(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172102
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】排ガス浄化材料の製造方法及び排ガス浄化装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 37/04 20060101AFI20231129BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20231129BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20231129BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20231129BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20231129BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B01J37/04 101
B01J37/08 ZAB
B01J23/63 A
B01J37/02 101Z
B01D53/94 222
F01N3/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083679
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 昂大
(72)【発明者】
【氏名】白川 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】高木 信之
(72)【発明者】
【氏名】相川 智将
(72)【発明者】
【氏名】二橋 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】野口 貴弘
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB01
3G091BA39
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3G091GB10
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4G169EA01Y
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4G169ED06
4G169FA01
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4G169FB07
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB57
4G169FC07
4G169FC08
(57)【要約】
【課題】高温環境に曝された後も高効率に有害成分を除去することができる排ガス浄化材料及び排ガス浄化装置の製造方法を提供する。
【解決手段】排ガス浄化材料の製造方法は、(a)金属酸化物担体にロジウム化合物溶液を含浸することと、(b)前記ロジウム化合物溶液を含浸した前記金属酸化物担体を乾燥して、前記金属酸化物担体及び前記金属酸化物担体に担持されたロジウム粒子を含むロジウム含有触媒を得ることと、(c)前記ロジウム含有触媒を、不活性雰囲気下で700~900℃の範囲内の温度に加熱することと、(d)前記ロジウム含有触媒を前記金属酸化物担体よりも高い塩基性を有する材料と混合することと、をこの順で含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス浄化材料の製造方法であって、
(a)金属酸化物担体にロジウム化合物溶液を含浸することと、
(b)前記ロジウム化合物溶液を含浸した前記金属酸化物担体を乾燥して、前記金属酸化物担体及び前記金属酸化物担体に担持されたロジウム粒子を含むロジウム含有触媒を得ることと、
(c)前記ロジウム含有触媒を、不活性雰囲気下で700~900℃の範囲内の温度に加熱することと、
(d)前記ロジウム含有触媒を、前記金属酸化物担体よりも高い塩基性を有する材料と混合することと、
をこの順で含む、方法。
【請求項2】
ステップ(c)の後の前記ロジウム含有触媒において、前記ロジウム粒子の粒径分布の平均が1.5~18nmであり、粒径分布の標準偏差が1.6nm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(c)の後の前記ロジウム含有触媒において、前記ロジウム粒子の粒径分布の平均が4~14nmである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(c)の後の前記ロジウム含有触媒において、前記ロジウム粒子の粒径分布の平均が2~8nmである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ロジウム含有触媒が、前記金属酸化物担体と前記ロジウム粒子の総重量を基準として0.01~2重量%の前記ロジウム粒子を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記金属酸化物担体が、ジルコニアを主成分として含む酸化物、ジルコニア及びアルミナを主成分として含む複合酸化物、又はジルコニア、アルミナ、及びセリアを主成分として含む複合酸化物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記金属酸化物担体がジルコニア、アルミナ、及びセリアを主成分として含む複合酸化物であり、前記金属酸化物担体よりも高い塩基性を有する材料が、セリア及びジルコニアを主成分として含む複合酸化物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記不活性雰囲気が窒素雰囲気である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法により排ガス浄化材料を得ることと、
