに異なってもよい。なお、以下では、圧力室Ca及び圧力室Cbを特に区別しない場合に、これらの夫々を「圧力室C」という場合がある。
【0049】
各個別流路PJにおける圧力室Caと圧力室Cbとの間には、ノズル流路Nfが配置される。ここで、圧力室Caは、Z軸に沿って延びる第1連通流路Na1を介してノズル流路Nfに連通する。圧力室Cbは、Z軸に沿って延びる第2連通流路Na2を介してノズル流路Nfに連通する。
【0050】
各個別流路PJにおいて、ノズル流路Nfは、W軸に沿って延びる空間である。また、複数のノズル流路Nfは、互いに間隔をあけてV軸に沿って配列される。各ノズル流路Nfには、ノズルNが設けられる。各ノズル流路Nfでは、前述の圧力室Ca及び圧力室Cb内の圧力が変化することで、ノズルNからインクが噴射される。
【0051】
第1連通流路Na1及び第2連通流路Na2の夫々は、Z軸に沿って延びる空間である。なお、第1連通流路Na1及び第2連通流路Na2は、必要に応じて設ければよく、省略してもよい。
【0052】
複数の個別流路PJには、第1共通液室R1及び第2共通液室R2が連通する。ここで、圧力室Caは、Z軸に沿って延びる個別供給流路Ra1を介して第1共通液室R1に連通する。圧力室Cbは、Z軸に沿って延びる個別排出流路Ra2を介して第2共通液室R2に連通する。
【0053】
第1共通液室R1及び第2共通液室R2の夫々は、複数のノズルNが分布する全範囲に亘ってV軸に沿って延びる空間である。ここで、第1共通液室R1は、各個別流路PJのW2方向での端に接続される。第1共通液室R1には、各個別流路PJに供給するためのインクが貯留される。一方、第2共通液室R2は、各個別流路PJのW1方向での端に接続される。第2共通液室R2には、噴射に供されずに各個別流路PJから排出されるインクが貯留される。
【0054】
第1共通液室R1には、供給口IO1と排出口IO3aと排出口IO3bとが設けられる。供給口IO1は、ホルダーユニット13の分配供給流路SPから第1共通液室R1にインクを導入するための管路である。排出口IO3aは、第1共通液室R1からバイパス流路BP1にインクを排出するための管路である。排出口IO3bは、第1共通液室R1からバイパス流路BP2にインクを排出するための管路である。
【0055】
ここで、分配供給流路SPは、フィルターユニット11の供給流路CCを介して循環機構150に接続される。従って、接続管11a又は接続管11bから第1共通液室R1に至る流路は、複数の圧力室Cに対して共通に設けられており、複数の個別流路PJにインクを供給する共通供給流路CF1を構成する。なお、供給流路CCは、後述の第1供給流路CC1又は第2供給流路CC2である。また、図4では図示しないが、共通供給流路CF1には、第1共通液室R1、分配供給流路SP及び供給流路CCのほか、後述の第1フィルター室RF1又は第2フィルター室RF2も含まれる。
【0056】
第2共通液室R2には、排出口IO2と導入口IO4aと導入口IO4bとが設けられる。排出口IO2は、第2共通液室R2からホルダーユニット13の個別排出流路DSにインクを排出するための管路である。導入口IO4aは、バイパス流路BP1から第2共通液室R2にインクを導入するための管路である。導入口IO4bは、バイパス流路BP2から第2共通液室R2にインクを導入するための管路である。
【0057】
ここで、個別排出流路DSは、フィルターユニット11の排出流路CMを介して循環機構150に接続される。従って、第2共通液室R2から接続管11a又は接続管11bに至る流路は、複数の圧力室Cに対して共通に設けられており、複数の個別流路PJからインクを排出させる共通排出流路CF2を構成する。なお、排出流路CMは、後述の第1排出流路CM1又は第2排出流路CM2である。
【0058】
図5は、液体噴射ヘッド10の有するヘッドチップ14の断面図である。図5では、ヘッドチップ14に加えて、配線基板18hも表示してある。図5では、W軸及びZ軸を含む平面で切断されるヘッドチップ14の断面が示される。ヘッドチップ14は、図5に示すように、ノズル基板14a、流路基板14b、圧力室基板14c及び振動板14dと複数の圧電素子14eとケース14fと保護板14gとを有する。
【0059】
ノズル基板14a、流路基板14b、圧力室基板14c及び振動板14dは、この順にZ1方向に向かって積層される。これらの各部材は、V軸に沿って延びており、例えば、半導体加工技術を用いてシリコンの単結晶基板を加工することにより製造される。また、これらの部材は、接着剤等により互いに接合される。なお、これらの部材のうちの隣り合う2つの部材間には、接着層等の他の層又は基板が適宜に介在してもよい。
【0060】
ノズル基板14aには、複数のノズルNが設けられる。複数のノズルNの夫々は、ノズル基板14aを貫通しており、インクを通過させる貫通孔である。複数のノズルNは、V軸に沿う方向に配列される。
【0061】
流路基板14bには、第1共通液室R1及び第2共通液室R2の夫々の一部と複数の個別流路PJにおける圧力室Ca及び圧力室Cbを除く部分とが設けられる。すなわち、流路基板14bには、ノズル流路Nf、第1連通流路Na1、第2連通流路Na2、個別供給流路Ra1及び個別排出流路Ra2が設けられる。
【0062】
第1共通液室R1及び第2共通液室R2の夫々の一部は、流路基板14bを貫通する空間である。流路基板14bのZ2方向を向く面には、当該空間による開口を閉塞する吸振体14jが設置される。
【0063】
吸振体14jは、弾性材料で構成される層状部材である。吸振体14jは、第1共通液室R1及び第2共通液室R2の夫々の壁面の一部を構成しており、第1共通液室R1及び第2共通液室R2における圧力変動を吸収する。
【0064】
ノズル流路Nfは、流路基板14bのZ2方向を向く面に設けられる溝内の空間である。ここで、ノズル基板14aは、ノズル流路Nfの壁面の一部を構成する。
【0065】
第1連通流路Na1及び第2連通流路Na2の夫々は、流路基板14bを貫通する空間である。
【0066】
個別供給流路Ra1及び個別排出流路Ra2の夫々は、流路基板14bを貫通する空間である。個別供給流路Ra1は、第1共通液室R1と圧力室Caとを連通させており、第1共通液室R1からのインクを圧力室Caに供給する。ここで、個別供給流路Ra1の一端は、流路基板14bのZ1方向を向く面に開口する。一方、個別供給流路Ra1の他端は、個別流路PJの上流側の端であり、流路基板14bにおける第1共通液室R1の壁面に開口する。これに対し、個別排出流路Ra2は、第2共通液室R2と圧力室Cbとを連通させており、圧力室Cbからのインクを第2共通液室R2に排出する。ここで、個別排出流路Ra2の一端は、流路基板14bのZ1方向を向く面に開口する。一方、個別排出流路Ra2の他端は、個別流路PJの下流側の端であり、流路基板14bにおける第2共通液室R2の壁面に開口する。
【0067】
圧力室基板14cには、複数の個別流路PJの圧力室Ca及び圧力室Cbが設けられる。圧力室Ca及び圧力室Cbの夫々は、圧力室基板14cを貫通しており、流路基板14bと振動板14dとの間における間隙である。
【0068】
振動板14dは、弾性的に振動可能な板状部材である。振動板14dは、例えば、酸化シリコン(SiO2)で構成される第1層と、酸化ジルコニウム(ZrO2)で構成される第2層と、を含む積層体である。ここで、第1層と第2層との間には、金属酸化物等の他の層が介在してもよい。なお、振動板14dの一部又は全部は、圧力室基板14cと同一材料で一体に構成されてもよい。例えば、所定厚の板状部材における圧力室Cに対応する領域について厚さ方向の一部を選択的に除去することで、振動板14d及び圧力室基板14cを一体に形成することができる。また、振動板14dは、単一材料の層で構成されてもよい。
【0069】
振動板14dのZ1方向を向く面には、相異なる圧力室Cに対応する複数の圧電素子14eが設置される。各圧電素子14eは、例えば、互いに対向する第1電極及び第2電極と、両電極間に配置される圧電体層との積層により構成される。各圧電素子14eは、圧力室C内のインクの圧力を変動させることで圧力室C内のインクをノズルNから噴射させる。圧電素子14eは、駆動信号Comが供給されることにより、自身の変形に伴い、振動板14dを振動させる。この振動に伴って、圧力室Cが膨張及び伸縮することにより、圧力室C内のインクの圧力が変動する。なお、圧電素子14eは、「駆動素子」の一例である。但し、ヘッドチップ14は、圧電素子14eの替わりに発熱素子を有してもよい。
【0070】
ケース14fは、インクを貯留するためのケースである。ケース14fには、第1共通液室R1及び第2共通液室R2の夫々について流路基板14bに設けられる一部以外の残部を構成する空間が設けられる。駆動回路18iは、ケース14fの外側に配置されている。
【0071】
保護板14gは、振動板14dのZ1方向を向く面に設置される板状部材であり、複数の圧電素子14eを保護するとともに振動板14dの機械的な強度を補強する。ここで、保護板14gと振動板14dとの間には、複数の圧電素子14eを収容する空間が形成される。
