(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172089
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ドアウェザーストリップ
(51)【国際特許分類】
B60J 10/25 20160101AFI20231129BHJP
B60J 10/86 20160101ALI20231129BHJP
【FI】
B60J10/25
B60J10/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083660
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】大村 拓郎
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA09
3D201BA01
3D201CA23
3D201DA03
3D201DA16
3D201DA23
3D201DA31
3D201DA45
3D201FA01
3D201FA04
(57)【要約】
【課題】洗車水などが樋状部によってドアミラーのベース部を固定するボルトやその周辺に掛かるのを防止して、ボルトなどの錆の発生を抑制することができる。
【解決手段】ドアウェザーストリップ21は、ドアパネルの周縁部に閉ループ状に取り付けられ、取付基部と、取付基部の車内側端部に設けられ、ドア閉時に車体パネルに弾接する中空シール部9と、取付基部の車外側端部に有する支持部の先端部に設けられて、ドア閉時に車体パネルに弾接するサブシールリップ11と、支持部のサブシールリップよりも内側に設けられて、ドアパネルの先端部内面に当接する第1パネルリップと、を備え、サブシールリップとパネルリップとの間に排水溝部15を有し、ドアパネルの前端部側の位置に有し、下端部がドアミラーのベース部が固定されるインパクトボルト17よりも前方の位置でかつ下方へ延びた樋状部22は、前記排水溝部と連続する排水用溝26を有している。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端部にドアミラーのベース部がボルトによって固定されるドアパネルの周縁部に閉ループ状に取り付けられ、
前記ドアパネルの周縁部に固定される取付基部と、前記取付基部の車内側端部に設けられ、ドア閉時に車体パネルに弾接する中空シール部と、前記取付基部の車外側端部に有する支持部の先端部に設けられて、ドア閉時に車体側部材に弾接するサブシールリップと、前記支持部の前記サブシールリップよりも内側に設けられて、前記ドアパネルの端末部内面に当接するパネルリップと、を備え、前記サブシールリップとパネルリップとの間に排水溝部を有するドアウェザーストリップであって、
前記ドアパネルの前端部側の位置に、前記サブシールリップとパネルリップの各下端縁から延出されて、下端部が前記ボルトよりも前方の位置でかつ下方へ延びた樋状部を有し、
前記樋状部は、前記排水溝部と上下方向から連続する排水用溝を有することを特徴とするドアウェザーストリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のドアウェザーストリップであって、
前記樋状部と前記中空シール部との間に、前記ボルトの頭部を回転操作する工具が嵌合可能な空間部が形成されていることを特徴とするドアウェザーストリップ。
【請求項3】
請求項1に記載のドアウェザーストリップであって、
前記樋状部の排水用溝は、下端縁が前記ドアパネルのインナーパネルの端部に接合されるアウターパネルのヘムフランジの端縁に形成された段差溝に向かって配置されていることを特徴とするドアウェザーストリップ。
【請求項4】
請求項1に記載のドアウェザーストリップであって、
前記樋状部が設けられるドアウェザーストリップの一部は、型成形によって形成されていることを特徴とするドアウェザーストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアパネルに取り付けられ、該ドアパネルと車体パネルとの間をシールするドアウェザーストリップに関し、特に、フロントドアの前端部の排水経路を変更するドアウェザーストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントドアの周囲に装着されるドアウェザーストリップのうち、特にドアサッシュ部の上辺部に相当する部分に例えば洗車時の高圧水を受けた場合や豪雨時に雨水などが侵入して、ドアウェザーストリップのシールリップなどで隔成された隙間を通ってドアパネルを伝って流れ落ちる現象が発生する。
【0003】
図1は本発明及び従来技術のドアウェザーストリップが適用される自動車のフロントドアを車内側から視た側面図、
