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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172137
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】機器装置
(51)【国際特許分類】
   H02B 13/055 20060101AFI20231129BHJP
   H02B 13/035 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H02B13/055 B
H02B13/035 301G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083742
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 蛍子
(72)【発明者】
【氏名】玉井 耕太郎
【テーマコード(参考)】
5G017
【Fターム(参考)】
5G017BB01
5G017DD03
(57)【要約】
【課題】吸着剤の急激な吸着能力の低下を抑制し、安定した吸着性能を実現することができること。
【解決手段】機器装置は、機器を収容する容器3と、容器3内に配置され、ガスを吸着可能な吸着部8と、を備える。吸着部8は、ガスを取込み可能な複数の取込み口87を含む吸着剤ケース81と、吸着剤ケース81内に充填され、ガスを吸着可能な吸着剤K1と、取込み口87から最外層の吸着剤K1よりも内側にある吸着剤K1に向かってガスを導く少なくとも1つの通気材と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器を収容する容器と、
前記容器内に配置され、ガスを吸着可能な吸着部と、
を備え、
前記吸着部は、
前記ガスを取込み可能な取込み口を含む吸着剤ケースと、
前記吸着剤ケース内に充填され前記ガスを吸着可能な吸着剤と、
前記取込み口から最外層の前記吸着剤よりも内側にある前記吸着剤に向かって前記ガスを導く少なくとも1つの通気材と、
を有する、
機器装置。
【請求項2】
前記通気材は、吸着剤ケースの一面に含まれる取込み口と、前記一面とは別の他の面に含まれる取込み口とをつなぐ通気路を形成し、
前記通気材は、前記ガスを、前記吸着剤ケース内において前記通気路の外に通過可能に構成されている、
請求項1に記載の機器装置。
【請求項3】
前記通気材は、前記ガスが透過可能な透過性シートである、
請求項1に記載の機器装置。
【請求項4】
前記通気材は、前記ガスが透過可能な複数の多孔性粒子である、
請求項1に記載の機器装置。
【請求項5】
前記機器は電力機器であり、
前記容器内には、絶縁ガスが充填されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の機器装置。
【請求項6】
前記電力機器は、
前記容器内に配置された第一電極と、
前記容器内に配置され、前記第一電極に対して接触する接触位置と前記第一電極に対して離れる離間位置とに切り替えられる第二電極と、
前記離間位置にある前記第二電極と前記第一電極との間に生じたアーク放電に対して前記絶縁ガスを吹き付けて前記アーク放電を消弧するノズルと、
を有し、
前記吸着剤は、前記ガスとして、消弧の際に生じる分解ガスと水分との少なくとも一方を吸着可能である、
請求項5に記載の機器装置。
【請求項7】
前記吸着部は、前記ノズルの吐出方向において、前記ノズルの開口面を投影した領域の外側の領域に配置されている、
請求項6に記載の機器装置。
【請求項8】
前記ノズルに対して吐出方向に対向するように配置された排気筒を更に備え、
前記吸着部は、前記ノズルの吐出方向において、前記排気筒の開口面を投影した領域の外側の領域に配置されている、
請求項6に記載の機器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器装置に関し、より詳細には、容器内に機器が収容された機器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の機器装置が記載されている。特許文献1記載の機器装置は、容器内に遮断器が収容されたガス遮断器である。ガス遮断器は、一対の接触子と、一対の接触子が離れた際に生じるアークを消弧する絶縁ノズルと、これらを収める容器と、を備える。容器には絶縁ガスが充填されている。
【0003】
