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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172105
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】光処理装置及び光処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/12 20060101AFI20231129BHJP
   C08J 7/00 20060101ALN20231129BHJP
【FI】
B01J19/12 F
B01J19/12 C
C08J7/00 304
C08J7/00 CER
C08J7/00 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083683
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山森 賢治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸吾
【テーマコード(参考)】
4F073
4G075
【Fターム(参考)】
4F073AA01
4F073BB01
4F073CA45
4F073CA62
4G075AA30
4G075AA65
4G075BA05
4G075CA02
4G075CA33
4G075CA34
4G075DA02
4G075DA18
4G075EA07
4G075EB31
4G075ED11
4G075FA01
4G075FB02
(57)【要約】
【課題】高い処理能力を有し、均質な表面改質を行うことができる光処理装置を提供する。
【解決手段】光処理装置は、205nm以下の波長帯域に属する紫外光を照射する、少なくとも一つの光源と、前記少なくとも一つの光源を覆い、前記紫外光が出射する方向に開口を有するランプハウスと、前記ランプハウスとの間に隙間を空けつつ、前記開口と対向する位置を横切るように、被処理材を一方向に搬送する、搬送体と、前記ランプハウスの下流に配置され、前記搬送体を昇温させる加熱器と、前記紫外光を前記被処理材に照射しながら前記被処理材を搬送するように制御する、制御部と、を備え、前記制御部は、前記加熱器を制御して、前記少なくとも一つの光源により昇温した前記搬送体の温度低下を抑えるように前記搬送体を昇温させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
205nm以下の波長帯域に属する紫外光を照射する、少なくとも一つの光源と、
前記少なくとも一つの光源を覆い、前記紫外光が出射する方向に開口を有するランプハウスと、
前記ランプハウスとの間に隙間を空けつつ、前記開口と対向する位置を横切るように、被処理材を一方向に搬送する、搬送体と、
前記ランプハウスの下流に配置され、前記搬送体を昇温させる加熱器と、
前記紫外光を前記被処理材に照射しながら前記被処理材を搬送するように制御する、制御部と、を備え、
前記制御部は、前記加熱器を制御して、前記少なくとも一つの光源により昇温した前記搬送体の温度低下を抑えるように、前記搬送体を昇温させることを特徴とする、光処理装置。
【請求項2】
前記搬送体は、前記ランプハウスの上流に配置された第一プーリと前記ランプハウスの下流に配置された第二プーリとの間に張架された無端ベルトであることを特徴とする、請求項1に記載の光処理装置。
【請求項3】
前記加熱器は、前記搬送体に向けて赤外線を放射することを特徴とする、請求項1又は2に記載の光処理装置。
【請求項4】
前記加熱器は、前記搬送体に向けて加熱流体を噴射することを特徴とする、請求項1又は2に記載の光処理装置。
【請求項5】
前記加熱器は、前記第二プーリの表面を昇温することで、前記無端ベルトを間接的に昇温させることを特徴とする、請求項2に記載の光処理装置。
【請求項6】
前記ランプハウスの上流に配置され、前記搬送体を昇温させる第二加熱器を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光処理装置。
【請求項7】
前記ランプハウスの上流と前記ランプハウスの下流の少なくともいずれか一方に、排気室を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光処理装置。
【請求項8】
前記無端ベルトの主な材料はステンレス鋼であることを特徴とする、請求項2又は5に記載の光処理装置。
【請求項9】
前記無端ベルトは、前記無端ベルトの厚み方向に貫通する貫通孔を有していることを特徴とする、請求項2又は5に記載の光処理装置。
【請求項10】
前記開口に対向する位置にガイドローラを備え、前記無端ベルトは、前記開口と前記ガイドローラに挟まれることを特徴とする、請求項2又は5に記載の光処理装置。
【請求項11】
前記加熱器で昇温される前、若しくは、昇温された後の前記搬送体の温度、又は前記加熱器の放射熱量を測定するセンサを備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光処理装置。
