(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172144
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 37/14 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
H02K37/14 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083753
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】笠原 貴
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ディテントトルクを抑制することで、モータの駆動時における騒音および振動を抑制できるモータを提供する。
【解決手段】モータ10は、中心軸Jを中心として回転可能なロータ20と、ロータ20を径方向外側から囲むステータ50と、を備える。ロータ20は、シャフト22と、複数のマグネット23と、を有する。ステータ50は、複数の第1コイル部が直列に接続される第1相コイル群51と、複数の第2コイル部が直列に接続される第2相コイル群52と、を有する。第1相コイル群51と、第2相コイル群52とは、軸方向に並んで配置される。周方向に隣り合う第1コイル部同士の一部は、通電方向が同一方向になるように径方向に重なる。周方向に隣り合う第2コイル部同士の一部は、通電方向が同一方向になるように径方向に重なる。軸方向に見て、第2コイル部の周方向の中心は、周方向に隣り合う第1コイル部それぞれの周方向の中心の間に位置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心として回転可能なロータと、
前記ロータを径方向外側から囲むステータと、
を備え、
前記ロータは、前記中心軸に沿って延びるシャフトと、複数のマグネットと、を有し、
複数の前記マグネットは、互いに周方向に沿って配置され、且つ、前記ステータと径方向に対向し、
前記ステータは、複数の第1コイル部が直列に接続される第1相コイル群と、複数の第2コイル部が直列に接続される第2相コイル群と、を有し、
前記第1相コイル群と、前記第2相コイル群とは、互いに軸方向に並んで配置され、
複数の前記第1コイル部は、互いに周方向に沿って配置され、前記第1コイル部同士の一部は、通電方向が同一方向になるように径方向に重なり、
複数の前記第2コイル部は、互いに周方向に沿って配置され、前記第2コイル部同士の一部は、通電方向が同一方向になるように径方向に重なり、
複数の前記マグネットの個数、複数の前記第1コイル部の個数、および複数の前記第2コイル部の個数は、同じ個数であり、
軸方向に見て、前記第2コイル部の周方向の中心は、周方向に隣り合う前記第1コイル部それぞれの周方向の中心の間に位置する、モータ。
【請求項2】
前記ステータは、前記第1相コイル群および前記第2相コイル群を径方向外側から囲むケースを有し、
前記ケースは磁性を有し、
前記第1相コイル群および前記第2相コイル群は、それぞれ、前記ケースに固定される、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記ケースは、前記第1相コイル群が固定される第1ケース部と、前記第2相コイル群が固定される第2ケース部と、を含む、請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
軸方向と直交する方向に延びる接続基板を有し、
前記第1相コイル群は、前記第1コイル部から軸方向に引き出される第1コイル引出線を有し、
前記第2相コイル群は、前記第2コイル部から軸方向に引き出される第2コイル引出線を有し、
前記第1コイル引出線および前記第2コイル引出線は、それぞれ、前記接続基板に接続され、
軸方向において、前記接続基板は、前記第1相コイル群と前記第2相コイル群との間に配置される、請求項2に記載のモータ。
【請求項5】
前記ケースは、径方向に開口する基板挿通孔を有し、
前記接続基板は、前記基板挿通孔を径方向に通される延出部を有する、請求項4に記載のモータ。
【請求項6】
前記接続基板は、前記第1コイル引出線と接続される第1接続基板と、前記第2コイル引出線と接続される第2接続基板と、を有し、
前記第1接続基板と前記第2接続基板は、互いに軸方向に並んで配置される、請求項4に記載のモータ。
【請求項7】
複数の前記マグネットは、それぞれ、ネオジウムを焼結して成形した永久磁石であり、
前記ロータは、前記シャフトの外周面に固定されるロータコアを有し、
複数の前記マグネットは、それぞれ、前記ロータコアの径方向外側を向く面に固定される、請求項1から6のいずれか一項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータおよびステータを有するステッピングモータが知られている。例えば、特許文献1には、ステータが、複数の極歯を有し磁性材料により構成されるヨークと、ボビンに巻回されるコイルと、を有する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成のモータでは、ロータが回転する際に、ロータが有するマグネットからヨークが有する複数の極歯に入り込む磁束密度の変動が大きくなり易いため、ディテントトルクが大きくなり易く、モータの駆動時における騒音および振動が問題になっていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、ディテントトルクを抑制することで、モータの駆動時における騒音および振動を抑制できるモータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータの一つの態様は、中心軸を中心として回転可能なロータと、前記ロータを径方向外側から囲むステータと、を備える。前記ロータは、前記中心軸に沿って延びるシャフトと、複数のマグネットと、を有する。複数の前記マグネットは、互いに周方向に沿って配置され、且つ、前記ステータと径方向に対向する。前記ステータは、複数の第1コイル部が直列に接続される第1相コイル群と、複数の第2コイル部が直列に接続される第2相コイル群と、を有する。前記第1相コイル群と、前記第2相コイル群とは、互いに軸方向に並んで配置される。複数の前記第1コイル部は、互いに周方向に沿って配置され、周方向に隣り合う前記第1コイル部同士の一部は、通電方向が同一方向になるように径方向に重なる。