IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンデン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-複合装置 図1
  • 特開-複合装置 図2
  • 特開-複合装置 図3
  • 特開-複合装置 図4
  • 特開-複合装置 図5
  • 特開-複合装置 図6
  • 特開-複合装置 図7
  • 特開-複合装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172130
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】複合装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20231129BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B60H1/32 615
B60H1/22 611C
B60H1/32 613J
B60H1/32 613Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083730
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 栄男
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴史
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA23
3L211BA51
3L211DA30
3L211DA50
3L211DA94
3L211DA95
(57)【要約】
【課題】車両用空気調和装置等の小型化に資すると共に、低温時における冷媒圧縮機能の起動性能の低下を抑制し得る複合装置を提供する。
【解決手段】冷媒圧縮機能及び熱媒体加熱機能を有する複合装置1のハウジング2は、冷媒を圧縮する圧縮機構3と圧縮機構3を駆動する電動モータ4とを内部に直列に収容する第1ハウジング2Aと、熱媒体を加熱する電気ヒータ5を内部に収容する第2ハウジング2Bと、モータ駆動回路20及びヒータ制御回路30を内部に収容する第3ハウジング2Cとを含む。第1ハウジング2A、第2ハウジング2B及び第3ハウジング2Cは、一定的に結合されている。第2ハウジング2Bと第3ハウジング2Cとは、第3ハウジング2C内のモータ駆動回路20の電解コンデンサECが第2ハウジング2B内の電気ヒータ5によって温められ得るように結合されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒圧縮機能及び熱媒体加熱機能を有する複合装置であって、
冷媒を圧縮する圧縮機構と、
前記圧縮機構を駆動する電動モータと、
前記圧縮機構と前記電動モータとを内部に直列に収容すると共に、前記圧縮機構で圧縮される冷媒を内部に流入させる冷媒流入口と前記圧縮機構で圧縮された冷媒を外部に流出させる冷媒流出口とを有する圧縮機ハウジングと、
熱媒体を加熱する電気ヒータと、
前記電気ヒータを内部に収容すると共に、前記電気ヒータで加熱される熱媒体を内部に流入させる熱媒体流入口と前記電気ヒータで加熱された熱媒体を外部に流出させる熱媒体流出口とを有するヒータハウジングと、
前記電動モータを制御するモータ駆動回路と、
前記電気ヒータを制御するヒータ制御回路と、
前記モータ駆動回路及び前記ヒータ制御回路を内部に収容する回路ハウジングと、
を含み、
前記圧縮機ハウジング、前記ヒータハウジング及び前記回路ハウジングは、一体的に結合されており、
前記モータ駆動回路は、直流電圧を平滑化する電解コンデンサと、平滑化された直流電圧を三相交流電圧に変換するスイッチング素子とを有し、
前記ヒータハウジングと前記回路ハウジングとは、前記回路ハウジング内の前記電解コンデンサが前記ヒータハウジング内の前記電気ヒータによって温められ得るように結合されている、
複合装置。
【請求項2】
前記ヒータハウジングの内部と前記回路ハウジングの内部とが第1の仕切部によって仕切られており、
前記ヒータハウジング内において、前記電気ヒータは、前記第1の仕切部の近くに配置され、
前記回路ハウジング内において、前記モータ駆動回路の前記電解コンデンサは、前記第1の仕切部に熱的に接触するように配置されている、
請求項1に記載の複合装置。
【請求項3】
前記電解コンデンサの温度又は外気温度を検出する温度検出部を含み、
前記電解コンデンサの温度が閾値温度以下又は外気温度が所定温度以下の低温時に冷媒圧縮機能を起動する場合、冷媒圧縮機能の起動に先立って熱媒体加熱機能を起動させるように構成されている、
請求項1又は2に記載の複合装置。
【請求項4】
前記電解コンデンサの温度又は外気温度を検出する温度検出部を含み、
前記電解コンデンサの温度が閾値温度以下又は外気温度が所定温度以下の低温時に冷媒圧縮機能を起動する場合、前記電動モータを動作させる前に前記電気ヒータを動作させ、その後所定時間が経過してから又は前記電解コンデンサの温度が前記閾値温度を超えてから若しくは外気温度が前記所定温度を超えてから前記電動モータを動作させるように構成されている、請求項1又は2に記載の複合装置。
【請求項5】
前記ヒータ制御回路は、前記電気ヒータへの通電を制御するスイッチング素子を有し、
