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  • 特開-ミリ波反射板および施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172153
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ミリ波反射板および施工方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/14 20060101AFI20231129BHJP
   B32B 15/14 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H01Q15/14 Z
B32B15/14
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083769
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 幹之
(72)【発明者】
【氏名】武田 忠
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 裕介
【テーマコード(参考)】
4F100
5J020
【Fターム(参考)】
4F100AB01A
4F100AB01C
4F100AB17A
4F100AB17C
4F100AG00B
4F100AK51D
4F100AT00E
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB00D
4F100CB00E
4F100DC21A
4F100DG00E
4F100DG10E
4F100DG11B
4F100GB41
4F100JB05E
4F100JB09E
4F100JD08
4F100JG05B
4F100JN06
5J020AA03
5J020BA01
5J020BA06
5J020BD03
5J020BD04
(57)【要約】
【課題】水系接着剤で施工しても好適に機能するミリ波反射板を提供する。
【解決手段】ミリ波反射板1は、面状の誘電体20と、誘電体の第一面20a上に設けられ、形状の異なる複数の金属パターン11、12、13を有するスーパーセル10と、誘電体において、第一面と反対側の第二面20b上に設けられた金属層30と、金属層を覆う接着層40と、接着層に接合された繊維層50とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状の誘電体と、
前記誘電体の第一面上に設けられ、形状の異なる複数の金属パターンを有するスーパーセルと、
前記誘電体において、前記第一面と反対側の第二面上に設けられた金属層と、
前記金属層を覆う接着層と、
前記接着層に接合された繊維層と、
を備える、
ミリ波反射板。
【請求項2】
前記接着層の厚さは、前記金属層の表面における最大高さRzより大きい、
請求項1に記載のミリ波反射板。
【請求項3】
面状の誘電体と、前記誘電体の第一面上に設けられ、形状の異なる複数の金属パターンを有するスーパーセルと、前記誘電体において、前記第一面と反対側の第二面上に設けられた金属層と、前記金属層を覆う接着層とを備えるミリ波反射板を建築材に取り付ける施工方法であって、
前記建築材の表面に水系接着剤を塗布し、
前記水系接着剤に繊維層を貼り合わせ、
前記繊維層に前記接着層を接合することにより前記ミリ波反射板を前記建築材に取り付ける、
ミリ波反射板の施工方法。
【請求項4】
前記水系接着剤は、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、アクリル系エマルジョン、水溶性合成樹脂、および天然植物性糊剤のいずれかを含む、
請求項3に記載のミリ波反射板の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波帯の電波を反射するミリ波反射板に関する。ミリ波反射板を建築材に取り付ける際の施工方法についても言及する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波に対応した各種無線機器の実用化に際し、電波の不感地帯の発生が問題となっている。ミリ波帯の電波は普及が進んでいるVHF波、UHF波と比較して著しく減衰しやすく、直進性も高いという特徴がある。この為、ミリ波帯の電波は、回折による障害物背後への回り込みが難しい。
【0003】
