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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172138
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】筐体装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20231129BHJP
   H02J 50/70 20160101ALI20231129BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20231129BHJP
【FI】
E05B49/00 J
H02J50/70
H02J50/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083743
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小杉 正則
(72)【発明者】
【氏名】九鬼 篤史
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250BB08
2E250BB55
2E250DD06
2E250FF23
2E250FF25
2E250FF27
2E250FF36
2E250HH01
2E250JJ03
(57)【要約】
【課題】無線通信に基づいて被制御装置を遠隔制御する携帯通信装置が格納される筐体装置の動作安定性を高める。
【解決手段】筐体131は、被制御装置を遠隔制御する電子キー12が格納される空間を区画している。第一コイル122は、電子キー12搭載されている。第二コイル134は、筐体131内に配置されており、第一コイル122に無線給電を行なう。シールド部材138は、第一コイル122の軸心122aに沿う第一方向D1から見て少なくとも第一コイル122を覆うように筐体131内に配置された第一部分138aを有している。シールド部材138は、少なくとも前記無線給電に用いられる周波数帯における電波シールド性を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一コイルが搭載されており、かつ無線通信に基づいて被制御装置を遠隔制御する携帯通信装置が格納される筐体装置であって、
前記携帯通信装置が格納される空間を区画している筐体と、
前記筐体内に配置されており、前記第一コイルに無線給電を行なう第二コイルと、
前記第一コイルの軸心に沿う第一方向から見て少なくとも前記第一コイルを覆うように前記筐体内に配置された第一部分を有しており、少なくとも前記無線給電に用いられる周波数帯における電波シールド性を有しているシールド部材と、
を備えている、
筐体装置。
【請求項2】
前記シールド部材は、前記第一方向と反対の第二方向から見て少なくとも前記第一コイルを覆うように前記筐体内に配置された第二部分を有している、
請求項1に記載の筐体装置。
【請求項3】
前記シールド部材は、前記第一部分と前記第二部分を接続する第三部分を有している、
請求項2に記載の筐体装置。
【請求項4】
前記シールド部材は、導電性を有する材料により形成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の筐体装置。
【請求項5】
前記無線通信に用いられる第一アンテナが前記携帯通信装置に搭載されており、
前記シールド部材は、前記第一アンテナが受信する周波数帯の電波に対するシールド性を有している、
請求項1から3のいずれか一項に記載の筐体装置。
【請求項6】
前記筐体内に配置されており、前記第一アンテナと無線通信が可能である第二アンテナと、
前記筐体外に配置されるように構成されており、前記第二アンテナと有線通信が可能である第三アンテナと、
を備えている、
請求項5に記載の筐体装置。
【請求項7】
前記第二アンテナは、前記第二コイルの軸心と非平行な向きに延びる軸心を有するコイルを備えている、
請求項6に記載の筐体装置。
【請求項8】
前記第一コイルからの給電なしに外部機器との近接無線通信を可能にするトランスポンダが前記携帯通信装置に搭載されており、
前記シールド部材は、前記近接無線通信に使用される周波数帯の電波に対するシールド性を有している、
請求項1から3のいずれか一項に記載の筐体装置。
【請求項9】
第一アンテナが搭載されており、かつ当該第一アンテナを用いる無線通信に基づいて被制御装置を遠隔制御する携帯通信装置が格納される筐体装置であって、