絶縁ノズルによって、アークを消弧すると、ガス(分解ガスと水分との少なくとも一方の気体)が生じ得る。ここで生じるガスは、絶縁ガスの絶縁性能を低下させたり、装置内部の腐食を引き起こしたりする可能性がある。
【0004】
このため、特許文献に1記載のガス遮断器では、容器の内面に、ガスを吸着するための吸着剤を敷いている。これによって、特許文献1記載の発明では、ガスを吸着し、機器の性能を維持しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-189798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、吸着剤によって分解ガス等のガスを吸着する際、ガスは、吸着剤の表面に対して接触して吸着される。このため、容器内に敷かれた吸着剤のうち、容器内の空間に面する表面にてガスを吸着するが、表面のみでしかガスを吸着することができない。このため、特許文献1記載の発明では、吸着剤の吸着能力が急激に低下することがあって、吸着性能が安定しないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、吸着剤の急激な吸着能力の低下を抑制し、安定した吸着性能を実現することができる機器装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一態様の機器装置は、機器を収容する容器と、前記容器内に配置され、ガスを吸着可能な吸着部と、を備える。前記吸着部は、前記ガスを取込み可能な取込み口を含む吸着剤ケースと、前記吸着剤ケース内に充填され前記ガスを吸着可能な吸着剤と、前記取込み口から最外層の吸着剤よりも内側にある前記吸着剤に向かって前記ガスを導く少なくとも1つの通気材と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る上記態様の機器装置は、吸着剤の急激な吸着能力の低下を抑制し、安定した吸着性能を実現することができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る機器装置の閉路状態の概略断面図である。
図2図2は、実施形態に係る機器装置の開路状態の概略断面図である。
図3図3(A)は、実施形態に係る機器装置の吸着部の概略断面図である。図3(B)は、図3(A)のB部分の拡大図である。
図4図4は、実施形態に係る機器装置において、吸着部の配置箇所を説明する説明図である。
図5図5は、変形例に係る機器装置の吸着部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、本実施形態に係る機器装置について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、図面は、実施形態を模式的に示したものであるため、例えば、位置関係、各部品のサイズ等が正確ではない。
【0012】
機器装置は、機器が容器3内に収容された装置である。機器装置としては、例えば、電力機器、電子機器等が挙げられる。電力機器としては、例えば、電子線照射装置、ガス遮断器、ガス絶縁開閉装置(GIS)、計器用変成器(変圧器、交流器)、高電圧発生装置等が挙げられる。電子機器としては、例えば、磁気ディスク装置、パーソナルコンピュータ、ハードディスクレコーダ、ディスプレイ、プリンタ、ラジオ、電子楽器等が挙げられる。本実施形態では、機器装置の一例として、ガス遮断器1を挙げて説明する。
【0013】
ガス遮断器1は、絶縁ガスが充填された容器3内において、電路の開閉が行われる遮断器である。ガス遮断器1は、図1に示すように、遮断器本体2と、吸着部8と、を備える。ガス遮断器1は、例えば、ガス遮断器1単独で使用されてもよいし、ガス絶縁開閉装置(GIS)の一構成要素として用いられてもよい。
【0014】
ガス遮断器1としては、例えば、機械的にパッファ室75の容積を変化させる機械パッファ型、磁気駆動併用熱パッファ型、ブラスト型、機械パッファ室と熱パッファ室とを直列に設ける直列熱パッファ型等が挙げられる。磁気駆動併用熱パッファ型ガス遮断器は、駆動コイルで生じる磁力によってアークをガス雰囲気中で回転させ、これによって当該アークに相対的なガスの吹き付けを行う磁気駆動作用と、アーク熱にて蓄圧されたガスの放出の際にアークに対して吹き付けを行う熱パッファ作用とを共に得られるように構成された遮断器である。本実施形態では、機械パッファ型のガス遮断器1を一例として挙げて、説明する。
【0015】
(遮断器本体2)