前記排ガス浄化材料を基材上に配置することと、
を含む、排ガス浄化装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化材料の製造方法及び排ガス浄化装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両で使用される内燃機関から排出される排ガスには、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)及び窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。これらの有害成分の排出量の規制は年々強化されており、これらの有害成分を除去するために、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属が触媒として用いられている。
【0003】
一方、資源リスクの観点から、貴金属の使用量を低減させることが求められている。排ガス浄化装置において、貴金属の使用量を低減させる方法の一つとして、貴金属を担体上に微細な粒子として担持することが知られている。例えば、特許文献1には、酸化物担体に貴金属粒子を担持させて貴金属担持触媒とする工程と、還元雰囲気中で貴金属担持触媒を加熱処理して、貴金属の粒径を所定の範囲に制御する工程とを含む、排ガス浄化材料の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らは鋭意検討により、特許文献1に記載の製造方法により得られた排ガス浄化材料は、高温環境下で使用すると触媒活性が低下することがあることを見出した。
【0006】
そこで、本発明は、高温環境に曝された後も高効率に有害成分を除去することができる排ガス浄化材料及び排ガス浄化装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様として、例えば以下の項の態様を挙げることができる。
[項1]
排ガス浄化材料の製造方法であって、
(a)金属酸化物担体にロジウム化合物溶液を含浸することと、
(b)前記ロジウム化合物溶液を含浸した前記金属酸化物担体を乾燥して、前記金属酸化物担体及び前記金属酸化物担体に担持されたロジウム粒子を含むロジウム含有触媒を得ることと、
(c)前記ロジウム含有触媒を、不活性雰囲気下で700~900℃の範囲内の温度に加熱することと、
(d)前記ロジウム含有触媒を、前記金属酸化物担体よりも高い塩基性を有する材料と混合することと、
をこの順で含む、方法。
[項2]
ステップ(c)の後の前記ロジウム含有触媒において、前記ロジウム粒子の粒径分布の平均が1.5~18nmであり、粒径分布の標準偏差が1.6nm未満である、項1に記載の方法。
[項3]
ステップ(c)の後の前記ロジウム含有触媒において、前記ロジウム粒子の粒径分布の平均が4~14nmである、項2に記載の方法。
[項4]
ステップ(c)の後の前記ロジウム含有触媒において、前記ロジウム粒子の粒径分布の平均が2~8nmである、項2に記載の方法。
[項5]
前記ロジウム含有触媒が、前記金属酸化物担体と前記ロジウム粒子の総重量を基準として0.01~2重量%の前記ロジウム粒子を含む、項1~4のいずれか一項に記載の方法。
[項6]
前記金属酸化物担体が、ジルコニアを主成分として含む酸化物、ジルコニア及びアルミナを主成分として含む複合酸化物、又はジルコニア、アルミナ、及びセリアを主成分として含む複合酸化物である、項1~5のいずれか一項に記載の方法。
[項7]
前記金属酸化物担体がジルコニア、アルミナ、及びセリアを主成分として含む複合酸化物であり、前記金属酸化物担体よりも高い塩基性を有する材料が、セリア及びジルコニアを主成分として含む複合酸化物である、項1~6のいずれか一項に記載の方法。
[項8]
前記不活性雰囲気が窒素雰囲気である、項1~7のいずれか一項に記載の方法。
[項9]
項1~8のいずれか一項に記載の方法により排ガス浄化材料を得ることと、
前記排ガス浄化材料を基材上に配置することと、
を含む、排ガス浄化装置の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法により製造される排ガス浄化材料及び排ガス浄化装置は、高温環境に曝された後も高効率に有害成分を除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照して本開示の実施形態を説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができる。本願において、記号「~」を用いて表される数値範囲は、記号「~」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値及び上限値として含む。本願において記載された数値範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0010】