前記圧縮機ハウジングと前記回路ハウジングとは、前記回路ハウジング内における前記モータ駆動回路の前記スイッチング素子及び前記ヒータ制御回路の前記スイッチング素子が前記圧縮機ハウジング内に流入した冷媒によって冷却され得るように結合されている、請求項1に記載の複合装置。
【請求項6】
前記圧縮機ハウジングの内部と前記回路ハウジングの内部とが第2の仕切部によって仕切られており、
前記圧縮機ハウジングの前記冷媒流入口は、前記第2の仕切部の近傍に設けられ、
前記回路ハウジング内において、前記モータ駆動回路の前記スイッチング素子及び前記ヒータ制御回路の前記スイッチング素子は、前記第2の仕切部に熱的に接触するように配置されている、
請求項5に記載の複合装置。
【請求項7】
前記冷媒が前記圧縮機ハウジング内を流れる方向と、前記熱媒体が前記ヒータハウジング内を流れる方向とが略直交している、請求項6に記載の複合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒圧縮機能と熱媒体加熱機能とを有する複合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハイブリッド自動車や電気自動車などの車両に適用可能な車両用空気調和装置が記載されている。特許文献1に記載された車両用空気調和装置は、冷媒を圧縮する電動圧縮機と、電動圧縮機から吐出された冷媒を放熱させて車室内に供給される空気を加熱する放熱器と、放熱された冷媒を減圧膨張させる膨張弁と、減圧膨張された冷媒と外気との間で熱交換を行わせる蒸発器に相当する熱交換器を含む冷媒回路を有している。また、特許文献1に記載された車両用空気調和装置は、放熱器による車室内の暖房を補助するため、熱媒体を加熱する熱媒体加熱電気ヒータと、加熱された熱媒体で車室内に供給される空気を加熱する熱媒体-空気熱交換器とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-213765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された車両用空気調和装置は、放熱器による暖房能力の不足を補完することが可能である。しかし、特許文献1に記載された車両用空気調和装置では、電動圧縮機や熱媒体加熱電気ヒータなどが個別に設けられている。このため、装置全体が大型化し、設置スペースなどの面で改良の余地があった。
【0005】
本発明は、車両用空気調和装置等の小型化に資すると共に、低温時における冷媒圧縮機能の起動性能の低下を抑制し得る複合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、冷媒圧縮機能と熱媒体加熱機能とを有する複合装置が提供される。この複合装置は、冷媒を圧縮する圧縮機構と、前記圧縮機構を駆動する電動モータと、前記圧縮機構と前記電動モータとを内部に直列に収容すると共に、前記圧縮機構で圧縮される冷媒を内部に流入させる冷媒流入口と前記圧縮機構で圧縮された冷媒を外部に流出させる冷媒流出口とを有する圧縮機ハウジングと、熱媒体を加熱する電気ヒータと、前記電気ヒータを内部に収容すると共に、前記電気ヒータで加熱される熱媒体を内部に流入させる熱媒体流入口と前記電気ヒータで加熱された熱媒体を外部に流出させる熱媒体流出口とを有するヒータハウジングと、前記電動モータを制御するモータ駆動回路と、前記電気ヒータを制御するヒータ制御回路と、前記モータ駆動回路及び前記ヒータ制御回路を内部に収容する回路ハウジングとを含み、前記圧縮機ハウジング、前記ヒータハウジング及び前記回路ハウジングは、一体的に結合されている。前記モータ駆動回路は、直流電圧を平滑化する電解コンデンサと、平滑化された直流電圧を三相交流電圧に変換するパワースイッチング素子とを有し、前記ヒータハウジングと前記回路ハウジングとは、前記回路ハウジング内の前記電解コンデンサが前記ヒータハウジング内の前記電気ヒータによって温められ得るように結合されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両用空気調和装置等の小型化に資すると共に、低温時における冷媒圧縮機能の起動性能の低下を抑制し得る複合装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る複合装置の正面図である。
図2】実施形態に係る複合装置の右側面図である。
図3】実施形態に係る複合装置の上面図である。
図4図2のA-A断面図である。
図5】実施形態に係る複合装置のモータ駆動回路の要部構成例を示す図である。
図6】実施形態に係る複合装置のヒータ制御回路の要部構成例を示す図である。
図7】実施形態に係る複合装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
図8】実施形態に係る複合装置の部分概略断面図であり、図3のB-B断面図に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0010】
図1図4は、本発明の実施形態に係る複合装置1の概略構成を示している。図1は、実施形態に係る複合装置1の正面図であり、図2は、実施形態に係る複合装置1の右側面図であり、図3は、実施形態に係る複合装置1の上面図であり、図4は、図2のA-A断面図である。
