(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172178
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3205 20060101AFI20231129BHJP
H01L 21/288 20060101ALI20231129BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20231129BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20231129BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H01L21/88 T
H01L21/288 E
H01L29/78 655F
H01L29/78 655E
H01L29/78 653A
H01L29/78 652Q
H01L29/78 655B
H01L29/78 658F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083806
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 悦子
(72)【発明者】
【氏名】利根川 丘
【テーマコード(参考)】
4M104
5F033
【Fターム(参考)】
4M104BB05
4M104DD53
4M104GG06
4M104GG09
4M104GG18
5F033HH07
5F033HH08
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5F033RR08
5F033VV07
(57)【要約】
【課題】ワイヤボンディング不良が生じにくい半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁層OIは、導電層CL1の表面を露出する開口OP1と、導電層CL2の表面を露出し開口OP1よりも小さい開口面積を有する開口OP2とを有する。開口OP2から露出する導電層CL2の表面の材質は、開口OP1から露出する導電層CL1の表面の材質とは異なる材質であり、かつアルミニウムを含む材質である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電層と、
第2導電層と、
前記第1導電層の表面を露出する第1開口と、前記第2導電層の表面を露出し前記第1開口よりも小さい開口面積を有する第2開口とを有する絶縁層と、を備え、
前記第2開口から露出する前記第2導電層の前記表面の材質は、前記第1開口から露出する前記第1導電層の前記表面の材質とは異なる材質であり、かつアルミニウムを含む材質である、半導体装置。
【請求項2】
前記第1開口から露出する前記第1導電層の前記表面に接続されたはんだと、
前記はんだを介在して前記第1導電層に電気的に接続された板状のクリップ導電体と、
前記第2開口から露出した前記第2導電層の前記表面に直接接続されたボンディングワイヤと、をさらに備えた、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1導電層は、アルミニウムを含む材質よりなる第1層と、前記第1層の上に配置されたニッケルを含む材質よりなる第2層と、前記第2層の上に配置された金を含む材質よりなる第3層と、を有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第3層は前記第2層に接している、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体基板と、
前記半導体基板に配置されたエミッタ領域およびソース領域のいずれかの第1領域と、を備え、
前記第1導電層は、前記第1領域に電気的に接続されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
ゲート電極と、
前記半導体基板に配置されたコレクタ領域およびドレイン領域のいずれか一方の第2領域と、をさらに備え、
前記第2導電層は、前記第1領域、前記ゲート電極および前記第2領域のいずれか1つに電気的に接続されている、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記絶縁層は有機絶縁層である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
アルミニウムを含む材質よりなる第1層を形成する工程と、
前記第1層の第1パッド領域を露出するカバー絶縁層を形成する工程と、
前記第1層の前記第1パッド領域を露出する第1開口と、前記第1開口よりも小さな開口面積を有し前記カバー絶縁層の表面を露出する第2開口とを有する絶縁層を形成する工程と、
前記第1開口から露出する前記第1層の前記第1パッド領域に無電解めっき法によりめっき層を形成する工程と、
前記第2開口から露出する前記カバー絶縁層を除去して前記第2開口から前記第1層の第2パッド領域を露出させる工程と、を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1パッド領域において露出する前記めっき層にはんだを介在してクリップ導電体を接続する工程と、
前記第2パッド領域において露出する前記第1層にボンディングワイヤを接続する工程と、をさらに備えた、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記めっき層を形成する工程は、前記第1層の上にニッケルを含む材質よりなる第2層を形成する工程と、前記第2層の上に金を含む材質よりなる第3層を形成する工程と、を有する、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第3層は前記第2層に接するように形成される、請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、たとえば、ソースまたはエミッタの電位を検出するための電極パッドを有する半導体装置およびその製造方法に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