遮断器本体2は、ガス遮断器1の主体を構成する。遮断器本体2は、容器3と、一対の導体41,42と、電流遮断装置5とを備える。
【0016】
(容器3)
容器3は、ガス遮断器1の筐体である。容器3は、容器本体部31と、一対の管状部32と、各管状部32内に取り付けられたスペーサ33と、を備える。容器3の材質としては、特に制限はなく、例えば、金属、合成樹脂、碍子等が挙げられる。
【0017】
容器本体部31は、容器3の主体を構成する部分である。容器本体部31は中空状に形成されている。容器本体部31の形状としては、特に制限はなく、例えば、円筒状、角筒状、箱状等が挙げられる。本実施形態の容器本体部31は、水平面に沿って中心軸が延びる円筒状に形成されている。
【0018】
管状部32は、電流遮断装置5の一対の電極のうちの一方の電極(第一電極61)に電気的に接続された第一導体41と、他方の電極(第二電極62)に電気的に接続された第二導体42とが、内部に通される部分である。管状部32は、容器本体部31から容器本体部31の中心軸に交差する方向に突出している。管状部32の内部は容器本体部31の内部に通じている。
【0019】
スペーサ33は、管状部32内に各導体41,42を通した状態で、各導体41,42を支持する。スペーサ33は、電気絶縁性を有する材料で構成されている。スペーサ33によって、各導体41,42は、管状部32に接触することなく、管状部32の中心軸に沿って支持されている。
【0020】
容器3の内部には、電流遮断装置5を収容する収容空間S1が形成されている。収容空間S1は、気密に保たれており、絶縁ガスが充填される。収容空間S1は、本実施形態では、容器本体部31、管状部32の基部、及びスペーサ33で仕切られた空間である。ただし、本発明では、収容空間S1は、気密に保たれていれば、スペーサ33によって仕切られていなくてもよいし、容器本体部31内において当該容器本体部31よりも小さい空間であってもよい。
【0021】
本明細書でいう「気密」とは、厳密な意味での「気密」を意味するのではなく、内部の圧力を一定の範囲内に保つ状態を意味する。「気密」には、例えば、経時的に見たときに、ガス圧が低下するような室も含まれる。例えば、1年経過時点の容器3内の圧力が、初期圧に対して80%以上であれば、「気密」の範疇である。
【0022】
絶縁ガスは、絶縁性及び消弧性を有するガスであり、不活性ガスが用いられる。絶縁ガスとしては、例えば、SFガス(六フッ化硫黄ガス)、COガス(二酸化炭素ガス)、CFI(ヨウ化トリフルオロメタン)とN(窒素)との混合ガス、CFIとCOとの混合ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が用いられる。
【0023】
(電流遮断装置5)
電流遮断装置5は、第一導体41と第二導体42と間の電路において、開路と閉路とを切り替える装置である。電流遮断装置5は、図1に示すように、電流遮断部6と、消弧部7と、を備える。電流遮断装置5は、容器本体部31内において、一対の絶縁支持体51によって支持されている。
【0024】
(電流遮断部6)
電流遮断部6は、第一電極61と、第二電極62と、駆動装置63と、を備える。電流遮断部6は、第二電極62を、第一電極61に対して接触する位置(接触位置)と、第一電極61に対して離れる位置(離間位置)とに切り替えることができる。
【0025】
第一電極61は、第一導体41に電気的に接続された接触子である。第一電極61は、後述の排気筒74の中心軸に沿って延びており、当該排気筒74及び絶縁支持体51を介して容器3に支持されている。本実施形態に係る第一電極61は、容器3に対して固定されており、すなわち、固定接触子である。
【0026】
第二電極62は、第二導体42に電気的に接続された接触子である。第二電極62は、後述のシリンダ71の中心軸に沿って延びており、当該シリンダ71に対して固定されている。したがって、第二電極62は、図2に示すように、シリンダ71が中心軸に沿って移動すると、シリンダ71と一緒に当該中心軸に沿って移動する。本実施形態に係る第二電極62は、第一電極61に対して可動な可動接触子である。
【0027】
シリンダ71の中心軸は、容器3の中心軸に沿っている。したがって、第二電極62は、容器3の中心軸に沿って、接触位置(図1)と離間位置(図2)との間で往復移動し得る。接触位置にある第二電極62は、図1に示すように、第一電極61と接触し、これによって、第一導体41と第二導体42との間の電路が閉路になる。一方、離間位置にある第二電極62は、図2に示すように、第一電極61と離れ、これによって、第一導体41と第二導体42との間の電路が開路になる。第二電極62は、駆動装置63及び絶縁支持体51を介して、容器3に対して移動可能に支持されている。
