(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172186
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】医療器具セット
(51)【国際特許分類】
A61B 50/30 20160101AFI20231129BHJP
【FI】
A61B50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083819
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(71)【出願人】
【識別番号】394003265
【氏名又は名称】株式会社カネカメディックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 裕一郎
(57)【要約】
【課題】積み重ねた状態で医療用シースを滅菌し易い医療器具セットを提供する。
【解決手段】基材シートと、基材シートの一方面側に着脱可能に固定された軸方向を有する医療用シースと、基材シートの一方面側に着脱可能に固定された長手方向を有する医療器具と、基材シート、医療用シース、及び医療器具を内包する包装袋とを有し、基材シートは、第1切込みにより形成された第1フラップと、第1フラップの起立により形成された第1孔部とを有し、第1フラップは医療器具を支持しており、医療用シースと医療器具は、基材シートの図心を通る仮想直線により区画される一方側と他方側のうちの一方側の領域に配置されており、基材シートの長径は、短径の2倍以下の長さであり、包装袋は、基材シートの一方面側とは反対側の他方面側と対向する位置に通気部を有している医療器具セット。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、
前記基材シートの一方面側に着脱可能に固定された軸方向を有する医療用シースと、
前記基材シートの前記一方面側に着脱可能に固定された長手方向を有する医療器具と、
前記基材シート、前記医療用シース、及び前記医療器具を内包する包装袋とを有し、
前記基材シートは、第1切込みにより形成された第1フラップと、前記第1フラップの起立により形成された第1孔部とを有し、前記第1フラップは前記医療器具を支持しており、
前記医療用シースと前記医療器具は、前記基材シートの図心を通る仮想直線により区画される一方側と他方側のうちの一方側の領域に配置されており、
前記基材シートの長径は、短径の2倍以下の長さであり、
前記包装袋は、前記基材シートの前記一方面側とは反対側の他方面側と対向する位置に通気部を有している医療器具セット。
【請求項2】
前記第1孔部の短径の長さは、前記医療用シースの外径よりも大きい請求項1に記載の医療器具セット。
【請求項3】
前記医療用シースの前記軸方向における一端から前記第1孔部までの最短距離は、前記医療用シースの前記軸方向の長さの2分の1以下である請求項1または2に記載の医療器具セット。
【請求項4】
前記医療用シースは、前記医療器具よりも前記基材シートの前記図心から離れた位置に配置されている請求項1または2に記載の医療器具セット。
【請求項5】
前記医療用シースの前記軸方向と前記医療器具の前記長手方向とのなす角度が20度以下である請求項1または2に記載の医療器具セット。
【請求項6】
前記医療器具は筒状部を有し、前記筒状部の外径は、前記医療用シースの外径よりも大きい請求項1または2に記載の医療器具セット。
【請求項7】
前記第1フラップは、前記筒状部を支持している請求項6に記載の医療器具セット。
【請求項8】
前記基材シートは、第2切込みにより形成された第2フラップと、前記第2フラップの起立により形成された第2孔部とを有し、前記第2フラップは前記医療器具を支持している請求項1または2に記載の医療器具セット。
【請求項9】
更に、医療用長尺体と、前記医療用長尺体の少なくとも一部が内部に配置された保護管とを有し、前記保護管は巻回された状態で、前記基材シートの前記一方面側に着脱可能に固定されており、巻回された前記保護管より内側に前記医療用シースと前記医療器具が配置されている請求項1または2に記載の医療器具セット。
【請求項10】
前記基材シートは、一対の切込みにより形成された一対のフラップと、前記一対のフラップの起立により形成された一対の孔部とを有し、前記一対のフラップは前記保護管を着脱可能に固定している請求項9に記載の医療器具セット。
【請求項11】
