(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172179
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】原稿送り装置、画像読取装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 7/12 20060101AFI20231129BHJP
B65H 3/06 20060101ALI20231129BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20231129BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20231129BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B65H7/12
B65H3/06 A
B65H5/06 F
G03G15/00 410
H04N1/00 567J
H04N1/00 567M
G03G15/00 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083807
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168217
【弁理士】
【氏名又は名称】大村 和史
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 裕典
(72)【発明者】
【氏名】森本 泰正
(72)【発明者】
【氏名】黒田 憲治
(72)【発明者】
【氏名】福西 俊樹
【テーマコード(参考)】
2H072
2H076
3F048
3F049
3F343
5C062
【Fターム(参考)】
2H072AA04
2H072AA12
2H072AA13
2H072AA22
2H072AA23
2H072AB18
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2H076BA15
2H076BA63
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2H076BA67
2H076BA68
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2H076EA15
3F048AA01
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3F049AA10
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3F343FA03
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3F343MA04
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3F343MB14
3F343MC09
3F343MC26
5C062AA02
5C062AA05
5C062AB02
5C062AB30
5C062AB32
5C062AB35
5C062AB40
5C062AC12
5C062AC66
5C062AC70
(57)【要約】 (修正有)
【課題】原稿の重送を適切に防止できる、原稿送り装置を提供する。
【解決手段】原稿送り装置は、原稿搬送路に設けられた複数の搬送ローラと、これらを制御する制御部とを備える。制御部は、重送検出センサによって重送が検出されたときに原稿の搬送を停止する。また、制御部は、搬送停止後に原稿載置トレイに戻された原稿の搬送を再開するとき、1枚目の原稿の搬送開始時の搬送速度を基準速度である第1速度よりも遅い第2速度とし、2枚目以降の原稿の搬送開始時の搬送速度を第1速度とする第1モードを実行する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿が積載される原稿載置トレイから画像読取位置を経由させて原稿排紙トレイまで原稿を搬送可能な原稿送り装置であって、
原稿搬送路に設けられた複数の搬送ローラ、
前記原稿搬送路を搬送される原稿の重送を検出する重送検出センサ、および
前記複数の搬送ローラによる原稿の搬送動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記重送検出センサによって重送が検出されたときに原稿の搬送を停止し、かつ、搬送停止後に前記原稿載置トレイに戻された原稿の搬送を再開するとき、1枚目の原稿の搬送開始時の搬送速度を基準速度である第1速度よりも遅い第2速度とし、2枚目以降の原稿の搬送開始時の搬送速度を前記第1速度とする第1モードを実行可能である、原稿送り装置。
【請求項2】
前記制御部は、1つのジョブ中で最初の重送の場合に前記第1モードを実行する、請求項1記載の原稿送り装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記原稿載置トレイに積載された全ての原稿の搬送開始時の搬送速度を前記第2速度に設定する第2モードを実行可能であり、1つのジョブ中で2回目以降の重送の場合に前記第2モードを実行する、請求項1または2記載の原稿送り装置。
【請求項4】
前記複数の搬送ローラは、前記原稿搬送路の上流側端部に設けられた給紙ローラを含み、
原稿搬送方向における前記給紙ローラの下流側に設けられ、前記原稿搬送路を搬送される原稿の位置を検出する複数の原稿位置検出センサを備え、
前記制御部は、前記第1モードにおいて、前記複数の原稿位置検出センサのうち前記原稿搬送方向における最も上流側に設けられた原稿位置検出センサの検出結果に基づいて、1枚目の原稿の搬送速度を前記第2速度から前記第1速度に切り替える、請求項1または2記載の原稿送り装置。
