IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東工業株式会社の特許一覧

特開2023-172085鎖錠装置、受け部材、電気電子機器収納用箱
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172085
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】鎖錠装置、受け部材、電気電子機器収納用箱
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/38 20060101AFI20231129BHJP
   H05K 5/03 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H02B1/38 D
H05K5/03 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083653
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 祐二
(72)【発明者】
【氏名】三浦 大貴
(72)【発明者】
【氏名】杉原 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】浅井 誠
(72)【発明者】
【氏名】松隈 裕史
(72)【発明者】
【氏名】清水 康隆
【テーマコード(参考)】
4E360
5G016
【Fターム(参考)】
4E360AB02
4E360BA06
4E360BB16
4E360BB23
4E360BC03
4E360BC05
4E360BC08
4E360BC16
4E360BD03
4E360BD05
4E360EA12
4E360EA16
4E360ED02
4E360GA60
4E360GB93
4E360GB94
5G016AA04
5G016CC04
5G016CC19
(57)【要約】
【課題】鎖錠装置の構成部品の一部を、複数種類の鎖錠形態に利用できるようにすること。
【解決手段】電気電子機器を収納する筐体と、筐体を覆う扉を備えた電気電子機器収納用箱において、扉若しくは、筐体の内部に設けられる内扉を鎖錠するための鎖錠装置であって、鎖錠装置に、筐体側に設けられる被係止部に係止することにより、扉若しくは内扉を鎖錠する係止部と、係止部と被係止部が係止する状態である係止状態から係止部と被係止部が係止していない状態である非係止状態に切り替えるために利用可能な操作部と、係止部を操作可能な操作部を取り付けるケース部13と、を備え、ケース部は、係止部を第1の位置に取り付けるために利用可能な第1の開口部51と、係止部を第1の位置とは異なる第2の位置に取り付けるために利用可能な第2の開口部52と、を備えることを特徴とする鎖錠装置を備えた構成とする。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気電子機器を収納する筐体と、筐体を覆う扉を備えた電気電子機器収納用箱において、扉若しくは、筐体の内部に設けられる内扉を鎖錠するための鎖錠装置であって、
鎖錠装置に、
筐体側に設けられる被係止部に係止することにより、扉若しくは内扉を鎖錠する係止部と、
係止部と被係止部が係止する状態である係止状態から係止部と被係止部が係止していない状態である非係止状態に切り替えるために利用可能な操作部と、
係止部を操作可能な操作部が取り付けられるケース部と、を備え、
ケース部に、係止部を第1の位置に取り付けるために利用可能な第1の開口部と、係止部を第1の位置とは異なる第2の位置に取り付けるために利用可能な第2の開口部と、を備えることを特徴とする鎖錠装置。
【請求項2】
第1の開口部は、ケース部における操作部が取り付けられる面と、その反対側に位置する面の間に設けられ、
第2の開口部は、ケース部における操作部が取り付けられる面の反対側に位置する面に設けられる請求項1に記載の鎖錠装置。
【請求項3】
ケース部の第1の開口部は、操作部を操作することで非回転移動が可能なように係止部を取り付けるために利用可能であり、
ケース部の第2の開口部は、操作部を操作することで回転移動が可能なように係止部を取り付けるために利用可能である請求項2に記載の鎖錠装置。
【請求項4】
電気電子機器を収納する筐体と、筐体を覆う扉を備えた電気電子機器収納用箱において、扉若しくは、筐体の内部に設けられる内扉を鎖錠するための鎖錠装置であって、
鎖錠装置に、
筐体側に設けられる被係止部に係止することにより、扉若しくは内扉を鎖錠する係止部と、
