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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172164
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/32 20230101AFI20231129BHJP
   C02F 1/72 20230101ALI20231129BHJP
   C02F 1/20 20230101ALI20231129BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20231129BHJP
【FI】
C02F1/32
C02F1/72 Z
C02F1/20 A
C02F1/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083782
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 悠介
(72)【発明者】
【氏名】須藤 史生
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一重
【テーマコード(参考)】
4D037
4D050
【Fターム(参考)】
4D037AA03
4D037AB11
4D037AB18
4D037BA18
4D037BA23
4D037BB01
4D037BB02
4D037BB07
4D037CA01
4D037CA02
4D037CA03
4D037CA11
4D037CA15
4D050AA05
4D050AB12
4D050BB03
4D050BB09
4D050BB11
4D050BB13
4D050BC09
4D050BD03
4D050BD06
4D050BD08
4D050CA03
4D050CA06
4D050CA08
4D050CA09
4D050CA15
(57)【要約】
【課題】易分解性有機物と難分解性有機物とを含む被処理水において、運転コストを抑えつつ、紫外線ランプの寿命を伸ばし、易分解性有機物を分解除去する。
【解決手段】純水製造装置1A(水処理装置)は、易分解性有機物と難分解性有機物とを含む被処理水から、少なくとも易分解性有機物の少なくとも一部を除去する有機物除去手段10と、被処理水または有機物除去手段10の処理水における易分解性有機物の濃度を取得する濃度取得手段20と、濃度取得手段20の取得値に基づき、有機物除去手段10の処理水中の易分解性有機物の濃度が所定の値となるように、有機物除去手段10の、易分解性有機物の除去性能を制御する制御装置31と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
易分解性有機物と難分解性有機物とを含む被処理水から、少なくとも前記易分解性有機物の少なくとも一部を除去する有機物除去手段と、
前記被処理水または前記有機物除去手段の処理水における前記易分解性有機物の濃度を取得する濃度取得手段と、
前記濃度取得手段の取得値に基づき、前記有機物除去手段の処理水中の易分解性有機物の濃度が所定の値となるように、前記有機物除去手段の、前記易分解性有機物の除去性能を制御する制御装置と、を有する、水処理装置。
【請求項2】
前記有機物除去手段は、紫外線照射装置と、前記紫外線照射装置の下流に位置する脱イオン装置と、を有し
前記濃度取得手段は、前記紫外線照射装置または前記脱イオン装置の処理水中の易分解性有機物の濃度を取得し、
前記制御装置は、前記濃度取得手段の取得値に基づき、前記紫外線照射装置の紫外線照射量を制御する、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記有機物除去手段は、溶存酸素除去装置と、前記溶存酸素除去装置の下流に位置する紫外線照射装置と、前記紫外線照射装置の下流に位置する脱イオン装置と、を有し、
前記濃度取得手段は、前記紫外線照射装置または前記脱イオン装置の処理水中の易分解性有機物の濃度を取得し、
前記制御装置は、前記濃度取得手段の取得値に基づき、前記紫外線照射装置の紫外線照射量と、前記溶存酸素除去装置の溶存酸素除去性能との少なくともいずれかを制御する、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記有機物除去手段は、紫外線照射装置と、前記紫外線照射装置の下流に位置する脱イオン装置と、を有し
前記濃度取得手段は、前記被処理水の易分解性有機物の濃度を取得し、
前記制御装置は、前記濃度取得手段の取得値に基づき、前記紫外線照射装置の紫外線照射量を制御する、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記濃度取得手が取得した易分解性有機物の濃度と、前記紫外線照射装置の照射量と、前記有機物除去手段の処理水中の易分解性有機物の濃度との関係に基づいて、前記濃度取得手段が取得した易分解性有機物の濃度から、前記紫外線照射装置の紫外線照射量を制御する、請求項4に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記有機物除去手段は、溶存酸素除去装置と、前記溶存酸素除去装置の下流に位置する紫外線照射装置と、前記紫外線照射装置の下流に位置する脱イオン装置と、を有し、
前記濃度取得手段は、前記被処理水の易分解性有機物の濃度を取得し、
前記制御装置は、前記濃度取得手段の取得値に基づき、前記紫外線照射装置の紫外線照射量と、前記溶存酸素除去装置の溶存酸素除去性能の少なくともいずれかを制御する、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記有機物除去手段は、酸化剤添加手段と、前記酸化剤添加手段の下流に位置する紫外線照射装置と、前記紫外線照射装置の下流に位置する脱イオン装置と、を有し、
前記濃度取得手段は、前記紫外線照射装置の被処理水又は前記紫外線照射装置若しくは前記脱イオン装置の処理水中の易分解性有機物の濃度を取得し、
前記制御装置は、前記濃度取得手段の取得値に基づき、前記酸化剤添加手段の酸化剤添加量と、前記紫外線照射装置の紫外線照射量との少なくともいずれかを制御する、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記有機物除去手段は、前記紫外線照射装置の上流に位置する溶存酸素除去装置を有し、