前記医療用シースは、前記一対の切込みのうちの一方の切込みから他方の切込みに至るまでの領域の外側に位置している請求項10に記載の医療器具セット。
【請求項12】
前記保護管の外径は、前記医療用シースの外径より大きい請求項9に記載の医療器具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用シースを滅菌し易い医療器具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カテーテルやガイドワイヤのような長尺状の医療用具は、未使用状態において、台紙に固定される場合があった。例えば、特許文献1には、可撓性を有する線状部を備える医療用具を保持した状態で袋状の包装体に収納される、長尺なシート材で構成された医療用具保持台紙であって、医療用具を保持する保持部を備え、保持部は、シート材の長手方向に沿って該シート材をV字状に折り曲げられて形成され、医療用具の線状部を収納するV字状溝と、該V字状溝の基端部にその谷部を逆方向に山状に折り返してW字状に形成されたW字状溝とを有する医療用具保持台紙が開示されている。また特許文献2には、紙又は軟質の合成樹脂製薄平板もしくは皿状体を裁断して、単数又は複数の抑止片を形成し、該抑止片のほぼ中央部に一方端部がアーチ状である切り込みを設け、該切り込みのアーチ状端部から抑止片の端部までを切断して緩圧部を形成し、抑止片の基端部から折り曲げ部で折り曲げたことを特徴とする医療用具包装部材が開示されている。また特許文献3には、医療機器を複数のタブによって保持面に保持する保持台紙において、複数のタブのうち少なくとも一つの特定タブは、保持面から離間した位置において、医療機器を挟持している保持台紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-201826号公報
【特許文献2】特開2002-193322号公報
【特許文献3】特開2016-064089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、特許文献1~3のような台紙に固定された長尺状の医療用具を、袋で包装して包装体の状態にして滅菌処理を行う場合があった。滅菌処理として5m3ほどの滅菌装置で高圧蒸気や滅菌ガス等を用いて滅菌する方法が採用されており、特に特許文献3の略正方形状の台紙のように積み重ね易い形状の台紙を用いる場合には、包装体を例えば60個ほど滅菌かごに積み重ねて滅菌処理行う場合があった。また、このような台紙には医療用シース、シリンジ等が固定される場合があったが、近年では、上記のように包装体を積み重ねた状態での滅菌において、内径が小さく滅菌し難い医療用シースの滅菌レベルを向上したいという要望があった。本発明は上記の様な問題に着目してなされたものであって、その目的は、積み重ねた状態で医療用シースを滅菌し易い医療器具セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することのできた本発明の実施の形態に係る医療器具セットは、以下の通りである。
[1]基材シートと、
前記基材シートの一方面側に着脱可能に固定された軸方向を有する医療用シースと、
前記基材シートの前記一方面側に着脱可能に固定された長手方向を有する医療器具と、
前記基材シート、前記医療用シース、及び前記医療器具を内包する包装袋とを有し、
前記基材シートは、第1切込みにより形成された第1フラップと、前記第1フラップの起立により形成された第1孔部とを有し、前記第1フラップは前記医療器具を支持しており、
前記医療用シースと前記医療器具は、前記基材シートの図心を通る仮想直線により区画される一方側と他方側のうちの一方側の領域に配置されており、
前記基材シートの長径は、短径の2倍以下の長さであり、
前記包装袋は、前記基材シートの前記一方面側とは反対側の他方面側と対向する位置に通気部を有している医療器具セット。
【0006】
上記の通り、医療用シースと長手方向を有する医療器具とを、基材シートの一方側の領域に配置することにより、医療器具近傍の第1孔部と、医療用シースとの距離が近くなるため、包装袋の通気部を通過した滅菌ガスが更に第1孔部を通過して医療用シースに供給され易くなる。更に、当該配置により、基材シートの他方側の領域は、他の医療器具セットが積み上げられたときに押さえ付けられて空間が狭くなって包装袋内の空間の体積が全体として減少するため、滅菌ガスを効率的に医療用シースに供給することができる。
【0007】
実施の形態に係る医療器具セットは、以下の[2]~[12]のいずれかであることが好ましい。