複数の前記第2コイル部は、互いに周方向に沿って配置され、周方向に隣り合う前記第2コイル部同士の一部は、通電方向が同一方向になるように径方向に重なる。複数の前記マグネットの個数、複数の前記第1コイル部の個数、および複数の前記第2コイル部の個数は、同じ個数である。軸方向に見て、前記第2コイル部の周方向の中心は、周方向に隣り合う前記第1コイル部それぞれの周方向の中心の間に位置する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、ディテントトルクの発生を抑制することで、モータの駆動時における騒音および振動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態のモータを示す断面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のモータを示す断面図であって、
図1のII-II断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のモータを示す断面図であって、
図1のIII-III断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態の第1コイル部を示す図である。
【
図5】
図5は、一実施形態の第1相コイル群の結線関係を示す模式図である。
【
図6】
図6は、一実施形態のモータを示す断面図であって、
図1のVI-VI断面図である。
【
図7】
図7は、一実施形態の第2相コイル群の結線関係を示す模式図である。
【
図8A】
図8Aは、一実施形態の第1相コイル群に通電を行う際の磁気力を示す第1の断面図である。
【
図8B】
図8Bは、一実施形態の第2相コイル群に通電を行う際の磁気力を示す第1の断面図である。
【
図9A】
図9Aは、一実施形態の第1相コイル群に通電を行う際の磁気力を示す第2の断面図である。
【
図9B】
図9Bは、一実施形態の第2相コイル群に通電を行う際の磁気力を示す第2の断面図である。
【
図10】
図10は、一実施形態の第1相コイル群に通電を行う際の磁気力を示す第3の断面図である。
【
図11】
図11は、第1相コイル群および第2相コイル群の他の形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明において各図には、適宜、X軸を示す。X軸は、以下に説明する実施形態のモータの中心軸Jが延びる方向を示す。各図に示す中心軸Jは、仮想軸線である。以下の説明では、中心軸Jが延びる方向、つまりX軸と平行な方向を「軸方向」と呼ぶ。中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。軸方向のうちX軸の矢印が向く側(+X側)を「軸方向一方側」と呼ぶ。軸方向のうちX軸の矢印が向く側と逆側(-X側)を「軸方向他方側」と呼ぶ。
【0010】
周方向は、各図において矢印θで示される。周方向のうち矢印θが向く側(+θ側)を「周方向一方側」と呼ぶ。周方向のうち矢印θが向く側と逆側(-θ側)を「周方向他方側」と呼ぶ。周方向一方側は、軸方向一方側から見て中心軸J回りに時計回りに進む側である。周方向他方側は、軸方向一方側から見て中心軸J回りに反時計回りに進む側である。
【0011】
図1に示す本実施形態のモータ10は、2相のステッピングモータである。モータ10は、ロータ20と、ステータ50と、第1軸受91と、第2軸受92と、接続基板70と、を備える。
【0012】
ロータ20は、中心軸Jを中心として回転可能である。ロータ20は、ロータコア21と、シャフト22と、複数のマグネット23と、を有する。
【0013】
ロータコア21は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円筒状である。ロータコア21は、中心軸Jに沿って配置される。ロータコア21は、磁性を有する。ロータコア21は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成される積層鋼板である。ロータコア21は、貫通孔21aを有する。
【0014】
貫通孔21aは、ロータコア21を軸方向に貫通する孔である。軸方向に見て、貫通孔21aは、中心軸Jを中心とする略円形状である。
【0015】
シャフト22は、中心軸Jに沿って延びる略円柱状である。シャフト22は、貫通孔21aを軸方向に通される。シャフト22の外周面は、貫通孔21aの内周面と固定される。すなわち、ロータコア21はシャフト22の外周面に固定される。シャフト22の軸方向一方側の部分は、ロータコア21から軸方向一方側に突出し、第1軸受91に支持される。シャフト22の軸方向他方側の部分は、ロータコア21から軸方向他方側に突出し、第2軸受92に支持される。シャフト22は、第1軸受91および第2軸受92により、中心軸Jを中心として回転可能に支持される。
【0016】
複数のマグネット23は、それぞれ、軸方向に延びる板状である。各マグネット23の板面は、それぞれ、径方向を向いている。
図2に示すように、軸方向に見て、各マグネット23は、それぞれ、略長方形状である。各マグネット23は、それぞれ、ロータコア21の外周面に沿って等間隔をあけて配置される。すなわち、各マグネット23は、互いに周方向に沿って配置される。本実施形態において、マグネット23は、10個設けられる。すなわち、マグネット23の極数は10極である。各マグネット23は、それぞれ、ロータコア21の径方向外側を向く面に固定される。本実施形態において、各マグネット23は、それぞれ、ロータコア21の径方向外側を向く面に接着して固定される。各マグネット23は、それぞれ、ステータ50と径方向に対向する。本実施形態において、各マグネット23は、それぞれ、ネオジウムを焼結して成形した永久磁石である。よって、本実施形態によれば、各マグネット23の磁力を高めることができるため、後述のようにステータ50が磁気ヨークコアを有しない構成であっても、モータ10の出力トルクを高めることができる。
【0017】
周方向に隣り合うマグネット23の磁極は、互いに異極である。複数のマグネット23は、N極が径方向外側を向く第1マグネット23Nと、S極が径方向外側を向く第2マグネット23Sとを、それぞれ、5個ずつ有する。第1マグネット23Nと第2マグネット23Sとは、周方向に交互に並ぶ。
【0018】