前記制御装置は、前記濃度取得手段の取得値に基づき、前記酸化剤添加手段の酸化剤添加量と、前記紫外線照射装置の紫外線照射量と、前記溶存酸素除去装置の溶存酸素除去性能の少なくともいずれかを制御する、請求項7に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記濃度取得手段は、全有機物の濃度を取得する第1の濃度計と、前記難分解性有機物の濃度を取得する第2の濃度計と、を有し、
前記第1の濃度計の取得値から前記第2の濃度計の取得値を減じることによって、前記易分解性有機物の濃度を算出する、請求項1から8のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項10】
前記難分解性有機物は、被処理水に照射量0.03~0.1kWh/m3のいずれかの照射量で紫外線を照射し、イオン交換装置に通水したときの除去性能が20%未満である有機物である、請求項1から8のいずれか1項に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
純水水質への高度な要求が顕在化するに伴って、近年、純水中に含まれる微量の有機物、特に尿素などの難分解性有機物を分解し除去する方法が検討されている。そのような方法の代表的なものとして、紫外線酸化処理による有機物の分解除去工程が導入されている。従来より、紫外線酸化処理による有機物除去工程においては、安定的な有機物処理が求められている。特許文献1には、被処理水の流量と処理水の全有機炭素(TOC)の測定値に基づいて、紫外線照射量を制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-058845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水処理装置の被処理水中には、水処理装置で比較的容易に分解除去できる有機物(以下、易分解性有機物という)と、分解が困難な有機物(以下、難分解性有機物という)とが、含まれることがある。難分解性有機物の典型例は尿素である。特許文献1に示されるような水処理装置では、易分解性有機物と難分解性有機物とを区別せずに、被処理水を処理することが多い。この際、難分解性有機物を分解するために紫外線の照射量を上げることがある。しかし、このような操作は、難分解性有機物の分解を多少促進する効果はあるものの、易分解性有機物の分解に必要な照射量を超える過大な量の紫外線を照射することとなる可能性がある。
【0005】
本発明は、易分解性有機物と難分解性有機物とを含む被処理水において、運転コストを抑えつつ、紫外線ランプの寿命を伸ばし、易分解性有機物を分解除去することができる水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水処理装置は、易分解性有機物と難分解性有機物とを含む被処理水から、少なくとも易分解性有機物の少なくとも一部を除去する有機物除去手段と、被処理水または有機物除去手段の処理水における易分解性有機物の濃度を取得する濃度取得手段と、濃度取得手段の取得値に基づき、有機物除去手段の処理水中の易分解性有機物の濃度が所定の値となるように、有機物除去手段の、易分解性有機物の除去性能を制御する制御装置と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、易分解性有機物と難分解性有機物とを含む被処理水において、運転コストを抑えつつ、紫外線ランプの寿命を伸ばし、易分解性有機物を分解除去することができる水処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
図2】第2の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
図3】第3の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
図4】第4の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
図5】第5の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
図6】第6の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
図7】第7の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
図8】第8の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
図9】基準例1と実施例1と比較例1の純水製造装置の概略構成図である。
図10】基準例2と実施例2と比較例2の純水製造装置の概略構成図である。
図11】基準例3と実施例3と比較例3の純水製造装置の概略構成図である。
図12】基準例4と実施例4と比較例4の純水製造装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下の説明で用いられる除去性能(除去率)は、有機物除去手段の入口水(被処理水)における所定の有機物の濃度をC1,有機物除去手段の出口水(処理水)における当該所定の有機物の濃度をC2としたときに、(C1-C2)/C1で定義される。以下の各実施形態の純水製造装置が処理する被処理水は、易分解性有機物と難分解性有機物とを含んでいる。易分解性有機物は難分解性有機物以外の有機物である。被処理水に含まれる有機物は、易分解性有機物と難分解性有機物とに分類される。難分解性有機物の一例は、当該有機物の濃度が10μg-C/L(TOC換算濃度)である被処理水に0.03~0.1kWh/m3のいずれかの照射量で紫外線を照射し、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の少なくともいずれかを充填したイオン交換装置に通水したときに、除去性能(すなわち、有機物除去手段がイオン交換装置である場合の除去性能)が20%未満である有機物をいうが、これに限定されない。難分解性有機物の種類に制限はない。以下の各実施形態では、難分解性有機物は尿素を含むが、他の有機体窒素化合物を含んでいてもよい。