【0028】
駆動装置63は、第二電極62及びシリンダ71を駆動する。第二電極62及びシリンダ71は、駆動装置63の作動に応じて、シリンダ71の中心軸に沿って、接触位置と離間位置との間で移動する。駆動装置63としては、特に制限はなく、例えば、電動シリンダ、空圧シリンダ、油圧シリンダ、モータ、リニアアクチュエータ、ソレノイド等が挙げられる。
【0029】
(消弧部7)
消弧部7は、第二電極62が離間位置に切り替えられたときに、第一電極61と第二電極62との間に生じるアーク放電A1(電弧)を消弧する。消弧部7は、シリンダ71と、ピストン72と、ノズル73と、排気筒74と、を備える。
【0030】
シリンダ71は、円筒状に形成されている。シリンダ71の内部には、上述した通り、中心軸に沿って第二電極62が配置されている。シリンダ71の中心軸方向の端部のうちの第一電極61側の端部には、ノズル73が取り付けられている。また、シリンダ71と第二電極62との間には、ピストン72が、シリンダ71に対して移動可能に取り付けられている。ピストン72は、シリンダ71に対して移動可能に取り付けられるが、本実施形態では、容器3に対して動かないように取り付けられている。
【0031】
ノズル73は、シリンダ71内にある絶縁ガスを吐出する部分である。ノズル73は筒状に形成されており、図1に示すように、第二電極62が接触位置に切り替えられると、第一電極61がノズル73の内部に通される。一方、第二電極62が離間位置に切り替えられると、図2に示すように、第一電極61がノズル73の内部から外れ、第一電極61と第二電極62との間に生じたアーク放電A1がノズル73の内部に生成される。
【0032】
ここで、シリンダ71の内周面、ピストン72及び第二電極62で囲まれた室を、「パッファ室75」という。パッファ室75とノズル73とは、流路76を介して通じている。シリンダ71及び第二電極62が中心軸に沿って、接触位置に向かって移動すると、図1に示すように、パッファ室75の圧力が下降し、パッファ室75内に絶縁ガスが充填される。
【0033】
一方、シリンダ71及び第二電極62が中心軸に沿って、離間位置に向かって移動すると、図2に示すように、第一電極61と第二電極62との間にアーク放電A1が発生する。すると、アーク放電A1によって絶縁ガスが加熱され、加熱されて膨張した絶縁ガスは、流路76を通ってパッファ室75に流れ込み、パッファ室75の内部が陽圧となる。その後、図2に示すように、ピストン72によって、パッファ室75の絶縁ガスが加圧され、加圧された絶縁ガスは、パッファ室75から出て流路76を通り、ノズル73から吐出される。
【0034】
ノズル73を通る絶縁ガスは、第一電極61と第二電極62との間に生じたアーク放電A1に吹き付けられる。これによって、第一電極61と第二電極62との間に生じたアーク放電A1を消弧することができる。
【0035】
ノズル73から出た絶縁ガスは、排気筒74内に流れる。排気筒74はノズル73の吐出方向に対向しており、排気筒74の内径は、ノズル73の開口面よりも大きく形成されている。このため、ノズル73から出た絶縁ガスの全部は、排気筒74内を流れる。排気筒74に流れた絶縁ガスは、排気筒74の中心軸方向の端部のうちの第二電極62とは反対側の端部の開口面741から排気筒74の外に出る。排気筒74の外に出た絶縁ガスは、図2に示すように、容器本体部31の中心軸方向の端部の内側面に対して、直接的に衝突し、その後、容器3内を対流する。
【0036】
(吸着部8)
吸着部8は、消弧の際に生じる分解ガスと絶縁ガス中に含まれる微量の水分との少なくとも一方(以下、単に「ガス」という)を取り込み、吸着する。吸着部8によってガスを吸着することで、絶縁ガスの絶縁性及び消弧性の低下を抑制することができる。
【0037】
すなわち、絶縁ガスは、アーク放電A1に吹き付けられた際、アーク放電A1の熱によって、一部の絶縁ガスがプラズマ化して、絶縁ガスの分子が解離及び再結合し、分解ガスを発生させることがある。例えば、絶縁ガスがCFIを含むガスの場合、ヨウ素、フッ化水素及びヨウ化水素等を含む分解ガスが生成される。また、例えば、絶縁ガスがCOを含む場合、CO分子の解離により生じる酸素イオンが金属と反応して、COガスを含む分解ガスが生成される。これら分解ガスや、絶縁ガスに含まれる水分は、絶縁ガスの絶縁性及び消弧性の低下を引き起こす可能性がある。