【0072】
配線基板18hは、振動板14dのZ1方向を向く面に実装されており、制御ユニット120とヘッドチップ14とを電気的に接続するための実装部品である。配線基板18hは、例えば、FPC等のフレキシブル基板で構成される。配線基板18hがFPCである場合、配線基板18hは駆動回路18iとともにCOFを構成する。なお、FPCは、Flexible Printed Circuitsの略語である。COFは、Chip On Filmの略語である。配線基板18hには、ヘッドチップ14を駆動するための駆動回路18iが実装される。
【0073】
駆動回路18iは、インクを噴射するための圧電素子14eを駆動するための駆動信号Comを供給するか否かを選択可能なスイッチング素子を含む集積回路である。具体的には、このスイッチング素子は、制御ユニット120から供給された制御信号SIが、圧電素子14eを駆動することを指示する信号である場合、圧電素子14eに駆動信号Comを供給することを選択する。また、このスイッチング素子は、制御ユニット120から供給された制御信号SIが、圧電素子14eを駆動しないことを指示する信号である場合、圧電素子14eに駆動信号Comを供給しないことを選択する。
【0074】
以上の構成のヘッドチップ14では、前述の循環機構150の動作により、インクが第1共通液室R1、個別供給流路Ra1、圧力室Ca、ノズル流路Nf、圧力室Cb、個別排出流路Ra2及び第2共通液室R2にこの順に流動する。
【0075】
また、駆動回路18iからの駆動信号Comにより、圧力室Ca及び圧力室Cbの両方に対応する圧電素子14eが同時に駆動することで、圧力室Ca及び圧力室Cbの圧力を変動させ、その圧力変動に伴ってノズルNからインクが噴射される。
【0076】
1-5.液体噴射ヘッド10内の経路
図6は、液体噴射ヘッド10内の経路を模式的に示す図である。図6では、経路の説明を容易にするため、液体噴射ヘッド10内の各要素のZ軸に垂直な方向の位置関係及び各要素の向きを適宜変更してあり、本来の各要素の位置関係及び各要素の向きとは異なる。
【0077】
液体噴射ヘッド10は、気体経路APを有する。気体経路APは、接続管11fの開口である導入部Pinから保護ケース16の開口である排出部Poutまで、気体供給機構160から供給される気体が流れる経路である。前述したように、接続管11fは、面Sa1に設けられる。面Sa1に設けられた接続管11fは、導入部Pinを画定しているため、導入部Pinも、面Sa1に設けられると言える。排出部Poutは、液体噴射ヘッド10の外壁に形成される配線用開口である。図6では、液体噴射ヘッド10内の気体の流れFRa、FRb、及びFRcを示してある。
なお、導入部Pinが、面Sa1に設けられることは、「1又は複数の導入部は、第2部材の第1面に設けられる」ことの一例である。「1又は複数の導入部は、第2部材の第1面に設けられる」ことは、導入部が第2部材の第1面に直接設けられる態様に加え、本実施形態のように、第2部材の第1面に、導入部を画定する部材が設けられる態様を含む。
【0078】
導入部Pinには、気体供給機構160から供給される気体が導入される。排出部Poutは、Z1方向に向かって気体を液体噴射ヘッド10の外部へ排出する。
【0079】
気体経路APは、導入部Pinに接続された供給経路PT1と、排出部Poutに接続された排出経路PT2と、複数のヘッドチップ14の数と同じ数の複数の分岐経路BTとを有する。第1実施形態では、気体経路APは、ヘッドチップ14_1に対応する分岐経路BT_1と、ヘッドチップ14_2に対応する分岐経路BT_2と、ヘッドチップ14_3に対応する分岐経路BT_3と、ヘッドチップ14_4に対応する分岐経路BT_4と、ヘッドチップ14_5に対応する分岐経路BT_5と、ヘッドチップ14_6に対応する分岐経路BT_6とを有する。以下では、分岐経路BT_1、BT_2、BT_3、BT_4、BT_5及びBT_6の夫々を、分岐経路BTと記載する場合がある。ヘッドチップ14に対応する分岐経路BTは、分岐経路BT_1、BT_2、BT_3、BT_4、BT_5、及び、BT_6のうち、ヘッドチップ14に接続する配線基板18hが挿入される分岐経路BTを意味する。6個の分岐経路BTの夫々には、対応するヘッドチップ14を駆動するための駆動回路18iが配置される。
【0080】
なお、第1実施形態では、6個の分岐経路BTは、6個のヘッドチップ14に1対1に対応するが、これに限らない。例えば、複数の分岐経路BTのうち1個の分岐経路BTに、複数、例えば2個のヘッドチップ14の夫々に接続される2個の配線基板18hが挿入されてもよい。つまり、ヘッドチップ14の数が6個であり、1個の分岐経路BTに対応する配線基板18hの数が2個である場合、分岐経路BTは3個設けられることとなる。
【0081】
分岐経路BTは、ホルダーユニット13を形成する流路プレートDu1と、流路プレートDu2と、ホルダーDu3とに設けられた貫通孔によって形成される。6つの分岐経路BTの各分岐経路BTは、他の分岐経路BTを経由しないように、供給経路PT1と排出経路PT2とを接続する。但し、流路プレートDu1と流路プレートDu2との間、及び、流路プレートDu2とホルダーDu3との間には、僅かに隙間が生じていてもよい。つまり、隣り合う分岐経路BTは、流路プレートDu1と流路プレートDu2との間の空間、及び、流路プレートDu2とホルダーDu3との間の空間により連通してもよい。当該隙間が狭いのであれば、隙間を介して隣り合う分岐経路BTの一方から他方へ流れる気体の量は非常に少ないため、流路プレートDu1と流路プレートDu2との間、及び、流路プレートDu2とホルダーDu3との間には、僅かに隙間が生じていたとしても、「6つの分岐経路BTの各分岐経路BTは、他の分岐経路BTを経由しないように、供給経路PT1と排出経路PT2とを接続する」と見做してよい。
【0082】
ここで、駆動回路18iを効率良く冷却するために、液体噴射ヘッド10の内部が密閉されていることが好ましい。言い換えれば、導入部Pinから供給された気体の全てが、排出部Poutから排出されることが好ましく、排出部Pout以外の開口から排出されることは好ましくない。従って、液体噴射ヘッド10の外壁において、固定板15とホルダーユニット13との間、ホルダーユニット13とフィルターユニット11との間、フィルターユニット11と保護ケース16との間、フィルタープレートSu1とフィルタープレートSu2との間、フィルタープレートSu2とフィルタープレートSu3との間、流路プレートDu1と流路プレートDu2との間、及び、流路プレートDu2とホルダーDu3との間には、接着剤等により、隙間が生じないことが好ましい。
【0083】
なお、供給経路PT1が、「第1経路」の一例である。排出経路PT2が、「第2経路」の一例である。ヘッドチップ14_1、14_2、14_3、14_4、14_5及び14_6のうち、ヘッドチップ14_xが「第1ヘッドチップ」の一例であり、ヘッドチップ14_yが「第2ヘッドチップ」の一例であり、ヘッドチップ14_zが「第3ヘッドチップ」の一例である。x、y、及び、zは、1から6までの整数であり、かつ、夫々異なる値である。更に、分岐経路BT_1、BT_2、BT_3、BT_4、BT_5、及び、BT_6のうち、分岐経路BT_xが「第1分岐経路」の一例であり、分岐経路BT_yが「第2分岐経路」の一例であり、分岐経路BT_zが「第3分岐経路」の一例である。ヘッドチップ14_xを駆動するための駆動回路18i_xが、「第1駆動回路」の一例である。ヘッドチップ14_yを駆動するための駆動回路18i_yが、「第2駆動回路」の一例である。ヘッドチップ14_zを駆動するための駆動回路18i_zが、「第3駆動回路」の一例である。ヘッドチップ14_xに接続する配線基板18h_xが、「第1配線基板」の一例である。ヘッドチップ14_yに接続する配線基板18h_yが、「第2配線基板」の一例である。
【0084】
図6に示すように、供給経路PT1は、6個のヘッドチップ14を収容する第1収容空間S1と、導入部Pinから第1収容空間S1とを連通させる連通部C1とを含む。6つの分岐経路BTの夫々は、第1収容空間S1に接続される。第1収容空間S1は、ホルダーユニット13が有する面と、固定板15のZ1方向を向く面とによって区画される空間である。連通部C1は、図6では示していないが、Z軸に直交する方向に延在する部分を含む。連通部C1の詳細は、図7から図9までを用いて後述する。
【0085】
排出経路PT2は、ヘッド基板12を収容する第2収容空間S2と、孔11eと、貫通孔16hとを有する。第2収容空間S2は、フィルターユニット11が有する面と、ホルダーユニット13が有する面とによって区画される空間である。第2収容空間S2には、6つの分岐経路BTが接続される。ホルダーユニット13は、第1収容空間S1と第2収容空間S2との間に配置されるともいえる。図3に示すようにホルダーユニット13は、6個の貫通孔13eを有している。この6個の貫通孔13eの夫々が、分岐経路BTである。なお、ヘッドチップ14_1が「第1ヘッドチップ」に相当する場合、ヘッドチップ14_1に接続された配線基板18hが挿入される貫通孔13eが、「第1貫通孔」の一例である。ヘッドチップ14_2が「第2ヘッドチップ」に相当する場合、ヘッドチップ14_2に接続された配線基板18hが挿入される貫通孔13eが、「第2貫通孔」の一例である。