ミリ波帯の電波の不感地帯を解消するものとして、ミリ波帯の電波を反射する反射板(以下、「ミリ波反射板」と称する。)が提案されている。
【0004】
特許文献1に記載のマルチビームリフレクトアレイは、上記ミリ波反射板として機能し得る。このマルチビームリフレクトアレイは、面状の誘電体の一方の面に所定の角度にミリ波を反射する反射単位を多数有し、他方の面にグランドとして機能とする金属層を有する。各反射単位は、形状の異なる複数の金属パターンで構成される。
【0005】
反射単位が設けられた側の面に入射したミリ波は、各金属パターンと、金属層との両方で反射される。この反射波どうしが干渉することにより、ミリ波は入射時と異なる位相に反射される。
さらに、異なる金属パターンに基づく干渉波は、位相が異なるため、二次干渉を生じる。したがって、反射単位を構成する複数の金属パターンの形状を適宜設定することにより、入射したミリ波の反射方向を所望の向きに設定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/031539号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ミリ波反射板は、その原理上、比較的大きい面積の建装材として建造物の内面や外面に取り付けることで、不感地帯を効率よく解消することが期待できる。
しかしながら、特許文献1に記載のリフレクトアレイを建装材に取り付けるにあたっては、いくつかの問題がある。
【0008】
まず、壁材を壁下地に施工する際は、シックハウス症候群を防止する等の観点から、水系接着剤が用いられるのが一般的である。具体的には、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、アクリル系などのエマルジョン、ポリビニルアルコールなどの水溶性の合成樹脂糊剤、でんぷんなどの天然系植物性の糊剤が、単独または組み合わせて用いられる。
ミリ波反射板は、上述したように金属層を有するため、上記の方法で施工すると、金属層と水系接着剤とが接触し、充分接着できなかったり、金属層が腐食したりする可能性がある。
【0009】
有機溶媒系接着剤や粘着フィルム等の水系接着剤でない材料を用いてミリ波反射板を施工することも考えられるが、この場合、ミリ波反射板のみ異なる方法で施工することになり、作業が煩雑となる。
【0010】
上記事情を踏まえ、本発明は、水系接着剤で施工しても好適に機能するミリ波反射板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一の態様は、面状の誘電体と、誘電体の第一面上に設けられ、形状の異なる複数の金属パターンを有するスーパーセルと、誘電体において、第一面と反対側の第二面上に設けられた金属層と、金属層を覆う接着層と、接着層に接合された繊維層とを備えるミリ波反射板である。
【0012】
本発明の第二の態様は、面状の誘電体と、誘電体の第一面上に設けられ、形状の異なる複数の金属パターンを有するスーパーセルと、誘電体において、第一面と反対側の第二面上に設けられた金属層と、金属層を覆う接着層とを備えるミリ波反射板を建築材に取り付ける施工方法である。
この施工方法では、建築材の表面に水系接着剤を塗布し、水系接着剤に繊維層を貼り合わせ、繊維層に接着層を接合することによりミリ波反射板を建築材に取り付ける。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るミリ波反射板は、水系接着剤で施工しても好適に機能する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るミリ波反射板の模式断面図である。
図2】同ミリ波反射板の部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について、図1および図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るミリ波反射板1を示す模式断面図である。図1に示すように、ミリ波反射板1は、面状の誘電体20と、誘電体20上に設けられたスーパーセル10および金属層30と、金属層30を覆う接着層40および繊維層50を備えている。
【0016】
図2に、ミリ波反射板1の部分拡大平面図を示す。スーパーセル10は、誘電体20の第一面20a上に複数設けられており、形状の異なる複数の金属パターンを有する。