[2]前記第1孔部の短径の長さは、前記医療用シースの外径よりも大きい[1]に記載の医療器具セット。
[3]前記医療用シースの前記軸方向における一端から前記第1孔部までの最短距離は、前記医療用シースの前記軸方向の長さの2分の1以下である[1]または[2]に記載の医療器具セット。
[4]前記医療用シースは、前記医療器具よりも前記基材シートの前記図心から離れた位置に配置されている[1]~[3]のいずれかに記載の医療器具セット。
[5]前記医療用シースの前記軸方向と前記医療器具の前記長手方向とのなす角度が20度以下である[1]~[4]のいずれかに記載の医療器具セット。
[6]前記医療器具は筒状部を有し、前記筒状部の外径は、前記医療用シースの外径よりも大きい[1]~[5]のいずれかに記載の医療器具セット。
[7]前記第1フラップは、前記筒状部を支持している[6]に記載の医療器具セット。
[8]前記基材シートは、第2切込みにより形成された第2フラップと、前記第2フラップの起立により形成された第2孔部とを有し、前記第2フラップは前記医療器具を支持している[1]~[7]のいずれかに記載の医療器具セット。
[9]更に、医療用長尺体と、前記医療用長尺体の少なくとも一部が内部に配置された保護管とを有し、前記保護管は巻回された状態で、前記基材シートの前記一方面側に着脱可能に固定されており、巻回された前記保護管より内側に前記医療用シースと前記医療器具が配置されている[1]~[8]のいずれかに記載の医療器具セット。
[10]前記基材シートは、一対の切込みにより形成された一対のフラップと、前記一対のフラップの起立により形成された一対の孔部とを有し、前記一対のフラップは前記保護管を着脱可能に固定している[9]に記載の医療器具セット。
[11]前記医療用シースは、前記一対の切込みのうちの一方の切込みから他方の切込みに至るまでの領域の外側に位置している[10]に記載の医療器具セット。
[12]前記保護管の外径は、前記医療用シースの外径より大きい[9]~[11]のいずれかに記載の医療器具セット。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、積み重ねた状態で医療用シースを滅菌し易い医療器具セットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態に係る医療器具セットの一方面側の平面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態に係る医療器具セットの他方面側の平面図である。
【
図4】
図4は、
図1の各部材を配置する前の基材シートの平面図である。
【
図5】
図5は、医療用シースの一例の平面図である。
【
図6】
図6は、第2の実施の形態に係る医療器具セットの一方面側の平面図である。
【
図7】
図7は、第2の実施の形態に係る医療器具セットの他方面側の平面図である。
【
図8】
図8は、
図6の各部材を配置する前の基材シートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0011】
本発明の実施の形態に係る医療器具セットは、基材シートと、基材シートの一方面側に着脱可能に固定された軸方向を有する医療用シースと、基材シートの一方面側に着脱可能に固定された長手方向を有する医療器具と、基材シート、医療用シース、及び医療器具を内包する包装袋とを有し、基材シートは、第1切込みにより形成された第1フラップと、第1フラップの起立により形成された第1孔部とを有し、第1フラップは医療器具を支持しており、医療用シースと医療器具は、基材シートの図心を通る仮想直線により区画される一方側と他方側のうちの一方側の領域に配置されており、基材シートの長径は、短径の2倍以下の長さであり、包装袋は、基材シートの一方面側とは反対側の他方面側と対向する位置に通気部を有している。
【0012】
上述の通り、医療用シースと長手方向を有する医療器具とを、基材シートの一方側の領域に配置することにより、医療器具近傍の第1孔部と、医療用シースとの距離が近くなるため、包装袋の通気部を通過した滅菌ガスが更に第1孔部を通過して医療用シースに供給され易くなる。更に、当該配置により、基材シートの他方側の領域は、他の医療器具セットが積み上げられたときに押さえ付けられて空間が狭くなって包装袋内の空間の体積が全体として減少するため、滅菌ガスを効率的に医療用シースに供給することができる。
【0013】
以下では、
図1、
図2、
図3、