図1に示すように、ステータ50は、ロータコア21および複数のマグネット23を内部に収容する。ステータ50は、ロータ20を径方向外側から囲む。ステータ50は、ケース11と、第1相コイル群51と、第2相コイル群52と、を有する。なお、本実施形態のステータ50は、磁気ヨークコアを有さない。
【0019】
ケース11は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる略円筒状である。ケース11は、ロータコア21、シャフト22のうち軸方向中央側の部分、複数のマグネット23、第1相コイル群51、第2相コイル群52、接続基板70の一部、第1軸受91、および第2軸受92を内部に収容する。ケース11は、少なくとも、第1相コイル群51および第2相コイル群52を径方向外側から囲む。本実施形態において、ケース11は、磁性材料によって構成され、磁性を有する。ケース11は、第1ケース部12と、第2ケース部13と、を含む。ケース11には、径方向に開口する基板挿通孔11aが設けられる。
【0020】
第1ケース部12は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる略円筒状である。第1ケース部12は、軸方向他方側に開口する。第1ケース部12は、第1周壁部12aと、第1側壁部12dと、第1軸受保持部12eと、第1突出部12gと、第1支持面12hと、を有する。
【0021】
第1周壁部12aは、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円筒状である。第1周壁部12aは、ロータ20の軸方向一方側の部分、および第1相コイル群51を径方向外側から囲む。第1周壁部12aの軸方向他方側の端部には、軸方向他方側に開口する第1開口部12bが設けられる。軸方向に見て、第1開口部12bは、中心軸Jを中心とする円形状である。
【0022】
第1側壁部12dは、中心軸Jを中心とする略円環板状である。第1側壁部12dの板面は、軸方向を向いている。第1側壁部12dの径方向外側の端部は、第1周壁部12aの軸方向一方側の端部と繋がる。第1側壁部12dは、ロータコア21よりも軸方向一方側に位置する。
【0023】
第1軸受保持部12eは、中心軸Jを中心とする略円筒状である。第1軸受保持部12eは、第1側壁部12dの径方向内側の端部から軸方向一方側に突出する。第1軸受保持部12eの内部には、シャフト22の軸方向一方側の部分が軸方向に通される。シャフト22の軸方向一方側の端部は、第1軸受保持部12eよりも軸方向一方側に突出する。第1軸受保持部12eの内周面には、第1軸受91が固定される。
【0024】
第1突出部12gは、第1周壁部12aの軸方向他方側を向く面のうち径方向外側の部分から軸方向他方側に突出する。第1突出部12gの径方向外側を向く面は、第1周壁部12aの径方向外側を向く面と軸方向に繋がる。
図2に示すように、軸方向に見て、第1突出部12gは、周方向の一部が切り欠かれた円弧状である。第1突出部12gの周方向一方側の端部と、第1突出部12gの周方向他方側の端部は、互いに離れて配置される。
【0025】
図1に示すように、第1支持面12hは、第1周壁部12aの軸方向他方側を向く面のうち第1突出部12gよりも径方向内側の部分である。軸方向に見て、第1支持面12hは、円弧状である。第1支持面12hの径方向内側の端部は、第1周壁部12aの内周面と繋がる。第1支持面12hの径方向外側の端部は、第1突出部12gの径方向内側を向く面の軸方向一方側の端部と繋がる。
【0026】
第2ケース部13は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる略円筒状である。第2ケース部13は、軸方向一方側に開口する。第2ケース部13は、第2周壁部13aと、第2側壁部13dと、第2軸受保持部13eと、第2突出部13gと、第2支持面13hと、を有する。
【0027】
第2周壁部13aは、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円筒状である。第2周壁部13aは、ロータ20の軸方向他方側の部分、および第2相コイル群52を径方向外側から囲む。第2周壁部13aの軸方向一方側の端部には、軸方向他方側に開口する第2開口部13bが設けられる。軸方向に見て、第2開口部13bは、中心軸Jを中心とする円形状である。第1ケース部12の内部と第2ケース部13の内部は、第1開口部12bおよび第2開口部13bを介して互いに繋がる。
【0028】
第2側壁部13dは、中心軸Jを中心とする略円環板状である。第2側壁部13dの板面は、軸方向を向いている。第2側壁部13dの径方向外側の端部は、第2周壁部13aの軸方向他方側の端部と繋がる。第2側壁部13dは、ロータコア21よりも軸方向他方側に位置する。
【0029】
第2軸受保持部13eは、中心軸Jを中心とする略円筒状である。第2軸受保持部13eは、第2側壁部13dの径方向内側の端部から軸方向他方側に突出する。第2軸受保持部13eの内部には、シャフト22の軸方向他方側の部分が通される。第2軸受保持部13eの内周面には、第2軸受92が固定される。
【0030】
第2突出部13gは、第2周壁部13aの軸方向一方側を向く面のうち径方向外側の部分から軸方向一方側に突出する。第2突出部13gの径方向外側を向く面は、第2周壁部13aの径方向外側を向く面と軸方向に繋がる。図示は省略するが、軸方向に見て、第2突出部13gの形状は、第1突出部12gの形状と同様の形状である。第2突出部13gの軸方向一方側を向く面は、第1突出部12gの軸方向他方側を向く面と固定される。これにより、第1ケース部12と第2ケース部13とが、互いに固定される。
【0031】
第2支持面13hは、第2周壁部13aの軸方向一方側を向く面のうち第2突出部13gよりも径方向内側の部分である。第2支持面13hは、軸方向一方側を向いている。軸方向に見て、第2支持面13hは円弧状である。第2支持面13hの径方向内側の端部は、第2周壁部13aの内周面と繋がる。第2支持面13hの径方向外側の端部は、第2突出部13gの径方向内側を向く面の軸方向他方側の端部と繋がる。
【0032】
図1に示すように、基板挿通孔11aは、径方向に開口する孔である。図示は省略するが、径方向に見て、基板挿通孔11aは略長方形状である。上述のように、軸方向に見て、第1突出部12gおよび第2突出部13gは、周方向の一部が切り欠かれた円弧状である。第1突出部12g、および第2突出部13gの切り欠かれた部分同士は、軸方向に見て互いに重なり、基板挿通孔11aを構成する。
