(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172082
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置及び排ガス浄化装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 27/053 20060101AFI20231129BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20231129BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20231129BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20231129BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20231129BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20231129BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B01J27/053 A
B01J37/08
B01J37/02 101Z
B01J37/02 301C
B01J23/63 A
B01D53/94 222
B01D53/94 ZAB
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083649
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 昂大
(72)【発明者】
【氏名】白川 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】白川 裕規
(72)【発明者】
【氏名】高木 信之
(72)【発明者】
【氏名】相川 智将
(72)【発明者】
【氏名】二橋 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】野口 貴弘
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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4G169FC08
(57)【要約】
【課題】高いOSC性能を有し、高温環境に曝された後も高効率にNOxを除去することができる排ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】排ガス浄化装置は、排ガスが流入する上流端及び前記排ガスが排出される下流端を有し、前記上流端と前記下流端の間の長さがLsである基材と、前記下流端と前記下流端から前記上流端に向かって第一距離Laを隔てた第一位置との間の第一領域に形成された、金属酸化物担体及び前記金属酸化物担体に担持されたRh粒子を含むRh含有触媒を含む第一触媒層と、前記上流端と前記上流端から前記下流端に向かって第二距離Lbを隔てた第二位置との間の第二領域に形成された、前記金属酸化物担体よりも強い塩基性を有する材料及びPd粒子を含む第二触媒層と、を備える。前記長さLs、前記第一距離La、及び前記第二距離Lbは、Ls<La+Lbを満たす。前記Rh粒子の粒径分布の平均は1.5~18nmである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス浄化装置であって、
排ガスが流入する上流端及び前記排ガスが排出される下流端を有し、前記上流端と前記下流端の間の長さがLsである基材と、
前記下流端と前記下流端から前記上流端に向かって第一距離Laを隔てた第一位置との間の第一領域に形成された、金属酸化物担体及び前記金属酸化物担体に担持されたロジウム粒子を含むロジウム含有触媒を含む第一触媒層と、
前記上流端と前記上流端から前記下流端に向かって第二距離Lbを隔てた第二位置との間の第二領域に形成された、前記金属酸化物担体よりも強い塩基性を有する材料及びパラジウム粒子を含む第二触媒層と、
を備え、
前記長さLs、前記第一距離La、及び前記第二距離Lbが、Ls<La+Lbを満たし、
前記ロジウム粒子の粒径分布の平均が1.5~18nmである、排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記ロジウム粒子の粒径分布の標準偏差が1.6nm未満である、請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記ロジウム粒子の粒径分布の平均が4nm超14nm以下である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記ロジウム含有触媒が、前記金属酸化物担体と前記ロジウム粒子の総重量を基準として0.01~3.0重量%の前記ロジウム粒子を含む、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記金属酸化物担体よりも強い塩基性を有する材料がバリウム化合物である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項6】
前記長さLs、前記第一距離La、及び前記第二距離Lbが、1.1Ls≦La+Lb≦1.8Lsを満たす、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項7】
前記長さLs、前記第一距離La、及び前記第二距離Lbが、1.3Ls≦La+Lb≦1.8Lsを満たす、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項8】
前記金属酸化物担体が、アルミナ及びジルコニアを主成分として含む複合酸化物である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置を製造する方法であって、
金属酸化物担体及び前記金属酸化物担体に担持されたロジウム粒子を含み、ここで前記ロジウム粒子の粒径分布の平均が1.5~18nmである、ロジウム含有触媒を調製することと、
基材の下流端と前記下流端から上流端に向かって第一距離Laを隔てた第一位置との間の第一領域に、前記ロジウム含有触媒を含む第一触媒層を形成することと、
前記基材の前記上流端と前記上流端から前記下流端に向かって第二距離Lbを隔てた第二位置との間の第二領域に、パラジウム粒子及び前記金属酸化物担体よりも強い塩基性を有する材料を含む第二触媒層を形成することと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記ロジウム含有触媒を調製することが、