特開2010-123686号公報(特許文献1)には、大面積のソースパッド電極と小面積のゲートパッド電極とを有するパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が開示されている。ゲートパッド電極およびソースパッド電極の表面には、めっき法などにより金属膜が形成されている。この金属膜は、たとえばニッケル(Ni)層と金(Au)層との積層膜よりなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1における大面積のソースパッド電極と小面積のゲートパッド電極とに同時にめっき法により金属膜が形成されると、熱履歴による金層表面へのニッケルの湧き出し、パラジウム(Pd)層上の金層の未着(析出不良)、亜鉛(Zn)の過剰析出が発生する。これにより小面積のゲートパッド電極においてワイヤボンディング不良が生じる。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付の図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一の実施形態に係る半導体装置によれば、絶縁層は、第1導電層の表面を露出する第1開口と、第2導電層の表面を露出し第1開口よりも小さい開口面積を有する第2開口とを有する。第2開口から露出する第2導電層の表面の材質は、第1開口から露出する第1導電層の表面の材質とは異なる材質であり、かつアルミニウムを含む材質である。
【0007】
一の実施形態に係る半導体装置の製造方法は、以下の工程を有する。
【0008】
アルミニウムを含む材質よりなる第1層が形成される。第1層の第1パッド領域を露出するカバー絶縁層が形成される。第1層の第1パッド領域を露出する第1開口と、第1開口よりも小さな開口面積を有しカバー絶縁層の表面を露出する第2開口とを有する絶縁層が形成される。第1開口から露出する第1層の第1パッド領域に無電解めっき法によりめっき層が形成される。第2開口から露出するカバー絶縁層が除去されて第2開口から第1層の第2パッド領域が露出される。
【発明の効果】
【0009】
上記実施形態によれば、ワイヤボンディング不良が生じにくい半導体装置およびその製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図2】一実施形態に係る半導体装置の構成を封止樹脂を省略して示す平面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿う断面図である。
【
図5】一実施形態に係る半導体装置の製造方法の第1工程を示す断面図である。
【
図6】一実施形態に係る半導体装置の製造方法の第2工程を示す断面図である。
【
図7】一実施形態に係る半導体装置の製造方法の第3工程を示す断面図である。
【
図8】一実施形態に係る半導体装置の製造方法の第4工程を示す断面図である。
【
図9】一実施形態に係る半導体装置の製造方法の第5工程を示す断面図である。
【
図10】一実施形態に係る半導体装置の製造方法の第6工程を示す断面図である。
【
図11】めっき装置にエッチング槽を追加した構成を示す図である。
【
図12】比較例に係る半導体装置においてニッケルの湧き出しが生じた様子を示す断面図である。
【
図13】比較例に係る半導体装置において金層の未着が生じた様子を示す断面図である。
【
図14】比較例に係る半導体装置において亜鉛の過剰析出が生じた様子を示す断面図である。
【
図15】半導体基板にパワーMOSFETが形成された構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また図面では、説明の便宜上、構成または製造方法を省略または簡略化している場合もある。
【0012】
なお本明細書における平面視とは、半導体基板の第1面FSに対して直交する方向から見た視点を意味する。また平面形状とは、平面視における形状を意味する。また開口面積とは、平面視における開口の面積を意味する。
【0013】
<半導体装置の構成>
まず本開示の一実施形態に係る半導体装置の構成について
図1~
図4を用いて説明する。
【0014】
図1に示されるように、本実施形態に係る半導体装置SDは、たとえば半導体チップSCが封止樹脂SREで封止された半導体パッケージである。本実施の形態の半導体装置SDは、チップ搭載部RBと、半導体チップSCと、リード部RD1、RD2と、クリップ導電体CCと、ボンディングワイヤBWと、封止樹脂SREとを有している。
【0015】
半導体チップSCは、チップ搭載部RB上にはんだSOL2を介在して搭載されている。リード部RD1、RD2の各々は、チップ搭載部RBから離間して配置されている。クリップ導電体CCは、半導体チップSCのエミッタパッドEPとリード部RD1とを電気的に接続している。クリップ導電体CCは、半導体チップSCのエミッタパッドEPとはんだSOL1を介在して接続されている。クリップ導電体CCは、リード部RD1とはんだSOL3を介在して接続されている。ボンディングワイヤBWは、半導体チップSCのケルビンエミッタパッドKPとリード部RD2とを電気的に接続している。
【0016】
封止樹脂SREは、チップ搭載部RB、半導体チップSC、リード部RD1、RD2、クリップ導電体CC、およびボンディングワイヤBWらを封止している。封止樹脂SREからチップ搭載部RBおよびリード部RD1、RD2の各々の一部が露出している。封止樹脂SREは、たとえば熱硬化性樹脂材料などからなり、フィラー(たとえばシリカ粒子からなるフィラー)などを含むこともできる。