図1に示すように、基板挿通孔11aの内側面のうち軸方向他方側を向く面は、第1周壁部12aの軸方向他方側を向く面の一部である。基板挿通孔11aの内側面のうち軸方向一方側を向く面は、第2周壁部13aの軸方向一方側を向く面の一部である。
【0033】
第1相コイル群51は、ロータ20の軸方向一方側の部分に磁気力を与える。
図1に示すように、第1相コイル群51は、接続基板70よりも軸方向一方側に配置される。第1相コイル群51は、ケース11に固定される。より詳細には、第1相コイル群51は、第1ケース部12の第1周壁部12aの内周面に固定される。
【0034】
図3に示すように、第1相コイル群51は、複数の第1コイル部51A~51Jを有する。また、
図1に示すように、第1相コイル群51は、第1コイル部から軸方向他方側に引き出される一対の第1コイル引出線51k1,51k2を有する。
図3に示すように、本実施形態において、第1相コイル群51は、10個の第1コイル部51A~51Jを有する。各第1コイル部51A~51Jは、互いに直列に接続される。
図1に示すように、一対の第1コイル引出線51k1,51k2は、それぞれ、接続基板70に接続される。なお、
図5に示すように、一方の第1コイル引出線51k1は、第1コイル部51Aから軸方向他方側に引き出される。他方の第1コイル引出線51k2は、第1コイル部51Jから軸方向他方側に引き出される。
【0035】
図4に示すように、第1コイル部51Aは、中央に略亀甲状の空隙部Sを形成するようにしてエナメル線を扁平に巻き、熱を加えることでエナメル線同士が接着して構成される。第1コイル部51Aは、第1長辺部51A1と、第2長辺部51A2と、一対の接続辺部51A3,51A4と、を有する。
【0036】
第1長辺部51A1および第2長辺部51A2は、それぞれ、軸方向に沿って延びる直状である。第1長辺部51A1および第2長辺部51A2は、空隙部Sを挟んで互いに対向する。
図3に示すように、軸方向に見て、第1長辺部51A1および第2長辺部51A2は、それぞれ、周方向に沿うように一定の曲率で湾曲する。第1長辺部51A1は、第2長辺部51A2よりも周方向他方側に配置される。
図4に示すように、本実施形態において、第1長辺部51A1および第2長辺部51A2の周方向の寸法L1は、空隙部Sの周方向の寸法L2と略同じ寸法である。なお、第1長辺部51A1および第2長辺部51A2の周方向の寸法L1は、空隙部Sの周方向の寸法L2と異なる寸法であってもよい。第1長辺部51A1のコイル線が延びる方向は、第2長辺部51A2のコイル線が延びる方向と逆方向である。そのため、第1コイル部51Aに電流が供給されると、第1長辺部51A1および第2長辺部51A2に流れる電流の向きは互いに異なる向きになる。
【0037】
図4に示すように、一対の接続辺部51A3,51A4は、空隙部Sを挟んで軸方向に対向する。各接続辺部51A3,51A4は、それぞれ、第1長辺部51A1および第2長辺部51A2と繋がる。軸方向に見て、接続辺部51A3,51A4の一部は、周方向に沿うように一定の曲率で湾曲する。
【0038】
図示は省略するが、他の第1コイル部51B~51Jの形状は、第1コイル部51Aと同じ形状である。また、第2相コイル群52が有する、後述する第2コイル部52A~52Jの形状は、第1コイル部51Aの形状と同じ形状である。よって、本実施形態によれば、第1コイル部51A~51Jおよび第2コイル部52A~52Jは、エナメル線を亀甲状に巻回して形成されるため、第1コイル部51A~51Jおよび第2コイル部52A~52Jのコイル密度を高めることができる。したがって、ステータ50およびモータ10の大型化を抑制しつつ、モータ10のトルク効率を高めることができる。
【0039】
図3に示すように、複数の第1コイル部51A~51Jは、互いに周方向に沿って配置される。周方向に互いに隣り合う第1コイル部51A~51J同士の一部は、径方向に重なって配置される。より詳細には、各第1コイル部の第1長辺部51A1,51B1,51C1,51D1,51E1,51F1,51G1,51H1,51I1,51J1は、それぞれ、各第1コイル部の周方向他方側に隣り合って配置される第1コイル部の第2長辺部51J2,51A2,51B2,51C2,51D2,51E2,51F2,51G2,51H2,51I2と径方向に重なる。第1コイル部51Aの周方向の中央および中心軸Jの両方を通る仮想直線L1Aと、第1コイル部51Aと周方向一方側に隣り合う第1コイル部51Bの周方向の中央および中心軸Jの両方を通る仮想直線L1Bとが成す角度α1は、36°である。本実施形態において、第1コイル部51A~51Jは、それぞれ、周方向に沿って36°毎に配置される。
【0040】
本実施形態において、第1コイル部51A,51C,51E,51G,51Iのエナメル線の巻回方向は、第1コイル部51B,51D,51F,51H,51Jのエナメル線の巻回方向と逆方向である。したがって、互いに径方向に重なる第1長辺部および第2長辺部の通電方向は同じ方向である。例えば、第2長辺部51A2および第1長辺部51B1の通電方向は同じ方向であり、第2長辺部51B2および第1長辺部51C1の通電方向は同じ方向である。また、第2長辺部51A2および第1長辺部51B1の通電方向と、第2長辺部51B2および第1長辺部51C1の通電方向は逆方向になる。
【0041】
本実施形態において、
図5に示すように、D1が付される第1長辺部および第2長辺部は、第1コイル部51Aから第1コイル部51Eを経由して第1コイル部51Jに向けて電流が流れる場合に、軸方向一方側から軸方向他方側に向けて電流が流れる第1長辺部および第2長辺部である。D2が付される第1長辺部および第2長辺部は、第1コイル部51Aから第1コイル部51Eを経由して第1コイル部51Jに向けて電流が流れる場合に、軸方向他方側から軸方向一方側に向けて電流が流れる第1長辺部および第2長辺部である。また、第1コイル部51Jから第1コイル部51Eを経由して第1コイル部51Aに向けて電流が流れる場合に、D1が付される第1長辺部および第2長辺部には、軸方向他方側から軸方向一方側に向けて電流が流れ、D2が付される第1長辺部および第2長辺部には、軸方向一方側から軸方向他方側に向けて電流が流れる。したがって、本実施形態の第1相コイル群51では、周方向に隣り合う第1コイル部51A~51J同士の一部は、通電方向が同一方向になるように径方向に重なる。
【0042】
第2相コイル群52は、ロータ20の軸方向他方側の部分に磁気力を与える。