本実施形態において、スーパーセル10は、大きさの異なる十字型の金属パターン11、12、13の三つの金属パターンを有しており、金属パターン11、12、13が一方向に並べて配置されている。金属パターンの形状や数、配置等は、図2に示した態様に限られず適宜設定でき、環状や、特許文献1に記載されたマッシュルーム構造のような立体形状等であってもよい。
複数のスーパーセル10は、平面視四角形のミリ波反射板1において、辺に沿った二次元マトリクス状に整列して配置されている。
【0017】
誘電体20の材質は、誘電体であれば特に制限はない。誘電体20の好適な例として、ガラスクロスに合成樹脂を含浸させたものや、各種合成樹脂からなるフィルム等を挙げることができる。中でも、低損失な電気特性を有する誘電体がより好適であり、高純度ガラス(石英ガラス)、フッ素系樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリオレフィン、等が例示できる。これらは単体で使用してもよく複数種類を混合したり積層したりして使用してもよい。
【0018】
金属層30は、誘電体20において第一面20aと反対側の第二面20bに設けられ、第二面20bの概ね全体を覆っている。
誘電体20、スーパーセル10、および金属層30は、例えば、誘電体の両面に金属箔が接合された材料を用いて、金属箔をエッチング等でパターニングして複数のスーパーセルを形成することにより製造できる。
【0019】
本実施形態において、スーパーセル10および金属層30は、銅からなるが、材質は銅には限られず、金や銀、アルミニウム等も使用できる。さらに、本実施形態における金属層は、金属を主成分としていればよく、抵抗値として10-6Ω・m以下程度の導電性を保持する範囲で金属以外の物質を含んでもよい。例えば、銀混入ペースト、銅混入ペースト、ITO等の導電性金属酸化物等も用途に応じて適用可能である。
【0020】
接着層40は、金属層30と繊維層50とを接合するとともに、施工時の水系接着剤が金属層に接触することを防止する。
接着層40の材料としては、金属層30を劣化させることがなく繊維層50と接合可能な接着剤であれば特に制限はなく、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、ユリア樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤等を例示できる。これらの接着剤は一液系でもよく二液以上の複数液系でもよい。
【0021】
接着層40の厚さの値は、金属層30の表面粗さの最大高さ(Rz)より大きいことが好ましい。このようにすると、金属層30が接着層40を突き破る可能性を著しく低減し、突き破った部位が繊維層50に浸透した水系接着剤と接触することを好適に防止できる。
金属層30表面の最大高さRzは、JIS B0601に準拠した表面計測に基づいて取得できる。
【0022】
繊維層50は、多数の繊維状の材料が絡み合うことにより形成されている。繊維層50としては、普通紙を初めとする各種の紙や、不織布等を用いることができ、接着層40および施工時に使用される水系接着剤の両方に対して接合性に優れるものが特に好ましい。良好な接合性を有するものであれば、繊維層50の厚さにも特に制限はない。繊維層50を構成する繊維状材料も、天然繊維、合成繊維のいずれでも問題ない。
【0023】
上記のように構成された本実施形態に係るミリ波反射板1の使用時の動作について説明する。
石膏ボード等の建築材にミリ波反射板を取り付ける際は、建築材に水系接着剤を塗布した後、ミリ波反射板1の繊維層50側を水系接着剤の塗布面に接近させて貼り合わせる。この状態で一定期間(例えば10日間)養生すると、ミリ波反射板1の施工が完了する。
【0024】
施工時に使用される水系接着剤は、繊維層50との接合性に優れるため、ミリ波反射板は、対象の建築材に確実に接合される。このとき、水系接着剤の一部は、繊維層50に浸透して接着層40側に達するが、金属層30は、接着層40に覆われているため、水系接着剤が金属層30と接触することが抑制され、接触に伴う腐食等が好適に防止される。接着層40の厚さが金属層30表面の最大高さRzより大きいことで、金属層30が局所的に接着層40を貫通するリスクもほぼ完全に排除でき、上記効果をさらに高めることができる。
【0025】
ミリ波反射板1にミリ波が入射すると、その一部はスーパーセル10で反射され、他の一部は、誘電体20を通り金属層30で反射される。これらの反射波の位相差と、スーパーセル10における金属パターンの態様とにより、入射したミリ波は設定された反射特性に従った反射波としてミリ波反射板1から出射される。