(1)排ガス浄化材料
まず、実施形態に係る方法により製造される排ガス浄化材料を説明する。排ガス浄化材料は、金属酸化物担体及び金属酸化物担体に担持されたRh粒子を含むRh含有触媒、並びに金属酸化物担体よりも高い塩基性を有する材料の混合物である。
【0011】
金属酸化物担体としては、例えば、元素周期表の3族、4族及び13族の金属、並びにランタノイド系の金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物が挙げられる。金属酸化物担体が2種以上の金属元素を含む場合、金属酸化物担体は、当該2種以上の金属元素の酸化物の混合物であってもよいし、当該2種以上の金属元素を含む複合酸化物であってもよいし、少なくとも1種の金属元素の酸化物と少なくとも1種の複合酸化物との混合物であってもよい。
【0012】
金属酸化物担体は、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ルテチウム(Lu)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物、好ましくはY、La、Ce、Ti、Zr及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物、より好ましくは、Al、Ce、及びZrからなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物であってよい。金属酸化物担体は、ジルコニア(ZrO2)を主成分として含む酸化物であってよく、ジルコニア及びアルミナ(Al2O3)を主成分として含む複合酸化物(Al-Zr系複合酸化物)であってよく、又はジルコニア、アルミナ、及びセリア(CeO2)を主成分として含む複合酸化物(Al-Ce-Zr系複合酸化物)であってよい。ジルコニアは、Rh粒子の触媒活性を維持する機能を有し得る。セリアは、酸素過剰雰囲気下で雰囲気中の酸素を吸蔵し、酸素欠乏雰囲気下で酸素を放出するOSC(Oxygen Storage Capacity)材として機能し得る。アルミナは、Rh粒子の拡散を抑制する機能を有し得る。金属酸化物担体は、アルミナ、セリア、及びジルコニアを主成分として含み、さらにイットリア(Y2O3)、ランタナ(La2O3)、ネオジミア(Nd2O3)、又はプラセオジミア(Pr6O11)の少なくともいずれか一つを含む複合酸化物の粒子であってよい。イットリア、ランタナ、ネオジミア、及びプラセオジミアは、複合酸化物の耐熱性を向上させる。なお、本願において、「主成分として含む」とは、当該成分の含有量が全重量の50重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、又は90重量%以上であることを意味し、複数の主成分がある場合は、それらの成分の含有量の合計が50重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、又は90重量%以上であることを意味する。
【0013】
金属酸化物担体は、粒子状であってよく、目的に応じて任意の粒径を有してよい。
【0014】
金属酸化物担体に担持されたRh粒子は、排ガスに含まれる有害成分を除去するための触媒として機能する。Rh粒子の粒径分布の平均は、1.5~18nmの範囲内であってよい。一般に、Rh粒子の粒径が小さいほど、Rh粒子の比表面積が大きいため、高い触媒性能を示す。しかし、粒径が過度に小さいRh粒子は、高温環境下でオストワルドライプニング及び凝集等により粗大化して、触媒性能の劣化を引き起こす傾向がある。Rh粒子の粒径分布の平均が1.5nm以上である場合、高温環境下でのRh粒子の粗大化が抑制され、触媒性能の低下が抑制される。また、Rh粒子の粒径分布の平均が18nm以下である場合、Rh粒子の比表面積が十分に大きくなるため、Rh粒子が高い触媒性能を発揮することができる。Rh粒子の粒径分布の平均は、3~17nmの範囲内、又は4~14nmの範囲内であってもよい。Rh粒子の粒径分布の平均は、2~8nmの範囲内であってもよい。
【0015】
また、Rh粒子の粒径分布の標準偏差は、1.6nm未満であってよい。Rh粒子の粒径分布の標準偏差が1.6nm未満であることにより、後述する参考例で示すように、排ガス浄化材料が高温環境に曝された後も高効率に有害成分を除去することができる。Rh粒子の粒径分布の標準偏差が1.6nm未満であることにより、粗大なRh粒子の数、及び高温環境下で粗大化しやすい微小なRh粒子の数が少なくなるため、排ガス浄化材料が高温環境に曝された後でもRh粒子が十分に大きい比表面積を有することができ、その結果高い触媒性能を発揮することができる。Rh粒子の粒径分布の標準偏差は、1nm以下であってもよい。
【0016】
なお、本願において、Rh粒子の粒径分布は、透過型電子顕微鏡(TEM)により得た画像に基づき、50個以上のRh粒子の投影面積円相当径を測定することによって得られる、個数基準の粒径分布である。
【0017】
Rh粒子の担持量、すなわち、金属酸化物担体とRh粒子の総重量を基準とするRh粒子の割合は、0.01~2重量%の範囲内であってよい。Rh粒子の割合が0.01重量%以上であることにより、十分な量のRh粒子が存在するため排ガス中の有害成分を良好に除去することができる。Rh粒子の割合が2重量%以下であることにより、Rhの使用量を節減することができる。また、Rh粒子が金属酸化物担体上に十分に疎に担持されるため、高温環境下でのRh粒子の粗大化が抑制され、高温に対する十分な耐久性を示すことができる。金属酸化物担体とRh粒子の総重量を基準とするRh粒子の割合は、0.2~1.8重量%の範囲内であってもよい。