図1に示すように、第2相コイル群52は、接続基板70よりも軸方向他方側に配置される。第1相コイル群51と、第2相コイル群52とは、互いに軸方向に並んで配置される。第2相コイル群52は、ケース11に固定される。より詳細には、第2相コイル群52は、第2ケース部13の第2周壁部13aの内周面に固定される。また、上述のように、第1相コイル群51は、第1ケース部12の第1周壁部12aの内周面に固定される。よって、本実施形態によれば、モータ10の組立工程において、第1相コイル群51を、第1開口部12bを介して、第1ケース部12の第1周壁部12aの内周面に容易に固定できる。また、第2相コイル群52を、第2開口部13bを介して、第2ケース部13の第2周壁部13aの内周面に容易に固定できる。さらに、第1相コイル群51が固定された第1ケース部12と、第2相コイル群52が固定された第2ケース部13とを、互いに固定することによって、ステータ50を容易に構成できる。したがって、第1相コイル群51および第2相コイル群52を容易にケース11に固定できるとともに、ステータ50を容易に構成できるため、モータ10の製造工数が増大することを抑制できる。
【0043】
図6に示すように、第2相コイル群52は、複数の第2コイル部52A~52Jを有する。また、
図1に示すように、第2相コイル群52は、第2コイル部から軸方向一方側に引き出される一対の第2コイル引出線52k1,52k2を有する。
図6に示すように、本実施形態において、第2相コイル群52は、10個の第2コイル部52A~52Jを有する。つまり、本実施形態において、複数のマグネット23の個数、複数の第1コイル部の個数、および複数の第2コイル部の個数は、それぞれ10個であり、互いに同じ個数である。各第2コイル部52A~52Jは、互いに直列に接続される。
図1に示すように、一対の第2コイル引出線52k1,52k2は、それぞれ、接続基板70に接続される。
図7に示すように、一方の第2コイル引出線52k1は、第2コイル部52Aから軸方向一方側に引き出され、他方の第2コイル引出線52k2は、第2コイル部52Jから軸方向一方側に引き出される。
【0044】
図6に示すように、複数の第2コイル部52A~52Jは、互いに周方向に沿って配置される。周方向に互いに隣り合う第2コイル部52A~52J同士の一部は、径方向に重なって配置される。より詳細には、各第2コイル部の第1長辺部52A1,52B1,52C1,52D1,52E1,52F1,52G1,52H1,52I1,52J1は、それぞれ、各第2コイル部の周方向他方側に隣り合って配置される第2コイル部の第2長辺部52J2,52A2,52B2,52C2,52D2,52E2,52F2,52G2,52H2,52I2と径方向に重なる。本実施形態において、第2コイル部52Aの周方向の中央および中心軸Jの両方を通る仮想直線L2Aと、第2コイル部52Aと周方向一方側に隣り合う第2コイル部52Bの周方向の中央および中心軸Jの両方を通る仮想直線L2Bとが成す角度α2は、36°である。本実施形態において、第2コイル部52A~52Jは、それぞれ、周方向に沿って互いに36°毎に配置される。
図6には、
図4に示す第1コイル部51A、51Bの中央を通る仮想直線L1A、L1Bを図示する。仮想直線L2Aと、仮想直線L1Aとが成す角度α3は、18°である。仮想直線L2Aと、仮想直線L1Bとが成す角度α4は、18°である。また、上述のように、本実施形態において、第1コイル部51A~51Jは、周方向に沿って互いに36°毎に配置される。よって、軸方向に見て、第2コイル部52A~52Jそれぞれの周方向の中心は、互いに周方向両側に隣り合う第1コイル部51A~51Jそれぞれの周方向の中心の間に位置する。なお、以下の説明において、第1コイル部51A~51Jのそれぞれの周方向の中央および中心軸Jの両方を通る仮想直線と、第2コイル部52A~52Jそれぞれの周方向の中央および中心軸Jの両方を通る仮想直線との間の、最小の角度を位相差Δθと呼ぶ。本実施形態において、位相差Δθは、18°である。すなわち、第1相コイル群51と第2相コイル群52とは、中心軸J周りに位相差Δθだけ相対的に回転して取り付けられる。位相差Δθは、各相コイル群51、52において隣り合うコイル部の中心線のなす角度α1、α2の半分とすることが好ましい。
【0045】
本実施形態において、第2コイル部52A,52C,52E,52G,52Iのエナメル線の巻回方向は、第2コイル部52B,52D,52F,52H,52Jのエナメル線の巻回方向と逆方向である。したがって、互いに径方向に重なる第1長辺部および第2長辺部の通電方向は同じ方向である。
【0046】
本実施形態において、
図7に示すように、D1が付される第1長辺部および第2長辺部は、第2コイル部52Aから第2コイル部52Eを経由して第2コイル部52Jに向けて電流が流れる場合に、軸方向一方側から軸方向他方側に向けて電流が流れる第1長辺部および第2長辺部である。D2が付される第1長辺部および第2長辺部は、第2コイル部52Aから第2コイル部52Eを経由して第2コイル部52Jに向けて電流を流す場合に、軸方向他方側から軸方向一方側に向けて電流が流れる第1長辺部および第2長辺部である。したがって、本実施形態の第2相コイル群52では、周方向に隣り合う第2コイル部52A~52J同士の一部は、通電方向が同一方向になるように径方向に重なる。
【0047】
図1に示すように、第1軸受91は、第1軸受保持部12eに固定される。第1軸受91は、シャフト22の軸方向一方側の部分を支持する。第2軸受92は、第2軸受保持部13eに固定される。第2軸受92は、シャフト22の軸方向他方側の部分を支持する。これらにより、シャフト22は、中心軸Jを中心として回転可能に支持され、ロータ20は、中心軸Jを中心として回転可能である。本実施形態において、第1軸受91および第2軸受92は、滑り軸受である。第1軸受91および第2軸受92は、ボールベアリングなどの転がり軸受であってもよい。
【0048】
接続基板70は、第1相コイル群51および第2相コイル群52それぞれに供給する電流を制御する。