【0038】
吸着部8は、図3に示すように、吸着剤K1と、吸着剤K1を収容した吸着剤ケース81と、通気路82を形成する通気材と、を備える。吸着剤ケース81に収容された吸着剤K1は、ガスと接触することで当該ガスを吸着するため、一般に、吸着剤ケース81の内面近傍の吸着剤K1(最外層の吸着剤K1)の吸着性能のみが低下しやすい。これに対し、本実施形態に係る吸着剤ケース81では、通気材によって、最外層の吸着剤K1よりも内側にある吸着剤K1に向かってガスを導くことができる。これにより、吸着剤ケース81の最外層の吸着剤K1のみならず、これよりも内側の吸着剤K1に接触させることができるため、吸着剤ケース81の全体の吸着剤K1に対して、ガスを接触させることができる。この結果、吸着剤K1の急激な吸着能力の低下を抑制し、安定した吸着性能を実現することができる。
【0039】
(吸着剤K1)
吸着剤K1は、ガスを吸着可能に構成される。吸着剤K1としては、ガスを吸着できれば特に制限はなく、例えば、ゼオライト、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、活性炭、ゼオラム、イオン交換樹脂、チタニア、マグネシア、ジルコニア、グラファイトの一種又は複数種を組み合わせて使用することができる。なお、ここでいう「吸着剤K1」は吸着剤K1粒子の集合体を意味する。吸着剤K1は、例えば、固形状、粒状、粉末状等であってよく、特に制限はない。
【0040】
(吸着剤ケース81)
吸着剤ケース81は、吸着剤K1が充填されるケースである。吸着剤ケース81は、吸着剤K1を収容することができれば、形状には特に制限はなく、例えば、箱状、円筒状、角筒状、球状、角錐台状等が挙げられる。また、吸着剤ケース81の材質としては、特に制限はなく、例えば、金属、合成樹脂、布、不織布、織布等が挙げられる。吸着剤ケース81は、容器3に対して取外し可能に取り付けられており、吸着剤K1を交換する際に、吸着剤ケース81ごと交換することもできるし、吸着剤ケース81を容器3から取り外した上で、吸着剤K1を入れ替え、再度、容器3に取り付けることもできる。
【0041】
本実施形態に係る吸着剤ケース81は、図3に示すように、底壁811と、複数の周壁812と、天壁813と、を備える。底壁811、周壁812及び天壁813は、メッシュ材で構成されている。本実施形態では、メッシュ材の各網目が、ガスを吸着剤ケース81の内部に取り込む取込み口87となっている。
【0042】
本明細書でいう「メッシュ材」は、多数の貫通孔を有する素材を意味する。メッシュ材としては、例えば、網材、パンチングメタル、エキスパンドメタル、多孔質状の板材、ハニカム板等が挙げられる。
【0043】
吸着剤ケース81の網目は、対向間の寸法L1が吸着剤K1の平均粒子径よりも小さいことが好ましい。ここでいう「対向間の寸法L1」とは、網目の開口縁間の寸法を意味し、網目が矩形状の場合は、向かい合う各辺間の寸法であり、網目が円形の場合は、網目の直径である。これによって、吸着剤ケース81から吸着剤K1が出るのを抑制することができる。ここでいう「平均粒子径」は、JIS Z 8825に準拠したレーザー回折法・散乱法により測定された結果の平均値とすることができる。
【0044】
(通気材)
通気材は、取込み口87から最外層の吸着剤K1よりも内側にある吸着剤K1に向かってガスを導く。通気材は、通気路82を形成する。通気路82は、吸着剤ケース81内におけるガスの道筋である。本実施形態では、吸着剤ケース81の内部において、幾つもの通気路82が形成されるが、そのうちの1つとして、吸着剤ケース81の一面に形成された取込み口87と、他の面に形成された取込み口87とをつなぐ通気路82が形成されている。
【0045】
通気材としては、ガスを、最外層の吸着剤K1よりも内側に導くことができれば特に制限はないが、例えば、透過性シート、細管、チューブ等が挙げられる。ただし、通気材としては、ガスの一部を、通気路82の外に通過させることができることが好ましく、この点で、透過性シートが用いられる。以下では、通気材の一例として、透過性シート821(ガス透過性シート)を挙げて説明する。
【0046】
透過性シート821は、その厚み内をガスが透過可能な材料で構成されている。透過性シート821の材料としては、例えば、スポンジ、綿、不織布、織布等が挙げられる。本実施形態に係る吸着部8では、吸着剤ケース81内を透過性シート821で仕切るようにして、透過性シート821が配置されている。複数の透過性シート821は、一定の間隔をおいて配置されている。隣り合う透過性シート821の間の距離は、一又は複数の吸着剤K1が配置される長さである。