【0017】
図2に示されるように、本実施形態に係る半導体装置SDは、エミッタパッドEPと、ケルビンエミッタパッドKPと、ゲートパッドGPとを有している。エミッタパッドEP、ケルビンエミッタパッドKPおよびゲートパッドGPの各々は、矩形の平面形状を有している。エミッタパッドEPの平面占有面積は、ケルビンエミッタパッドKPおよびゲートパッドGPの各々の平面占有面積よりも大きい。
【0018】
エミッタパッドEPは、たとえばクリップ導電体CCに電気的に接続されている。クリップ導電体CCは、板状の導電体である。クリップ導電体CCは、たとえば銅(Cu)、銀(Ag)などの電気抵抗率の低い金属よりなっている。
【0019】
クリップ導電体CCを用いることにより、エミッタパッドEPにボンディングワイヤを接続した場合よりも、電流を多く流すことが可能となる。一方、ケルビンエミッタパッドKPおよびゲートパッドGPの各々には個別にボンディングワイヤBWが接続されている。ここではボンディングワイヤBWがケルビンエミッタパッドKPおよびゲートパッドGPの双方に接続される場合について説明するが、クリップ導電体がケルビンエミッタパッドKPおよびゲートパッドGPのいずれか一方に接続されてもよい。
【0020】
図3に示されるように、半導体チップSCは、半導体基板SBを有している。半導体基板SBは、互いに対向する第1面FSと第2面SSとを有している。半導体基板SBには、縦型の絶縁ゲート型電界効果トランジスタ部を有する電気素子が形成されている。この電気素子は、たとえばIGBTである。また縦型の電気素子とは、半導体基板SBの第1面FSと第2面SSとの間で電流が流れる電気素子を意味する。なお電気素子は、後述するようにパワーMOSFETであってもよい。
【0021】
半導体基板SBの第1面FSには層間絶縁層ILが配置されている。層間絶縁層ILには、コンタクトホールCHが設けられている。コンタクトホールCHは、層間絶縁層ILの上面から半導体基板SBの第1面FSに達している。
【0022】
半導体装置SDは、導電層CL1と、導電層CL2と、導電層CL3(
図2)とをさらに有している。導電層CL1、CL2、CL3の各々は、半導体基板SBの第1面FS上であって、層間絶縁層IL上に配置されている。
【0023】
導電層CL1(第1導電層)は、層間絶縁層ILのコンタクトホールCHを通じてIGBTのエミッタ領域(不純物領域)に直接接続されている。導電層CL1は、エミッタパッドEPを有している。導電層CL1の真下領域には、IGBTのゲート電極GEが配置されている。
【0024】
導電層CL2(第2導電層)は、導電層CL1と接続されている。導電層CL2は、ケルビンエミッタパッドKPを有している。導電層CL2の真下領域には、IGBTのゲート電極GEが配置されていない。導電層CL2の真下領域にゲート電極GEが配置されてもよく、ゲート電極の配置が制限されるものではない。
【0025】
図2および
図3に示されるように、導電層CL3(第2導電層)は、導電層CL1および導電層CL2の各々と分離して配置されている。導電層CL3は、層間絶縁層ILのコンタクトホール(図示せず)を通じてIGBTのゲート電極GEと電気的に接続されている。導電層CL3は、ゲートパッドGPを有している。
【0026】
図3に示されるように、導電層CL1は、バリアメタル層BMと、第1層FLと、第2層SLと、第3層TLとを有している。バリアメタル層BMは、層間絶縁層ILの上面およびコンタクトホールCHの壁面に接して配置されている。バリアメタル層BMは、たとえばチタン・タングステン(TiW)よりなっている。バリアメタル層BMは、チタン(Ti)または窒化チタン(TiN)の単層であってもよく、またチタンと窒化チタンとの積層膜であってもよい。
【0027】
第1層FLは、バリアメタル層BMの上面に接して配置され、コンタクトホールCHを埋め込んでいる。第1層FLは、たとえばアルミニウム(Al)を含む材質よりなっており、たとえば純アルミニウム、アルミニウムとシリコン(Si)との合金、アルミニウムと銅との合金、またはアルミニウムとシリコンと銅との合金よりなっている。
【0028】
第2層SLは、第1層FL上に配置されている。第2層SLは、第1金属を含む材質よりなっている。第1金属は、アルミニウムとは異なる金属であって、たとえばニッケルである。第1金属は、ニッケル中に少量のリン(P)を含んでもよい。
【0029】
第1層FLと第2層SLとの間には、亜鉛が存在する場合がある。亜鉛は、第1層FLにジンケート処理を施した際に形成された亜鉛被膜の残りである。
【0030】
第3層TLは、第2層SLの上に配置されている。具体的には第3層TLは、第2層SLの上面に接して配置されている。第3層TLは、第2金属を含む材質よりなっている。第2金属は、第1金属とは異なる金属であって、たとえば金である。
【0031】
導電層CL2は、バリアメタル層BMと、第1層FLとを有している。導電層CL2のバリアメタル層BMは、導電層CL1のバリアメタル層BMと接続されており、同じ層からなっている。導電層CL2のバリアメタル層BMは、層間絶縁層ILの上面に接して配置されている。
【0032】
導電層CL2の第1層FLは、導電層CL1の第1層FLと接続されており、同じ層からなっている。導電層CL2の第1層FLは、導電層CL2のバリアメタル層BMの上面に接して配置されている。
【0033】
図2に示されるように、導電層CL3は、バリアメタル層BM2と、第1層FL2とを有している。バリアメタル層BM2は、導電層CL1および導電層CL2のバリアメタル層BMと同一の層からパターニングにより分離して形成された層である。バリアメタル層BM2は、層間絶縁層ILの上面およびコンタクトホールの内壁面に接して配置されている。これによりバリアメタル層BM2は、ゲート電極GEに直接接続されている。