【0011】
実施形態に係る複合装置1は、冷媒を圧縮する冷媒圧縮機能と、冷媒とは別の熱媒体を加熱する熱媒体加熱機能とを有している。つまり、複合装置1は、冷媒圧縮機と熱媒体加熱装置とが一体化された構成を有する。複合装置1は、例えば、上述したような車両用空気調和装置に適用され得る。
【0012】
複合装置1が車両用空気調和装置に適用された場合、複合装置1の冷媒圧縮機能部は、車両空気調和装置における冷媒回路に組み込まれ、例えば、膨張弁と、蒸発器に相当する熱交換器とを通過した冷媒を圧縮すると共に、圧縮された冷媒を、車室内に供給される空気を加熱する放熱器(冷媒-空気熱交換器)に供給するように構成され得る。また、複合装置1の熱媒体加熱機能部は、ポンプなどによって熱媒体が循環する熱媒体回路に組み込まれ、熱媒体を加熱すると共に、加熱された熱媒体を、車室内に供給される空気を加熱する熱媒体-空気熱交換器に供給するように構成され得る。なお、冷媒及び熱媒体は、それぞれ任意に選択され得るが、例えば、冷媒としては気体冷媒が用いられ、熱媒体としては液体が用いられ得る。また、特に限定されないが、熱媒体には、通常、水(不凍液などが混入されたものを含む)が用いられる。したがって、熱媒体加熱機能は、水加熱機能ということもできる。
【0013】
図1図4を参照すると、複合装置1は、ハウジング2を有する。複合装置1のハウジング2は、第1ハウジング2Aと、第2ハウジング2Bと、第3ハウジング2Cと、第1カバー2Dと、第2カバー2Eと、第3カバー2Fとを含み、これらが図示省略のボルトなどの締結部材によって一体的に結合(締結)されて構成されている。
【0014】
第1ハウジング2Aは、略円筒状に形成されている。第1ハウジング2Aの内部には、冷媒を圧縮する圧縮機構3と、圧縮機構3を駆動する電動モータ4とが軸方向に直列に収容されている。特に限定されないが、圧縮機構3は、固定スクロールと可動(旋回)スクロールとを含むスクロール圧縮機構であり得る。また、電動モータ4の出力軸4aは、圧縮機構3(例えば、前記可動(旋回)スクロール)に連結されている。
【0015】
第1ハウジング2Aの2つの開口端のうちの一方の開口端(図1図2における下側のの開口端)、すなわち、第1ハウジング2Aの圧縮機構3側の開口端は、第1カバー2Dによって閉塞されている。なお、圧縮機構3及びこれを駆動する電動モータ4を収容する第1ハウジング2Aは、「圧縮機ハウジング」ということもできる。
【0016】
第2ハウジング2Bは、第1ハウジング2Aの側方に配置されている。第2ハウジング2Bは、略矩形筒状に形成されている。第2ハウジング2Bの内部には、熱媒体を加熱する電気ヒータ5が収容されている。
【0017】
第2ハウジング2Bの2つの開口端のうちの一方の開口端(図1図2における下側のの開口端)は、第2カバー2Eによって閉塞されている。なお、電気ヒータ5を収容する第2ハウジング2Bは、「ヒータハウジング」ということもできる。
【0018】
第3ハウジング2Cは、上面が開放された箱型に形成されている。第3ハウジング2C内には、電動モータ4を制御するモータ駆動回路20及び電気ヒータ5を制御するヒータ制御回路30が収容されている。具体的には、モータ駆動回路20及びヒータ制御回路30が実装された回路基板6が第3ハウジング2Cの内部に収容されている。
【0019】
第3ハウジング2Cの底壁7は、第1ハウジング2Aの他方の開口端(図1図2における上側の開口端)、すなわち、第1ハウジング2Aの電動モータ4側の開口端と、第2ハウジング2Bの他方の開口端(図1図2における上側の開口端)とを閉塞している。具体的には、本実施形態において、第3ハウジング2Cの底壁7は、第1底壁部71と、第1底壁部71よりも凹んだ位置(上面から離れた位置であり、図1図2における下側の位置)にある第2底壁部72とを有している。そして、第3ハウジング2Cの底壁7の第1底壁部71が第1ハウジング2Aの前記他方の開口端を閉塞し、第3ハウジング2Cの底壁7の第2底壁部72が第2ハウジング2Bの前記他方の開口端を閉塞している。これにより、第1ハウジング2Aの内部と第3ハウジング2Cの内部とが仕切られ、及び、第2ハウジング2Bの内部と第3ハウジング2Cの内部とが仕切られている。つまり、第3ハウジング2Cの底壁7は、第1ハウジング2Aの内部と第3ハウジング2Cの内部とを仕切る仕切部としての第1底壁部71と、第2ハウジング2Bの内部と第3ハウジング2Cの内部とを仕切る仕切部としての第2底壁部72とを有している。
【0020】
第3ハウジング2Cの上面(開口端)は、第3カバー2Fによって閉塞されている。なお、モータ駆動回路20及びヒータ制御回路30を収容する第3ハウジング2Cは、「回路ハウジング」ということもできる。
【0021】
そして、複合装置1においては、主に圧縮機構3、電動モータ4及びモータ駆動回路20によって冷媒圧縮機能(冷媒圧縮機)が実現され、主に電気ヒータ5及びヒータ制御回路30によって熱媒体加熱機能(熱媒体加熱装置)が実現される。
【0022】