係止部と被係止部が係止する状態である係止状態から係止部と被係止部が係止していない状態である非係止状態に切り替えるために利用可能な操作部と、
係止部を操作可能な操作部が取り付けられるケース部と、
係止部を取り付けるために利用可能な開口部を備え、
ケース部に備えた開口部は、操作部を操作することで非回転移動が可能な係止部を取り付けるために利用可能であるとともに、操作部を操作することで回転移動が可能な係止部を取り付けるために利用可能であることを特徴とする鎖錠装置。
【請求項5】
筐体に設けられる鎖錠装置の受け部材であって、
係止部が第1の位置に取り付けられた場合に、その係止部と係止可能な第1の被係止部と、
係止部が第2の位置に取り付けられた場合に、その係止部と係止可能な第2の被係止部と
を備えた、
請求項1から3の何れかに記載の鎖錠装置の係止部と係止可能な受け部材。
【請求項6】
請求項5に記載の受け部材を備えた電気電子機器収納用箱であって、
第1の被係止部は、第2の被係止部よりも扉側に位置する電気電子機器収納用箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鎖錠装置、受け部材、電気電子機器収納用箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2に記載されているように、電気電子機器を収納する電気電子機器収納用箱の扉や、収納される電気電子機器を部分的に覆うように扉の内側に形成される内扉を鎖錠するための鎖錠装置として、固定ネジを備えたものや、フック部を備えたものが知られている。また、鎖錠装置と一緒になって鎖錠の機能を発揮させる受け部材は、鎖錠装置の構造に対応したものが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-183809号公報
【特許文献2】特開2006-049400号公報
【0004】
ところで、鎖錠装置は、取り付け箇所の違いや客先の要望により、予定されていた構成や既に組み込まれた構成から変更されることがある。鎖錠装置が元の構成から変更される場合、鎖錠装置を構成する全ての構成部品を変更する必要があるとともに、鎖錠装置の受け部材についても変更する必要があった。そのため、鎖錠装置は多くの種類の構成部品を用意しておく必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、鎖錠装置の構成部品の一部を、複数種類の鎖錠形態に利用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、電気電子機器を収納する筐体と、筐体を覆う扉を備えた電気電子機器収納用箱において、扉若しくは、筐体の内部に設けられる内扉を鎖錠するための鎖錠装置であって、鎖錠装置に、筐体側に設けられる被係止部に係止することにより、扉若しくは内扉を鎖錠する係止部と、係止部と被係止部が係止する状態である係止状態から係止部と被係止部が係止していない状態である非係止状態に切り替えるために利用可能な操作部と、係止部を操作可能な操作部が取り付けられるケース部と、を備え、ケース部に、係止部を第1の位置に取り付けるために利用可能な第1の開口部と、係止部を第1の位置とは異なる第2の位置に取り付けるために利用可能な第2の開口部と、を備えることを特徴とする鎖錠装置とする。
【0007】
また、第1の開口部は、ケース部における操作部が取り付けられる面と、その反対側に位置する面の間に設けられ、第2の開口部は、ケース部における操作部が取り付けられる面の反対側に位置する面に設けられる構成とすることが好ましい。
【0008】
また、ケース部の第1の開口部は、操作部を操作することで非回転移動が可能なように係止部を取り付けるために利用可能であり、ケース部の第2の開口部は、操作部を操作することで回転移動が可能なように係止部を取り付けるために利用可能である構成とすることが好ましい。
【0009】
また、電気電子機器を収納する筐体と、筐体を覆う扉を備えた電気電子機器収納用箱において、扉若しくは、筐体の内部に設けられる内扉を鎖錠するための鎖錠装置であって、鎖錠装置に、筐体側に設けられる被係止部に係止することにより、扉若しくは内扉を鎖錠する係止部と、係止部と被係止部が係止する状態である係止状態から係止部と被係止部が係止していない状態である非係止状態に切り替えるために利用可能な操作部と、係止部を操作可能な操作部が取り付けられるケース部と、係止部を取り付けるために利用可能な開口部を備え、ケース部に備えた開口部は、操作部を操作することで非回転移動が可能な係止部を取り付けるために利用可能であるとともに、操作部を操作することで回転移動が可能な係止部を取り付けるために利用可能であることを特徴とする鎖錠装置とする。