【0018】
金属酸化物担体よりも高い塩基性を有する材料(以下、適宜「高塩基性材料」と表記する)は、粒子状であってよい。高塩基性材料は、例えば、OSC材として機能する材料であってよい。例えば、セリア、及びセリアを含む複合酸化物(例えば、セリアを主成分として含む複合酸化物、セリア及びジルコニアを主成分として含む複合酸化物(Ce-Zr系複合酸化物)、アルミナ、セリア、及びジルコニアを主成分として含む複合酸化物(Al-Ce-Zr系複合酸化物))等がOSC材として機能し得る。特に、高い酸素吸蔵能を有し且つ比較的安価であることから、Ce-Zr系複合酸化物が好ましい。セリアを含む複合酸化物は、主成分の他に、プラセオジミア、ランタナ、イットリア、又はネオジミアの少なくともいずれか一つを添加物として含んでよく、これらの添加物が主成分と共に複合酸化物を形成していてもよい。排ガス浄化材料がOSC材として機能する材料を含む場合、酸素過剰雰囲気下及び酸素欠乏雰囲気下のいずれでも排ガス浄化材料が良好な排ガス浄化性能を示すことができる。
【0019】
高塩基性材料は、粒子状であってよく、目的に応じて任意の粒径を有してよい。
【0020】
本願において、「金属酸化物担体よりも高い塩基性を有する材料」とは、金属酸化物担体の平均電気陰性度よりも小さい平均電気陰性度を有する材料を意味する。「平均電気陰性度」とは、構成元素のポーリングの電気陰性度(以下、単に「電気陰性度」と表記する)を単位重量あたりの各元素の数に応じて加重平均した値である。例えば、Al2O3、CeO2、ZrO2、La2O3、Y2O3、及びNd2O3を、以下の重量分率:Al2O3:30重量%、CeO2:20重量%、ZrO2:44重量%、La2O3:2重量%、Y2O3:2重量%、Nd2O3:2重量%で含む複合酸化物粒子(ACZ粒子)の平均電気陰性度は、以下のように計算される。
【0021】
ACZ粒子の平均電気陰性度
=Alの電気陰性度×Al2O3の重量分率/Al2O3の式量×2
+Ceの電気陰性度×CeO2の重量分率/CeO2の式量
+Zrの電気陰性度×ZrO2の重量分率/ZrO2の式量
+Laの電気陰性度×La2O3の重量分率/La2O3の式量×2
+Yの電気陰性度×Y2O3の重量分率/Y2O3の式量×2
+Ndの電気陰性度×Nd2O3の重量分率/Nd2O3の式量×2
+Oの電気陰性度×(Al2O3の重量分率/Al2O3の式量×3+CeO2の重量分率/CeO2の式量×2+ZrO2の重量分率/ZrO2の式量×2+La2O3の重量分率/La2O3の式量×3+Y2O3の重量分率/Y2O3の式量×3+Nd2O3の重量分率/Nd2O3の式量×3)
=1.61×0.3/101.9×2
+1.12×0.2/172.1
+1.33×0.44/123.2
+1.10×0.02/325.8×2
+1.22×0.02/225.8×2
+1.14×0.02/336.4×2
+3.44×(0.3/101.9×3+0.2/172.1×2+0.44/123.2×2+0.02/325.8×3+0.02/225.8×3+0.02/336.4×3)
=0.081
【0022】
また、CeO2、ZrO2、及びPr6O11を以下の重量分率:CeO2:51.4重量%、ZrO2:45.6重量%、Pr6O11:3.0重量%で含む複合酸化物粒子(CZ粒子)の平均電気陰性度は、以下のように計算される。
【0023】
CZ粒子の平均電気陰性度
=Ceの電気陰性度×CeO2の重量分率/CeO2の式量
+Zrの電気陰性度×ZrO2の重量分率/ZrO2の式量
+Prの電気陰性度×Pr6O11の重量分率/Pr6O11の式量×6
+Oの電気陰性度×(CeO2の重量分率/CeO2の式量×2+ZrO2の重量分率/ZrO2の式量×2+Pr6O11の重量分率/Pr6O11の式量×11)
=1.12×0.514/172.1
+1.33×0.456/123.2
+1.13×0.03/1021.4×6
+3.44×(0.514/172.1×2+0.456/123.2×2+0.03/1021.4×11)
=0.056
【0024】
上記の計算より、上記組成のCZ粒子は、上記組成のACZ粒子よりも小さい平均電気陰性度を有し、したがって、上記組成のACZ粒子よりも高い塩基性を有する。
【0025】
(2)排ガス浄化材料の製造方法
上記の排ガス浄化材料の製造方法は、金属酸化物担体にロジウム化合物溶液を含浸すること(ステップS1)と、ロジウム化合物溶液を含浸した金属酸化物担体を乾燥して、金属酸化物担体及び金属酸化物担体に担持されたRh粒子を含むRh含有触媒を得ること(ステップS2)と、Rh含有触媒を、不活性雰囲気下で700~900℃の範囲内の温度に加熱すること(ステップS3)と、Rh含有触媒を高塩基性材料と混合すること(ステップS4)と、をこの順で含む。各工程を順に説明する。
【0026】
まず、金属酸化物担体にロジウム化合物溶液を含浸する(ステップS1)。ロジウム化合物溶液としては、例えば、水酸化ロジウム水溶液、及び硝酸ロジウム水溶液が挙げられる。含浸方法は特に限定されない。例えば、蒸留水を撹拌しながら、金属酸化物担体及びロジウム化合物溶液を加えることにより、金属酸化物担体にロジウム化合物溶液を含浸することができる。
【0027】
次に、ロジウム化合物溶液を含浸した金属酸化物担体を乾燥する(ステップS2)。それにより、金属酸化物担体及び金属酸化物担体に担持されたRh粒子を含むRh含有触媒が得られる。必要に応じて、乾燥後に焼成を行ってもよい。Rh含有触媒において、Rh含有触媒の総重量(すなわち金属酸化物担体とRh粒子の重量の合計)を基準とするRh粒子の割合は、0.01~2重量%、特に0.2~1.8重量%の範囲内であってよい。