前記携帯通信装置が格納される空間を区画している筐体と、
前記筐体内に配置されており、前記第一アンテナと無線通信が可能である第二アンテナと、
前記筐体外に配置されるように構成されており、前記第二アンテナと有線通信が可能である第三アンテナと、
を備えている、
筐体装置。
【請求項10】
前記筐体内に配置されており、前記携帯通信装置に搭載された第一コイルに無線給電を行なう第二コイルを備えており、
前記第二アンテナは、前記第二コイルの軸心と非平行な向きに延びる軸心を有するコイルを備えている、
請求項9に記載の筐体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信に基づいて被制御装置を遠隔制御する携帯通信装置を格納する筐体装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両のドアにより開閉される車室内に配置される筐体装置を開示している。筐体装置は、格納部、通信部、およびアクチュエータを備えている。格納部は、無線携帯通信装置の一例としての電子キーを格納する。電子キーは、特定の操作がなされることにより、無線通信を通じて当該車両に搭載された制御装置に被制御装置の一例としての施解錠装置の制御を行なわせる装置である。ユーザによる携帯が可能であるモバイル装置から通信部が施解錠指示を受信すると、アクチュエータは、電子キーに対して上記特定の操作を行なう。これにより、車室内に電子キーを残した状態で、例えば車室外からモバイル装置を通じて施解錠装置の動作を遠隔制御できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3418985号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような筐体装置の動作安定性を高めることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示により提供される態様例の一つは、第一コイルが搭載されており、かつ無線通信に基づいて被制御装置を遠隔制御する携帯通信装置が格納される筐体装置であって、
前記携帯通信装置が格納される空間を区画している筐体と、
前記筐体内に配置されており、前記第一コイルに無線給電を行なう第二コイルと、
前記第一コイルの軸心に沿う第一方向から見て少なくとも前記第一コイルを覆うように前記筐体内に配置された第一部分を有しており、少なくとも前記無線給電に用いられる周波数帯における電波シールド性を有しているシールド部材と、
を備えている。
【0006】
本態様例に係る構成によれば、第二コイルによる無線給電に使用される周波数帯の電波が筐体の外部から予期せず到来した場合、当該電波の第一コイルへの到達をシールド部材が抑制しうる。特に電磁誘導の効率が最も高まる第一コイルの軸心に沿う方向から見て第一コイルが覆われるようにシールド部材の第一部分が配置されているので、上記のシールド効果を高めることができる。これにより、携帯通信装置が意に反して起動される事態の発生が抑制されるので、携帯通信装置が格納される筐体装置の動作安定性を高めることができる。
【0007】
本開示により提供される態様例の一つは、第一アンテナが搭載されており、かつ当該第一アンテナを用いる無線通信に基づいて被制御装置を遠隔制御する携帯通信装置が格納される筐体装置であって、
前記携帯通信装置が格納される空間を区画している筐体と、
前記筐体内に配置されており、前記第一アンテナと無線通信が可能である第二アンテナと、
前記筐体外に配置されるように構成されており、前記第二アンテナと有線通信が可能である第三アンテナと、
を備えている。
【0008】
本態様例に係る構成によれば、筐体外で第三アンテナにより受信された信号が有線通信を通じて筐体内に配置された第二アンテナに導かれ、第一アンテナとの無線通信に供させることができる。これにより、筐体装置の外部から無線送信された信号を携帯通信装置の第一アンテナに受信させるために筐体装置に課される配置上の制約を緩和できる。したがって、携帯通信装置が格納される筐体装置の動作安定性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る遠隔制御システムの構成を例示している。
図2図1の筐体装置の構成の一例を示している。
図3】一実施形態に係る無線給電システムの回路構成を例示している。
図4図2の筐体装置の動作の一例を示している。
図5図2の筐体装置の動作の一例を示している。
図6図2の筐体装置の動作の一例を示している。
