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特開2023-172101使用済燃料プールの換気ダクトの閉止部材と、この閉止部材の設置方法
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  • 特開-使用済燃料プールの換気ダクトの閉止部材と、この閉止部材の設置方法 図1
  • 特開-使用済燃料プールの換気ダクトの閉止部材と、この閉止部材の設置方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172101
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】使用済燃料プールの換気ダクトの閉止部材と、この閉止部材の設置方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/07 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
G21C19/07 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083677
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】成田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 瑛久
(57)【要約】
【課題】本発明は、使用済燃料プールの壁面に存在する換気ダクトの開口部の内部に、プールの水が流入するのを低減することができる、換気ダクトの閉止部材を提供する。
【解決手段】本発明による、使用済燃料プールの換気ダクトの閉止部材10は、使用済燃料プールの壁面1に設けられた換気ダクトの開口部8を覆って塞ぐ、板状の閉塞部3と、閉塞部3の上部に設けられたアーム部4とを備える。アーム部は4、使用済燃料プールのプールカーブ2に設置される屈曲部4bを備えるのが好ましい。アーム部4の屈曲部4bは、プールカーブ2に掛け渡される形状を有するのが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済燃料プールの壁面に設けられた換気ダクトの開口部を覆って塞ぐ、板状の閉塞部と、
前記閉塞部の上部に設けられたアーム部と、
を備えることを特徴とする、使用済燃料プールの換気ダクトの閉止部材。
【請求項2】
前記アーム部は、前記使用済燃料プールのプールカーブに設置される屈曲部を備える、
請求項1に記載の使用済燃料プールの換気ダクトの閉止部材。
【請求項3】
前記アーム部の前記屈曲部は、前記プールカーブに掛け渡される形状を有する、
請求項2に記載の使用済燃料プールの換気ダクトの閉止部材。
【請求項4】
前記閉塞部は、前記アーム部との接続部に、前記使用済燃料プールの縁に沿って開口する穴を有し、
前記アーム部と前記閉塞部との接続位置は、前記穴で調整可能である、
請求項1に記載の使用済燃料プールの換気ダクトの閉止部材。
【請求項5】
前記アーム部は、締結部材を備え、
前記締結部材は、前記アーム部を前記使用済燃料プールのプールカーブに固定することで、前記閉塞部を前記壁面に固定し、
前記閉塞部は、前記壁面に固定されると、前記開口部を塞ぐ、
請求項1に記載の使用済燃料プールの換気ダクトの閉止部材。
【請求項6】
前記閉塞部は、前記換気ダクトの前記開口部の外周を囲む位置にパッキンを備える、
請求項1に記載の使用済燃料プールの換気ダクトの閉止部材。
【請求項7】
請求項5に記載の使用済燃料プールの換気ダクトの閉止部材を用い、
前記アーム部を前記プールカーブに掛け渡し、前記閉塞部を前記使用済燃料プールから吊り下げて、前記閉塞部で前記開口部を覆う工程と、
前記締結部材で締め付けて前記閉塞部を前記壁面に固定し、前記閉塞部で前記開口部を塞ぐ工程と、
を有することを特徴とする、閉止部材の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電プラントの使用済燃料プールに関し、特に、使用済燃料プールの換気ダクトを閉止する部材と、この閉止部材を設置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントの使用済燃料プールには、プールの壁面に換気空調系統の換気ダクトの開口部が設置されていることがある。例えば地震が発生した際には、スロッシングの影響により、使用済燃料プールの水がこの開口部の内部に流入するおそれがある。開口部の内部に使用済燃料プールの水が流入すると、プールの内部の水が減って使用済燃料の冷却能力が低下したり、換気ダクトが腐食したりするなどの悪影響が懸念されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、換気系統の排気口を閉塞し、使用済燃料プールの水が排気口から溢れるのを防止する排気口構造が記載されている。特許文献1に開示された排気口構造は、蓋体を備え、この蓋体は、排気口を閉塞するための蓋部と、プールの貯留水に対して浮かぶ浮体と、蓋部と浮体とを連結する連結部とを有し、プールの壁部の排気口近傍に回動自在に取り付けられ、プール内の貯留水が上昇することに伴って浮体が浮上することで回動し、蓋部によって排気口を閉塞する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-36195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、使用済燃料プールの壁面に設けられた換気ダクトの開口部は、その内部に使用済燃料プールの水が流入しないようにする必要がある。このために、開口部を閉塞する部材を用いるのは効果的である。しかし、例えば特許文献1に記載された技術のような従来の技術では、開口部を閉塞する部材をプールの壁部に取り付けるのが容易ではなく、特に既設プラントについては、より容易に開口部を塞ぐことができる部材が望まれている。