【0034】
第1層FL2は、導電層CL1、CL2の第1層FLと同一の層からパターニングにより分離して形成された層である。第1層FL2は、バリアメタル層BM2の上面に接して配置されている。
【0035】
なお上記以外の導電層CL3の構成は導電層CL2の構成とほぼ同じであるため、その説明を繰り返さない。
【0036】
図2および
図3に示されるように、導電層CL1、CL2、CL3の各々を覆うように、カバー絶縁層CLと絶縁層OI(有機絶縁層)とが配置されている。絶縁層OIは、有機絶縁体を含む材質よりなっている。絶縁層OIに含まれる有機絶縁体は、たとえばポリイミドである。
【0037】
カバー絶縁層CLは、絶縁層OIと半導体基板SBとの間および絶縁層OIと第1層FLとの間に配置されている。カバー絶縁層CLは、たとえばシリコン窒化膜(Si3N4)、シリコン酸窒化膜(SiON)、シリコン酸化膜(SiO2)などよりなっている。
【0038】
カバー絶縁層CLおよび絶縁層OIには、開口OP1、OP2、OP3が設けられている。開口OP1、OP2、OP3の各々は、カバー絶縁層CLおよび絶縁層OIの双方を貫通して第1層FL、FL2の表面に達している。
【0039】
開口OP1(第1開口)内には、第2層SLと第3層TLとが配置されている。開口OP1は、導電層CL1の表面を露出する。開口OP1から露出する導電層CL1の表面は第3層TLの上面である。このため開口OP1から露出する導電層CL1の表面の材質は、たとえば金である。第3層TL1の上面は、絶縁層OIから露出することによりエミッタパッドEPを構成している。
【0040】
開口OP2(第2開口)は、導電層CL2の表面を露出する。開口OP2は、開口OP1よりも小さい開口面積を有する。開口OP2から露出する導電層CL2の表面は第1層FLの上面である。このため開口OP2から露出する導電層CL2の表面の材質は、アルミニウムを含む材質であり、開口OP1から露出する導電層CL1の表面の材質とは異なる材質である。導電層CL2の第1層FLの上面は、絶縁層OIから露出することによりケルビンエミッタパッドKPを構成している。
【0041】
図2に示されるように、開口OP3(第2開口)は、導電層CL3の表面を露出する。開口OP3は、開口OP1よりも小さい開口面積を有する。開口OP3から露出する導電層CL3の表面は第1層FL2の上面である。このため開口OP3から露出する導電層CL3の表面の材質は、アルミニウムを含む材質であり、開口OP1から露出する導電層CL1の表面の材質とは異なる材質である。導電層CL3の第1層FL2の上面は、絶縁層OIから露出することによりゲートパッドGPを構成している。
【0042】
図3に示されるように、開口OP1から露出した導電層CL1の表面にははんだSOL1が配置されている。はんだSOL1は、導電層CL1の上面に接している。つまりエミッタパッドEPを構成する第3層TL1の上面にはんだSOL1が接している。
【0043】
エミッタパッドEPの上にはクリップ導電体CCが配置されている。クリップ導電体CCは、はんだSOL1を介在してエミッタパッドEPと電気的に接続されている。つまり、クリップ導電体CCは、はんだSOL1を介在して、導電層CL1における第3層TLの上面と接続されている。クリップ導電体CCとエミッタパッドEPとの接続には、はんだSOL1以外に、銀焼結(銀シンター)または銀ペーストの接合方法が用いられてもよい。
【0044】
開口OP2から露出した導電層CL2の表面にはボンディングワイヤBWが直接接続されている。つまりケルビンエミッタパッドKPを構成する第1層FLの上面にボンディングワイヤBWが直接接続されている。
【0045】
図2に示されるように、開口OP3から露出した導電層CL3の表面にはボンディングワイヤBWが直接接続されている。つまりゲートパッドGPを構成する第1層FL2の上面にボンディングワイヤBWが直接接続されている。
【0046】
図3に示されるように、半導体基板SBの第2面SSには、コレクタ電極CEが配置されている。コレクタ電極CEは、IGBTのコレクタ領域に電気的に接続されている。
【0047】
図4に示されるように、半導体基板SBに形成される電気素子は、たとえばIGBTである。IGBTは、p
+コレクタ領域CRと、n
+領域HRと、n
-ドリフト領域DRIと、p型ベース領域BRと、p
+コンタクト領域CONと、n
+エミッタ領域ERと、ゲート電極GEとを主に有している。
【0048】
p+コレクタ領域CRは、半導体基板SBの第2面SSに配置されている。p+コレクタ領域CR上(p+コレクタ領域CRに対して第1面FS側)にn+領域HRが配置されている。n+領域HRは、p+コレクタ領域CRとpn接合を構成している。
【0049】
n+領域HR上(n+領域HRに対して第1面FS側)にn-ドリフト領域DRIが配置されている。n-ドリフト領域DRIは、n+領域HRと接している。n-ドリフト領域DRIは、n+領域HRのn型不純物濃度よりも低いn型不純物濃度を有している。
【0050】
n-ドリフト領域DRI上(n-ドリフト領域DRIに対して第1面FS側)にp型ベース領域BRが配置されている。p型ベース領域BRは、n-ドリフト領域DRIとpn接合を構成している。
【0051】
p型ベース領域BR上(p型ベース領域BRに対して第1面FS側)にp+コンタクト領域CONおよびn+エミッタ領域ER(第1領域)が配置されている。p+コンタクト領域CONは、p型ベース領域BRと接している。p+コンタクト領域CONは、p型ベース領域BRのp型不純物濃度よりも高いp型不純物濃度を有している。n+エミッタ領域ERは、p+コンタクト領域CONおよびp型ベース領域BRの各々とpn接合を構成している。
【0052】