【0028】
Rh含有触媒を、不活性雰囲気下で700~900℃の範囲内の温度に加熱する(ステップS3)。不活性雰囲気としては、例えば、窒素雰囲気及びアルゴン雰囲気が挙げられる。加熱時間は適宜設定してよいが、例えば、1~8時間であってよい。
【0029】
不活性雰囲気下で加熱することにより、Rh含有触媒のRh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差を適切に制御することができる。具体的には、Rh粒子の粒径分布の平均を、1.5~18nmの範囲内、3~17nmの範囲内、若しくは4~14nmの範囲内、又は2~8nmの範囲内とし、Rh粒子の粒径分布の標準偏差を、1.6nm未満、又は1nm以下とすることができる。
【0030】
なお、水素雰囲気のような還元雰囲気下での加熱では、後述する実施例で示すように、Rh粒子を十分に大きくすることができないため、上記のような粒径分布を得ることが困難である。空気雰囲気のような酸化雰囲気下での加熱では、Rh粒子の金属酸化物担体への固溶が引き起こされるため、金属酸化物担体表面のRh粒子が減少する。
【0031】
その後、Rh含有触媒を高塩基性材料と混合する(ステップS4)。混合方法は特に限定されないが、例えばRh含有触媒と高塩基性材料を粉砕しながら混合してよい。それにより、粉状の排ガス浄化材料が得られる。これをプレス成型等によりペレット状等の任意の形状に成型してもよい。
【0032】
通常、数nmの粒径を有する微細なRh粒子を高温(例えば1000℃以上)環境に曝すと、オストワルドライプニングにより、粒径が増大したRh粒子が形成される。本発明者らによれば、高塩基性材料上のRhは0価(金属)の状態よりも3価(酸化物)の状態の方が安定である。また、酸化物状態のRhは蒸発して移動しやすい。そのため、高塩基性材料上ではRh原子の衝突頻度が高いため、金属酸化物担体上よりも粗大なRh粒子が形成されやすい。Rh含有触媒と高塩基性材料を含む排ガス浄化材料を高温環境で使用すると、金属酸化物担体上の微小なRh粒子中のRh原子が高塩基性材料上に移動して、高塩基性材料上に粗大化したRh粒子が形成される。したがって、Rh含有触媒を高塩基性材料と共に用いる場合、Rh含有触媒を単独で使用する場合と比べて、Rh粒子が粗大化して浄化性能が低下しやすい。しかし、実施形態の製造方法では、上述のように、不活性雰囲気下での加熱により金属酸化物担体上のRh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差を制御し、過度に小さいRh粒子の数を少なくしている。それにより、排ガス浄化材料を高温環境に曝したときのオストワルドライプニングによる高塩基性材料へのRh原子の移動及び粗大なRh粒子の形成が、防止又は低減される。そのため、実施形態の製造方法により製造された排ガス浄化材料は、高温環境下でも排ガス浄化性能が低下しにくい。
【0033】
また、実施形態の製造方法では、ロジウム化合物溶液を用いた含浸法及び不活性雰囲気下での加熱を用いた簡便なプロセスにより、粒径が適切に制御されたRh粒子を形成している。そのため、実施形態の製造方法は、生産効率が高く、大量生産に適している。
【0034】
(3)排ガス浄化装置の製造方法
上記の排ガス浄化材料を基材上に配置することにより、排ガス浄化装置を製造することができる。
【0035】
排ガス浄化材料は、バインダー、添加物等とともに、基材上に配置してよい。
【0036】
基材としては、特に限定されないが、例えばハニカム構造を有するモノリス基材を用いることができる。基材は、例えば、コージェライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素等の高い耐熱性を有するセラミックス材料、ステンレス鋼等の金属箔からなるメタル材料から形成されてよい。コストの観点から、基材はコージェライト製であることが好ましい。
【0037】
基材が複数の細孔を有する多孔質体である場合、排ガス浄化材料は、基材の細孔を画成する内表面に配置されてもよい。つまり、本願において「基材上に配置される」とは、基材の外表面上に配置されることと、基材の内表面上に配置されることのいずれをも包含する。
【0038】
排ガス浄化材料は、例えば以下のようにして、基材上に配置することができる。まず、排ガス浄化材料を含むスラリーを調製する。スラリーは、バインダー、添加物等をさらに含んでよい。スラリーの性状、例えば、粘性、固形成分の粒子径等は、適宜調整してよい。調製したスラリーを、基材の所定の領域に塗布する。例えば、基材の所定の領域をスラリーに浸漬し、所定の時間が経過した後、スラリーから基材を引き上げることにより、基材の所定の領域にスラリーを塗布できる。あるいは、基材にスラリーを流し込み、ブロアーで風を吹きつけてスラリーを塗り広げることにより、スラリーを基材に塗布してもよい。次に、所定の温度及び時間でスラリーを乾燥及び焼成する。それにより、排ガス浄化材料が基材上に配置される。
【0039】
実施形態に係る排ガス浄化装置は、内燃機関を備える種々の車両に適用され得る。
【実施例0040】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
実施例1-5
(1)試料の作製