【0010】
また、筐体に設けられる鎖錠装置の受け部材であって、係止部が第1の位置に取り付けられた場合に、その係止部と係止可能な第1の被係止部と、係止部が第2の位置に取り付けられた場合に、その係止部と係止可能な第2の被係止部とを備えた構成とすることが好ましい。
【0011】
また、受け部材を備えた電気電子機器収納用箱であって、第1の被係止部は、第2の被係止部よりも扉側に位置する構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、鎖錠装置の構成部品の一部を、複数種類の鎖錠形態に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】電気電子機器収納用箱の例の斜視図である。ただし扉を開放した状態を示している。
図2図1に示した電気電子機器収納用箱の扉及び内扉を開放した状態を示す斜視図である。
図3】先端に受け部材が取り付けられた支持部材と、鎖錠装置の例の図である。
図4図3に示す鎖錠装置の分解斜視図である。
図5図3に示す鎖錠装置をおもて面側から見た斜視図である。ただし、第1の係止部は被係止部と係止できる状態である。
図6図3に示す鎖錠装置をおもて面側から見た斜視図である。ただし、第1の係止部は被係止部と係止できない状態である。
図7】内扉に取り付けた鎖錠装置の第1の係止部が被係止部と係止した例を示す側面図である。
図8】内扉に取り付けた鎖錠装置の第1の係止部が被係止部と係止していない例を示す側面図である。
図9】実施形態のケース部をおもて面側から見た斜視図である。
図10】実施形態のケース部を裏面側から見た斜視図である。
図11】第2の係止部を備える鎖錠装置の分解斜視図の例を示す図である。
図12】第2の係止部を備える鎖錠装置をおもて面側から見た例を示す斜視図である。ただし、第2の係止部は被係止部と係止できる状態である。
図13】第2の係止部を備える鎖錠装置をおもて面側から見た例を示す斜視図である。ただし、第2の係止部は被係止部と係止できない状態である。
図14】内扉に取り付けた鎖錠装置の第2の係止部が被係止部と係止した例を示す側面図である。
図15】内扉に取り付けた鎖錠装置の第2の係止部が被係止部と係止していない例を示す側面図である。
図16】鎖錠装置と図3に示す受け部材とは異なる受け部材を組み合わせる例を示す斜視図である。
図17】操作に工具を必要とする鎖錠装置の例を示す斜視図である。ただし、第1の係止部が取り付けられている。
図18】操作に工具を必要とする鎖錠装置の例を示す斜視図である。ただし、第2の係止部が取り付けられている。
図19図3に示す鎖錠装置の側面図である。
図20図19のX-X断面図である。
図21図3に示す例からケース部を変更した鎖錠装置の側面図である。
図22図21のY-Y断面図である。
図23図22から係止部を変更した鎖錠装置の断面図である。ただし、係止部は被係止部と係止できる状態である。
図24図22から係止部を変更した鎖錠装置の断面図である。ただし、係止部は被係止部と係止できない状態である。
図25】扉に鎖錠装置を取り付けた電気電子機器収納用箱の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に発明を実施するための形態を示す。実施形態の鎖錠装置2は、電気電子機器を収納する筐体81と、筐体81を覆う扉82を備えた電気電子機器収納用箱8において、扉82若しくは、筐体81の内部に設けられる内扉83を鎖錠するためのものである。この鎖錠装置2に、筐体81側に設けられる被係止部に係止することにより、扉82若しくは内扉83を鎖錠する係止部と、係止部と被係止部が係止する状態である係止状態から係止部と被係止部が係止していない状態である非係止状態に切り替えるために利用可能な操作部12と、係止部を操作可能な操作部12が取り付けられるケース部13と、を備え、ケース部13に、係止部を第1の位置に取り付けるために利用可能な第1の開口部51と、係止部を第1の位置とは異なる第2の位置に取り付けるために利用可能な第2の開口部52と、を備えている。このため、鎖錠装置2の構成部品の一部を、複数種類の鎖錠形態に利用できる。
【0015】