【請求項12】
表面に樹脂を有する被処理材を一方向に搬送体で搬送しながら、酸素が存在するランプハウス内で、光源が放射する205nm以下の波長帯域に属する紫外光を前記被処理材に照射し、
前記ランプハウスから搬出された前記被処理材を、前記光源により昇温した前記搬送体の温度低下を抑えるように、前記搬送体を昇温させることを特徴とする、光処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光処理装置及び光処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理材の表面に紫外光を照射して該表面を改質する、表面改質方法が知られている。例えば、特許文献1には、フッ素樹脂の表面に処理ガスを供給しながら紫外光を照射して当該表面を改質する表面改質方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2022/024882号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紫外光を使用した表面改質技術が進展するにつれて、光処理装置の改善が要請されている。本発明は、高い処理能力を有し、均質な表面改質を行うことができる光処理装置及び光処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の光処理装置は、205nm以下の波長帯域に属する紫外光を照射する、少なくとも一つの光源と、
前記少なくとも一つの光源を覆い、前記紫外光が出射する方向に開口を有するランプハウスと、
前記ランプハウスとの間に隙間を空けつつ、前記開口と対向する位置を横切るように、被処理材を一方向に搬送する、搬送体と、
前記ランプハウスの下流に配置され、前記搬送体を昇温させる加熱器と、
前記紫外光を前記被処理材に照射しながら前記被処理材を搬送するように制御する、制御部と、を備え、
前記制御部は、前記加熱器を制御して、前記光源により昇温した前記搬送体の温度低下を抑えるように前記搬送体を昇温させる。
【0006】
205nm以下の波長帯域に属する紫外光は真空紫外(VUV)光と言われる光である。該波長帯域に属する紫外光は、環境中の酸素分子から、酸素ラジカル及びオゾンを生成する。酸素ラジカル及びオゾンは被処理材の表面と反応し、該表面を改質する能力を有する。一方で、205nm以下の波長帯域に属する紫外光は、酸素分子に対する光吸収が大きい。被処理材は、搬送体によって、ランプハウスの開口と対向する位置を横切るように移動される。
【0007】
ランプハウスの開口と対向する位置とは、ランプハウス内に配置された光源からの出射光が到達する、ランプハウス直下の位置である。被処理材を、ランプハウス内に配置された光源からの出射光が到達する位置を横切るように通過させる。これにより、被処理材の改質処理を連続的に行うことができ、改質処理を大面積かつ短時間で行うことができる。「搬送体」とは、被処理材を載置して被処理材を移動させる搬送手段である。詳細は後述するが、「搬送体」の具体例として、ベルトコンベヤ及び可動ステージが挙げられる。
【0008】
光源は、205nm以下の波長帯域に属する紫外光だけでなく、赤外線をも放射する。ランプハウスの開口と対向する位置、すなわち、ランプハウス直下では、赤外線の光エネルギーにより搬送体の温度が上昇する。一方で、赤外線が届かないランプハウス直下の位置の外では、搬送体は赤外線の影響を受けない。
【0009】
本発明者は、搬送体が、ランプハウスの内から外へ搬出されるとき、搬送体に撓みが生じるおそれがあることに気付いた。搬送体の一部がランプハウスの直下に位置し、残りがランプハウス直下の外に位置するとき、搬送体の内部に温度ばらつきを生じ、熱膨張差から撓みが発生するためである。搬送体に撓みが発生すると、光源と被処理材の間隔が変化し、光源との間隔を一定に保ったまま搬送体を一方向に通過させられず、所望の改質処理を均質に行うことができない。
【0010】
そこで、本発明者は、搬送体を昇温させる加熱器をランプハウスの下流に配置し、加熱器で、ランプハウスから搬出された搬送体を加熱させる。これにより、搬送体の一部がランプハウスの直下に位置し、残りがランプハウスの直下の外に位置するときでも、搬送体の内部の温度ばらつきを抑えて、熱膨張差による撓みを小さくできる。その結果、光源との間隔を保ったまま搬送体を一方向に通過させることができ、所望の改質処理を均質に行うことができる。
【0011】
前記搬送体は、前記ランプハウスの上流に配置された第一プーリと前記ランプハウスの下流に配置された第二プーリとの間に張架された無端ベルトであっても構わない。
【0012】
前記加熱器は、前記搬送体に向けて赤外線を放射しても構わない。
【0013】
前記加熱器は、前記搬送体に向けて加熱流体を噴射しても構わない。
【0014】
前記加熱器は、前記第二プーリの表面を昇温することで、前記無端ベルトを間接的に昇温させても構わない。
【0015】
前記光処理装置は、さらに、前記ランプハウスの上流に配置され、前記搬送体を昇温させる第二加熱器を備えても構わない。撓みを小さくして、光源と被処理材の間隔をより保つことができる。