金属酸化物担体として、Al2O3、CeO2、及びZrO2を主成分として含み、さらにLa2O3、Y2O3、及びNd2O3を含む複合酸化物粒子(以下、適宜「ACZ粒子」と表記する。ACZ粒子中の各成分の重量分率は、Al2O3:30重量%、CeO2:20重量%、ZrO2:44重量%、La2O3:2重量%、Y2O3:2重量%、Nd2O3:2重量%であった)を用意した。
【0042】
蒸留水を撹拌しながら、10gのACZ粒子と、8.0gの水酸化ロジウム水溶液(濃度0.5重量%)とを順に加えて10分間撹拌した。得られた混合物を乾燥させ、電気炉で空気雰囲気下にて500℃に2時間加熱することにより焼成した。それにより、ACZ粒子及びACZ粒子に担持されたロジウム(Rh)粒子を含むRh含有触媒が得られた。Rh含有触媒は、ACZ粒子とRh粒子の総重量を基準として0.34重量%のRh粒子を含んでいた。
【0043】
Rh含有触媒を、窒素雰囲気下で、表1に記載の温度に5時間加熱した。加熱後、Rh含有触媒を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、ACZ粒子に担持されたRh粒子(初期Rh粒子)の粒径分布を求めた。初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差を表1に示す。
【0044】
加熱後のRh含有触媒に、CeO2及びZrO2を主成分として含み、さらにPr6O11を含む複合酸化物粒子(以下、適宜「CZ粒子」と表記する。CZ粒子中の各成分の重量分率は、CeO2:51.4重量%、ZrO2:45.6重量%、Pr6O11:3.0重量%であった)を10g加え、乳鉢中で粉砕及び混合した。得られた粉末を2g量り取り、成型してペレットを得た。
【0045】
(2)エージング処理及びその後のRh粒子の平均粒径の測定
ペレットを1100℃に加熱しながら、5時間にわたり、ストイキ(空燃比A/F=14.6)の混合気と酸素過剰(リーン:A/F>14.6)の混合気に、時間比1:1の一定の周期で交互に曝した。その後、一酸化炭素パルス法により、実施例2及び実施例4のペレット中のRh粒子の平均粒径を求めた。結果を表1中に示す。
【0046】
(3)排ガス浄化性能評価
エージング処理後のペレットに表2に記載の組成のガスを15L/分の流量で流通させながら、ペレットを600℃に加熱して5分間維持した後、150℃まで冷ました。その後、ガスの流通を継続しながら、ペレットを20℃/分の速度で600℃まで昇温させ、ガス中のNOxの50%が除去されたときのペレットの温度(以下、適宜「NOx-T50」と表記する)を測定した。結果は、表1に記載の通りであった。
【0047】
比較例1
窒素雰囲気下でのRh含有触媒の加熱を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、ペレットを作製した。初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差は、表1に記載の通りであった。実施例1と同様にして、ペレットのエージング処理及び排ガス浄化性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
比較例2-3
窒素雰囲気下でのRh含有触媒の加熱温度を表1に記載の通りとしたこと以外は実施例1と同様にして、ペレットを作製した。初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差は、表1に記載の通りであった。実施例1と同様にして、ペレットのエージング処理及び排ガス浄化性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0049】
比較例4
窒素雰囲気に代えて空気雰囲気下でRh含有触媒の加熱を行ったこと以外は実施例3と同様にして、ペレットを作製した。加熱後のRh含有触媒をTEMで観察したところ、ACZ粒子に担持されたRh粒子は確認できなかった。空気雰囲気下での加熱により、RhがACZ粒子中に固溶したと考えられる。実施例1と同様にして、ペレットのエージング処理及び排ガス浄化性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0050】
比較例5
窒素雰囲気に代えて水素雰囲気下でRh含有触媒の加熱を行ったこと以外は実施例3と同様にして、ペレットを作製した。初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差は、表1に記載の通りであった。実施例1と同様にして、ペレットのエージング処理及びペレットの排ガス浄化性能の評価を行った。結果を表1に示す。
【0051】
比較例6
CZ粒子の代わりにACZ粒子を用いたこと以外は実施例4と同様にして、ペレットを作製した。実施例1と同様にして、ペレットのエージング処理及びペレットの排ガス浄化性能の評価を行った。結果を表1に示す。
【0052】
比較例7
窒素雰囲気下でのRh含有触媒の加熱を行わなかったこと以外は比較例6と同様にして、ペレットを作製した。実施例1と同様にして、ペレットのエージング処理及び排ガス浄化性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0053】