半導体基板SBには、トレンチTRが設けられている。トレンチTRは、第1面FSからn+エミッタ領域ERおよびp型ベース領域BRの各々を貫通してn-ドリフト領域DRIに達している。トレンチTRの内壁に沿ってゲート絶縁層GIが配置されている。トレンチTRの内部は、ゲート電極GEによって充填されている。ゲート電極GEは、ゲート絶縁層GIを介在してp型ベース領域BRと対向している。これによりIGBTは、絶縁ゲート型電界効果トランジスタ部を有している。
【0053】
導電層CL1は、層間絶縁層ILのコンタクトホールCHを通じてn+エミッタ領域ERと電気的に接続されることによりエミッタ電極を構成している。また導電層CL1は、コンタクトホールCHを通じてp+コンタクト領域CONとも電気的に接続されている。
【0054】
半導体基板SBの第2面SSにはコレクタ電極CEが配置されている。コレクタ電極CEは、p+コレクタ領域CRと接することによりp+コレクタ領域CRと電気的に接続されている。
【0055】
なお上記実施形態に係る半導体装置SDは、コレクタの電位を検出するためのケルビンコレクタパッド(図示せず)を有していてもよい。ケルビンコレクタパッドは、
図4に示されるp
+コレクタ領域CRに電気的に接続されている。ケルビンコレクタパッドは、半導体基板SBに対してエミッタパッドEP、ケルビンエミッタパッドKPなどと同じ側(つまり第1面FS側)に配置されている。ケルビンコレクタパッドは、エミッタパッドEPの開口面積よりも小さい開口面積を有している。ケルビンコレクタパッドを構成する導電層は、
図3に示される導電層CL2と同じ構成を有している。具体的にはケルビンコレクタパッドを構成する導電層は、
図3に示される導電層CL2のバリアメタル層BMおよび第1層FLと同じ層から分離して構成されている。ケルビンコレクタパッドには、ボンディングワイヤが接続されている。ボンディングワイヤは、ケルビンコレクタパッドにおいてアルミニウムを含む材質よりなる第1層に直接接続されている。なお、これ以外のケルビンコレクタパッドの構成は、ケルビンエミッタパッドの構成をほぼ同じであるため、その説明を繰り返さない。
【0056】
<半導体装置の製造方法>
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法について
図5~
図10および
図3を用いて説明する。
【0057】
図5に示されるように、まず半導体基板SBが準備される、半導体基板SBに、IGBTなどのゲート電極GEを有する電気素子(図示せず)が形成される。ゲート電極GEは、たとえば不純物が導入された多結晶シリコンにより形成される。
【0058】
半導体基板SBの第1面FSを覆うように、たとえばシリコン酸化膜よりなる層間絶縁層ILが形成される。層間絶縁層ILには、写真製版技術およびエッチング技術により、コンタクトホールCHが形成される。コンタクトホールCHは、層間絶縁層ILの上面からn+エミッタ領域ERおよびp+コンタクト領域CONの各々に達する。
【0059】
層間絶縁層IL上に、たとえばチタン・タングステンよりなるバリアメタル層と、たとえばアルミニウムを含む材質よりなる第1層とが順に積層して形成される。バリアメタル層は、コンタクトホールCHを通じてn+エミッタ領域ERおよびp+コンタクト領域CONの各々に直接接するように形成される。第1層は、バリアメタル層の上面に接するように形成される。第1層は、たとえば純アルミニウム、アルミニウムとシリコン(Si)との合金、アルミニウムと銅との合金、またはアルミニウムとシリコンと銅との合金よりなっている。
【0060】
写真製版技術およびエッチング技術により第1層およびバリアメタル層がパターニングされる。これによりバリアメタル層がバリアメタル層BM、BM2(
図2)に分離される。また第1層は第1層FL、FL2(
図2)に分離される。またバリアメタル層BMと第1層FLとの積層構造と、バリアメタル層BM2と第1層FL2との積層構造とが形成される。
【0061】
この後、半導体基板SBの第1面FSの全面に、カバー絶縁層CLが形成される。カバー絶縁層CLは、バリアメタル層BMと第1層FLとの積層構造と、バリアメタル層BM2と第1層FL2との積層構造とを覆うように形成される。カバー絶縁層CLは、たとえばシリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、シリコン酸化膜などから形成される。
【0062】
図6に示されるように、写真製版技術およびエッチング技術によりカバー絶縁層CLがパターニングされる。これによりカバー絶縁層CLに開口OPaが形成される。開口OPaからは、第1層FLの表面の一部(エミッタパッド領域(第1パッド領域))が露出する。これにより第1層FLのエミッタパッド領域を露出するカバー絶縁層CLが形成される。
【0063】
図7に示されるように、この後、半導体基板SBの第1面FSの全面に、絶縁層OIが塗布される。絶縁層OIは、バリアメタル層BMと第1層FLとの積層構造と、バリアメタル層BM2と第1層FL2との積層構造とを覆うように形成される。また絶縁層OIは、開口OPaから露出した第1層FLの表面を覆うように形成される。絶縁層OIは、たとえば有機感光膜であり、ポリイミドである。
【0064】
図8に示されるように、写真製版技術(露光・現像)により絶縁層OIがパターニングされる。これにより絶縁層OIに、開口OPc、OPdが形成される。開口OPcは、カバー絶縁層CLの開口OPaに通じるように形成される。開口OPaと開口OPcとにより、エミッタパッドEPを規定する開口OP1が形成される。開口OP1からは第1層FLの一部表面が露出する。
【0065】
開口OPdは、カバー絶縁層CLの表面を露出するように形成される。これにより第1層FLのエミッタパッド領域を露出する開口OP1と、開口OP1よりも小さな開口面積を有しカバー絶縁層CLの表面を露出する開口OPdとを有する絶縁層OIが形成される。
【0066】
