(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172184
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】医療用具
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
A61M25/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083817
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(71)【出願人】
【識別番号】394003265
【氏名又は名称】株式会社カネカメディックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 裕一郎
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267AA34
4C267BB03
4C267BB32
4C267CC29
4C267FF01
4C267HH10
(57)【要約】
【課題】滅菌処理に伴う医療用シースの変形を低減することができる医療用具を提供する。
【解決手段】第1の切込みを有するシートと、医療用シースとを有し、前記第1の切込みの切込み縁の少なくとも一部は、医療用シースの内腔に配置されている医療用具。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の切込みを有するシートと、医療用シースとを有し、
前記第1の切込みの切込み縁の少なくとも一部は、医療用シースの内腔に配置されている医療用具。
【請求項2】
前記第1の切込みは第1方向に延在する部分A1を有し、
前記シートは第2の切込みを有しており、第2の切込みは、第2方向に延在し幅方向において前記部分A1と対向する部分B1を有している請求項1に記載の医療用具。
【請求項3】
前記部分A1と前記部分B1は、それぞれ直線状である請求項2に記載の医療用具。
【請求項4】
前記第1方向と前記第2方向は平行である請求項2または3に記載の医療用具。
【請求項5】
前記第1の切込みは、前記第1方向における前記部分A1の一端部に隣接する部分A2を有し、
前記第2の切込みは、前記第2方向における前記部分B1の一端部に隣接する部分B2を有し、前記部分B1の一端部は、前記第1方向における前記部分A1の他端部よりも前記部分A1の一端部に近く、
前記部分A2と前記部分B2は、前記部分A1の一端部と前記部分B1の一端部から互いに離れる方向に向かって延在している請求項2または3に記載の医療用具。
【請求項6】
前記第1の切込みは、前記第1方向における前記部分A1の他端部に隣接する部分A3を有し、
前記第2の切込みは、前記第2方向における前記部分B1の他端部に隣接する部分B3を有し、
前記部分A3と前記部分B3は、前記部分A1の他端部と前記部分B1の他端部から互いに離れる方向に向かって延在している請求項5に記載の医療用具。
【請求項7】
前記部分A1は前記部分A2よりも長く、且つ前記部分A3よりも長く、
前記部分B1は前記部分B2よりも長く、且つ前記部分B3よりも長い請求項6に記載の医療用具。
【請求項8】
前記シートの前記医療用シースの内腔に配置された部分において、前記医療用シースの軸方向と垂直な方向における前記部分A1から前記部分B1に至るまでの距離は、前記医療用シースの内腔の径よりも短い請求項2または3に記載の医療用具。
【請求項9】
前記医療用シースは、軸方向に延在する切込みを有する請求項1または2に記載の医療用具。
【請求項10】
前記シートは、前記部分A1中における前記部分A1の両端を除く1点と、前記部分B1中における前記部分B1の両端を除く1点とを通る第3の切込みを有している請求項2または3に記載の医療用具。
【請求項11】
前記第3の切込みは、前記第1方向における前記部分A1の一端部と他端部のうち一端部に近い側であって、且つ前記第2方向における前記部分B1の一端部と他端部のうち一端部に近い側に位置する請求項10に記載の医療用具。
【請求項12】
前記第3の切込みの幅は、前記第1の切込みの幅よりも大きい請求項10に記載の医療用具。
【請求項13】
前記部分A1は前記部分A2よりも短く、且つ前記部分A3よりも短く、
前記部分B1は前記部分B2よりも短く、且つ前記部分B3よりも短い請求項6に記載の医療用具。
【請求項14】
前記シートの前記医療用シースの内腔に配置された部分において、
前記医療用シースの軸方向と垂直な方向における前記部分A2から前記部分A3に至るまでの距離は、前記医療用シースの内腔の径よりも短く、且つ
前記医療用シースの軸方向と垂直な方向における前記部分B2から前記部分B3に至るまでの距離は、前記医療用シースの内腔の径よりも短い請求項13に記載の医療用具。
【請求項15】
更に、医療用管状体と、前記医療用管状体の少なくとも一部が内部に配置された保護管とを有し、
前記シートは、一対の切込みを有し、前記一対の切込みの切込み縁は、それぞれ巻回された前記保護管を挟持しており、
前記第1の切込みと前記第2の切込みは、前記一対の切込みのうちの一方の切込みから他方の切込みに至るまでの領域の外側に位置する請求項2または3のいずれかに記載の医療用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滅菌処理に伴う医療用シースの変形を低減する医療用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カテーテルのような可撓性を有する長尺状の医療用器具は、未使用状態においては、台紙に固定して、袋に包装されることが多かった。例えば、特許文献1には、可撓性を有する線状部を備える医療用具を保持した状態で袋状の包装体に収納される、長尺なシート材で構成された医療用具保持台紙であって、医療用具を保持する保持部を備え、保持部は、シート材の長手方向に沿って該シート材をV字状に折り曲げられて形成され、医療用具の線状部を収納するV字状溝と、該V字状溝の基端部にその谷部を逆方向に山状に折り返してW字状に形成されたW字状溝とを有する医療用具保持台紙が開示されている。また特許文献2には、紙又は軟質の合成樹脂製薄平板もしくは皿状体を裁断して、単数又は複数の抑止片を形成し、該抑止片のほぼ中央部に一方端部がアーチ状である切り込みを設け、該切り込みのアーチ状端部から抑止片の端部までを切断して緩圧部を形成し、抑止片の基端部から折り曲げ部で折り曲げたことを特徴とする医療用具包装部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-201826号公報