実施例1-5及び比較例1-5のNOx-T50を比較すると、Rh含有触媒を窒素雰囲気下で700~900℃の範囲内の温度に加熱したことにより、NOx還元性能が向上したことがわかる。表1に示されるように、実施例1-5では、窒素雰囲気下での700~900℃の範囲内の温度での加熱により、Rh粒子の粒径分布の平均が1.5~18nmの範囲内となり、粒径分布の標準偏差が1.6nm未満となった。これにより、エージング処理中のRh粒子の粗大化が抑制されてRh粒子の比表面積の減少が抑えられ、その結果、高いNOx還元性能が得られたと考えられる。特に、実施例2、4のNOx-T50を比較すると、窒素雰囲気下での850℃での加熱により、窒素雰囲気下での750℃での加熱よりも優れたNOx還元性能がもたらされたことがわかる。加熱温度が850℃であった実施例4では、エージング処理後のRh粒子の平均粒径が実施例2におけるより小さく、Rh粒子がより大きい比表面積を有していたために、より高いNOx還元性能が得られたと考えられる。また、実施例3及び比較例4-5のNOx-T50を比較すると、Rh粒子の粒径分布の適切な制御のためにはRh含有触媒の加熱を窒素雰囲気下で行う必要があることがわかる。
【0054】
比較例6のNOx-T50は、比較例7のNOx-T50よりも高かった。これは、比較例6においては窒素雰囲気下での加熱がNOx還元性能の向上をもたらさなかったことを示している。比較例6-7では、ペレットが触媒担体であるACZ粒子よりも高い塩基性を有する材料を含まないため、Rh粒子の粒径分布を制御しなくても、エージング処理中のRh粒子の顕著な粗大化が生じなかったと考えられる。
【0055】
【0056】
【0057】
以下の参考例では、高温環境下における排ガス浄化性能の低下の防止又は低減に適した初期Rh粒子の粒径分布を決定するために行った実験の結果を示す。参考例では、上記実施形態とは異なる方法でACZ粒子にRh粒子を担持したが、参考例から求められる好適な初期Rh粒子の粒径分布は、実施形態に係る方法により製造される排ガス浄化材料においても同様に、高温環境下における排ガス浄化性能の低下の防止又は低減をもたらすことができることが理解される。
【0058】
参考例1
(1)試料の作製
エチレングリコールにポリビニルピロリドン及び塩化ロジウムを溶解させた。得られた溶液に水酸化ナトリウムを加えた。この溶液を一晩200℃に加熱した。それにより、ロジウム粒子分散液(Rh粒子分散液)を得た。
【0059】
蒸留水に、Rh粒子分散液、及びACZ粒子を加え、得られた混合物を攪拌しながら加熱して乾燥させた。得られた粒子を120℃に保たれた乾燥機中に2時間置いて水分をさらに除去し、次いで電気炉で空気雰囲気下にて500℃に2時間加熱して焼成した。
【0060】
焼成した粒子をTEMで観察し、ACZ粒子にRh粒子が担持されたことを確認した。また、TEM像に基づき、ACZ粒子に担持されたRh粒子(初期Rh粒子)の粒径分布を求めた。初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差を表3に示す。また、焼成した粒子中のRh粒子の重量割合(すなわち、ACZ粒子とRh粒子の総重量を基準とする、Rh粒子の重量割合)は、表3に記載の通りであった。
【0061】
焼成した粒子に、これと同じ重量のCeO2及びZrO2の複合酸化物粒子(以下、適宜「CZ-2粒子」と表記する。CZ-2粒子中の各成分の重量分率は、CeO2:46重量%、ZrO2:54重量%であった)を加え、乳鉢中で粉砕及び混合した。得られた粉末を2g量り取り、成型してペレットを得た。
【0062】
(2)エージング処理後のRh粒子の平均粒径の測定
実施例2と同様にして、ペレットのエージング処理後のRh粒子の平均粒径の測定を行った。結果を表3中に示す。
【0063】
(3)排ガス浄化性能評価
実施例1と同様にしてエージング処理後のペレットの排ガス浄化性能を測定した。結果は、表3に記載の通りであった。
【0064】
参考例2
Rh粒子分散液の代わりに、硝酸ロジウム水溶液を使用したこと以外は参考例1と同様にしてペレットを作製した。初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差、並びに焼成した粒子中のRh粒子の重量割合は表3に記載の通りであった。
【0065】
参考例1と同様にして、エージング処理後のRh粒子の平均粒径の測定、及び排ガス浄化性能の評価を行った。結果を表3に示す。
【0066】
参考例3
参考例1で調製したRh粒子分散液に代えて、以下のようにして調製したRh粒子分散液を用いたこと以外は参考例1と同様にしてペレットを作製した。50mLのイオン交換水に0.2gの硝酸ロジウム(III)を溶解させ、硝酸ロジウム水溶液(pH1.0)を調製した。また、濃度175g/Lの水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(pH14)を用意した。クリアランス調節部材として2枚の平板を有する反応器(マイクロリアクター)を用いて、硝酸ロジウム水溶液と水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液を反応させた。具体的には、クリアランスを10μmに設定した反応場に、硝酸ロジウム水溶液と水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液を、水酸化テトラエチルアンモニウム:硝酸ロジウム=18:1のモル比で導入して反応させて、Rh粒子分散液を調製した。得られたRh粒子分散液のpHは14であった。
【0067】
初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差、並びに焼成した粒子中のRh粒子の重量割合は表3に記載の通りであった。
【0068】
