(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172171
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20231129BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20231129BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H01L21/52 C
H01L25/04 C
H01L21/60 321E
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083792
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北市 幸佑
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 正俊
(72)【発明者】
【氏名】民本 秀明
(72)【発明者】
【氏名】前田 武彦
(72)【発明者】
【氏名】高田 圭太
(72)【発明者】
【氏名】京極 好孝
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047AA11
5F047BA21
5F047BA53
5F047BB13
5F047BB16
(57)【要約】
【課題】半導体装置の性能を向上させる。
【解決手段】半導体装置を製造するには、リードフレームLFのダイパッドDPH上に、導電性ペースト型の接着材BDHを介して半導体チップCPHを搭載してから、接着材BDHを硬化させるための第1熱処理を行う。その後、導電性ペースト型の接着材BD1を介して半導体チップCPHのパッドPDHSと対向するように、金属板MP1を半導体チップCPHのパッドPDHS上に配置してから、接着材BDHおよび接着材BD1を硬化させるための第2熱処理を行う。第1熱処理の熱処理時間は、第2熱処理の熱処理時間よりも短い。接着材BDHは、第1熱処理により硬化した後、第2熱処理により更に硬化する。
【選択図】
図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を有する半導体装置の製造方法:
(a)第1チップ搭載部を有するリードフレームを準備する工程、
(b)前記第1チップ搭載部上に、導電性フィラーを含む導電性ペースト型の第1接着材を供給する工程、
(c)前記(b)工程の後、互いに反対側に位置する第1表面電極および第1裏面電極を有する第1半導体チップを、前記第1裏面電極が前記第1チップ搭載部に対向するように、前記第1チップ搭載部上に前記第1接着材を介して搭載する工程、
(d)前記(c)工程の後、前記第1接着材を硬化させるための第1熱処理を行う工程、
(e)前記(d)工程の後、前記第1半導体チップの前記第1表面電極上に導電性フィラーを含む導電性ペースト型の第2接着材を供給する工程、
(f)前記(e)工程の後、前記第2接着材を介して前記第1半導体チップの前記第1表面電極と対向するように、第1金属板を前記第1半導体チップの前記第1表面電極上に配置する工程、
(g)前記(f)工程の後、前記第1接着材および前記第2接着材を硬化させるための第2熱処理を行う工程、
ここで、
前記第1熱処理の熱処理時間は、前記第2熱処理の熱処理時間よりも短く、
前記第1接着材は、前記(d)工程の前記第1熱処理により硬化した後、前記(g)工程の前記第2熱処理により更に硬化する。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1熱処理の熱処理温度は、前記第2熱処理の熱処理温度よりも低い、半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1接着材および前記第2接着材は、それぞれ銀ペーストからなる、半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1半導体チップの前記第1裏面電極は、前記第1接着材を介して前記第1半導体チップと電気的に接続され、
前記第1半導体チップの前記第1表面電極は、前記第2接着材を介して前記第1金属板と電気的に接続される、半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1半導体チップは、スイッチ用の第1電界効果トランジスタを含み、
前記第1表面電極は、前記第1電界効果トランジスタのソース用であり、
前記第1裏面電極は、前記第1電界効果トランジスタのドレイン用である、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程で準備された前記リードフレームは、第1導体部を更に有し、
前記(e)工程では、前記第1半導体チップの前記第1表面電極上に前記第2接着材を供給し、前記第1導体部上に導電性ペースト型の第3接着材を供給し、
前記(f)工程では、前記第1半導体チップの前記第1表面電極に前記第2接着材を介して対向し、かつ、前記第1導体部に前記第3接着材を介して対向するように、前記第1金属板を配置し、
前記(g)工程では、前記第1接着材、前記第2接着材および前記第3接着材を硬化させるための前記第2熱処理を行う、半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1半導体チップの前記第1裏面電極は、前記第1接着材を介して前記第1半導体チップと電気的に接続され、
前記第1半導体チップの前記第1表面電極は、前記第2接着材、前記第1金属板および前記第3接着材を介して、前記第1導体部と電気的に接続される、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程で準備された前記リードフレームは、前記第1導体部に一体的に連結された複数のリード部を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程で準備された前記リードフレームは、第2チップ搭載部を更に有し、
(b1)前記第2チップ搭載部上にペースト型の第4接着材を供給する工程、
(c1)前記(b1)工程の後で、かつ前記(d)工程の前に、第2表面電極を有する第2半導体チップを前記第2チップ搭載部上に前記第4接着材を介して搭載する工程、
を更に有し、
前記(d)工程では、前記第1接着材および前記第4接着材を硬化させるための前記第1熱処理を行い、
前記(g)工程では、前記第1接着材、前記第2接着材および前記第4接着材を硬化させるための前記第2熱処理を行う、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1半導体チップは、第3表面電極を更に有し、
(h)前記(g)工程の後、前記第1半導体チップの前記第3表面電極と前記第2半導体チップの前記第2表面電極とを導電性のワイヤを介して電気的に接続する工程、
を更に有する、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
(i)前記(g)工程の後、前記第1半導体チップ、前記第1金属板および前記第1チップ搭載部を封止する封止部を形成する工程、
を更に有する、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
以下の工程を有する半導体装置の製造方法:
(a)第1チップ搭載部および第2チップ搭載部を有するリードフレームを準備する工程、
(b)前記第1チップ搭載部上に、導電性フィラーを含む導電性ペースト型の第1接着材を供給する工程、
(c)前記(b)工程の後、互いに反対側に位置する第1表面電極および第1裏面電極を有する第1半導体チップを、前記第1裏面電極が前記第1チップ搭載部に対向するように、前記第1チップ搭載部上に前記第1接着材を介して搭載する工程、
(d)前記(c)工程の後、前記第1接着材を硬化させるための第1熱処理を行う工程、
(e)前記(d)工程の後、前記第2チップ搭載部上に、ペースト型の第2接着材を供給する工程、
(f)前記(e)工程の後、第2半導体チップを前記第2チップ搭載部上に前記第2接着材を介して搭載する工程、
(g)前記(f)工程の後、前記第1接着材および前記第2接着材を硬化させるための第2熱処理を行う工程、
ここで、
前記第1熱処理の熱処理時間は、前記第2熱処理の熱処理時間よりも短く、
前記第1接着材は、前記(d)工程の前記第1熱処理により硬化した後、前記(g)工程の前記第2熱処理により更に硬化する。
【請求項13】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1熱処理の熱処理温度は、前記第2熱処理の熱処理温度よりも低い、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1接着材および前記第2接着材は、それぞれ銀ペーストからなる、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程で準備された前記リードフレームは、第1導体部を更に有し、
(f1)前記(f)工程の後で、かつ前記(g)工程の前に、前記第1半導体チップの前記第1表面電極上に導電性ペースト型の第3接着材を供給し、前記第1導体部上に導電性ペースト型の第4接着材を供給する工程、
(f2)前記(f1)工程の後、前記第1半導体チップの前記第1表面電極に前記第3接着材を介して対向し、かつ、前記第1導体部に前記第4接着材を介して対向するように、第1金属板を配置する工程、
を更に有し、
前記(g)工程では、前記第1接着材、前記第2接着材、前記第3接着材および前記第4接着材を硬化させるための前記第2熱処理を行う、半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1半導体チップの前記第1裏面電極は、前記第1接着材を介して前記第1半導体チップと電気的に接続され、
前記第1半導体チップの前記第1表面電極は、前記第3接着材、前記第1金属板および前記第4接着材を介して、前記第1導体部と電気的に接続される、半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項16記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程で準備された前記リードフレームは、前記第1導体部に一体的に連結された複数のリード部を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1半導体チップは、スイッチ用の第1電界効果トランジスタを含み、
前記第1表面電極は、前記第1電界効果トランジスタのソース用であり、
前記第1裏面電極は、前記第1電界効果トランジスタのドレイン用である、半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