必要に応じて、ミリ波反射板1に壁紙等を貼り付けてスーパーセル10を視認できなくし、所望の外観と反射特性とを両立させることもできる。
【0026】
本実施形態のミリ波反射板1においては、水系接着剤を用いて建築材に容易に取り付けることができるため、施工作業の効率を落とさずに所望のミリ波反射特性を建築物に付与できる。その上、水系接着剤による金属層30のダメージも生じない。
金属層30と繊維層50とを接合するとともに、施工時の水系接着剤が金属層に接触することを防止する接着層40の材料には、溶剤系の接着剤も含まれるが、接着層40は施工現場で塗布されるものではなく、ミリ波反射板1の製造後の時間経過や養生工程等により、接着層40の形成時に存在する溶剤のほとんどは揮発する。そのため、接着層40に起因するシックハウス症候群の懸念もほとんどない。
【0027】
本実施形態に係るミリ波反射板について、実施例および比較例を用いてさらに説明する。本発明に係る技術的思想は、実施例および比較例の具体的な内容のみによって何ら限定されない。
【0028】
(実施例1)
誘電体の両面に銅箔が設けられた60mm×60mmの銅張積層板(中興化成工業社製CGP-500)を準備した。誘電体はフッ素樹脂含浸ガラスクロス(厚さ764μm)であり、銅箔の厚さはいずれも18μm、総厚は0.8mmである。
【0029】
銅張積層板の一方の面にエッチングを施し、二次元マトリクス状に配列されたスーパーセルを複数形成した。スーパーセルは、十字型の3つの金属パターンで構成される。小パターンは、幅1.1mm、縦横寸法1.4mmである。中パターンは、幅1.4mm、縦横寸法3.0mmである。大パターンは、幅1.4mm、縦横寸法3.7mmである。3つのパターンを小、中、大の順に等ピッチで5mm×15mmの区画内に配置し、これをスーパーセルの単位とした。このスーパーセルは、垂直に入射した28GHz帯のミリ波を、小パターンから大パターンに向かう方向に45°傾けて反射するよう設計されている。
上記構成のスーパーセルを、12行4列の二次元マトリクス状に形成した。スーパーセル形成後、ベンゾトリアゾール系の防錆剤に含浸後、水道水で洗浄することで防錆処理を施した。
【0030】
もう一方の面は、エッチングをせずにそのまま金属層として用いるが、表面粗さを測定した。
測定は、JIS B 0601に準拠し、非接触表面・層断面形状計測システム(菱化システム社製 VertScanR550GML)を使用して、以下の環境で行った。
CCDカメラ:SONY HR-50 1/3‘
対物レンズ:10倍
鏡筒:0.5X Body
ズームレンズ:No Relay
波長フィルター:530 white
測定モード:Wave
金属層のうち、無作為に選択した640μm×480μmの領域を測定し、4次の多項式補正による出力を用い、算術平均粗さ(Ra)、二乗平均平方根粗さ(Rq)を12点測定し、最大値と最小値を除いた10点を平均して求めた。
その結果、金属層の算術平均粗さRaは0.43μmであり、最大高さRzは1.6μmであった。
【0031】
金属層30上にウレタン系2液硬化型接着剤(三井化学社製 タケラックA310)、硬化剤(三井化学社製 タケネートA10)、溶媒(酢酸エチル)を12:1:21、の比率で混合した接着層用塗工液を塗布して100℃10秒で乾燥し、乾燥後膜厚4μmの接着層40を形成した。
その上に、厚さ130μmの普通紙(KJ特殊紙製 WK685AP)を貼り合わせて繊維層50を形成した。
その後、40℃4日間のエージングを施して、実施例1に係るミリ波反射板を得た。
【0032】
(実施例2)
接着層40の厚さを2μmとした点を除き、実施例1と同様の手順で実施例2に係るミリ波反射板を得た。
【0033】
(実施例3)
接着層40の厚さを6μmとした点を除き、実施例1と同様の手順で実施例3に係るミリ波反射板を得た。
【0034】
(実施例4)
接着層40の厚さを1μmとした点を除き、実施例1と同様の手順で実施例4に係るミリ波反射板を得た。
【0035】
(比較例)
接着層40および繊維層50を設けない点を除き、実施例1と同様の手順で比較例に係るミリ波反射板を得た。
【0036】
各例に係るミリ波反射板に対して、以下の評価を行った。
(建築材への接合性評価)
建築材として、65mm×65mm×12.5mmの準不燃石膏ボード(吉野石膏社製 タイガーハイクリンボード)を準備した。