図1に示すように、接続基板70は、ロータ20を径方向外側から囲む略円環板状である。接続基板70は、軸方向と直交する方向に延びる板状である。接続基板70の板面は、軸方向を向いている。軸方向において、接続基板70は、第1相コイル群51と第2相コイル群52との間に配置される。よって、本実施形態によれば、接続基板70が、例えば、第1相コイル群51の軸方向一方側に配置される場合と比較して、第2コイル引出線52k1,52k2を短くできる。さらに、第2コイル引出線52k1,52k2を、第1相コイル群51を迂回させて配線する必要が無い。また、接続基板70が、例えば、第2相コイル群52の軸方向他方側に配置される場合と比較して、第1コイル引出線51k1,51k2を短くできる。さらに、第1コイル引出線51k1,51k2を、第2相コイル群52を迂回させて配線する必要が無い。したがって、ステータ50の構成を簡素化でき、ステータ50およびモータ10の製造工数が増大することを抑制できる。
【0049】
接続基板70には、図示しない外部電源、第1相コイル群51および第2相コイル群52が電気的に接続される。外部電源の電力は、接続基板70を介して、第1相コイル群51および第2相コイル群52に供給される。接続基板70は、第1相コイル群51および第2相コイル群52それぞれに供給する電流を個別に切り替えることができる。接続基板70は、第1接続基板71と、第2接続基板72と、を有する。
【0050】
第1接続基板71は、第1相コイル群51と電気的に接続される。第1接続基板71は、第1相コイル群51の軸方向他方側に配置される。
図2に示すように、第1接続基板71は、第1円環部71aと、第1延出部71bと、を有する。
【0051】
第1円環部71aは、略円環状の板状である。第1円環部71aの板面は、軸方向を向いている。
図1に示すように、第1円環部71aの軸方向一方側を向く面のうち径方向外縁部は、第1ケース部12の第1支持面12hと接触する。
図2に示すように、第1円環部71aには、2つのスルーホール71cが設けられる。一方のスルーホール71cには、第1コイル引出線51k1が半田によって固定される。他方のスルーホール71cには、第1コイル引出線51k2が半田によって固定される。これらにより、第1接続基板71は、第1相コイル群51と電気的に接続され、第1相コイル群51に供給する電流を制御する。
【0052】
第1延出部71bは、第1円環部71aの外周面から、径方向外側に突出する。第1延出部71bは、略矩形状の板状である。
図1に示すように、第1延出部71bの板面は、軸方向を向いている。第1延出部71bは、ケース11の基板挿通孔11aを径方向に通される。第1延出部71bの軸方向一方側を向く面の一部は、第1周壁部12aの軸方向他方側を向く面と接触する。第1延出部71bは、図示しない外部電源と電気的に接続される。これにより、第1接続基板71は、外部電源と電気的に接続される。
【0053】
第2接続基板72は、第2相コイル群52および図示しない外部電源と電気的に接続される。第2接続基板72は、第2相コイル群52の軸方向一方側に配置される。第2接続基板72は、第1接続基板71の軸方向他方側に配置される。第1接続基板71と第2接続基板72は、互いに軸方向に並んで配置される。第2接続基板72の軸方向一方側を向く面は、第1接続基板71の軸方向他方側を向く面と接触している。第2接続基板72は、第2円環部72aと、第2延出部72bと、を有する。なお、図示は省略するが、本実施形態において、第2円環部72aの形状は、
図2に示す第1円環部71aの形状と同じ形状であり、第2延出部72bの形状は、
図2に示す第1延出部71bの形状と同じ形状である。
【0054】
図1に示すように、第2円環部72aの板面は、軸方向を向いている。第2円環部72aの軸方向他方側を向く面のうち径方向外縁部は、第2支持面13hと接触する。第2円環部72aには、図示しない2つのスルーホールが設けられる。一方のスルーホールには、第2コイル引出線52k1が半田によって固定される。他方のスルーホールには、第2コイル引出線52k2が半田によって固定される。これらにより、第2接続基板72は、第2相コイル群52と電気的に接続され、第2相コイル群52に供給する電流を制御する。また、上述のように、第1接続基板71は、第1相コイル群51と電気的に接続される。よって、本実施形態によれば、モータ10の組立工程おいて、第1コイル引出線51k1,51k2と第2コイル引出線52k1,52k2は、それぞれ、別個の接続基板71,72に、半田によって接続される。したがって、第1コイル引出線51k1,51k2と、第2コイル引出線52k1,52k2の両方を、1つの接続基板に接続する場合と比較して、第1コイル引出線51k1,51k2および第2コイル引出線52k1,52k2を、接続基板に接続する作業性を向上させることができる。
【0055】
第2延出部72bの板面は、軸方向を向いている。第2延出部72bは、基板挿通孔11aを径方向に通される。上述のように、第1延出部71bは、基板挿通孔11aを径方向に通される。つまり、接続基板70は、基板挿通孔11aを径方向に通される延出部71b,72bを有する。第2延出部72bの軸方向他方側を向く面の一部は、第2周壁部13aの軸方向一方側を向く面と接触する。第2延出部72bは、図示しない外部電源と電気的に接続される。これにより、第2接続基板72は、外部電源と電気的に接続される。よって、本実施形態によれば、接続基板70のみを介する簡易な構成によって、図示しない外部電源および第1相コイル群51を電気的に接続でき、外部電源および第2相コイル群52を電気的に接続できる。したがって、モータ10の部品点数および製造コストが増大することを抑制できる。
【0056】
また、本実施形態によれば、第1接続基板71と第2接続基板72とが互いに軸方向に並んで配置されるため、一つの基板挿通孔11aを介して、第1接続基板71および第2接続基板72をケース11の外部に突出させることができる。したがって、ケース11の加工工数が増大することを抑制できるとともに、ケース11の強度が低下することを抑制できる。
【0057】
次に、本実施形態において、ロータ20を中心軸J回りに回転させるステータ50への通電方法について説明する。
図8Aに示すように、ロータ20の軸方向一方側の部分では、接続基板70によって、第1マグネット23Nと対向する第1コイル部51Aの第2長辺部51A2、および第1コイル部51Bの第1長辺部51B1に対して、通電方向が
図8Aにおける裏から表となる一定の電流が流れる。このとき、第2マグネット23Sに対向する第1コイル部51Bの第2長辺部51B2、および第1コイル部51Cの第1長辺部51C1には、通電方向が