(h)前記(g)工程の後、前記第1半導体チップ、前記第2半導体チップ、前記第1チップ搭載部および前記第2チップ搭載部を封止する封止部を形成する工程、
を更に有する、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、例えば、導電性ペースト型接着材を用いてダイボンディングを行う半導体装置の製造方法に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
特開2018-121035号公報(特許文献1)には、ハイサイドスイッチ用の電界効果トランジスタを含む半導体チップと、ロウサイドスイッチ用の電界効果トランジスタを含む半導体チップと、それらを制御する半導体チップと、を封止した半導体装置に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
裏面電極を有する半導体チップを用いて半導体装置を製造する場合、その半導体チップをリードフレームのダイパッド上にダイボンディング材を介して搭載する。この際、半導体チップの裏面電極がダイパッドに対向するように半導体チップを搭載し、ダイボンディング材として導電性ペースト型接着材を用いることにより、半導体チップの裏面電極をダイパッドに電気的に接続することができる。しかしながら、半導体チップの裏面電極とダイパッドとの間に介在する導電性ペースト型接着材において、その接着材に含まれている導電性フィラーが半導体装置の製造工程中に沈降してしまうと、半導体チップの裏面電極とダイパッドとの間の電気抵抗および熱抵抗が大きくなってしまう。半導体チップの裏面電極とダイパッドとの間の電気抵抗および熱抵抗が大きくなることは、半導体装置の性能の低下につながるため、望ましくない。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態によれば、半導体装置の製造方法は、リードフレームの第1チップ搭載部上に、導電性フィラーを含む導電性ペースト型の第1接着材を介して第1半導体チップを搭載する工程と、その後に、前記第1接着材を硬化させるための第1熱処理を行う工程と、その後に、導電性フィラーを含む導電性ペースト型の第2接着材を介して前記第1半導体チップの第1表面電極と対向するように、第1金属板を配置する工程と、を有する。半導体装置の製造方法は、前記第1金属板を配置する工程の後に、前記第1接着材および前記第2接着材を硬化させるための第2熱処理を行う工程を有する。前記第1熱処理の熱処理時間は、前記第2熱処理の熱処理時間よりも短い。前記第1接着材は、前記第1熱処理により硬化した後、前記第2熱処理により更に硬化する。
【発明の効果】
【0007】
一実施の形態によれば、半導体装置の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施の形態の半導体装置を用いたインバータ回路を示す回路図である。
【
図4】一実施の形態の半導体装置の平面透視図である。
【
図5】一実施の形態の半導体装置の平面透視図である。
【
図10】一実施の形態の半導体装置の製造工程を示す工程フロー図である。
【
図11】一実施の形態の半導体装置の製造工程中の平面図である。
【
図12】
図11に続く半導体装置の製造工程中の平面図である。
【
図13】
図12に続く半導体装置の製造工程中の平面図である。
【
図14】
図13と同じ半導体装置の製造工程中の断面図である。
【
図15】
図13に続く半導体装置の製造工程中の平面図である。
【
図16】
図15に続く半導体装置の製造工程中の平面図である。
【
図17】
図16と同じ半導体装置の製造工程中の断面図である。
【
図18】
図16と同じ半導体装置の製造工程中の断面図である。
【
図19】
図16に続く半導体装置の製造工程中の平面図である。
【
図20】
図19に続く半導体装置の製造工程中の平面図である。
【
図21】
図20と同じ半導体装置の製造工程中の断面図である。
【
図22】
図20と同じ半導体装置の製造工程中の断面図である。
【
図23】
図20に続く半導体装置の製造工程中の平面図である。
【
図24】
図23に続く半導体装置の製造工程中の平面図である。
【
図25】
図24と同じ半導体装置の製造工程中の断面図である。
【
図26】
図24と同じ半導体装置の製造工程中の断面図である。
【
図27】
図24と同じ半導体装置の製造工程中の断面図である。
【
図28】検討例の半導体装置の製造工程を示す工程フロー図である。
【
図33】他の実施の形態の半導体装置の製造工程を示す工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0010】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0011】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0012】
また、本願においては、電界効果トランジスタをMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)または単にMOSと記載するが、ゲート絶縁膜として非酸化膜を除外するものではない。すなわち、本願において、MOSFETというときは、ゲート絶縁膜に酸化膜(酸化シリコン膜)を用いたMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor:MIS型電界効果トランジスタ)だけでなく、酸化膜(酸化シリコン膜)以外の絶縁膜をゲート絶縁膜に用いたMISFETも含むものとする。
【0013】
(実施の形態1)
<回路構成について>
図1は、本実施の形態の半導体装置(半導体パッケージ、電子装置)PKGを用いたインバータ回路INVを示す回路図である。なお、
図1において、符号CPHを付した点線で囲まれた部分が、半導体チップCPH内に形成され、符号CPLを付した点線で囲まれた部分が、半導体チップCPL内に形成され、符号CPCを付した点線で囲まれた部分が、半導体チップCPC内に形成され、符号PKGを付した一点鎖線で囲まれた部分が、半導体装置PKG内に形成されている。
【0014】
図1に示されるインバータ回路INVに用いられている半導体装置PKGは、2つのパワーMOSFET1,2と制御回路CLCとを有している。制御回路CLCは、半導体チップCPC内に形成され、パワーMOSFET1は、半導体チップCPH内に形成され、パワーMOSFET2は、半導体チップCPL内に形成されている。そして、これら3つの半導体チップCPC,CPH,CPLが1つの同一のパッケージとして封止されて、半導体装置PKGが形成されている。
【0015】
制御回路CLCは、パワーMOSFET1のゲートの電位を制御するハイサイド用ドライバ回路と、パワーMOSFET2のゲートの電位を制御するロウサイド用ドライバ回路と、を含んでいる。制御回路CLCは、半導体装置PKGの外部の制御回路CTから制御回路CLCに供給された信号などに応じて、パワーMOSFET1,2のそれぞれのゲートの電位を制御し、パワーMOSFET1,2のそれぞれの動作を制御する回路である。
【0016】
パワーMOSFET1のゲートは、制御回路CLCのハイサイド用ドライバ回路に接続され、パワーMOSFET2のゲートは、制御回路CLCのロウサイド用ドライバ回路に接続されている。パワーMOSFET1のドレインは端子TE1に接続され、パワーMOSFET1のソースは端子TE2に接続され、パワーMOSFET2のドレインは端子TE3に接続され、パワーMOSFET2のソースは端子TE4に接続されている。
図1において、符合D1はパワーMOSFET1のドレインを示し、符号S1はパワーMOSFET1のソースを示し、符合D2はパワーMOSFET2のドレインを示し、符号S2はパワーMOSFET2のソースを示している。制御回路CLCは端子TE5に接続され、この端子TE5は、半導体装置PKGの外部に設けられた制御回路CTに接続されている。
【0017】
端子TE1,TE2,TE3,TE4,TE5は、いずれも、半導体装置PKGの外部接続用端子であり、後述のリードLDにより形成されている。このうち、端子TE1は、電源電位供給用の端子であり、後述のリードLD1が、端子TE1に対応している。また、端子TE4は、基準電位供給用の端子であり、後述のリードLD4が、端子TE4に対応している。なお、電源電位供給用の端子TE1(リードLD1)には、半導体装置PKGの外部の電源の高電位側の電位(電源電位)VINが供給され、基準電位供給用の端子TE4(リードLD4)には、電源電位供給用の端子TE1に供給される電位VINよりも低い基準電位、例えばグランド電位(接地電位)GND、が供給される。
【0018】
また、後述のリードLD2が端子TE2に対応し、後述のリードLD3が端子TE3に対応している。端子TE2(リードLD2)と端子TE3(リードLD3)とは、半導体装置PKGの外部において、電気的に接続されている。すなわち、パワーMOSFET1のソースとパワーMOSFET2のドレインとは、半導体装置PKGの外部に設けられた導電経路(例えば半導体装置PKGを実装する配線基板に設けられた導電経路)を経由して、電気的に接続された状態になっている。このため、パワーMOSFET1とパワーMOSFET2とが、電源電位供給用の端子TE1と基準電位供給用の端子TE4との間に、直列に接続された状態になっている。パワーMOSFET1がハイサイド用MOSFETに対応し、パワーMOSFET2がロウサイド用MOSFETに対応している。すなわち、パワーMOSFET1は、ハイサイドスイッチ(高電位側スイッチ)用の電界効果トランジスタであり、パワーMOSFET2は、ロウサイドスイッチ(低電位側スイッチ)用の電界効果トランジスタである。パワーMOSFET1,2は、それぞれ、スイッチング用のパワートランジスタとみなすことができる。
【0019】
パワーMOSFET1(のソース)とパワーMOSFET2(のドレイン)との接続点TE6は、半導体装置PKGの外部(例えば半導体装置PKGを実装する配線基板)に設けられており、この接続点TE6は、負荷(ここではモータMOTのコイルCL)に接続されている。半導体装置PKGを用いたインバータ回路INVに供給された直流電力は、インバータ回路INVで交流電力に変換されて、負荷(ここではモータMOTのコイルCL)に供給される。
【0020】
また、後述のリードLD5が端子TE5に対応している。
図1には、端子TE5は1つしか示していないが、実際には、半導体装置PKGにおいて、端子TE5に対応するリードLD5は複数設けられている。半導体装置PKG内の制御回路CLCは、端子TE5(リードLD5)と、半導体装置PKGを実装した配線基板の配線などを通じて、半導体装置PKGの外部に設けられた制御回路CTに接続される。
【0021】
<半導体装置の構造について>
図2は、本実施の形態の半導体装置PKGの上面図であり、
図3は、半導体装置PKGの下面図(裏面図)であり、