なお、電気電子機器収納用箱8とは、典型的には、遮断器、開閉器、変圧器、継電器、通信装置、計測装置、制御装置、センサ機器、空調機器、サーバなどの電気電子機器と、それを収納する筐体81を備えるものであり、例えば、分電盤、配電盤、制御盤、高圧受電設備(キュービクル式高圧受電設備を含む)、システムラックなどをいう。ただし、電気電子機器収納用箱8は、内部で人が作業可能な作業用ボックスであってもよい。作業用ボックスは、通信装置や照明機器、机、椅子などを備えるものを例示することができる。
【0016】
電気電子機器収納用箱8は筐体81に電気電子機器を収納することができる。電気電子機器を収納する筐体81は、筐体81の内部に配置した電気電子機器を保護するために筐体81を覆う扉82が取り付けられている。また、扉82を鎖錠することを可能とするために鎖錠装置2が扉82に取り付けられる。なお、以下の説明では、電気電子機器収納用箱8の前後、上下、左右を基準に、前後、上下、左右という表現を使用する場合がある(図1参照)。
【0017】
また、筐体81の内部に配置した電気電子機器には、電路を開閉するためのハンドルや、電気電子機器の電源のオンオフや電気電子機器の起動のためのスイッチなどが備えられていることがある。
【0018】
電気電子機器に備えられたハンドルやスイッチは、扉82を開けた状態で操作されるが、筐体81の内部には、電気電子機器へ給電するための導電部材が収納されており、ハンドルやスイッチの操作中に導電部材と接触することにより、感電等の電気事故が生じるおそれがある。そこで、内扉83を筐体81の内部に設け、電気電子機器のハンドルやスイッチなどの電気電子機器を操作するために必要な部分のみを露出させ、それ以外の部分を覆うことができるようにすることが多い(図1及び図2参照)。このため、以下の説明では主に内扉83を備えた電気電子機器収納用箱8を例に挙げて説明をする。なお、図2には示していないが、実施形態の電気電子機器収納用箱8には図3に示すような受け部材3などが備えられている。
【0019】
図1に示す例では、電気電子機器収納用箱8の内扉83に鎖錠装置2が備えられている。この鎖錠装置2は係止部と操作部12とケース部13を備えている(図4参照)。係止部とは、筐体81に設けられる被係止部と係止することにより、扉82若しくは内扉83の鎖錠の機能を発揮させるものである。この例では、係止部はプレートであり、動かすことにより係止部と被係止部が係止する状態である係止状態から係止部と被係止部が係止しない状態である非係止状態に切り替えることができる。もちろん、非係止状態から係止状態に切り替えることもできる(図5から図8参照)。
【0020】
操作部12は、係止状態と非係止状態との間で切り替える際に操作されるものである。実施形態においては、操作部12を回転させるように操作することにより、係止部と被係止部との位置関係を係止状態と非係止状態との間で変更可能となっているが、そのようなものに限る必要はない。例えば、操作部12を扉82や内扉83の面に沿って直線的に若しくは曲線的に操作するものであってもよいし、倒れた操作部12を起こすことにより係止部を操作するものであってもよい。
【0021】
ケース部13は、係止部を操作可能な操作部12が取り付けられるものである。図4及び図5などに示す例では、筒状のケース部13に操作部12を差し込んだ状態となるようにケース部13に操作部12を取り付ける構成としているが、そのような態様である必要はない。少なくとも、ケース部13に取り付けられた操作部12を動かすことで係止部を動かすことができる構成とすればよい。
【0022】
実施形態の鎖錠装置2のケース部13は、固定部14を用いて扉82若しくは内扉83に固定することができる構成としている。より詳しくは、実施形態の固定部14は、内扉83に設けられた開口(扉82に付ける場合は扉82に設けられた開口)に対して内扉83のおもて面側(扉82に付ける場合は扉82のおもて面側)から挿通されたケース部13に対して、内扉83の裏面側(扉82に付ける場合は扉82の裏面側)で螺合することで、ケース部13を内扉83(若しくは扉82)に固定するものである。
【0023】
鎖錠装置2のケース部13は、複数の形態で係止部を移動可能に取り付け可能な構造とする。このため、ケース部13は、係止部の取り付けに利用可能な複数の開口部を備えている構造とする(図9及び図10参照)。これらの開口部は、それぞれ係止部を異なる位置に取り付けるために利用可能であり、何れかの開口部を利用して係止部を備える鎖錠装置2にすればよい。つまり、複数の開口部が設けられたケース部13は、係止部を取り付ける位置が選択できるものであり、係止部を取り付ける位置を選択することで、異なる鎖錠形態とすることを可能とする。
【0024】