【0010】
紫外線照射装置を用いた紫外線酸化法で分解が困難な有機物として、例えば、エステル類として酢酸ブチル、フタル酸ジブチル等、アミノ酸としてグリシン等、窒素化合物としてエチレンジアミン四酢酸、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、メラニン、ヘキサメチレンテトラミン、モノエチルアニリン、ジエチルアニリン、アクリロニトリル、ホルムアミド、ニトロベンゼン、ベンゾトリアゾール等、硫黄化合物としてジメチルスルホキシド等、ケトン類としてメチルイソブチルケトン等、エーテル類としてエチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等、アルコール類として第三ブチルアルコール、ジエチレングリコール、2-エチルヘキサノール、ノナノール等、フェノール類としてピロガロール等、芳香族炭化水素としてベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン等、置換芳香族炭化水素としてα-メチルナフタレン等、ハロゲン化炭化水素としてトリクロロエチレン、エチレンジクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、モノクロロベンゼン、ポリ塩化ビフェニル類、ダイオキシン類等、自然由来の有機物としてフミン酸、リグニン等や、その他これらに類似する有機物が挙げられる。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る純水製造装置1Aの概略構成を示している。純水製造装置1Aは1次システムとも呼ばれる。1次システムの下流側には2次システム(サブシステムとも呼ばれる)が設けられることがある。純水製造装置1Aの処理水は2次システムでさらに処理されて、超純水が製造される。1次システムと2次システムは超純水製造装置を構成する。
【0012】
純水製造装置1Aは、前処理装置9と、前処理装置9との下流に位置する紫外線照射装置11と、紫外線照射装置11の下流に位置する脱イオン装置12と、を有している。図示は省略するが、前処理装置9は例えば、ろ過器、活性炭塔、イオン交換装置、逆浸透膜装置、脱気装置等を備えている。紫外線照射装置11と脱イオン装置12は有機物除去手段10を構成する。有機物除去手段10は、被処理水から、少なくとも易分解性有機物の、少なくとも一部を除去する。紫外線照射装置11の下流には、有機物除去手段10の処理水(ここでは脱イオン装置12の処理水)における、易分解性有機物の濃度を取得する濃度取得手段20が設けられている。有機物除去手段10の処理水は有機物除去手段10の中間処理水(例えば、紫外線照射装置11と脱イオン装置12との間を流れる水)を含んでいる。純水製造装置1Aはさらに、有機物除去手段10の制御装置31を有している。制御装置31は、濃度取得手段20の取得値に基づき、有機物除去手段10(本実施形態では紫外線照射装置11)の、易分解性有機物の除去性能を制御する。
【0013】
紫外線照射装置11は被処理水に紫外線を照射する。紫外線照射装置11としては、例えば365nm、254nm、185nm、172nmの少なくともいずれかの波長を含む紫外線ランプを用いることができる。紫外線照射装置11は例えば、低圧紫外線酸化装置である。紫外線照射装置11は調光機能を有し、紫外線照射量の調整が可能である。照射量の調整幅は特に限定されないが、例えば最大照射量の60~100%の範囲とすることができる。また、紫外線照射装置11は複数のランプ(図示せず)を備えており、点灯するランプを選択することによって紫外線照射量の調整をすることもできる。後で詳しく説明するが、紫外線照射装置11の制御装置31は、濃度取得手段20の取得値に基づき、紫外線照射装置11の、被処理水の単位流量当たりの紫外線照射量を制御する。
【0014】
脱イオン装置12の構成は特に限定されず、例えばイオン交換樹脂を充填したイオン交換塔、逆浸透膜装置を用いることができる。イオン交換塔にはアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂が混床充填されてもよく、複床充填されてもよい。イオン交換塔にアニオン交換樹脂またはカチオン交換樹脂が単床で充填されてもよい。脱イオン装置12として、電気式脱イオン水製造装置(EDI)を用いることもできる。これらの脱イオン装置12を2段以上直列で組み合わせてもよい。
【0015】
濃度取得手段20は、第1の濃度計21と第2の濃度計22とを有している。第1の濃度計21は全有機物の濃度、すなわち、易分解性有機物の濃度と難分解性有機物の濃度の合計値を取得する。第2の濃度計22は難分解性有機物の濃度を取得する。第1及び第2の濃度計21,22は、有機物濃度を直接取得して出力してもよいし、TOCに換算した値を取得値として出力してもよい。本実施形態では、第1の濃度計21としては一般的なTOC計を、第2の濃度計22としては一般的な尿素濃度計を用いている。濃度取得手段20はさらに、第1の濃度計21の取得値から第2の濃度計22の取得値を減じることによって、易分解性有機物の濃度を算出する手段23を有している。この手段23は専用の演算装置であってもよいし、紫外線照射装置11の制御装置31に組み込まれてもよい。濃度取得手段20は、第1の濃度計21と第2の濃度計22を組み合わせたものではなく、易分解性有機物の濃度を直接取得するものであってもよい。この場合、易分解性有機物の濃度を算出する手段23は不要であり、濃度計も一つあればよい。
【0016】
次に、純水製造装置1Aの作動について説明する。純水製造装置1Aに供給された被処理水(原水)は、前処理装置9で処理された後、紫外線照射装置11で紫外線を照射される。紫外線が被処理水に照射されることで被処理水が分解され、ヒドロキシラジカルが発生し、ヒドロキシラジカルと有機物が反応することで有機物が分解する。紫外線照射装置11では難分解性有機物の一部も分解除去可能であるが、主に易分解性有機物が分解除去される。紫外線照射によって被処理水中に発生する有機物の分解生成物は、脱イオン装置12によって除去される。
【0017】