図7図2の筐体装置の動作の一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例について以下詳細に説明する。図1は、一実施形態に係る遠隔制御システム10の構成を例示している。各図においては、例示される各要素を認識可能な大きさとするために、縮尺を適宜に変更している。
【0011】
遠隔制御システム10は、モバイル装置11を含んでいる。モバイル装置11は、ユーザ20により携帯可能な装置である。モバイル装置11の例としては、スマートフォンなどの汎用携帯情報端末が挙げられる。
【0012】
遠隔制御システム10は、電子キー12を含んでいる。電子キー12もまた、ユーザ20による携帯が可能な装置である。電子キー12は、第一無線通信に基づいて車両30に搭載された制御装置31に施解錠装置32の動作制御を行なわせることが可能な無線通信装置である。施解錠装置32は、車両30の車室33を開閉するドア34を施解錠する装置である。
【0013】
車両30は、移動体の一例である。施解錠装置32は、被制御装置の一例である。ドア34は、開閉体の一例である。車室33は、開閉体により開閉される空間の一例である。
【0014】
第一無線通信は、第一周波数帯を用いる第一信号S1と第二周波数帯を用いる第二信号S2の送受信を含んでいる。第一周波数帯と第二周波数帯は相違している。第一周波数帯の例としては、長波(LF)帯が挙げられる。第二周波数帯の例としては、極超短波(UHF)帯が挙げられる。換言すると、電子キー12は、施解錠装置32の制御に必要な情報を出力する。
【0015】
具体的には、車両30における適宜の箇所に配置された通信装置を通じて第一信号S1が送信される。第一信号S1の送信は、連続的になされてもよいし、断続的になされてもよい。
【0016】
電子キー12は、第一信号S1の受信と第二信号S2の送信が可能なアンテナを含む通信装置120を備えている(図2参照)。当該アンテナは、第一アンテナの一例である。通信装置120は、第一信号S1を受信すると第二信号S2を送信するように構成されている。第二信号S2は、電子キー12の認証に必要な認証情報を含むように構成されている。認証情報は、電子キー12とユーザ20の少なくとも一方を特定可能な情報である。
【0017】
制御装置31は、車両30における適宜の箇所に配置された通信装置を通じて第二信号S2を受信すると、認証処理を実行するように構成されている。具体的には、制御装置31は、第二信号S2に含まれる認証情報を、不図示の記憶装置に予め格納されている電子キー12の認証情報と照合するように構成されている。両情報の一致度が閾値を上回る場合、制御装置31は、電子キー12の認証が成立したと判断する。
【0018】
制御装置31は、電子キー12の認証が成立したと判断されると、施解錠装置32にドア34の施解錠を許可する制御信号CSを出力するように構成されている。この状態でユーザ20が例えばドアハンドルに設けられたタッチセンサに触れると、施解錠装置32はドア34を施解錠する。
【0019】
すなわち、電子キー12を携帯したユーザ20が第一信号S1を受信可能な領域に進入すると、第一無線通信を通じて電子キー12の認証がなされる。認証が成立すると、ユーザ20は、キーをキーシリンダに挿入して回すといった動作を行なうことなく、ドア34を施解錠できる。
【0020】
遠隔制御システム10は、筐体装置13を含んでいる。筐体装置13は、車両30の車室33内における適宜の場所に設置されるように構成されている。当該場所には、車室33内に設置されたグローブボックスやアクセサリボックスなどの収容空間が含まれうる。筐体装置13は、電子キー12を格納できるように構成されている。すなわち、電子キー12は、車室33内に配置されうる。
【0021】
図2に例示されるように、筐体装置13は、筐体131を備えている。筐体131は、少なくとも第二信号S2が透過可能な材料により形成されている。筐体131は、電子キー12が格納される格納部131aを有している。
【0022】
筐体装置13は、アクチュエータ132を備えている。アクチュエータ132は、格納部131aに格納された電子キー12の可動部121を操作可能に構成されている。電子キー12の通信装置120は、可動部121に対して所定の操作がなされると、第一信号S1の受信状態に依らず第二信号S2を送信するように構成されている。可動部121は、ボタンやレバーなどにより実現されうる。アクチュエータ132は、ソレノイド、カム機構、ラックピニオン機構などにより実現されうる。電子キー12に第二信号S2を送信させるための可動部121の操作の例としては、少なくとも一回の押下操作などが挙げられる。