図4および
図5は、半導体装置PKGの平面透視図であり、
図6~
図9は、半導体装置PKGの断面図である。
図4には、半導体装置PKGを下面側から見たときの、封止部MRを透視した平面透視図が示されている。また、
図5は、
図4において、更にワイヤBWおよび金属板MP1,MP2を透視(省略)したときの半導体装置PKGの下面側の平面透視図が示されている。また、
図4および
図5では、封止部MRの外周の位置を点線で示してある。また、
図2~
図4のA1-A1線の位置での半導体装置PKGの断面が、
図6にほぼ対応し、
図2~
図4のA2-A2線の位置での半導体装置PKGの断面が、
図7にほぼ対応し、
図2~
図4のA3-A3線の位置での半導体装置PKGの断面が、
図8にほぼ対応し、
図2~
図4のA4-A4線の位置での半導体装置PKGの断面が、
図9にほぼ対応している。なお、各平面図に示したX方向とY方向とは、互いに直交する方向である。
【0022】
図1~
図9に示される本実施の形態の半導体装置PKGは、樹脂封止型の半導体パッケージ形態の半導体装置であり、ここではSOP(Small Outline Package)形態の半導体装置である。以下、
図2~
図9を参照しながら、半導体装置PKGの構成について説明する。
【0023】
図2~
図9に示される本実施の形態の半導体装置PKGは、ダイパッド(チップ搭載部)DPC,DPH,DPLと、そのダイパッドDPC,DPH,DPLの各々の主面上に搭載された半導体チップCPC,CPH,CPLと、金属板MP1,MP2と、複数のワイヤ(ボンディングワイヤ)BWと、複数のリードLDと、これらを封止する封止部(封止体)MRとを有している。
【0024】
樹脂封止部しての封止部MRは、例えば熱硬化性樹脂材料などの樹脂材料などからなり、フィラーなどを含むこともできる。例えば、フィラーを含むエポキシ樹脂などを用いて封止部MRを形成することができる。
【0025】
封止部MRは、主面(上面)MRaと、主面MRaとは反対側の裏面(下面)MRbと、主面MRaおよび裏面MRbに交差する側面MRc1,MRc2,MRc3,MRc4と、を有している。側面MRc1,MRc3は、X方向に略平行であり、側面MRc2,MRc4は、Y方向に略平行である。また、主面MRaおよび裏面MRbのそれぞれは、X方向およびY方向の両方に平行な面である。封止部MRの平面形状、すなわち、封止部MRの主面MRaおよび裏面MRbの平面形状は、例えば矩形状(長方形状)であり、封止部MRのX方向の寸法は、封止部MRのY方向の寸法よりも大きい。
【0026】
複数のリードLDのそれぞれは、一部が封止部MR内に封止され、他の一部が封止部MRの側面から封止部MRの外部に突出している。以下では、リードLDのうちの封止部MR内に位置する部分をインナリード部と呼び、リードLDのうちの封止部MR外に位置する部分をアウタリード部と呼ぶものとする。リードLDのアウタリード部には、半田メッキ層などのメッキ層(図示せず)を形成することもできる。
【0027】
なお、本実施の形態の半導体装置PKGは、各リードLDの一部(アウタリード部)が封止部MRの側面から突出した構造であり、以下ではこの構造に基づいて説明するが、この構造に限定されるものではない。例えば、封止部MRの側面から各リードLDがほとんど突出せず、かつ封止部MRの裏面MRbで各リードLDの一部が露出した構成(SON(Small Outline Nonleaded Package)型の構成)などを採用することもできる。
【0028】
半導体装置PKGが有する複数のリードLDは、封止部MRの側面MRc1側に配置された複数のリードLDと、封止部MRの側面MRc3側に配置された複数のリードLDとで構成されている。
【0029】
封止部MRの側面MRc1側に配置された複数のリードLDの各アウタリード部は、封止部MRの側面MRc1から封止部MR外に突出している。また、封止部MRの側面MRc3側に配置された複数のリードLDの各アウタリード部は、封止部MRの側面MRc3から封止部MR外に突出している。各リードLDのアウタリード部は、アウタリード部の端部近傍の下面が封止部MRの裏面MRbとほぼ同一平面上に位置するように、折り曲げ加工されている。リードLDのアウタリード部は、半導体装置PKGの外部接続用端子部(外部端子)として機能する。なお、半導体装置PKGが有する複数のリードLDは、後述のリードLD1,LD2,LD3,LD4,LD5,LD6,LD7,LD8を含んでいる。
【0030】
ダイパッドDPCは、半導体チップCPCを搭載するチップ搭載部であり、ダイパッドDPHは、半導体チップCPHを搭載するチップ搭載部であり、ダイパッドDPLは、半導体チップCPLを搭載するチップ搭載部である。ダイパッドDPC,DPH,DPLのそれぞれの平面形状は、例えば、X方向に平行な辺とY方向に平行な辺とを有する矩形である。
【0031】
ダイパッドDPHとダイパッドDPCとダイパッドDPLとは、この順でX方向に並んで配置されている。このため、X方向においてダイパッドDPHとダイパッドDPLとの間にダイパッドDPCが配置されている。ダイパッドDPH,DPC,DPLは、所定の間隔で互いに離間しており、それらの間には封止部MRの一部が介在している。
【0032】
ダイパッドDPC,DPH,DPLと複数のリードLDとは、導電体で構成されており、好ましくは銅(Cu)または銅合金などの金属材料からなる。また、ダイパッドDPC,DPH,DPLと複数のリードLDとは、同じ材料(同じ金属材料)で形成されていることが好ましく、これにより、ダイパッドDPC,DPH,DPLおよび複数のリードLDが連結された後述のリードフレームLFを作製しやすくなり、リードフレームLFを用いた半導体装置PKGの製造が容易になる。
【0033】
ダイパッドDPCは、半導体チップCPCを搭載する側の主面DPCaと、それとは反対側の裏面DPCbとを有している。また、ダイパッドDPHは、半導体チップCPHを搭載する側の主面DPHaと、それとは反対側の裏面DPHbとを有している。また、ダイパッドDPLは、半導体チップCPLを搭載する側の主面DPLaと、それとは反対側の裏面DPLbとを有している。
【0034】
各ダイパッドDPC,DPH,DPLは、少なくとも一部が封止部MRによって封止されているが、本実施の形態では、ダイパッドDPC,DPL,DPHの裏面DPCb,DPLb,DPHbが、封止部MRの主面MRaから露出されている。これにより、半導体チップCPC,CPH,CPLの動作時に発生した熱を、ダイパッドDPC,DPH,DPLを通じて半導体装置PKGの外部に放熱することができる。
【0035】
また、ダイパッドDPC,DPH,DPL、リードLDおよびリード連結部LB2,LB4において、半導体チップCPC,CPH,CPLが搭載される領域、ワイヤBWが接続される領域、および金属板MP1,MP2が接続される領域には、銀(Ag)などからなるメッキ層(図示せず)を形成することもできる。
【0036】
半導体チップDPC,DPH,DPLのそれぞれは、一方の主面である表面と、それとは反対側の主面である裏面とを有している。
【0037】
半導体チップCPHの裏面(裏面全面)には裏面電極BEHが形成されており、半導体チップCPHは、半導体チップCPHの裏面電極BEHをダイパッドDPHに向けた状態で、ダイパッドDPHの主面DPHa上に導電性の接着材BDHを介して搭載されている。半導体チップCPHの裏面電極BEHは、導電性の接着材BDHを介してダイパッドDPHに電気的に接続されている。
【0038】
半導体チップCPLの裏面(裏面全面)には裏面電極BELが形成されており、半導体チップCPLは、半導体チップCPLの裏面電極BELをダイパッドDPLに向けた状態で、ダイパッドDPLの主面DPLa上に導電性の接着材BDLを介して搭載されている。半導体チップCPLの裏面電極BELは、導電性の接着材BDLを介してダイパッドDPLに電気的に接続されている。
【0039】
半導体チップCPCは、ダイパッドDPCの主面DPCa上に、半導体チップCPCの裏面をダイパッドDPCに向けた状態で、導電性の接着材BDCを介して搭載されている。半導体チップCPCの裏面には裏面電極は形成されていない。なお、本実施の形態では、半導体チップCPC用の接着材BDCは導電性を有しているが、半導体チップCPCは裏面電極を有していないため、半導体チップCPC用の接着材BDCは絶縁性であってもよい。
【0040】
半導体チップCPC,CPH,CPLのそれぞれの平面形状は、例えば矩形状である。平面視において、半導体チップCPHは、ダイパッドDPHの主面DPHaに内包され、半導体チップCPLは、ダイパッドDPHLの主面DPLaに内包され、半導体チップCPCは、ダイパッドDPCの主面DPCaに内包されている。半導体チップCPC,CPH,CPLは、封止部MR内に封止されており、封止部MRから露出されない。
【0041】
半導体チップCPHの裏面電極BEHは、ドレイン電極であり、半導体チップCPH内に形成された上記パワーMOSFET1のドレインに電気的に接続されている。半導体チップCPLの裏面電極BELは、ドレイン電極であり、半導体チップCPL内に形成された上記パワーMOSFET2のドレインに電気的に接続されている。接着材BDH,BDLは、銀ペーストなどの導電性ペースト型の接着材を用いることができる。
【0042】
半導体チップCPHの表面には、ソース用のパッドPDHSとゲート用のパッドPDHGとを含む複数のパッドPDHが形成されている。半導体チップCPLの表面には、ソース用のパッドPDLSとゲート用のパッドPDLGとを含む複数のパッドPDLが形成されている。半導体チップCPCの表面には、複数のパッドPDCが形成されている。なお、「ボンディングパッド」、「ボンディングパッド電極」、「パッド電極」あるいは「電極」を、単に「パッド」と称することとする。ソース用のパッドPDHSを含むパッドPDHは、半導体チップCPHにおいて、裏面電極BEHとは反対側に位置しているため、半導体チップCPHの表面電極とみなすことができる。また、ソース用のパッドPDLSを含むパッドPDLは、半導体チップCPLにおいて、裏面電極BELとは反対側に位置しているため、半導体チップCPLの表面電極とみなすことができる。また、パッドPDCは、半導体チップCPCの表面電極とみなすことができる。
【0043】
半導体チップCPHのゲート用のパッドPDHGは、半導体チップCPH内に形成された上記パワーMOSFET1のゲート電極に電気的に接続されている。半導体チップCPHのソース用のパッドPDHSは、半導体チップCPH内に形成された上記パワーMOSFET1のソースに電気的に接続されている。半導体チップCPHにおいて、ソース用のパッドPDHSの平面寸法(面積)は、パッドPDHS以外のパッドPDHのそれぞれの平面寸法よりも大きい。
【0044】