【0016】
前記光処理装置は、さらに、前記ランプハウスの上流と前記ランプハウスの下流の少なくともいずれか一方に、排気室を備えても構わない。ランプハウス内の酸素濃度及び湿度を制御しやすくなる。
【0017】
前記無端ベルトの主な材料はステンレス鋼であっても構わない。ステンレス鋼は上記紫外光に対して高い耐食性を有する。前記無端ベルトは、前記無端ベルトの厚み方向に貫通する貫通孔を有していても構わない。
【0018】
前記光処理装置は、さらに、前記開口に対向する位置にガイドローラを備え、前記無端ベルトは、前記開口と前記ガイドローラに挟まれても構わない。ガイドローラは、金属製又は樹脂製であっても構わない。ガイドローラは、幅方向に分割されていても構わない。
【0019】
前記光処理装置は、さらに、前記加熱器で昇温される前、若しくは、昇温された後の前記搬送体の温度、又は前記加熱器の放射熱量を測定するセンサを備えていても構わない。
前記制御部は、前記センサから得た温度結果に基づいて、前記加熱器を制御しても構わない。
【0020】
本発明の光処理方法は、表面に樹脂を有する被処理材を一方向に搬送体で搬送しながら、酸素が存在するランプハウス内で、光源が放射する205nm以下の波長帯域に属する紫外光を前記被処理材に照射し、
前記ランプハウスから搬出された前記被処理材を、前記光源により昇温した前記搬送体の温度低下を抑えるように、前記搬送体を昇温させる。
【発明の効果】
【0021】
高い処理能力を有し、均質な表面改質を行うことができる光処理装置及び光処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】光処理装置の第一実施形態を示す図である。
図2】ランプハウスの後部分から第二プーリまでの領域を拡大した図である。
図3】表面改質前の被処理材の表面と表面改質後の被処理材の表面を示す図である。
図4】第一プーリの形状を示す図である。
図5】本実施形態のガイドローラを示す図である。
図6】光処理装置の第二実施形態を示す図である。
図7図6の第一プーリからランプハウスの前部分までの領域を拡大した図である。
図8】光処理装置の第三実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面を参照しながら実施形態を説明する。なお、本明細書に開示された各図面は、あくまで模式的に図示されたものである。すなわち、図面上の寸法比と実際の寸法比とは必ずしも一致しておらず、また、各図面間においても寸法比は必ずしも一致していない。
【0024】
以下において、各図面は、XYZ座標系を参照しながら説明される。本明細書において、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載される。正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。すなわち、本明細書において、単に「X方向」と記載されている場合には、「+X方向」と「-X方向」の双方が含まれる。Y方向及びZ方向についても同様である。以下に述べる実施形態では、重力方向が-Z方向であり、搬送体上で被処理材が搬送される搬送方向が+Y方向であり、被処理材の幅方向はX方向である。
【0025】
<第一実施形態>
[光処理装置の概要]
図1とともに、光処理装置の第一実施形態を示す。光処理装置100は、205nm以下の波長帯域に属する紫外光を照射する三つの光源3と、三つの光源3を覆うように配置されるランプハウス2と、被処理材4を搬送する搬送体と、を備える。詳細は後述するが、本実施形態において、搬送体としてコンベヤベルト1(以下、単に、「ベルト1」と言うことがある。)を使用している。
【0026】
光源3が出射する紫外光L1は、真空紫外光、より詳細には、少なくとも波長205nm以下の波長帯域に属する紫外光である。本明細書において使用される、「少なくとも波長205nm以下の波長帯域に属する紫外光」とは、光源3の発光スペクトルにおいて、少なくとも205nm以下に発光強度を示す光である。斯かる光は、例えば、(1)ブロードな波長帯域に強度を示しつつ、最大強度を示すピーク発光波長が205nm以下となる発光スペクトルを示す光、(2)複数の極大強度(複数のピーク)を示す発光スペクトル示しつつ、複数のピークのうちいずれかのピークが205nm以下の波長範囲に含まれるような発光スペクトルを示す光、(3)発光スペクトル内における全積分強度に対して、205nm以下の光が、少なくとも30%以上の積分強度を示す光、を含む。
【0027】
本実施形態のランプハウス2の内壁には、不活性ガスを供給するための複数のガス供給口8を有する。複数のガス供給口8はガス供給源9に接続される。本実施形態では不活性ガスとして窒素を使用する。ガス供給源9からガス供給口8に窒素を供給し、ガス供給口8からランプハウス2内に窒素を吹き出す。詳細は後述するが、これにより、ランプハウス2内の酸素濃度を低下させる。なお、ランプハウス2自体を不活性ガスの多い環境下に配置することなどによっても、ランプハウス2内の酸素濃度を低下させ得ることができる。よって、ランプハウス2内に設けられるガス供給口8は、本発明にとって必須の構成ではない。