【請求項5】
前記原稿搬送方向における前記給紙ローラの下流側であってかつ前記画像読取位置の上流側に設けられたレジストローラを備え、
前記制御部は、前記第1モードにおいて、1枚目の原稿の先端が前記レジストローラを通過した後、当該1枚目の原稿の搬送速度を前記第2速度から前記第1速度に切り替える、請求項4記載の原稿送り装置。
【請求項6】
前記重送検出センサは、前記原稿搬送方向における前記レジストローラの上流側に設けられている、請求項5記載の原稿送り装置。
【請求項7】
前記複数の搬送ローラは、単一の駆動源によって駆動され、
前記第1モードにおける原稿の画像読取時の搬送速度は、前記第2モードにおける原稿の画像読取時の搬送速度よりも速い速度に設定される、請求項3記載の原稿送り装置。
【請求項8】
前記複数の搬送ローラは、複数の駆動源によって駆動され、
前記第1モードにおける原稿の画像読取時の搬送速度と前記第2モードにおける原稿の画像読取時の搬送速度とは、同じ速度に設定される、請求項3記載の原稿送り装置。
【請求項9】
請求項1記載の原稿送り装置を備える、画像読取装置。
【請求項10】
請求項9記載の画像読取装置を備える、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は原稿送り装置、画像読取装置および画像形成装置に関し、特にたとえば、原稿が積載される原稿載置トレイから画像読取位置を経由して原稿排紙トレイまで原稿を連続搬送可能な、原稿送り装置、画像読取装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の給紙装置の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の給紙装置は、画像が形成される用紙を給紙する装置であって、繰り出しローラと捌き部とを有する給紙部、駆動部、負荷電流検出部、及び制御部を備える。負荷電流検出部は、給紙部を駆動する駆動部における繰り出しローラの負荷電流を検出する。制御部は、駆動部を制御するとともに、負荷電流検出部によって検出された負荷電流を取得し、負荷電流に基づき、繰り出しローラによって搬送される用紙が1枚であるか複数枚であるかを判定する。そして、1枚であると判定した場合に第1のモードで駆動部を制御することにより給紙部に当該用紙の給紙を行わせ、複数枚であると判定した場合に第1のモードよりも繰り出しローラを遅い速度で回転させる第2のモードで駆動部を制御することにより給紙部に当該用紙の給紙を行わせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、画像が形成される用紙を給紙する給紙装置において重送を防止するための技術であるが、画像を読み取るための原稿を連続搬送する原稿送り装置においても、原稿の重送を適切に防止できる技術が望まれる。しかしながら、給紙装置に関する特許文献1の技術を原稿送り装置にそのまま採用することはできない。また、特許文献1の技術では、繰り出しローラによって搬送される用紙が複数枚であると判定したときに、繰り出しローラを遅い速度で回転させて用紙を送り出す。しかし、送り出した用紙が捌き部で必ずしも1枚に分離されるとは限らないので、複数枚の用紙をそのまま送り出してしまう場合も生じ得る。
【0005】
それゆえに、この開示の主たる目的は、新規な、原稿送り装置、画像読取装置および画像形成装置を提供することである。
【0006】
この開示の他の目的は、原稿の重送を適切に防止できる、原稿送り装置、画像読取装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の開示は、原稿が積載される原稿載置トレイから画像読取位置を経由させて原稿排紙トレイまで原稿を搬送可能な原稿送り装置に関する開示である。この原稿送り装置は、原稿搬送路に設けられた複数の搬送ローラ、原稿搬送路を搬送される原稿の重送を検出する重送検出センサ、および複数の搬送ローラによる原稿の搬送動作を制御する制御部を備える。制御部は、重送検出センサによって重送が検出されたときに原稿の搬送を停止する。また、制御部は、搬送停止後に原稿載置トレイに戻された原稿の搬送を再開するとき、1枚目の原稿の搬送開始時の搬送速度を基準速度である第1速度よりも遅い第2速度とし、2枚目以降の原稿の搬送開始時の搬送速度を第1速度とする第1モードを実行可能である。
【0008】
第1の開示によれば、複数枚の原稿が原稿搬送路内にそのまま送り出されてしまうことを防止できると共に、搬送再開時の1枚目の原稿と2枚目の原稿とを適切に分離することができる。したがって、原稿の重送を適切に防止できる。
【0009】
第2の開示は、第1の開示に従属し、制御部は、1つのジョブ中で最初の重送の場合に第1モードを実行する。
【0010】
第3の開示は、第1または第2の開示に従属し、制御部は、原稿載置トレイに積載された全ての原稿の搬送開始時の搬送速度を第2速度に設定する第2モードを実行可能であり、1つのジョブ中で2回目以降の重送の場合に第2モードを実行する。
【0011】
第4の開示は、第1または第2の開示に従属し、複数の搬送ローラは、原稿搬送路の上流側端部に設けられた給紙ローラを含み、原稿搬送方向における給紙ローラの下流側に設けられ、原稿搬送路を搬送される原稿の位置を検出する複数の原稿位置検出センサを備え、制御部は、第1モードにおいて、複数の原稿位置検出センサのうち原稿搬送方向における最も上流側に設けられた原稿位置検出センサの検出結果に基づいて、1枚目の原稿の搬送速度を第2速度から第1速度に切り替える。
【0012】
第5の開示は、第4の開示に従属し、原稿搬送方向における給紙ローラの下流側であってかつ画像読取位置の上流側に設けられたレジストローラを備え、制御部は、第1モードにおいて、1枚目の原稿の先端がレジストローラを通過した後、当該1枚目の原稿の搬送速度を第2速度から第1速度に切り替える。