前記金属酸化物担体にロジウム化合物溶液を含浸することと、
前記ロジウム化合物溶液を含浸した前記金属酸化物担体を乾燥することと、
乾燥した前記金属酸化物担体を、不活性雰囲気下で700~900℃の範囲内の温度に加熱して、前記ロジウム含有触媒を得ることと、
をこの順で含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記不活性雰囲気が窒素雰囲気である、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化装置及び排ガス浄化装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両で使用される内燃機関から排出される排ガスには、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)及び窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。これらの有害成分の排出量の規制は年々強化されており、これらの有害成分を除去するために、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属が触媒として用いられている。
【0003】
一方、資源リスクの観点から、貴金属の使用量を低減させることが求められている。排ガス浄化装置において、貴金属の使用量を低減させる方法の一つとして、貴金属を担体上に微細な粒子として担持することが知られている。例えば、特許文献1には、酸化物担体に貴金属粒子を担持させて貴金属担持触媒とする工程と、還元雰囲気中で貴金属担持触媒を加熱処理して、貴金属の粒径を所定の範囲に制御する工程とを含む、排ガス浄化材料の製造方法が開示されている。
【0004】
また、排ガス浄化装置における貴金属の配置も検討されている。特許文献2には、基材と、該基材上に形成された二層構造の触媒コート層を有する排ガス浄化用装置であって、前記触媒コート層が、排ガス流れ方向の上流側の上流部と下流側の下流部からなり、前記下流部の一部の上に前記上流部の一部又は全部が形成されており、前記下流部が、透過型電子顕微鏡観察により測定された平均粒径が1.0nm以上2.0nm以下であり、且つ粒径の標準偏差σが0.8nm以下であるRh微粒子を含む、排ガス浄化用装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-147256号公報
【特許文献2】特開2021-104474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の排ガス浄化用装置において、触媒コート層の上流部が、浄化用装置が酸素過剰雰囲気下で雰囲気中の酸素を吸蔵し、酸素欠乏雰囲気下で酸素を放出するOSC(Oxygen Storage Capacity)材を含有する場合、触媒コート層の上流部の長さが長いほど、排ガスと触媒コート層の上流部との接触時間が長くなり、排ガス浄化用装置のOSC性能が向上する。しかし、発明者らは鋭意検討により、触媒コート層の上流部の長さが長いほど、高温環境下でのNOx浄化性能の低下が顕著になる傾向があることを見出した。
【0007】
そこで、本発明は、高いOSC性能を有し、且つ、高温環境に曝された後も高効率にNOxを除去することができる排ガス浄化装置及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様として、例えば以下の項の態様を挙げることができる。
[項1]
排ガス浄化装置であって、
排ガスが流入する上流端及び前記排ガスが排出される下流端を有し、前記上流端と前記下流端の間の長さがLsである基材と、
前記下流端と前記下流端から前記上流端に向かって第一距離Laを隔てた第一位置との間の第一領域に形成された、金属酸化物担体及び前記金属酸化物担体に担持されたロジウム粒子を含むロジウム含有触媒を含む第一触媒層と、
前記上流端と前記上流端から前記下流端に向かって第二距離Lbを隔てた第二位置との間の第二領域に形成された、前記金属酸化物担体よりも強い塩基性を有する材料及びパラジウム粒子を含む第二触媒層と、
を備え、
前記長さLs、前記第一距離La、及び前記第二距離Lbが、Ls<La+Lbを満たし、
前記ロジウム粒子の粒径分布の平均が1.5~18nmである、排ガス浄化装置。
[項2]
前記ロジウム粒子の粒径分布の標準偏差が1.6nm未満である、項1に記載の排ガス浄化装置。
[項3]
前記ロジウム粒子の粒径分布の平均が4nm超14nm以下である、項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
[項4]
前記ロジウム含有触媒が、前記金属酸化物担体と前記ロジウム粒子の総重量を基準として0.01~3.0重量%の前記ロジウム粒子を含む、項1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
[項5]
前記金属酸化物担体よりも強い塩基性を有する材料がバリウム化合物である、項1~4のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
[項6]
前記長さLs、前記第一距離La、及び前記第二距離Lbが、1.1Ls≦La+Lb≦1.8Lsを満たす、項1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
[項7]
前記長さLs、前記第一距離La、及び前記第二距離Lbが、1.3Ls≦La+Lb≦1.8Lsを満たす、項1~6のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
[項8]
前記金属酸化物担体が、アルミナ及びジルコニアを主成分として含む複合酸化物である、項1~7のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
[項9]
項1~8のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置を製造する方法であって、
金属酸化物担体及び前記金属酸化物担体に担持されたロジウム粒子を含み、ここで前記ロジウム粒子の粒径分布の平均が1.5~18nmである、ロジウム含有触媒を調製することと、
基材の下流端と前記下流端から上流端に向かって第一距離Laを隔てた第一位置との間の第一領域に、前記ロジウム含有触媒を含む第一触媒層を形成することと、
前記基材の前記上流端と前記上流端から前記下流端に向かって第二距離Lbを隔てた第二位置との間の第二領域に、パラジウム粒子及び前記金属酸化物担体よりも強い塩基性を有する材料を含む第二触媒層を形成することと、
を含む、方法。
[項10]
前記ロジウム含有触媒を調製することが、
前記金属酸化物担体にロジウム化合物溶液を含浸することと、