【0047】
本明細書でいう「シート」は、その物体の厚さが、平面視において取り得る最大長さに対して、10%以下である形状を意味する。平面視における形状が矩形状である場合、「平面視において取り得る最大長さ」は、対角線の長さを意味する。また、平面視における形状が円形状である場合、「平面視において取り得る最大長さ」は、直径の長さを意味する。本明細書では、膜状、箔状、フィルム状等も、「シート状」に含まれる。
【0048】
各透過性シート821の厚さは、特に制限はないが、各取込み口87の大きさ(吸着剤ケース81の網目の対向間の寸法L1)以上であることが好ましい。透過性シート821の厚さとしては、0.1mm以上5.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは、1mm以上3mm以下である。
【0049】
本実施形態では、天壁813における複数の取込み口87と、底壁811における複数の取込み口87とを、1つの透過性シート821でつなぐように構成されている。ただし、本発明では、天壁813における1つの取込み口87と、底壁811における1つの取込み口87とを、1つの透過性シート821でつないでもよい。吸着剤ケース81と透過性シート821との接続は、例えば、接着、溶着、挟み込み、縫製等により実現される。
【0050】
容器3内においてガスが発生すると、絶縁ガスの気流と共に容器3内を移動し、吸着部8近傍に至る。ガスは、吸着剤ケース81の取込み口87から吸着剤ケース81内に入り、透過性シート821内を移動する。透過性シート821内を移動するガスの一部は、通気路82に沿って移動しながら、通気路82から外れ、吸着剤K1に接触する。ガスの他の一部は、通気路82に沿って移動し、他の箇所で通気路82から外れ、吸着剤K1に接触する。これにより、ガスを、吸着剤ケース81の最外層の吸着剤K1のみならず、これよりも内側の吸着剤K1に接触させることができ、吸着剤ケース81の全体の吸着剤K1に対して、ガスを接触させることができる。
【0051】
なお、図3において、矢印で示す通気路82は1つの通気路82を示したに過ぎず、実際は多数の通気路82が形成されている。
【0052】
吸着部8は、容器3の収容空間S1内であれば、どの位置に配置されてもガスの吸着効果があるが、アーク放電A1により加熱された絶縁ガスが直接的に吹き付けられる領域の外側の領域に配置されることが好ましい。一般に、吸着剤K1は、高温になるほど吸着性能が低下し、一旦、保持したガスであっても、離脱する性質があるからである。
【0053】
図4に示すように、吸着部8は、一点鎖線(太線)で示す領域R1(これを「配置領域R1」という)に配置されることが好ましい。配置領域R1は、ノズル73の吐出方向において、ノズル73の開口面731を投影した領域R2の外側の領域である。より好ましくは、配置領域R1は、ノズル73の吐出方向において、排気筒74の開口面を投影した領域R3の外側の領域である。本実施形態に係る吸着部8は、領域R3の外側の領域に配置されている。
【0054】
これにより、吸着剤K1によって一旦吸着されたガスが、離脱するのを抑制することができる。ここでいう「ノズル73の吐出方向」とは、ノズル73の吐出口の開口面731に直交する方向を意味する。なお、吸着部8が、配置領域R1に配置されることで、一旦保持したガスが離脱することを抑制する効果は、通気材の有無にかかわらず得ることができる。
【0055】
<変形例>
上記実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0056】
(変形例1)
上記実施形態に係る通気材は、透過性シート821であったが、例えば、複数の多孔性粒子822であってもよい。図5に示すように、通気路82は、多数の多孔性粒子822が連なることで形成されている。
【0057】
多孔性粒子822は、ガスが透過可能な複数の穴を有する。各多孔性粒子822において複数の穴はつながっている。多孔性粒子822の穴径は、吸着剤K1の粒子がもつ穴径よりも大きく形成されている。多孔性粒子822の平均穴径は、0.1mm以上であることが好ましく、より好ましくは1mm以上であり、更に好ましくは3mm以上である。一方、多孔性粒子822の平均穴径の上限値は、特に制限はないが、例えば、10mm以下である。
【0058】