【0013】
第6の開示は、第5の開示に従属し、重送検出センサは、原稿搬送方向におけるレジストローラの上流側に設けられている。
【0014】
第7の開示は、第3の開示に従属し、複数の搬送ローラは、単一の駆動源によって駆動され、1モードにおける原稿の画像読取時の搬送速度は、第2モードにおける原稿の画像読取時の搬送速度よりも速い速度に設定される。
【0015】
第8の開示は、第3の開示に従属し、複数の搬送ローラは、複数の駆動源によって駆動され、第1モードにおける原稿の画像読取時の搬送速度と第2モードにおける原稿の画像読取時の搬送速度とは、同じ速度に設定される。
【0016】
第9の開示は、第1の開示に係る原稿送り装置を備える、画像読取装置である。
【0017】
第10の開示は、第9の開示に係る画像読取装置を備える、画像形成装置である。
【発明の効果】
【0018】
この開示によれば、複数枚の原稿が原稿搬送路内にそのまま送り出されてしまうことを防止できると共に、搬送再開時の1枚目の原稿と2枚目の原稿とを適切に分離することができる。したがって、原稿の重送を適切に防止できる。
【0019】
この開示の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この開示の第1実施例の原稿送り装置を有する画像読取装置を備える画像形成装置の内部構造を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図1の画像読取装置の内部構造を模式的に示す断面図である。
【
図3】搬送速度テーブルの一例を示す図解図である。
【
図4】
図1の画像形成装置の電気的構造を示すブロック図である。
【
図5】
図4に示したRAMのメモリマップの一例を示す図解図である。
【
図6】
図4に示したCPUが実行する原稿搬送処理の一例を示すフロー図である。
【
図7】この開示の第2実施例の原稿送り装置における搬送速度テーブルの一例を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施例]
図1を参照して、この開示の一実施例である原稿送り装置56は、原稿載置トレイ60に積載された原稿を画像読取位置P1,P2(
図2参照)を経由させて原稿排紙トレイ62まで1枚ずつ連続搬送可能な自動原稿送り装置(ADF:Auto Document Feeder)であって、画像読取装置14に設けられる。また、原稿送り装置56を有する画像読取装置14は、電子写真方式によって用紙に画像を形成する画像形成装置10に適用される。
【0022】
先ず、画像形成装置10の基本構成について概略的に説明する。
図1に示すように、この第1実施例では、画像形成装置10は、複写機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能などを有する複合機(MFP:Multifunction Peripheral)である。画像形成装置10は、画像形成装置本体12と、その上方に配置される画像読取装置14とを含む。
【0023】
画像形成装置本体12には、CPU80(
図4参照)等を含む制御部16、および画像形成部18などが内蔵される。制御部16(具体的にはCPU80)は、操作パネル88(
図4参照)への入力操作などに応じて、原稿送り装置56および画像読取装置14を含む画像形成装置10の各部位に制御信号を送信し、画像形成装置10に種々の動作を実行させる。すなわち、制御部16は、画像読取装置14および複数の搬送ローラ66(
図2参照)を含む原稿送り装置56の制御部でもあり、後述する原稿搬送動作を制御する。
【0024】
画像形成部18は、露光ユニット20、現像装置22、感光体ドラム24、クリーナユニット26、帯電器28、中間転写ベルトユニット30、転写ローラ32および定着ユニット34等を備え、給紙トレイ36等から搬送される用紙上に画像を形成し、画像形成済みの用紙を排紙トレイ38に排出する。用紙上に画像を形成するための画像データとしては、後述する第1画像読取部50および第2画像読取部54で読み取った画像データ、または外部コンピュータから送信された画像データ等が利用される。
【0025】
なお、画像形成装置10において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の4色のカラー画像に応じたものである。このため、現像装置22、感光体ドラム24、クリーナユニット26および帯電器28のそれぞれは、各色に応じた4種類の潜像を形成するように4個ずつ設けられ、これらによって4つの画像ステーションが構成される。
【0026】
また、画像形成装置本体12の筐体内には、給紙トレイ36等からの用紙をレジストローラ40、転写ローラ32および定着ユニット34を経由させて排紙トレイ38に送るための第1用紙搬送路L1が形成される。また、用紙に対して両面印刷を行う際に、片面印刷が終了して定着ユニット34を通過した後の用紙を、転写ローラ32の用紙搬送方向の上流側において第1用紙搬送路L1に戻すための第2用紙搬送路L2が形成される。この第1用紙搬送路L1および第2用紙搬送路L2には、用紙に対して補助的に推進力を与えるための複数の搬送ローラが適宜設けられる。
【0027】
図1と共に
図2を参照して、画像読取装置14は、第1画像読取部50が設けられる第1筐体52と、第2画像読取部54および原稿送り装置56が設けられる第2筐体58とを備える。第2筐体58は、第1筐体52の上面にヒンジを介して開閉自在に取り付けられており、原稿押さえカバーとしても用いられる。また、第1筐体52の前面側には、ユーザによる印刷指示等の入力操作を受け付ける操作パネル88が設けられる。この操作パネル88には、タッチパネル付きディスプレイおよび操作ボタン等が適宜設けられる。
【0028】