図8Aにおける表から裏となる一定の電流が流れる。第1マグネット23Nが発する磁力線Bは、第1相コイル群51および第1ケース部12の第1周壁部12aを通り、再び第1相コイル群51を通って該第1マグネット23Nと隣り合う第2マグネット23Sに入りこむ。そのため、第1相コイル群51の各長辺部には、周方向他方側を向く磁気力が加わる。第1相コイル群51は、第1ケース部12に固定されるため、各マグネット23N,23Sには、周方向一方側を向く磁気反作用力が加わる。
【0058】
図8Bに示すように、ロータ20の軸方向他方側の部分では、接続基板70によって、第1マグネット23Nと対向する第2コイル部52Aの第2長辺部52A2、および第2コイル部52Bの第1長辺部52B1に対して、通電方向が
図8Bにおける裏から表となる一定の電流が流れる。このとき、第2マグネット23Sに対向する第2コイル部52Bの第2長辺部52B2、および第2コイル部52Cの第1長辺部52C1には、通電方向が
図8Bにおける表から裏となる一定の電流が流れる。第1マグネット23Nが発する磁力線Bは、第2相コイル群52および第2ケース部13の第2周壁部13aを通り、再び第2相コイル群52を通って該第1マグネット23Nと隣り合う第2マグネット23Sに入りこむ。そのため、第2相コイル群52の各長辺部には、周方向他方側を向く磁気力が加わる。第2相コイル群52は、第2ケース部13に固定されるため、各マグネット23N,23Sには周方向一方側を向く磁気反作用力が加わる。また、上述のように、ロータ20の軸方向一方側の部分においても、各マグネット23N,23Sには、周方向一方側を向く磁気反作用力が加わる。これらにより、ロータ20は周方向一方側に回転する。
【0059】
本実施形態によれば、ケース11が磁性を有するため、ケース11をバックコアとして利用でき、ケース11を介して、互いに周方向に隣り合うマグネット23N,23S間における磁路を形成できる。したがって、第1マグネット23Nから、第1相コイル群51および第2相コイル群52を径方向に通過する磁力線の磁束密度が低下することを抑制でき、ステータ50が磁気ヨークコアを有しない構成であっても、モータ10の出力トルクを高めることができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、ケース11が第1ケース部12および第2ケース部13を含み、第1相コイル群51の径方向外側を第1ケース部12が囲み、第2相コイル群52の径方向外側を第1ケース部12とは別個の部材である第2ケース部13が囲む。よって、第1相コイル群51を径方向に通過する磁束が、第1ケース部12から第2ケース部13に漏れ出ることを抑制できる。同様に、第2相コイル群52を径方向に通過する磁束が、第2ケース部13から第1ケース部12に漏れ出ることを抑制できる。したがって、第1相コイル群51および第2相コイル群52を径方向に通過する磁束密度を安定させることができるため、モータ10の回転精度をより好適に向上させることができる。
【0061】
ロータ20が、位相差Δθ、つまり18°回転すると、
図9Aに示すように、ロータ20の軸方向一方側の部分では、第1マグネット23Nと対向する第1コイル部51Bの第2長辺部51B2、および第1コイル部51Cの第1長辺部51C1には、通電方向が
図9Aにおける表から裏となる一定の電流が流れている。第2マグネット23Sに対向する第1コイル部51Cの第2長辺部51C2、および第1コイル部51Dの第1長辺部51D1には、通電方向が
図9Aにおける裏から表となる一定の電流が流れている。そのため、第1相コイル群51の各長辺部には、周方向一方側を向く磁気力が加わり、各マグネット23N,23Sには、周方向他方側を向く磁気反作用力が加わる。
【0062】
図9Bに示すように、ロータ20の軸方向他方側の部分では、第1マグネット23Nと対向する第2コイル部52Aの第2長辺部52A2、および第2コイル部52Bの第1長辺部52B1には、通電方向が
図9Bにおける裏から表となる一定の電流が流れている。第2マグネット23Sに対向する第2コイル部52Bの第2長辺部52B2、および第2コイル部52Cの第1長辺部52C1には、通電方向が
図9Bにおける表から裏となる一定の電流が流れる。そのため、第2相コイル群52の各長辺部には、周方向他方側を向く磁気力が加わり、各マグネット23N,23Sには、周方向一方側を向く磁気反作用力が加わる。上述のように、ロータ20の軸方向一方側の部分では、各マグネット23N,23Sには、周方向他方側を向く磁気反作用力が加わるため、各マグネット23N,23Sに加わる磁気反作用力が相殺される。ロータ20を継続して周方向一方側に回転させるため、接続基板70は、第1相コイル群51の通電方向を逆方向に切り替える。
【0063】
接続基板70が、第1相コイル群51の通電方向を逆方向に切り替えると、
図10に示すように、第1マグネット23Nと対向する第1コイル部51Bの第2長辺部51B2、および第1コイル部51Cの第1長辺部51C1には、通電方向が
図10における裏から表となる一定の電流が流れる。第2マグネット23Sに対向する第1コイル部51Cの第2長辺部51C2、および第1コイル部51Dの第1長辺部51D1には、通電方向が
図10における表から裏となる一定の電流が流れる。そのため、各マグネット23N,23Sには、周方向一方側を向く磁気反作用力が加わる。よって、ロータ20は継続して周方向一方側に回転する。以降は、ロータ20が位相差Δθである18°回転する毎に、第2相コイル群52または第1相コイル群51の通電方向を順次切り替えて、ロータ20を周方向一方側に継続して回転させる。なお、本実施形態では、位相差Δθが18°であるため、モータ10のステップ角は18°となる。
【0064】
本実施形態によれば、中心軸Jを中心として回転可能なロータ20と、ロータ20を径方向外側から囲むステータ50と、を備える。ロータ20は、中心軸Jに沿って延びるシャフト22と、複数のマグネット23と、を有し、複数のマグネット23は、互いに周方向に沿って配置され、且つ、ステータ50と径方向に対向する。ステータ50は、複数の第1コイル部51A~51Jが直列に接続される第1相コイル群51と、複数の第2コイル部52A~52Jが直列に接続される第2相コイル群52と、を有し、第1相コイル群51と、第2相コイル群52とは、互いに軸方向に並んで配置され、複数の第1コイル部51A~51Jは、互いに周方向に沿って配置され、周方向に隣り合う第1コイル部同士の一部は、通電方向が同一方向になるように径方向に重なり、複数の第2コイル部は、互いに周方向に沿って配置され、周方向に隣り合う第2コイル部同士の一部は、通電方向が同一方向になるように径方向に重なり、複数のマグネット23の個数、複数の第1コイル部の個数、および複数の第2コイル部の個数は、同じ個数であり、軸方向に見て、第2コイル部の周方向の中心は、周方向に隣り合う第1コイル部それぞれの周方向の中心の間に位置する。よって、ステータ50が磁気ヨークコアを有しないため、ロータ20が回転する際に、各マグネット23からステータ50に入り込む磁力線の磁束密度の変動を抑制でき、ディテントトルクを抑制できる。したがって、モータ10の駆動時における騒音および振動を抑制できる。また、ディテントトルクを抑制できるため、ロータ20の停止位置の位置精度を高めることができ、モータ10の制御性の向上を図ることができる。さらに、本実施形態では、ステータが磁気ヨークコアを有しないため、鉄損を抑制でき、モータ10のトルク効率を高めることができる。