従来は、紫外線照射装置11で難分解性有機物もできるだけ除去するために、紫外線照射装置11で被処理水に過大な紫外線を照射することがあった。易分解性有機物は比較的少ない照射量で分解除去することが可能であるが、難分解性有機物の除去性能を上げるためには紫外線照射量を増やす必要がある。しかし、そのために増加した紫外線照射量は、易分解性有機物にとっては過大なものとなる。また、紫外線照射量を増やすことで難分解性有機物の除去性能が格段に改善されるわけではない。易分解性有機物を十分に(例えば80%)分解除去するための紫外線照射量をA、紫外線照射装置11の最大照射量をBとすると、通常はA<Bであるが、紫外線照射装置11を最大照射量Bで運転すると、単純計算で、B/A倍だけ紫外線照射装置11の消費電力が増えることになる。一方、紫外線照射装置11を最大照射量Bで運転しても難分解性有機物の除去性能がB/A倍になるわけではなく、これよりもはるかに低くなる場合が多く、1に近い場合もある。つまり、紫外線照射装置11の照射量を増やしても、それに見合う効果が得られないことが多い。要求水質基準によっては難分解性有機物の濃度が十分に低下している場合もある。難分解性有機物の濃度が十分に低下していない場合は、必要に応じて紫外線照射装置11の後段に難分解性有機物の分解手段を設けてもよい。なお、超純水製造装置では、2次システムにも他の紫外線照射装置が設けられていることが一般的である。1次システムで難分解性有機物を十分に除去できなくても、2次システムで除去することで、超純水製造装置全体の運転コストが改善されることもある。
【0018】
そこで、本実施形態では、制御装置31は、脱イオン装置12の処理水における易分解性有機物の濃度が所定の値またはその近傍の値となり、且つ難分解性有機物を実質的に除去しないように、紫外線照射量を制御する。易分解性有機物の目標濃度を適切に設定することにより、易分解性有機物にとって紫外線照射量が過大なものとなることを避けることが可能で、運転コストも抑えられる。紫外線の過度な照射が防止できるため、紫外線照射装置11のランプの長寿命化も可能となる。この際、第1の濃度計21で取得した全有機物の濃度と、第2の濃度計22で取得した難分解性有機物の濃度から、易分解性有機物の濃度を求め、この易分解性有機物の濃度に基づき、易分解性有機物の目標濃度を設定し、取得値が目標濃度と一致するように紫外線照射量を制御することも好ましい。これによって、一般的な紫外線照射装置11と脱イオン装置12で除去可能な易分解性有機物のほとんどを、適切な紫外線照射量で除去することができ、省電力で安定した易分解性有機物の除去が可能となる。易分解性有機物の除去性能は濃度取得手段20から得られる易分解性有機物の濃度と易分解性有機物の目標濃度とに依存するが、例えば、20%以上99%以下の範囲となる。制御する紫外線照射量は被処理水の単位流量当たりの値であるので、紫外線照射装置11のランプ本数(ランプのオンオフ制御)、調光値(ランプ1本あたりの出力調整)、紫外線照射装置11を流れる被処理水の流量の少なくとも一つを調整することができる。ランプのオンオフ制御の場合、ランプごとに過去の照射時間やオンオフ回数を記録しておき、その記録に基づいて各ランプのオンオフを制御してもよい。これによって、複数のランプの寿命を平準化することが可能となる。
【0019】
第1の濃度計21が脱イオン装置12の下流に設置されているため、濃度取得手段20は、脱イオン装置12の処理水中の易分解性有機物の濃度を取得する。しかし、第1の濃度計21は紫外線照射装置11と脱イオン装置12との間に設けてもよい。多くの易分解性有機物が紫外線照射装置11で分解されるため、紫外線照射装置11の処理水中の易分解性有機物の濃度を取得し、この取得結果を用いて紫外線照射装置11の紫外線照射量を制御しても同様の効果が得られる。第2の濃度計22の設置位置も脱イオン装置12の下流に限定されない。本実施形態では、難分解性有機物は紫外線照射装置11でほとんど分解されないため、難分解性有機物の濃度はどの位置で取得しても大きくは変わらない。つまり、第1の濃度計21と第2の濃度計22を、紫外線照射装置11の下流側のどの位置に設置しても、得られた易分解性有機物の濃度は、脱イオン装置12の処理水中の易分解性有機物の濃度、または当該濃度と相関する濃度とみなすことができる。さらに、紫外線照射量と紫外線照射時間に基づき、紫外線照射装置11がランプの交換を促すアラームを表示するようにしてもよい。
【0020】
(第2の実施形態)
以下の実施形態では第1の実施形態との差異を中心に説明する。説明を省略した構成や効果は第1の実施形態と同様である。図2は、第2の実施形態に係る純水製造装置1Bの概略構成を示している。
【0021】
純水製造装置1Bは溶存酸素除去装置13を有している。紫外線照射装置11は溶存酸素除去装置13の下流に位置し、脱イオン装置12は紫外線照射装置11の下流に位置している。本実施形態では、溶存酸素除去装置13と、紫外線照射装置11と、脱イオン装置12が有機物除去手段10を構成する。紫外線照射装置11と脱イオン装置12は第1の実施形態と同様の構成を有している。溶存酸素除去装置13と紫外線照射装置11との間の被処理水の溶存酸素濃度は溶存酸素計24で取得される。
【0022】
溶存酸素除去装置13は、被処理水から溶存酸素を除去し、被処理水の溶存酸素濃度を低下させる。紫外線照射装置11には溶存酸素濃度が低下した被処理水が供給される。溶存酸素除去装置13の種類は限定されず、例えば、真空脱気装置を用いることができる。一般的に真空脱気装置では、水の表面積を増大させるための気液接触材を脱気塔に充填し、脱気塔内の気体を真空ポンプで減圧し、被処理水である純水を真空状態におき、溶存酸素を除去する。溶存酸素濃度は、真空ポンプを用いて脱気塔内の真空度を調整することによって制御可能である。さらに、窒素供給装置を設け、窒素を流入させることで脱気性能を向上させることができる。この場合、溶存酸素濃度は、真空度と窒素流入量(窒素分圧)とを調整することによって制御可能である。脱気膜を用いた溶存酸素除去装置13を用いてもよい。この場合も真空脱気装置と同様に真空ポンプが用いられ、溶存酸素濃度は真空度を調整することによって制御可能である。これらの溶存酸素除去装置13は、水中の溶存酸素濃度を低減すると同時に、揮発性有機物や炭酸などを気相中から除去し、これらの水中の濃度を低減することができる点で好ましい。溶存酸素濃度を低減するために、これらの溶存酸素除去装置13を2段以上直列に設けてもよい。
【0023】