前記ロジウム化合物溶液を含浸した前記金属酸化物担体を乾燥することと、
乾燥した前記金属酸化物担体を、不活性雰囲気下で700~900℃の範囲内の温度に加熱して、前記ロジウム含有触媒を得ることと、
をこの順で含む、項9に記載の方法。
[項11]
前記不活性雰囲気が窒素雰囲気である、項10に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の排ガス浄化装置は、高いOSC性能を有しつつ、高温環境に曝された後も高効率に有害成分を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る排ガス浄化装置を、排ガスの流れ方向に平行な面で切断した要部拡大端面図であり、基材の隔壁近傍の構成を模式的に示している。
【
図2】
図2は、基材の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、高温でのエージング後の実施例及び比較例の排ガス浄化装置のOSC性能(Cmax)を示すグラフである。
【
図4】
図4は、高温でのエージング後の実施例及び比較例の排ガス浄化装置のNOx浄化性能(NOx-T50)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照して実施形態を説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができる。なお、以下の説明で参照する図面において、同一の部材又は同様の機能を有する部材には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率が説明の都合上実際の比率とは異なったり、部材の一部が図面から省略されたりする場合がある。本願において、記号「~」を用いて表される数値範囲は、記号「~」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値及び上限値として含む。本願において記載された数値範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0012】
I.排ガス浄化装置
実施形態に係る排ガス浄化装置100を、
図1、2を参照しながら説明する。実施形態に係る排ガス浄化装置100は、基材10、第一触媒層20、及び第二触媒層30を備える。
【0013】
(1)基材10
基材10としては、特に制限されず、排ガス浄化装置の基材として用いることが可能な任意の基材を使用できる。例えば、基材10は、
図2に示すように、枠部12と、枠部12の内側の空間を仕切って複数のセル14を画成する隔壁16から構成されてよい。枠部12と隔壁16は一体的に形成されていてよい。枠部12は、円筒状、楕円筒状、多角筒状等の任意の形状であってよい。隔壁16は、基材10の第一端(第一端面)Iと第二端(第二端面)Jの間に延設され、第一端Iと第二端Jの間で延伸する複数のセル14を画成する。各セル14の断面形状は、正方形、平行四辺形、長方形、台形などの矩形、三角形、その他の多角形(例えば、六角形、八角形)、円形等の任意の形状であってよい。複数のセル14の各々は、第一端I又は第二端Jのいずれか一方において目封じされていてもよく、あるいは第一端I及び第二端Jの両方において開口していてもよい。
【0014】
基材10の材質の例として、コージェライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、アルミニウムチタネート、炭化ケイ素、シリカ、アルミナ、ムライト等のセラミックス、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属が挙げられる。これらの材質により、排ガス浄化装置100が高温条件下でも高い排ガス浄化性能を発揮することができる。コスト低減の観点から、基材10はコージェライト製であってよい。
【0015】
図1、2において、破線矢印は、排ガス浄化装置100及び基材10中の排ガスの流れ方向を示す。排ガスは、第一端Iを通って排ガス浄化装置100に流入し、第二端Jを通って排ガス浄化装置100から排出される。そのため、以降、適宜、第一端Iを上流端I、第二端Jを下流端Jとも呼ぶ。本明細書において、上流端Iと下流端Jの間の長さ、すなわち、基材10の全長をLsと表す。
【0016】
(2)第一触媒層20
第一触媒層20は、下流端Jと下流端Jから上流端Iに向かって(すなわち、排ガスの流れ方向と反対の方向に)第一距離Laを隔てた第一位置Pとの間の第一領域Xにおいて、基材10上に配置される。第一距離Laは、基材10の全長Lsの80~100%であってよい。
【0017】
第一触媒層20は、ロジウム含有触媒を含む。ロジウム含有触媒は、金属酸化物担体及び金属酸化物担体に担持されたロジウム(Rh)粒子を含む。
【0018】
金属酸化物担体としては、例えば、元素周期表の3族、4族及び13族の金属、並びにランタノイド系の金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物が挙げられる。金属酸化物担体が2種以上の金属元素を含む場合、金属酸化物担体は、当該2種以上の金属元素の酸化物の混合物であってもよいし、当該2種以上の金属元素を含む複合酸化物であってもよいし、少なくとも1種の金属元素の酸化物と少なくとも1種の複合酸化物との混合物であってもよい。
【0019】
金属酸化物担体は、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ルテチウム(Lu)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物、好ましくはY、La、Ce、Ti、Zr及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物、より好ましくは、Al、Ce、及びZrからなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物であってよい。金属酸化物担体は、ジルコニア(ZrO2)を主成分として含む酸化物であってよく、ジルコニア及びアルミナ(Al2O3)を主成分として含む複合酸化物(Al-Zr系複合酸化物)であってよく、又はジルコニア、アルミナ、及びセリア(CeO2)を主成分として含む複合酸化物(Al-Ce-Zr系複合酸化物)であってよい。ジルコニアは、Rh粒子の触媒活性を維持する機能を有し得る。セリアは、酸素過剰雰囲気下で雰囲気中の酸素を吸蔵し、酸素欠乏雰囲気下で酸素を放出するOSC(Oxygen Storage Capacity)材として機能し得る。しかし、セリア(CeO2)上のRh粒子は高温環境下で粒径が増大しやすいため、金属酸化物担体はCe元素を含まなくてよい。アルミナは、Rh粒子の拡散を抑制する機能を有し得る。金属酸化物担体は、アルミナ、セリア、又はジルコニアの少なくともいずれか一つを主成分として含み、さらにイットリア(Y2O3)、ランタナ(La2O3)、ネオジミア(Nd2O3)、又はプラセオジミア(Pr6O11)の少なくともいずれか一つを含む複合酸化物であってよい。イットリア、ランタナ、ネオジミア、及びプラセオジミアは、複合酸化物の耐熱性を向上させる。