第1ハウジング2Aには、外部からの冷媒を内部に流入させるための冷媒流入口8が形成されている。外部からの冷媒は、例えば、上述の車両用空気調和装置の冷媒回路における膨張弁と蒸発器に相当する熱交換器とを通過した冷媒、すなわち、低温低圧の冷媒である。本実施形態において、冷媒流入口8は、第1ハウジング2Aの第3ハウジング2C側の部位、つまり、第1ハウジング2Aの内部と第3ハウジング2Cの内部とを仕切る仕切部である第1底壁部71の近傍に設けられている。好ましくは、冷媒流入口8は、外部からの冷媒の少なくとも一部が第1底壁部71に沿って流れるように、外部からの冷媒を第1ハウジング2A内に流入させるように構成されている。
【0023】
外部から冷媒流入口8を介して第1ハウジング2Aの内部に流入した(低温低圧の)冷媒は、第1ハウジング2Aの内部を流れて圧縮機構3に吸入される。圧縮機構3に吸入された冷媒は、圧縮機構3によって圧縮され、高温高圧の冷媒となって圧縮機構3から吐出される。吐出された(高温高圧の)冷媒は、第1ハウジング2Aに形成された冷媒流出口9から外部に流出し、例えば、上述の車両用空気調和装置の冷媒回路における、車室内に供給される空気を加熱する放熱器(冷媒-空気熱交換器)に供給される。
【0024】
本実施形態において、冷媒流出口9は、第1ハウジング2Aの第1カバー2D側の部位に、すなわち、冷媒流入口8から図1図2における上下方向に離れた位置に設けられている。このため、本実施形態において、冷媒流入口8から第1ハウジング2A内に流入した冷媒は、図1中に矢印で示されるように、第1ハウジング2A内を、図1図2における上側から下側に向かって流れる。
【0025】
なお、第1底壁部71は、第1ハウジング2A内に流入する冷媒によって冷却され得、電動モータ4は、第1ハウジング2Aの内部を流れる冷媒によって冷却され得る。
【0026】
第2ハウジング2Bには、外部からの熱媒体を内部に流入させるための熱媒体流入口10が形成されている。外部からの熱媒体は、例えば、上述の車両用空気調和装置の熱媒体回路における、車室内に供給される空気を加熱するための熱媒体-空気熱交換器を通過した熱媒体、すなわち、比較的低温の熱媒体である。本実施形態において、熱媒体流入口10は、図1における奥側(図2における右側)に設けられている。
【0027】
外部から熱媒体流入口10を介して第2ハウジング2Bの内部に流入した(低温の)熱媒体は、第2ハウジング2Bの内部を流れ、その際に、電気ヒータ5によって加熱されて昇温する(高温になる)。加熱された熱媒体は、第2ハウジング2Bに形成された熱媒体流出口11から流出し、例えば、上述の車両用空気調和装置における、車室内に供給される空気を加熱するための熱媒体-空気熱交換器に供給される。
【0028】
本実施形態において、熱媒体流出口11は、図1における手前側(図2における左側)に設けられている。このため、本実施形態において、熱媒体流入口10から第2ハウジング2B内に流入した熱媒体は、図4中に矢印で示されるように、第2ハウジング2B内を右側から左側に向かって流れる。図1で言えば、熱媒体は、第2ハウジング2B内を奥側から手前側に向かって流れる。つまり、熱媒体が第2ハウジング2B内を流れる方向は、冷媒が第1ハウジング2A内を流れる方向に略直交している。
【0029】
なお、図には示されていないが、モータ駆動回路20から電動モータ4への給電線及びヒータ制御回路30から電気ヒータ5への給電線は、それぞれ気密及び液密な状態で第3ハウジング2Cの底壁7を貫通して延びている。
【0030】
次に、図5及び図6を参照して電動モータ4を制御(駆動)するモータ駆動回路20及び電気ヒータ5を制御するヒータ制御回路30について説明する。
【0031】
図5は、モータ駆動回路20の要部構成例を示す図である。本実施形態において、モータ駆動回路20は、外部電源からの直流電圧を三相交流電圧に変換して電動モータ4に供給することで電動モータ4を制御(駆動)するように構成されている。モータ駆動回路20は、平滑部21と、第1パワーモジュール22と、第1ドライバ回路23とを有する。
【0032】
平滑部21は、外部電源の電源ラインと接地ラインとの間に接続されており、外部電源からの直流電圧を平滑化する。平滑部21は、複数(例えば12個)の電解コンデンサECを含む。
【0033】
第1パワーモジュール22は、6つのパワースイッチング素子(以下、第1パワースイッチング素子」という)Q1~Q6と、6つのダイオードD1~D6とを含む。特に限定されないが、第1パワースイッチング素子Q1~Q6は、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)であり得る。第1パワーモジュール22は、第1パワースイッチング素子Q1~Q6がPMW制御されることにより、平滑部21(つまり、複数の電解コンデンサEC)によって平滑化された、外部電源からの直流電圧を三相交流電圧に変換して電動モータ4に供給する。
【0034】
具体的には、第1パワーモジュール22は、外部電源の電源ラインと接地ラインとの間に、互いに並列に設けられたU相アーム、V相アーム及びW相アームを有する。
【0035】
U相アームには、2つの第1パワースイッチング素子Q1、Q2が直列に接続され、各第1パワースイッチング素子Q1、Q2にはダイオードD1、D2がそれぞれ逆並列に接続されている。
【0036】
V相アームには、2つの第1パワースイッチング素子Q3、Q4が直列に接続され、各第1パワースイッチング素子Q3、Q4にはダイオードD3、D4がそれぞれ逆並列に接続されている。
【0037】