【特許文献2】特開2002-193322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、長尺状の医療用器具は特許文献1、2のように台紙に固定され、袋に包装された状態で滅菌処理が行われることが多かった。滅菌処理として高圧蒸気や加熱滅菌ガス等を用いて加熱環境下において滅菌する方法が採用されていたが、例えば医療用シースの場合、医療用シースを台紙の保持部で押さえ付けた状態で加熱すると医療用シースが変形する場合があった。本発明は上記の様な問題に着目してなされたものであって、その目的は、滅菌処理に伴う医療用シースの変形を低減することができる医療用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することのできた本発明の実施の形態に係る医療用具は、以下の通りである。
[1]第1の切込みを有するシートと、医療用シースとを有し、
前記第1の切込みの切込み縁の少なくとも一部は、医療用シースの内腔に配置されている医療用具。
【0006】
上記の通り、シートの第1の切込みの切込み縁の少なくとも一部が医療用シースの内腔に配置されていることにより、医療用シースの内腔側がシートの一部により支持される状態になるため医療用シースは変形し難くなる。
【0007】
実施の形態に係る医療用具は、以下の[2]~[15]のいずれかであることが好ましい。
[2]前記第1の切込みは第1方向に延在する部分A1を有し、
前記シートは第2の切込みを有しており、第2の切込みは、第2方向に延在し幅方向において前記部分A1と対向する部分B1を有している[1]に記載の医療用具。
[3]前記部分A1と前記部分B1は、それぞれ直線状である[2]に記載の医療用具。
[4]前記第1方向と前記第2方向は平行である[2]または[3]に記載の医療用具。
[5]前記第1の切込みは、前記第1方向における前記部分A1の一端部に隣接する部分A2を有し、
前記第2の切込みは、前記第2方向における前記部分B1の一端部に隣接する部分B2を有し、前記部分B1の一端部は、前記第1方向における前記部分A1の他端部よりも前記部分A1の一端部に近く、
前記部分A2と前記部分B2は、前記部分A1の一端部と前記部分B1の一端部から互いに離れる方向に向かって延在している[2]~[4]のいずれかに記載の医療用具。
[6]前記第1の切込みは、前記第1方向における前記部分A1の他端部に隣接する部分A3を有し、
前記第2の切込みは、前記第2方向における前記部分B1の他端部に隣接する部分B3を有し、
前記部分A3と前記部分B3は、前記部分A1の他端部と前記部分B1の他端部から互いに離れる方向に向かって延在している[5]に記載の医療用具。
[7]前記部分A1は前記部分A2よりも長く、且つ前記部分A3よりも長く、
前記部分B1は前記部分B2よりも長く、且つ前記部分B3よりも長い[6]に記載の医療用具。
[8]前記シートの前記医療用シースの内腔に配置された部分において、前記医療用シースの軸方向と垂直な方向における前記部分A1から前記部分B1に至るまでの距離は、前記医療用シースの内腔の径よりも短い[2]~[7]のいずれかに記載の医療用具。
[9]前記医療用シースは、軸方向に延在する切込みを有する[1]~[8]のいずれかに記載の医療用具。
[10]前記シートは、前記部分A1中における前記部分A1の両端を除く1点と、前記部分B1中における前記部分B1の両端を除く1点とを通る第3の切込みを有している[2]~[9]のいずれかに記載の医療用具。
[11]前記第3の切込みは、前記第1方向における前記部分A1の一端部と他端部のうち一端部に近い側であって、且つ前記第2方向における前記部分B1の一端部と他端部のうち一端部に近い側に位置する[10]に記載の医療用具。
[12]前記第3の切込みの幅は、前記第1の切込みの幅よりも大きい[10]または[11]に記載の医療用具。
[13]前記部分A1は前記部分A2よりも短く、且つ前記部分A3よりも短く、
前記部分B1は前記部分B2よりも短く、且つ前記部分B3よりも短い[6]に記載の医療用具。
[14]前記シートの前記医療用シースの内腔に配置された部分において、
前記医療用シースの軸方向と垂直な方向における前記部分A2から前記部分A3に至るまでの距離は、前記医療用シースの内腔の径よりも短く、且つ
前記医療用シースの軸方向と垂直な方向における前記部分B2から前記部分B3に至るまでの距離は、前記医療用シースの内腔の径よりも短い[13]に記載の医療用具。
[15]更に、医療用管状体と、前記医療用管状体の少なくとも一部が内部に配置された保護管とを有し、
前記シートは、一対の切込みを有し、前記一対の切込みの切込み縁は、それぞれ巻回された前記保護管を挟持しており、
前記第1の切込みと前記第2の切込みは、前記一対の切込みのうちの一方の切込みから他方の切込みに至るまでの領域の外側に位置する[2]~[14]のいずれかに記載の医療用具。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、滅菌処理に伴う医療用シースの変形を低減することができる医療用具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態に係る医療用具の平面図である。
【
図3】
図3は、医療用シースの一例の平面図である。
【
図4】
図4は、第2の実施の形態に係る医療用具の平面図である。
【
図6】
図6は、
図4の医療用シースを配置する前のシートの平面図である。
【
図7】
図7は、第3の実施の形態に係る医療用具の平面図である。
【
図9】
図9は、
図7の医療用シースを配置する前のシートの平面図である。
【
図11】
図11は、第4の実施の形態に係る医療用具の平面図である。
【
図12】
図12は、第5の実施の形態に係る医療用具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0011】
本発明の実施の形態に係る医療用具は、第1の切込みを有するシートと、医療用シースとを有し、第1の切込みの切込み縁の少なくとも一部は、医療用シースの内腔に配置されている。
【0012】
上述の通り従来、医療用シースを台紙の保持部により押さえ付けた状態で高圧蒸気や加熱滅菌ガス等を用いた加熱滅菌を行うと医療用シースが変形する場合があった。これに対して実施の形態に係る医療用具によれば、シートの第1の切込みの切込み縁により医療用シースの内腔側を支持することができるため、医療用シースの変形を低減することができる。
【0013】
以下では、
図1、
図2、
図3を参照しながら、第1の実施の形態に係る医療器具について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る医療用具の平面図であり、