【0020】
なお、本願において、「主成分として含む」とは、当該成分の含有量が総重量の50重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、又は90重量%以上であることを意味し、複数の主成分がある場合は、それらの成分の含有量の合計が50重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、又は90重量%以上であることを意味する。
【0021】
金属酸化物担体は、粒子状であってよく、その粒径は適宜設定してよい。
【0022】
金属酸化物担体に担持されたRh粒子は、排ガスに含まれる有害成分を除去するための触媒として機能し、主にNOxを還元するための触媒として機能する。Rh粒子の粒径分布の平均は、1.5~18nmの範囲内であってよい。一般に、Rh粒子の粒径が小さいほど、Rh粒子の比表面積が大きいため、高い触媒性能を示す。しかし、粒径が過度に小さい(例えば約1nm未満の)Rh粒子は、高温環境下でオストワルドライプニング及び凝集等により容易に粗大化を引き起こし、触媒性能の劣化につながる傾向がある。Rh粒子の粒径分布の平均が1.5nm以上である場合、容易に粗大化を引き起こすRh粒子が少ないため、高温環境下での触媒性能の低下が抑制される。また、Rh粒子の粒径分布の平均が18nm以下である場合、Rh粒子の比表面積が十分に大きくなるため、Rh粒子が高い触媒性能を発揮することができる。Rh粒子の粒径分布の平均は、3~17nmの範囲内、4nm超14nm以下の範囲内、又は4nm超8nm以下の範囲内であってもよい。
【0023】
また、Rh粒子の粒径分布の標準偏差は、1.6nm未満であってよい。Rh粒子の粒径分布の標準偏差が1.6nm未満であることにより、粗大なRh粒子の数、及び高温環境下で粗大化しやすい微小なRh粒子の数が少なくなるため、排ガス浄化装置が高温環境に曝された後でもRh粒子が十分に大きい比表面積を有することができ、その結果高い触媒性能を発揮することができる。Rh粒子の粒径分布の標準偏差は、1nm以下であってもよい。
【0024】
なお、本願において、Rh粒子の粒径分布は、透過型電子顕微鏡(TEM)により得た画像に基づき、50個以上のRh粒子の投影面積円相当径を測定することによって得られる、個数基準の粒径分布である。
【0025】
Rh粒子の担持量、すなわち、金属酸化物担体とRh粒子の総重量を基準とするRh粒子の割合は、0.01~3.0重量%の範囲内であってよい。Rh粒子の割合が0.01重量%以上であることにより、十分な量のRh粒子が存在するため排ガス中の有害成分を良好に除去することができる。Rh粒子の割合が3.0重量%以下であることにより、Rhの使用量を節減することができる。また、Rh粒子が金属酸化物担体上に十分に疎に担持されるため、高温環境下でのRh粒子の粗大化が抑制され、高温に対する十分な耐久性を示すことができる。金属酸化物担体とRh粒子の総重量を基準とするRh粒子の割合は、0.2~3.0重量%の範囲内であってもよい。
【0026】
第一触媒層20におけるRh粒子の含有量は、第一領域Xにおける基材容積を基準として、例えば0.05~5g/L、0.1~3g/L、又は0.7g/L超、2g/L以下であってよい。それにより排ガス浄化装置100が十分に高い排ガス浄化性能を有することができる。
【0027】
第一触媒層20は、さらに、他の任意成分を含んでいてもよい。他の任意成分としては、OSC材、バインダー、及び添加物が挙げられる。
【0028】
OSC材の例として、セリア、及びセリアを含む複合酸化物(例えば、セリアを主成分として含む複合酸化物、セリア及びジルコニアを主成分として含む複合酸化物(Ce-Zr系複合酸化物)、アルミナ、セリア、及びジルコニアを主成分として含む複合酸化物(Al-Ce-Zr系複合酸化物))が挙げられる。特に、高い酸素吸蔵能を有し且つ比較的安価であることから、Ce-Zr系複合酸化物が好ましい。Ce-Zr系複合酸化物はパイロクロア型の結晶構造を有してもよい。セリアを含む複合酸化物は、主成分の他に、ランタナ、イットリア、ネオジミア、又はプラセオジミアの少なくともいずれか一つを添加物として含んでよく、これらの添加物が主成分と共に複合酸化物を形成していてよい。OSC材は粒子状であってよく、その粒径は適宜設定してよい。
【0029】
第一触媒層20におけるCe元素の含有量は、第一領域Xにおける基材容積を基準として、例えば、5~50g/Lであってよい。
【0030】
(3)第二触媒層30
第二触媒層30は、上流端Iと、上流端Iから下流端Jに向かって(すなわち、排ガスの流れ方向に)第二距離Lbを隔てた第二位置Qとの間の第二領域Yにおいて、基材10上に形成される。第二距離Lbは、基材10の全長Lsの30~80%であってよい。また、基材の長さLs、第一距離La、及び第二距離Lbは、Ls<La+Lbを満たす。すなわち、第一触媒層20と第二触媒層30が重なる領域が存在する。それにより、排ガス浄化装置100が高いOSC性能を有することができる。第一触媒層20と第二触媒層30が重なる領域において、
図1では第二触媒層30が第一触媒層20上に形成されているが、第二触媒層30上に第一触媒層20が形成されていてもよい。基材の長さLs、第一距離La、及び第二距離Lbは、1.1Ls≦La+Lb≦1.8Ls、特に、1.3Ls≦La+Lb≦1.8Lsを満たしてよい。すなわち、第一触媒層20と第二触媒層30が重なる領域の長さが基材10の全長Lsの10~80%、又は30~80%であってよい。それにより、排ガス浄化装置100が一層高いOSC性能を有することができる。
【0031】
第二触媒層30は、パラジウム(Pd)粒子を含む。Pd粒子は、排ガスに含まれる有害成分を除去するための触媒として機能し、主にHCを酸化するための触媒として機能する。Pd粒子も、Rh粒子と同様に、粒径が小さいほど高い触媒性能を示す一方で、高温環境下で粗大化し易い。しかし、Pd粒子の粒径分布の平均をRh粒子と同様に1.5~18nmの範囲内にしたとしても、Pd粒子の粗大化は抑制できない。そのため、Pd粒子の粒径分布の平均は特に限定されない。作製が容易であるという観点から、Pd粒子の粒径分布の平均は、例えば0.5~10nmの範囲内であってよく、Pd粒子の粒径分布の標準偏差は、0.1~3.0nmの範囲内であってよい。
【0032】