石膏ボード上に、水系接着剤(ジャパンコーティングレジン社製 138N、pH4~6)を塗布量100g/mで塗布し、各例の金属層30側の面を貼り合わせた後、10日間静置して、各例に係るミリ波反射板付き建築材を得た。
【0037】
各例に係るミリ波反射板付き建築材に、ミリ波反射板を厚さ方向に貫通する65mmの切込みを25mm間隔で2本入れ、切込み間のミリ波反射板を、法線方向に引っ張って石膏ボードから剥離した。
繊維層50または石膏ボードの層内で凝集破壊が発生したものを合格(○)とし、ミリ波反射板と石膏ボードとの界面で剥離を生じたものを不合格(×)とした。
【0038】
(反射特性評価)
各例に係るミリ波反射板付き建築材を、石膏ボードが接するように平坦な木の板に取り付け、電波暗室環境内に固定した。
ホーンアンテナからの送信波を曲面形状の反射鏡で反射して28GHzの平面波を生成し、建装材に対して垂直に照射した。
建装材に対して遠方界となる位置に設置した受信アンテナで、建装材からの反射波を計測した。この受信アンテナは、ロボット上に設置され、建装材から一定の遠方界距離を保ったまま周回できるよう構成されており、広い角度範囲で反射波を計測できる。この評価では、設計内容である、法線に対して45°方向のRCS(レーダー反射断面積)を評価値とした。
【0039】
(湿熱耐性評価)
各例の建装材を40℃、90%RH(相対湿度)の高温高湿槽内に1000時間静置した。静置後に高温高湿槽から取出して23℃、50%RHの環境下で24時間静置し乾燥した後に、上記反射特性を評価した。
【0040】
結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
すべての実施例は、水系接着剤により建築材に強固に接合できた。一方、接着層40および繊維層50を備えない比較例は、建築材から容易に剥離でき、水系接着剤による接合強度が充分でなかった。
すべての実施例および比較例は、作製直後において、スーパーセルの設定に基づいた良好な反射特性を示した。実施例4においては、湿熱負荷後に若干反射特性が低下したものの、設計値に対して72%であり、実用上問題のない範囲であった。
一方、比較例では、湿熱負荷後において反射特性が消失した。これは、水系接着剤と接触することにより金属層が著しく劣化したことが原因と考えられた。
【0043】
以上、本発明について、実施形態および実施例を用いて説明したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。以下にいくつか変更を例示するが、これらはすべてではなく、それ以外の変更も可能である。これらの変更は自由に組み合わせることができる。
【0044】
・本発明に係るミリ波反射板において、金属層は、必ずしも第二面上に隙間なく設けられなくてもよい。たとえば、小さな開口を有するメッシュ状であったり、スーパーセルの区画に対応した線状の欠損部位などを有したりしてもよい。ただし、金属層のない部分においては、入射したミリ波が反射されずに透過するため、金属層のない部分が多すぎると反射性能に影響する可能性があるため、金属層のない部分の最大連続長を、反射対象周波数の1/4λ未満とすることが好ましい。メッシュ状とする場合は、開口の寸法を調節することで、所定波長の電波を反射せずに透過させることも可能である。
【0045】
・本発明に係るミリ波反射板の他の構成として、金属層上に接着層およびセパレータを設けた構成が挙げられる。この場合でも、接着層を金属層のRzよりも厚くすることで、水系接着剤から金属層を保護しつつ、建築材に貼り合わせることができる。
この場合、ミリ波反射板を建築材に取り付ける施工方法の手順は以下のa~cのようになる。
a.建築材に水系接着剤を塗布する。
b.水系接着剤に繊維層を貼り合わせる。
c.ミリ波反射板からセパレータを剥がし、建築材に貼り付けられた繊維層に貼り合わせる。
水系接着剤としては、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、アクリル系などのエマルジョン;ポリビニルアルコール、セルロース系などの水溶性の合成樹脂糊剤;でんぷんなどの天然系植物性の糊剤;等を単独または組み合わせて使用できる。
【0046】
・誘電体上におけるスーパーセルの配置態様は、上述した内容に限定されず、適宜設定できる。
【符号の説明】
【0047】
1 ミリ波反射板
10 スーパーセル
11、12、13 金属パターン
20 誘電体
20a 第一面
20b 第二面
30 金属層
40 接着層
50 繊維層
図1
図2