第1筐体52は、透明材によって形成される原稿載置台52aを上面に有する。この第1筐体52内には、原稿の表面画像を読み取るための第1画像読取部50が設けられる。第1画像読取部50は、光源、複数のミラー、結像レンズおよびラインセンサ等を備える。光源および複数のミラー等は、走査ユニットを構成している。第1画像読取部50は、原稿表面を光源によって露光し、原稿表面から反射した反射光を複数のミラーによって結像レンズに導く。そして、結像レンズによって反射光をラインセンサの受光素子に結像させる。ラインセンサでは、受光素子に結像した反射光の輝度や色度が検出され、原稿表面の画像に基づく画像データが生成される。ラインセンサとしては、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOSイメージセンサ等を用いるとよい。また、光源、結像レンズおよびラインセンサ等を一体化したCIS(Contact Image Sensor)を用いてもよい。
【0029】
このような第1画像読取部50は、原稿載置台52a上に載置された原稿の画像を読み取る固定読みと、原稿送り装置56によって搬送される原稿の画像を読み取る流し読みとに対応している。すなわち、固定読みの場合には、光源および複数のミラー等の走査ユニットが原稿載置台52aの下方で副走査方向に往復移動することによって、原稿の原稿載置台52a側の画像を読み取る。一方、流し読みの場合には、走査ユニットは、ホームポジションである第1画像読取位置P1の下方で待機される。そして、第1画像読取部50は、原稿送り装置56によって搬送される原稿が第1画像読取位置P1(画像読取位置の一例)を通過するときに、原稿の表面側(第1画像読取部50側)の画像を読み取る。
【0030】
一方、第2筐体58内には、原稿の裏面側の画像を読み取るための第2画像読取部54が設けられる。第2画像読取部54は、第1画像読取部50と同様に、光源、複数のミラー、結像レンズおよびラインセンサ等を備え、これらはユニット化された状態で第2筐体58内に配置される。この第2画像読取部54は、原稿送り装置56によって搬送される原稿の画像を読み取る流し読みに対応している。すなわち、第2画像読取部54は、ユーザから原稿の両面読み取りの要求があった場合、原稿送り装置56によって搬送される原稿が第2画像読取位置P2を通過するときに、原稿の裏面側(第2画像読取部54側)の画像を読み取る。
【0031】
また、第2筐体58の上部には、給紙口58aが形成されており、この給紙口58aから斜め右上方向に延びるように原稿載置トレイ60が設けられる。また、第2筐体58の下部には、排紙口58bが形成されており、この排紙口58bから斜め右上方向に延びるように原稿排紙トレイ62が設けられる。
【0032】
原稿送り装置56は、原稿載置トレイ60に積載された原稿を、第1画像読取位置P1および第2画像読取位置P2を経由させた後、原稿排紙トレイ62まで1枚ずつ連続搬送することが可能な装置である。
【0033】
以下、
図2を参照して、原稿送り装置56の構成について具体的に説明する。なお、特に説明を付さない場合、本開示において「上流」または「下流」とは、原稿搬送方向における「上流」または「下流」を言うものとする。
【0034】
図2に示すように、原稿送り装置56は、上述の原稿載置トレイ60および原稿排紙トレイ62に加えて、給紙口58aから排紙口58bまで第2画像読取部54の外周面に沿ってU字状に延びる原稿搬送路L3を備える。また、原稿送り装置56は、原稿載置トレイ60に積載された原稿を一枚ずつ原稿搬送路L3内に送り込むピックアップローラ64、および原稿搬送路L3に送り込まれた原稿を搬送する複数の搬送ローラ66を備える。
【0035】
この第1実施例では、複数の搬送ローラ66として7つの搬送ローラ(上流側から順に66a,66b,66c,66d,66e,66f,66g)が設けられる。これら複数の搬送ローラ66には、原稿搬送路L3の上流側端部に設けられた給紙ローラ66a、給紙ローラ66aの下流側に設けられた第1レジストローラ66b、第1レジストローラ66bの下流側に設けられた第2レジストローラ66c、および原稿搬送路L3の下流側端部に設けられた排紙ローラ66g等が含まれる。これら複数の搬送ローラ66は、単一の駆動源(モータ)によって駆動される。
【0036】
また、給紙ローラ66aの下側には、給紙ローラ66aと対をなす分離ローラ76(リタードローラ)が設けられる。仮にピックアップローラ64によって複数の原稿が重なって送り出されてきた場合には、分離ローラ76によって下側の原稿が捌かれることで重送が防止される。
【0037】
さらに、原稿搬送路L3には、給紙ローラ66aの下流側であって第1レジストローラ66b(レジストローラの一例)の上流側に、重送検出センサ68が設けられる。この重送検出センサ68は、原稿搬送路L3を搬送される原稿が2枚以上重なっているかどうか(つまり重送かどうか)を検出するためのセンサである。重送検出センサ68は、たとえば超音波センサであって、原稿搬送路L3を挟んで対向するように配置された送波器と受波器とによって構成される。制御部16は、重送検出センサ68からの出力(超音波の減衰量)に応じて、重送かどうかを判断する。
【0038】
また、原稿搬送路L3には、給紙ローラ66aの下流側に、原稿搬送路L3を搬送される原稿の位置ないし有無を検出するための複数の原稿位置検出センサ70が設けられる。この第1実施例では、原稿位置検出センサ70として、反射型の光学センサが用いられる。制御部16は、原稿位置検出センサ70からの出力(原稿からの反射光が検出されたか否か)に応じて、原稿の有無を判断する。また、制御部16は、原稿の無い状態(オフ状態)から有る状態(オン状態)に切り替わったときに、原稿の先端が当該センサの検出位置に到達したと判断し、オン状態からオフ状態に切り替わったときに、原稿の後端が当該センサの検出位置に到達したと判断する。ただし、原稿位置検出センサ70としては、透過型の光学センサおよび接触式センサなどの他のセンサを用いることもできる。