なお、本願において、Pd粒子の粒径分布は、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)により得た画像に基づき、50個以上のPd粒子の投影面積円相当径を測定することによって得られる、個数基準の粒径分布である。
【0033】
第二触媒層30におけるPd粒子の含有量は、第二領域Yにおける基材容積を基準として、例えば0.1~20g/Lであってよく、好ましくは1~15g/Lであってよく、より好ましくは3~9g/Lであってよい。それにより排ガス浄化装置100が十分に高い排ガス浄化性能を有することができる。
【0034】
第二触媒層30は、Pd粒子に加えて、上記のロジウム含有触媒に含まれる金属酸化物担体よりも強い塩基性を有する材料(以下、適宜「強塩基性材料」と表記する)を含む。第二触媒層30は、Pd粒子を担持するための担体、OSC材、又はバリウム化合物の少なくともいずれか一つを含んでよく、これが強塩基性材料であってよい。特に強塩基性材料はバリウム化合物であってよい。
【0035】
Pd粒子の担体としては、例えば金属酸化物担体を用いることができるが、これに限定されない。Pd粒子は、含浸担持法、吸着担持法及び吸水担持法等の任意の方法で担体に担持することができる。
【0036】
金属酸化物担体としては、例えば、元素周期表の3族、4族及び13族の金属、並びにランタノイド系の金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物が挙げられる。金属酸化物担体が2種以上の金属元素を含む場合、金属酸化物担体は、当該2種以上の金属元素の酸化物の混合物であってもよいし、当該2種以上の金属元素を含む複合酸化物であってもよいし、少なくとも1種の金属元素の酸化物と少なくとも1種の複合酸化物との混合物であってもよい。
【0037】
金属酸化物担体は、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ルテチウム(Lu)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物、好ましくはY、La、Ce、Ti、Zr及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物、より好ましくは、Al、Ce、及びZrからなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物であってよい。金属酸化物担体は、ジルコニア、アルミナ、又はセリアの少なくともいずれか一つを主成分として含む複合酸化物であってよい。セリアはOSC材としても機能し得る。金属酸化物担体は、アルミナ、セリア、又はジルコニアの少なくともいずれか一つを主成分として含み、さらにイットリア、ランタナ、ネオジミア、又はプラセオジミアの少なくともいずれか一つを含む複合酸化物であってもよい。イットリア、ランタナ、ネオジミア、及びプラセオジミアは、複合酸化物の耐熱性を向上させる。
【0038】
金属酸化物担体は、粒子状であってよく、その粒径は適宜設定してよい。
【0039】
OSC材の例として、セリア、及びセリアを含む複合酸化物(例えば、セリアを主成分として含む複合酸化物、セリア及びジルコニアを主成分として含む複合酸化物(Ce-Zr系複合酸化物)、アルミナ、セリア、及びジルコニアを主成分として含む複合酸化物(Al-Ce-Zr系複合酸化物))が挙げられる。特に、高い酸素吸蔵能を有し且つ比較的安価であることから、Ce-Zr系複合酸化物が好ましい。Ce-Zr系複合酸化物はパイロクロア型の結晶構造を有してもよい。セリアを含む複合酸化物は、主成分の他に、ランタナ、イットリア、ネオジミア、又はプラセオジミアの少なくともいずれか一つを添加物として含んでよく、これらの添加物が主成分と共に複合酸化物を形成していてもよい。OSC材は粒子状であってよく、その粒径は適宜設定してよい。
【0040】
第二触媒層30におけるCe元素の含有量は、第二領域Yにおける基材容積を基準として、例えば、5~30g/Lであってよい。
【0041】
バリウム化合物は、Pd粒子の被毒を抑制することができる。バリウム化合物の例として、硫酸バリウム、炭酸バリウム、酸化バリウム、及び硝酸バリウムが挙げられる。バリウム化合物は粒子状であってよく、その粒径は適宜設定してよい。第二触媒層30におけるBa元素の含有量は、第二領域Yにおける基材容積を基準として、例えば、3~15g/Lであってよい。
【0042】
本願において、「金属酸化物担体よりも強い塩基性を有する材料」とは、金属酸化物担体の平均電気陰性度よりも小さい平均電気陰性度を有する材料を意味する。「平均電気陰性度」とは、構成元素のポーリングの電気陰性度(以下、単に「電気陰性度」と表記する)を単位重量あたりの各元素の数に応じて加重平均した値である。
【0043】
例えば、Al2O3、ZrO2、La2O3、Y2O3、及びNd2O3を以下の重量分率:Al2O3:30重量%、ZrO2:60重量%、La2O3:4重量%、Y2O3:4重量%、Nd2O3:2重量%で含む複合酸化物粒子(AZ粒子)の平均電気陰性度は、以下のように計算される。
【0044】
AZ粒子の平均電気陰性度
=Alの電気陰性度×Al2O3の重量分率/Al2O3の式量×2
+Zrの電気陰性度×ZrO2の重量分率/ZrO2の式量
+Laの電気陰性度×La2O3の重量分率/La2O3の式量×2
+Yの電気陰性度×Y2O3の重量分率/Y2O3の式量×2
+Ndの電気陰性度×Nd2O3の重量分率/Nd2O3の式量×2
+Oの電気陰性度×(Al2O3の重量分率/Al2O3の式量×3+ZrO2の重量分率/ZrO2の式量×2+La2O3の重量分率/La2O3の式量×3+Y2O3の重量分率/Y2O3の式量×3+Nd2O3の重量分率/Nd2O3の式量×3)
=1.61×0.3/101.9×2
+1.33×0.6/123.2
+1.10×0.04/325.8×2
+1.22×0.04/225.8×2
+1.14×0.02/336.4×2
+3.44×(0.3/101.9×3+0.6/123.2×2+0.04/325.8×3+0.04/225.8×3+0.02/336.4×3)
=0.084
【0045】
Al2O3及びLa2O3を以下の重量分率:Al2O3:96重量%、La2O3:4重量%で含む複合酸化物粒子(Al2O3粒子)の平均電気陰性度は、以下のように計算される。
【0046】
Al2O3粒子の平均電気陰性度
=Alの電気陰性度×Al2O3の重量分率/Al2O3の式量×2
+Laの電気陰性度×La2O3の重量分率/La2O3の式量×2
+Oの電気陰性度×(Al2O3の重量分率/Al2O3の式量×3+La2O3の重量分率/La2O3の式量×3)
=1.61×0.96/101.9×2
+1.10×0.04/325.8×2
+3.44×(0.96/101.9×3+0.04/325.8×3)