例えば、図4から図6に示す例では、第1の開口部51は、ケース部13における操作部12が取り付けられる面と、その反対側に位置する面の間に設けられており、筒状のケース部13の軸方向(図4では前後方向)と直交するように第1の開口部51を通じてケース部13を貫通するように、係止部(第1の係止部11A)が取り付けられている。係止部(第1の係止部11A)は操作部12で操作可能な状態となるように取り付けられている。第1の開口部51に挿入するように取り付けられた係止部(第1の係止部11A)は、ケース部13の第1の開口部51が開いた方向(図4では左右方向)に摺動可能となっており、それ以外の方向への移動については制限されている。
【0025】
ケース部13に設けられた第1の開口部51に差し込まれるように取り付けられている係止部(第1の係止部11A)を摺動させるための構造は実施形態においては、次のようなものである。係止部(第1の係止部11A)には孔部11Aaが設けられ、操作部12の係止部(第1の係止部11A)に隣接する面には凸部12Aaが設けられている。この凸部12Aaは第1の係止部11Aに設けられた孔部に挿入可能なように構成されている。なお、この例ではケース部13の内側で孔部11Aaに凸部12Aaが挿入される。
【0026】
孔部11Aaに凸部12Aaが挿入された状態で、操作部12を回転操作することで、力を凸部12Aaから係止部(第1の係止部11A)に伝えることにより、係止部を摺動させることができる。つまり、操作部12の回転の動きが、係止部の直線的な摺動をもたらす。
【0027】
図4に示す例では、ケース部13と第1の係止部11Aと操作部12が組まれた状態において、操作部12の裏面のうち、凸部12Aaを除く部分については、係止部(第1の係止部11A)よりも操作部12のおもて面側に位置する。しかしながら、係止部の孔部11Aaと操作部12の凸部12Aaの位置関係などは、本実施例に限定されるものではなく、操作部12を操作することにより係止部と被係止部の位置関係を係止状態と非係止状態に変更可能とする限り、いかなる位置に設けるものであってもよい。また、孔部11Aaと凸部12Aaを複数設けるものであってもよい。
【0028】
鎖錠装置2の組立方法方はいかなるようにしても良いが、実施形態における第1の係止部11Aを備えた鎖錠装置2の組立方法としては、以下のように例示できる。なお、この例では内扉83に鎖錠装置2を取り付ける例を示すが、扉82に鎖錠装置2を取り付ける場合は内扉83を扉82と読み替えればよい。
【0029】
先ず、内扉83に設けた開口(図示せず)に内扉83のおもて側からケース部13を挿通し、挿通されたケース部13に対して、内扉83の裏側で固定部14をケース部13に螺合し、ケース部13を内扉83に固定する。そして、係止部(第1の係止部11A)をケース部13の側面方向から第1の開口部51に挿入する。その後、操作部12を内扉83のおもて側からケース部13に取り付ける。このとき、操作部12の凸部12Aaを係止部の孔部11Aaに挿入させる。なお、取り付けられた操作部12は、ケース部13のおもて側から裏側に延びる軸を中心に回転可能であるが、操作時に、操作部12がケース部13から脱落することがないように、操作部12の一部がケース部13の一部に対してケース部13のおもて側から裏側に延びる軸と直交する方向にはまる構成とするか、ケース部13の一部が操作部12の一部に対してケース部13のおもて側から裏側に延びる軸と直交する方向にはまる構成とすることが好ましい。
【0030】
また、図11から図13に示す例では、ケース部13の裏面に設けられた第2の開口部52を利用して、係止部(第2の係止部11B)が取り付けられている。係止部(第2の係止部11B)は操作部12で操作可能な状態となるように取り付けられている。係止部(第2の係止部11B)は、ネジ等の締結具と第2の開口部52を利用して操作部12に取り付けられる。より具体的には、ケース部13に挿入した操作部12の先端が第2の開口部52を通して外部に位置できる構成とし、ケース部13の外部に出た操作部12の先端に締結具を用いて係止部(第2の係止部11B)を取り付ける構成としている。なお、図4に示す操作部12と図11に示す操作部12は異なる構成となっている。
【0031】
係止部(第2の係止部11B)は、回転可能な操作部12に固定されており、操作部12が回転するように動くことによって係止部(第2の係止部11B)も回転する(図14及び図15参照)。より詳しくは、操作部12に固定された係止部(第2の係止部11B)は、操作部12と一体的に、操作部12をケース部13に挿入する方向に延びる軸を中心に回転する。
【0032】