半導体チップCPLのゲート用のパッドPDLGは、半導体チップCPL内に形成された上記パワーMOSFET2のゲート電極に電気的に接続されている。半導体チップCPLのソース用のパッドPDLSは、半導体チップCPL内に形成された上記パワーMOSFET2のソースに電気的に接続されている。半導体チップCPLにおいて、ソース用のパッドPDLSの平面寸法(面積)は、パッドPDLS以外のパッドPDLのそれぞれの平面寸法よりも大きい。
【0045】
半導体チップCPCのパッドPDCは、半導体チップCPCの内部配線を通じて、半導体チップCPC内に形成された上記制御回路CLCに電気的に接続されている。
【0046】
なお、半導体チップCPHを構成する半導体基板には、パワーMOSFET1を構成する複数の単位トランジスタセルが形成されており、パワーMOSFET1は、これら複数の単位トランジスタセルが並列に接続されることで形成されている。また、半導体チップCPLを構成する半導体基板には、パワーMOSFET2を構成する複数の単位トランジスタセルが形成されており、パワーMOSFET2は、これら複数の単位トランジスタセルが並列に接続されることで形成されている。各単位トランジスタセルは、例えばトレンチゲート型MISFETからなる。半導体チップCPH,CPLのそれぞれにおいて、パワーMOSFETのソース・ドレイン間の電流は、その半導体チップを構成する半導体基板の厚さ方向に流れる。
【0047】
半導体チップCPHのソース用のパッドPDHS以外のパッドPDH(ゲート用のパッドPDHGを含む)は、それぞれ、ワイヤBWを介して半導体チップCPCのパッドPDCと電気的に接続されている。すなわち、ソース用のパッドPDHS以外のパッドPDHのそれぞれにワイヤBWの一端が接続され、そのワイヤBWの他端は、半導体チップCPCのパッドPDCに接続されている。半導体チップCPLのソース用のパッドPDLS以外のパッドPDL(ゲート用のパッドPDLGを含む)は、それぞれ、ワイヤBWを介して半導体チップCPCのパッドPDCと電気的に接続されている。すなわち、ソース用のパッドPDLS以外のパッドPDLのそれぞれにワイヤBWの一端が接続され、そのワイヤBWの他端は、半導体チップCPCのパッドPDCに接続されている。
【0048】
ワイヤ(ボンディングワイヤ)BWは、導電性のワイヤである。ワイヤBWは、具体的には金属からなるが、金(Au)ワイヤ、銅(Cu)ワイヤ、あるいはアルミニウム(Al)ワイヤなどを好適に用いることができる。ワイヤBWは、封止部MR内に封止されており、封止部MRから露出されない。各リードLDにおいて、ワイヤBWの接続箇所は、封止部MR内に位置するインナリード部である。
【0049】
半導体チップCPHのソース用のパッドPDHSは、金属板MP1を通じて、リード連結部(導体部)LB2と電気的に接続されている。すなわち、金属板MP1は、半導体チップCPHのソース用のパッドPDHSに導電性の接着材BD1を介して接合され、また、リード連結部LB2に導電性の接着材BD2を介して接合されている。
【0050】
半導体チップCPLのソース用のパッドPDLSは、金属板MP2を通じて、リード連結部(導体部)LB4と電気的に接続されている。すなわち、金属板MP2は、半導体チップCPLのソース用のパッドPDLSに導電性の接着材BD3を介して接合され、また、リード連結部LB4に導電性の接着材BD4を介して接合されている。
【0051】
半導体チップCPHのソース用のパッドPDHSとリードLD2とを電気的に接続するのに、ワイヤではなく金属板MP1を用いたことで、パワーMOSFET1のオン抵抗を低減できる。また、半導体チップCPLのソース用のパッドPDLSとリードLD4とを電気的に接続するのに、ワイヤではなく金属板MP2を用いたことで、パワーMOSFET2のオン抵抗を低減できる。これにより、パッケージ抵抗を低減でき、導通損失を低減できる。
【0052】
金属板MP1,MP2は、導電体からなる導体板であるが、好ましくは、銅(Cu)、銅(Cu)合金、アルミニウム(Al)またはアルミニウム(Al)合金のような導電性および熱伝導性の高い金属材料によって形成されている。各金属板MP1,MP2のX方向およびY方向の寸法(幅)は、それぞれワイヤBWの直径よりも大きい。接着材BD1,BD2,BD3,BD4は、銀ペーストなどの導電性ペースト型の接着材を用いることができる。
【0053】
半導体チップCPCの複数のパッドPDCのうち、半導体チップCPHのパッドPDHにも半導体チップCPLのパッドPDLにも接続されていないパッドPDCは、それぞれワイヤBWを通じて、半導体装置PKGが有する複数のリードLDのうちのリードLD5と電気的に接続されている。すなわち、半導体チップCPHのパッドPDHにも半導体チップCPLのパッドPDLにも接続されていない半導体チップCPCのパッドPDCのそれぞれに、ワイヤBWの一端が接続され、そのワイヤBWの他端は、リードLD5のインナリード部に接続されている。各リードLD5は、ダイパッドDPC,DPH,DPL、リードLD1,LD2,LD3,LD4およびリード連結部LB1,LB2,LB3,LB4のいずれにも、導体を介しては繋がっておらず、孤立したリードである。
【0054】
リード連結部LB2には、半導体装置PKGが有する複数のリードLDのうちの複数のリードLD2が一体的に接続されている。このため、リード連結部LB2は、複数のリードLD2のインナリード部同士を連結する導体部であり、また、金属板MP1を接続する導体部でもある。複数のリードLD2およびリード連結部LB2は、金属板MP1および導電性の接着材BD1,BD2を通じて、半導体チップCPHのソース用のパッドPDHSと電気的に接続され、従って、半導体チップCPH内に形成されている上記パワーMOSFET1のソースに電気的に接続されている。このため、複数のリードLD2は、ハイサイド用の上記パワーMOSFET1のソース用のリードであり、上記端子TE2に対応している。
【0055】
リード連結部LB4には、半導体装置PKGが有する複数のリードLDのうちの複数のリードLD4が一体的に接続されている。このため、リード連結部LB4は、複数のリードLD4のインナリード部同士を連結する導体部であり、また、金属板MP2を接続する導体部でもある。複数のリードLD4およびリード連結部LB4は、金属板MP2および導電性の接着材BD3,BD4を通じて、半導体チップCPLのソース用のパッドPDLSと電気的に接続され、従って、半導体チップCPL内に形成されている上記パワーMOSFET2のソースに電気的に接続されている。このため、複数のリードLD4は、ロウサイド用の上記パワーMOSFET2のソース用のリードであり、上記端子TE4に対応している。リード連結部LB2,LB4は、封止部MR内に封止されており、封止部MRから露出されていない。
【0056】
複数のリードLD2をリード連結部LB2にまとめて接続したことにより、複数のリードLD2が分割されている場合よりも体積を増加させることができるので、配線抵抗を低減でき、パワーMOSFET1の導通損失を低減できる。また、複数のリードLD4をリード連結部LB4にまとめて接続したことにより、複数のリードLD4が分割されている場合よりも体積を増加させることができるので、配線抵抗を低減でき、パワーMOSFET2の導通損失を低減できる。
【0057】
半導体装置PKGが有する複数のリードLDのうち、複数のリードLD1は、ダイパッドDPHと一体的に形成されている。このため、複数のリードLD1は、ダイパッドDPHと電気的に接続されており、ダイパッドDPHおよび導電性の接着材BDHを介して、半導体チップCPHの裏面電極BEHに電気的に接続されている。このため、複数のリードLD1は、ハイサイド用の上記パワーMOSFET1のドレイン用のリードであり、上記端子TE1に対応している。
【0058】
また、半導体装置PKGが有する複数のリードLDのうち、複数のリードLD3は、ダイパッドDPLと一体的に形成されている。このため、複数のリードLD3は、ダイパッドDPLと電気的に接続されており、ダイパッドDPLおよび導電性の接着材BDLを介して、半導体チップCPLの裏面電極BELに電気的に接続されている。このため、複数のリードLD3は、ロウサイド用の上記パワーMOSFET2のドレイン用のリードであり、上記端子TE3に対応している。このため、半導体装置PKGだけを単独で見ると、半導体装置PKGの複数のリードLD2と複数のリードLD4とは、電気的に接続されてはいないが、半導体装置PKGで上記インバータ回路INVを形成するために半導体装置PKGを配線基板などに実装すると、その配線基板の配線などを通じて、半導体装置PKGの複数のリードLD2と複数のリードLD4とが電気的に接続される。
【0059】
また、ダイパッドDPCには、複数のリードLD8が一体的に連結されている。これらのリードLD8は、半導体装置PKGを製造する際に、ダイパッドDPCを後述のリードフレームLFのフレーム枠に支持するために用いられたものである。このため、リードLD8は、半導体チップCPC,CPH,CPLのいずれのパッドにも電気的に接続されてはおらず、また、半導体チップCPH,CPLの裏面電極BEH,BELにも電気的に接続されていない。
【0060】
また、ダイパッドDPHには、リードLD6が一体的に連結され、ダイパッドDPLには、封止部MRの側面MRc1側に配置されたリードLD7が一体的に連結されている。また、ダイパッドDPH,DPLには、それぞれ吊りリードTLが一体的に連結されている。リードLD6,LD7および吊りリードTLは、半導体装置PKGを製造する際に、ダイパッドDPH,DPLを後述のリードフレームLFのフレーム枠に支持するために用いられたものである。吊りリードTLは、封止部MRの側面からは突出していない。
【0061】
【0062】
半導体装置PKGを製造するには、まず、リードフレームLFを準備(用意)し(
図10のステップS1)、また、半導体チップCPC,CPH,CPLを準備(用意)する(
図10のステップS2)。リードフレームLFと半導体チップCPC,CPH,CPLとは、どちらを先に準備してもよく、また、同時に準備してもよい。
【0063】
図11に示されるように、リードフレームLFは、フレーム枠(図示せず)と、ダイパッドDPC,DPH,DPLと、複数のリードLDと、リード連結部LB1,LB2,LB3,LB4と、吊りリードTLと、を一体的に有している。各リードLDは、一方の端部がフレーム枠に連結されている。各ダイパッドDPC,DPH,DPLは、一部のリードLDを介して、フレーム枠と連結されている。具体的には、ダイパッドDPCは、リードLD8によってフレーム枠に連結され、ダイパッドDPHは、リードLD1,LD6および吊りリードTLによってフレーム枠に連結され、ダイパッドDPLは、リードLD3,LD7および吊りリードTLによってフレーム枠に連結されている。リードフレームLFは、例えば、銅(Cu)を主成分とする金属材料からなり、具体的には、銅(Cu)または銅(Cu)合金からなる。
図11には、リードフレームLFのうち、そこから1つの半導体装置PKGが製造される領域が示されている。