【0023】
筐体装置13は、通信部133を備えている。通信部133は、モバイル装置11と第二無線通信を行なうためのアンテナを備えている。本例においては、第二無線通信は、短距離無線通信である。
【0024】
本明細書において用いられる「短距離無線通信」という語は、標準規格であるIEEE802.15またはIEEE802.11に準拠して行なわれる無線通信を意味する。そのような無線通信を実行可能な技術としては、Bluetooth(登録商標)、Bluetooth Low Energy(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)などが挙げられる。本明細書における「短距離無線通信」は、読取装置から送信される電波から微小な電力を得てモバイル装置が情報の送信を行なう非接触通信技術を用いる「近接無線通信」とは区別される。近接無線通信を実行可能な技術としては、RF-IDやNFCなどが挙げられる。
【0025】
電子キー12は、第一コイル122を搭載している。第一コイル122は、軸心122aを有する空芯コイルである。第一コイル122は、電池に代えて電子キー12の筐体内に収容されうる。
【0026】
本例に係る筐体装置13は、第二コイル134を備えている。第二コイル134は、軸心134aを有する空芯コイルである。第二コイル134は、格納部131aに格納された電子キー12の第一コイル122を包囲するように配置されている。
【0027】
本明細書で用いられる「第二コイル134が第一コイル122を包囲する」という表現は、第二コイル134の軸心134aに直交する向きから見て第一コイル122と第二コイル134の少なくとも一部が重なっている状態を意味している。
【0028】
本例に係る筐体装置13は、電源135を備えている。電源135は、交流電源である。電源135の動作周波数は、上記の第一信号S1の周波数および第二信号S2の周波数と異なるように、かつ第一信号S1の周波数および第二信号S2の周波数の各々に影響を与えないように定められる。例えば、第一信号S1の周波数および第二信号S2の周波数の各々の逓倍である周波数は使用されない。
【0029】
具体的には、図3に例示されるように、電源135は、第二コイル134およびコンデンサ136とともに一次側の無線給電回路を形成している。第二コイル134とコンデンサ136は、LC直列共振回路を形成している。当該無線給電回路は、給電制御装置の一例である。
【0030】
他方、電子キー12においては、第一コイル122がコンデンサ123、ダイオード124、およびコンデンサ125とともに二次側の無線給電回路を形成している。第一コイル122とコンデンサ123は、共振ループ回路を形成している。ダイオード124は半端整流を行なうために設けられている。コンデンサ125は、平滑化を行なうために設けられている。
【0031】
筐体装置13に電子キー12が格納された状態で車両30のドア34の解錠を希望するユーザ20は、モバイル装置11に対して所定の操作を入力する。操作入力は、スイッチまたはスイッチ画像の操作、音声指示入力、ジェスチャ入力などによりなされうる。図1に例示されるように、モバイル装置11は、当該所定の操作に基づいて解錠信号ULを送信するように構成されている。
【0032】
図2に例示されるように、筐体装置13は、制御部137を備えている。制御部137は、アクチュエータ132と電源135の動作を制御可能に構成されている。
【0033】
具体的には、図4に例示されるように、制御部137は、通信部133により解錠信号ULが受信されると、電源135に第二コイル134への給電を行なわせるように構成されている。これにより、第二コイル134から第一コイル122への無線給電がなされ、第一コイル122に起電力が発生する。
【0034】
図3に例示されるように、電子キー12には電圧レギュレータ126が搭載されている。電圧レギュレータ126は、無線給電により第一コイル122に生じた電力を所定の値に制限して負荷127へ供給するように構成されている。負荷127は、第二信号S2の送信に必要な要素を含んでいる。
【0035】
加えて、制御部137は、通信部133により解錠信号ULが受信されると、電子キー12に第二信号S2を送信させるための可動部121の操作をアクチュエータ132に行なわせるように構成されている。
【0036】
したがって、通信部133により解錠信号ULが受信されると、無線給電を通じて電子キー12が起動され、アクチュエータ132による可動部121の操作を通じて、図5に例示されるように電子キー12から第二信号S2が送信される。