多孔性粒子822としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタンフォーム、ゴムスポンジ、オレフィン系発泡体等が挙げられる。
【0059】
多孔性粒子822の体積分率は、30%以上60%以下であることが好ましく、より好ましくは、35%以上55%以下であり、更に好ましくは40%以上50%以下である。多孔性粒子822の体積分率が、30%以上60%以下であると、吸着剤ケース81内に効果的にガスを取り込むことができる。
【0060】
吸着剤ケース81の取込み口87から流入したガスは、図5に示すように、通気路82に沿って、多孔性粒子822内を移動する。多孔性粒子822内を移動するガスの一部は、通気路82に沿って移動する際に、隣り合う多孔性粒子822の間から外れ、吸着剤K1に接触する。ガスの他の一部は、通気路82に沿って移動し、他の箇所における隣り合う多孔性粒子822の間から外れ、他の吸着剤K1に接触する。これにより、吸着剤ケース81の最外層の吸着剤K1のみならず、吸着剤ケース81の内側の吸着剤K1に接触させることができ、吸着剤ケース81の全体の吸着剤K1に対して、ガスを接触させることができる。
【0061】
なお、図5において、矢印で示す通気路82は一例を示したに過ぎず、実際は多数の通気路82が形成されている。また、多数の通気路82のうちの1つの通気路82として、吸着剤ケース81の一面に含まれる取込み口87と、同じ面に含まれる取込み口87とをつなぐ通気路82が含まれてもよい。
【0062】
(その他の変形例)
以下、実施形態の変形例を列挙する。
【0063】
上記実施形態に係る吸着剤ケース81は、取込み口87が、メッシュ材の各網目で構成されたが、本発明では、例えば、吸着剤ケース81を金属板で構成し、一面に1つの取込み口87を設け、他の面に1つの取込み口87を設けただけでもよい。
【0064】
上記実施形態に係る透過性シート821は、一端が、吸着剤ケース81の天壁813に接続され、他端が底壁811に接続されたが、例えば、一端が、周壁812に接続され、他端が、反対側の周壁812に接続されてもよい。また、一端が、周壁812に接続され、他端が、天壁813に接続されてもよい。
【0065】
本発明では、吸着部8において通気路82を形成するに当たり、透過性シート821と多孔性粒子822と、その他の通気材とを併用してもよい。
【0066】
上記実施形態では、通気材は、吸着剤ケース81の一面から他の面までつながっていたが、例えば、吸着剤ケース81の一面から吸着剤ケース81の中央部まで延びるに留まり、他の面につながっていなくてもよい。
【0067】
上記実施形態に係るガス遮断器1は、第一電極61が固定接触子、第二電極62が可動接触子であったが、第一電極61と第二電極62とは互いに接触と離間を切り替えることができれば、第一電極61と第二電極62は共に可動電極であってもよい。
【0068】
上記実施形態に係るガス遮断器1では、吸着剤K1は、分解ガスと水分との両方を吸着するように構成されたが、本発明では、吸着剤K1は、水分のみを吸着するように構成されてもよい。
【0069】
吸着剤K1は、使用の結果、新たに生じるガスに限らず、製造時から存在している容器3内のガスを吸着するものであってよい。
【0070】
容器3内において、吸着部8に対し、ガスを送り込むファンが設けられてもよい。
【0071】
上記実施形態において、図3では、隣り合う透過性シート821の間に、吸着剤K1の粒子が一列に並んで介在するように記載されたが、本発明では、隣り合う透過性シート821の間には、吸着剤K1の粒子は、一列に並んでもよいし複数列に並んでいてもよい。また、隣り合う透過性シート821の間では、吸着剤K1の粒子は、真っ直ぐに並んでいなくてもよい。
【0072】
上記実施形態では、排気筒74の開口面741は、ノズル73の開口面731よりも大きく形成されたが、排気筒74の開口面741は、開口端の一部に形成されていてもよく、必ずしもノズル73の開口面731よりも大きくなくてもよい。また、排気筒74の開口面741は、排気筒74の軸方向の端面になくてもよく、排気筒74の周面に形成されてもよい。
【0073】
本明細書にて、「略平行」、又は「略直交」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略平行」とは、実質的に「平行」であることを意味し、厳密に「平行」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0074】