【0028】
ベルト1に近接してランプハウス2の開口がある。光処理装置100は、ベルト1を挟んで、ランプハウス2の開口の反対側に、排気空間形成器5と、排気口24とを有する。ガス供給口8より供給された不活性ガスの大部分は、ベルト1を回り込み、排気空間形成器5で収集されて、排気口24から排気される。
【0029】
本実施形態のベルト1は環状であるため無端である。ベルト1は、相対的に-Y方向に位置する第一プーリ11と、相対的に+Y方向に位置する第二プーリ12との間を張架される。ベルト1は、ランプハウス2との間に隙間を空けつつ、被処理材4を、ランプハウス2の開口と対向する位置を横切るように、移動させる。
【0030】
位置Y1と位置Y2は、ベルト1の上側(+Z側)にある。位置Y1は、ランプハウス2及び位置Y2より上流側(-Y側)に位置する。位置Y2は、位置Y1及びランプハウス2より下流側(+Y側)に位置する。位置Y1において被処理材4がベルト1の部分上に載置されて、載置された被処理材4がベルト1の部分とともに下流方向(+Y方向)に移動し、ランプハウス2の直下で被処理材4が改質処理されて、位置Y2において被処理材4がベルト1上から離脱される。被処理材4のベルト1上への載置、又は、被処理材4のベルト1からの離脱は、不図示のハンドリングロボット又は別のコンベヤベルト等により行われても構わない。
【0031】
光処理装置100は、第一プーリ11と第二プーリ12との間に、ベルト1を支持する複数のガイドローラ13を有する。光源3と被処理材4との間隔の変動を小さくするために、ガイドローラ13は、特に、光源3の近くに数多く配置されるとよい。本実施形態では、ランプハウス2の開口の下方に6本のガイドローラ13を有する。また、光処理装置100は、ベルト1に一定の張力を付与するためのダンサーローラ14を有する。
【0032】
[加熱器]
光処理装置100は、ランプハウス2の下流に位置するベルト1を昇温させる加熱器を有する。本実施形態の場合、加熱器は、第二プーリ12に内蔵されたヒータ21と加熱ガス供給部22である。ランプハウス2の下流に位置する第二プーリ12に内蔵されたヒータ21は、第二プーリ12の表面を昇温させる。これにより、第二プーリ12に接するベルト1を加熱する。
【0033】
加熱ガス供給部22からベルト1に向けて加熱ガス23を吹き付ける。これにより、ランプハウス2の下流のベルト1を加熱する。加熱ガス供給部22とベルト1の間に、被処理材4が存在しても構わない。被処理材4を昇温させることで、間接的にベルト1を昇温させられる。加熱ガス供給部22以外の加熱器(詳細は後述する)とベルト1との間に被処理材4がある場合でも、同様である。
【0034】
加熱器(21,22)の作用を図2とともに説明する。図2は、図1のランプハウス2の後部分から第二プーリ12までの領域を拡大した図である。ただし、図2では、加熱器(21,22)が動作していない状態を示す。つまり、第二プーリ12は加熱されず、加熱ガス供給部22は、加熱ガス23をベルト1に吹き付けていない。加熱器(21,22)を動作させない状態で光源3を点灯させ、紫外光L1をベルト1に照射する。そうすると、図2に示すように、ベルト1が、+Z方向の膨らみをY方向へ周期的に有する波状の撓みD1を発生させることがある。なお、図2において、ガイドローラ13に接する一点鎖線25は、撓みD1がない場合のベルト1の位置である。
【0035】
この撓みD1は、以下の機序に基づいて起こると推察される。まず、光源3は、205nm以下の波長帯域に属する紫外光L1のみならず、赤外線も放射する。光源3を点灯させると、赤外線によりランプハウス2直下のベルト1が加熱されて、ベルト1が膨脹する。ベルト1の膨張は、ベルト1の長さ方向、幅方向及び厚み方向に生じる。次に、加熱されたベルト1がランプハウス2から出てしばらく走行すると、ベルト1が自然冷却されて、膨張していたベルト1が収縮する。つまり、ベルト1内に熱膨張差が生じる。
【0036】
第一プーリ11から第二プーリ12までの間は、ベルト1は一定速度で移動する。そのため、一定速度で移動するベルト1の内部に熱膨張差が生じると、ベルト1に波状の撓みD1が現れる。なお、図2ではベルト1のYZ平面に表れる撓みD1のみを示しているが、ベルト1は、幅方向(X方向)にも撓む。このような撓みの大きさは、撓みがない場合の一点鎖線25の位置に対して、+Z方向に3mmに達することがある。なお、光処理装置100が室温(約20℃)の環境にあるとき、光源3の近傍のベルト1は、点灯する光源3に加熱されて、ベルト1の表面が50℃に到達することもある。
【0037】
ベルト1の波状の撓みD1は、被処理材4と光源3との間隔を狭くする。光源3と被処理材4の間隔が狭くなると、所望の改質処理を均質に行うことができなくなる。また、ベルト1の撓みD1がとりわけ大きくなると、ベルト1に載置された被処理材4が、光源3に干渉したり、ランプハウス2から搬出されるとき、ランプハウス2に干渉したりするおそれがある。
【0038】