【0064】
なお、後述のステップS12のモールド工程を行って封止部MRを形成するまでは、リードフレームLFは、ダイパッドDPC,DPH,DPLの主面DPCa,DPHa,DPLaが上方を向いた状態で、以下の製造工程(組立工程)が行われる。
【0065】
次に、
図12に示されるように、リードフレームLFのダイパッドDPCの主面DPCa上に、ダイボンディング材である接着材BDCを供給(塗布)する(
図10のステップS3)。なお、
図12の場合は、ダイパッドDPCの主面DPCaにおいて1か所に接着材BDCを供給しているが、ダイパッドDPCの主面DPCaにおいて複数か所に接着材BDCを供給することもできる。
【0066】
次に、
図13および
図14に示されるように、リードフレームLFのダイパッドDPCの主面DPCa上に、半導体チップCPCを、接着材BDCを介して搭載(配置)する(
図10のステップS4)。ステップS4では、半導体チップCPCの裏面がダイパッドDPCの主面DPCaに対向するように、半導体チップCPCを搭載する。これにより、ステップS4を行うと、半導体チップCPCの裏面とリードフレームLFのダイパッドDPCの主面DPCaとの間に、接着材BDCが介在した状態となる。
【0067】
接着材BDCは、導電性ペースト型の接着材であり、銀ペーストを好適に用いることができる。接着材BDCは、熱硬化型の接着材であるが、ステップS3,S4の段階では、接着材BDCはまだ硬化しておらず、ペースト状である。なお、接着材BDCについては、絶縁性ペースト型の接着材を用いることも可能である。
【0068】
次に、
図15に示されるように、リードフレームLFのダイパッドDPHの主面DPHa上にダイボンディング材である接着材BDHを供給(塗布)し、リードフレームLFのダイパッドDPLの主面DPLa上にダイボンディング材である接着材BDLを供給(塗布)する(
図10のステップS5)。ステップS5においては、接着材BDHと接着材BDLとは、どちらを先に供給してもよい。
【0069】
図15の場合は、ダイパッドDPHの主面DPHaにおいて1か所に接着材BDHを供給しているが、ダイパッドDPHの主面DPHaにおいて複数か所に接着材BDHを供給することもできる。また、
図15の場合は、ダイパッドDPLの主面DPLaにおいて1か所に接着材BDLを供給しているが、ダイパッドDPLの主面DPLaにおいて複数か所に接着材BDLを供給することもできる。
【0070】
次に、
図16~
図18に示されるように、リードフレームLFのダイパッドDPHの主面DPHa上に、半導体チップCPHを、接着材BDHを介して搭載(配置)し、リードフレームLFのダイパッドDPLの主面DPLa上に、半導体チップCPLを、接着材BDLを介して搭載(配置)する(
図10のステップS6)。
【0071】
ステップS6では、半導体チップCPHの裏面電極BEHがダイパッドDPHの主面DPHaに対向するように、半導体チップCPHを搭載し、半導体チップCPLの裏面電極BELがダイパッドDPLの主面DPLaに対向するように、半導体チップCPLを搭載する。これにより、ステップS6を行うと、半導体チップCPHの裏面電極BEHとリードフレームLFのダイパッドDPHの主面DPHaとの間には、接着材BDHが介在し、半導体チップCPLの裏面電極BELとリードフレームLFのダイパッドDPLの主面DPLaとの間には、接着材BDLが介在した状態となる。ステップS6においては、半導体チップCPHと半導体チップCPLとは、どちらを先に搭載してもよい。
【0072】
接着材BDH,BDLは、導電性ペースト型の接着材であり、銀ペーストを好適に用いることができる。接着材BDH,BDLは、熱硬化型の接着材であるが、ステップS5,S6の段階では、接着材BDH,BDLはまだ硬化しておらず、ペースト状である。
【0073】
また、接着材BDHと接着材BDLとは、異なる種類の接着材(異なる材料からなる接着材)であってもよいが、同種の接着材(同じ材料からなる接着材)であることがより好ましい。これにより、半導体チップCPH,CPLのダイボンディング工程を行いやすくなり、半導体装置の製造コストも抑制することができる。また、半導体チップCPH,CPLの裏面電極BEH,BELをダイパッドDPH,DPLにそれぞれ電気的に接続させる必要があるため、接着材BDH,BDLは導電性の接着材であることが必要である。一方、半導体チップCPCは裏面電極を有していないため、半導体チップCPCの裏面をダイパッドDPCに電気的に接続することは必須要件ではない。このため、半導体チップCPC用の接着材BDCは導電性であっても、あるいは、絶縁性であってもよい。このため、接着材BDCは、接着材BDH,BDLとは異なる種類の接着材(異なる材料からなる接着材)であってもよい。但し、接着材BDCと接着材BDHと接着材BDLを、同種の接着材(同じ材料からなる接着材)とすれば、半導体チップCPC,CPH,CPLのダイボンディング用の接着材が1種類でよくなるため、半導体チップCPC,CPH,CPLのダイボンディング工程を行いやすくなり、半導体装置の製造コストも抑制することができる。
【0074】
このため、接着材BDC,BDH,BDLは、同種の導電性ペースト型接着材を用いることがより好ましく、銀ペーストを好適に用いることができる。
【0075】
次に、接着材BDC,BDH,BDLを硬化させるための熱処理を行う(
図10のステップS7)。ステップS7の熱処理を行う直前までは、接着材BDC,BDH,BDLはほとんど硬化しておらず、ペースト状の状態を維持しているが、ステップS7の熱処理を行うことにより、接着材BDC,BDH,BDLは硬化する。但し、ステップS7の熱処理を終了した段階では、接着材BDC,BDH,BDLは完全(十分)には硬化しておらず、半硬化状態となっている。ステップS7の熱処理を行うと、接着材BDC,BDH,BDLは半硬化状態となるため、半導体チップCPCは半硬化状態の接着材BDCによってダイパッドDPCに固定され、半導体チップCPHは半硬化状態の接着材BDHによってダイパッドDPHに固定され、半導体チップCPLは半硬化状態の接着材BDLによってダイパッドDPLに固定される。
【0076】
ステップS7の熱処理で硬化(半硬化)させた接着材BDC,BDH,BDLは、後で行うステップS10の熱処理で更に硬化させることができるため、ステップS7の熱処理は、後で行うステップS10の熱処理に比べて、熱処理時間を短くすることができ、また、熱処理温度を低くすることができる。
【0077】
次に、
図19に示されるように、半導体チップCPHのソース用のパッドPDHS上に接着材BD1を供給(塗布)し、半導体チップCPLのソース用のパッドPDHL上に接着材BD3を供給(塗布)し、リード連結部LB2上に接着材BD2を供給(塗布)し、リード連結部LB4上に接着材BD4を供給(塗布)する(
図10のステップS8)。ステップS8においては、接着材BD1と接着材BD2と接着材BD3と接着材BD4とは、任意の順序で供給することができる。
【0078】
図19の場合は、半導体チップCPHのソース用のパッドPDHSの表面において、1か所に接着材BD1を供給しているが、複数か所に接着材BD1を供給することもできる。また、
図19の場合は、半導体チップCPLのソース用のパッドPDHSの表面において、1か所に接着材BD3を供給しているが、複数か所に接着材BD3を供給することもできる。また、
図19の場合は、リード連結部LB2の表面において、1か所に接着材BD2を供給しているが、複数か所に接着材BD2を供給することもできる。また、
図19の場合は、リード連結部LB4の表面において、1か所に接着材BD4を供給しているが、複数か所に接着材BD4を供給することもできる。
【0079】
次に、
図20~
図22に示されるように、金属板MP1,MP2を配置(搭載)する(
図10のステップS9)。ステップS9では、金属板MP1が接着材BD1を介して半導体チップCPHのソース用のパッドPDHSに対向し、かつ、金属板MP1が接着材BD2を介してリード連結部LB2に対向するように、金属板MP1を配置する。また、ステップS9では、金属板MP2が接着材BD3を介して半導体チップCPLのソース用のパッドPDLSに対向し、かつ、金属板MP2が接着材BD4を介してリード連結部LB4に対向するように、金属板MP2を配置する。金属板MP1は、半導体チップCPHのソース用のパッドPDHS上とリード連結部LB2上とにわたって配置され、金属板MP2は、半導体チップCPLのソース用のパッドPDLS上とリード連結部LB4上とにわたって配置される。これにより、ステップS9を行うと、金属板MP1と半導体チップCPHのソース用のパッドPDHSとの間には接着材BD1が介在し、金属板MP1とリード連結部LB2との間には接着材BD2が介在し、金属板MP2と半導体チップCPLのソース用のパッドPDHLとの間には接着材BD3が介在し、金属板MP2とリード連結部LB4との間には接着材BD4が介在した状態となる。ステップS9においては、金属板MP1と金属板MP2とは、どちらを先に配置してもよい。
【0080】
接着材BD1,BD2,BD3,BD4は、導電性ペースト型の接着材であり、銀ペーストを好適に用いることができる。接着材BD1,BD2,BD3,BD4は、熱硬化型の接着材であるが、ステップS8,S9の段階では、接着材BD1,BD2,BD3,BD4はまだ硬化していない。
【0081】
また、接着材BD1と接着材BD2と接着材BD3と接着材BD4とは、異なる種類の接着材(異なる材料からなる接着材)であってもよいが、同種の接着材(同じ材料からなる接着材)であることがより好ましい。これにより、金属板MP1,MP2の搭載工程を行いやすくなり、半導体装置の製造コストも抑制することができる。
【0082】
次に、接着材BD1,BD2,BD3,BD4,BDC,BDH,BDLを硬化させるための熱処理を行う(
図10のステップS10)。
【0083】
ステップS10の熱処理により、接着材BD1,BD2,BD3,BD4は硬化し、十分に硬化した状態(硬化状態)の接着材BD1,BD2,BD3,BD4となる。このため、ステップS10の熱処理を行うと、金属板MP1は、硬化した接着材BD1によって半導体チップCPHのソース用のパッドPDHSに固定(接合)され、かつ、硬化した接着材BD2によってリード連結部LB2に固定(接合)される。また、ステップS10の熱処理を行うと、金属板MP2は、硬化した接着材BD3によって半導体チップCPLのソース用のパッドPDHLに固定(接合)され、かつ、硬化した接着材BD4によってリード連結部LB4に固定(接合)される。金属板MP1は、導電性の接着材BD1を介して半導体チップCPHのソース用のパッドPDHSに電気的に接続され、かつ、導電性の接着材BD2を介してリード連結部LB2に電気的に接続される。また、金属板MP2は、導電性の接着材BD3を介して半導体チップCPLのソース用のパッドPDLSに電気的に接続され、かつ、導電性の接着材BD4を介してリード連結部LB4に電気的に接続される。これにより、半導体チップCPHのソース用のパッドPDHSは、導電性の接着材BD1,BD2および金属板MP1を介して、リード連結部LB2およびそれに一体的に連結された複数のリード部LD2に電気的に接続される。また、半導体チップCPLのソース用のパッドPDLSは、導電性の接着材BD3,BD4および金属板MP2を介して、リード連結部LB4およびそれに一体的に連結された複数のリード部LD4に電気的に接続される。