図9に示されるように、無電解めっき法を用いて、開口OP1から露出する第1層FLのエミッタパッド領域にめっき層が形成される。めっき層を形成する工程は、第1層FL上に、ニッケルを含む材質よりなる第2層SLを形成する工程と、第2層SLの上に金を含む材質よりなる第3層TLを形成する工程とを含む。第2層SLおよび第3層TLをめっきで形成する工程を以下に具体的に説明する。
【0067】
まず脱脂処理により、第1層FLの表面が清浄化される。この後、エッチング処理により、表面の酸化層が除去され、次に、酸洗浄を実施した後で、第1ジンケート処理が行われる。次に、酸洗浄で、第1ジンケート処理で形成された亜鉛が除去される。次に、第1層FLに、第2ジンケート処理が実行される。第2ジンケート処理では、表面にジンケート液を接触させ、アルミニウムと亜鉛との置換反応により、表面に亜鉛被膜が形成される。ジンケート処理は、アルミニウム表面へのめっきを容易にするために行われる。亜鉛被膜が形成された第1層FLに、無電解めっきとしてたとえばニッケルめっきと金めっきとが実行される。各処理の間では、純水洗浄処理がおこなわれる。無電解ニッケルめっき液に還元剤として次亜リン酸を用いる場合は、ニッケル膜中に少量のリン(P)が含まれる。
【0068】
上記ニッケルめっきと金めっきとにより、第1層FL1上に、ニッケルよりなる第2層SLと、金よりなる第3層TLとが形成される(Ni/Au)。これにより第3層TLの上面がエミッタパッドEPを構成する。第3層TLは、第2層SLに接するように形成される。
【0069】
なおニッケルめっきによって、第1層FL、FL2の各々の表面上における亜鉛被膜はほとんど残らない。ただし第1層FL、FL2の各々の表面上には少量の亜鉛が残っている場合がある。またニッケルめっき上にパラジウムめっきが行なわれることにより、第3層TLがパラジウムとされてもよい(Ni/Pd)。ニッケルめっきと金めっきとの間に、パラジウムめっきが行なわれてもよい(Ni/Pd/Au)。ニッケルめっきと金めっきとの間に行なわれるめっきは、パラジウムめっきに限定されず、はんだ、ボンディングワイヤなどに対して貴な金属のめっきであればよい。
【0070】
図10に示されるように、絶縁層OIの開口OPdから露出するカバー絶縁層CLが、たとえばフッ酸などによるウェットエッチングにより除去される。このウェットエッチングにより、開口OPdから露出するカバー絶縁層CLが除去され、第1層FLにおけるケルビンエミッタパッド領域(第2パッド領域)の表面が露出する。
【0071】
なおウェットエッチングに代えて、レジストマスクを用いたドライエッチングにより、開口OPdから露出するカバー絶縁層CLが除去され、第1層FLにおけるケルビンエミッタパッド領域の表面が露出されてもよい。
【0072】
開口OPdから露出するカバー絶縁層CLが除去されることにより、開口OPdに通じる開口OPbがカバー絶縁層CLに形成される。開口OPbと開口OPdとにより、ケルビンエミッタパッドKPを規定する開口OP2が形成される。開口OP2からは第1層FLのケルビンエミッタパッド領域が露出する。
【0073】
なお
図2に示されるゲートパッドGPを規定する開口OP3および導電層CL1は、上記のケルビンエミッタパッドKPを規定する開口OP2および導電層CL2と同様に形成される。
【0074】
図3に示されるように、半導体基板SBの第2面SSが所定厚み研磨された後、第2面SSにコレクタ電極CEが形成される。コレクタ電極CEとして、半導体基板SB側から、アルミニウムとシリコン(Si)の合金層と、チタン層と、ニッケル層と、金層とが積層して形成される。この後、半導体ウエハがダイシングされて複数の半導体チップSCに分割される。
【0075】
半導体チップSCの状態で、エミッタパッド領域において露出するめっき層(第3層TL)にはんだSOL1を介在してクリップ導電体CCが接続される。つまりクリップ導電体CCがはんだSOL1を介在してエミッタパッドEPに接続される。
【0076】
また半導体チップの状態で、ケルビンエミッタパッド領域およびゲートパッド領域のそれぞれにおいて露出する第1層FL、FL2にボンディングワイヤBWが直接接続される。つまりボンディングワイヤBWがケルビンエミッタパッドKPおよびゲートパッドGPの各々に直接接続される。
【0077】
上記により本実施形態の半導体装置SDが製造される。
【0078】
なお
図10で実施されるウェットエッチングは、
図9で実施されるめっきとは別工程として、従来のウェットエッチング装置により実施される。また
図10で実施されるウェットエッチングは、
図9で実施されるめっきの終了後に連続して実施されてもよい。この場合、
図9で実施されるめっきを行なうめっき装置は、
図10で実施されるウェットエッチングのエッチング槽を追加で有している。以下、このエッチング槽を有するめっき装置について
図11を用いて説明する。
【0079】
図11に示されるように、めっき装置PAは、ロード部L1からアンロード部L2に向かって順番に、クリーナー槽P1、エッチング槽P3、酸処理槽P5、ジンケート槽P7、無電解ニッケル槽P9、無電解パラジウム槽P11、無電解金槽P13、P15、絶縁膜エッチング槽P17、および乾燥部P19を有している。まためっき装置PAは、複数の水洗槽P2、P4、P6、P8、P10、P12、P14、P16、P18をさらに有している。
【0080】
このようにめっき装置PAは絶縁膜エッチング槽P17を有している。絶縁膜エッチング槽P17は、無電解金槽P15および水洗槽P16よりもアンロード部L2側に位置している。これによりめっき装置PA内でめっき終了後に連続してウェットエッチングを実施することが可能となる。
【0081】
<効果>
次に、本実施形態の効果について、
図12~
図14に示す比較例と対比して説明する。
【0082】
図12~
図14に示されるように、比較例においては、大面積のエミッタパッドEPと小面積のケルビンエミッタパッドKPとの双方にめっき法による金属膜が形成されている。
【0083】
具体的には