【0037】
電子キー12から送信された第二信号S2は、車両30に搭載された制御装置31により受信される。前述の通り、制御装置31は、第二信号S2を受信すると、電子キー12の認証処理を行なう。認証処理が成立すると、制御装置31は、施解錠装置32にドア34を解錠させる制御信号CSを出力する。第二信号S2は、遠隔制御信号の一例である。
【0038】
よって、車室33内に設置された筐体装置13に電子キー12が格納された状態でユーザ20がモバイル装置11から解錠信号ULを送信すると、ドア34を解錠できる。換言すると、ユーザ20は、電子キー12を携帯せずとも、車室33の外からモバイル装置11に対する所定の操作を通じてドア34を解錠できる。
【0039】
図2に例示されるように、筐体装置13は、シールド部材138を備えている。シールド部材138は、筐体131内に配置されている。具体的には、シールド部材138は、第一部分138aを有している。第一部分138aは、第一コイル122の軸心122aに沿う第一方向D1から見て少なくとも第一コイル122を覆うように配置されている。
【0040】
シールド部材138は、第二コイル134による無線給電に用いられる周波数帯における電波シールド性を有している。電波シールド性は、シールド部材138を形成する材料の種別と厚みの組合せにより規定されうる。
【0041】
例えば、シールド部材138は、銅やアルミニウムなどの導電性を有する材料により形成されうる。この場合、厚み寸法を比較的小さく抑えることができる。したがって、筐体装置13の部品コストと寸法・重量増を抑制できる。
【0042】
別例として、シールド部材138は、鉄やフェライトなどの比較的高い透磁率を有する材料により形成されうる。当該材料は、導電性を有していてもよい。この場合、比較的高い電波シールド性を確保できる。
【0043】
上記のような構成によれば、第二コイル134による無線給電に使用される周波数帯の電波が筐体131の外部から予期せず到来した場合、当該電波の第一コイル122への到達をシールド部材138が抑制しうる。特に電磁誘導の効率が最も高まる第一コイル122の軸心122aに沿う方向から見て第一コイル122が覆われるようにシールド部材138の第一部分138aが配置されているので、上記のシールド効果を高めることができる。これにより、電子キー12が意に反して起動される事態の発生が抑制されるので、筐体装置13の動作安定性を高めることができる。
【0044】
本明細書で用いられる「軸心122aに沿う方向」という表現は、軸心122aと直交する向きよりも軸心122aに平行な向きに近い方向を含む意味である。
【0045】
シールド部材138は、第二部分138bを有している。第二部分138bは、第一コイル122の軸心122aに沿う第二方向D2から見て少なくとも第一コイル122を覆うように配置されている。第二方向D2は、第一方向D1と反対の方向である。
【0046】
このような構成によれば、第一コイル122に対する電磁誘導の効率が最も高まる二つの方向からシールド部材138が第一コイル122を覆うので、上記のシールド効果をさらに高めることができる。
【0047】
なお、第一部分138aと第二部分138bの一方は省略可能である。その場合、筐体131の側壁から第一コイル122までの距離がより近い第一部分138aが残されることが好ましい。
【0048】
シールド部材138は、第三部分138cを有している。第三部分138cは、第一部分138aと第二部分138bを接続している。
【0049】
このような構成によれば、相対的に透磁率が高い部分を磁気が通りやすくなるので、上記のシールド効果をさらに高めることができる。しかしながら、第三部分138cは省略されてもよい。
【0050】
図2に例示されるように、電子キー12は、トランスポンダ128を備えうる。トランスポンダ128は、第一コイル122からの電力供給を必要とすることなく、外部機器との近接無線通信を実行可能な素子である。近接無線通信には、例えばLF帯の電波が使用される。
【0051】
例えば車両30のイグニッションスイッチに設けられた通信装置に電子キー12をかざすことにより、電子キー12に予め格納されている認証情報が、トランスポンダ128から当該通信装置へ送信されうる。当該通信装置と接続されている制御装置31は、当該認証情報が適切であると判断すると、イグニッションスイッチによる車両30の駆動源の始動を許可する。
【0052】
この場合、シールド部材138は、トランスポンダ128による近接無線通信に使用される周波数帯の電波に対するシールド性を有するように構成されうる。