W相アームには、2つの第1パワースイッチング素子Q5、Q6が直列に接続され、各第1パワースイッチング素子Q5、Q6にはダイオードD5、D6がそれぞれ逆並列に接続されている。
【0038】
また、U、V、W各相アームの中間点は、それぞれの一端においてスター結線された電動モータ4のU、V、W各相コイルの他端に接続されている。つまり、U相アームのパワースイッチング素子Q1、Q2の中間点がU相コイルに接続され、V相アームのパワースイッチング素子Q3、Q4の中間点がV相コイルに接続され、及び、W相アームのパワースイッチング素子Q5、Q6の中間点がW相コイルに接続されている。
【0039】
したがって、第1パワーモジュール22は、各相アームの電源ライン側の第1パワースイッチング素子Q1,Q3,Q5のON期間と接地ライン側の第1パワースイッチング素子Q2,Q4,Q6のON期間との比率が制御される(PWM制御される)ことにより、平滑部21(電解コンデンサEC)によって平滑化された、外部電源からの直流電圧を三相交流電圧に変換して電動モータ4に供給することができ、これにより、電動モータ4を駆動し、及び圧縮機構3を駆動することができる。
【0040】
第1ドライバ回路23は、後述する複合装置1の制御ユニット15からの制御信号(PWM信号)に基づき、第1パワースイッチング素子Q1~Q6をON/OFF駆動(PWM制御)する。
【0041】
つまり、本実施形態において、モータ駆動回路20(第1パワースイッチング素子Q1~Q6)の動作、ひいては、電動モータ4及び圧縮機構3の動作は、制御ユニット15によって制御されるようになっている。
【0042】
図6は、ヒータ制御回路30の要部構成例を示す図である。本実施形態において、ヒータ制御回路30は、高電圧電源の電圧を電気ヒータ5に印加するように構成されており、第2パワーモジュール31と、第2ドライバ回路32とを有する。
【0043】
第2パワーモジュール31は、電気ヒータ5への通電を制御する2つのパワースイッチング素子(以下、「第2パワースイッチング素子」という)Q7、Q8を含む。第2パワースイッチング素子Q7、Q8は、モータ駆動回路20の第1パワースイッチング素子Q1~Q6と同様、IGBTであり得る。本実施形態において、2つの第2パワースイッチング素子Q7、Q8のうちの一方の第2パワースイッチング素子Q7は、電気ヒータ5よりも高電圧電源の出力側(電圧側)に設けられ、他方の第2パワースイッチング素子Q8は、電気ヒータ5よりも高電圧電源の接地側に設けられている。
【0044】
第2パワーモジュール31は、第2パワースイッチング素子Q7、Q8が制御(PMW制御)されることにより、電気ヒータ5への通電をON/OFFし、これによって、電気ヒータ5の温度、さらには、電気ヒータ5によって加熱される熱媒体の温度を制御することができる。
【0045】
第2ドライバ回路32は、後述する複合装置1の制御ユニット15からの制御信号(PWM信号)に基づき、第2パワースイッチング素子Q7、Q8をON/OFF駆動(PWM制御)する。
【0046】
つまり、本実施形態において、ヒータ制御回路30(第2パワースイッチング素子Q7、Q8)の動作、ひいては、電気ヒータ5の動作(熱媒体の温度)は、制御ユニット15によって制御されるようになっている。
【0047】
図7は、実施形態に係る複合装置1の制御系の概略構成を示すブロック図である。図7に示されるように、本実施形態において、複合装置1の制御ユニット15には、上位の制御装置(例えば、上述の車両用空調装置の制御装置)から、冷媒圧縮機能の動作要求(起動要求、停止要求を含む)や熱媒体加熱機能の動作要求(起動要求、停止要求を含む)などが入力される。
【0048】
また、制御ユニット15には、モータ駆動回路20の第1パワースイッチング素子Q1~Q6の温度を検出する第1温度検出部51、ヒータ制御回路30の第2パワースイッチング素子Q7、Q8の温度を検出する第2温度検出部52、及び、モータ駆動回路20の平滑部21を構成する電解コンデンサECの温度を検出する第3温度検出部53などの各種検出部の検出結果も入力される。
【0049】
なお、第1温度検出部51は、第1パワースイッチング素子Q1~Q6の温度に相関する値を検出するものであってよい。第2温度検出部52は、第2パワースイッチング素子Q7、Q8の温度に相関する値を検出するものであってよい。第3温度検出部53は、電解コンデンサの温度に相関する値を検出するものであってよい。
【0050】
制御ユニット15は、前記上位の制御装置からの冷媒圧縮機能の動作要求及び/又は前記各種検出部の検出結果に応じた制御信号(PWM信号)を第1ドライバ回路23に出力して第1パワースイッチング素子Q1~Q6をON/OFF駆動し、これによって、電動モータ4(及び圧縮機構3)の動作、すなわち、冷媒圧縮機能の動作(冷媒圧縮機としての動作)を制御するように構成されている。
【0051】
また、制御ユニット15は、前記上位の制御装置からの熱媒体加熱機能の動作要求及び/又は前記各種検出部の検出結果に応じた制御信号(PWM信号)を第2ドライバ回路32に出力して第2パワースイッチング素子Q7、Q8をON/OFF駆動し、これによって、電気ヒータ5の動作、すなわち、熱媒体加熱機能の動作(熱媒体加熱装置としての動作)を制御するように構成されている。
【0052】