図11は
図1のH-H線断面図、
図12は従来のドアウェザーストリップを示す
図1のX部拡大図、
図13は
図12のI部拡大図である。
【0004】
このドアウェザーストリップ1は、
図1に示すように、ドア本体3とドアサッシュ部4とからなるフロントドア2の周囲に閉ループ状に配設されている。
【0005】
すなわち、ドアウェザーストリップ1は、
図11に示すように、インナーパネル6とアウターパネル7からなるドアパネル5の周囲に例えば図外のクリップによって取り付け固定される取付基部8と、該取付基部8の車内側端部に一体に設けられ、ドア閉時に車体パネル14に弾接する中空シール部9と、取付基部8の車外側端部に立設された直線状の支持部10の先端部に設けられて、ドア閉時に先端部11aが車体パネル14やFIX窓ガラス29(はめ込み式ガラス)の窓枠30に弾接して中空シール部9を覆い隠するサブシールリップ11と、前記支持部10の車外側側面に上下二段にわたって突設されて、各先端部12a、13aがインナーパネル6の端末部6aの内面やアウターパネル7の端末部7aのヘムフランジ内面に弾接する第1パネルリップ12及び第2パネルリップ13と、を備えている。
【0006】
前記中空シール部9は、横断面ほぼ楕円形状に形成されて取付基部8よりも低比重のスポンジゴム材によって全体がほぼ均一幅で成形されていると共に、ドア開時の自由状態では、先端部9aが前記車体パネル14方向に向かってほぼ直線状に突出形成されている。
【0007】
したがって、前述したように、ドア閉時には、前記中空シール部9とサブシールリップ11の先端部9a、11aが車体パネル14や窓枠30に弾接して、車体開口部をシールするようになっている。
【0008】
そして、例えば、ドアサッシュ部4の上辺部に相当する部分などに例えば洗車時の高圧水や豪雨時の雨水が掛かった場合には、
図11に示すように、前記サブシールリップ11と上段の第1パネルリップ12との間に形成された排水溝部15に雨水Wなどが入り込み、この排水溝部15を通って車体の下方へ流れ落ちるようになっている。
【0009】
このような、ドアウェザーストリップの排水構造の一つとして、本出願人が先に出願した以下の特許文献1に記載された発明が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、前記従来のドアウェザーストリップ1は、
図1に示すように、フロントドア2の周囲に装着されるものの、フロントドア2の前端部に設けられるドアミラー16のベース部16aを取り付けるインパクトボルト17付近では、
図12及び
図13に示すように、前記インパクトボルト17の上方位置で前記サブシールリップ11と第1パネルリップ12などが切断されている状態になっている。つまり、サブシールリップ11などは、インパクトボルト17の頭部17aに干渉せず、また、このインパクトボルト17の締め付けに使用するボックスレンチなどの工具の嵌合スペースを確保するために、ボルト頭部17aの上方位置で切断された形になっている。
【0012】
このため、ドアウェザーストリップ1のドアサッシュ部4の上辺部に相当する部分から排水溝部15に入り込んでフロントドア2の前端部に第1パネルリップ12に沿って流れ落ちた水Wは、
図12及び
図13の一点鎖線矢印で示すように、そのままインパクトボルト17の頭部17aやその周辺に直接掛かってしまうおそれがある。この結果、前記インパクトボルト17の頭部17aやその周辺などに錆が発生し易くなって、経時的に錆による腐食が進行してしまう可能性がある。
【0013】
本発明は、前記従来技術の技術的課題に鑑みて案出されたもので、ドアウェザーストリップの排出用溝部を伝って流れ落ちた水が、樋状部によってドアミラーのベース部を固定するボルトやその周辺に掛かるのを防止して錆の発生を抑制できるドアウェザーストリップを提供することを一つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一つの態様としては、前端部にドアミラーのベース部がボルトによって固定されるドアパネルの周縁部に閉ループ状に取り付けられ、
前記ドアパネルの周縁部に固定される取付基部と、前記取付基部の車内側端部に設けられ、ドア閉時に車体パネルに弾接する中空シール部と、前記取付基部の車外側端部に有する支持部の先端部に設けられて、ドア閉時に車体側部材に弾接するサブシールリップと、前記支持部の前記サブシールリップよりも内側に設けられて、前記ドアパネルの端末部内面に当接するパネルリップと、を備え、前記サブシールリップとパネルリップとの間に排水溝部を有するドアウェザーストリップであって、