【0053】
上記のような構成によれば、トランスポンダ128による近接無線通信に使用される周波数帯の電波が筐体131の外部から予期せず到来した場合、当該電波の通信装置120への到達をシールド部材138が抑制しうる。これにより、近接無線通信が意に反して成立する事態の発生が抑制されるので、筐体装置13の動作安定性を高めることができる。
【0054】
筐体装置13は、内部アンテナ130を備えている。内部アンテナ130は、筐体131内に配置されている。内部アンテナ130は、通信装置120のアンテナと無線通信が可能なアンテナとして構成されている。内部アンテナ130は、第二アンテナの一例である。
【0055】
筐体装置13は、外部アンテナ139を備えている。外部アンテナ139は、筐体131外に配置される。外部アンテナ139は、ケーブル139aにより内部アンテナ1300と接続されている。すなわち、外部アンテナ139は、内部アンテナ130と有線通信が可能なアンテナとして構成されている。外部アンテナ139は、第三アンテナの一例である。
【0056】
外部アンテナ139は、第一信号S1を受信可能な車室33内の適宜の位置に配置される。図6に例示されるように、外部アンテナ139により受信された第一信号S1は、ケーブル139aを通じて内部アンテナ130へ送られ、内部アンテナ130から電子キー12の通信装置120へ無線送信される。結果として、図7に例示されるように、通信装置120から第二信号S2が送信される。
【0057】
このような構成によれば、筐体131外で外部アンテナ139により受信された第一信号S1が有線通信を通じて筐体131内に配置された内部アンテナ130に導かれ、電子キー12の通信装置120との無線通信に供させることができる。これにより、筐体装置13の外部から無線送信された第一信号S1を通信装置120に受信させるために筐体装置13に課される配置上の制約を緩和できる。したがって、電子キー12が格納される筐体装置13の動作安定性を高めることができる。
【0058】
特に、上記のようにシールド部材138が第一信号S1に使用される周波数帯の電波に対するシールド性を有する場合、筐体装置13が第一信号S1の受信感度に方向依存性が生じることが避けられない。しかしながら、上記のような構成によれば、筐体装置13の位置や姿勢によらず、外部アンテナ139により受信された第一信号S1を、内部アンテナ130を経由して電子キー12の通信装置120に受信させることができる。
【0059】
図2に例示されるように、内部アンテナ130は、軸心130aを有するコイルを備えている。軸心130aの延びる向きは、第二コイル134の軸心134aの延びる向きと非平行である。換言すると、通信装置120の無線通信時に内部アンテナ130のコイルに生じる磁束の向きが最も強くなる方向と、無線給電の実行時に第二コイル134に生じる磁束の向きが最も強くなる方向とが相違している。
【0060】
このような構成によれば、第二コイル134による無線給電に使用される周波数と第一信号S1の周波数とが近い場合における磁束同士の干渉を抑制できる。これにより、第二コイル134による無線給電に起因して内部アンテナ130と通信装置120の無線通信が阻害されたり、第二コイル134からの無線給電が内部アンテナ130のコイルに及ぶ結果として外部アンテナ139から意に反する電波が送信されたりする事態の発生を抑制できる。
【0061】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更・改良されうる。
【0062】
上記の実施形態においては、筐体装置13の第二コイル134が電子キー12の第一コイル122を包囲するように配置されている。しかしながら、第一コイル122への無線給電を遂行可能であれば、筐体131内における第二コイル134の配置は適宜に変更されうる。
【0063】
電子キー12に搭載される第一コイル122は、着脱可能とされうる。例えば、電子キー12の電池が収容されている空間に、当該電池に代えて図3に例示された二次側給電回路を備えた装置が装着されうる。この場合、電圧レギュレータ126により負荷127へ供給される電圧は、当該電池の電圧に対応する。
【0064】
上記の実施形態においては、制御装置31と電子キー12との間で行なわれる第一無線通信は、異なる周波数帯を使用している。しかしながら、第一無線通信は、同一の周波数帯を用いる適宜の無線通信規格に基づいて行なわれうる。
【0065】
上記の実施形態においては、モバイル装置11と筐体装置13の通信部133との間で行なわれる第二無線通信は、短距離無線通信である。この場合、車室33内に設置される筐体装置13の配置自由度を高めることができる。しかしながら、第二無線通信は、近接無線通信であってもよい。