図8は、複合装置1の部分概略断面図(図3のB-B断面図に相当する)である。上述のように、モータ駆動回路20及びヒータ制御回路30は、回路基板6に実装されて第3ハウジング2Cの内部に収容されている。本実施形態において、回路基板6は、第3ハウジング2Cの内部に設けられた複数の基板取付部12に取り付けられている。複数の基板取付部12は、第3ハウジング2Cの底壁7の第1底壁部71から(第1ハウジング2Aから離れる方向)に突出するボス状に形成され、複数の基板取付部12の上面に回路基板6がねじ13によって取り付けられている。
【0053】
ところで、複合装置1は、車両用空気調和装置に適用され得るものであり、低温環境下に置かれることがある。モータ駆動回路20において、外部電源からの直流電圧を平滑化する平滑部21を構成している電解コンデンサECは、その温度が低くなると、電解溶液中のイオンの流動性が悪くなり、tanδ(ESR)が増加する。つまり、低温環境下では電解コンデンサECの平滑能力が低下する。このため、低温時に電動モータ4、すなわち、冷媒圧縮機能を起動すると、リップル電圧が大きくなり、第1パワースイッチング素子Q1~Q6などにその耐圧を超える電圧がかかるおそれがある。
【0054】
このような電解コンデンサECの平滑能力の低下に起因する低温時の不具合を防止するためには、低温時に冷媒圧縮機能を起動する際、冷媒圧縮機能を起動する前にリップル電圧が許容値を超えないように制限された電流を電動モータ4に流すことによって電解コンデンサECの温度を上昇させることが考えられる。しかし、この方法では、電解コンデンサECの温度が、電解コンデンサECが適切な平滑能力を発揮し得る温度に達するまで冷媒圧縮機能を起動することができない。このため、冷媒圧縮機能の起動に時間がかかる。つまり、低温時における冷媒圧縮機能の起動性能が低下するという欠点がある。
【0055】
また、モータ駆動回路20やヒータ制御回路30に使用されているパワースイッチング素子は使用により発熱する。このため、これらパワースイッチング素子については発熱による温度上昇を抑制することが求められる。
【0056】
そこで、実施形態に係る複合装置1では、電解コンデンサECの平滑能力の低下に起因する低温時の不具合の発生を防止しつつ、低温時における冷媒圧縮機能の起動性能の低下を抑制し、及び、パワースイッチング素子の冷却(放熱)性能を確保するため、以下に説明するような構成を採用している。
【0057】
(1)複合装置1において、第2ハウジング2Bと第3ハウジング2Cとは、第3ハウジング2C内の複数の電解コンデンサECが第2ハウジング2B内の電気ヒータ5によって温められ得るように結合されている。換言すれば、電気ヒータ5は、第3ハウジング2C内の複数の電解コンデンサECを温めることができるように配設されている。
【0058】
具体的には、第2ハウジング2B内において、電気ヒータ5は、第2ハウジング2B内と第3ハウジング2C内とを仕切る仕切部である第2底壁部72の近くに、好ましくは、第2底壁部72に沿って延びるように配置されている(図2参照)。
【0059】
また、図8に示されるように、第3ハウジング2C内において、モータ駆動回路20の複数の電解コンデンサECは、基板取付部12に取り付けられた回路基板6の第3ハウジング2Cの底壁7側の面における第2底壁部72に対向する部位に実装され、それぞれの先端部が第2底壁部72に熱的に接触している。つまり、モータ駆動回路20の複数の電解コンデンサECは、第3ハウジング2C内において、第2ハウジング2B内と第3ハウジング2C内とを仕切る仕切部である第2底壁部72に熱的に接触するように配置されている。ここで、「第2底壁部72に熱的に接触する」とは、第2底壁部72との間で熱交換が可能な状態にあることをいい、第2底壁部72に直接接触すること、第2底壁部72に近接していること、及び、熱伝導率が高い部材などを介して間接的に第2底壁部72に接触することなどが含まれる。なお、本実施形態において、モータ駆動回路20の複数の電解コンデンサECは、熱伝導率が高い放熱シート60を介して間接的に第2底壁部72に接触している。
【0060】
(2)複合装置1は、電解コンデンサECの温度が閾値温度以下の低温時に冷媒圧縮機能を起動する場合、冷媒圧縮機能の起動に先立って熱媒体加熱機能を起動するように構成されている。換言すれば、複合装置1は、電解コンデンサECの温度が閾値温度以下の低温時に冷媒圧縮機能を起動する場合、電動モータ4を動作させる前に電気ヒータ5を動作させ、その後所定時間が経過してから電動モータ4を動作させるように構成されている。
【0061】
具体的には、複合装置1において、制御ユニット15は、第3温度検出部53の検出温度が閾値温度以下のときに冷媒圧縮機能の起動要求が入力されると、熱媒体加熱機能の起動要求の有無にかかわらず、電動モータ4を動作させる前に電気ヒータ5を動作させ、その後所定時間が経過してから電動モータ4を動作させるように構成されている。特に限定されないが、制御ユニット15は、電動モータ4を動作させる前に、100%又はそれに近いデューティ比の制御信号を第2ドライバ回路32に出力して電気ヒータ5を動作させるように構成され得る。
【0062】
好ましくは、制御ユニット15は、第3温度検出部53の検出温度が閾値温度以下のときに冷媒圧縮機能の起動要求が入力されると、熱媒体加熱機能(電気ヒータ5)が動作しているか否かを判定するように構成される。そして、制御ユニット15は、熱媒体加熱機能(電気ヒータ5)が動作している場合、速やかに冷媒圧縮機能(電動モータ4)を動作させ、熱媒体加熱機能(電気ヒータ5)が動作していない場合、まず熱媒体加熱機能(電気ヒータ5)を動作させ、その後所定時間が経過してから冷媒圧縮機能(電動モータ4)を動作させるように構成される。