図12に示されるように、導電層CL1は、バリアメタル層BMおよび第1層FLを有し、さらに第1層FL上にめっきで形成された第2層SL1および第3層TL1を有している。また導電層CL2も、導電層CL1と同様、バリアメタル層BMおよび第1層FLを有し、さらに第1層FL上にめっきで形成された第2層SL2および第3層TL2を有している。
【0084】
第2層SL1、SL2の各々はたとえばニッケルを含む材質よりなり、第3層TL1、TL2の各々はたとえば金を含む材質よりなる。
【0085】
このような比較例においては、
図12に示されるように、大面積のエミッタパッドEPおよび小面積のケルビンエミッタパッドKPの双方において、熱履歴により第3層TL1、TL2の表面上にニッケルが湧き出す。ニッケルの湧き出しは、第2層SL1、SL2中のニッケルが第3層TL1、TL2における金の粒界を通って第3層TL1、TL2の上面に達することにより生じる。
【0086】
大面積のエミッタパッドEPをはんだで接続する場合には、大面積とはんだ接続との組合せの優位性によりNiの湧き出しの影響は小さい。一方、小面積のケルビンエミッタパッドKPをボンディングワイヤで接続する場合にはニッケルの湧き出しの影響が大きい。
【0087】
このため、ボンディングワイヤBWが接続される小面積のケルビンエミッタパッドKPの接続部にニッケルの湧き出しが生じていると、ボンディングワイヤBWの剥がれが生じやすくなる。
【0088】
上記ニッケルの湧き出しを抑制するために、
図13および
図14に示されるように、第2層SL1、SL2と第3層TL1、TL2との間に中間層ML1、ML2を配置することが考えられる。中間層ML1、ML2は、たとえばパラジウムを含む材質よりなっている。パラジウムのような貴金属を含む層はニッケルのバリア膜として機能する。このため中間層ML1、ML2の配置によりニッケルの湧き出しを抑制することが可能となる。
【0089】
しかしながら中間層ML1、ML2を配置しても、小面積のケルビンエミッタパッドKPにおいて、
図13に示されるように第3層TL2の未着部発生の問題が生じる。以下、その問題を説明する。
【0090】
図13に示されるように、小面積のケルビンエミッタパッドKPで発生した電子(Ni→Ni
++e
-)はエミッタ領域ER(
図4)に逃げる場合がある。この場合、小面積のケルビンエミッタパッドKPに金が十分に析出せず、第3層TL2が形成されない部分が生じる。このように小面積のケルビンエミッタパッドKPにおいて、エミッタパッドEPとケルビンエミッタパッドKPとの面積差により、第3層TL2が十分に形成されない部分が生じる。このためケルビンエミッタパッドKPへのボンディングワイヤBWの接続不良が生じ、ボンディングワイヤBWの剥がれが生じやすくなる。
【0091】
特に第2層SL2と第3層TL2との間に中間層ML2が配置された構成では、第2層SL2から放出された電子を中間層ML2を通じてAuイオンが受け取る。このためAuイオンが第2層SL2の表面で電子を受け取る構造のニッケル層と金層との積層構造と比較して第3層TL2の未着が顕著となる。
【0092】
また中間層ML1、ML2を配置しても、小面積のケルビンエミッタパッドKPにおいて、
図14に示されるように第1層FL上における亜鉛の過剰析出の問題が生じる。以下、その問題を説明する。
【0093】
図14に示されるように、エミッタパッドEPとケルビンエミッタパッドKPとが、アルミニウムよりなる第1層FLを共有している。また第1層FLは、エミッタパッドEPとなる領域において絶縁層OIから大面積で露出し、ケルビンエミッタパッドとなる領域において絶縁層OIから小面積で露出している。
【0094】
アルミニウムよりなる第1層FLのジンケート処理時には、第1層FLのAlは、Al→Al3++3e-の反応を起こす。また薬液中のZn2+は、第1層FL中の電子(e-)を得て、Zn2++2e-→Znの反応を起こす。これにより第1層FL上に亜鉛被膜が形成される。アルミニウム表面の全面が亜鉛で置換された段階で反応が止まる。
【0095】
またジンケート処理において薬液中のZn2+は、大面積で露出するエミッタパッドEP領域の第1層FLには十分に供給されず、小面積で露出するケルビンエミッタパッドKP領域の第1層FLには十分に供給される。このため第1層FL中で余った電子(e-)は、大面積で露出するエミッタパッドEP領域側から小面積で露出するケルビンエミッタパッドKP領域側へ第1層FL中を移動する。
【0096】
その結果、小面積で露出するケルビンエミッタパッドKP領域において第1層FL上に亜鉛が過剰に析出し、厚い膜厚を有する亜鉛被膜ZNが成長する。ケルビンエミッタパッドKP領域では、この厚い亜鉛被膜ZNにより第1層FLと第2層SL2との密着性が低下して、ボンディングワイヤBWが接続された箇所の剥がれが発生しやすくなる。
【0097】
これに対して本実施形態においては
図2および
図3に示されるように、ケルビンエミッタパッドKP、ゲートパッドGPなどの小面積パッドには、アルミニウムを含む材質よりなる第1層FLにボンディングワイヤBWが直接接続されている。このようにボンディングワイヤBWが接続される箇所にニッケル層、金層などのめっき層が無いためニッケルの湧き出し(
図12)、第3層TL2の未着(
図13)、亜鉛の過剰析出(
図14)の問題は生じない。またボンディングワイヤBWとアルミニウムを含む材質との接合性は良好である。このためボンディングワイヤBWが小面積パッドから剥がれにくくなる。
【0098】
また本実施形態によれば
図3に示されるように、大面積のエミッタパッドEPでは、はんだSOL1を介在して板状のクリップ導電体CCが接続されている。このため本実施形態では、線状のボンディングワイヤよりも、電流を多く流すことが可能となる。
【0099】
また本実施形態によれば