前記ドアパネルの前端部側の位置に、前記サブシールリップとパネルリップの各下端縁から延出されて、下端部が前記ボルトよりも前方の位置でかつ下方へ延びた樋状部を有し、
前記樋状部は、前記排水溝部と上下方向から連続する排水用溝を有することを特徴としている。
【0015】
したがって、例えば、洗車用の高圧水などがドアウェザーストリップのサブシールリップとパネルリップとの間の排水溝部に入って流下した水は、前記樋状部の排水用溝に案内されながらそのままドアパネルの外側面を伝って流れ落ちる。つまり、排水溝部を流下した水は、樋状部の排水用溝を通ることにより、前記ボルトの取り付け位置を避けた状態で流れ落ちる。このため、ボルトやボルト周辺への水の付着が回避されることから、ボルトやその周辺の発錆などを未然に防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ドアウェザーストリップを伝って流れ落ちた洗車水などの水が、樋状部の排水用溝によってドアミラーのベース部を固定するボルトやその周辺へ掛かるのを防止することができる。この結果、当該ボルトやその周辺に対する錆の発生を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明及び従来技術のドアウェザーストリップが適用される自動車のフロントドアの側面図である。
【
図2】本発明に係るドアウェザーストリップの実施形態を示す
図1のX部拡大図である。
【
図8】(a)は
図2のE-E線断面図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【
図10】本実施形態におけるフロントドアの前端部の下部を示し、流下した水がドアヒンジを避けた状態を示している。
【
図12】従来のドアウェザーストリップを示す
図1のX部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のドアウェザーストリップの実施形態を図面に基づいて詳述する。
なお、フロントドアやドアウェザーストリップの基本構成は、前記従来のものと同じであるから、共通して部分には同一の符番を付して説明する。
【0019】
【0020】
車両である乗用車のフロントドア2は、
図1で示したように、ドア本体3と、該ドア本体3の上部に設けられたドアサッシュ部4と、を有し、ドア本体3とドアサッシュ部4は、ドアパネルの車内側のインナーパネル6の端末部6aに車外側のアウターパネル7の端末部7aをヘム加工によりフランジ接合されて形成されている。これによって、アウターパネル7の折り曲げられた端末部7aの端縁とインナーパネル6の端末部6aとの間に段差溝28が形成されている。
【0021】
ドア本体3は、
図1~
図4に示すように、ドアサッシュ部4との境界部の内面にドアミラー16のベース部16aが取り付けられる取付面3aが形成されていると共に、この取付面3aの所定位置には、インナーパネル6とアウターパネル7を貫通したボルト挿入孔3bが形成されている(
図8(a)参照)。このボルト挿入孔3bには、前記ベース部16aを固定するボルトであるインパクトボルト17が挿通されている。前記インパクトボルト17は、インナーパネル6側のボルト挿入孔3bの孔縁部に着座する六角形状の頭部17aと、前記ボルト挿入孔3bに挿通され、外周に雄ねじ部が形成された軸部17bと、を有している。なお、
図4中、符番29はフロントドア2と図外のフロントガラスとの間に設けられたはめ込み式のFIX窓ガラス、符番30は該FIX窓ガラス29の窓枠、符番31は車内側のインナーガーニッシュである。
【0022】
また、ドア本体3の取付面3aの下方位置には、車体の開口部に対してフロントドア2を開閉するドアヒンジ18が設けられている。
【0023】
そして、前記ドア本体3とドアサッシュ部4とからなるフロントドア2の周囲には、ドアウェザーストリップ21が閉ループ状に装着されている。
【0024】
このドアウェザーストリップ21は、例えば、エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPDM)、あるいはオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)などのゴム材料によって形成されており、
図1に示すように、直線部に配置される押出成形部01と、コーナ部や前記ドアミラー16のベース部16aが取り付けられる取付面3a側のほぼく字形状の屈曲部に配置される型成形部02と、を備えている。押出成形部01は、図外の押出成形機によってほぼ直線状に形成されている一方、型成形部02は、隣接する押出成形部01の端末部を連結するために、図外の射出成形機の金型装置によって屈曲状に形成されている。
【0025】
このドアウェザーストリップ21は、基本的な閉断面構造は前記従来のものと同じであって、