制御装置31は、濃度取得手段20の出力値と溶存酸素除去装置13の運転パラメータ(例えば真空ポンプの出力)との関連を示すデータを有しており、濃度取得手段20の出力値に基づき、溶存酸素除去装置13を制御する。本実施形態では、溶存酸素計24の出力値を溶存酸素除去装置13の制御に用いていないが、溶存酸素計24の出力値を用いて溶存酸素除去装置13を制御することも可能である。具体的には、制御装置31は、濃度取得手段20の出力値に基づき溶存酸素濃度を取得(算出、データ参照等)し、取得した溶存酸素濃度と目標溶存酸素濃度との差分を算出して、この差分をゼロにするように(またはゼロに近づけるように)溶存酸素除去装置13を制御する。
【0024】
被処理水に紫外線を照射すると、前述の通りヒドロキシラジカルが発生し、ヒドロキシラジカルと有機物が反応することで有機物が分解する。しかし、溶存酸素を含む被処理水では、溶存酸素が紫外線を吸収するため、溶存酸素濃度が高すぎると、ヒドロキシラジカルの発生量が減り、有機物の分解効率が低下する。この現象を利用することで、有機物の除去性能を制御することができる。具体的には、溶存酸素濃度を下げることで、易分解性有機物の除去性能を高めることができる。
【0025】
そこで、本実施形態では、濃度取得手段20が、脱イオン装置12の処理水中の易分解性有機物の濃度を取得し、制御装置31は、濃度取得手段20の取得値に基づき、溶存酸素除去装置13の溶存酸素除去性能を制御する。溶存酸素除去性能は例えば、真空ポンプの回転数を調整し、真空度を変更することによって制御可能である。具体的には、制御装置31は、紫外線照射装置11及び/または脱イオン装置12の処理水における易分解性有機物の濃度または除去性能が所定の範囲となり、且つ難分解性有機物を実質的に除去しないように、溶存酸素除去性能を制御する。溶存酸素除去装置13の溶存酸素除去性能を適切に設定することにより、易分解性有機物にとって溶存酸素濃度が過小なものとなることを避けることが可能で、運転コストも抑えられる。この際、第1の実施形態と同様、易分解性有機物の濃度を求め、この易分解性有機物の濃度に基づき、易分解性有機物の目標濃度を設定し、取得値が目標濃度と一致するように溶存酸素濃度を制御することも好ましい。これによって、一般的な紫外線照射装置11と脱イオン装置12で除去可能な易分解性有機物のほとんどを、適切な溶存酸素濃度で除去することができ、省電力で安定した易分解性有機物の除去が可能となる。
【0026】
複数の溶存酸素除去装置を設けることもできる。図示は省略するが、例えば、図2に示す溶存酸素除去装置13に加えて、脱イオン装置12の後段などに設けられた他の溶存酸素除去装置(脱気装置)を活用することもできる。この場合、被処理水が溶存酸素除去装置13、他の溶存酸素除去装置、紫外線照射装置11、脱イオン装置12の順で流れるようにラインを切り替えるようにしてもよい(脱イオン装置12からの処理水は、再度、他の溶存酸素除去装置で処理しても良いし、他の溶存酸素除去装置をバイパスさせても良い)。また、他の代替案として、上述した他の溶存酸素除去装置を溶存酸素除去装置13として活用することもできる。この場合、紫外線照射装置11、脱イオン装置12、他の溶存酸素除去装置の順で上流から下流に向けて配置され、被処理水が他の溶存酸素除去装置、紫外線照射装置11、脱イオン装置12の順で流れるようにラインを切り替えるようにしてもよい(この場合も、脱イオン装置12からの処理水は、再度、他の溶存酸素除去装置で処理しても良いし、他の溶存酸素除去装置をバイパスさせても良い)。
【0027】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態に係る純水製造装置1Cの概略構成を示している。本実施形態は第1の実施形態と第2の実施形態を一体化した構成を有している。個々の装置の構成や作動については上述の実施形態と同様である。純水製造装置1Cは溶存酸素除去装置13と、溶存酸素除去装置13の下流に位置する紫外線照射装置11と、紫外線照射装置11の下流に位置する脱イオン装置12と、を有し、これらが有機物除去手段10を構成している。濃度取得手段20は、脱イオン装置12の処理水中の易分解性有機物の濃度を取得する。制御装置31は、濃度取得手段20の取得値に基づき、紫外線照射装置11の、被処理水の単位流量当たりの紫外線照射量と、溶存酸素除去装置13の溶存酸素除去性能の少なくともいずれかを制御する。本実施形態においても、制御装置31は、脱イオン装置12の処理水における易分解性有機物の除去性能が所定の範囲となり、且つ難分解性有機物を実質的に除去しないように、紫外線照射量及び/または溶存酸素除去性能を制御することが望ましい。
【0028】
紫外線照射量と溶存酸素除去性能は、いずれか一方だけを制御してもよいし、両方を制御してもよい。両方を制御する場合は、同時に制御することも可能であるが、先に一方の制御を行い、その後他方の制御を行うこともできる。例えば、紫外線照射量の制御をまず行い、易分解性有機物の目標濃度を取得値と一致させることができない場合、さらに溶存酸素除去性能の制御を行うことができる。最初に溶存酸素除去性能の制御を行うこともできる。どちらの制御を先に行うことも可能であるが、消費電力などの運用コスト及び/または二酸化炭素排出量が低いほうの手段の制御を先に実施するようにしてもよい。
【0029】
(第4の実施形態)
図4は、第4の実施形態に係る純水製造装置1Dの概略構成を示している。本実施形態は、第1の実施形態に酸化剤添加手段14を追加したものであり、具体的には、酸化剤を添加した後に紫外線処理を行う促進酸化処理(AOP)に対応した構成となっている。純水製造装置1Dは、酸化剤添加手段14と、酸化剤添加手段14(より正確には、酸化剤の添加位置)の下流に位置する紫外線照射装置11と、紫外線照射装置11の下流に位置する脱イオン装置12と、を有し、これらが有機物除去手段10を構成している。濃度取得手段20は、脱イオン装置12の処理水中の易分解性有機物の濃度を取得する。
【0030】
酸化剤は限定されず、次亜ハロゲン酸、過マンガン酸、過酸化水素、過硫酸などを用いることができる。酸化剤を紫外線照射装置11の上流で添加することによって、易分解性有機物を効率的に分解することができる。剰余の酸化剤を除去するため、酸化剤の添加位置の下流に還元剤を注入してもよい。
【0031】