【0086】
気体供給機構160から供給された気体は、流れFRaが示すように、導入部Pinと、連通部C1を経由して、第1収容空間S1に導入される。流れFRaは、白抜きの矢印により示してある。以下の図示において、白抜きの矢印は、駆動回路18iによって加熱される前の気体の流れを意味する。第1収容空間S1に導入された気体は、流れFRbが示すように、分岐経路BT_1~BT_6のいずれかの分岐経路BTを経由して、第2収容空間S2に到達する。気体が分岐経路BTを経由するときに、気体が駆動回路18iに吹き付けられ、分岐経路BT内に配置された駆動回路18iと気体の間で熱交換が行われる。即ち、駆動回路18iが気体によって冷却され、気体が駆動回路18iによって加熱される。流れFRbは、Z2方向からZ1方向に向かう流れである。流れFRbは、白抜きから網掛けに変化する矢印により示してある。白抜きから網掛けに変化する矢印は、流れの途中で駆動回路18iによって加熱されることを意味している。加熱された気体は、流れFRcが示すように、第2収容空間S2から孔11eと貫通孔16hと排出部Poutとを経由して、Z1方向に排出される。流れFRcは、網掛けの矢印により示してある。網掛けの矢印は、駆動回路18iによって加熱された後の気体の流れを意味する。
【0087】
なお、図6では、加熱された気体の全てが、ヘッド基板12に対してZ1方向の位置で、Z軸に直交する方向に移動し、孔11eと貫通孔16hと排出部Poutとの夫々において、コネクター基板17を基準に導入部Pinに近い空間内を移動する例を示しているが、これに限らない。具体的には、加熱された気体の一部は、ヘッド基板12に対してZ2方向の位置で、Z軸に直交する方向に移動し、孔11eと貫通孔16hと排出部Poutとの夫々において、コネクター基板17を基準に導入部Pinから遠い空間内に移動してもよい。
【0088】
1-6.連通部C1
連通部C1の形状について、図7から図9を用いて説明する。図7は、フィルターユニット11、ヘッド基板12、及び、ホルダーユニット13の分解斜視図である。ただし、図7では、図面の煩雑化を防ぐため、連通部C1以外の形状は、適宜省略してある。図8は、液体噴射ヘッド10の平面図である。図8に示す平面図は、液体噴射ヘッド10をZ2方向に見た平面視であるともいえる。以下、Z2方向に見た平面視を、単に、「平面視」と記載する。図9は、図8のA-A断面を示す断面図である。A-A断面は、接続管11fを通り、且つ、X軸及びZ軸に平行な断面である。また、図9では、図面の煩雑化を防ぐため、ヘッドチップ14_4、14_5、及び、14_6の断面の図示を省略する。図9では、導入部Pinから第1収容空間S1まで流れる気体の流れFRa1を示してある。流れFRa1は、図6に示した流れFRaの一部である。
【0089】
図7及び図9に示すように、連通部C1は、液体噴射ヘッド10のY2方向の外壁の内側に設けられている。図7及び図9に示すように、連通部C1は、接続管部分C10と、第1垂直部分C11と、水平部分C12と、第2垂直部分C13とを有する。接続管部分C10、第1垂直部分C11及び第2垂直部分C13は、Z軸に沿って延在する。接続管部分C10は、接続管11fの内部の空間であり、接続管11fの開口である導入部Pinに連通する。第1垂直部分C11のZ1方向の端部は、接続管部分C10に連通する。第1垂直部分C11のZ2方向の端部は、水平部分C12のX1方向の端部に連通する。第1垂直部分C11は、フィルタープレートSu2のZ軸に沿った開口である。
【0090】
なお、図7に示すように、接続管11a及び11bの開口は、インクを液体噴射ヘッド10の内部に導入するための液体導入部Linである。
上述したように、接続管11a、及び、11bは、面Sa1に設けられる。面Sa1に設けられた接続管11a、及び、11bは、液体導入部Linを画定しているため、液体導入部Linも、面Sa1に設けられたと言える。
液体導入部Linが面Sa1に設けられることは、「第2部材の第1面には、液体を液体噴射ヘッドの内部に導入するための液体導入部が設けられる」ことの一例である。「第2部材の第1面には、液体を液体噴射ヘッドの内部に導入するための液体導入部が設けられる」ことは、液体導入部が第2部材の第1面に直接設けられる態様に加え、本実施形態のように、第2部材の第1面に、液体導入部を画定する部材が設けられる態様を含む。
【0091】
図7及び図9に示すように、フィルタープレートSu2のZ1方向を向く面には、Z2方向に凹む凹部を有し、この凹部により底部Su2aが形成されている。底部Su2aには、Z1方向に突出した接続管Su21が形成される。接続管Su21には、フィルタープレートSu2を貫通する貫通孔が設けられる。接続管Su21に設けられた貫通孔が、第1垂直部分C11である。
【0092】
水平部分C12は、X軸に沿って延在する。X軸は、「噴射方向に直交する方向」の一例である。従って、水平部分C12は、Z軸に直交する方向に延在すればよく、X軸に交差する方向に延在してもよい。水平部分C12のX2方向の一端は、第2垂直部分C13に接続する。また、水平部分C12は、連通部C1の「噴射方向に直交する方向に延在する部分」の一例である。なお、本実施形態の水平部分C12は、Z2方向が鉛直方向であるため、水平方向に沿って延在しているが、Z2方向、厳密にはZ軸が鉛直方向と交差する場合には、水平部分C12は、水平方向とは異なる方向に延在してもよい。接続管部分C10、第1垂直部分C11及び第2垂直部分C13の夫々についても同様であり、Z2方向、厳密にはZ軸が鉛直方向と交差する場合には、接続管部分C10、第1垂直部分C11及び第2垂直部分C13は、水平面に垂直な方向に交差する方向に延在してもよい。
【0093】
図7及び図9に示すように、水平部分C12は、フィルタープレートSu3が有する面とフィルタープレートSu2とから形成される。図7及び図9に示すように、フィルタープレートSu3のZ1方向を向く面には、Z2方向に凹む凹部を有し、この凹部により底部Su3aが形成されている。底部Su3aには、Z1方向に突出した水平部分C12のZ2方向の壁体Su32が形成される。また、図7及び図9に示すように、フィルタープレートSu2のZ2方向を向く面には、Z1方向に凹む凹部を有し、この凹部により底部Su2bが形成されている。底部Su2bには、Z2方向に突出した水平部分C12のZ1方向の壁体Su22が形成される。壁体Su22のZ2方向を向く面と、壁体Su32のZ1方向を向く面と接着することにより、水平部分C12が形成される。
【0094】
第2垂直部分C13は、部分C31と、部分C32と、部分C33と、部分C34とを有する。図7及び図9に示すように、部分C31のZ1方向の端部は、水平部分C12のX2方向の端部に連通する。部分C31のZ2方向の端部は、部分C32のZ1方向の端部に連通する。図7及び図9に示すように、フィルタープレートSu3のZ2方向を向く面には、Z1方向に凹む凹部を有し、この凹部により底部Su3bが形成されている。底部Su2aには、Z2方向に突出した接続管Su31が形成される。接続管Su31には、フィルタープレートSu3を貫通し、水平部分C12に連通する貫通孔が設けられる。接続管Su31に設けられた貫通孔が、部分C31である。
【0095】
図7及び図9に示すように、部分C32のZ2方向の端部は、部分C33のZ1方向の端部に連通する。図7及び図9に示すように、流路プレートDu1のZ1方向を向く面には、Z2方向に凹む凹部を有し、この凹部により底部Du1aが形成されている。底部Du1aには、Z1方向に突出した接続管13fが形成される。接続管13fには、流路プレートDu1を貫通する貫通孔が設けられる。接続管13fに設けられた貫通孔が、部分C32である。接続管13fは、切欠き12gにより形成される空間を貫通して、部分C31に接続する。
【0096】
図7及び図9に示すように、部分C33のZ2方向の端部は、部分C34のZ1方向の端部に連通する。流路プレートDu2には、流路プレートDu2を貫通する貫通孔が設けられる。この貫通孔が、部分C33である。
【0097】
図9に示すように、ホルダーDu3のZ2方向を向く面には、6個のヘッドチップ14を収容するため、Z1方向に凹む凹部を有する。この凹部によって形成される空間が、第1収容空間S1である。部分C34は、連通部C1のZ1方向の端部である。部分C34のZ2方向の端部は、第1収容空間S1に連通する。第1収容空間S1について、図10及び図11を用いて説明する。
【0098】
なお、導入部Pinと第1垂直部分C11との間、第1垂直部分C11と水平部分C12との間、水平部分C12と部分C31との間、部分C31と部分C32との間、部分C33と部分C34との間、及び、部分C34と第1収容空間S1との間の夫々は、接着剤等によって気密に接続されている。つまり、導入部Pinから導入された気体の全ては、連通部C1を介して第1収容空間S1に到達する。