【0039】
さらに、原稿載置トレイ60には、原稿載置トレイ60に載置された原稿の有無を検出するための原稿有無検出センサ72、および原稿載置トレイ60に載置された原稿のサイズを検出するための原稿サイズ検出センサ74a,74bが設けられる。たとえば、原稿有無検出センサ72は、原稿載置トレイ60の上流側端部に設けられる。また、たとえば、一方の原稿サイズ検出センサ74aは、A4サイズの原稿の下流側端部に対応する位置に配置され、他方の原稿サイズ検出センサ74bは、A3サイズの原稿の下流側端部に対応する位置に配置される。この第1実施例では、原稿有無検出センサ72および原稿サイズ検出センサ74a,74bとして、反射型の光学センサが用いられる。ただし、原稿有無検出センサ72および原稿サイズ検出センサ74a,74bとしては、接触式センサなどの他のセンサを用いることもできる。
【0040】
このような原稿送り装置56では、読取解像度および原稿サイズ等に応じて、ピックアップローラ64、第1レジストローラ66bおよび第2レジストローラ66c等による給紙タイミング、ならびに各搬送ローラ66の原稿搬送速度(周速度)などの原稿搬送条件が決定される。そして、制御部16からの制御信号に基づいて、各ローラ64,66を駆動するためのローラ駆動部90(
図4参照)が駆動制御される。
【0041】
ここで、上述のように、原稿載置トレイ60に積載された原稿は、ピックアップローラ64および分離ローラ76の働きによって一枚ずつ原稿搬送路L3内に送り込まれるが、完全とは言えず、原稿の重送が生じ得る。
【0042】
この第1実施例では、重送検出センサ68によって重送が検出された場合には、直ちに搬送ローラ66による原稿の搬送を停止し、重送のため搬送を停止された複数枚の原稿を原稿載置トレイ60に戻して再スタートする旨のメッセージを操作パネル88のディスプレイに表示するようにしている。これにより、複数枚の原稿を原稿搬送路L3内にそのまま送り出してしまうことが防止される。ただし、重送した原稿の搬送(画像読取)を再スタートしてやり直した場合でも、再度同じように重送してしまう可能性がある。
【0043】
そこで、この第1実施例ではさらに、重送による搬送停止後に原稿載置トレイ60に戻された原稿の搬送を再開するときには、1枚目の原稿の搬送開始時の搬送速度(つまり給紙速度)を基準速度(通常時の搬送速度)である第1速度よりも遅い第2速度とし、2枚目以降の原稿の搬送開始時の搬送速度を第1速度とする第1モードを実行するようにした。1枚目の原稿の給紙速度を通常時の給紙速度よりも遅くすることで、搬送再開時(再スタート時)の1枚目の原稿と2枚目の原稿とを適切に分離する(捌く)ことができるので、重送を防止できる。また、2枚目以降の原稿の給紙速度を通常時の給紙速度に戻すことで、1ジョブ(複数枚の原稿の連続搬送および連続読取)に要するトータル時間の短縮化を図ることができる。
【0044】
また、この第1モードにおいては、1枚目の原稿の画像読取時の搬送速度(つまり読取速度)は、基準速度である第1速度に切り替える(戻す)ことが好ましい。これにより、1ジョブに要するトータル時間をより短縮化することができる。第1モードにおいて1枚目の原稿の搬送速度を第2速度から第1速度に戻すタイミングは、複数の原稿位置検出センサ70のうち最も上流側に設けられる原稿位置検出センサ(第1原稿位置検出センサ70a)の検出結果に基づいて決定するとよい。具体的には、1枚目の原稿の先端が第1レジストローラ66b(給紙ローラ66aの下流側であってかつ第1画像読取位置P1の上流側に設けられたレジストローラの一例)を通過後の所定位置に到達したときに、1枚目の原稿の搬送速度を第2速度から第1速度に戻すとよい。1枚目の原稿の先端が第1レジストローラ66bを通過したかどうか(所定位置に到達したかどうか)は、第1原稿位置検出センサ70aが原稿の先端を検出してから所定時間が経過したかどうかで判断される。1枚目の原稿の先端が第1レジストローラ66bを通過した後に原稿の搬送速度を第2速度から第1速度に戻すことで、第1レジストローラ66bのレジスト量を安定させることができる。
【0045】
また、上述のような第1モードで原稿を搬送したとしても、原稿の紙質によっては再度重送が発生する可能性が残る。そこで、この第1実施例ではさらに、重送が複数回発生した場合には、原稿の紙質が重送し易い紙質であると判断して、原稿載置トレイ60に積載された全ての原稿の搬送開始時の搬送速度(給紙速度)を第1速度(基準速度)よりも遅い第2速度に設定する第2モードを実行するようにしている。すなわち、1つのジョブ中で最初の重送の場合に第1モードを実行し、1つのジョブ中で2回目以降の重送の場合に第2モードを実行する。これにより、より確実に重送の発生を防止できる。
【0046】
なお、この第1実施例では、複数の搬送ローラ66が単一の駆動源によって駆動されているため、第2モードにおける各原稿の画像読取時の搬送速度(読取速度)は、基準速度である第1速度よりも遅い第2速度となる。すなわち、第1モードにおける原稿の画像読取時の搬送速度は、第2モードにおける原稿の画像読取時の搬送速度よりも速い速度に設定される。
【0047】
上述の第1モードおよび第2モードにおける原稿の搬送速度は、
図3に示すような搬送速度テーブルによって管理される。
図3に示すように、搬送速度テーブルでは、第1モードおよび第2モードのそれぞれについて、1枚目の原稿の給紙速度および読取速度、ならびに残り(2枚目以降)の原稿の給紙速度および読取速度が予め記憶される。ただし、