【0006】
本発明の目的は、使用済燃料プールの壁面に存在する換気ダクトの開口部の内部にプールの水が流入するのを低減することができる、換気ダクトの閉止部材と、この閉止部材の設置方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による、使用済燃料プールの換気ダクトの閉止部材は、使用済燃料プールの壁面に設けられた換気ダクトの開口部を覆って塞ぐ、板状の閉塞部と、前記閉塞部の上部に設けられたアーム部とを備える。
【0008】
本発明による、使用済燃料プールの換気ダクトの閉止部材の設置方法は、上記の閉止部材において、前記アーム部が締結部材を備え、前記締結部材が前記アーム部を前記使用済燃料プールのプールカーブに固定することで、前記閉塞部を前記壁面に固定する閉止部材を用い、前記アーム部を前記プールカーブに掛け渡し、前記閉塞部を前記使用済燃料プールから吊り下げて、前記閉塞部で前記開口部を覆う工程と、前記締結部材で締め付けて前記閉塞部を前記壁面に固定し、前記閉塞部で前記開口部を塞ぐ工程とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、使用済燃料プールの壁面に存在する換気ダクトの開口部の内部にプールの水が流入するのを低減することができる、換気ダクトの閉止部材と、この閉止部材の設置方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例による、使用済燃料プールの換気ダクトの閉止部材の構成を示す概略図である。
図2】使用済燃料プールの換気ダクトの開口部に設置されている、本実施例による閉止部材を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
原子力発電プラントにおいて、使用済燃料プールの壁面に設けられた換気ダクトの開口部は、その内部に使用済燃料プールの水が流入しないようにする必要がある。使用済燃料プール(以下、単に「プール」とも称する)は、保守管理の観点より、運用中に水抜きや水位を下げることができない。このため、特に既設プラントにおいて、換気ダクトの開口部内に流入するプールの水を減らすためには、換気ダクトの開口部を塞いで閉止させる必要がある。
【0012】
本発明による換気ダクトの閉止部材は、使用済燃料プールの壁面に設けられた、換気ダクトの開口部を覆って塞ぎ、開口部の内部にプールの水が流入するのを低減することができる。このため、本発明による閉止部材は、例えば地震が発生した際に、スロッシングの影響により換気ダクトの開口部の内部に流入するプールの水を減らすことができる。
【0013】
以下、本発明の実施例による、使用済燃料プールの換気ダクトの閉止部材と、この閉止部材の設置方法を、図面を用いて説明する。
【実施例0014】
図1は、本発明の実施例1による、使用済燃料プールの換気ダクトの閉止部材の構成を示す概略図である。図2は、使用済燃料プールの換気ダクトの開口部に設置されている、本実施例による閉止部材を示す概略図である。図2には、使用済燃料プールの壁面1の一部が示されている。使用済燃料プールの壁面1の上部には、換気ダクトの開口部8が設けられている。
【0015】
図1に示すように、本実施例による閉止部材10は、閉塞部3と、1つまたは複数のアーム部4を備える。図1には、一例として、閉止部材10が3つのアーム部4を備える例を示している。
【0016】
閉塞部3は、板状部材で構成され、例えば、ステンレスなどの金属で構成することができる。閉塞部3は、水を通さず、換気ダクトの開口部8を覆って塞いで、換気ダクトの開口部8の内部にプールの水が流入するのを低減することができる。
【0017】
閉塞部3には、アーム部4が設けられている。閉塞部3は、アーム部4でプールの縁から吊り下げられる。閉塞部3は、上部にアーム部4との接続部3aを備え、接続部3aに長穴5を有する。長穴5は、プールの縁に沿って長く開口する穴である。長穴5は、アーム部4を閉塞部3に固定する位置を調整するための穴である。
【0018】
アーム部4は、閉塞部3の上部に設けられている長尺体であり、閉止部材10を使用済燃料プールに設置するための取付アームである。アーム部4は、一端部4aと他端部4cの間に屈曲部4bを備え、図2に示すように、屈曲部4bが使用済燃料プールのプールカーブ2に設置される。屈曲部4bは、プールカーブ2に掛け渡される形状、例えばコの字やU字の形状を有し、プールカーブ2に掛け渡される。なお、プールカーブ2は、プールの縁に設けられた上方への突出部であり、プールの壁面1の一部である。
【0019】