【0099】
1-7.第1収容空間S1
図10は、固定板15を不図示にした場合の液体噴射ヘッド10の底面図である。図10では、第1収容空間S1内の気体の流れFRa2、FRa3、FRa4、FRa5、FRa6、FRa7、FRa8、FRa9、FRa10、FRa11、及び、FRa12を示してある。流れFRa2~FRa12は、図6に示した流れFRaの一部である。
【0100】
図10から理解されるように、平面視において、部分C34は、6個のヘッドチップ14には重ならず、ヘッドチップ14_6の近傍に設けられる。なお、部分C34は、「連通部の第1収容空間に接続される端部」の一例である。
【0101】
部分C34から排出された気体は、第1収容空間S1に充満する。具体的には、部分C34から排出された気体は、流れFRa2が示すように、ヘッドチップ14_6のW1方向の外壁に沿ってV2方向に移動し、ヘッドチップ14_3の外壁まで到達する。流れFRa2は、W1方向に移動する流れFRa3と、V2方向に移動する流れFRa4とに分岐する。ヘッドチップ14_3の外壁に到達した気体の一部は、流れFRa3が示すように、ヘッドチップ14_3のV1方向の外壁に沿ってW1方向に移動し、ヘッドチップ14_5の外壁まで到達する。
【0102】
流れFRa3は、V1方向に移動する流れFRa5と、V2方向に移動する流れFRa6とに分岐する。ヘッドチップ14_5の外壁に到達した気体の一部は、流れFRa6が示すように、ヘッドチップ14_5のV2方向の外壁に沿ってW1方向に移動する。以下も同様であるため、説明を簡略化すると、流れFRa7、FRa8、FRa9、FRa10、FRa11、FRa12により、部分C34から排出された気体は、第1収容空間S1に充満する。
【0103】
なお、図10では示していないが、第1収容空間S1内の気体の流れは、流れFRa2~FRa12以外にも存在する。例えば、流れFRa4は、ヘッドチップ14_3のV2方向の外壁及びW1方向の外壁に沿って移動し、流れFRa6と合流する。同様に、流れFRa5は、ヘッドチップ14_5のV1方向の外壁及びW1の外壁に沿って移動し、流れFRa8と合流する。
【0104】
図11は、図8のB-B断面を示す断面図である。B-B断面は、ヘッドチップ14_6、14_5、14_4、及び、14_1を通過し、且つ、Z軸に平行な断面である。図11では、図面の煩雑化を防ぐため、ヘッドチップ14_6、14_5、14_4、及び、14_1の断面の図示を省略する。図11では、第1収容空間S1から分岐経路BTまでの気体の流れの一部として、流れFRa21、FRa22、FRa23及びFRa24を示してある。流れFRa21、FRa22、FRa23及びFRa24は、図11に示した流れFRaの一部である。
【0105】
第1収容空間S1に充満した気体は、ヘッドチップ14のZ1方向の外壁に沿って移動し、分岐経路BTに到達する。図11の例では、ヘッドチップ14_5のZ軸に直交する方向の外壁付近に存在する気体は、流れFRa21及びFRa22が示すように、Z1方向に移動し、分岐経路BT_5に到達する。同様に、ヘッドチップ14_1のZ軸に直交する方向の外壁付近に存在する気体は、流れFRa23及びFRa24が示すように、Z1方向に移動し、分岐経路BT_1に到達する。分岐経路BTについて、図12を用いて説明する。
【0106】
1-8.分岐経路BT
図12は、図8のC-C断面をV2方向に見た図である。C-C断面は、6個のヘッドチップ14の夫々を駆動させる駆動回路18iを切断する断面である。図12では、図面の煩雑化を防ぐため、ヘッドチップ14_1~14_6の断面の図示を省略する。図12では、分岐経路BT内の気体の流れとして、流れFRbを示してある。
【0107】
図12に示すように、ある1つのヘッドチップ14に関して、駆動回路18iのW軸の位置と、配線基板18hが挿入される貫通孔12c又は切欠き12eのW軸の位置とは、互いに異なる。配線基板18hは、駆動回路18iと、貫通孔12c又は切欠き12eとを経由するために、W1方向及びW2方向に屈曲する。同様に、分岐経路BTも、完全にはZ軸に延在していなく、W1方向及びW2方向に屈曲する。従って、流れFRbも、屈曲した分岐経路BTに沿ってZ1方向に移動する。
【0108】
上述したように、第1収容空間S1は、ホルダーDu3のZ2方向を向く面に設けられた凹部によって掲載される。6個の分岐経路BTは、流路プレートDu1、Du2、ホルダーDu3に設けられた孔である。従って、6個の分岐経路BTは、Z軸において導入部Pinと第1収容空間S1との間に配置される。
【0109】
1-9.排出経路PT2及び排出部Pout
図13を用いて、排出経路PT2及び排出部Poutについて説明する。図13は、図8のD-D断面を示す断面図である。D-D断面は、コネクター17bのX軸方向における中点を通り、且つ、Y軸及びZ軸に平行な断面である。また、図13では、図面の煩雑化を防ぐため、ヘッドチップ14_2、14_5、14_3、及び、14_6の断面の図示を省略する。図13では、第2収容空間S2から排出部Poutまで流れる気体の流れFRcを示してある。また、図13では、導入部Pinを破線で示してある。
【0110】
図13に示すように、第2収容空間S2は、フィルタープレートSu3のZ2方向を向く面に設けられた凹部と、流路プレートDu1のZ1方向を向く面に設けられた凹部とによって形成される。駆動回路18iによって加熱された気体は、流れFRcが示すように、第2収容空間S2内をヘッド基板12に対してZ1方向の位置でY1方向に移動する。更に、この気体は、孔11e、貫通孔16h、及び、排出部Pout内を、コネクター12a及びコネクター基板17に対するY2方向の位置でZ1方向に移動することにより、液体噴射ヘッド10からZ1方向に排出される。
【0111】
図13に示すように、導入部Pinは、Y2方向の端部に設けられており、排出部Poutは、Y1方向の端部に設けられている。導入部Pinと排出部Poutとが設けられる位置が離れることにより、導入部Pinと排出部Poutとが設けられる位置が近い態様と比較して、噴射方向に垂直な方向において導入部Pinから離れたヘッドチップ14に向かって気体を送りやすい。
【0112】
なお、図6でも説明したが、第2収容空間S2から排出部Poutまで流れる気体の流れは、流れFRcに限らない。具体的には、加熱された気体の一部は、ヘッド基板12に対してZ2方向の位置で、Z軸に直交する方向に移動し、孔11e、貫通孔16h、及び、排出部Pout内を、コネクター12a及びコネクター基板17に対するY1方向の位置でZ1方向に移動することにより、液体噴射ヘッド10からZ1方向に排出されてもよい。
【0113】
1-10.気体経路AP内の各経路の位置関係
気体経路AP内の各経路の位置関係について、図14から図16を用いて説明する。
【0114】
図14は、フィルタープレートSu1、保護ケース16、及び、コネクター基板17を不図示にした場合の液体噴射ヘッド10の平面図である。図15は、図14の状態からフィルタープレートSu2を更に不図示にした場合の液体噴射ヘッド10の平面図である。図16は、図15の状態からフィルタープレートSu3を更に不図示にした場合の液体噴射ヘッド10の平面図である。また、図16では、導入部Pinと水平部分C12とを破線で表示してある。
【0115】
図15に示すように、フィルターユニット11の内部には、第1供給流路CC1と第2供給流路CC2と第1排出流路CM1と第2排出流路CM2と第1フィルター室RF1と第2フィルター室RF2とが設けられる。
【0116】
第1供給流路CC1は、接続管11aに導入される第1インクをホルダーユニット13に供給するための流路である。ここで、第1供給流路CC1は、第1フィルター室RF1を介して接続管11aの内部空間に連通する。第1供給流路CC1には、前述の接続管13aに接続される排出口CE1が連通する。
【0117】
第2供給流路CC2は、接続管11bに導入される第2インクを前述のホルダーユニット13に供給するための流路である。ここで、第2供給流路CC2は、第2フィルター室RF2を介して接続管11bの内部空間に連通する。第2供給流路CC2には、前述の接続管13bに接続される排出口CE2が連通する。
【0118】
第1排出流路CM1は、前述のホルダーユニット13からの第1インクを接続管11cから排出するための流路である。第1排出流路CM1には、前述の3個の接続管13cに接続される導入口CI1が連通する。
【0119】
第2排出流路CM2は、前述のホルダーユニット13からの第2インクを接続管11dから排出するための流路である。第2排出流路CM2には、前述の3個の接続管13dに接続される導入口CI2が連通する。
【0120】