操作部12の一方の端部は、ケース部13の第2の開口部52から突出する構造となっている。第2の係止部11Bの端部には、係止部(第2の係止部11B)を操作部12に固定するために用いる孔部11Baが設けられている。より詳しくは、実施形態においては、その操作部12の端部を挿入可能なように係止部(第2の係止部11B)に孔部11Baが設けられ、係止部(第2の係止部11B)の孔部11Baに操作部12の端部が挿通された状態でネジ等の締結具が螺合されることにより、係止部(第2の係止部11B)が操作部12に取り付けられる。
【0033】
この例においても、鎖錠装置2の組立方法はいかなるようにしても良いが、実施形態における係止部(第2の係止部11B)を備えた鎖錠装置2の組立方法としては、以下のように例示できる。なお、この例では扉82に鎖錠装置2を取り付ける例を示すが、内扉83に鎖錠装置2を取り付ける場合は扉82を内扉83と読み替えればよい。
【0034】
先ず、扉82に設けた開口に扉82のおもて側からケース部13を挿通し、挿通されたケース部13に対して、扉82の裏側で固定部14をケース部13に螺合し、ケース部13を扉82に固定する。そして、操作部12を扉82のおもて面側からケース部13に挿入する。その後、係止部(第2の係止部11B)を扉82の裏面側で操作部12に取り付ける。なお、係止部(第2の係止部11B)を取り付けることにより、ケース部13に取り付けられた操作部12の脱落を防止することができる。
【0035】
ところで、鎖錠装置2は、筐体81若しくは筐体81に取り付けた受け部材3に係止部を係止させることで、扉82若しくは内扉83を開かないようにすることができる。たとえば、内扉83に設けられた鎖錠装置2に対して、筐体81に取り付けた受け部材3の被係止部に鎖錠装置2の係止部を係止することで、内扉83が容易に開かないように鎖錠することができる。
【0036】
受け部材3は、鎖錠装置2の係止部に対応した被係止部を備えているが、この被係止部は、係止部が内扉83の開放と連動して移動しようとした際に、係止部の移動を規制する役割を有するものである。被係止部は、少なくとも内扉83(若しくは扉82)を閉じた状態で係止部と内扉83(若しくは扉82)の間に位置することで係止部の移動を規制することができる部分を備える構成であればいかなる形状であってもよい。
【0037】
被係止部を備えた受け部材3は、複数の被係止部を備える構成であるのが好ましい。たとえば、図16に示す例では、複数の被係止部のうち、第1の被係止部30aは、係止部の先端を収めることが可能な筒状の部分31の一部である。この第1の被係止部30aは、筒状の部分31に先端を収めた係止部の移動を規制することができる。また、第2の被係止部30bは、係止部の先端を収めることが可能な筒状の部分31の他の一部である。この第2の被係止部30bは、筒状の部分31に外側に位置する係止部の移動を規制することができる。つまり、筒状の部分31は係止部の先端が挿入された場合、その内周面と係止部が当接することで移動を規制することができ、係止部が筒状の部分31の外周側に位置する場合、その外周面と係止部が当接することで移動を規制することができる。
【0038】
実施形態では、筐体81に設けられる鎖錠装置2の受け部材3は、係止部が第1の位置に取り付けられた場合に、その係止部と係止可能な第1の被係止部30aと、係止部が第2の位置に取り付けられた場合に、その係止部と係止可能な第2の被係止部30bとを備えている。このため、鎖錠装置2側で係止部の取り付け位置を変更した場合に、受け部材3を変更することが必須でなくなる。
【0039】
図16に示す受け部材3は、扉82を閉じている状態において、第1の被係止部30aが第2の被係止部30bよりも扉82の近くに位置するように筐体81などに取り付ける。つまり、扉82や内扉83を開けたとき、第1の被係止部30aは第2の被係止部30bよりも手前側に見えるように配置される。受け部材3を備えた電気電子機器収納用箱8において第1の被係止部30aを、第2の被係止部30bよりも扉82側に位置する構成とすることで、受け部材3や鎖錠装置2が上下方向に大きくなることを抑制することができる。
【0040】
なお、この例では、扉82や内扉83に備えられたケース部13の第1の開口部51と第2の開口部52は、扉82や内扉83を閉じた状態において、前後方向に位置がずれており、第1の開口部51は前側、第2の開口部52は後側に配置されている。このため、ケース部13の第1の開口部51を利用して第1の位置に取り付けられた第1の係止部11Aは、ケース部13の第2の開口部52を利用して第2の位置に取り付けられた第2の係止部11Bよりも前側に位置することになる。そのため、受け部材3は、第1の被係止部30aと第2の被係止部30bを前後方向にずらして配置し、第1の被係止部30aを前側、第2の被係止部30bを後側に配置する構成となる。