図2は、
図1のA-A断面を示す断面図である。
図3は、医療用シースの一例の平面図である。
【0014】
図1、
図2に示す通り、第1の実施の形態に係る医療用具101は、第1の切込み1Sを有するシート10と、医療用シース20とを有し、第1の切込み1Sの切込み縁1Eaの少なくとも一部は、医療用シース20の内腔20Lに配置されている。シート10の第1の切込み1Sの切込み縁1Eaと、その近傍の領域により医療用シース20の内腔20L側を支持することができる。その結果、加熱滅菌に伴う医療用シース20の変形を低減することができる。
【0015】
図1に示す通り、第1の切込み1Sは、第1方向1Xに延在する部分A1(SA1)を有していることが好ましい。部分A1(SA1)は、直線状であることが好ましい。これにより、シート10の第1の切込み1Sの切込み縁1Eaとその近傍の領域とが、直線状に延在する医療用シース20の内腔20L側を支持し易くなる。また第1の切込み1Sは、第1方向1Xに延在する部分A1(SA1)からなるものであってもよい。
【0016】
第1の切込み1Sの部分A1(SA1)は、弧状、波状等の非直線状の切込みであってもよい。非直線状の切込みの場合、部分A1(SA1)は、部分A1(SA1)の両端を結ぶ仮想線分から、仮想線分と垂直な方向に所定距離離れた位置までの領域内に位置することが好ましい。これは、例えば部分A1(SA1)が第1方向1Xに延在する波状である場合、波の振幅が所定距離以下であることに相当する。所定距離は、医療用シース20の内腔20Lの径の1/2以下であることが好ましく、1/4以下であることがより好ましく、1/10以下であることが更に好ましい。これにより、非直線状の部分A1(SA1)は直線状に近くなる。一方、当該所定距離は、医療用シース20の内腔20Lの径の1/100以上であってもよく、1/50以上であってもよく、1/20以上であってもよい。医療用シース20の内腔20Lの径とは、医療用シース20の軸方向20Xと垂直な方向における断面において、内腔20Lの中心を通り、且つ両端点が内腔20Lの外縁上にある仮想線分のうちの最長の仮想線分のことである。なお医療用シース20が切込み20Sを有する場合、上記内腔20Lの外縁に切込み20Sの外縁は含まれないものとする。
【0017】
図2に示す通り、第1の切込み1Sの一方側の切込み縁1Eaと他方側の切込み縁1Ebのうち、一方側の切込み縁1Eaが医療用シース20の内腔20Lに配置されており、他方側の切込み縁1Ebが医療用シース20外に配置されていることが好ましい。これにより、シート10が医療用シース20の内側と外側から医療用シース20を支持して医療用シース20を動き難くすることができる。
【0018】
第1の切込み1Sの一方側の切込み縁1Eaは医療用シース20の内側面に接触していることが好ましい。これにより医療用シース20が変形し難くなる。更に、第1の切込み1Sの他方側の切込み縁1Ebは医療用シース20の外側面に接触していることが好ましい。これにより医療用シース20を動き難くすることができる。
【0019】
図1に示す通り、第1の切込み1Sは、第1方向1Xに延在する部分A1(SA1)と、第1方向1Xにおける部分A1(SA1)の一端部SA1aに隣接する部分A2(SA2)と、他端部SA1bに隣接する部分A3(SA3)と、を有していることが好ましい。更に、部分A2(SA2)と部分A3(SA3)は、それぞれ、一端部SA1aと他端部SA1bから、一端部SA1aと他端部SA1bを結ぶ仮想線分と垂直な方向に向かうに従って、互いに離れるように延在していることが好ましい。このような部分A1(SA1)、部分A2(SA2)、及び部分A3(SA3)により先細り形状のフラップ10Fを形成することができるため、医療用シース20を着脱し易くすることができる。
【0020】
部分A2(SA2)と部分B2(SB2)は、それぞれ直線状であることが好ましい。部分A2(SA2)と部分B2(SB2)は、それぞれ非直線状の切込みであってもよい。非直線状の切込みの詳細については、部分A1(SA1)の非直線状の切込みの説明を参照すればよい。
【0021】
部分A2(SA2)の部分A1(SA1)に対する傾斜角度は、1度以上であることが好ましく、3度以上であることがより好ましく、5度以上であることが更に好ましい。一方、傾斜角度は90度以下であることが好ましく、45度以下であることがより好ましく、30度以下であることが更に好ましい。当該傾斜角度は、部分A2(SA2)の両端を結ぶ仮想線分の、部分A1(SA1)の両端を結ぶ仮想線分に対する傾斜角度である。
【0022】
部分A3(SA3)の部分A1(SA1)に対する傾斜角度は、1度以上であることが好ましく、3度以上であることがより好ましく、5度以上であることが更に好ましい。一方、傾斜角度は90度以下であることが好ましく、45度以下であることがより好ましく、30度以下であることが更に好ましい。当該傾斜角度は、部分A3(SA3)の両端を結ぶ仮想線分の、部分A1(SA1)の両端を結ぶ仮想線分に対する傾斜角度である。
【0023】
シート10は、樹脂層、紙層、またはこれらの積層体を含むことが好ましく、樹脂層からなることがより好ましい。上記積層体は、樹脂層と紙層とをそれぞれ1層以上含んでいてもよく、樹脂層を2層以上含んでいてもよく、紙層を2層以上含んでいてもよい。
【0024】
樹脂層としては、ポリオレフィン層、フッ素樹脂層、ポリエステル層、ポリウレタン層、ポリスチレン層、ポリカーボネート層、シリコーン層、ポリアミド層、ポリイミド層が好ましく、ポリオレフィン層、フッ素樹脂層がより好ましく、ポリオレフィン層が更により好ましい。これによりシート10の一部により医療用シース20を保持し易くなる。これらは1種のみ用いてもよく、2種類以上、併用して用いてもよい。ポリオレフィン層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはこれらの混合物を含むことが好ましく、ポリプロピレンを含むことがより好ましく、ポリプロピレンからなることが更に好ましい。フッ素樹脂層は、ポリテトラフルオロエチレンを含むことが好ましい。ポリエステル層は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはこれらの混合物を含むことが好ましい。ポリウレタン層はポリウレタンを含むことが好ましい。ポリスチレン層はポリスチレンを含むことが好ましい。ポリカーボネート層はポリカーボネートを含むことが好ましい。シリコーン樹脂層はシリコーン樹脂を含むことが好ましい。ポリアミド層はナイロンを含むことが好ましい。ポリイミド層はポリエーテルイミドを含むことが好ましい。
【0025】