図14に示すように、接続管Su21と孔11eとが離れて配置されているため、接続管Su21の貫通孔である第1垂直部分C11と孔11eとは、互いに直接的に連通しない。図15に示すように、壁体Su32と孔11eとが離れて配置されているため、壁体Su32により形成される水平部分C12と孔11eとは、互いに直接的に連通しない。図16に示すように、底部Du1aに接続管13fが形成される。従って、接続管13fの貫通孔である部分C32と、底部Du1aにより形成される第2収容空間S2とは、接続管13fの壁部によって互いに配置されている。従って、連通部C1と排出経路PT2とは、互いに直接的に連通しない。
【0121】
また、図16に示すように、底部Du1aに接続管13fが形成される。すなわち、平面視において、第2収容空間S2の内側に、部分C31及び部分C32が配置される。従って、Z軸に直交する方向に見て、連通部C1と排出経路PT2とは重なる。
【0122】
図16に示すように、平面視において、導入部Pinは、ヘッド基板12に重なる。図16に示すように、平面視において、水平部分C12の両端のうち導入部Pinから遠い一端は、平面視で部分C32と重なる部分である。平面視において、この部分C32と重なる部分は、接続管13fの内側に位置する。従って、水平部分C12の両端のうち部分C32と重なる部分は、第2収容空間S2に重ならない。同様に、水平部分C12の両端のうち部分C32と重なる部分は、ヘッド基板12に重ならない。
【0123】
1-11.第1実施形態のまとめ
以下、1から6までの整数であり、且つ、夫々異なる値であるx、y、zを用いて、第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10について説明する。
【0124】
第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10は、Z2方向へインクを噴射する複数のヘッドチップ14を備える。液体噴射ヘッド10は、気体供給機構160から供給される気体を液体噴射ヘッド10の内部に導入するための導入部Pinと、導入部Pinに供給された気体を液体噴射ヘッド10の外部へ排出するための排出部Poutと、複数のヘッドチップ14の夫々に設けられた複数の駆動回路18iと、を備える。複数のヘッドチップ14は、ヘッドチップ14_xと、ヘッドチップ14_yと、を含む。複数の駆動回路18iは、ヘッドチップ14_xを駆動するための駆動回路18i_xと、ヘッドチップ14_yを駆動するための駆動回路18i_yと、を含む。導入部Pinから排出部Poutまで気体が流れる気体経路APは、導入部Pinに接続された供給経路PT1と、排出部Poutに接続された排出経路PT2と、供給経路PT1と排出経路PT2とを接続する分岐経路BT_xと、分岐経路BT_xを経由しないように供給経路PT1と排出経路PT2とを接続する分岐経路BT_yと、を有する。駆動回路18i_xは、分岐経路BT_xに配置される。駆動回路18i_yは、分岐経路BT_yに配置される。
駆動回路18iは、ヘッドチップ14を駆動することによって発熱する。ヘッドチップ14_xの噴射量とヘッドチップ14_yの噴射量とが互いに異なる場合には、駆動回路18i_xの発熱量と駆動回路18i_yの発熱量とが互いに異なる可能性が高い。駆動回路18i_xの発熱量と駆動回路18i_yの発熱量との大小関係は、画像データImgが示す画像に依存する。駆動回路18i_xと駆動回路18i_yとのいずれか一方の駆動回路18iを優先して冷却する態様では、画像データImgが示す画像によっては、他方の駆動回路18iが一方の駆動回路18iよりも発熱量が大きい場合に、他方の駆動回路18iを充分に冷却することができない虞がある。駆動回路18iが所定の温度に達した場合には、駆動回路18iが熱によって故障してしまうことを防止するため、駆動回路18iが所定の温度以下となるまで駆動回路18iの動作を停止させることが考えられる。しかしながら、駆動回路18iの動作を停止させると、媒体Mに画像を形成することにかかる期間が延びてしまう。
第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10は、駆動回路18iによって加熱されていない気体が、駆動回路18i_xと駆動回路18i_yとに分散されて吹き付けられるため、駆動回路18i_xと駆動回路18i_yとを均一に冷却できる。従って、第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10によれば、駆動回路18i_xと駆動回路18i_yとのいずれか一方の駆動回路18iを優先して冷却する態様と比較して、画像データImgが示す画像によっては駆動回路18iが十分に冷却できない状態を抑制できる。
【0125】
供給経路PT1は、複数のヘッドチップ14を収容する第1収容空間S1と、導入部Pinから第1収容空間S1とを連通させる連通部C1と、を含む。分岐経路BT_x及び分岐経路BT_yの夫々は、第1収容空間S1に接続される。
【0126】
ヘッドチップ14_x及びヘッドチップ14_yに接続されたヘッド基板12を更に備え、排出経路PT2は、ヘッド基板12を収容する第2収容空間S2を含み、分岐経路BT_x及び分岐経路BT_yの夫々は、第2収容空間S2に接続される。
【0127】
また、第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10は、複数のヘッドチップ14に対してZ2方向とは反対方向に積層され、第1収容空間S1と第2収容空間S2との間に配置されたホルダーユニット13と、ヘッド基板12とヘッドチップ14_xとを接続するとともに駆動回路18i_xが設けられた配線基板18h_xと、ヘッド基板12とヘッドチップ14_yとを接続するとともに駆動回路18i_yが設けられた配線基板18h_yと、を更に備える。ホルダーユニット13には、Z2方向に貫通し、配線基板18h_xが挿入される貫通孔13e_xと、Z2方向に貫通し、配線基板18h_yが挿入される貫通孔13e_yと、が形成される。分岐経路BT_xは、貫通孔13e_xであり、分岐経路BT_yは、貫通孔13e_yである。
第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10は、ヘッド基板12とヘッドチップ14とを接続するための貫通孔13eである分岐経路BTに駆動回路18iを配置することにより、駆動回路18iがケース14f内に配置されている構成と比較して、気体経路APの引き回しを簡素化できる。
【0128】
また、液体噴射ヘッド10は、液体噴射ヘッド10のZ1方向とは反対方向を向く面Sa1を画定するフィルターユニット11を更に備え、導入部Pinは、フィルターユニット11の面Sa1に設けられる。
第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10は、液体噴射ヘッド10のZ1方向を向く面Sa1、すなわち、上面に導入部Pinが設けられるため、液体噴射ヘッド10の側面又は底面に導入部Pinが設けられる態様と比較して、気体供給機構160への着脱が容易になる。また、図2に示すように、複数の液体噴射ヘッド10は、X軸に沿って配置される。従って、液体噴射ヘッド10のX1方向又はX2方向の側面に導入部Pinが設けられる態様と比較して、複数の液体噴射ヘッド10を高密度に配置できる。更に、複数の液体噴射ヘッド10は、Y軸に沿って配置されてもよい。複数の液体噴射ヘッド10がY軸に沿って配置される場合、第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10は、液体噴射ヘッド10のY1方向又はY2方向の側面に導入部Pinが設けられる態様と比較して、複数の液体噴射ヘッド10を高密度に配置できる。
【0129】
フィルターユニット11の面Sa1には、インクを液体噴射ヘッド10の内部に導入するための接続管11a及び接続管11bの内部の空間、すなわち、液体導入部Linが設けられる。
第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10の面Sa1には、導入部Pinと液体導入部Linとが共通の部材に設けられるため、導入部Pinと液体導入部Linとが別の部材に設けられる態様と比較して、液体噴射ヘッド10を構成する部品点数の削減を図ることができる。
【0130】
また、排出部Poutは、Z2方向とは反対方向に向かって気体を液体噴射ヘッド10の外部へ排出する。
Z1方向に気体を排出する態様では、媒体Mとノズル面FNとの間に気流が発生し、ノズルNから噴射された液体の媒体Mへの着弾精度が低下する可能性がある。一方、第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10は、Z1方向に気体を排出する態様と比較して、ノズル面FNと媒体Mとの間に気流を発生させることを抑制でき、印刷不良を防止できる。
【0131】
また、分岐経路BT_x及び分岐経路BT_yは、Z2方向において導入部Pinと第1収容空間S1との間に配置され、連通部C1と排出経路PT2とは、互いに直接的に連通しない。