【0041】
ところで、受け部材3は筐体81に直接取り付けなくても良い。例えば、筐体81に取り付けた支持部材40に受け部材3を取り付けても良い。例えば、鎖錠装置2が内扉83を鎖錠するために利用される場合、筐体81の後面から内扉83側へ延びるように支持部材40を取り付け、この支持部材40の支持部41に受け部材3を取り付けるようにしても良い(図3参照)。この場合、金具等を介して、支持部材40の後側端部を筐体81の後面に取り付け、支持部材40の前側端部に設けた支持部41に受け部材3を取り付ければよい。もちろん、その他の態様でもよく、例えば、鎖錠装置2が、内扉83に取り付けられる場合、筐体81の側面若しくは、内扉83の周囲に形成されるフレームに受け部材3を取り付ける構成としてもよい。鎖錠装置2が扉82に取り付けられる場合、筐体81の側面若しくは、扉82の周囲に形成されるフレームに受け部材3を取り付けるものであってもよい。
【0042】
ところで、実施形態の鎖錠装置2は、操作部12に第1穴部21を設け、ケース部13に第2穴部22を設けている。第1穴部21と第2穴部22は、係止部が被係止部と係止可能な位置関係にある状態のときに近づき、操作部12を操作してその状態を解除した場合は、遠ざかるものである。
【0043】
これら第1穴部21と第2穴部22の両方に、紐状若しくは棒状などの可撓性の挿通部材を挿通し、挿通部材が第1穴部21や第2穴部22から抜けないようにするようにすればよい。可撓性の挿通部材は、第1穴部21と第2穴部22の両方に挿通できる程度の長さがあれば、操作部12の回転動作を阻害するように取り付けることができる。また、南京錠などのロック部材をチェーンなどの挿通部材に取りつけて、操作部12の動きを抑制するようにしても良い。
【0044】
このようにすれば、第1穴部21と第2穴部22に挿通した挿通部材などにより、係止部と被係止部の係止状態を被係止状態に変更することができなくなるため、扉82若しくは内扉83を開くことができなくなる。なお、南京錠などのロック部材を第1穴部21と第2穴部22の両方に挿通できる場合には、挿通部材を用いず、ロック部材のみで操作部12の回転動作を阻害するものであってもよい。
【0045】
上記した例では、係止部の取り付け方の選択に関わらずケース部13と固定部14を同じものを使用しているが、係止部の取り付け方の選択に関わらず使用できる共通の部品は、一点でも多いほうが好ましい。このため、例えば、一つの係止部を第1の位置に取り付けることも第2の位置に取り付けることもできるようにしても良い。
【0046】
図4に示すような例では、係止部を第1の位置に取り付ける場合、ケース部13の第1の開口部51に挿通されるため、係止部の外形寸法が制限されるが、外形寸法を適切に選択し、操作部12の凸部12Aaと嵌合する孔部と、操作部12の後端部と嵌合可能な孔部を備える係止部とすれば、その係止部を第1の位置に取り付けることも第2の位置に取り付けることもできる。
【0047】
係止部の取り付け方の選択に関わらずケース部13と固定部14と係止部を同じものを使用できるようにすることで、さらに在庫管理が必要なパーツの種類や在庫コストを抑制することができる。
【0048】
ところで、上記した例における操作部12は、手による回転動作を可能とする摘み部121を備えた手動用操作部であるが、回転動作に工具を必要とする工具用操作部としてもよい。工具用操作部とすれば、工具がなければ、操作部12を回転動作し、係止部を操作することができないため、工具を持たない人が扉82若しくは内扉83の開閉を行うことができないようにすることができる。図17及び図18に示す例では、操作部12に工具を挿入可能なはめ込み部122を備え、はめ込み部122に工具の先端を挿入した状態で工具を回動することで操作部12を回動させることができる構成となっている。
【0049】
これらの記載から理解できるように、実施形態の鎖錠装置2のケース部13は複数の開口部を備えており、係止部の取り付け態様が選択できるようになる。また、複数種類の操作部12(手動用操作部、工具用操作部)を取り付け可能とすることもできる。したがって、在庫管理が必要なパーツの種類を抑制しつつ、様々な種類の鎖錠装置2を構成することができるようになる。
【0050】