【0063】
なお、前記所定時間は、電気ヒータ5の動作(発熱)により、電解コンデンサECの温度が、電解コンデンサECが適切な平滑能力を発揮することのできる温度まで上昇し得る時間としてあらかじめ実験等によって求められた時間が設定され得る。また、制御ユニット15は、熱媒体加熱機能の起動要求が入力されない場合、前記所定時間が経過すると、熱媒体加熱機能(電気ヒータ5)を停止させる。
【0064】
(3)複合装置1において、第1ハウジング2Aと第3ハウジング2Cとは、第3ハウジング2C内におけるモータ駆動回路20の第1パワースイッチング素子Q1~Q6及びヒータ制御回路30の第2パワースイッチング素子Q7、Q8が第1ハウジング2A内に流入した(低温低圧)の冷媒によって冷却され得るように結合されている。
【0065】
具体的には、上述のように、第1ハウジング2Aの冷媒流入口8は、第1ハウジング2Aの内部と第3ハウジング2Cの内部とを仕切る仕切部である第1底壁部71の近傍に設けられている。好ましくは、第1ハウジング2Aの冷媒流入口8は、外部からの冷媒の少なくとも一部が第1底壁部71に沿って流れるように、外部からの冷媒を第1ハウジング2A内に流入させるように構成されている。
【0066】
また、第3ハウジング2C内において、モータ駆動回路20の第1パワースイッチング素子Q1~Q6及びヒータ制御回路30の第2パワースイッチング素子Q7、Q8は、基板取付部12に取り付けられた回路基板6の第3ハウジング2Cの底壁7側の面における第1底壁部71に対向する部位に実装され、それぞれが第1底壁部71に熱的に接触している。つまり、モータ駆動回路20の第1パワースイッチング素子Q1~Q6及びヒータ制御回路30の第2パワースイッチング素子Q7、Q8は、第3ハウジング2C内において、第1ハウジング2A内と第3ハウジング2C内とを仕切る仕切部である第1底壁部71に熱的に接触するように配置されている。なお、「第1底壁部71に熱的に接触する」とは、第1底壁部71との間で熱交換が可能な状態にあることをいい、第1底壁部71に直接接触すること、第1底壁部71に近接していること、及び、熱伝導率が高い熱交換部材などを介して第1底壁部71に間接的に接触することなどが含まれる。
【0067】
実施形態に係る複合装置1によれば以下の効果が得られる。
【0068】
複合装置1は、冷媒を圧縮する圧縮機構3と圧縮機構3を駆動する電動モータ4とを内部に直列に収容する第1ハウジング(圧縮機ハウジング)2Aと、熱媒体を加熱する電気ヒータ5を内部に収容する第2ハウジング(ヒータハウジング)2Bと、電動モータ4を制御するモータ駆動回路20及び電気ヒータ5を制御するヒータ制御回路30を内部に収容する第3ハウジング(回路ハウジング)2Cとを含む。第1ハウジング2Aは、圧縮機構3で圧縮される冷媒を内部に流入させる冷媒流入口8と圧縮機構3で圧縮された冷媒を外部に流出させる冷媒流出口9とを有し、第2ハウジング2Bは、電気ヒータ5で加熱される熱媒体を内部に流入させる熱媒体流入口10と電気ヒータ5で加熱された熱媒体を外部に流出させる熱媒体流出口11とを有する。そして、第1ハウジング2A、第2ハウジング2B及び第3ハウジング2Cは、一体的に結合されている。
【0069】
このような複合装置1は、冷媒を圧縮する冷媒圧縮機(電動圧縮機)及び熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置として機能し得るものであり、冷媒を圧縮しながら、熱媒体を加熱することができる。このため、複合装置1は、上述したような車両用空気調和装置に適用され得る。そして、複合装置1が車両用空気調和装置に適用されることにより、電動圧縮機及び熱媒体加熱装置を別個に有する従来の構成に比べて、車両用空気調和装置の小型化を図ることが可能である。
【0070】
また、複合装置1において、第2ハウジング2Bと第3ハウジング2Cとは、第3ハウジング2C内におけるモータ駆動回路20の複数の電解コンデンサECが第2ハウジング2B内の電気ヒータ5によって温められ得るように結合されている。具体的には、第2ハウジング2B内において、電気ヒータ5は、第2ハウジング2B内と第3ハウジング2C内とを仕切る仕切部としての第2底壁部72に近い側に配置されており、第3ハウジング2C内において、モータ駆動回路20の複数の電解コンデンサECは、第2底壁部72に熱的に接触するように配置されている。
【0071】
このような構成によれば、電気ヒータ5の動作(発熱)によって第2底壁部72を直接又は熱媒体を介して間接的に温めること、さらには、第2底壁部72に熱的に接触している電解コンデンサECを温めることができる。このため、電解コンデンサECの温度が低い場合であっても、電気ヒータ5を動作させることにより、電解コンデンサECの温度を電解コンデンサECが適切な平滑能力を発揮し得る温度まで比較的短い時間で上昇させることができる。したがって、電解コンデンサECの平滑能力の低下に起因する低温時の不具合の発生を防止しつつ、低温時における冷媒圧縮機能の起動の遅延、すなわち、低温時における冷媒圧縮機能の起動性能の低下を抑制することができる。