=0.129
【0047】
Al2O3、CeO2、ZrO2、La2O3、Y2O3、及びNd2O3を、以下の重量分率:Al2O3:30重量%、CeO2:20重量%、ZrO2:44重量%、La2O3:2重量%、Y2O3:2重量%、Nd2O3:2重量%で含む複合酸化物粒子(ACZ粒子)の平均電気陰性度は、以下のように計算される。
【0048】
ACZ粒子の平均電気陰性度
=Alの電気陰性度×Al2O3の重量分率/Al2O3の式量×2
+Ceの電気陰性度×CeO2の重量分率/CeO2の式量
+Zrの電気陰性度×ZrO2の重量分率/ZrO2の式量
+Laの電気陰性度×La2O3の重量分率/La2O3の式量×2
+Yの電気陰性度×Y2O3の重量分率/Y2O3の式量×2
+Ndの電気陰性度×Nd2O3の重量分率/Nd2O3の式量×2
+Oの電気陰性度×(Al2O3の重量分率/Al2O3の式量×3+CeO2の重量分率/CeO2の式量×2+ZrO2の重量分率/ZrO2の式量×2+La2O3の重量分率/La2O3の式量×3+Y2O3の重量分率/Y2O3の式量×3+Nd2O3の重量分率/Nd2O3の式量×3)
=1.61×0.3/101.9×2
+1.12×0.2/172.1
+1.33×0.44/123.2
+1.10×0.02/325.8×2
+1.22×0.02/225.8×2
+1.14×0.02/336.4×2
+3.44×(0.3/101.9×3+0.2/172.1×2+0.44/123.2×2+0.02/325.8×3+0.02/225.8×3+0.02/336.4×3)
=0.081
【0049】
CeO2、ZrO2、及びPr6O11を以下の重量分率:CeO2:51.4重量%、ZrO2:45.6重量%、Pr6O11:3.0重量%で含む複合酸化物粒子(CZ粒子)の平均電気陰性度は、以下のように計算される。
【0050】
CZ粒子の平均電気陰性度
=Ceの電気陰性度×CeO2の重量分率/CeO2の式量
+Zrの電気陰性度×ZrO2の重量分率/ZrO2の式量
+Prの電気陰性度×Pr6O11の重量分率/Pr6O11の式量×6
+Oの電気陰性度×(CeO2の重量分率/CeO2の式量×2+ZrO2の重量分率/ZrO2の式量×2+Pr6O11の重量分率/Pr6O11の式量×11)
=1.12×0.514/172.1
+1.33×0.456/123.2
+1.13×0.03/1021.4×6
+3.44×(0.514/172.1×2+0.456/123.2×2+0.03/1021.4×11)
=0.056
【0051】
硫酸バリウム(BaSO4)からなる粒子(硫酸バリウム粒子)の平均電気陰性度は、以下のように計算される。
【0052】
硫酸バリウム粒子の平均電気陰性度
=(Baの電気陰性度+Sの電気陰性度+Oの電気陰性度×4)/BaSO4の式量
=(0.89+2.58+3.44×4)/233.4
=0.074
【0053】
上記の計算より、上記のACZ粒子、CZ粒子、及び硫酸バリウム粒子は、上記AZ粒子よりも小さい平均電気陰性度を有し、したがって、上記AZ粒子よりも強い塩基性を有する。上記Al2O3粒子は、上記AZ粒子よりも大きい平均電気陰性度を有し、したがって、上記AZ粒子よりも弱い塩基性を有する。
【0054】
本発明者らは、第一原理計算により、塩基性材料が高い表面エネルギーを有することを見出した。このような塩基性材料の表面に担持されたRh粒子は不安定であるため、そこに含まれるRh原子は移動しやすい。そのため、強塩基性材料上のRh粒子は、金属酸化物担体上のRh粒子よりも粗大化しやすい。第一触媒層20中のRh粒子の多くが過度に小さい(例えば約1nm未満の)粒径を有するとともに第一触媒層20と強塩基性材料を含む第二触媒層30とが重なっている場合、高温環境下で、過度に小さいRh粒子中のRh原子がオストワルドライプニングにより強塩基性材料上に移動して、強塩基性材料上に粗大化したRh粒子が形成され、その結果、排ガス浄化性能が低下しやすい。しかし、実施形態の排ガス浄化装置100では、金属酸化物担体上のRh粒子の粒径分布を制御して、粗大化を引き起こし易いRh粒子の数を少なくしている。それにより、高温環境下でのオストワルドライプニングが抑制され、強塩基性材料上での粗大なRh粒子の形成が抑制される。そのため、実施形態の排ガス浄化装置100では、第一触媒層20と第二触媒層30が重なった領域を有することによる高温環境下での排ガス浄化性能の低下が抑制されている。
【0055】
第二触媒層30は、さらに、他の任意成分を含んでもよい。他の任意成分としては、例えば、バインダー及び添加物が挙げられる。
【0056】
II.排ガス浄化装置の製造方法
上記実施形態に係る排ガス浄化装置100の製造方法の一例を説明する。排ガス浄化装置100の製造方法は、ロジウム含有触媒を調製することと、基材10の第一領域Xに第一触媒層20を形成することと、基材10の第二領域Yに第二触媒層30を形成することと、を含む。第一触媒層20の形成と第二触媒層30の形成はどちらを先に行ってもよい。
【0057】
ロジウム含有触媒を調製する手順の一例を説明する。ロジウム含有触媒は、金属酸化物担体にロジウム化合物溶液を含浸することと、ロジウム化合物溶液を含浸した金属酸化物担体を乾燥することと、乾燥した金属酸化物担体を不活性雰囲気下で700~900℃の範囲内の温度に加熱することと、により調製することができる。
【0058】
ロジウム化合物溶液としては、例えば、水酸化ロジウム水溶液、及び硝酸ロジウム水溶液が挙げられる。含浸方法は特に限定されない。例えば、蒸留水を撹拌しながら、金属酸化物担体及びロジウム化合物溶液を加えることにより、金属酸化物担体にロジウム化合物溶液を含浸することができる。
【0059】
次に、ロジウム化合物溶液を含浸した金属酸化物担体を乾燥する。必要に応じて、乾燥後に焼成を行ってもよい。その後、金属酸化物担体を不活性雰囲気下で700~900℃の範囲内の温度に加熱する。それにより、金属酸化物担体及び金属酸化物担体に担持されたRh粒子を含むロジウム含有触媒が得られる。不活性雰囲気としては、例えば、窒素雰囲気及びアルゴン雰囲気が挙げられる。加熱時間は適宜設定してよいが、例えば、1~5時間であってよい。不活性雰囲気下で加熱することにより、ロジウム含有触媒中のRh粒子の粒径分布を適切に制御することができる。具体的には、Rh粒子の粒径分布の平均を、1.5~18nmの範囲内、3~17nmの範囲内、4nm超14nm以下の範囲内、又は4nm超8nm以下の範囲内とすることができ、Rh粒子の粒径分布の標準偏差を1.6nm未満、又は1nm以下とすることができる。
【0060】
なお、水素雰囲気のような還元雰囲気下での加熱では、Rh粒子を十分に大きくすることができず、上記のような粒径分布を得ることが困難なことがある。空気雰囲気のような酸化雰囲気下での加熱では、Rh粒子の金属酸化物担体への固溶が引き起こされ、金属酸化物担体表面のRh粒子が減少するおそれがある。