【0066】
本開示に係る遠隔制御システム10は、他の移動体にも適用されうる。その他の移動体の例としては、鉄道、航空機、船舶などが挙げられる。当該移動体は、運転者を必要としなくてもよい。電子キー12により遠隔制御される被制御装置の種別は、移動体の仕様に応じて適宜に定められる。
【0067】
上記の実施形態においては、施解錠装置32により施解錠される開閉体として車室33を開閉するドア34が例示されている。ドア34の形態は、図1に例示されるようなヒンジドアであってもよいし、スライドドアであってもよい。車室33を開閉する開閉体は、サンルーフを含みうる。車両30に搭載される開閉体は、トランクやボンネットを含みうる。この場合、トランクやボンネットにより開閉される空間に筐体装置13が配置されてもよい。
【0068】
施解錠装置により施解錠される開閉体は、必ずしも移動体に搭載されることを要しない。住宅や施設における扉や窓もまた開閉体の一例になりうる。電子キー12により遠隔制御される被制御装置の種別は、当該住宅や施設の仕様に応じて適宜に定められる。
【0069】
以下に列挙する構成もまた、実施態様例として本開示の一部を構成する。

(1):第一コイルが搭載されており、かつ無線通信に基づいて被制御装置を遠隔制御する携帯通信装置が格納される筐体装置であって、
前記携帯通信装置が格納される空間を区画している筐体と、
前記筐体内に配置されており、前記第一コイルに無線給電を行なう第二コイルと、
前記第一コイルの軸心に沿う第一方向から見て少なくとも前記第一コイルを覆うように前記筐体内に配置された第一部分を有しており、少なくとも前記無線給電に用いられる周波数帯における電波シールド性を有しているシールド部材と、
を備えている、
筐体装置。

(2):前記シールド部材は、前記第一方向と反対の第二方向から見て少なくとも前記第一コイルを覆うように前記筐体内に配置された第二部分を有している、(1)に記載の筐体装置。

(3):前記シールド部材は、前記第一部分と前記第二部分を接続する第三部分を有している、(2)に記載の筐体装置。

(4):前記シールド部材は、導電性を有する材料により形成されている、(1)から(3)のいずれかに記載の筐体装置。

(5):前記無線通信に用いられる第一アンテナが前記携帯通信装置に搭載されており、 前記シールド部材は、前記第一アンテナが受信する周波数帯の電波に対するシールド性を有している、(1)から(4)のいずれかに記載の筐体装置。

(6):前記筐体内に配置されており、前記第一アンテナと無線通信が可能である第二アンテナと、前記筐体外に配置されるように構成されており、前記第二アンテナと有線通信が可能である第三アンテナと、を備えている、(5)に記載の筐体装置。

(7):前記第二アンテナは、前記第二コイルの軸心と非平行な向きに延びる軸心を有するコイルを備えている、(6)に記載の筐体装置。

(8)前記第一コイルからの給電なしに外部機器との近接無線通信を可能にするトランスポンダが前記携帯通信装置に搭載されており、前記シールド部材は、前記近接無線通信に使用される周波数帯の電波に対するシールド性を有している、(1)から(7)のいずれかに記載の筐体装置。

(9):第一アンテナが搭載されており、かつ当該第一アンテナを用いる無線通信に基づいて被制御装置を遠隔制御する携帯通信装置が格納される筐体装置であって、
前記携帯通信装置が格納される空間を区画している筐体と、
前記筐体内に配置されており、前記第一アンテナと無線通信が可能である第二アンテナと、
前記筐体外に配置されるように構成されており、前記第二アンテナと有線通信が可能である第三アンテナと、
を備えている、
筐体装置。

(10):前記筐体内に配置されており、前記携帯通信装置に搭載された第一コイルに無線給電を行なう第二コイルを備えており、前記第二アンテナは、前記第二コイルの軸心と非平行な向きに延びる軸心を有するコイルを備えている、(9)に記載の筐体装置。
【符号の説明】
【0070】
12:電子キー、120:通信装置、122:第一コイル、122a:軸心、128:トランスポンダ、13:筐体装置、130:内部アンテナ、130a:軸心、131:筐体、134:第二コイル、134a:軸心、138:シールド部材、138a:第一部分、138b:第二部分、138c:第三部分、139:外部アンテナ、D1:第一方向、D2:第二方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7