図4に示すように、インナーパネル6に図外のクリップによって取り付け固定される取付基部8と、該取付基部8の車内側端部に一体に設けられ、ドア閉時に車体パネル14にほぼ垂直方向から弾接してメインシール部として機能する中空シール部9と、取付基部8の車外側端部から立設された支持部10と、該支持部10の先端部から車外方向に突出形成されたサブシールリップ11と、支持部10の車外側側面から車外方向に突出形成されて、各先端部がインナーパネル6やアウターパネル7の各端末部6a、7aの内面に弾接する上下二段の第1パネルリップ12及び第2パネルリップ13と、を備えている。
【0026】
取付基部8は、ソリッドゴム材によって横断面ほぼ矩形状に形成されて、ドアサッシュ部4を含むフロントドア2の外周に沿って配設されていると共に、長手方向の所定位置にクリップが挿入される図外の複数の挿入孔が貫通形成されている。
【0027】
中空シール部9は、横断面ほぼ楕円形状に形成されて取付基部8よりも低比重のスポンジゴム材によって成形されていると共に、ドア開時の自由状態では、先端部9aが車体パネル14の方向に向かってほぼ直線状に突出形成されている。
【0028】
支持部10は、取付基部8の車外側端部から直線状に立設されて、取付基部8と同じソリッドゴム材によって形成されている。
【0029】
サブシールリップ11は、断面ほぼく字形状に形成されて取付基部8よりも低比重のゴム材によって形成されて、ドア閉時に、先端部11aが形成位置に応じてフロントドア2の上端部側ではルーフ側の車体パネル14の端面に弾接し、フロントドア2の前端部側ではFIX窓ガラス29の窓枠30の後端面に弾接して、シール機能を発揮するようになっている。
【0030】
上段側の第1パネルリップ12は、支持部10の上端部から車外方向に突出して断面ほぼ横く字形状に形成されて、ドアウェザーストリップ21のドアパネル5への取り付け時に、先端部がアウターパネル7の端末部7aに有するヘムフランジの内面に弾接して、シール機能を発揮するようになっている。また、第1パネルリップ12は、先端部がアウターパネル7の端末部7aに弾接した状態で、サブシールリップ11との間に排水溝部15が長手方向に沿って形成されている。この排水溝部15は、フロントドア2の上辺部側などで、第1パネルリップ12の先端部12aとサブシールリップ11の先端部11aとの間に形成された隙間から入り込んだ例えば洗車用の高圧水や雨水などを捕集して車体の前後方向へ排水するようになっている。
【0031】
下段側の第2パネルリップ13は、支持部10の取付基部8近傍の下端部から車外方向に突出して、第1パネルリップ12と同じくドアウェザーストリップの取り付け時に、その先端部がインナーパネル6の端末部6aの内面に弾接して、シール機構を発揮するようになっている。
【0032】
そして、ドアウェザーストリップ21は、
図3及び
図8(a)(b)に示すように、前記ドアミラー16のベース部16aの取付面3a側の型成形部02に樋状部22が設けられている。
【0033】
具体的に説明すれば、ドアウェザーストリップ21は、ドアパネル5の前端部側に位置では、
図6及び
図7に示すように、支持部10がフロントドア2の前方へ延設されて、その先端部にサブシールリップ11や第1パネルリップ12が設けられているが、これらのさらに下方位置では、
図8(a)に示すように、支持部10やサブシールリップ11、第1パネルリップ12が存在せずに、前記サブシールリップ11や第1パネルリップ12の下端部から下方へ延びた樋状部22が設けられている。
【0034】
この樋状部22は、
図2及び
図3に示すように、ドアパネル5の前端部側の位置でドアウェザーストリップ21の前記インパクトボルト17の上方位置から分岐した形で一体に設けられている共に、閉断面形状がほぼ横コ字形状に形成されている。
【0035】
すなわち、樋状部22は、下端部22aがインパクトボルト17よりも前方に位置でかつインパクトボルト17を避けた形で下方向へ延びており、
図8(a)(b)に示すように、平坦状の基部23と、該基部23の車内側端部に一体に有し、先端部24aがインナーパネル6の端末部6aに当接する支持リップ24と、車外側端部に支持リップ24とほぼ平行に配置され、先端部25aがアウターパネル7の端末部7aのヘムフランジの折り返し端縁付近に当接するガイドリップ25と、を有している。
【0036】
前記ガイドリップ25は、断面ほぼく字形状に屈曲形成されて、その幅方向のほぼ中央位置の上面に、つまり屈曲点位置の上面に排水用溝26が形成されている。この排水用溝26は、上端部が前記サブシールリップ11と第1パネルリップ12との間に形成された排水溝部15と上下方向で連続して形成されていると共に、下端部が前記アウターパネル7の端末部7aのヘムフランジの端縁とインナーパネル6の端部との間に形成された段差溝28に指向して配置されている。