酸化剤の添加量を制御することで、易分解性有機物の分解を促進することができる。従って、制御装置31は、濃度取得手段20の取得値に基づき、酸化剤添加手段14の酸化剤添加量を制御する。なお、本実施形態ではAOPによって難分解性有機物の分解が促進されるため、上述した難分解性有機物の一部を易分解性有機物として扱うこともあり得る。
【0032】
濃度取得手段20は脱イオン装置12の処理水の易分解性有機物の濃度を取得することが好ましいが、第1の実施形態で述べたように、紫外線照射装置11の処理水中の易分解性有機物の濃度を取得してもよい。また、濃度取得手段20は酸化剤の添加位置と紫外線照射装置11との間の被処理水の易分解性有機物の濃度を取得してもよい。これは、AOPの場合、酸化剤の添加だけでかなりの量の易分解性有機物が分解されるためである。本実施形態では、酸化剤と紫外線照射装置11の両者で易分解性有機物を分解するため、酸化剤添加量の制御と紫外線照射量の制御を併用することができる。酸化剤添加量の制御と紫外線照射量の制御は同時に行うこともできるし、いずれかを先に行うこともできる。
【0033】
(第5の実施形態)
図5は、第5の実施形態に係る純水製造装置1Eの概略構成を示している。本実施形態は、第3の実施形態と第4の実施形態を組み合わせたものである。純水製造装置1Eは、溶存酸素除去装置13と酸化剤添加手段14とを有している。酸化剤添加手段14(より正確には、酸化剤の添加位置)は溶存酸素除去装置13と紫外線照射装置11との間に位置している。これによって、溶存酸素除去装置13が酸化剤によって酸化劣化することが防止できる。制御装置31は、濃度取得手段20の取得値に基づき、有機物除去手段10の処理水における易分解性有機物の濃度が所定の値またはその近傍の値となるように、酸化剤添加手段14の酸化剤添加量と、紫外線照射装置11の、被処理水の単位流量当たりの紫外線照射量と、溶存酸素除去装置13の溶存酸素除去性能の少なくともいずれかを制御する。
【0034】
(第6の実施形態)
図6は、第6の実施形態に係る純水製造装置1Fの概略構成を示している。本実施形態では、濃度取得手段20が紫外線照射装置11の上流に設けられており、濃度取得手段20は有機物除去手段10(ここでは紫外線照射装置11)への供給水の易分解性有機物の濃度を取得する。これ以外の構成は第1の実施形態と同様である。有機物除去手段10への供給水は、有機物除去手段10の入口水だけでなく、有機物除去手段10の上流側の任意の位置を流れる水(例えば、上流側の逆浸透膜装置やイオン交換装置の処理水)を含む。制御装置31は、濃度取得手段20の取得値に基づき、脱イオン装置12の処理水中の易分解性有機物の濃度または除去性能が所定の値となるように、紫外線照射装置11の、被処理水の単位流量当たりの紫外線照射量を制御する。
【0035】
制御装置31は、濃度取得手段20で取得した易分解性有機物の濃度と、脱イオン装置12の処理水中の易分解性有機物の濃度または除去性能との関係を記憶しており、この関係に基づき、脱イオン装置12の処理水中の易分解性有機物の濃度を算出(推定)する。易分解性有機物の濃度と、脱イオン装置12の処理水中の易分解性有機物の濃度または除去性能は、事前に取得した値または類似の装置における取得値を利用してもよい。そして、制御装置31は、算出された易分解性有機物の濃度に基づき、第1の実施形態と同様にして、紫外線照射量を制御する。または、制御装置31は、濃度取得手段20で取得した易分解性有機物の濃度と、脱イオン装置12の処理水中の易分解性有機物の濃度が所定の値となる紫外線照射量と、の関係を記憶してもよく、この関係に基づき(すなわち、易分解性有機物の濃度を算出せずに)紫外線照射量を直接制御してもよい。例えば、易分解性有機物の濃度が10μg―C/Lの時に紫外線照射装置11の調光値が70%、20μg-C/Lの時に紫外線照射装置11の調光値が100%となるように制御することができる。
【0036】
(第7の実施形態)
図7は、第7の実施形態に係る純水製造装置1Gの概略構成を示している。本実施形態では、濃度取得手段20が溶存酸素除去装置13と紫外線照射装置11との間に設けられており、濃度取得手段20は有機物除去手段10への供給水の易分解性有機物の濃度を取得する。これ以外の構成は第2の実施形態と同様である。有機物除去手段10への供給水は有機物除去手段10への中間供給水(有機物除去手段10を構成する複数の装置のうち、最上流以外の装置への供給水を意味し、ここでは紫外線照射装置11への供給水)を含んでいる。制御装置31は、濃度取得手段20の取得値に基づき、脱イオン装置12の処理水中の易分解性有機物の濃度が所定の値となるように、溶存酸素除去装置13の溶存酸素除去性能を制御する。
【0037】
制御装置31は、濃度取得手段20で取得した易分解性有機物の濃度と、脱イオン装置12の処理水中の易分解性有機物の濃度または除去性能との関係を記憶しており、この関係に基づき、脱イオン装置12の処理水中の易分解性有機物の濃度を算出(推定)する。そして、制御装置31は、算出された易分解性有機物の濃度に基づき、第1の実施形態と同様にして、溶存酸素除去装置13の溶存酸素除去性能を制御する。または、制御装置31は、濃度取得手段20で取得した易分解性有機物の濃度と、脱イオン装置12の処理水中の易分解性有機物の濃度が所定の値となる、溶存酸素計24の溶存酸素濃度と、の関係を記憶してもよく、この関係に基づき(すなわち、易分解性有機物の濃度を算出せずに)溶存酸素除去装置13の溶存酸素除去性能を直接制御してもよい。例えば、易分解性有機物の濃度が10μg-C/Lの時に溶存酸素濃度が1mg/L、20μg-C/Lの時に溶存酸素濃度が0.1mg/Lとなるように制御することができる。図示はしないが、易分解性有機物濃度と溶存酸素濃度と紫外線照射装置11の紫外線照射量との関係に基づいて溶存酸素除去性能を制御してもよい。その場合、紫外線照射装置11の紫外線照射量を制御装置31に出力してもよい。
【0038】
なお、濃度取得手段20の位置は溶存酸素除去装置13と紫外線照射装置11の間に限定されない。濃度取得手段20は、有機物除去手段10の入口水や、有機物除去手段10の上流側の任意の位置を流れる水(例えば、上流側の逆浸透膜装置やイオン交換装置の処理水)の易分解性有機物の濃度を取得してもよい。例えば、濃度取得手段20を前処理装置9と溶存酸素除去装置13にとの間に設置することもできる。しかし、濃度取得手段20を溶存酸素除去装置13の前段に設ける場合、溶存酸素除去装置13から溶出する可能性のある微量の有機成分を検出できないため、濃度取得手段20は紫外線照射装置11の直前に設けることがより好ましい。