そこで、本発明者は、加熱されたベルト1がランプハウス2から出た後に、ベルト1の温度が低下しないように、加熱器(21,22)を使用してベルト1を昇温させることにした。これにより、ベルト1の熱膨張がランプハウス2から第二プーリ12まで続くことになり、ベルト1の熱膨脹ばらつきを抑えられる。その結果、波状の撓みD1が小さくなって、ベルト1の位置が一点鎖線25に近づくか、又は、一点鎖線25と重なるようになる。そして、光源3と被処理材4の間隔を保ち、所望の改質処理を均質に行うことができる。
【0039】
[加熱器の制御]
図1に示されるように、光処理装置100は、加熱器(21,22)を制御する制御部19を備える。制御部19は、加熱器(21,22)を所望の温度になるように加熱制御する。本実施形態では、光処理装置100は、温度センサ18を有する。温度センサ18は、ランプハウス2の下流に位置し、かつ、加熱器(21,22)の上流に位置する。温度センサ18を使用して、ベルト1の、ランプハウス2の下流、かつ、加熱器(21,22)の上流の位置の温度を検出する。本実施形態では、温度センサ18として、ベルト1の放射熱量を検出するセンサ(放射温度計)を使用している。これにより、動くベルト1の温度を非接触で検出できる。
【0040】
図1は、加熱器(21,22)、温度センサ18、及び制御部19が、電力線で接続される様子を示す。温度センサ18で、加熱器(21,22)で昇温する前、又は、昇温した後のベルト1の温度を測定する。温度センサ18で検出した電気信号を制御部19に送り、制御部19は、検出した温度に基づいて加熱器(21,22)の出力を決定できる。なお、図2では、電力線は省略している。
【0041】
また、他の加熱器(21,22)と共有する制御部19で温度制御を行うだけでなく、加熱器(21,22)のそれぞれに、個々の温度センサが取り付けられても構わない。前記個々の温度センサの検出信号に基づいて、加熱器(21,22)を制御しても構わない。温度センサは、熱電対又は測温抵抗体などを使用しても構わない。
【0042】
なお、図1では全ての電力線(電気通信線)を示していない。制御部19は、光処理装置100の動作制御(例えば、第一プーリ11の駆動制御、光源3の点灯制御、不活性ガスの供給量制御)を行っても構わない。
【0043】
制御部19は、光処理装置100のために設けられた専用の制御部でも構わないし、他の装置又はシステムと共有する制御部でも構わない。制御部に、プログラマブルロジックコントローラ(若しくはシーケンサ)、パーソナルコンピュータ、又は汎用コンピュータを使用してもよい。
【0044】
本実施形態の加熱器は、第二プーリ12に内蔵されるヒータ21と加熱ガス供給部22であることを説明したが、これに限らない。加熱器(21,22)は、例えば、第二プーリ12とは別体のヒータであっても構わない。また、加熱器(21,22)に赤外線放射ヒータを使用しても構わない。また、本実施形態は、二つの加熱器(21,22)を有していたが、少なくとも一つの加熱器を有しておればよい。
【0045】
ベルト1の部分領域が第二プーリ12の回りを通過すると、ベルト1の部分領域は第一プーリ11に向かって戻る。このとき、ベルト1の部分領域は自然冷却される。そのため、環状のベルト1が第一プーリ11と第二プーリ12の回りを一回転した後においても、ベルト1は加熱器による加熱を要する。
【0046】
加熱器(21,22)がベルト1の温度低下を防いでいるか否かの判別方法を説明する。加熱器(21,22)を動作させたときのベルト1の温度と、加熱器(21,22)を動作させないときのベルト1の温度の両方を測定する。そして、加熱器(21,22)を動作させたときのベルト1の温度が、加熱器(21,22)を動作させないときのベルト1の温度より高ければ、加熱器(21,22)がベルト1の温度低下を防いでいることが確認される。
【0047】
[被処理材]
本実施形態で使用される被処理材4は、プリプレグと呼ばれる、紙やガラス等の基材に樹脂を含浸させた樹脂シートである。斯かる樹脂シートに銅箔を接合して硬化させた銅張積層板(CCL)より層間絶縁フィルムを形成する。層間絶縁フィルムは、高周波回路基板等に使用される。前記樹脂シートに銅箔を接合する際、前記樹脂シートの銅箔に対する接合力を高めるために、上述の表面改質処理が使用される。
【0048】
被処理材4には樹脂シート以外の材料も適用され得る。接合力の向上以外の目的で改質処理を行うこともあり得る。被処理材4は、他に、厚みのある堅い板状基板でも構わないし、長尺の可撓性フィルムでも構わないし、板状ではない立体形状でも構わない。被処理材4のY方向長さは、ランプハウス2のY方向長さより短くても構わないし、長くても構わない。被処理材4のX方向の幅は、ランプハウス2のX方向の幅より短い。
【0049】
[改質メカニズム]
本実施形態の表面改質の機序を説明する。本実施形態で使用する、少なくとも波長205nm以下の波長帯域に属する紫外光hνは、環境中の酸素分子に作用して原子状酸素を生成する。O(D)は反応性の高い原子状酸素(酸素ラジカル)であり、酸化作用を有する。O(P)は基底状態の原子状酸素を示す。これを(1)式に示す。
hν+O → O(D)+O(P) ・・・(1)
【0050】