【0037】
また、樋状部22は、
図2及び
図3に示すように、前記中空シール部9との間に、インパクトボルト17の頭部17aを中心としたほぼ逆U字形状の空間部27を形成している。この空間部27は、前記インパクトボルト17の頭部17aを回転操作する工具である例えばボックスレンチが嵌合可能な大きさに形成されている。つまり、空間部27は、ボックスレンチの回転操作に邪魔にならない嵌合スペースを確保するようになっている。
【0038】
〔本実施形態に係るドアウェザーストリップの作用効果〕
以下、本実施形態に係るドアウェザーストリップの作用効果について説明する。
【0039】
図10は本実施形態におけるフロントドアの前端部の下部を示し、流下した水がドアヒンジを避けた状態を示している。
【0040】
自動車のドア2を閉じた状態では、ドアウェザーストリップ21の中空シール部9やサブシールリップ11の各先端部9a、11aが車体パネル14などに弾接して車体開口部が効果的にシールされるが、車体のルーフ上などに高圧な洗車水などが掛かると、その水Wは、サブシールリップ11と第1パネルリップ12との間の排水溝部15内に入り込んでそのまま車体の前後方向に案内されながら流れ落ちる。
【0041】
そして、排水溝部15を伝ってフロントドア2の前端側へ流れた水Wは、
図2と
図3の一点鎖線矢印、及び
図9に示すように、排水溝部15から一部が樋状部22の排水用溝26に流入してそのままこの排水用溝26を伝ってインナーパネル6の端末部6aとアウターパネル7の端末部7aとの間の段差溝28に流れ、さらに、この段差溝28を伝って地面に流れ落ちる。なお、
図9中、符番32はフロントフェンダである。
【0042】
以上のように、排水溝部15を流下した水は、排水用溝26を通ることにより、前記インパクトボルト17の頭部17aやその周辺を避けた状態で流れ落ちる。このため、インパクトボルト17やボルト周辺への掛かり(付着)が回避されることから、インパクトボルト17やその周辺の発錆などを未然に防止することが可能になる。
【0043】
特に、樋状部22は、ガイドリップ25の高さが基部23や支持リップ24によってインパクトボルト17の頭部17aの高さとほぼ同じに設定されていることから、ガイドリップ25の排水用溝26を通る水Wが頭部17aなどにさらに掛かり難くなる。したがって、頭部17aなどの発錆をさらに防止することができる。
【0044】
しかも、排水用溝26から段差溝28に流れ落ちた水Wは、
図9及び
図10に示すように、この段差溝28に案内されながら地面に流れ落ちることから、この段差溝28よりも内側の位置にあるドアヒンジ18にも掛かることがなくなる。この結果、冬期などの寒冷時におけるドアヒンジ18やその周辺の凍結の発生を十分に抑制することが可能になる。
【0045】
また、前記樋状部22と中空シール部9との間には、インパクトボルト17の頭部17aを中心としたほぼ逆U字形状の空間部27が形成されていることから、インパクトボルト17を締め付けるボックスレンチの正逆の回転操作に支障を来すことがない。
【0046】
前記樋状部22は、ドアウェザーストリップ21の型成形時に、該ドアウェザーストリップ21と一緒に形成されることから、樋状部22を別途成形する場合に比較して成形作業が容易になり、コストの点でも有利になる。
【0047】
樋状部22は、ドアウェザーストリップ21の一部を延長しかつ断面形状がコ字形状に形成された簡単な構造であるいることから、この点でも成形作業が容易である。
【0048】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、樋状部22を、さらに下方へ延長して形成することも可能であり、このようにすれば、排水Wをさらに効果的にインパクトボルト17やドアヒンジ18を避けた状態で流下させることが可能になる。また、樋状部22の断面形状を、例えば逆へ字形状などさらに簡単な構造に形成することも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1・21…ドアウェザーストリップ
2…フロントドア
3…ドア本体
4…ドアサッシュ部
5…ドアパネル
6…インナーパネル
6a…端末部
7…アウターパネル
7a…端末部
8…取付基部
9…中空シール部
10…支持部
11…サブシールリップ
12…第1パネルリップ
14…車体パネル
15…排水溝部
16…ドアミラー
16a…ベース部
17…インパクトボルト
18…ドアヒンジ
22…樋状部
23…基部
24…支持リップ
25…ガイドリップ
26…排水用溝
27…空間部