【0065】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。例えば、第1相コイル群および第2相コイル群は、
図11に示す、カップ型巻線コイルであってもよい。この場合、第1相コイル群では、一つの第1コイル部の空隙部の径方向内側または径方向外側の少なくとも一方側に、他の第1コイル部の長辺部が配置される。同様に、第2相コイル群では、一つの第2コイル部の空隙部の径方向内側または径方向外側の少なくとも一方側に、他の第2コイル部の長辺部が配置される。カップ型巻線コイルにおいても、本実施形態と同様にエナメル線を亀甲状に巻回して形成することで、第1相コイ群部および第2相コイル群のコイル密度を高めることができ、ステータの大型化を抑制しつつ、モータのトルク効率を高めることができる。また、ステータが磁気ヨークコアを有しないため、ディテントトルクを抑制できる。
【0066】
また、本実施形態では、第1コイル群および第2コイル群それぞれにおいて、第1長辺部は、第2長辺部の径方向内側に配置されているが、第1長辺部は、第2長辺部の径方向外側に配置されていてもよい。また、第1コイル群および第2コイル群それぞれは、径方向外側に配置されるコイル部と、径方向内側に配置されるコイル部とが周方向に交互に並んで配置される構成であってもよい。
【0067】
モータの出力トルクと高めることができるならば、各第1コイル部および各第2コイル部の形状は、亀甲状に限定されず、略長方形状および略円形状であってもよい。
【0068】
マグネットの個数、第1コイル部の個数、および第2コイル部の個数は10個に限定されず、8個以下の偶数個でもよいし、12個以上の偶数個であってもよい。前者の場合は、モータ10の部品点数および製造コストを削減でき、後者の場合は、モータのステップ角を小さくすることができる。
【0069】
本発明が適用されるモータは、2相のステッピングモータに限定されず、3相以上の多相のステッピングモータおよび誘導モータ等の他のモータにも適用可能である。なお、本明細書において説明した各構成および各方法は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【0070】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1)中心軸を中心として回転可能なロータと、前記ロータを径方向外側から囲むステータと、を備え、前記ロータは、前記中心軸に沿って延びるシャフトと、複数のマグネットと、を有し、複数の前記マグネットは、互いに周方向に沿って配置され、且つ、前記ステータと径方向に対向し、前記ステータは、複数の第1コイル部が直列に接続される第1相コイル群と、複数の第2コイル部が直列に接続される第2相コイル群と、を有し、前記第1相コイル群と、前記第2相コイル群とは、互いに軸方向に並んで配置され、複数の前記第1コイル部は、互いに周方向に沿って配置され、周方向に隣り合う前記第1コイル部同士の一部は、通電方向が同一方向になるように径方向に重なり、複数の前記第2コイル部は、互いに周方向に沿って配置され、周方向に隣り合う前記第2コイル部同士の一部は、通電方向が同一方向になるように径方向に重なり、複数の前記マグネットの個数、複数の前記第1コイル部の個数、および複数の前記第2コイル部の個数は、同じ個数であり、軸方向に見て、前記第2コイル部の周方向の中心は、周方向に隣り合う前記第1コイル部それぞれの周方向の中心の間に位置する、モータ。
(2) 前記ステータは、前記第1相コイル群および前記第2相コイル群を径方向外側から囲むケースを有し、前記ケースは磁性を有し、前記第1相コイル群および前記第2相コイル群は、それぞれ、前記ケースに固定される、(1)に記載のモータ。
(3) 前記ケースは、前記第1相コイル群が固定される第1ケース部と、前記第2相コイル群が固定される第2ケース部と、を含む、(2)に記載のモータ。
(4) 軸方向と直交する方向に延びる接続基板を有し、前記第1相コイル群は、前記第1コイル部から軸方向に引き出される第1コイル引出線を有し、前記第2相コイル群は、前記第2コイル部から軸方向に引き出される第2コイル引出線を有し、前記第1コイル引出線および前記第2コイル引出線は、それぞれ、前記接続基板に接続され、軸方向において、前記接続基板は、前記第1相コイル群と前記第2相コイル群との間に配置される、(2)または(3)に記載のモータ。
(5) 前記ケースは、径方向に開口する基板挿通孔を有し、前記接続基板は、前記基板挿通孔を径方向に通される延出部を有する、(4)に記載のモータ。
(6) 前記接続基板は、前記第1コイル引出線と接続される第1接続基板と、前記第2コイル引出線と接続される第2接続基板と、を有し、前記第1接続基板と前記第2接続基板は、互いに軸方向に並んで配置される、(4)または(5)に記載のモータ。
(7) 複数の前記マグネットは、それぞれ、ネオジウムを焼結して成形した永久磁石であり、前記ロータは、前記シャフトの外周面に固定されるロータコアを有し、複数の前記マグネットは、それぞれ、前記ロータコアの径方向外側を向く面に固定される、(1)から(6)のいずれかに記載のモータ。
【符号の説明】
【0071】
10…モータ、11…ケース、11a…基板挿通孔、12…第1ケース部、13…第2ケース部、20…ロータ、21…ロータコア、22…シャフト、23…マグネット、50…ステータ、51…第1相コイル群、51A~51J…第1コイル部、51k1,51k2…第1コイル引出線、52…第2相コイル群、52A~52J…第2コイル部、52k1,52k2…第2コイル引出線、70…接続基板、71…第1接続基板、71b…第1延出部(延出部)、72…第2接続基板、72b…第2延出部(延出部)、J…中心軸