基底状態の原子状酸素であるO(P)は、第三体Mの存在下で酸素分子と結合して、オゾン(O)を生成する。これを(2)式に示す。オゾンは、酸化作用を有する。
O(P)+O+M → O+M ・・・(2)
【0051】
空気に含まれる水蒸気もまた、以下の(3)式及び(4)式により、酸化作用のある、ヒドロキシラジカル(・OH)を生成する。
hν+HO → ・OH+H ・・・(3)
O(D)+HO → 2(・OH) ・・・(4)
【0052】
図3は、被処理材4であるプリプレグの表面を模式的に示した図である。被処理材4aは、改質処理前の樹脂シートの表面を表す。樹脂シートの表面は炭化水素基が露出する。本実施形態では、樹脂シートの表面に露出する高分子中の一部の炭化水素のみを単純化して示している。斯かる表面は疎水性を示す。
【0053】
被処理材4bは、改質処理後のプリプレグの表面を表す。酸素分子に紫外光hνが照射されることで生成された、酸素ラジカル(O(D))、オゾン(O)、又はヒドロキシラジカル(・OH)が、樹脂の表面の炭化水素基を酸化して、ヒドロキシ基やカルボキシル基に生成する。親水性であるヒドロキシ基やカルボキシル基は、銅との接合性を向上させる。
【0054】
[酸素濃度]
酸素分子はO(D)又はOを生成するための原料である。しかしながら、被処理材4bの表面近傍においてO(D)又はOを生成する必要があり、酸素分子に吸収されやすい紫外光hνを表面近傍まで到達させるため、酸素濃度を低下させて、光路中の酸素分子量を減らさなければならない。そのために、ランプハウス2内に不活性ガスを充填する。
【0055】
ランプハウス2内の酸素濃度は、10%以下であると良く、5%以下であるとより好ましい。例えば、172nmの紫外光が、酸素濃度が10%以下である空間を4mm進行すると、50%以上の光強度を確保でき、172nmの紫外光が、酸素濃度が5%以下である空間を4mm進行すると、70%以上の光強度を確保できる。とはいえ、上述したように、酸素分子はO(D)又はOを生成するための原料であるから、原料としての酸素分子を確保するため、酸素濃度は1%以上あると好ましく、3%以上あるとより好ましい。
【0056】
酸素ラジカル(O(D))、オゾン(O)、又はヒドロキシラジカル(・OH)を得るための酸素分子及び水分子の供給源は、ランプハウス2の外の空気である。図1及び図2に示されるように、ランプハウス2とベルト1との間には隙間がある。この隙間は、例えば、3~4mmである。酸素分子及び水分子は、ランプハウス2の外から、ランプハウス2とベルト1の間の隙間を通ってランプハウス2内に流入する。ランプハウス2内の酸素濃度を調整するためには、ガス供給口8から供給される不活性ガスの供給量、排気口24からのガス吸引力、ランプハウス2とベルト1との隙間の少なくともいずれか一つを制御するとよい。
【0057】
[搬送体]
搬送体であるベルト1は、主にステンレス鋼で形成されている。ステンレス鋼は、酸素ラジカル(O(D))、オゾン(O)、又はヒドロキシラジカル(・OH)に曝されても劣化しにくい高い耐食性を有する。ベルト1は、他の金属製でも構わないし、樹脂製でも構わない。
【0058】
本実施形態のベルト1はシート状である。ベルト1のX方向の幅は、被処理材4のX方向の幅より大きい。ベルト1のX方向の幅は、380mm以上であるとよく、580mm以下であるとよい。なお、ベルト1のZ方向の厚みは、0.1mm以上であるとよく、0.5mm以下であるとよい。ベルト1が厚いと、ベルト1が加熱されにくく撓みにくい。他方で、ベルト1が薄いとベルト1を円滑に移動させやすい。ベルト1の移動速度は、1m/分~5m/分であるとよい。
【0059】
ベルト1は、ベルト1の厚み方向に複数の貫通孔を有していてもよい。ベルト1が、複数の貫通孔を有することにより、ランプハウス2から排気空間形成器5に向かうガスの流れの一部が、ベルト1を回り込むことなく貫通孔を通る。貫通孔により、ガスの乱流抑制効果が得られる。さらに、光処理装置100が、貫通孔を介して被処理材4を吸着する吸着体を有する場合には、被処理材4をベルト1に吸着固定できる。吸着体は、例えば、貫通孔を吸引する吸引機構であってもよい。
【0060】
[光源]
本実施形態の光源3はキセノンエキシマランプが使用される。キセノンエキシマランプは、キセノンガスが発光管の内部に封入された放電ランプである。キセノンエキシマランプのピーク発光波長は172nmである。光源3は、キセノンガス以外のガスが封入された放電ランプであっても構わない。また、光源3は、LED等の固体光源であっても構わない。
【0061】
図1では、Y方向に三つの光源3が並んで配置されているが、光源3は少なくとも一つあればよい。また、X方向に光源3が並んで配置されてもよいし、X方向とY方向それぞれに光源3が並んで配置されてもよい。
【0062】
光源3のX方向の幅は、被処理材4のX方向の幅より大きいとよい。光源3のX方向の幅は、例えば、380~580mmであるとよい。
【0063】
[ランプハウス]
光源3を覆うように配置されるランプハウス2は、光源3が発光する紫外光が出射する方向(-Z方向)に開口を有する。これにより、光源3からの出射光を-Z方向に方向付ける。ランプハウス2の内壁には、紫外光を反射する反射器又は反射層が形成されていてもよい。