紙層としては、上質紙、中質紙、クラフト紙、片艶クラフト紙、ラテックス含浸紙が好ましい。これらは1種のみ用いてもよく、2種類以上、併用して用いてもよい。
【0026】
シート10の厚さは、0.1mm以上、2.0mm以下であることが好ましく、0.15mm以上、1.0mm以下であることがより好ましく、0.2mm以上、0.8mm以下であることが更に好ましい。これにより、医療用シース20の内腔20L側を支持しつつ、加熱滅菌ガス等の滅菌ガスを内腔20Lに供給し易くすることができる。シート10の平面視における外縁により囲まれた領域の面積は、50cm2以上、1000cm2以下であることが好ましく、300cm2以上、600cm2以下であることがより好ましい。シート10の平面視における形状は、円形、楕円形、多角形、角丸多角形、またはこれらの組み合わせ形状が好ましく、多角形または角丸多角形であることがより好ましく、四角形または角丸四角形であることが更に好ましい。シート10の形状が多角形または角丸多角形である場合、シート10の図心と各頂点とを結ぶ仮想線分の長さは全て同じであってもよいが、他の仮想線分よりも短い仮想線分が少なくとも1つ存在していてもよい。
【0027】
図1に示す通り、医療用シース20は、軸方向20Xに延在するチューブであることが好ましい。医療用シース20は、例えばバルーンカテーテル、マイクロカテーテル、貫通用カテーテル等の処置用のカテーテルを、先に体内に挿入されたガイディングカテーテルへ挿入しやすくするために用いるものであることが好ましい。医療用シース20の軸方向20Xの長さは、4cm以上、40cm以下であることが好ましく、6cm以上、20cm以下であることがより好ましく、8cm以上、18cm以下であることが更に好ましい。医療用シース20の内径は、0.2mm以上、4.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以上、2.5mm以下であることがより好ましく、1.0mm以上、2.0mm以下であることが更に好ましい。医療用シース20の外径は、内径の1.01倍以上、2.00倍以下であることが好ましく、1.02倍以上、1.50倍以下であることがより好ましく、1.05倍以上、1.30倍以下であることが更に好ましい。
【0028】
医療用シース20は、軸方向20Xに延在する切込み20Sを有することが好ましい。治療部位によっては、バルーンカテーテル等の処置用のカテーテルを体内に挿入する際に、ガイディングカテーテルの近位端部にシースの遠位部を挿入し、当該シースを介してガイディングカテーテル内に処置用のカテーテルを挿入する場合がある。このような場合、当該挿入後にシースを処置用のカテーテルから外す必要があるが、医療用シース20が切込み20Sを有していることにより、切込み20Sを開けて医療用シース20を外すことができる。更に切込み20Sにより、医療用シース20をシート10に着脱し易くすることができる。また、例えば、親指と人差し指で医療用シース20をつまんで持ち上げることで、シート10から外すことができ、従来例のように保持台紙の保持部に医療用シースが引っかかることがなく、ユーザビリティの観点から好ましい。
【0029】
図3に示す通り、医療用シース20は、遠位端から近位端に向かって広がる開口20Oと外側面とを近位端部に有することが好ましい。当該構成はいわゆるフレア形状と呼ばれる形状であり、開口20Oからバルーンカテーテル等の処置用のカテーテルを容易に挿入することができる。
【0030】
医療用シース20は、樹脂を含むことが好ましく、樹脂からなることがより好ましい。樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン等の芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素樹脂等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく、2種類以上、併用して用いてもよい。医療用シース20の軸方向20Xと垂直な方向における医療用シース20の断面の外縁の形状としては、円形または楕円形が好ましく、円形がより好ましい。また医療用シース20の軸方向20Xと垂直な方向における医療用シース20の断面の内腔20Lの外縁の形状としては、円形または楕円形が好ましく、円形がより好ましい。
【0031】
図示していないが、医療用具101は、更に、シート10と医療用シース20とを内包する包装袋を有していてもよい。これにより、滅菌後における医療用シース20等の滅菌状態を維持し易くすることができる。滅菌処理としては、例えば高圧蒸気滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌等が挙げられる。
【0032】
以下では、
図4、
図5、
図6を参照しながら、第2の実施の形態に係る医療用具について説明する。
図4は、第2の実施の形態に係る医療用具の平面図である。
図5は、
図4のB-B断面を示す断面図である。
図6は、
図4の医療用シースを配置する前のシートの平面図である。なお、第2の実施の形態に係る医療用具について、第1の実施の形態に係る医療用具と重複する部分の詳細な説明は省略する。
【0033】
図4、
図5に示す通り、第2の実施の形態に係る医療用具102は、第1の切込み1Sを有するシート10と、医療用シース20とを有し、第1の切込み1Sの切込み縁1Eaの少なくとも一部は、医療用シース20の内腔20Lに配置されている。
【0034】
図4、
図6に示す通り、第1の切込み1Sは第1方向1Xに延在する部分A1(SA1)を有し、シート10は第2の切込み2Sを有しており、第2の切込み2Sは、第2方向2Xに延在し幅方向において部分A1(SA1)と対向する部分B1(SB1)を有していることが好ましい。これにより、部分A1(SA1)と部分B1(SB1)の間のシート10の橋部13が形成され、橋部13により医療用シース20の内腔20L側を支持することができる。また
図5に示す通り、シート10には橋部13の形状に沿った孔部14が形成されているため、上側から医療用シース20に圧力が加わっても医療用シース20の少なくとも一部は下部に移動することができるため、医療用シース20は変形し難くなる。これにより、医療用具102を複数積み重ねて滅菌処理し易くすることができる。
【0035】
図5に示す通り、第1の切込み1Sの切込み縁1Ea、1Ebと、第2の切込み2Sの切込み縁2Ea、2Ebのうち、橋部13側の切込み縁1Ea、2Eaが医療用シース20の内腔20Lに配置されており、橋部13に対向する側の切込み縁1Eb、2Ebが医療用シース20外に配置されていることが好ましい。これにより、シート10が医療用シース20の内側と外側から医療用シース20を支持して医療用シース20を動き難くすることができる。