【0084】
接着材BDC,BDH,BDLは、ステップS7の熱処理によって半硬化状態となり、ステップS10の熱処理を行う直前までは、接着材BDC,BDH,BDLは、半硬化状態を維持している。そして、ステップS10の熱処理により、接着材BDC,BDH,BDLは、更に硬化し、十分に(完全に)硬化した状態(硬化状態)となる。このため、ステップS10の熱処理を行うと、半導体チップCPCは、硬化状態の接着材BDCによってダイパッドDPCにしっかりと固定(接合)され、半導体チップCPHは、硬化状態の接着材BDHによってダイパッドDPHにしっかりと固定(接合)され、半導体チップCPLは、硬化状態の接着材BDLによってダイパッドDPLにしっかりと固定(接合)される。半導体チップCPHの裏面電極BEHは、導電性の接着材BDHを介してダイパッドDPHに電気的に接続され、半導体チップCPLの裏面電極BELは、導電性の接着材BDLを介してダイパッドDPLに電気的に接続される。
【0085】
ステップS10の熱処理は、ステップS7の熱処理に比べて、熱処理時間を長くし、また、熱処理温度を高くする。これにより、ステップS10の熱処理で接着材BD1,BD2,BD3,BD4,BDC,BDH,BDLを十分に硬化させることができるため、半導体チップCPC,CPH,CPLおよび金属板MP1,MP2がしっかりと固定された状態で後述のステップS11のワイヤボンディング工程やステップS12のモールド工程を行うことができる。このため、後述のステップS11のワイヤボンディング工程やステップS12のモールド工程を的確に行うことができる。
【0086】
次に、
図23に示されるように、ワイヤボンディング工程を行う(
図10のステップS11)。ステップS11のワイヤボンディング工程では、半導体チップCPHの複数のパッドPDH(パッドPDHS以外のパッドPDH)と半導体チップCPCの複数のパッドPDCとの間、半導体チップCPLの複数のパッドPDL(パッドPDLS以外のパッドPDL)と半導体チップCPCの複数のパッドPDCとの間、および、半導体チップCPCの複数のパッドPDCとリードフレームLFの複数のリードLD5との間を、それぞれワイヤBWを介して電気的に接続する。
【0087】
異なる材料からなる複数種類のワイヤを、ワイヤBWとして用いることもできる。例えば、半導体チップCPCの複数のパッドPDCとリードフレームLFの複数のリードLD5との間を、それぞれ、銅(Cu)からなるワイヤBWを介して電気的に接続する。そして、半導体チップCPHの複数のパッドPDHと半導体チップCPCの複数のパッドPDCとの間、および、半導体チップCPLの複数のパッドPDLと半導体チップCPCの複数のパッドPDCとの間を、それぞれ、金(Au)からなるワイヤBWを介して電気的に接続する。
【0088】
次に、モールド工程(樹脂成形工程)による樹脂封止を行って、
図24~
図27に示されるように、半導体チップCPC,CPH,CPLおよびそれに接続された複数のワイヤBWと金属板MP1,MP2とを封止部MRによって封止する(
図10のステップS12)。ステップS12のモールド工程によって、半導体チップCPC,CPH,CPL、ダイパッドDPC,DPH,DPL、複数のワイヤBW、金属板MP1,MP2、リード連結部LB1,LB2,LB3,LB4および複数のリードLDのインナリード部を封止する封止部MRが形成される。ステップS12のモールド工程においては、封止部MRの主面MRaからダイパッドDPC,DPH,DPLの各裏面DPCb,DPHb,DPLbが露出するように、封止部MRを形成する。
【0089】
なお、ステップS12のモールド工程までの各工程は、ダイパッドDPC,DPH,DPLの主面DPCa,DPHa,DPLaが上方を向いた状態で、行われる。このため、ステップS12のモールド工程を行って封止部MRを形成した段階では、封止部MRの裏面MRbが上方を向いている。しかしながら、製造された半導体装置PKGを配線基板などに実装する際には、封止部MRの裏面MRbが配線基板と対向するように、半導体装置PKGが配線基板に実装される。
【0090】
次に、封止部MRから露出しているリードLDのアウタリード部に必要に応じてめっき層(図示せず)を形成する。その後、封止部MRとともにリードフレームLFの上下(表裏)を反転させてから、封止部MRの外部において、リードLDを所定の位置で切断して、リードフレームLFのフレーム枠から分離する(
図10のステップS13)。
【0091】
次に、封止部MRから突出するリードLDのアウタリード部を折り曲げ加工(リード加工、リード成形)する(
図10のステップS14)。
【0092】
このようにして、上記
図2~
図9に示される半導体装置PKGが製造される。
【0093】
<検討の経緯について>
図28は、本発明者が検討した検討例における半導体装置の製造工程を示す工程フロー図であり、上記
図10に相当するものである。
【0094】
図28の検討例が、本実施の形態(
図10)と相違しているのは、
図28の検討例の場合は、上記ステップS7の熱処理工程を有していないことである。すなわち、
図28の検討例の場合は、接着材BD1,BD2,BD3,BD4だけでなく、上述した接着材BDC,BDH,BDLも、ステップS10の熱処理を行う直前までは、ほとんど硬化しておらず、ペースト状を維持しており、ステップS10の熱処理により、ペースト状の接着材BD1,BD2,BD3,BD4,BDC,BDH,BDLが、十分に硬化して硬化状態となる。
【0095】
しかしながら、本発明者の検討によれば、
図28の検討例の場合は、次のような課題が発生することが分かった。
【0096】
すなわち、半導体チップCPHの裏面電極BEHとダイパッドDPHとが導電性の接着材BDHを介して電気的に接続されるが、
図28の検討例の場合は、半導体チップCPHの裏面電極BEHとダイパッドDPHとの間の電気抵抗および熱抵抗が大きくなる虞がある。また、半導体チップCPLの裏面電極BELとダイパッドDPLとが導電性の接着材BDLを介して電気的に接続されるが、
図28の検討例の場合は、半導体チップCPLの裏面電極BELとダイパッドDPLとの間の電気抵抗および熱抵抗が大きくなる虞がある。その理由について、以下に説明する。
【0097】
接着材BD1,BD2,BD3,BD4,BDC,BDH,BDLは、いずれも導電性ペースト型の接着材である。導電性ペースト型の接着材は、樹脂材料(より特定的には熱硬化性樹脂材料)と複数の導電性フィラー(導電性粒子)とを含んでおり、樹脂材料(熱硬化性樹脂材料)中に複数の導電性フィラー(導電性粒子)が分散した構成を有している。このため、半田ペーストは、導電性ペースト型接着材ではない。
【0098】
図29は、上記
図17の一部を拡大して示す部分拡大断面図であり、ステップS6でダイパッドDPH上に導電性ペースト型の接着材BDHを介して半導体チップCPHを搭載した状態が示されている。
図29では、半導体チップCPHの裏面電極BEHとダイパッドDPHとの間に導電性ペースト型の接着材BDHが介在しており、接着材BDHは、樹脂材料(熱硬化性樹脂材料)RSと樹脂材料RS中に分散された複数の導電性フィラー(導電性粒子)FLとを有している。接着材中の複数の導電性フィラーを通じて、電気的接続が可能となる。例えば、半導体チップCPHの裏面電極BEHとダイパッドDPHとは、接着材BDH中に含まれる複数の導電性フィラーFLを通じて電気的に接続される。
【0099】
樹脂材料RS中に複数の導電性フィラーFLが分散した構成は、接着材BDHだけでなく、接着材BD1,BD2,BD3,BD4,BDC,BDLでも共通している。導電性フィラーFLは、導電性粒子(好ましくは金属粒子)からなり、導電性ペースト型接着材が銀ペーストである場合は、導電性フィラーFLは、銀からなる銀フィラーである。導電性フィラーFLの形状は、球状またはフレーク状など、種々の形状を必要に応じて選択できる。但し、接着材BDCについては、導電性は必須ではないため、導電性フィラーFLを含有しない場合もあり得る。
【0100】
ステップS6でダイパッドDPH,DPL上に接着材BDH,BDLを介して半導体チップCPH,CPLを搭載した後に、ステップS10の熱処理を開始するまでには、かなりの時間を要する。なぜなら、ステップS6で半導体チップCPH,CPLを搭載した後で、ステップS10の熱処理工程の前には、ステップS8の接着材BD1,BD2,BD3,BD4供給工程と、ステップS9の金属板MP1,MP2配置工程とが存在し、それらを行うためには、かなりの時間を要するからである。
【0101】
ステップS6を行うと半導体チップCPHの裏面電極BEHとダイパッドDPHとの間に接着材BDHが介在し、半導体チップCPLの裏面電極BELとダイパッドDPLとの間に接着材BDLが介在した状態となる(
図17、
図18および
図29参照)。ステップS7の熱処理を行わない検討例(
図28)の場合は、ステップS10の熱処理を行うまでは接着材BDH,BDLはペースト状を維持しているため、ステップS6の後、ステップS10の熱処理を行うまでの間に、半導体チップCPHの裏面電極BEHとダイパッドDPHとの間に介在するペースト状の接着材BDH中で導電性フィラーFLが徐々に沈降する。また、半導体チップCPLの裏面電極BELとダイパッドDPLとの間に介在するペースト状の接着材BDL中で導電性フィラーFLが徐々に沈降する。このため、
図28の検討例の場合は、半導体チップCPH,CPLの裏面電極BEH,BELとダイパッドDPH,DPLとの間に介在する接着材BDH,BDL中で導電性フィラーFLがある程度沈降した状態で、ステップS10の熱処理が行われて、接着材BDH,BDLに含まれる熱硬化性樹脂が硬化することになる。その結果、
図28の検討例に従って製造された半導体装置では、半導体チップCPH,CPLの裏面電極BEH,BELとダイパッドDPH,DPLとの間に介在する接着材BDH,BDLのそれぞれにおいて、半導体チップCPH,CPLの裏面電極BEH,BELに近い側では、ダイパッドDPH,DPLに近い側に比べて導電性フィラーの比率が低くなってしまう。これは、半導体チップCPHの裏面電極BEHとダイパッドDPHとの間の電気抵抗および熱抵抗を大きくし、また、半導体チップCPLの裏面電極BELとダイパッドDPLとの間の電気抵抗および熱抵抗を大きくするように作用してしまう。これは、半導体装置PKGの性能の低下につながる。半導体装置PKGの性能向上のためには、半導体チップCPHの裏面電極BEHとダイパッドDPHとの間の電気抵抗および熱抵抗を小さくし、また、半導体チップCPLの裏面電極BELとダイパッドDPLとの間の電気抵抗および熱抵抗を小さくすることが望まれる。