図3の搬送速度テーブルにおいて、「通常」と記載されている速度は、基準速度である第1速度を示し、「遅い」と記載されている速度は、第2速度を示す。ここで、第2速度は、第1速度の3分の1以上3分の2以下の大きさに設定することが好ましく、この第1実施例では第1速度の2分の1の大きさに設定されている。
【0048】
なお、原稿の搬送速度は、原稿の搬送位置に応じて調整され、基準速度である第1速度は、たとえば、搬送開始時(給紙時)で744[mm/s]であり、画像読取時で708[mm/s]である。一方、重送を防止するための搬送速度である第2速度は、たとえば、搬送開始時(給紙時)で372[mm/s]であり、画像読取時で354[mm/s]である。すなわち、第1速度および第2速度は、原稿の搬送位置に応じて変動するものであり、この開示で言う第1速度に切り替える(設定する)というのは、原稿の搬送位置に応じた基準速度(通常時の搬送速度)にすることを意味する。
【0049】
このように原稿の搬送動作を制御することで、複数枚の原稿が原稿搬送路L3内にそのまま送り出されてしまうことを防止できると共に、搬送再開時の1枚目の原稿と2枚目の原稿とを適切に分離することができるので、原稿の重送を適切に防止できる。
【0050】
図4は、画像形成装置10の電気的な構成の一例を示すブロック図である。ただし、本願開示に直接的に関係の無い一部のコンポーネントについては省略してある。
【0051】
図4に示すように、画像形成装置10は、CPU80、RAM82およびHDD84等を含む制御部16を備える。CPU80には、バス86を介して、上述した画像形成部18、第1画像読取部50、第2画像読取部54および操作パネル88等が接続される。また、CPU80には、バス86を介して、原稿送り装置56のローラ駆動部90、重送検出センサ68および光学センサ(原稿位置検出センサ70、原稿有無検出センサ72、および原稿サイズ検出センサ74a,74b)等が接続される。
【0052】
CPU80は、HDD84に記憶されたプログラムに従って、画像形成装置10の全体的な制御を司る。また、CPU80は、この第1実施例の原稿搬送処理を実行する。RAM82は、CPU80のワーキング領域およびバッファ領域として用いられる。HDD84は、CPU80が画像形成装置10の各部位の動作を制御するための制御プログラムおよび必要なデータ等を適宜記憶する。ただし、HDDに代えて、またはHDDとともに、SSD、フラッシュメモリ、EEPROMなどの他の不揮発性メモリが用いられてもよい。なお、画像形成部18、第1画像読取部50および第2画像読取部54は、上記の通りであるため、重複した説明は省略する。
【0053】
操作パネル88は、タッチパネル付きのディスプレイおよび操作ボタン等を含む。ディスプレイは、LCDなどの汎用のモニタであり、図示しない表示制御回路を介してCPU80に接続される。表示制御回路は、GPUおよびVRAMなどを含む。CPU80の指示の下、GPUは、RAM82に記憶された画像生成データを用いて、ディスプレイに種々の画面を表示するための表示画像データをVRAMに生成し、生成した表示画像データをディスプレイに出力する。タッチパネルは、タッチ有効範囲内でのタッチ操作を検出して、そのタッチ操作の位置を示すタッチ座標データをCPU80に出力する。操作ボタンは、ハードウェアキーであり、ホームボタン、節電キーおよび電源ボタンなどの各種のキーないしボタンを含む。
【0054】
ローラ駆動部90は、ピックアップローラ64を駆動するためのモータ、および複数の搬送ローラ66を駆動するためのモータを含む。モータとしては、汎用の回転モータが用いられる。ローラ駆動部90は、CPU80の指示に従い、ピックアップローラ64および各搬送ローラ66に対して回転駆動力を付与する。重送検出センサ68は、上述のように超音波センサであって、超音波の減衰量に基づく信号をCPU80に出力する。CPU80は、重送検出センサ68の出力に応じて、重送が発生しているかどうかを判断する。原稿位置検出センサ70等の光学センサは、上述のように原稿の有無に応じた信号をCPU80に出力し、CPU80は、光学センサの出力に応じて各検出位置に原稿が存在するかどうかを判断する。
【0055】
上述のような原稿送り装置56および画像読取装置14を備える画像形成装置10の動作は、CPU80がRAM82に読み出された制御プログラムを実行することによって実現される。
【0056】
図5は、RAM82のメモリマップ200の一例を示す図解図である。
図5に示すように、RAM82は、プログラム記憶領域202およびデータ記憶領域204を含む。RAM82のプログラム記憶領域202には、画像形成装置10の制御プログラムが記憶される。ただし、画像形成装置10は、原稿送り装置56および画像読取装置14を含むため、プログラム記憶領域202に記憶される制御プログラムは、原稿送り装置56および画像読取装置14の制御プログラムを含む。たとえば、このプログラム記憶領域202には、原稿検出プログラム202a、重送検出プログラム202b、モード判定プログラム202c、原稿搬送プログラム202d、画像読取プログラム202e、および画像形成プログラム202fが記憶される。
【0057】
原稿検出プログラム202aは、原稿位置検出センサ70等の光学センサの出力を取得して、各検出位置に原稿が存在するかどうかを検出するためのプログラムである。この原稿検出プログラム202aには、原稿有無検出センサ72からの出力に基づいて原稿載置トレイ60上の原稿の有無を検出するプログラム、原稿サイズ検出センサ74a,74bからの出力に基づいて原稿のサイズを検出するプログラム、および原稿位置検出センサ70からの出力に基づいて原稿の位置を検出するプログラム等を含む。
【0058】
重送検出プログラム202bは、重送検出センサ68の出力を取得して、重送が発生しているかどうかを判断するためのプログラムである。モード判定プログラム202cは、重送発生後に原稿載置トレイ60に戻された原稿の搬送を再開するときに、1ジョブ中の重送の発生回数に応じて、第1モードおよび第2モードのいずれを実行するかを判断するためのプログラムである。