図3に示されるように、導電層CL1は、アルミニウムを含む材質よりなる第1層FLと、ニッケルを含む材質よりなる第2層SLと、金を含む材質よりなる第3層TLとを有している。これによりはんだSOL1を介在して導電層CL1にクリップ導電体CCを接続することが容易となる。
【0100】
また本実施形態によれば
図3に示されるように、第3層TLは第2層SLに接している。このように第2層SLと第3層TLとの間に余計な層が不要となるため、簡易な構成で導電層CL1を構成することができる。
【0101】
またはんだSOL1はニッケルに濡れる。このため、第2層SLと第3層TLとの間にパラジウムなどの層を配置せずとも、はんだSOL1を介在してクリップ導電体CCを導電層CL1に接合性良く接続することができる。
【0102】
また本実施形態によれば
図3に示されるように、導電層CL1はエミッタ領域ERに接続されている。これによりクリップ導電体CCを通じて大電流を流すことができる。
【0103】
また本実施形態によれば
図3に示されるように、導電層CL2はエミッタ領域またはゲート電極GEのいずれか一方に接続されている。これによりケルビンエミッタパッドKPを通じてエミッタの電位を検出することもでき、またゲート電極GEの電位を制御することができる。
【0104】
また本実施形態によれば
図9に示されるように、開口OP1から露出する第1層FLに無電解めっき法によりめっき層(第2層SL、第3層TL)が形成された後に、
図10に示されるように開口OPdから露出するカバー絶縁層CLが除去される。これにより開口OPdから露出するカバー絶縁層CLを、専用のマスクを別途形成することなく選択的に除去することが可能となる。このため少ない工程数で本実施形態の半導体装置を製造することができる。
【0105】
(その他)
上記実施形態においては半導体基板SBに形成される電気素子として縦型のIGBTについて説明した。しかし本開示が適用される電気素子は縦型のIGBTに限定されるものではなく、
図15に示されるような縦型のパワーMOSFETであってもよい。
【0106】
図15に示されるように、縦型のパワーMOSFETは、n
+ドレイン領域DRと、n
-ドリフト領域DRIと、p型ベース領域BRと、p
+コンタクト領域CONと、n
+ソース領域SRと、ゲート電極GEとを有している。
【0107】
n+ドレイン領域DRは、半導体基板SBの第2面SSに配置されている。n+ドレイン領域DRと接するようにn-ドリフト領域DRIが配置されている。n-ドリフト領域DRIは、n+ドレイン領域DRのn型不純物濃度よりも低いn型不純物濃度を有している。n-ドリフト領域DRIとpn接合を構成するように、n-ドリフト領域DRI上(n-ドリフト領域DRIに対して第1面FS側)にp型ベース領域BRが配置されている。
【0108】
p型ベース領域BRと接するようにp型ベース領域BR上(p型ベース領域BRに対して第1面FS側)にp+コンタクト領域CONおよびn+ソース領域SRが配置されている。p+コンタクト領域CONは、p型ベース領域BRのp型不純物濃度よりも高いp型不純物濃度を有している。n+ソース領域SRは、p+コンタクト領域CONおよびp型ベース領域BRの各々とpn接合を構成している。
【0109】
半導体基板SBには、第1面FSからn+ソース領域SRおよびp型ベース領域BRの各々を貫通してn-ドリフト領域DRIに達するトレンチTRが設けられている。トレンチTRの壁面に沿ってゲート絶縁層GIが配置されている。トレンチTRの内部は、ゲート電極GEによって充填されている。ゲート電極GEは、ゲート絶縁層GIを介在してp型ベース領域BRと対向している。これによりパワーMOSFETは、絶縁ゲート型電界効果トランジスタ部を有している。
【0110】
導電層CL1は、層間絶縁層ILのコンタクトホールCHを通じてn+ソース領域SRと接することによりソース電極を構成している。導電層CL1は、絶縁層OIから露出したソースパッドSPを有している。本実施形態では、実施形態1、2におけるケルビンエミッタパッドKPはケルビンソースパッドとなり、n+ソース領域SRの電位を測定するものとなる。半導体基板SBの第2面SSに配置された導電層sは、n+ドレイン領域DRと接することによりドレイン電極DEを構成している。
【0111】
このようなMOSFETにおいても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0112】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0113】
BM バリアメタル層、BR p型ベース領域、BW ボンディングワイヤ、CE コレクタ電極、CH,CH1 コンタクトホール、CL カバー絶縁層、CL1,CL2,CL3,s 導電層、CON p+コンタクト領域、CR p+コレクタ領域、DE ドレイン電極、DR n+ドレイン領域、DRI n-ドリフト領域、EP エミッタパッド、ER n+エミッタ領域、FL,FL1,FL2 第1層、FS 第1面、GE ゲート電極、GI ゲート絶縁層、GP ゲートパッド、HR n+領域、IL 層間絶縁層、KP ケルビンエミッタパッド、L1 ロード部、L2 アンロード部、ML1,ML2 Pd層、OI 絶縁層、OP1,OP2,OP3,OPa,OPb,OPc,OPd 開口、P1 クリーナー槽、P2,P4,P6,P8,P10,P12,P14,P16,P18 水洗槽、P3 エッチング槽、P5 酸処理槽、P7 ジンケート槽、P9 無電解Ni槽、P11 無電解Pd槽、P13,P15 無電解Au槽、P17 絶縁膜エッチング槽、P19 乾燥部、RB チップ搭載部、RD1,RD2 リード部、SB 半導体基板、SC 半導体チップ、SD 半導体装置、SL,SL1,SL2 第2層、SOL1,SOL2,SOL3 はんだ、SP ソースパッド、SR n+ソース領域、SRE 封止樹脂、SS 第2面、TL,TL1,TL2 第3層、TR トレンチ、ZN 亜鉛被膜。