【0102】
<主要な特徴と効果について>
本実施の形態の主要な特徴のうちの一つは、本実施の形態の半導体装置の製造工程では、ステップS6で半導体チップCPH,CPLを、半導体チップCPH,CPLの裏面電極BEH,BELがダイパッドDPH,DPLに対向するように、ダイパッドDPH,DPL上に接着材BDH,BDLを介して搭載した後、ステップS8,S9を行う前に、ステップS7の熱処理を行うことである。接着材BDH,BDLは、ステップS7の熱処理により硬化した後、ステップS10の熱処理により更に硬化する。
【0103】
ステップS7の熱処理は、半導体チップCPH,CPLの裏面電極BEH,BELとダイパッドDPH,DPLとの間に介在する接着材BDH,BDLをある程度硬化させるために行われる。ステップS7の熱処理により、接着材BDH,BDLはある程度硬化するため、ステップS7の熱処理を終了してから、ステップS10の熱処理を行うまでの間に、半導体チップCPH,CPLの裏面電極BEH,BELとダイパッドDPH,DPLとの間に介在する接着材BDH,BDL中で導電性フィラーFLが沈降するのを防止することができる。このため、ステップS7の熱処理を行ってからステップS10の熱処理を行うまでに、ステップS8,S9を行うことに起因して、かなりの時間を要したとしても、半導体チップCPH,CPLの裏面電極BEH,BELとダイパッドDPH,DPLとの間に介在する接着材BDH,BDL中で導電性フィラーFLが沈降するのを防止することができる。従って、接着材BDH,BDL中に導電性フィラーFLがほぼ均一に分散した状態で、ステップS10の熱処理を行って、接着材BDH,BDLに含まれる樹脂材料(熱硬化性樹脂)RSを十分に硬化させることができる。
【0104】
このため、本実施の形態に従って製造された半導体装置PKGでは、半導体チップCPH,CPLの裏面電極BEH,BELとダイパッドDPH,DPLとの間に介在する接着材BDH,BDLのそれぞれにおいて、導電性フィラーはほぼ均一に分散している。そして、半導体チップCPH,CPLの裏面電極BEH,BELに近い側と、ダイパッドDPH,DPLに近い側とで、導電性フィラーの比率はほぼ同じとすることができる。これにより、半導体チップCPHの裏面電極BEHとダイパッドDPHとの間の電気抵抗および熱抵抗を小さくし、また、半導体チップCPLの裏面電極BELとダイパッドDPLとの間の電気抵抗および熱抵抗を小さくすることができる。従って、半導体装置PKGの性能を向上させることができる。例えば、半導体チップCPH内のパワーMOSFET1をオン状態としたときの導通抵抗(オン抵抗)を抑制することができる。また、半導体チップCPL内のパワーMOSFET2をオン状態としたときの導通抵抗(オン抵抗)を抑制することができる。また、半導体チップCPH,CPLで生じた熱を、接着材BDH,BDLを介してダイパッドDPH,DPLに伝導させやすくなり、ダイパッドDPH,DPLから半導体装置PKGの外部に放熱させやすくなる。これにより、半導体装置PKGの放熱特性を向上させることができる。また、半導体装置PKGの特性が、半導体装置PKG毎にばらつく(変動する)のを抑制または防止することができる。また、半導体装置PKGの特性が温度に対して変動するのを抑制または防止することができる。
【0105】
しかしながら、ステップS7の熱処理に時間を要してしまうと、半導体装置の製造時間が長くなり、スループットが低下してしまう。接着材BDH,BDLは、ステップS7の熱処理である程度硬化させた後に、ステップS10の熱処理によって更に硬化させて十分に硬化した状態とすることができるため、ステップS7の熱処理は、接着材BDH,BDL中で導電性フィラーが沈降するのを防止できる程度に接着材BDH,BDLを硬化できればよい。
【0106】
そこで、本実施の形態では、ステップS7の熱処理は、ステップS10の熱処理に比べて、熱処理時間を短くしている。より特定的には、ステップS7の熱処理時間は、好ましくは、ステップS10の熱処理時間の半分以下としている。これにより、ステップS7の熱処理に要する時間を短くすることができるため、半導体装置の製造時間を抑制し、スループットの低下を抑制することができる。また、ステップS10の熱処理時間よりステップS7での熱処理時間を短くしたことで、ステップS7の熱処理による接着材BDH,BDLの硬化の程度が低くなっても、接着材BDH,BDL中で導電性フィラーが沈降するのを防止できればよく、ステップS10の熱処理で接着材BDH,BDLを更に硬化させることができるため、問題はない。ステップS10の熱処理によって接着材BDH,BDLが十分に硬化させることができ、接着材BDH,BDLが十分に硬化した状態でステップS11のワイヤボンディング工程やステップS12のモールド工程を行うことができるため、ステップS11のワイヤボンディング工程やステップS12のモールド工程を的確に行うことができる。
【0107】
また、本実施の形態では、ステップS7の熱処理は、ステップS10の熱処理に比べて、熱処理温度を低くしている。これにより、
図30に示されるようにリードフレームLFの表面に薬材層YZを形成していた場合に、そのリードフレームLFの表面の薬材層YZがステップS7の熱処理で消失(揮発)してしまうのを抑制または防止することができる。このため、リードフレームLFの表面の薬材層YZが有する作用を、ステップS10の熱処理を行うまで、得ることができる。
【0108】
図30~
図32は、リードフレームLFの断面図である。このうち、
図30は、ステップS1で準備されたリードフレームLFの断面図であり、
図31は、ステップS7の熱処理を行った後で、ステップS10の熱処理を行う前の段階のリードフレームLFの断面図であり、
図32は、ステップS10の熱処理を行った直後の段階のリードフレームLFの断面図である。
【0109】
ステップS1で準備されたリードフレームLFの表面には、
図30に示されるように薬材層YZが形成されている。ステップS7の熱処理温度は低いため、ステップS7の熱処理を行っても、
図31に示されるように、リードフレームLFの表面の薬材層YZは、消失せずにほとんど残存している。一方、ステップS10の熱処理温度は高いため、ステップS10の熱処理を行うと、
図32からも分かるように、リードフレームLFの表面の薬材層YZは消失(揮発)し、リードフレームLFの表面に薬材層YZは残存していない。
【0110】
リードフレームLFの表面の薬材層YZは、例えば、接着材BD1,BD2,BD3,BD4,BDC,BDH,BDLの濡れ広がりを防止するブリードアウト防止材からなる。リードフレームLF(ダイパッドDPC,DPH,DPLおよびリード連結部LB2,LB4)の表面にブリードアウト防止材からなる薬材層YZを形成しておけば、リードフレームLFのダイパッドDPC,DPH,DPLおよびリード連結部LB2,LB4の表面に供給した接着材BD1,BD2,BD3,BD4,BDC,BDH,BDLが染み出すのを防止する(接着材のブリードアウト現象を防止する)ことができる。すなわち、ステップS7の熱処理の温度が高すぎると、ステップS7の熱処理によってリード連結部LB2,LB4の表面の薬材層YZが消失してしまい、ステップS8でリード連結部LB2,LB4上に供給した接着材BD2,BD4が染み出す(接着材のブリードアウト現象が生じる)虞がある。これは、染み出した接着材が封止樹脂(封止部MR)の密着性を阻害したり、あるいは、染み出した接着材がリードフレームLFの裏面にまで回り込んで半導体装置の外観不良の原因となるため、望ましくない。このため、リードフレームLFの表面にブリードアウト防止材からなる薬材層YZを形成していた場合は、ステップS8およびステップS9を行う際に、リードフレームLFの表面に薬材層YZが残存していることが望ましい。本実施の形態では、ステップS7の熱処理温度を低くしたことにより、リードフレームLFの表面の薬材層YZがステップS7の熱処理で消失してしまうのを抑制または防止することができるため、リードフレームLFの表面に薬材層YZが残存した状態で、ステップS8およびステップS9を行うことができる。これにより、例えば、ステップS9で配置してステップS10で固定した金属板MP1,MP2の位置が、所定の設計位置からずれるのを、抑制または防止することができる。
【0111】
また、ステップS10の熱処理温度は、ステップS7の熱処理温度よりも高いため、リードフレームLFの表面の薬材層YZは、ステップS10の熱処理によって消失(揮発)する可能性が高い。しかしながら、ステップS10で接着材BD1,BD2,BD3,BD4,BDC,BDH,BDLは十分に硬化されるため、ステップS10の熱処理を終了した後は、リードフレームLFの表面の薬材層YZ(例えばブリードアウト防止材)が残存していなくとも、特に問題は生じない。そして、ステップS10の熱処理温度を、ステップS7の熱処理温度よりも高くすることにより、ステップS10の熱処理で接着材BD1,BD2,BD3,BD4,BDC,BDH,BDLを十分に硬化させることができるため、ステップS11のワイヤボンディング工程やステップS12のモールド工程を的確に行うことができる。
【0112】
ステップS7とステップS10のそれぞれの熱処理時間と熱処理時間の一例を挙げると、ステップS7では、熱処理時間は例えば1時間~2.5時間程度とし、熱処理温度は例えば80℃~120℃程度とすることができる一方、ステップS10では、熱処理時間は例えば2時間~5時間程度とし、熱処理温度は例えば160℃~250℃程度とすることができる。
【0113】
(実施の形態2)
図33は、本実施の形態2の半導体装置PKGの製造工程を示す工程フロー図であり、上記実施の形態1の上記
図10に対応するものである。本実施の形態2の半導体装置PKGの構造については、上記実施の形態1の半導体装置PKGと同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0114】
本実施の形態2の製造工程(
図33)について、上記実施の形態1の製造工程(
図10)と相違する点を中心に、以下に説明する。
【0115】
本実施の形態2でも、上記実施の形態1と同様に、ステップS1でリードフレームLFを準備し、ステップS2で半導体チップCPC,CPH,CPLを準備する。
【0116】
次に、本実施の形態2では、ステップS1,S2の後、ステップS3,S4を行う前に、ステップS5(接着材BDH,BDL供給工程)およびステップS6(半導体チップCPH,CPL搭載工程)を順に行う。ステップS5およびステップS6については、本実施の形態2も上記実施の形態1と同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0117】