連通部C1と排出経路PT2とが直接的に連通する態様では、供給経路PT1を流れる気体の一部が、分岐経路BTを経由せずに排出経路PT2に流出する。分岐経路BTを経由せずに排出経路PT2に流出した気体は、駆動回路18iを冷却せずに排出部Poutから排出されてしまう。従って、第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10は、連通部C1と排出経路PT2とが直接的に連通する態様と比較して、効率良く駆動回路18iを冷却できる。
【0132】
また、Z2方向に直交する方向に見て、連通部C1と排出経路PT2とは重なる。
第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10は、上述したように、連通部C1と排出経路PT2とが互いに直接的に連通しないことにより効率良く駆動回路18iを冷却しつつ、液体噴射ヘッド10の側面から気体を導入しないので、Z2方向に直交する方向において複数の液体噴射ヘッド10を高密度に配置できる。
【0133】
また、Z2方向に見た平面視において、導入部Pinは、ヘッド基板12に重なり、連通部C1は、Z2方向に直交する方向に延在する水平部分C12を含み、平面視において、水平部分C12の両端のうち導入部Pinから遠い一端は、ヘッド基板12に重ならない。
水平部分C12によってヘッド基板12を迂回するように連通部C1を引き回すことによって、平面視において、導入部Pinを設ける位置が限定されない。即ち、第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10は、導入部Pinを設ける位置の自由度を向上できる。
【0134】
また、Z2方向に見た平面視において、連通部C1の第1収容空間S1に接続される端部は、複数のヘッドチップ14に重ならない。
第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10は、ヘッドチップ14に気体を直接吹き付ける態様と比較して、第1収容空間S1内に気体を流入させやすくできる。第1収容空間S1内に気体を流入させやすくすることにより、駆動回路18iによって加熱されていない気体が、第1収容空間S1内でより均一に充満しやすくなるため、駆動回路18i_xと駆動回路18i_yとを均一に冷却できる。
【0135】
また、Z2方向に見た平面視において、連通部C1の第1収容空間S1に接続される端部は、複数のヘッドチップ14に重ならず、液体噴射ヘッド10の外壁には、ヘッド基板12に接続されるコネクター基板17が挿入される配線用開口が形成され、排出部Poutは、排出経路PT2の一端のみに接続された配線用開口である。
第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10は、ミスト及び紙粉の唯一の侵入経路である配線用開口が排出部Poutの機能を兼ねることにより、排出経路PT2の引き回しを簡素化して小型化するとともに、ミスト及び紙粉の侵入を効率よく防止できる。
第2収容空間S2を供給経路PT1と排出経路PT2の兼用の空間にしないようにすることができ、冷却効率を向上できる。すなわち、第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10は、導入部Pinから供給された気体を、先にヘッドチップ14が存在するZ2方向の端部まで降下してから、複数の分岐経路BTに沿って上方に移動させて第2収容空間S2で分岐経路BTを合流させることにより、ミスト対策と冷却効率向上との両立を図ることができる。
【0136】
なお、本実施形態では、「第2中継基板」として、液体噴射ヘッド10の一部であるコネクター基板17の代わりに、液体噴射ヘッド10の外部の配線部材であり液体噴射ヘッド10と制御ユニット120とを接続するフレキシブルフラットケーブル等の配線部材を設けてもよい。
【0137】
また、導入部Pinの数は、複数のヘッドチップ14の数よりも少ない。
第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10は、ヘッドチップ14に1対1に対応する導入部Pinを設ける場合に比較して構成要素を簡素化でき、且つ、気体供給機構160の着脱を容易にできる。
【0138】
導入部Pinの数は、1つである。
第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10は、複数の導入部Pinを設ける場合に比較して構成要素を簡素化でき、且つ、気体供給機構160の着脱を容易にできる。
【0139】
駆動回路18iは、インクを噴射するための圧電素子14eを駆動するための駆動信号Comを供給するか否かを選択可能なスイッチング素子を含む。
スイッチング素子は、駆動信号Comを供給すること、及び、駆動信号Comを供給する状態と供給しない状態とを切り替えることにより発熱する。第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10によれば、駆動回路18i_xと駆動回路18i_yとのいずれか一方の駆動回路18iを優先して冷却する態様と比較して、画像データImgが示す画像によっては駆動回路18iが十分に冷却できない状態を抑制できる。
【0140】
複数のヘッドチップ14は、ヘッドチップ14_zを含み、複数の駆動回路18iは、ヘッドチップ14_zを駆動するための駆動回路18i_zを含み、気体経路APは、分岐経路BT_x及び分岐経路BT_yを経由しないように供給経路PT1と排出経路PT2とを接続する分岐経路BT_zを有し、駆動回路18i_zは、分岐経路BT_zに配置される。
第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10によれば、駆動回路18iによって加熱されていない気体が、駆動回路18i_xと駆動回路18i_yと駆動回路18i_zとに分散されて吹き付けられるため、駆動回路18i_xと駆動回路18i_yと駆動回路18i_zとを均一に冷却できる。
【0141】
第1実施形態に係る液体噴射装置100は、液体噴射ヘッド10と、液体噴射ヘッド10の導入部Pinに気体を供給する気体供給機構160と、を備える。
第1実施形態に係る液体噴射装置100は、駆動回路18i_xと駆動回路18i_yとを均一に冷却できる。
【0142】
2.変形例
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0143】
2-1.第1変形例
図17は、第1変形例に係る液体噴射ヘッド10-A内の経路を模式的に示す図である。図17では、経路の説明を容易にするため、液体噴射ヘッド10-A内の各要素のZ軸に垂直な方向の位置関係及び各要素の向きを適宜変更してあり、本来の各要素の位置関係及び各要素の向きとは異なる。更に、図17では、液体噴射ヘッド10-A内の気体の流れFRa-A、FRb-A、FRc-A、及び、FRdを示してある。
【0144】
液体噴射ヘッド10-Aは、フィルターユニット11の替わりにフィルターユニット11-Aを有し、ホルダーユニット13の替わりにホルダーユニット13-Aを有する点で、液体噴射ヘッド10と相違する。液体噴射ヘッド10-Aは、フィルターユニット11-A及びホルダーユニット13-Aの形状により、気体経路APの替わりに気体経路AP-Aを有する。気体経路AP-Aは、供給経路PT1の替わりに供給経路PT1-Aを有し、排出経路PT2の替わりに排出経路PT2-Aを有する点で、気体経路APと相違する。供給経路PT1-Aは、連通部C1の替わりに接続部D1を有し、第1収容空間S1の替わりに第2収容空間S2を有する点で、供給経路PT1と相違する。排出経路PT2-Aは、孔11eの替わりに孔11e-Aを有し、第2収容空間S2の替わりに第1収容空間S1を有する点で、排出経路PT2と相違する。
【0145】
接続部D1は、導入部Pinから第2収容空間S2に連通する。孔11e-Aは、第2収容空間S2に連通する点で孔11eと同じである。第1収容空間S1及び第2収容空間S2の夫々は、後述する開口13gを介して互いに連通する点で、第1実施形態の第1収容空間S1及び第2収容空間S2の夫々と相違する。
【0146】
第1変形例において、気体供給機構160から供給された気体は、流れFRa-Aが示すように、導入部Pinと、接続部D1を経由して、第2収容空間S2に導入される。流れFRa-Aは、白抜きの矢印により示してある。第2収容空間S2に導入された気体は、流れFRb-Aが示すように、分岐経路BT_1~BT_6のいずれかの分岐経路BTを経由して、第1収容空間S1に到達する。流れFRb-Aは、Z1方向からZ2方向に向かう流れである。図17に示すように、ホルダーユニット13-Aには、第1収容空間S1と孔11e-Aとを連通する開口13gが設けられている。開口13gには、駆動回路18iが配置されていない。加熱された気体は、流れFRc-Aが示すように、開口13gと孔11e-Aと排出部Poutとを経由して、Z1方向に排出される。流れFRc-Aは、網掛けの矢印により示してある。
【0147】
第1変形例においても、駆動回路18iによって加熱されていない気体が、複数の駆動回路18iの夫々に分散されて吹き付けられるため、複数の駆動回路18iを均一に冷却できる。