【0072】
また、複合装置1は、電解コンデンサECの温度が閾値温度以下の低温時に冷媒圧縮機能を起動する場合、冷媒圧縮機能の起動に先立って熱媒体加熱機能を起動するように構成されている。換言すれば、複合装置1は、電解コンデンサECの温度が閾値温度以下の低温時に冷媒圧縮機能を起動する場合、電動モータ4を動作させる前に電気ヒータ5を動作させ、その後所定時間が経過してから電動モータ4を動作させるように構成されている。
【0073】
このため、電解コンデンサECの平滑能力の低下に起因する低温時の不具合の発生をより確実に防止することができる。
【0074】
また、複合装置1において、第1ハウジング2Aと第3ハウジング2Cとは、第3ハウジング2C内におけるモータ駆動回路20の第1パワースイッチング素子Q1~Q6及びヒータ制御回路30の第2パワースイッチング素子Q7、Q8が第1ハウジング2A内に流入した(低温低圧)の冷媒によって冷却され得るように結合されている。具体的には、第1ハウジング2Aの冷媒流入口8は、第1ハウジング2Aの内部と第3ハウジング2Cの内部とを仕切る仕切部としての第1底壁部71の近傍に設けられ、第3ハウジング2C内において、モータ駆動回路20の第1パワースイッチング素子Q1~Q6及びヒータ制御回路30の第2パワースイッチング素子Q7、Q8は、第1底壁部71に熱的に接触するように配置されている。
【0075】
このような構成によれば、第1パワースイッチング素子Q1~Q6及び第2パワースイッチング素子Q7、Q8のそれぞれと、第1ハウジング2A内に流入する冷媒によって冷却され得る第1底壁部71との間の熱交換により、第1パワースイッチング素子Q1~Q6及び第2パワースイッチング素子Q7、Q8を効果的に冷却することができ、パワースイッチング素子の冷却(放熱)性能が確保され得る。
【0076】
なお、上述の実施形態において、複合装置1は、電解コンデンサECの温度が閾値温度以下の低温時に冷媒圧縮機能を起動する場合、冷媒圧縮機能(電動モータ4)の起動に先立って熱媒体加熱機能(電気ヒータ5)を起動するように構成されている。しかし、これに限られるものではない。複合装置1は、外気温度が所定温度以下の低温時に冷媒圧縮機能を起動する場合、冷媒圧縮機能(電動モータ4)の起動に先立って熱媒体加熱機能(電気ヒータ5)を起動するように構成されてもよい。冷媒圧縮機能の停止時における電解コンデンサECの温度と外気温度とは相関があるからである。この場合、第3温度検出部53が電解コンデンサECの温度に代えて外気温度を検出するように構成されてもよいし、図7中に二点鎖線で示されるように、制御ユニット15が外気温度を検出する第4温度検出部54の検出結果を入力するように構成されてもよい。
【0077】
また、上述の実施形態において、複合装置1は、電解コンデンサECの温度が閾値温度以下の低温時に冷媒圧縮機能を起動する場合、電動モータ4を動作させる前に電気ヒータ5を動作させ、その後所定時間が経過してから電動モータ4を動作させるように構成されている。しかし、これに限られるものではない。複合装置1は、電解コンデンサECの温度が閾値温度以下の低温時に冷媒圧縮機能を起動する場合、電動モータ4を動作させる前に電気ヒータ5を動作させ、電解コンデンサECの温度が閾値温度を超えてから又は外気温度が所定温度を超えてから電動モータ4を動作させるように構成されてもよい。
【0078】
また、上述の実施形態においては、モータ駆動回路20及びヒータ制御回路30が1つの回路基板6に実装されている。しかし、これに限られるものではない。モータ駆動回路20とヒータ制御回路30とが個別の回路基板に実装されてもよいし、モータ駆動回路20及び/又はヒータ制御回路30が複数の回路基板に分割して実装されてもよい。
【0079】
また、上記では、主に複合装置1が車両用空気調和装置に適用される場合について説明されている。しかし、これに限られるものではない。複合装置1は、冷媒を圧縮する電動圧縮機及び熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置を利用する種々の装置やシステムに適用することが可能である。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて変形及び変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0081】
1…複合装置、2…ハウジング、2A…第1ハウジング(圧縮機ハウジング)、2B…第2ハウジング(ヒータハウジング)、2C…第3ハウジング(回路ハウジング)、3…圧縮機構、4…電動モータ、5…電気ヒータ、6…回路基板、7…底壁、8…冷媒流入口、9…冷媒流出口、10…熱媒体流入口、11…熱媒体流出口、15…制御ユニット、20…モータ駆動回路、30…ヒータ制御回路、51…第1温度検出部、52…第2温度検出部、53…第3温度検出部、71…第1底壁部(第2の仕切部)、72…第2底壁部(第1の仕切部)、EC…電解コンデンサ、Q1~Q6…第1パワースイッチング素子(モータ駆動回路のスイッチング素子)、Q7,Q8…第2パワースイッチング素子(ヒータ制御回路のスイッチング素子)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8