本実施の形態では、ステップS6の後、接着材BDH,BDLを硬化させるための熱処理を行う(
図33のステップS7a)。ステップS7aの熱処理は、上記実施の形態1のステップS7の熱処理と基本的には同じであるが、以下の点が上記実施の形態1のステップS7の熱処理と相違している。
【0118】
すなわち、上記実施の形態1では、半導体チップCPH,CPLだけでなく半導体チップCPCも搭載された状態でステップS7の熱処理を行うため、ステップS7の熱処理により、接着材BDH,BDLだけでなく接着材BDCも硬化する。それに対して、本実施の形態2では、半導体チップCPH,CPLは搭載されているが半導体チップCPCは搭載されていない状態でステップS7aの熱処理を行うため、ステップS7aの熱処理により、接着材BDH,BDLは硬化するが、接着材BDCはダイパッドDPC上に存在せず、従って接着材BDCの硬化は発生しない。それ以外については、ステップS7aの熱処理は、上記実施の形態1のステップS7の熱処理と同様である。
【0119】
このため、ステップS7aの熱処理を行う直前までは、接着材BDH,BDLはほとんど硬化しておらず、ペースト状の状態を維持しているが、ステップS7aの熱処理を行うことにより、接着材BDH,BDLは硬化する。但し、ステップS7aの熱処理を終了した段階では、接着材BDH,BDLは完全(十分)には硬化しておらず、半硬化状態となっている。ステップS7aの熱処理を行うと、接着材BDH,BDLは半硬化状態となるため、半導体チップCPHは半硬化状態の接着材BDHによってダイパッドDPHに固定され、半導体チップCPLは半硬化状態の接着材BDLによってダイパッドDPLに固定される。
【0120】
ステップS7aの熱処理で硬化(半硬化)させた接着材BDH,BDLは、後で行うステップS10aの熱処理で更に硬化させることができるため、ステップS7aの熱処理は、後で行うステップS10aの熱処理に比べて、熱処理時間を短くすることができ、また、熱処理温度を低くすることができる。
【0121】
本実施の形態2では、ステップS7aの熱処理工程の後、ステップS3(接着材BDC供給工程)およびステップS4(半導体チップCPC搭載工程)を順に行う。ステップS3およびステップS4については、本実施の形態2も上記実施の形態1と同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0122】
本実施の形態2では、ステップS4(半導体チップCPC搭載工程)の後、ステップS8(接着材BD1,BD2,BD3,BD4供給工程)およびステップS9(金属板MP1,MP2配置工程)を順に行う。ステップS4とステップS8との間に、上記ステップS7の熱処理工程を行う必要はない。ステップS8およびステップS9については、本実施の形態2も上記実施の形態1と同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0123】
本実施の形態2では、ステップS9(金属板MP1,MP2配置工程)の後、接着材BD1,BD2,BD3,BD4,BDC,BDH,BDLを硬化させるための熱処理を行う(
図33のステップS10a)。ステップS10aの熱処理は、上記実施の形態1のステップS10の熱処理と基本的には同じであるが、以下の点が上記実施の形態1のステップS10の熱処理と相違している。
【0124】
すなわち、上記実施の形態1では、ステップS7の熱処理により接着材BDH,BDLだけでなく接着材BDCも半硬化状態となり、その状態でステップS10の熱処理が行われる。このため、上記実施の形態1では、半硬化状態の接着材BDCがステップS10の熱処理により更に硬化して、十分に硬化した状態(硬化状態)の接着材BDCとなる。それに対して、本実施の形態2では、接着材BDCに対してはステップS7aの熱処理は施されず、ステップS10aの熱処理によりペースト状の接着材BDCが硬化し、十分に硬化した状態(硬化状態)の接着材BDCとなる。それ以外については、ステップS10aの熱処理は、上記実施の形態1のステップS10の熱処理と同様である。
【0125】
ステップS10aの熱処理は、ステップS7aの熱処理に比べて、熱処理時間を長くし、熱処理温度を高くする。これにより、ステップS10aの熱処理で接着材BD1,BD2,BD3,BD4,BDC,BDH,BDLを十分に硬化させることができるため、半導体チップCPC,CPH,CPLおよび金属板MP1,MP2がしっかりと固定された状態でステップS11のワイヤボンディング工程やステップS12のモールド工程を行うことができる。このため、ステップS11のワイヤボンディング工程やステップS12のモールド工程を的確に行うことができる。
【0126】
本実施の形態2では、ステップS10aの熱処理工程の後、ステップS11(ワイヤボンディング工程)、ステップS12(モールド工程)、ステップS13(切断工程)およびステップS14(リード加工工程)を順に行う。ステップS11、ステップS12、ステップS13およびステップS14については、本実施の形態2も上記実施の形態1と同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0127】
本実施の形態2では、ステップS5,S6を行って半導体チップCPH,CPLをダイパッドDPH,DPL上に接着材BDH,BDLを介して搭載した後に、ステップS3,S4を行って半導体チップCPCをダイパッドDPC上に接着材BDCを介して搭載している。
【0128】
このため、本実施の形態2とは異なり、ステップS7aの熱処理を行わなかった場合には、ステップS3,S4に時間を要することに起因して、半導体チップCPH,CPLの裏面電極BEH,BELとダイパッドDPH,DPLとの間に介在するペースト状の接着材BDH,BDL中で導電性フィラーが沈降することが懸念される。
【0129】
それに対して、本実施の形態2では、ステップS5,S6を行って半導体チップCPH,CPLをダイパッドDPH,DPL上に接着材BDH,BDLを介して搭載した後、ステップS3,S4(接着材BDC供給工程および半導体チップCPC搭載工程)を行う前に、ステップS7aの熱処理工程を行って、接着材BDH,BDLを硬化(半硬化)させている。このため、たとえステップS7aの熱処理の後でステップS3,S4に時間を要したとしても、それに起因して半導体チップCPH,CPLの裏面電極BEH,BELとダイパッドDPH,DPLとの間に介在する接着材BDH,BDL中で導電性フィラーが沈降するのを防止することができる。従って、接着材BDH,BDL中に導電性フィラーがほぼ均一に分散した状態で、ステップS10aの熱処理を行って、接着材BDH,BDLに含まれる熱硬化性樹脂を十分に硬化させることができる。
【0130】
このため、本実施の形態2に従って製造された半導体装置PKGでは、半導体チップCPH,CPLの裏面電極BEH,BELとダイパッドDPH,DPLとの間に介在する接着材BDH,BDLのそれぞれにおいて、導電性フィラーはほぼ均一に分散している。そして、半導体チップCPH,CPLの裏面電極BEH,BELに近い側と、ダイパッドDPH,DPLに近い側とで、導電性フィラーの比率はほぼ同じすることができる。これにより、半導体チップCPHの裏面電極BEHとダイパッドDPHとの間の電気抵抗および熱抵抗を小さくし、また、半導体チップCPLの裏面電極BELとダイパッドDPLとの間の電気抵抗および熱抵抗を小さくすることができる。従って、半導体装置PKGの性能を向上させることができる。
【0131】
また、上記実施の形態1におけるステップS7の熱処理とステップS10の熱処理との関係と同様に、本実施の形態2においても、ステップS7aの熱処理は、ステップS10aの熱処理に比べて、熱処理時間を短くしている。より特定的には、ステップS7aの熱処理時間は、好ましくは、ステップS10aの熱処理時間の半分以下としている。これにより、ステップS7aの熱処理に要する時間を短くすることができるため、半導体装置の製造時間を抑制し、スループットの低下を抑制することができる。
【0132】
また、上記実施の形態1におけるステップS7の熱処理とステップS10の熱処理との関係と同様に、本実施の形態2においても、ステップS7aの熱処理は、ステップS10aの熱処理に比べて、熱処理温度を低くしている。これにより、上記
図30に示されるようにリードフレームLFの表面に薬材層YZを形成していた場合に、そのリードフレームLFの表面の薬材層YZがステップS7aの熱処理で消失してしまうのを抑制または防止することができる。このため、上記実施の形態1と同様に、本実施の形態2においても、リードフレームLFの表面の薬材層YZが有する作用を、ステップS10aの熱処理を行うまで、得ることができる。
【0133】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0134】
例えば、上記実施の形態1,2は、半導体装置PKGが半導体チップCPC,CPH,CPLを含む場合について説明した。上記実施の形態1,2の技術思想は、半導体装置PKGが半導体チップCPH,CPLの一方と半導体チップCPCとを含むが半導体チップCPH,CPLの他方は含まない場合や、半導体装置PKGが半導体チップCPH,CPLの一方を含むが半導体チップCPH,CPLの他方と半導体チップCPCは含まない場合にも適用することができる。
【0135】
例えば、半導体装置PKGが半導体チップCPHを含むが半導体チップCPLを含まない場合は、リードフレームLFはダイパッドDPL、リードLD3,LD4およびリード連結部LB3,LB4を有さない。この場合、ステップS5では、ダイパッドDPL上に接着材BDLを供給することはなく、ステップS6では、ダイパッドDPL上に接着材BDLを介して半導体チップCPLを搭載することはない。この場合、ステップS7の熱処理では、接着材BDC,BDHが硬化(半硬化)され、ステップS7aの熱処理では、接着材BDHが硬化(半硬化)される。
【符号の説明】
【0136】
1,2 パワーMOSFET
BD1,BD2,BD3,BD4,BDC,BDH,BDL 接着材
BEH,BEL 裏面電極
BW ワイヤ
CL コイル
CLC,CT 制御回路
CPC,CPH,CPL 半導体チップ
DPC,DPH,DPL ダイパッド
DPCa,DPHa,DPLa 主面
DPCb,DPHb,DPLb 裏面
FL 導電性フィラー
INV インバータ回路
LB1,LB2,LB3,LB4 リード連結部
LD,LD1,LD2,LD3,LD4,LD5,LD6,LD7,LD8 リード
LF リードフレーム
MOT モータ
MR 封止部
MRa 主面
MRb 裏面
MRc1,MRc2,MRc3,MRc4 側面
PDC,PDH,PDHS,PDHG,PDL,PDLS,PDLG パッド
PKG 半導体装置
RS 樹脂材料
TE1,TE2,TE3,TE4,TE5 端子
TL 吊りリード