【0039】
(第8の実施形態)
図8は、第8の実施形態に係る純水製造装置1Hの概略構成を示している。本実施形態は第6の実施形態と第7の実施形態を一体化した構成を有している。個々の装置の構成や作動については第6及び第7の実施形態と同様である。純水製造装置1Hは溶存酸素除去装置13と、溶存酸素除去装置13の下流に位置する紫外線照射装置11と、紫外線照射装置11の下流に位置する脱イオン装置12と、を有し、これらが有機物除去手段10を構成している。濃度取得手段20は紫外線照射装置11への供給水の易分解性有機物の濃度を取得する。
【0040】
制御装置31は、濃度取得手段20で取得した易分解性有機物の濃度と、脱イオン装置12の処理水中の易分解性有機物の濃度または除去性能との関係を記憶しており、この関係に基づき、脱イオン装置12の処理水中の易分解性有機物の濃度を算出(推定)する。そして、制御装置31は、算出された易分解性有機物の濃度に基づき、紫外線照射装置11の、被処理水の単位流量当たりの紫外線照射量と、溶存酸素除去装置13の溶存酸素除去性能の少なくともいずれかを制御する。本実施形態においても、第3の実施形態と同様、紫外線照射量と溶存酸素除去性能は、いずれか一方だけを制御してもよいし、両方を制御してもよい。詳細については第3の実施形態の説明を参照されたい。
【0041】
制御装置31は、濃度取得手段20で取得した易分解性有機物の濃度と、脱イオン装置12の処理水中の易分解性有機物の濃度が所定の値となる、溶存酸素計24の溶存酸素濃度または紫外線照射装置11の照射量の少なくともいずれか、の関係を記憶してもよい。そして、この関係に基づき(すなわち、易分解性有機物の濃度を算出せずに)溶存酸素除去装置13の溶存酸素除去性能または紫外線照射装置11の照射量の少なくともいずれかを直接制御してもよい。
【0042】
本発明は以上の実施形態に限定されない。例えば、濃度取得手段20を有機物除去手段10の上流に設ける構成(第6~7の実施形態)は第3~5の実施形態にも同様に適用できる。また、上述の実施形態では、有機物除去手段10は1次システムに設けられているが、同様の構成の有機物除去手段を2次システムに設けることもできるし、1次システムと2次システムの両者に設けることもできる。上述の実施形態では、水処理装置の例として純水製造装置を説明したが、本発明は純水製造装置以外の水処理装置にも適用可能である。すなわち、水処理装置が処理する被処理水は、易分解性有機物と難分解性有機物とを含む水である限り限定されず、例えば、回収水、排水等でもよい。
【0043】
上述したいずれの実施形態においても、第1の濃度計21と第2の濃度計22は同じ処理水または被処理水の濃度を取得しなくてもよい。例えば第2の濃度計22は原水または前処理装置9の処理水のいずれかの難分解性有機物の濃度を取得することもできる。その際、逆浸透膜装置などにおける難分解性有機物の除去量を考慮して紫外線照射装置11に供給される難分解性有機物の濃度を推定し、その推定値を制御装置31に出力してもよい。
【0044】
(実施例1)
純水に有機物を添加した被処理水に紫外線照射装置11で紫外線を照射し、その後イオン交換樹脂を充填した脱イオン装置12にて被処理水を処理した。図9(a)に基準例1と実施例1の装置構成を、図9(b)に比較例1の装置構成を示す。基準例1では、有機物としてIPAのみを10μg-C/L(TOC換算濃度)の濃度で添加した。実施例1と比較例1では、IPAと尿素をそれぞれ10μg-C/Lの濃度で添加した。IPAは易分解性有機物の例であり、尿素は難分解性有機物の例である。紫外線照射装置11として、低圧紫外線酸化装置(調光範囲60%~100%、100%調光時の照射量0.1kWh/m3)を用いた。脱イオン装置12には、カチオン交換樹脂(Amberjet 1024 H型(オルガノ(株)製))と、アニオン交換樹脂(Amberjet 4002 OH型(オルガノ(株)製))を混床充填した。脱イオン装置12の処理水の全有機物の濃度(TOC)をSievers製TOC計M9eで測定し、脱イオン装置12の処理水の尿素の濃度をオルガノ(株)製尿素計ORUREAで測定した。尿素の濃度はTOC値に換算した。以下、前者を全有機物濃度、後者を尿素濃度という。
【0045】
比較例1では、全有機物濃度の測定値に基づき、全有機物濃度が2μg-C/Lとなるように紫外線照射量を制御した。基準例1と実施例1では、全有機物濃度から尿素濃度(難分解性有機物の濃度)を引いた差分、すなわち易分解性有機物の濃度に基づき、易分解性有機物の濃度が2μg-C/Lとなるように紫外線照射量を制御した。基準例1では尿素が含まれないため、全有機物濃度とIPA濃度は一致する。紫外線照射量は紫外線照射装置11の調光機能を用いて制御した。表1に結果を示す。表中の照射率は、紫外線照射装置11の最大照射量(100%調光時)に対する実際の照射量の比である。基準例1と実施例1では、照射率70%で、易分解性有機物の濃度の目標値2μg-C/Lに到達した。これに対し、比較例1では、照射率は100%であったが(つまり、紫外線照射装置11をフル出力で運転したが)、全有機物濃度は11μg-C/Lまでしか下がらず、目標値に到達しなかった。基準例1と実施例1では、照射率70%で易分解性有機物が80%除去され、比較例1では、照射率100%で易分解性有機物が90%除去された。実施例1と比較例1では難分解性有機物は全く除去されなかった。以上より、比較例1では、全有機物濃度の測定値に基づき紫外線照射量を制御していることにより、難分解性有機物が除去されていない上に、易分解性有機物の濃度が目標濃度に到達しているにも拘わらず易分解性有機物の除去性能を更に10%上げるために、実施例1と比べて40%程度多い照射量を必要としていることがわかる。換言すれば、比較例1では、易分解性有機物を目標濃度を下回る値まで除去していることになり、易分解性有機物を除去するために必要以上の照射を行っていることになる。
【0046】
【表1】
【0047】
(実施例2)