【0148】
本変形例では、第2収容空間S2の導入部Pin側の一部は、供給経路PT1-Aの一部であり、第2収容空間S2の残部(換言すれば排出部Pout側の一部)は、排出経路PT2-Aの一部である。つまり、供給経路PT1-Aと排出経路PT2-Aとが直接接続されている。そのため、第1実施形態と第1変形例とを比較すると、第1変形例では、流れFRdに示すように、駆動回路18iによって加熱されていない気体の一部が、孔11e及び排出部Poutを介して排出されてしまう。流れFRdが発生しないようにするため、第2収容空間S2を分割するようなシール部材を設けることも可能であるが、液体噴射ヘッド10の部品点数が上昇してしまう。また、フィルターユニット11-A及びホルダーユニット13-Aの形状を変更することにより、流れFRdが発生しないようにすることもできるが、構造上の制約が多くなってしまう。
【0149】
また、第1変形例では、複数の貫通孔13eを介して、第1収容空間S1から第2収容空間S2へ気体が逆流する虞がある。具体的には、流れFRb-Aにおいて、下流に進む程気体の温度が高くなるが、温度が高くなると密度が低下し上昇しやすくなるため、加熱された気体が、分岐経路BTに沿ってZ1方向に移動する可能性がある。気体が逆流すると、加熱された気体が液体噴射ヘッド10-Aの外部に排出されにくくなるため、冷却効率が低下する。また、前述したように、供給経路PT1-Aと排出経路PT2-Aとが直接接続されているため、供給経路PT1を流れる気体が、分岐経路BTを経由しないで排出経路PT2-Aの方へ流れ、そして排出部Poutではなく開口13gの方へ移動し、開口13g内をZ2方向へ逆流する可能性もある。従って、第1実施形態に係る液体噴射ヘッド10は、第1変形例に係る液体噴射ヘッド10と比較して、冷却効率を向上できる。
【0150】
2-2.第2変形例
上述の各態様では、導入部Pinは、液体噴射ヘッド10の上面、即ち、フィルタープレートSu1の面Sa1に設けられていたが、液体噴射ヘッド10の側面に設けられてもよい。
【0151】
2-3.第3変形例
第1実施形態、及び、第1実施形態に基づく第2変形例において、連通部C1と排出経路PT2とは、互いに直接的に連通しないが、互いに直接的に連通してもよい。
【0152】
2-4.第4変形例
第1実施形態、第1実施形態に基づく第2変形例、及び、第1実施形態又は第2変形例に基づく第3変形例では、平面視において、連通部C1の第1収容空間S1に接続される端部は、複数のヘッドチップ14に重ならないが、複数のヘッドチップ14のいずれかのヘッドチップ14に重なってもよい。
【0153】
2-5.第5変形例
上述の各態様において、排出部Poutには、コネクター基板17が挿入されるが、これに限らない。
【0154】
図18は、第5変形例に係る液体噴射ヘッド10-B内の経路を模式的に示す図である。図18では、経路の説明を容易にするため、液体噴射ヘッド10-B内の各要素のZ軸に垂直な方向の位置関係及び各要素の向きを適宜変更してあり、本来の各要素の位置関係及び各要素の向きとは異なる。更に、図18では、液体噴射ヘッド10-B内の気体の流れFRa、FRb、FRc-Bを示してある。
【0155】
液体噴射ヘッド10-Bは、フィルターユニット11の替わりにフィルターユニット11-Bを有し、コネクター基板17の替わりに配線部材19を有し、保護ケース16を有さない点で、液体噴射ヘッド10と相違する。
【0156】
フィルターユニット11-Bは、平面視において、コネクター12aと重ならない点で、フィルターユニット11と相違する。平面視においてフィルターユニット11-Bがコネクター12aと重ならないことにより、ヘッド基板12のうちコネクター12aを含む一部の領域が液体噴射ヘッド10の外部に露出する。配線部材19は、液体噴射ヘッド10の外部の配線部材であり、液体噴射ヘッド10と制御ユニット120とを接続する。配線部材19の一端は、コネクター12aに接続される。配線部材19は、例えば、フレキシブルフラットケーブルである。
【0157】
液体噴射ヘッド10-Bは、フィルターユニット11-B及びホルダーユニット13の形状により、気体経路APの替わりに気体経路AP-Bを有する。気体経路AP-Bは、排出経路PT2の替わりに排出経路PT2-Bを有する点で、気体経路APと相違する。排出経路PT2-Bは、孔11e及び貫通孔16hを有さない点で、排出経路PT2と相違する。
【0158】
第5変形例に係る第2収容空間S2は、液体噴射ヘッド10-Bの外壁に形成された排出部Pout-Bに接続する。排出部Pout-Bは、フィルターユニット11-Bとホルダーユニット13によって画定される開口である。排出部Pout-Bは、ヘッド基板12が挿入される配線用開口であるとも言える。排出部Pout-Bは、排出経路PT-Bの一端のみに接続される。
【0159】
図18に示すように、流れFRc-Bは、第5変形例に係る第2収容空間S2から排出部Pout-Bを経由して、Z軸に垂直な方向に排出される。第5変形例に示すように、排出部Pout-Bは、噴射方向とは反対であるZ1方向以外の方向に向かって気体を液体噴射ヘッド10-Bの外部へ排出する。
【0160】
2-6.第6変形例
上述の液体噴射装置100は、図1に例示したように、複数の液体噴射ヘッド10が支持体41に固定されて媒体Mを搬送するだけで印刷を行う、所謂ライン型の液体噴射装置であるが、液体噴射装置の構成は上述したものに限定されない。例えば、複数の液体噴射ヘッド10をキャリッジに搭載して、当該複数の液体噴射ヘッド10をX軸方向に沿って往復移動させるとともに、媒体Mを搬送して印刷を行う、所謂シリアル型の液体噴射装置にも本発明を適用できる。
【0161】
2-7.その他の変形例
上述の液体噴射装置は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置及びコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体噴射装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を噴射する液体噴射装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を噴射する液体噴射装置は、配線基板の配線及び電極を形成する製造装置として利用される。
【0162】
3.付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0163】
好適な態様である態様1に係る液体噴射ヘッドは、噴射方向へ液体を噴射する複数のヘッドチップを備える液体噴射ヘッドであって、気体供給機構から供給される気体を前記液体噴射ヘッドの内部に導入するための1又は複数の導入部と、前記1又は複数の導入部に供給された気体を前記液体噴射ヘッドの外部へ排出するための排出部と、前記複数のヘッドチップの夫々に設けられた複数の駆動回路と、を備え、前記複数のヘッドチップは、第1ヘッドチップと、第2ヘッドチップと、を含み、前記複数の駆動回路は、前記第1ヘッドチップを駆動するための第1駆動回路と、前記第2ヘッドチップを駆動するための第2駆動回路と、を含み、前記1又は複数の導入部から前記排出部まで気体が流れる気体経路は、前記1又は複数の導入部に接続された第1経路と、前記排出部に接続された第2経路と、前記第1経路と前記第2経路とを接続する第1分岐経路と、前記第1分岐経路を経由しないように前記第1経路と前記第2経路とを接続する第2分岐経路と、を有し、前記第1駆動回路は、前記第1分岐経路に配置され、前記第2駆動回路は、前記第2分岐経路に配置される、ことを特徴とする。
態様1によれば、駆動回路によって加熱されていない気体が、第1駆動回路と第2駆動回路とに分散されて吹き付けられるため、第1駆動回路と第2駆動回路とを均一に冷却できる。
【0164】
態様1の具体例である態様2において、前記第1経路は、前記複数のヘッドチップを収容する第1収容空間と、前記1又は複数の導入部から前記第1収容空間とを連通させる連通部と、を含み、前記第1分岐経路及び前記第2分岐経路の夫々は、前記第1収容空間に接続される、ことを特徴とする。
【0165】
態様2の具体例である態様3において、前記第1ヘッドチップ及び前記第2ヘッドチップに接続された第1中継基板を更に備え、前記第2経路は、前記第1中継基板を収容する第2収容空間を含み、前記第1分岐経路及び前記第2分岐経路の夫々は、前記第2収容空間に接続される、ことを特徴とする。
【0166】
態様3の具体例である態様4において、前記複数のヘッドチップに対して前記噴射方向とは反対方向に積層され、前記第1収容空間と前記第2収容空間との間に配置された第1部材と、前記第1中継基板と前記第1ヘッドチップとを接続するとともに前記第1駆動回路が設けられた第1配線基板と、前記第1中継基板と前記第2ヘッドチップとを接続するとともに前記第2駆動回路が設けられた第2配線基板と、を更に備え、前記第1部材には、前記噴射方向に貫通し、前記第1配線基板が挿入される第1貫通孔と、前記噴射方向に貫通し、前記第2配線基板が挿入される第2貫通孔と、が形成され、前記第1分岐経路は、前記第1貫通孔であり、前記第2分岐経路は、前記第2貫通孔である、ことを特徴とする。