【0064】
ランプハウス2のY方向長さは、例えば、300mm~500mmであるとよい。また、ランプハウス2の+Y側の端と第二プーリ12の回転中心とのY方向における間隔は、例えば、300mm~500mmであるとよい。
【0065】
[プーリ]
図4は、第一プーリ11の形状を示している。本実施形態において、第一プーリ11は、ベルト1を駆動するための駆動プーリである。第一プーリ11は、X方向に延びるX1軸を中心とする回転体である。第一プーリ11は、X方向の中央の径R1が、X方向の端の径R2より少し大きいクラウン形状を呈する。第一プーリ11のクラウン(曲率半径)R3は、例えば、100000mm以上であるとよい。径R1は、例えば、50mm~170mmであっても構わない。第一プーリ11の形状は本実施形態に限らず、径がX方向に一定の円柱形状であっても構わない。第一プーリ11の幅方向長さW1は、ベルト1のX方向の幅より大きい。第一プーリ11の幅方向長さW1は、400mm~600mmであるとよい。
【0066】
第二プーリ12は、駆動しているベルト1との摩擦によって動く従動プーリである。第二プーリ12の形状及び各寸法は、第一プーリ11の上記形状及び上記各寸法と同じであってもよく、異なっていてもよい。第一プーリ11の回転中心と第二プーリ12の回転中心との間隔は、800mm~1200mmであってもよい。なお、第一プーリ11が従動プーリであり、第二プーリ12が駆動プーリであっても構わない。
【0067】
[ガイドローラ]
図5は、本実施形態のガイドローラ13のうちの一つを示す。ガイドローラ13は、ベルト1を支持しつつ、摩擦抵抗を抑えてベルト1を移動させるために使用される。ガイドローラ13は、幅方向に分割されている。つまり、複数の小ローラ43(図5では、一つの小ローラ43のみ符号を付す)がX方向に並んで構成される。これにより、ガイドローラ13とベルト1の接触面積を減らして、ベルト1とガイドローラ13の双方向の熱伝達量を小さくして、ベルト1がガイドローラ13による熱影響を受け難くできる。
【0068】
ガイドローラ13は、金属製又は樹脂製であっても構わない。ガイドローラ13が、金属など熱伝導率の高い材料で主に構成される場合には、複数の小ローラ43を使用することは特に有効である。ガイドローラ13に樹脂を使用する場合には、紫外光に対して劣化しにくい樹脂(例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、又はPTFE樹脂)を使用するとよい。
【0069】
複数の小ローラ43の形状と各寸法を例示する。複数の小ローラ43は、全てX方向に沿うX1軸を中心とする回転体である。小ローラ43の径R3は、50mm~150mmであるとよい。小ローラ43の幅W2は、20mm~100mmであるとよい。小ローラ43はX方向に2~20個の並んでいるとよい。
【0070】
なお、ガイドローラ13は、幅方向に分割されない一つのローラから構成されてもよい。また、ガイドローラ13は、ベルト1を温度調整可能にする温度調整要素を備えていてもよい。温度調整要素は、加熱要素及び冷却要素の少なくとも一つを備えていてもよい。
【0071】
本実施形態の光処理装置100は、ランプハウス2の外にガイドローラを有していないが、ランプハウス2の外にガイドローラを有しても構わない。
【0072】
[暖機運転]
光源3の点灯開始直後、第一プーリ11及び第二プーリ12は室温である。そのため、ベルト1の撓みD1は、光源3の点灯開始直後に特に発生しやすい。光源3の点灯から時間が経過するにしたがって、第二プーリ12等のベルト1に接触する部材が昇温し、撓みD1が小さくなる。よって、光処理装置100を暖機運転させてもよい。暖機運転とは、実際に被処理材4をベルト1に載置して改質処理を始める前に、光処理装置100を動作させる(すなわち、光源3を点灯させて、加熱器を動作させつつベルト1を回転させる)ことである。これにより、ベルト1が昇温し、ベルト1の撓みD1の発生を抑えることができる。暖機運転は、例えば、5~15分行ってもよい。
【0073】
<第二実施形態>
図6とともに、光処理装置の第二実施形態を説明する。以下に、第一実施形態とは異なる特徴を中心に説明する。第二実施形態に説明がない点については、第一実施形態と同様に実施できる。後述する第三実施形態についても同様である。
【0074】
第二実施形態の光処理装置200は、ランプハウス2の上流に第二加熱器を有する。第二加熱器は、ランプハウス2の上流に配置される。そして、第二加熱器は、ランプハウス2の上流に位置するベルト1を昇温させる。本実施形態の第二加熱器は、第一プーリ11に内蔵されたヒータ41と赤外線放射ヒータ42である。ランプハウス2の上流に位置する第一プーリ11に内蔵されたヒータ41は、第一プーリ11の表面を昇温させる。これにより、第一プーリ11に接するベルト1を加熱する。赤外線放射ヒータ42は、第一プーリ11の表面に沿って、ベルト1を挟んで配置されている。赤外線放射ヒータ42はベルト1に向かって赤外線を放射し、ベルト1を加熱する。赤外線放射ヒータ42は、ベルト1が、樹脂等の熱放射率の高い材料で構成される場合には、ベルト1の加熱器として特に好ましい。