【0036】
橋部13側の切込み縁1Ea、切込み縁2Ea、または切込み縁1Eaと切込み縁2Eaは、医療用シース20の内側面と接触していることが好ましい。これにより医療用シース20は変形し難くなる。そのため、切込み縁1Eaと切込み縁2Eaが医療用シース20の内側面と接触していることがより好ましい。
【0037】
橋部13に対向する側の切込み縁1Eb、切込み縁2Eb、または切込み縁1Ebと切込み縁2Ebは、医療用シース20の外側面と接触していることが好ましい。これにより医療用シース20を動き難くすることができる。そのため、切込み縁1Ebと切込み縁2Ebが医療用シース20の外側面と接触していることがより好ましい。
【0038】
医療用シース20が配置されていない状態における部分A1(SA1)の幅は、医療用シース20の肉厚よりも小さいことが好ましい。これにより、第1の切込み1Sの一方側の切込み縁1Eaと他方側の切込み縁1Ebにより医療用シース20を支持し易くすることができる。
【0039】
医療用シース20が配置されていない状態における部分B1(SB1)の幅は、医療用シース20の肉厚よりも小さいことが好ましい。これにより、第2の切込み2Sの一方側の切込み縁2Eaと他方側の切込み縁2Ebにより医療用シース20を支持し易くすることができる。
【0040】
図6に示す通り、第1方向1Xと第2方向2Xは平行であることが好ましい。これにより、第1方向1Xに延在する部分A1(SA1)と第2方向2Xに延在する部分B1(SB1)との間の橋部13により医療用シース20の内腔20L側を支持し易くなる。平行とは、第1方向1Xと第2方向2Xのなす角度が5度以下であることを意味する。当該角度は、より好ましくは3度以下、更に好ましくは2度以下、最も好ましくは0度である。
【0041】
部分A1(SA1)と部分B1(SB1)は、それぞれ直線状であることが好ましい。これにより、橋部13により医療用シース20の内腔20L側を支持し易くなる。部分A1(SA1)と部分B1(SB1)は、それぞれ、非直線状の切込みであってもよい。非直線状の切込みの詳細については、第1の実施の形態に係る医療用具101の説明を参照すればよい。
【0042】
部分A1(SA1)の長さと部分B1(SB1)の長さは、それぞれ、医療用シース20の軸方向20Xの長さの1.00倍以上、1.20倍以下であることが好ましく、1.01倍以上、1.10倍以下であることがより好ましい。これにより医療用シース20の軸方向20Xの動きを抑制しつつ、医療用シース20の両端の損傷を回避し易くすることができる。
【0043】
図4、
図6に示す通り、第1の切込み1Sは、第1方向1Xにおける部分A1(SA1)の一端部SA1aに隣接する部分A2(SA2)を有し、第2の切込み2Sは、第2方向2Xにおける部分B1(SB1)の一端部SB1aに隣接する部分B2(SB2)を有し、部分B1(SB1)の一端部SB1aは、第1方向1Xにおける部分A1(SA1)の他端部SA1bよりも部分A1(SA1)の一端部SA1aに近く、部分A2(SA2)と部分B2(SB2)は、部分A1(SA1)の一端部SA1aと部分B1(SB1)の一端部SB1aから互いに離れる方向に向かって延在していることが好ましい。このような互いに離れる方向に向かって延在している部分A2(SA2)と部分B2(SB2)により、一端部SA1aと一端部SB1a近傍において医療用シース20にかかる力を緩和することができるため、医療用シース20の一方側の端部が傷付き難くなる。またこれにより、医療用シース20が軸方向20Xに移動し難くなる。
【0044】
部分A2(SA2)の部分A1(SA1)に対する傾斜角度は、1度以上であることが好ましく、3度以上であることがより好ましく、5度以上であることが更に好ましい。これにより、医療用シース20の一方側の端部が傷付き難くなると共に、医療用シース20が軸方向20Xに移動し難くなる。一方、傾斜角度は90度以下であることが好ましく、45度以下であることがより好ましく、30度以下であることが更に好ましい。これにより医療用シース20を着脱し易くすることができる。当該傾斜角度は、部分A2(SA2)の両端を結ぶ仮想線分の、部分A1(SA1)の両端を結ぶ仮想線分に対する傾斜角度である。
【0045】
部分B2(SB2)の部分B1(SB1)に対する傾斜角度は、1度以上であることが好ましく、3度以上であることがより好ましく、5度以上であることが更に好ましい。これにより、医療用シース20の一方側の端部が傷付き難くなると共に、医療用シース20が軸方向20Xに移動し難くなる。一方、傾斜角度は90度以下であることが好ましく、45度以下であることがより好ましく、30度以下であることが更に好ましい。これにより医療用シース20を着脱し易くすることができる。当該傾斜角度は、部分B2(SB2)の両端を結ぶ仮想線分の、部分B1(SB1)の両端を結ぶ仮想線分に対する傾斜角度である。
【0046】
部分A2(SA2)と部分B2(SB2)は、それぞれ直線状であることが好ましい。これにより、橋部13の一端部をテーパ状にすることができるため、医療用シース20の一端部の損傷を回避し易くすることができる。なお部分A2(SA2)と部分B2(SB2)は、それぞれ非直線状の切込みであってもよい。非直線状の切込みの詳細については、第1の実施の形態に係る医療用具101の説明を参照すればよい。
【0047】
第1の切込み1Sは、第1方向1Xにおける部分A1(SA1)の他端部SA1bに隣接する部分A3(SA3)を有し、第2の切込み2Sは、第2方向2Xにおける部分B1(SB1)の他端部SB1bに隣接する部分B3(SB3)を有し、部分A3(SA3)と部分B3(SB3)は、部分A1(SA1)の他端部SA1bと部分B1(SB1)の他端部SB1bから互いに離れる方向に向かって延在していることが好ましい。このような互いに離れる方向に向かって延在している部分A3(SA3)と部分B3(SB3)により、他端部SA1bと他端部SB1b近傍において医療用シース20にかかる力を緩和することができるため、医療用シース20の他方側の端部が傷付き難くなる。またこれにより、医療用シース20が軸方向20Xに移動し難くなる。
【0048】
部分A3(SA3)の部分A1(SA1)に対する傾斜角度は、1度以上であることが好ましく、3度以上であることがより好ましく、5度以上であることが更に好ましい。これにより、医療用シース20の他方側の端部が傷付き難くなると共に、医療用シース20が軸方向20Xに移動し難くなる。一方、傾斜角度は90度以下であることが好ましく、45度以下であることがより好ましく、30度以下であることが更に好ましい。これにより医療用シース20を着脱し易くすることができる。当該傾斜角度は、部分A3(SA3)の両端を結ぶ仮想線分の、部分A1(SA1)の両端を結ぶ仮想線分に対する傾斜角度である。