これまでの説明では、第1の開口部51は、ケース部13における操作部12が取り付けられる面と、その反対側に位置する面の間に設けられ、第2の開口部52は、ケース部13における操作部12が取り付けられる面の反対側に位置する面に設けられる構成としている。このため、第1の開口部51と第2の開口部52の位置を全く異なるようにすることができる。ただし、このような態様に限る必要はない。
【0051】
なお、第1の開口部51が、ケース部13における操作部12が取り付けられる面と、その反対側に位置する面の間に位置する側面に設けられると、第1の開口部51と第2の開口部52の開放方向が全く異なるものとなる。
【0052】
また、ケース部13の第1の開口部51は、操作部12を操作することで非回転移動が可能なように係止部を取り付けるために利用可能であり、ケース部13の第2の開口部52は、操作部12を操作することで回転移動が可能なように係止部を取り付けるために利用可能である構成とすれば、係止部の動きを選択することができる。
【0053】
鎖錠装置2の構成部品の一部であるケース部13を、複数種類の鎖錠形態に利用できるようにするために、ケース部13の第1の開口部51と第2の開口部52の何れかを用いて係止部を取り付けた実施形態を説明したが、ケース部13の開口部に複数種類の係止部を取り付け可能とすることで、複数種類の鎖錠形態に利用できるようにしてもよい。つまり、ケース部13の開口部に非回転移動が可能な係止部と、回転移動が可能な係止部の両方を取り付け可能とするものであってもよい。
【0054】
例えば、図19には、ケース部13の第1の開口部51に直線的な摺動が可能な第1の係止部11Aが差し込まれた鎖錠装置2が示されており、図20には、その鎖錠装置のX-X断面図が示されている。図20に示す例では、ケース部13に差し込まれた第1の係止部11Aは、孔部11Aaに、操作部12の凸部12Aaが挿入されている。この状態で操作部12を操作すると、第1の係止部11Aは、ケース部13の側壁13aにガイドされて、第1の開口部51が開いた方向に摺動する。
【0055】
このような例と似た形態としつつ、ケース部13の側壁13aと開口部の形状を変更することで、開口部に、直線的な摺動が可能な第1の係止部11Aのみでなく、回転移動が可能な第2の係止部11Bを取り付けることが可能となる。図21及び図22に示す例では、図19及び図20に示す例とケース部13の側壁13aの形状と開口部の形状が異なっており、図19及び図20に示す例と比べて、一方の側壁13aを小さく形成しつつ、第2の係止部11Bが回転移動可能な大きさの開口部54とした鎖錠装置2が示されている。このとき、ケース部13の2つの側壁13aの両方を小さく形成するなど、側壁13aの大きさや位置については、適宜変更可能である。少なくとも一方の側壁13aを小さく形成した場合であっても、第1の係止部11Aは、側壁13aにガイドされるため、図19及び図20に示す例と同様に、直線的な摺動が可能となる。
【0056】
図23及び図24には、開口部54に差し込まれる係止部を第2の係止部11Bとした鎖錠装置2が示されている。側壁13aを小さく形成することで生じた空間を利用して、第2の係止部11Bは回転可能となる。第2の係止部11Bは、第2の開口部52を介してネジ等の締結具により操作部12に固定されるようにすればよい。
【0057】
なお、第2の係止部11Bは、小さく形成した側壁13aを避けるために、切欠などを設けているが、第2の係止部11Bの形状は、側壁13aとの位置関係により適宜変更可能である。また、第1の係止部11Aと第2の係止部11Bを異なる形状のものとして説明したが、これらを共通の部品としてもよく、これらを操作する操作部12についても共通の部品としてもよい。そうすることで、在庫管理や在庫コストの観点から好ましいものとなる。
【0058】
ところで、電気電子機器収納用箱8の扉82は筐体81に直接取り付けられていなくても良い。筐体81の前面にフレーム85を取り付け、そのフレーム85に扉82を取り付けるようにしても良い(図25参照)。この場合、被係止部をフレーム85に備えるようにしても良い。
【0059】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
2 鎖錠装置
3 受け部材
8 電気電子機器収納用箱
12 操作部
13 ケース部
30a 第1の被係止部
30b 第2の被係止部
51 第1の開口部
52 第2の開口部
81 筐体
82 扉
83 内扉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25