アーム部4は、一端部4aで閉塞部3に接続されており、閉塞部3を吊り下げている。アーム部4の一端部4aは、例えばボルトなどの締結部材で長穴5において閉塞部3(接続部3a)に接続されている。この締結部材は、長穴5を貫通するように設置される。
【0020】
アーム部4と閉塞部3との接続位置、すなわちアーム部4と閉塞部3とを接続する締結部材の位置は、閉塞部3の長穴5に沿って調整することができる。プールカーブ2には、手摺の支柱などの物体が設置されていることがある。このような物体を避けて閉止部材10を使用済燃料プールに設置するために、閉塞部3は、アーム部4との接続部3aに長穴5を有し、長穴5によってアーム部4と接続する位置が調整可能である。
【0021】
アーム部4は、他端部4cに締結部材6を備える。締結部材6は、例えば押しボルト(押さえボルト)などのボルトで構成することができる。アーム部4は、締結部材6によってプールカーブ2に固定される。
【0022】
締結部材6は、アーム部4をプールカーブ2に固定するための部材であるとともに、閉塞部3を使用済燃料プールの壁面1(図2)に固定して開口部8を塞ぐための部材である。閉塞部3をプールの壁面1に固定するには、アーム部4の屈曲部4bをプールカーブ2に設置し、締結部材6と閉塞部3とでプールの壁面1を挟み、締結部材6で締め付けて(例えば、締結部材6を回転させて締結部材6と閉塞部3との距離を縮めていって)、アーム部4をプールカーブ2に固定するとともに、閉塞部3をプールの壁面1に押し付けて固定する。
【0023】
このようにして、締結部材6は、アーム部4をプールカーブ2に固定することで、閉塞部3をプールの壁面1に固定し、閉塞部3は、換気ダクトの開口部8を塞ぐことができる。締結部材6により、プールの壁面1に閉塞部3を固定して開口部8を塞いだり、プールの壁面1に対する閉塞部3の固定を緩めたり、プールの壁面1から閉塞部3を取り外したりすることが容易にできる。
【0024】
図1に示すように、閉塞部3は、覆っている換気ダクトの開口部8の外周を囲む位置に、パッキン9を備えるのが好ましい。例えば、閉塞部3は、覆っている換気ダクトの開口部8の外周を囲む位置に溝を備え、この溝にパッキン9が設置されている。パッキン9により、換気ダクトの開口部8をより効果的に塞ぐことができ、例えばスロッシングにより換気ダクトの開口部8の内部にプールの水が流入するのを、より確実に抑制することができる。
【0025】
図2に示すように、使用済燃料プールには、機器サポートレール7が換気ダクトの開口部8の付近に設けられていることがある。機器サポートレール7は、プールに付随する機器を取り付けるための支持部材である。換気ダクトの開口部8の付近に機器サポートレール7が存在する場合には、閉塞部3は、プールの壁面1と機器サポートレール7との間に設置される。すなわち、閉塞部3は、プールの壁面1と機器サポートレール7との間の狭隘部に取付け可能な厚さを有するのが好ましい。
【0026】
また、アーム部4は、付近に存在する構造物に、チェーン等の緊結部材で固縛されるのが好ましい。締結部材6は、付近に存在する構造物またはアーム部4に、緊結部材で固縛されるのが好ましい。アーム部4と締結部材6は、このような緊結部材により、使用済燃料プールへ落下するのが防止される。
【0027】
以下では、本実施例による閉止部材10の使用済燃料プールへの設置方法を説明する。
【0028】
作業者は、オペレーションフロアにおいて、アーム部4の屈曲部4bを使用済燃料プールのプールカーブ2に掛け渡すことで屈曲部4bをプールカーブ2に設置し、閉塞部3をアーム部4でプールの縁から吊り下げて、閉塞部3で換気ダクトの開口部8を覆う。このとき、締結部材6は、閉塞部3とでプールの壁面1を挟んでいる。
【0029】
次に、作業者は、締結部材6で締め付けて、アーム部4をプールカーブ2に固定するとともに、閉塞部3をプールの壁面1に押し付けていって閉塞部3をプールの壁面1に固定する。閉塞部3は、プールの壁面1に固定されると、換気ダクトの開口部8を塞ぐ。
【0030】
作業者は、オペレーションフロアで以上のような作業を行うことで、閉止部材10を使用済燃料プールに設置し、換気ダクトの開口部8を容易に塞ぐことができる。すなわち、本実施例による閉止部材10は、使用済燃料プールの近傍のオペレーションフロアから使用済燃料プールへ設置可能である。
【0031】
使用済燃料プールの壁面に存在する換気ダクトのうち、使用しない換気ダクトについては、その開口部8を塞ぐのが好ましい。本実施例による閉止部材10を用いると、既設プラントであっても、例えばプールのライニングや躯体の改造を行わずに、容易に開口部8を塞ぐことができる。
【0032】
本実施例による閉止部材10では、閉塞部3をアーム部4でプールの縁から吊り下げることにより、閉塞部3で換気ダクトの開口部8を容易に塞ぐことができ、開口部8の内部にプールの水が流入するのを低減することができる。
【0033】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…使用済燃料プールの壁面、2…プールカーブ、3…閉塞部、3a…接続部、4…アーム部、4a…一端部、4b…屈曲部、4c…他端部、5…長穴、6…締結部材、7…機器サポートレール、8…換気ダクトの開口部、9…パッキン、10…閉止部材。
図1
図2