【0049】
部分B3(SB3)の部分B1(SB1)に対する傾斜角度は、1度以上であることが好ましく、3度以上であることがより好ましく、5度以上であることが更に好ましい。これにより、医療用シース20の他方側の端部が傷付き難くなると共に、医療用シース20が軸方向20Xに移動し難くなる。一方、傾斜角度は90度以下であることが好ましく、45度以下であることがより好ましく、30度以下であることが更に好ましい。これにより医療用シース20を着脱し易くすることができる。当該傾斜角度は、部分B3(SB3)の両端を結ぶ仮想線分の、部分B1(SB1)の両端を結ぶ仮想線分に対する傾斜角度である。
【0050】
部分A3(SA3)と部分B3(SB3)は、それぞれ直線状であることが好ましい。これにより、橋部13の他端部をテーパ状にすることができるため、医療用シース20の他端部の損傷を回避し易くすることができる。なお部分A3(SA3)と部分B3(SB3)は、それぞれ非直線状の切込みであってもよい。非直線状の切込みの詳細については、第1の実施の形態に係る医療用具101の説明を参照すればよい。
【0051】
図4、
図6に示す通り、部分A1(SA1)は部分A2(SA2)よりも長く、且つ部分A3(SA3)よりも長く、部分B1(SB1)は部分B2(SB2)よりも長く、且つ部分B3(SB3)よりも長いことが好ましい。当該構成により、部分A1(SA1)と部分B1(SB1)の間のシート10の橋部13が、医療用シース20の内腔20L側を軸方向20Xに沿って支持することができる。
【0052】
図4に示す通り、シート10の医療用シース20の内腔20Lに配置された部分において、医療用シース20の軸方向20Xと垂直な方向20Yにおける部分A1(SA1)から部分B1(SB1)に至るまでの距離は、医療用シース20の内腔20Lの径よりも短いことが好ましい。これにより、部分A1(SA1)と部分B1(SB1)の間のシート10の橋部13を医療用シース20の内腔20Lに配置し易くすることができる。更にこれにより、加熱滅菌の際の切込み20Sの開きを低減し易くすることができる。更にこれにより、
図5に示すように、医療用シース20が、橋部13の形状に沿って形成された孔部14を通過し難くなるため、取り外しの際に医療用シース20を掴み易くすることができる。当該距離は、当該径の0.95倍以下であることが好ましく、当該径の0.90倍以下であることがより好ましい。一方、当該距離は、当該径の0.70倍以上であることが好ましく、当該径の0.80倍以上であることがより好ましい。これにより、橋部13により医療用シース20の内腔20L側を支持し易くすることができる。
【0053】
以下では、
図7、
図8、
図9、
図10を参照しながら、第3の実施の形態に係る医療用具について説明する。
図7は、第3の実施の形態に係る医療用具の平面図である。
図8は、
図7のC-C断面を示す断面図である。
図9は、
図7の医療用シースを配置する前のシートの平面図である。
図10は、
図9のシートの変形例の平面図である。なお、第3の実施の形態に係る医療用具について、第1の実施の形態、第2の実施の形態に係る医療用具と重複する部分の詳細な説明は省略する。
【0054】
図7、
図9に示す通り、第3の実施の形態に係る医療用具103のシート10は、第3の切込み3Sを有する点で第2の実施の形態に係る医療用具102のシート10と異なる。第3の切込み3Sについて、以下詳述する。
【0055】
図7、
図9に示す通り、シート10は、部分A1(SA1)中における部分A1(SA1)の両端を除く1点と、部分B1(SB1)中における部分B1(SB1)の両端を除く1点とを通る第3の切込み3Sを有していることが好ましい。部分A1(SA1)、部分B1(SB1)、及び第3の切込み3Sにより第1のフラップ11と第2のフラップ12とを形成することができる。第1のフラップ11と第2のフラップ12はそれぞれ独立して動かすことが可能であるため、医療用シース20の内腔20Lに挿入し易い。また、軸方向20Xに延在する切込み20Sを有していない医療用シース20であっても、
図8に示すように第1のフラップ11と第2のフラップ12とを医療用シース20の内腔20Lに挿入することができる。また、第1のフラップ11と第2のフラップ12を浮かせると、部分A1(SA1)と部分B1(SB1)の間に孔部14が形成されるため、上側から圧力が加わっても医療用シース20の少なくとも一部は下部に移動することができるため、医療用シース20は変形し難くなる。
【0056】
第3の切込み3Sは、直線状であることが好ましい。これにより、シート10を製造し易くなるためコストを低減することができる。
【0057】
図9に示す通り、第3の切込み3Sは、第1方向1Xにおける部分A1(SA1)の一端部SA1aと他端部SA1bのうち一端部SA1aに近い側であって、且つ第2方向2Xにおける部分B1(SB1)の一端部SB1aと他端部SB1bのうち一端部SB1aに近い側に位置することが好ましい。これにより、延在方向の長さが長い第1のフラップ11と、延在方向の長さが短い第2のフラップ12とを形成することができる。例えば、医療用シース20の内腔20Lに第1のフラップ11と第2のフラップ12を挿入して加熱滅菌した後に、延在方向の長さが短い第2のフラップ12を先に外すことにより、延在方向の長さが長い第1のフラップ11をスムーズに外すことができる。また、
図3に示す医療用シース20の場合、開口20O側に延在方向の長さが短い第2のフラップ12が挿入され、開口20Oとは反対側の開口に延在方向の長さが長い第1のフラップ11が挿入されていることが好ましい。これにより、医療用シース20をシート10から外し易くすることができる。また、医療用シース20をシート10から外す際に、医療用シース20の切込み20Sからではなく、開口20Oおよびその反対側の開口からそれぞれ挿入された第1のフラップ11と第2のフラップ12を外すことができるため、より簡単に医療用シース20をシート10から外すことができる。
【0058】
第3の切込み3Sは、他端部SA1bから、他端部SA1bから一端部SA1aに至るまでの直線距離の0.51倍以上、0.80倍以下の距離離れていることが好ましく、0.55倍以上、0.70倍以下の距離離れていることがより好ましい。更に、第3の切込み3Sは、他端部SB1bから、他端部SB1bから一端部SB1aに至るまでの直線距離の0.51倍以上、0.80倍以下の距離離れていることが好ましく、0.55倍以上、0.70倍以下の距離離れていることがより好ましい。これにより、第1のフラップ11と第2のフラップ12による医療用シース20の固定と、着脱のし易さとを両立することができる。