【0059】
原稿搬送プログラム202dは、原稿送り装置56のローラ駆動部90を制御して、原稿載置トレイ60に積載された原稿を画像読取位置P1,P2を経由させて原稿排紙トレイ62まで1枚ずつ自動的に連続搬送するためのプログラムである。この原稿搬送プログラム202dには、第1モードで原稿を搬送するための第1モードプログラムと、第2モードで原稿を搬送するための第2モードプログラムとを含む。また、この原稿搬送プログラム202dには、重送発生時に原稿の搬送を停止する搬送停止プログラムを含む。
【0060】
画像読取プログラム202eは、第1画像読取部50および第2画像読取部54を制御して、原稿の画像を読み取り、読み取った画像に対応する画像信号(読取画像データ)を出力するためのプログラムである。画像形成プログラム202fは、コピーまたはプリントが実行される際に、画像形成部18を制御して、印刷画像に応じて多色または単色の印刷画像を用紙に印刷するためのプログラムである。
【0061】
なお、図示は省略するが、プログラム記憶領域202には、画像形成装置10の各種の機能を選択および実行するための他のプログラムなども記憶される。
【0062】
また、RAM82のデータ記憶領域204には、原稿フラグ204a、原稿搬送データ204b、重送データ204cおよび印刷データ204d等が記憶される。
【0063】
原稿フラグ204aは、原稿位置検出センサ70等の光学センサの各検出位置に原稿が存在するかどうかを判断するためのフラグである。原稿フラグ204aは、各検出位置に対応付けて設けられ、対応する検出位置に原稿が存在するときにオンにされ(1が設定される)、各検出位置に原稿が存在しないときにオフにされる(0が設定される)。
【0064】
原稿搬送データ204bは、読取解像度および原稿サイズ等に応じて予め設定された、ピックアップローラ64、第1レジストローラ66bおよび第2レジストローラ66cによる給紙タイミング、ならびに各搬送ローラ66の周速度などのデータであり、上述の搬送速度テーブルのテーブルデータを含む。
【0065】
重送データ204cは、1ジョブ中の重送の発生回数についてのデータである。この重送データ204cは、1ジョブが終了するとリセットされる。印刷データ204dは、第1画像読取部50および第2画像読取部54で読み取った画像データ、ならびに外部装置から受信した画像データである。
【0066】
なお、図示は省略するが、データ記憶領域204には、制御プログラムの実行に必要なタイマ(カウンタ)およびレジスタが設けられたり、他のデータが記憶されたりする。
【0067】
図6は、CPU80が実行する原稿搬送処理の一例を示すフロー図である。この原稿搬送処理は、ユーザによって原稿載置トレイ60に原稿が載置され、コピーまたはスキャンの開始ボタンが操作されたときに開始される。なお、ジョブの開始時には、原稿は基準速度(第1速度)で連続搬送される。
【0068】
図6に示すように、CPU80は、原稿搬送処理を開始すると、ステップS1で、重送が検出されたどうかを判断する。すなわち、重送検出センサ68からの出力に基づいて、重送が発生しているかどうかを判断する。ステップS1で“NO”であれば、つまり重送が発生していない場合には、基準速度での原稿の連続搬送を実行しつつ、ステップS19に進む。一方、ステップS1で“YES”であれば、つまり重送が発生した場合には、ステップS3に進む。
【0069】
ステップS3では、原稿の搬送を停止すると共に案内表示を行う。すなわち、ローラ駆動部90に制御信号を送信して、各搬送ローラ66の回転を停止すると共に、操作パネル88に制御信号を送信して、「重送が発生しましたので、原稿を原稿載置トレイに戻して、もう一度開始ボタンを押して下さい」等のメッセージをディスプレイに表示させる。
【0070】
続くステップS5では、原稿搬送を再スタートするかどうかを判断する。たとえば、原稿位置検出センサ70からの出力に基づいて原稿搬送路L3から原稿が取り除かれたことが検出され、かつ、開始ボタンが押下されたことが検出されると、原稿搬送が再スタート可能であると判断する。ステップS5で“NO”であれば、原稿搬送の再スタートが可能になるまで待つ。一方、ステップS5で“YES”であれば、すなわち原稿搬送の再スタートが可能であると判断した場合には、ステップS7に進む。
【0071】
ステップS7では、1ジョブ中で最初の重送かどうかを判断する。すなわち、RAM82のデータ記憶領域204に記憶された重送データ204cを参照して、今回の重送が1ジョブ中で一回目か2回目以降かを判断する。ステップS7で“NO”であれば、すなわち今回の重送が2回目以降の重送の場合には、ステップS9に進む。ステップS9では、第2モードに設定し、原稿載置トレイ60に載置された原稿を第2速度で連続搬送しつつ、ステップS19に進む。一方、ステップS7で“YES”であれば、すなわち今回の重送が最初の重送の場合には、ステップS11に進む。
【0072】
ステップS11では、第1モードに設定し、原稿の搬送速度を第2速度に設定して1枚目の原稿の搬送を開始する。すなわち、1枚目の原稿の搬送開始時の搬送速度(給紙速度)を第2速度に設定する。続くステップS13では、重送が検出されたどうかを判断する。ステップS13で“YES”であれば、つまり重送が発生した場合には、ステップS3に戻る。一方、ステップS13で“NO”であれば、つまり1枚目の原稿が重送を発生させることなく給紙された場合には、ステップS15に進む。
【0073】