参考例1と同様にして、エージング処理後のRh粒子の平均粒径の測定、及び排ガス浄化性能の評価を行った。結果を表3に示す。
【0069】
参考例4
Rh粒子分散液の調製に用いた水酸化ナトリウムの量を変更したこと以外は参考例1と同様にしてペレットを作製した。初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差、並びに焼成した粒子中のRh粒子の重量割合は表3に記載の通りであった。
【0070】
参考例1と同様にして、エージング処理後のRh粒子の平均粒径の測定、及び排ガス浄化性能の評価を行った。結果を表3に示す。
【0071】
参考例5-7
Rh粒子分散液の調製に用いた水酸化ナトリウムの量を変更したこと以外は参考例1と同様にしてペレットを作製した。初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差、並びに焼成した粒子中のRh粒子の重量割合は表3に記載の通りであった。
【0072】
参考例1と同様にして、エージング処理後のペレットの排ガス浄化性能の評価を行った。結果を表3に示す。
【0073】
参考例8
参考例1と同様にして、蒸留水、Rh粒子分散液、及びACZ粒子の混合物を調製し、乾燥及び焼成した。得られた粒子を900℃に加熱しながら、5時間にわたり、ストイキ(空燃比A/F=14.6)の混合気と酸素過剰(リーン:A/F>14.6)の混合気に、時間比1:1の一定の周期で交互に曝した。
【0074】
次いで、混合気に曝露した粒子をTEMで観察した。TEM像に基づき、ACZ粒子に担持されているRh粒子(初期Rh粒子)の粒径分布を求めた。初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差、並びに焼成した粒子中のRh粒子の重量割合は表3に記載の通りであった。
【0075】
混合気に曝露した粒子に、これと同じ重量のCZ-2粒子を加え、乳鉢中で粉砕及び混合した。得られた粉末を2g量り取り、成型してペレットを得た。
【0076】
参考例1と同様にして、エージング処理後のペレットの排ガス浄化性能の評価を行った。結果を表3に示す。
【0077】
参考例9
Rh粒子分散液とACZ粒子の混合比を変更したこと以外は参考例1と同様にしてペレットを作製した。初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差、並びに焼成した粒子中のRh粒子の重量割合は表3に記載の通りであった。
【0078】
参考例1と同様にして、ペレットの排ガス浄化性能の評価を行った。結果を表3に示す。
【0079】
参考例10
Rh粒子分散液とACZ粒子の混合比を変更したこと以外は参考例3と同様にしてペレットを作製した。初期Rh粒子の粒径分布の平均及び標準偏差、並びに焼成した粒子中のRh粒子の重量割合は表3に記載の通りであった。
【0080】
参考例1と同様にして、ペレットの排ガス浄化性能の評価を行った。結果を表3に示す。
【0081】
初期Rh粒子の粒径分布の平均が1.5~18nmの範囲内であった参考例1、4-6におけるNOx-T50は、参考例2、3、7のNOx-T50よりも低く、参考例1、4-6のペレットがより高いNOx還元性能を有していたことが示された。参考例1、4及び参考例2、3におけるエージング処理後のRh粒子の平均粒径の測定結果から、初期Rh粒子の粒径分布の平均が1.5nm以上であった参考例1、4では、初期Rh粒子の粒径分布の平均が1.5nm未満であった参考例2、3と比べて、エージング処理によるRh粒子の粗大化が抑えられたことが示された。したがって、初期Rh粒子の粒径分布の平均が1.5nm以上であった参考例1、4-6では、Rh粒子の粗大化が抑制され、それによりRh粒子の比表面積の減少が抑えられたために、高いNOx還元性能が得られたと考えられる。また、初期Rh粒子の粒径分布の平均が18nm超であった参考例7では、エージング処理前の時点でRh粒子の比表面積が小さかったため、NOx還元性能が劣っていたと考えられる。
【0082】
参考例8では、参考例1、4-6と同様に初期Rh粒子の粒径分布の平均が1.5~18nmの範囲内であったが、初期Rh粒子の粒径分布の標準偏差が1.6nm以上であり、参考例1、4-6よりも大きかった。これは、参考例8のペレットには、参考例1、4-6のペレットと比べて、微小なRh粒子がより多く含まれていたことを示している。参考例8では、エージング処理により微小なRh粒子が粗大化したために、エージング処理後のRh粒子の比表面積が参考例1、4-6よりも小さくなり、その結果、参考例1、4-6よりもNOx還元性能が低かったと考えられる。
【0083】
同様に、初期Rh粒子の粒径分布の平均が1.5~18nmの範囲内である参考例9のペレットは、初期Rh粒子の粒径分布の平均が1.5nm未満である参考例10のペレットより低いNOx-T50、すなわち、より高いNOx還元性能を示した。なお、参考例9と参考例10のNOx還元性能の差は、参考例1と参考例3のNOx還元性能の差よりも小さかった。このことは、以下のことを示唆している。すなわち、焼成した粒子中のRh粒子の重量割合が0.01~2重量%、特に0.2~1.8重量%の範囲内である場合は、初期Rh粒子の粒径分布の平均を1.5nm以上とすることにより、十分なNOx還元性能向上効果が得られる。しかし、焼成した粒子中のRh粒子の重量割合がより大きい(例えば2重量%を超える)場合は、初期Rh粒子の粒径分布の平均を1.5nm以上としても、十分なNOx還元性能向上効果が得られないおそれがある。
【0084】