【0059】
図10に示す通り、第3の切込み3Sの幅は、第1の切込み1Sの幅よりも大きいことが好ましい。これにより、シート10が全体的に湾曲したときに第1のフラップ11の先端と第2のフラップ12の先端とが当接し難くなるため、当該当接に伴う医療用シース20の内腔20Lからの圧迫を回避し易くすることができる。そのため第3の切込み3Sの幅は、第1の切込み1Sの幅の1.1倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましく、5倍以上であることが更に好ましく、10倍以上であることが更により好ましい。一方、第3の切込み3Sの幅は、第1の切込み1Sの幅の500倍以下であることが好ましく、200倍以下であることがより好ましく、100倍以下であることが更に好ましく、50倍以下であることが更により好ましい。これにより、第1のフラップ11と第2のフラップ12により医療用シース20の内腔20L側を全体的に支持し易くなる。
【0060】
第2の切込み2Sの幅は、第1の切込み1Sの幅の0.9倍以上、1.1倍以下であることが好ましい。これにより、シート10を製造し易くなるためコストを低減することができる。
【0061】
以下では、
図11を参照しながら、第4の実施の形態に係る医療用具について説明する。
図11は、第4の実施の形態に係る医療用具の平面図である。なお、第4の実施の形態に係る医療用具について、第1の実施の形態、第2の実施の形態、第3の実施の形態に係る医療用具と重複する部分の詳細な説明は省略する。
【0062】
図11に示す通り、第4の実施の形態に係る医療用具104は、第1の切込み1Sを有するシート10と、医療用シース20とを有し、第1の切込み1Sの切込み縁1Eaの少なくとも一部は、医療用シース20の内腔20Lに配置されている。更に医療用具104は、第1の切込み1Sは第1方向1Xに延在する部分A1(SA1)を有し、シート10は第2の切込み2Sを有しており、第2の切込み2Sは、第2方向2Xに延在し幅方向において部分A1(SA1)と対向する部分B1(SB1)を有していることが好ましい。
【0063】
図11に示す通り、第1の切込み1Sは、第1方向1Xにおける部分A1(SA1)の一端部SA1aに隣接する部分A2(SA2)を有し、第2の切込み2Sは、第2方向2Xにおける部分B1(SB1)の一端部SB1aに隣接する部分B2(SB2)を有し、部分B1(SB1)の一端部SB1aは、第1方向1Xにおける部分A1(SA1)の他端部SA1bよりも部分A1(SA1)の一端部SA1aに近く、部分A2(SA2)と部分B2(SB2)は、部分A1(SA1)の一端部SA1aと部分B1(SB1)の一端部SB1aから互いに離れる方向に向かって延在していることが好ましい。更に、第1の切込み1Sは、第1方向1Xにおける部分A1(SA1)の他端部SA1bに隣接する部分A3(SA3)を有し、第2の切込み2Sは、第2方向2Xにおける部分B1(SB1)の他端部SB1bに隣接する部分B3(SB3)を有し、部分A3(SA3)と部分B3(SB3)は、部分A1(SA1)の他端部SA1bと部分B1(SB1)の他端部SB1bから互いに離れる方向に向かって延在していることが好ましい。
【0064】
図11に示す通り、部分A1(SA1)は部分A2(SA2)よりも短く、且つ部分A3(SA3)よりも短く、部分B1(SB1)は部分B2(SB2)よりも短く、且つ部分B3(SB3)よりも短いことが好ましい。当該構成により、部分A1(SA1)、部分A2(SA2)、及び部分A3(SA3)により第1のフラップ11を形成し、部分B1(SB1)、部分B2(SB2)、及び部分B3(SB3)により第2のフラップ12を形成することができる。第1のフラップ11と第2のフラップ12はそれぞれ独立して動かすことが可能であるため、シート10の一部を医療用シース20の内腔20Lに配置し易くすることができる。また、軸方向20Xに延在する切込み20Sを有していない医療用シース20であっても、シート10の一部を医療用シース20の内腔20Lに配置することができる。
【0065】
シート10の医療用シース20の内腔20Lに配置された部分において、医療用シース20の軸方向20Xと垂直な方向20Yにおける部分A2(SA2)から部分A3(SA3)に至るまでの距離は、医療用シース20の内腔20Lの径よりも短く、且つ医療用シース20の軸方向20Xと垂直な方向20Yにおける部分B2(SB2)から部分B3(SB3)に至るまでの距離は、医療用シース20の内腔20Lの径よりも短いことが好ましい。これにより、第1のフラップ11と第2のフラップ12とを、それぞれ医療用シース20の内腔20Lに配置し易くすることができる。当該距離は、当該径の0.95倍以下であることが好ましく、当該径の0.90倍以下であることがより好ましい。一方、当該距離は、当該径の0.70倍以上であることが好ましく、当該径の0.80倍以上であることがより好ましい。これにより、第1のフラップ11と第2のフラップ12により医療用シース20の内腔20L側を支持し易くすることができる。
【0066】
部分A2(SA2)、部分A3(SA3)、部分B2(SB2)、及び部分B3(SB3)は、それぞれ直線状であることが好ましい。これにより、第1のフラップ11と第2のフラップ12を医療用シース20の内腔20Lに配置し易くすることができる。なお部分A2(SA2)、部分A3(SA3)、部分B2(SB2)、及び部分B3(SB3)は、それぞれ非直線状の切込みであってもよい。非直線状の切込みの詳細については、第1の実施の形態に係る医療用具101の説明を参照すればよい。
【0067】
部分A2(SA2)の長さと部分A3(SA3)の長さは、それぞれ医療用シース20の軸方向20Xの長さの0.30倍以上、0.80倍以下の長さであることが好ましく、0.50倍以上、0.70倍以下の長さであることがより好ましく、0.55倍以上、0.60倍以下の長さであることが更に好ましい。一方、部分B2(SB2)の長さと部分B3(SB3)の長さは、それぞれ医療用シース20の軸方向20Xの長さの0.20倍以上、0.70倍以下の長さであることが好ましく、0.30倍以上、0.50倍以下の長さであることがより好ましく、0.40倍以上、0.45倍以下の長さであることが更に好ましい。また、部分A2(SA2)は部分B2(SB2)よりも長く、且つ部分A3(SA3)は部分B3(SB3)よりも長いことが好ましい。これにより、第1のフラップ11の延在方向の長さを、第2のフラップ12の延在方向の長さよりも長くすることができる。
【0068】