【0075】
加熱器(41,42)の作用を、図7とともに説明する。図7は、図6の第一プーリ11からランプハウス2の前部分までの領域を拡大した図である。ただし、図7では、加熱器(41,42)が動作していない状態を示す。加熱器(41,42)を動作させない状態で光源3を点灯させると、ベルト1が、図7に示すように、+Z方向の膨らみをY方向へ周期的に有する波状の撓みD2を発生させることがある。なお、図7において、ガイドローラ13に接する一点鎖線25は、撓みD2がない場合のベルト1の位置である。
【0076】
この撓みD2は、撓みD1と同様に、ベルト1内の熱膨張量差によって生じると推察される。ランプハウス2の上流では、ベルト1の温度は室温程度であり、ベルト1は収縮した状態にある。他方、ランプハウス2の直下では、光源3からの赤外線により、光源3の近傍のベルト1は加熱されて膨脹する。
【0077】
一定速度で移動するベルト1の内部に熱膨張差が生じると、ベルト1に波状の撓みD2が現れる。なお、図7ではベルト1のYZ平面に表れる撓みD2のみを示しているが、ベルト1は、幅方向(X方向)にも撓む。
【0078】
そこで、ベルト1がランプハウス2に入る前に、ベルト1を予備的に加熱する。これにより、ランプハウス2の直下におけるベルト1の昇温幅が小さくなる。その結果、ランプハウス2の上流に位置するベルト1と、ランプハウス2の直下に位置するベルト1の間で熱膨張差を抑えられる。その結果、波状の撓みD2が小さくなって、ベルト1の位置が、一点鎖線25に近づくか、又は、一点鎖線25と重なるようになる。そして、光源3と被処理材4の間隔を保ち、所望の改質処理を均質に行うことができる。
【0079】
図6及び図7に示されるように、光処理装置200は、第一プーリ11の表面の温度を測定する温度センサ45を備えている。これにより、第一プーリ11の表面の温度を測定することにより、第一プーリ11に接した直後のベルト1の温度を推定できる。ベルト1が金属等の放射率の低い材料である場合には、ベルト1の放射熱量を測定することが難しい。このとき、第一プーリ11の表面が相対的に放射率の高い材料である場合には、ベルト1の放射熱量に代えて、第一プーリ11の放射熱量を測定するとよい。
【0080】
[排気室]
図6に示されるように、光処理装置200は、ランプハウス2の上流に排気室30を、ランプハウス2の下流に排気室31を、備える。排気室(30,31)は、それぞれ、排気室(30,31)内のガスを排出するための排気口(32,33)を有している。排気室(30,31)を設けることにより、ランプハウス2とベルト1との間の隙間からランプハウス2内に流入する酸素及び湿度を調整しやすくする。つまり、ランプハウス2内の酸素濃度を調整するために、排気口(31,32)の排気量を制御してもよい。
【0081】
<第三実施形態>
図8とともに、光処理装置の第三実施形態を説明する。第三実施形態の光処理装置300では、搬送体は、無端ベルトでなく、端の有る板51である。板51はY方向に長い。そのため、板51の一部がランプハウス2の外を移動し自然冷却されるとき、板51の残りがランプハウス2内で加熱される。よって、板51はY方向に温度差を生じ得る。また、板51は薄いため、Y方向の温度差による熱膨張差によって、板51内にZ方向の撓みが発生することがある。
【0082】
そこで、撓みを小さくするために、ランプハウス2の下流に配置された加熱ガス供給部22から加熱ガス23を吹き付けて、板51を昇温させることが有効である。また、第二実施形態で説明したように、ランプハウス2の上流に配置された第二加熱器である赤外線放射ヒータ42で、板51を予備的に加熱することも、有効である。
【0083】
以上で各実施形態及びその変形例を説明した。本発明は、上述の実施形態及びその変形例に限られず、上述の実施形態又は変形例を適宜組み合わせたり、さらなる変更を施したりできる。
【0084】
上述した光処理装置(100,200,300)は、単一のランプハウス2を有していたが、搬送方向(Y方向)に複数のランプハウス2を配置しても構わない。
【0085】
上述した光処理装置(100,200,300)は、紫外光L1の照射方向が重力方向(-Z方向)と同じ方向となるように示したが、紫外光L1の照射方向が重力方向と異なっていても構わない。例えば、重力方向に搬送される搬送体に対し、水平方向に紫外光を照射しても構わない。
【符号の説明】
【0086】
1 :ベルト
2 :ランプハウス
3 :光源
4、4a、4b:被処理材
5 :排気空間形成器
8 :ガス供給口
9 :ガス供給源
11 :第一プーリ
12 :第二プーリ
13 :ガイドローラ
14 :ダンサーローラ
18,45:温度センサ
19 :制御部
21,41:ヒータ
22 :加熱ガス供給部
23 :加熱ガス
24,32,33:排気口
30,31 :排気室
42 :赤外線放射ヒータ
43 :小ローラ
51 :板
100,200,300 :光処理装置
D1,D2 :撓み
L1 :紫外光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8