純水に有機物を添加した被処理水の溶存酸素濃度を調整後、紫外線照射装置11で被処理水に紫外線を照射し、その後イオン交換樹脂を充填した脱イオン装置12にて被処理水を処理した。図10(a)に基準例2と実施例2の装置構成を、図10(b)に比較例2の装置構成を示す。被処理水の溶存酸素濃度は、紫外線照射装置11の前段に設けた真空脱気装置(溶存酸素除去装置13)の真空度を制御することで、所定の値に調整した。基準例2では、有機物としてIPAのみを10μg-C/Lの濃度で添加した。実施例2と比較例2では、IPAと尿素をそれぞれ10μg-C/Lの濃度で添加した。使用した紫外線照射装置11、イオン交換樹脂は実施例1、基準例1、比較例1と同様とした。また、全有機物濃度及び尿素濃度を実施例1、基準例1、比較例1と同じ方法で測定した。
【0048】
比較例2では、全有機物濃度の測定値に基づき、全有機物濃度が3μg-C/Lとなるように溶存酸素濃度を制御した。基準例2と実施例2では、全有機物濃度から尿素濃度(難分解性有機物の濃度)を引いた差分、すなわち易分解性有機物の濃度に基づき、易分解性有機物の濃度が3μg-C/Lとなるように溶存酸素濃度を制御した。基準例2では尿素が含まれないため、全有機物濃度とIPA濃度は一致する。表2に結果を示す。基準例2と実施例2では、溶存酸素濃度1mg/Lで、易分解性有機物の濃度の目標値3μg-C2/Lに到達した。これに対し、比較例2では、脱酸素能力下限値の0.1mg/Lまで下げたが、全有機物濃度は12μg-C/Lまでしか下がらず、目標値に到達しなかった。基準例2と実施例2では、溶存酸素濃度1mg/Lで易分解性有機物が70%除去され、比較例2では、溶存酸素濃度0.1mg/Lで易分解性有機物が80%除去された。また、実施例2と比較例2では難分解性有機物は全く除去されなかった。以上より、比較例2では、全有機物濃度の測定値に基づき溶存酸素濃度を制御していることにより、難分解性有機物が除去されていない上に、易分解性有機物の濃度が目標濃度に到達しているにも拘わらず易分解性有機物の除去性能を更に10%上げるために、実施例2と比べて溶存酸素濃度を90%減少させていることがわかる。換言すれば、比較例2では、易分解性有機物を目標濃度を下回る値まで除去していることになり、易分解性有機物を除去するために真空脱気装置の真空ポンプを必要以上の出力で運転していることになる。
【0049】
【表2】
【0050】
(実施例3)
TOC計と尿素計を紫外線照射装置11の前段に設置し、その値に基づいて紫外線照射量を制御した。具体的には、それぞれ基準例1、実施例1、比較例1と水質条件が同じである基準例3、実施例3、比較例3について、紫外線照射量を比較した。図11(a)に基準例3と実施例3の装置構成を、図11(b)に比較例3の装置構成を示す。本実施例では、脱イオン装置12の処理水中の易分解性有機物の濃度と、紫外線照射量と、の関係を示すデータを予め所得している。基準例3、実施例3では、全有機物濃度から尿素濃度(難分解性有機物の濃度)を引いた差分、すなわち易分解性有機物の濃度に基づき、紫外線の調光値を制御した。比較例3では、比較例1と同様に全有機物濃度のみを測定し、その測定値に基づき、紫外線の調光値を制御した。基準例3と実施例3では、易分解性有機物の濃度が2μg-C/Lとなるように紫外線照射量を制御した。具体的には、上記データに基づき、紫外線の調光値は、易分解性有機物の濃度が10μg-C/Lのときに70%、20μg-C/Lのときに100%となるように設定した。比較例3では、全有機物濃度が2μg-C/Lとなるように紫外線照射量を制御した。具体的には、上記データに基づき、紫外線の調光値は、全有機物濃度の濃度が10μg-C/Lのときに70%、20μg-C/Lのときに100%となるように設定した。基準例3、実施例3、比較例3はそれぞれ、基準例1、実施例1、比較例1と同じ結果を示した(すなわち、表1に示すのと同様の結果が得られた)。TOC計と尿素計を紫外線照射装置11の前段に設置し、これらの測定値に基づき紫外線照射装置11を制御しても、易分解性有機物を効率よく除去できることが確認された。
【0051】
(実施例4)
TOC計と尿素計を溶存酸素除去装置13の前段に設置し、その値に基づいて溶存酸素除去装置13の溶存酸素除去性能を制御した。具体的には、それぞれ基準例2、実施例2、比較例2と水質条件が同じである基準例4、実施例4、比較例4について紫外線照射量を比較した。図12(a)に基準例4と実施例4の装置構成を、図12(b)に比較例4の装置構成を示す。本実施例では、脱イオン装置12の処理水中の易分解性有機物の濃度と、溶存酸素除去装置13の溶存酸素除去性能と、の関係を示すデータを予め所得している。基準例4、実施例4では、全有機物濃度から尿素濃度(難分解性有機物の濃度)を引いた差分、すなわち易分解性有機物の濃度に基づき、溶存酸素除去装置13の溶存酸素除去性能を制御した。比較例4では、比較例2と同様に全有機物濃度のみを測定し、その測定値に基づき、溶存酸素除去装置13の溶存酸素除去性能を制御した。基準例4と実施例4では、易分解性有機物の濃度が2μg-C/Lとなるように溶存酸素除去装置13の溶存酸素除去性能を制御した。具体的には、上記データに基づき、溶存酸素除去性能は、易分解性有機物の濃度が10μg-C/Lのときに溶存酸素濃度が1mg/L、20μg-C/Lのときに溶存酸素濃度が0.1mg/Lとなるように設定した。比較例4では、全有機物濃度が2μg-C/Lとなるように溶存酸素除去性能を制御した。具体的には、上記データに基づき、溶存酸素除去性能は、全有機物濃度の濃度が10μg-C/Lのときに溶存酸素濃度が1mg/L、20μg-C/Lのときに溶存酸素濃度が0.1mg/Lとなるように設定した。基準例4、実施例4、比較例4はそれぞれ、基準例2、実施例2、比較例2と同じ結果を示した(すなわち、表2に示すのと同様の結果が得られた)。TOC計と尿素計を溶存酸素除去装置13の前段に設置し、これらの測定値に基づき溶存酸素除去装置13の溶存酸素除去性能を制御しても、易分解性有機物を効率よく除去できることが確認された。
【符号の説明】
【0052】
1A~1H 純水製造装置
10 有機物除去手段
11 紫外線照射装置
12 脱イオン装置
13 溶存酸素除去装置
14 酸化剤添加手段
20 濃度取得手段
21 第1の濃度計
22 第2の濃度計
23 易分解性有機物の濃度を算出する手段
24 溶存酸素計
31 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12