部分A2(SA2)と部分A3(SA3)の部分A1(SA1)に対する傾斜角度は、それぞれ、70度以上、95度以下であることが好ましく、80度以上、93度以下であることがより好ましく、85度以上、91度以下であることが更に好ましく、最も好ましくは90度である。これにより、第1のフラップ11により医療用シース20を内腔20L側から支持し易くすることができる。なお部分A2(SA2)の部分A1(SA1)に対する傾斜角度は、部分A2(SA2)の両端を結ぶ仮想線分の、部分A1(SA1)の両端を結ぶ仮想線分に対する傾斜角度である。また部分A3(SA3)の部分A1(SA1)に対する傾斜角度は、A3(SA3)の両端を結ぶ仮想線分の、部分A1(SA1)の両端を結ぶ仮想線分に対する傾斜角度である。また例えば、部分A2(SA2)と部分A3(SA3)の部分A1(SA1)に対する傾斜角度が、それぞれ70度以上、90度未満である場合には、第1のフラップ11の形状は、先細り形状となる。
【0069】
部分B2(SB2)と部分B3(SB3)の部分B1(SB1)に対する傾斜角度は、それぞれ、70度以上、95度以下であることが好ましく、80度以上、93度以下であることがより好ましく、85度以上、91度以下であることが更に好ましく、最も好ましくは90度である。これにより、第2のフラップ12により医療用シース20を内腔20L側から支持し易くすることができる。なお部分B2(SB2)の部分B1(SB1)に対する傾斜角度は、部分B2(SB2)の両端を結ぶ仮想線分の、部分B1(SB1)の両端を結ぶ仮想線分に対する傾斜角度である。また部分B3(SB3)の部分B1(SB1)に対する傾斜角度は、部分B3(SB3)の両端を結ぶ仮想線分の、部分B1(SB1)の両端を結ぶ仮想線分に対する傾斜角度である。また例えば、部分B2(SB2)と部分B3(SB3)の部分B1(SB1)に対する傾斜角度が、それぞれ70度以上、90度未満である場合には、第2のフラップ12の形状は、先細り形状となる。
【0070】
以下では、
図12を参照しながら、第5の実施の形態に係る医療用具について説明する。
図12は、第5の実施の形態に係る医療用具の平面図である。なお、第5の実施の形態に係る医療用具について、第1の実施の形態、第2の実施の形態、第3の実施の形態、第4の実施の形態に係る医療用具と重複する部分の詳細な説明は省略する。
【0071】
図12に示す通り、第5の実施の形態に係る医療用具105は、第1の切込み1Sを有するシート10と、医療用シース20とを有し、第1の切込み1Sの切込み縁1Eaの少なくとも一部は、医療用シース20の内腔20Lに配置されている。
【0072】
図12に示す通り、医療用具105は、更に、医療用管状体40と、医療用管状体40の少なくとも一部が内部に配置された保護管30を有し、シート10は、一対の切込み4Sを有し、一対の切込み4Sの切込み縁4Eは、それぞれ巻回された保護管30を挟持しており、第1の切込み1Sと第2の切込み2Sは、一対の切込み4Sのうちの一方の切込み4S1から他方の切込み4S2に至るまでの領域4Rの外側に位置することが好ましい。領域4Rは、保護管30を着脱するときに変形し易い領域であるため、当該領域4Rの外側の領域に医療用シース20を配置することにより、意図していないタイミングでの医療用シース20の脱離を防止し易くすることができる。また逆に、医療用シース20を着脱するときに意図していないタイミングでの保護管30の脱離を防止し易くすることができる。
【0073】
一対の切込み4Sにより形成された一対のフラップは、それぞれ、シート10の外側に向かう方向に延在していることが好ましい。これにより、各フラップは巻回された保護管30を保持し易くなる。
【0074】
医療用シース20は、巻回された保護管30の内側に位置することが好ましい。このような配置により、医療用具105を積み重ねた際に加わる医療用シース20への圧力を低減することができる。
【0075】
図12に示す通り、医療用具105が医療用シース20、保護管30、及び医療用管状体40を有していることにより、医療用シース20、保護管30、及び医療用管状体40をまとめて滅菌することができる。なおシート10は、他の切込みを有していてもよい。また医療用具105は、更に、他の部材を有していてもよく、他の部材は、1または複数の他の切込みの切込み縁によりシート10に固定されていてもよい。他の部材として、シリンジ、マンドレル、ガイドワイヤ、針、ダイレータ、リラッパー、トルカー、活栓、アダプター等が挙げられる。
【0076】
保護管30の厚さ方向の断面の外縁の形状としては、円形、楕円形、多角形、角丸多角形、またはこれらの組み合わせ形状が好ましく、円形、楕円形、または角丸多角形がより好ましく、円形または楕円形が更に好ましく、円形が更により好ましい。保護管30の厚さ方向の断面の内腔の外縁の形状としては、円形、楕円形、多角形、角丸多角形、またはこれらの組み合わせ形状が好ましく、円形、楕円形、または角丸多角形がより好ましく、円形または楕円形が更に好ましく、円形が更により好ましい。保護管30は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、またはこれらの混合物を含んでいてもよい。
【0077】
保護管30の厚さ方向における外径は、医療用シース20の外径より大きいことが好ましい。これにより、複数の医療用具105を積み重ねたときに医療用シース20が変形し難くなる。
【0078】
医療用管状体40は、バルーンカテーテル、マイクロカテーテル、または貫通用カテーテルであることが好ましく、バルーンカテーテルであることがより好ましい。また医療用管状体40は近位端部にハンドル部を有していることが好ましい。保護管30は、医療用管状体40の少なくとも一部を内部に配置できるものであればよい。保護管30は、巻回された状態で複数のクリップにより、その形状が固定されていることが好ましい。なお医療用具105は、保護管30を有さなくてもよい。その場合、一対の切込み4Sの切込み縁4Eにより、医療用管状体40を挟持すればよい。
【符号の説明】
【0079】
1Ea、1Eb、2Ea、2Eb 切込み縁
1S 第1の切込み
SA1 部分A1
SA1a 一端部
SA1b 他端部
SA2 部分A2
SA3 部分A3
1X 第1方向
2S 第2の切込み
SB1 部分B1
SB1a 一端部
SB1b 他端部
SB2 部分B2
SB3 部分B3
2X 第2方向
3S 第3の切込み
4S 一対の切込み
4S1 一方の切込み
4S2 他方の切込み
4R 領域
4E 切込み縁
10 シート
10F フラップ
11 第1のフラップ
12 第2のフラップ
13 橋部
14 孔部
20 医療用シース
20L 内腔
20X 軸方向
20S 切込み
20Y 垂直な方向
20O 開口
30 保護管
40 医療用管状体
101、102、103、104、105 医療用具