【0061】
得られたRh含有触媒を含む第一触媒層20を基材10の第一領域Xに形成する。第一触媒層20は例えば以下のようにして形成することができる。まず、Rh含有触媒を含む第一スラリーを調製する。第一スラリーは、Rh含有触媒に加えて、OSC材、バインダー、添加物等の任意成分をさらに含んでよい。第一スラリーの性状、例えば、粘性、固形成分の粒子径等は、適宜調整してよい。調製した第一スラリーを、基材10の第一領域Xに塗布する。例えば、基材10の第一領域Xを第一スラリーに浸漬し、所定の時間が経過した後、第一スラリーから基材10を引き上げることにより、基材10の第一領域Xに第一スラリーを塗布できる。あるいは、基材10の下流端Jから第一スラリーを流し込み、下流端Jにブロアーで風を吹きつけて第一スラリーを上流端Iに向かって塗り広げることにより、第一スラリーを基材10の第一領域Xに塗布してもよい。次に、所定の温度及び時間で第一スラリーを乾燥及び焼成する。それにより、第一触媒層20が基材10の第一領域Xに形成される。
【0062】
パラジウム粒子及び強塩基性材料を含む第二触媒層30を基材10の第二領域Yに形成する。第二触媒層30は例えば以下のようにして形成することができる。まず、Pd粒子前駆体及び強塩基性材料を含む第二スラリーを調製する。Pd粒子前駆体としては、適切なPdの無機酸塩、例えば、塩化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、フッ化水素酸塩等を用いることができる。あるいは、第二スラリーは、予めPd粒子を担持した担体粉末を含んでもよい。また、第二スラリーは、OSC材、バインダー、添加物等の任意成分をさらに含んでよい。第二スラリーの性状、例えば、粘性、固形成分の粒子径等は、適宜調整してよい。調製した第二スラリーを、基材10の第二領域Yに塗布する。例えば、基材10の第二領域Yを第二スラリーに浸漬し、所定の時間が経過した後、第二スラリーから基材10を引き上げることにより、基材10の第二領域Yに第二スラリーを塗布できる。あるいは、基材10の上流端Iから第二スラリーを流し込み、上流端Iにブロアーで風を吹きつけて第二スラリーを下流端Jに向かって塗り広げることにより、第二スラリーを基材10の第二領域Yに塗布してもよい。次に、所定の温度及び時間で第二スラリーを乾燥及び焼成する。それにより、第二触媒層30が基材10の第二領域Yに形成される。
【0063】
実施形態に係る排ガス浄化装置は、内燃機関を備える種々の車両に適用され得る。
【実施例0064】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
(1)実施例及び比較例で使用した材料
a)基材(ハニカム基材)
材質:コージェライト
容積:875cc
長さ:10.5cm
隔壁の厚さ:2mil(50.8μm)
セル密度:1平方インチ当たり600個
セル断面形状:六角形
【0066】
b)AZ粒子
AZ粒子は、Al2O3及びZrO2を主成分として含み、さらにLa2O3、Y2O3、及びNd2O3を含む複合酸化物粒子である。AZ粒子中の各成分の重量分率は、Al2O3:30重量%、ZrO2:60重量%、La2O3:4重量%、Y2O3:4重量%、Nd2O3:2重量%であった。
【0067】
c)Al2O3粒子
Al2O3粒子は、Al2O3を主成分として含み、さらにLa2O3を含む複合酸化物粒子である。Al2O3粒子中の各成分の重量分率は、Al2O3:96重量%、La2O3:4重量%であった。
【0068】
d)ACZ粒子
ACZ粒子は、Al2O3、CeO2及びZrO2を主成分として含み、さらにLa2O3、Y2O3、及びNd2O3を含む複合酸化物粒子である。ACZ粒子中の各成分の重量分率は、Al2O3:30重量%、CeO2:20重量%、ZrO2:44重量%、La2O3:2重量%、Y2O3:2重量%、Nd2O3:2重量%であった。
【0069】
e)CZ粒子
CZ粒子は、CeO2及びZrO2を主成分として含み、さらにPr6O11を含む複合酸化物粒子である。CZ粒子中の各成分の重量分率は、CeO2:51.4重量%、ZrO2:45.6重量%、Pr6O11:3重量%であった。CZ粒子において、セリウムイオン及びジルコニウムイオンはパイロクロア型の規則配列構造を有し、セリウムイオン及びジルコニウムイオンの一部がプラセオジムにより置換されていた。CZ粒子は、以下の手順にしたがって調製した。
【0070】
硝酸セリウム六水和物129.7g、オキシ硝酸ジルコニウム二水和物99.1g、硝酸プラセオジム六水和物5.4g及び18%過酸化水素水36.8gをイオン交換水500gに溶解させ、25%アンモニア水340gを用いて逆共沈法により水酸化物沈殿を得た。ろ紙で沈殿を分離し、得られた沈殿を乾燥炉にて150℃で7時間乾燥して水分を除去し、電気炉にて500℃で4時間焼成し、粉砕した。
【0071】
得られた粉末を、加圧成型機(Wet-CIP)を用いて、2000kgf/cm2の圧力を加えて成型した。
【0072】
得られた成型体を、活性炭を入れた黒鉛坩堝内で、Ar雰囲気下で、1700℃で5時間還元し、その後、電気炉にて500℃で5時間焼成した。
【0073】
結果物を、振動ミルを用いて粉砕した。それによりCZ粒子を得た。
【0074】
f)硝酸ロジウム水溶液(濃度2.8重量%)
【0075】
g)硝酸パラジウム水溶液(濃度8.0重量%)
【0076】
h)硫酸バリウム粒子
【0077】
(2)排ガス浄化装置の作製
実施例1-3
a)ロジウム含有触媒の調製
蒸留水を撹拌しながら、AZ粒子及び硝酸ロジウム水溶液を順に加えた。得られた混合物を乾燥させ、電気炉で空気雰囲気下にて500℃に2時間加熱することにより焼成した。得られた粒子を窒素雰囲気下で、850℃に5時間加熱した。それにより、AZ粒子及びAZ粒子に担持されたロジウム(Rh)粒子を含むRh含有触媒を得た。Rh含有触媒は、AZ粒子とRh粒子の総重量を基準として2.6重量%のRh粒子を含んでいた。
【0078】
Rh含有触媒を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、AZ粒子に担持されたRh粒子(初期Rh粒子)の粒径分布を求めた。初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差を表1に示す。
【0079】
b)排ガス浄化装置の作製