また、本明細書において「端部」及び「端」などのように、「…部」の有無で区別した表現が用いられている。例えば、「端」は物体の末の部分を意味するが、「端部」は「端」を含む一定の範囲を持つ域を意味する。端を含む一定の範囲内にある点であれば、いずれも、「端部」であるとする。他の「…部」を伴った表現についても同様である。
【0075】
<まとめ>
以上説明したように、第1の態様に係る機器装置は、機器を収容する容器3と、容器3内に配置され、ガスを吸着可能な吸着部8と、を備える。吸着部8は、ガスを取込み可能な取込み口87を含む吸着剤ケース81と、吸着剤ケース81内に充填されガスを吸着可能な吸着剤K1と、取込み口87から吸着剤ケース81の内側にある吸着剤K1に向かってガスを導く少なくとも1つの通気材と、を有する。
【0076】
この態様によれば、吸着剤ケース81の内側にある吸着剤K1にまでガスを導くことができるため、吸着剤ケース81の内側にある吸着剤K1が、ガスを吸着することができる。吸着剤ケース81の最外層の吸着剤K1のみならず、吸着剤ケース81の内側の吸着剤K1に接触させることができるため、吸着剤ケース81の全体の吸着剤K1に対して、ガスを接触させることができる。この結果、吸着剤K1の急激な吸着能力の低下を抑制し、安定した吸着性能を実現することができる。
【0077】
第2の態様に係る機器装置では、第1の態様において、通気材は、吸着剤ケース81の一面に含まれる取込み口87と、一面とは別の他の面に含まれる取込み口87とをつなぐ通気路82を形成する。通気材は、ガスを、吸着剤ケース81内において通気路82の外に通過可能に構成されている。この態様によれば、通気材に隣接する吸着剤K1に対して、ガスを導くことができ、より広範囲の吸着剤K1に対してガスを接触させることができる。
【0078】
第3の態様に係る機器装置では、第1又は第2の態様において、通気材は、ガスが透過可能な透過性シート821である。この態様によれば、簡易な構成で通気路82を形成することができる。
【0079】
第4の態様に係る機器装置では、第1から第3のいずれか1つの態様において、通気材は、ガスが透過可能な複数の多孔性粒子822である。この態様によれば、吸着剤ケース81内において、吸着剤K1と一緒に、多孔性粒子822を混ぜるだけで通気路82を形成することができる。
【0080】
第5の態様に係る機器装置では、第1から第4のいずれか1つの態様において、機器は電力機器であり、容器3内には、絶縁ガスが充填されている。この態様によれば、絶縁ガスが充填された電力機器の容器3内において発生したガスを吸着することができる。
【0081】
第6の態様に係る機器装置では、第5の態様において、電力機器は、容器3内に配置された第一電極61と、容器3内に配置され、第一電極61に対して接触する接触位置と第一電極61に対して離れる離間位置とに切り替えられる第二電極62と、離間位置にある第二電極62と第一電極61との間に生じたアーク放電A1に対して絶縁ガスを吹き付けてアーク放電A1を消弧するノズル73と、を有する。吸着剤K1は、ガスとして、消弧の際に生じる分解ガスと水分との少なくとも一方を吸着可能である。この態様によれば、分解ガスと水分との少なくとも一方を効果的に吸着することができ、絶縁ガスの絶縁性及び消弧性の低下を抑制することができる。
【0082】
第7の態様に係る機器装置では、第6の態様において、吸着部8は、ノズル73の吐出方向において、ノズル73の開口面731を投影した領域の外側の領域に配置されている。この態様によれば、吸着剤ケース81に対して、高温になった絶縁ガスが吹き付けられるのを回避することができ、吸着剤K1によって一旦吸着されたガスが、離脱するのを抑制することができる。
【0083】
第8の態様に係る機器装置では、第6又は第7の態様において、ノズル73に対して吐出方向に対向するように配置された排気筒74を更に備え、吸着部8は、ノズル73の吐出方向において、排気筒74の開口面741を投影した領域の外側の領域に配置されている。この態様によれば、より一層、吸着剤K1によって一旦吸着されたガスが、離脱するのを抑制することができる。なお、第7及び第8の態様では、吸着部8は通気材を備えているが、通気材が無くても第7及び第8の態様で述べた効果を得ることができるため、この効果を得るためには通気材は無くてもよい。
【符号の説明】
【0084】
3 容器
61 第一電極
62 第二電極
73 ノズル
74 排気筒
8 吸着部
81 吸着剤ケース
82 通気路
821 透過性シート(通気材)
822 多孔性粒子(通気材)
87 取込み口
K1 吸着剤
図1
図2
図3
図4
図5