図4を参照しながら、第1の実施の形態に係る医療器具セットについて説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る医療器具セットの一方面側の平面図であり、
図2は、他方面側の平面図である。
図3は、
図1のA-A断面を示す断面図である。
図4は、
図1の各部材を配置する前の基材シートの平面図である。
【0014】
図1、
図2、
図3に示す通り、第1の実施の形態に係る医療器具セット101は、基材シート10と、基材シート10の一方面側10Aに着脱可能に固定された軸方向20Xを有する医療用シース20と、基材シート10の一方面側10Aに着脱可能に固定された長手方向30Xを有する医療器具30と、基材シート10、医療用シース20、及び医療器具30を内包する包装袋40とを有している。基材シート10は、第1切込み1Sにより形成された第1フラップ1Fと、第1フラップ1Fの起立により形成された第1孔部1Hとを有し、第1フラップ1Fは医療器具30を支持している。医療用シース20と医療器具30は、基材シート10の図心10Cを通る仮想直線10Dにより区画される一方側10Jと他方側10Kのうちの一方側10Jの領域に配置されている。基材シート10の長径10Lは、短径10Mの2倍以下の長さである。包装袋40は、基材シート10の一方面側10Aとは反対側の他方面側10Bと対向する位置に通気部40Vを有している。
【0015】
医療用シース20と、長手方向30Xを有する医療器具30とが、基材シート10の図心10Cを通る仮想直線10Dにより区画される一方側10Jと他方側10Kのうちの一方側10Jの領域に配置されていることにより、医療器具30近傍の第1孔部1Hと、医療用シース20との距離が近くなる。その結果、基材シート10の他方面側10Bに対向する包装袋40の通気部40Vを通過した滅菌ガスが第1孔部1Hを介して医療用シース20に供給され易くなる。
【0016】
基材シート10の図心10Cは、基材シート10の平面視における外縁により形成される図形の重心に相当する。そのため、基材シート10の図心10Cを通る仮想直線10Dにより区画される一方側10Jと他方側10Kは、それぞれ基材シート10の領域の半分に相当する。
【0017】
図3に示すように、基材シート10の一方側10J領域に医療用シース20と医療器具30が配置されていることにより、基材シート10の他方側の領域10Kは、他の医療器具セットが積み上げられたときに押さえ付けられて空間が狭くなる。その結果、包装袋40内の空間の体積が全体として減少するため、滅菌ガスを効率的に医療用シース20に供給することができる。
【0018】
図1に示すように、基材シート10の長径10Lは、短径10Mの2倍以下の長さである。これにより基材シート10の平面視における外縁の形状は正方形に近づくため、積み重ね易くすることができる。そのため、長径10Lは、短径10Mの1.8倍以下の長さであることが好ましく、短径10Mの1.5倍以下の長さであることがより好ましく、短径10Mの1.2倍以下の長さであることが更に好ましい。一方、長径10Lは、短径10Mの1.00倍以上の長さであってもよく、短径10Mの1.05倍以上の長さであってもよい。
【0019】
基材シート10の長径10Lは、基材シート10の平面視において、図心10Cを通り、両端点が基材シート10の外縁上にある仮想線分のうちの最長の仮想線分であることが好ましい。一方、基材シート10の短径10Mは、基材シート10の平面視において、図心10Cを通り、両端点が基材シート10の外縁上にある仮想線分のうちの最短の仮想線分であることが好ましい。また、基材シート10の平面視における形状が正方形である場合のように長径10Lと短径10Mが同じ長さであってもよい。
【0020】
基材シート10の平面視における形状は、円形、楕円形、多角形、角丸多角形、またはこれらの組み合わせ形状が好ましく、多角形または角丸多角形であることがより好ましく、四角形または角丸四角形であることが更に好ましい。基材シート10の形状が多角形または角丸多角形である場合、例えば、
図4に示すように基材シート10の外縁の各頂点T1、T2、T3、T4と図心10Cとの距離は全て同じであってもよいが、
図8に示すように各頂点T1、T2、T3、T4のうち他の頂点T2、T3、T4よりも図心10Cに近い側に位置する頂点T1が存在していてもよい。
【0021】