蒸留水を撹拌しながら、Rh含有触媒、Al2O3粒子、ACZ粒子、CZ粒子、及びAl2O3系バインダーを加え、懸濁した第一スラリーを調製した。次に、第一スラリーを基材の一端(下流端)から流し込み、ブロアーで不要分を吹き払った。それにより、基材の下流端と、基材の下流端から上流端に向かって基材全長の80%の長さの距離を隔てた第一位置との間の第一領域において、基材上に第一スラリーの層が形成された。次いで、内部を120℃に保った乾燥機に基材を2時間置いて第一スラリー層中の水を蒸発させ、次いで、基材を電気炉にて500℃で2時間、空気雰囲気下で加熱して、第一スラリー層を焼成した。それにより、第一触媒層を形成した。
【0080】
第一触媒層中の、Rh含有触媒、Al2O3粒子、ACZ粒子、及びCZ粒子の含有量は、第一領域における基材の容積を基準として、それぞれ、30.8g/L(うち、AZ粒子の含有量は30g/L、Rh粒子の含有量は0.8g/L)、35g/L、75g/L、及び15g/Lであった。
【0081】
蒸留水を撹拌しながら、Al2O3粒子、ACZ粒子、CZ粒子、硝酸パラジウム水溶液、硫酸バリウム粒子、及びAl2O3系バインダーを加え、懸濁した第二スラリーを調製した。次に、第二スラリーを基材の上流端から流し込み、ブロアーで不要分を吹き払った。それにより、基材の上流端と、基材の上流端から下流端に向かって所定の距離を隔てた第二位置との間の第二領域において、基材上又は第一触媒層上に第二スラリーの層が形成された。次いで、内部を120℃に保った乾燥機に基材を2時間置いて第二スラリー層中の水を蒸発させ、次いで、基材を電気炉にて500℃で2時間、空気雰囲気下で加熱して、第二スラリー層を焼成した。それにより、第二触媒層を形成した。なお、基材全長を基準とする基材の上流端から第二位置までの距離(すなわち、第二触媒層の長さ)は、表1に記載のとおりであった。
【0082】
第二領域における基材の容積を基準とした、第二触媒層中のAl2O3粒子、ACZ粒子、CZ粒子、硝酸パラジウム水溶液に由来するPd粒子、及び硫酸バリウム粒子の含有量は、それぞれ、50g/L、100g/L、10g/L、7.0g/L、及び13g/Lであった。
【0083】
こうして、実施例1-3の排ガス浄化装置を得た。
【0084】
比較例1
基材全長を基準とする第二触媒層の長さを表1に記載のとおりとしたこと以外は実施例1と同様にして、排ガス浄化装置を作製した。
【0085】
比較例2-5
a)ロジウム含有触媒の調製
窒素雰囲気下での加熱を行わなかったこと以外は実施例1と同様にしてRh含有触媒を得た。Rh含有触媒をTEMで観察し、AZ粒子に担持されたRh粒子(初期Rh粒子)の粒径分布を求めた。初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差を表1に示す。
【0086】
b)排ガス浄化装置の作製
窒素雰囲気下での加熱を行わずに作製したRh含有触媒を用いたこと及び基材全長を基準とする第二触媒層の長さを表1に記載のとおりとしたこと以外は実施例1と同様にして、排ガス浄化装置を作製した。
【0087】
実施例4
硫酸バリウム粒子を用いずに第二触媒層を形成したこと以外は実施例2と同様にして、排ガス浄化装置を作製した。
【0088】
(3)エージング処理及びその後のRh粒子の平均粒径の測定
実施例1-4及び比較例1-5の排ガス浄化装置を、それぞれ、V型8気筒エンジンの排気系に接続し、該エンジンにストイキ(空燃比A/F=14.6)及び酸素過剰(リーン:A/F>14.6)の混合気を時間比3:1の一定の周期で交互に切り替えて繰り返し流入させ、排ガス浄化装置の床温を950℃に50時間にわたって維持した。それにより、排ガス浄化装置をエージング処理した。その後、一酸化炭素パルス法により、実施例3及び比較例4の排ガス浄化装置の第一触媒層中のRh粒子の平均粒径、並びに実施例1-3及び比較例2-4の排ガス浄化装置の第二触媒層中のRh粒子の平均粒径を求めた。結果を表1中に示す。
【0089】
(4)OSC性能評価
エージング処理した排ガス浄化装置をL型4気筒エンジンの排気系に接続し、該エンジンに空燃比A/Fが14.1の混合気と空燃比A/Fが15.1の混合気を交互に供給し、最大酸素吸蔵量(Cmax)を式:Cmax(g)=0.23×ΔA/F×噴射燃料量により算出した。なお、ΔA/Fは、ストイキ点とA/Fセンサー出力の差分を表す。結果を表1及び
図3に示す。
【0090】
(5)NOx浄化性能評価
エージング処理した排ガス浄化装置をL型4気筒エンジンの排気系に接続し、該エンジンに空燃比A/Fが14.4の混合気を空気流量30g/sで供給し、排ガス浄化装置の床温を20℃/分の昇温速度で200℃から500℃まで上昇させ、ガス中のNOxの50%が除去されたときの床温(以下、適宜「NOx-T50」と表記する)を測定した。結果を表1及び
図4に示す。
【0091】
図3に示されるように、初期Rh粒子の粒径分布にかかわらず、第二触媒層が長いほどCmaxが増加(すなわちOSC性能が向上)した。第二触媒層はOSC材として働くACZ粒子及びCZ粒子を含むため、第二触媒層が長いほど、排ガスとOSC材の接触時間が長くなり、その結果より高いOSC性能が得られたと考えられる。
【0092】
図4に示されるように、初期Rh粒子の粒径分布にかかわらず、第二触媒層が長いほどNOx-T50がより高い(すなわち、よりNOx浄化性能が低い)傾向を示した。しかし、第二触媒層の長さの増加に伴うNOx-T50の上昇量は、窒素雰囲気下での熱処理により初期Rh粒子の粒径分布の制御を行って作製したRh含有触媒を用いた排ガス浄化装置において、より小さかった。
【0093】
第二触媒層の長さが同じ場合、窒素雰囲気下での熱処理を行って作製したRh含有触媒を用いた排ガス浄化装置は、窒素雰囲気下での熱処理を行わずに作製したRh含有触媒を用いた排ガス浄化装置よりも、NOx-T50が低かった。窒素雰囲気下での熱処理(すなわち、初期Rh粒子の粒径分布の制御)によるNOx-T50の低下は、第二触媒層が長いほど顕著であった。例えば、第二触媒層の長さが基材全長の20%の場合、すなわち、第一触媒層が第二触媒層と実質的に重ならない場合、初期Rh粒子の粒径分布の制御によるNOx-T50の差は2.0℃しかなかった。一方、第二触媒層の長さが基材全長の80%の場合、すなわち、第一触媒層と第二触媒層が重なる領域の長さが基材全長の60%の場合は、初期Rh粒子の粒径分布の制御によるNOx-T50の差は17.2℃もあった。この結果は、初期Rh粒子の粒径分布の平均を0.7nmから5.49nmに増加させたことが、第一触媒層と第二触媒層の重なりにより生じるNOx浄化性能の低下を軽減させたことを示している。
【0094】
また、第二触媒層が硫酸バリウムを含む実施例2、及び第二触媒層が硫酸バリウムを含まない実施例4では、NOx-T50は同等であった。
【0095】
10 基材、12 枠部、14 セル、16 隔壁、20 第一触媒層、30 第二触媒層、100 排ガス浄化装置、I 第一端(上流端)、J 第二端(下流端)、La 第一距離、Lb 第二距離、Ls 基材の全長、P 第一位置、Q 第二位置、X 第一領域、Y 第二領域