ステップS15では、原稿の先端が第1レジストローラ66bを通過したかどうかを判断する。たとえば、第1原稿位置検出センサ70aが原稿の先端を検出してから所定時間が経過したかどうかで、原稿の先端が第1レジストローラ66bを通過したかどうかを判断する。ステップS15で“NO”であれば、原稿の先端が第1レジストローラ66bを通過するまで待つ。一方、ステップS15で“YES”であれば、つまり原稿の先端が第1レジストローラ66bを通過後の所定位置に到達した場合は、ステップS17に進む。
【0074】
ステップS17では、原稿の搬送速度を第2速度から第1速度に変更する。すなわち、1枚目の原稿の画像読取時の搬送速度(読取速度)を第1速度に設定し、2枚目以降の原稿の搬送速度(給紙速度および読取速度)についても第1速度に設定する。
【0075】
続くステップS19では、1ジョブが終了したかどうかを判断する。たとえば、原稿載置トレイ60から原稿が無くなり、かつ、最後の原稿が原稿排紙トレイ62に排出されたことを検出したときに、1ジョブが終了したと判断する。ステップS19で“NO”であれば、つまり1ジョブが終了していない場合には、ステップS1に戻る。一方、ステップS15で“YES”であれば、つまり1ジョブが終了した場合には、この原稿搬送処理を終了する。
【0076】
以上のように、この第1実施例によれば、重送検出センサ68によって重送が検出された場合には、搬送ローラ66による原稿の搬送を停止するので、複数枚の原稿を原稿搬送路L3内にそのまま送り出してしまうことを防止できる。また、重送による搬送停止後に原稿載置トレイ60に戻された原稿の搬送を再開するときには、1枚目の原稿の搬送開始時の搬送速度を基準速度である第1速度よりも遅い第2速度とし、2枚目以降の原稿の搬送開始時の搬送速度を第1速度とする第1モードを実行するので、1ジョブに要するトータル時間を抑制しつつ、搬送再開時の1枚目の原稿と2枚目の原稿とを適切に分離することができる。したがって、原稿の重送を適切に防止できる。
【0077】
また、この第1実施例によれば、1ジョブ中に複数回の重送が生じた場合には、原稿載置トレイ60に積載された全ての原稿の搬送開始時の搬送速度を第2速度に設定する第2モードを実行するので、より確実に重送の発生を防止できる。
【0078】
[第2実施例]
次に、
図7を参照して、この開示の第2実施例である原稿送り装置56について説明する。この第2実施例では、第2モードにおける原稿の画像読取時の搬送速度(読取速度)の設定が上述の第1実施例と異なる。その他の部分については同様であるので、上述の第1実施例と重複する説明は、省略または簡略化する。
【0079】
この第2実施例では、図示は省略するが、複数の搬送ローラ66は、複数の駆動源(モータ)によって駆動される。たとえば、原稿搬送路L3の上流側に配置された給紙ローラ66aおよび第1レジストローラ66bが1つのモータによって駆動され、残りの搬送ローラ66c,66d,66e,66f,66gが他の1つのモータによって駆動される。
【0080】
そして、この第2実施例では、
図7の搬送速度テーブルに示すように、第2モードにおいて、全ての原稿の画像読取時の搬送速度(つまり読取速度)は、基準速度である第1速度に設定される。すなわち、第2モードにおける原稿の画像読取時の搬送速度は、第1モードにおける原稿の画像読取時の搬送速度と同じ速度(第1速度)に設定される。これにより、1ジョブに要するトータル時間をより短縮化することができる。この第2モードにおいて各原稿の搬送速度を第2速度から第1速度に切り替えるタイミングは、第1モードの1枚目の原稿と同様に、第1原稿位置検出センサ70aの検出結果に基づいて、各原稿の先端が第1レジストローラ66bを通過後の所定位置に到達したときに設定するとよい。
【0081】
この第2実施例によれば、第1実施例と同様に、複数枚の原稿が原稿搬送路L3内にそのまま送り出されてしまうことを防止できると共に、搬送再開時の1枚目の原稿と2枚目の原稿とを適切に分離することができる。したがって、原稿の重送を適切に防止できる。
【0082】
また、この第2実施例によれば、第2モードを実行するときの1ジョブに要するトータル時間をより短縮化することができる。
【0083】
なお、上述の各実施例では、重送の発生回数に応じて第1モードまたは第2モードのいずれかを自動的に選択するようにしたが、ユーザが選択できるようにしてもよい。この場合には、たとえば、原稿を戻して開始ボタンを押すよう案内表示する際に、第1モードまたは第2モードのいずれかをユーザに選択させるとよい。また、第2実施例のような2モータ式の場合には、第1実施例に示した第2モード(第1第2モード)と第2実施例に示した第2モード(第2第2モード)とについても、ユーザが選択できるようにしてもよい。
【0084】
また、本明細書中で挙げた、画像形成装置の具体的な構成は、いずれも単なる一例であり、実際の製品の仕様に応じて適宜変更可能である。たとえば、本開示に係る原稿送り装置が適用される画像形成装置は、必ずしも複合機である必要はない。また、画像形成装置は、記録媒体に対して単色の画像を形成するモノクロ機であってもよいし、その画像形成部は、レーザプリンタに代えて、インクジェットプリンタ等で構成されてもよい。
【0085】
さらに、本開示に係る原稿送り装置は、単体の画像読取装置(スキャナ)にも適用することができる。また、原稿送り装置が適用される画像読取装置は、必ずしも2つの画像読取部を備える必要はなく、少なくとも1つの画像読取部(第1画像読取部および第2画像読取部の一方)を備えていればよい。
【0086】
また、上で挙げた具体的な数値などは、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0087】
10 …画像形成装置
14 …画像読取装置
16 …制御部
18 …画像形成部
50 …第1画像読取部
54 …第2画像読取部
56 …原稿送り装置
60 …原稿載置トレイ
62 …原稿排紙トレイ
66 …搬送ローラ
68 …重送検出センサ
70 …原稿位置検出センサ
80 …CPU