態様4によれば、第1中継基板とヘッドチップとを接続するための貫通孔である分岐経路に駆動回路を配置することにより、駆動回路がヘッドチップ内に配置されている構成と比較して、気体経路の引き回しを簡素化できる。
【0167】
態様1の具体例である態様5において、前記液体噴射ヘッドの前記噴射方向とは反対方向を向く第1面を画定する第2部材を更に備え、前記1又は複数の導入部は、前記第2部材の前記第1面に設けられる、ことを特徴とする。
態様5によれば、液体噴射ヘッドの噴射方向の反対方向を向く第1面、すなわち、上面に導入部が設けられるため、液体噴射ヘッドの側面又は底面に導入部が設けられる態様と比較して、気体供給機構への着脱が容易になる。
【0168】
態様5の具体例である態様6において、前記第2部材の前記第1面には、液体を前記液体噴射ヘッドの内部に導入するための液体導入部が設けられる、ことを特徴とする。
態様6によれば、第1面には、導入部と液体導入部とが共通の部材に設けられるため、導入部と液体導入部とが別の部材に設けられる態様と比較して、液体噴射ヘッドを構成する部品点数の削減を図ることができる。
【0169】
態様1の具体例である態様7において、前記排出部は、前記噴射方向とは反対方向に向かって気体を前記液体噴射ヘッドの外部へ排出する、ことを特徴とする。
態様7によれば、噴射方向に気体を排出する態様と比較して、ノズル面と媒体との間に気流を発生させることを抑制でき、印刷不良を防止できる。
【0170】
態様2の具体例である態様8において、前記第1分岐経路及び前記第2分岐経路は、前記噴射方向において前記1又は複数の導入部と前記第1収容空間との間に配置され、前記連通部と前記第2経路とは、互いに直接的に連通しない、ことを特徴とする。
態様8によれば、連通部と第2経路とが直接的に連通する態様と比較して、効率良く駆動回路を冷却できる。
【0171】
態様8の具体例である態様9において、前記噴射方向に直交する方向に見て、前記連通部と前記第2経路とは重なる、ことを特徴とする。
態様9によれば、上述したように、連通部と第2経路とが、互いに直接的に連通しないようにしないことにより効率良く駆動回路を冷却しつつ、液体噴射ヘッドの側面から気体を導入しないので、噴射方向に垂直な方向において複数の液体噴射ヘッドを高密度に配置できる。
【0172】
態様3の具体例である態様10において、前記噴射方向に見た平面視において、前記1又は複数の導入部は、前記第1中継基板に重なり、前記連通部は、前記噴射方向に直交する方向に延在する部分を含み、前記平面視において、前記部分の両端のうち前記導入部から遠い一端は、前記第1中継基板に重ならない、ことを特徴とする。
噴射方向に直交する方向に延在する部分によって第1中継基板を迂回するように連通部を引き回すことによって、平面視において、導入部を設ける位置が限定されない。即ち、態様10によれば、導入部を設ける位置の自由度を向上できる。
【0173】
態様2の具体例である態様11において、前記噴射方向に見た平面視において、前記連通部の前記第1収容空間に接続される端部は、前記複数のヘッドチップに重ならない、ことを特徴とする。
態様11によれば、ヘッドチップに気体を直接吹き付ける態様と比較して、第1収容空間内に気体を流入させやすくできる。
【0174】
態様3の具体例である態様12において、前記噴射方向に見た平面視において、前記連通部の前記第1収容空間に接続される端部は、前記複数のヘッドチップに重ならず、前記液体噴射ヘッドの外壁には、前記第1中継基板、又は、前記第1中継基板に接続される第2中継基板が挿入される配線用開口が形成され、前記排出部は、前記第2経路の一端のみに接続された前記配線用開口である、ことを特徴とする。
態様12によれば、ミスト及び紙粉の唯一の侵入経路である配線用開口が排出部の機能を兼ねることにより、第2経路の引き回しを簡素化して小型化するとともに、ミスト及び紙粉の侵入を効率よく防止できる。
【0175】
態様1の具体例である態様13において、前記1又は複数の導入部の数は、前記複数のヘッドチップの数よりも少ない、ことを特徴とする。
態様13によれば、ヘッドチップに1対1に対応する導入部を設ける場合に比較して構成要素を簡素化でき、且つ、気体供給機構の着脱を容易にできる。
【0176】
態様1の具体例である態様14において、前記1又は複数の導入部の数は、1つである、ことを特徴とする。
態様14によれば、複数の導入部を設ける場合に比較して構成要素を簡素化でき、且つ、気体供給機構の着脱を容易にできる。
【0177】
態様1の具体例である態様15において、前記駆動回路は、液体を噴射するための駆動素子を駆動するための駆動信号を供給するか否かを選択可能なスイッチング素子を含む。
スイッチング素子は、駆動信号を供給すること、及び、駆動信号を供給する状態と供給しない状態とを切り替えることにより発熱する。態様15によれば、第1駆動回路と第2駆動回路とのいずれか一方の駆動回路を優先して冷却する態様と比較して、画像データが示す画像によっては駆動回路が十分に冷却できない状態を抑制できる。
【0178】
態様1の具体例である態様16において、前記複数のヘッドチップは、第3ヘッドチップを含み、前記複数の駆動回路は、前記第3ヘッドチップを駆動するための第3駆動回路を含み、前記気体経路は、前記第1分岐経路及び前記第2分岐経路を経由しないように前記第1経路と前記第2経路とを接続する第3分岐経路を有し、前記第3駆動回路は、前記第3分岐経路に配置される、ことを特徴とする。
態様17によれば、駆動回路によって加熱されていない気体が、第1駆動回路と第2駆動回路と第3駆動回路とに分散されて吹き付けられるため、第1駆動回路と第2駆動回路と第3駆動回路とを均一に冷却できる。
【0179】
好適な態様である態様17に係る液体噴射装置は、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドの前記1又は複数の導入部に気体を供給する前記気体供給機構と、を備える、ことを特徴とする。
態様17によれば、第1駆動回路と第2駆動回路とを均一に冷却できる。
【符号の説明】
【0180】
10,10-A,10-B…液体噴射ヘッド、11,11-A,11-B…フィルターユニット、11a,11b,11c,11d,11f…接続管、11e,11e-A…孔、12…ヘッド基板、12a…コネクター、12b…孔、12c…貫通孔、12e,12f,12g,12h…切欠き、13…ホルダーユニット、13a,13b,13c,13d…接続管、13e…貫通孔、13f…接続管、13g…開口、14,14_1~14_6…ヘッドチップ、14a…ノズル基板、14b…流路基板、14c…圧力室基板、14d…振動板、14e…圧電素子、14f…ケース、14g…保護板、14j…吸振体、15…固定板、15a…開口、16…保護ケース、16a,16b…部材、16c…爪、16d…押圧部材、16e,16f…切欠き、16g…フランジ、16h…貫通孔、17…コネクター基板、17a…切欠き、17b,17c…コネクター、18h…配線基板、18i…駆動回路、41…支持体、41a…取付孔、100…液体噴射装置、110…液体容器、120…制御ユニット、130…搬送機構、140…液体噴射モジュール、150…循環機構、160…気体供給機構、162…気体貯留部、164…送気チューブ、166…ポンプ、AP,AP-A,AP-B…気体経路、BP1,BP2…バイパス流路、BT_1~BT_6…分岐経路、C…圧力室、C1…連通部、C11…第1垂直部分、C12…水平部分、C13…第2垂直部分、CC…供給流路、CC1…第1供給流路、CC2…第2供給流路、CE1,CE2…排出口、CF1…共通供給流路、CF2…共通排出流路、CI1,CI2…導入口、CM…排出流路、CM1…第1排出流路、CM2…第2排出流路、Ca,Cb…圧力室、Com…駆動信号、D1…接続部、DM…方向、DN…配列方向、DS…個別排出流路、Du1…流路プレート、Du1a…底部、Du2…流路プレート、Du3…ホルダー、Du3a…フランジ、FN…ノズル面、IO1…供給口、IO2,IO3a,IO3b…排出口、IO4a,IO4b…導入口、Img…画像データ、Lin…液体導入部、Ln…ノズル列、M…媒体、N…ノズル、Na1…第1連通流路、Na2…第2連通流路、Nf…ノズル流路、PJ…個別流路、PT1,PT1-A…供給経路、PT2,PT2-A,PT2-B…排出経路、Pin…導入部、Pout,Pout-B…排出部、R1…第1共通液室、R2…第2共通液室、RF1…第1フィルター室、RF2…第2フィルター室、Ra1…個別供給流路、Ra2…個別排出流路、S1…第1収容空間、S2…第2収容空間、SI…制御信号、SP…分配供給流路、Sa1…面、Su1,Su2…フィルタープレート、Su21…接続管、Su22…壁体、Su2a,Su2b…底部、Su3…フィルタープレート、Su31…接続管、Su32…壁体、Su3a,Su3b…底部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18