基材シート10の外縁により囲まれた領域の面積は、50cm2以上、1000cm2以下であることが好ましく、300cm2以上、600cm2以下であることがより好ましい。基材シート10の厚さは、0.1mm以上、2.0mm以下であることが好ましく、0.15mm以上、1.0mm以下であることがより好ましく、0.2mm以上、0.8mm以下であることが更に好ましい。これにより、基材シート10の取り扱い性が向上する。
【0022】
基材シート10は、樹脂層、紙層、またはこれらの積層体を含むことが好ましく、樹脂層からなることがより好ましい。上記積層体は、樹脂層と紙層とをそれぞれ1層以上含んでいてもよく、樹脂層を2層以上含んでいてもよく、紙層を2層以上含んでいてもよい。
【0023】
樹脂層としては、ポリオレフィン層、フッ素樹脂層、ポリエステル層、ポリウレタン層、ポリスチレン層、ポリカーボネート層、シリコーン層、ポリアミド層、ポリイミド層が好ましく、ポリオレフィン層、フッ素樹脂層がより好ましく、ポリオレフィン層が更により好ましい。これにより各部材を基材シート10に着脱し易くなる。これらは1種のみ用いてもよく、2種類以上、併用して用いてもよい。ポリオレフィン層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはこれらの混合物を含むことが好ましく、ポリプロピレンを含むことがより好ましく、ポリプロピレンからなることが更に好ましい。フッ素樹脂層は、ポリテトラフルオロエチレンを含むことが好ましい。ポリエステル層は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはこれらの混合物を含むことが好ましい。ポリウレタン層はポリウレタンを含むことが好ましい。ポリスチレン層はポリスチレンを含むことが好ましい。ポリカーボネート層はポリカーボネートを含むことが好ましい。シリコーン樹脂層はシリコーン樹脂を含むことが好ましい。ポリアミド層はナイロンを含むことが好ましい。ポリイミド層はポリエーテルイミドを含むことが好ましい。
【0024】
紙層としては、上質紙、中質紙、クラフト紙、片艶クラフト紙、ラテックス含浸紙が好ましい。これらは1種のみ用いてもよく、2種類以上、併用して用いてもよい。
【0025】
基材シート10は、上述の通り、第1切込み1Sにより形成された第1フラップ1Fと、第1フラップ1Fの起立により形成された第1孔部1Hとを有し、第1フラップ1Fは医療器具30を支持している。
図1に示す通り、基材シート10の一方面側10Aにおいて、第1切込み1Sにより形成された第1フラップ1Fは、上側すなわち手前側に向かって起立しており、第1フラップ1Fの下側すなわち奥側に第1孔部1Hが形成されていることが好ましい。
【0026】
第1切込み1Sの形状は、U字型、V字型、コの字型、またはS字型であることが好ましく、U字型またはコの字型であることがより好ましく、U字型であることが更に好ましい。
【0027】
第1フラップ1Fの外縁の形状は、U字形、V字形、コの字形、またはS字形であることが好ましく、U字形またはコの字形であることがより好ましく、U字形であることが更に好ましい。これにより、第1フラップ1Fは医療器具30を支持し易くなる。
【0028】
第1孔部1Hの外縁の形状は、半円形、半楕円形、三角形、四角形、またはこれらの組合わせ形状であることが好ましい。
【0029】
第1孔部1Hの短径の長さは、医療用シース20の外径よりも大きいことが好ましい。これにより、滅菌ガスが第1孔部1Hを通過し易くなって、医療用シース20に滅菌ガスを供給し易くすることができる。そのため、第1孔部1Hの短径の長さは、医療用シース20の外径の2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましい。一方、第1孔部1Hの短径の長さが、医療用シース20の外径の30倍以下であることにより、基材シート10の強度が向上する。そのため、第1孔部1Hの短径の長さは、医療用シース20の外径の30倍以下であることが好ましく、20倍以下であることがより好ましい。第1孔部1Hの短径は、基材シート10の主面(一方面側10Aの面)と平行な方向における第1孔部1Hの外縁により形成される図形の図心を通り、両端点が第1孔部1Hの外縁上にある仮想線分のうちの最短の仮想線分であることが好ましい。以下では、各孔部の短径について同様である。
【0030】
第1孔部1Hの短径の長さは、医療器具30の筒状部30Tの外径よりも大きいことが好ましい。これにより、第1孔部1Hの形状に対応する形状を有する第1フラップ1Fが医療器具30を支持し易くなると共に、滅菌ガスが第1孔部1Hを通過し易くなる。そのため、第1孔部1Hの短径の長さは、医療器具30の筒状部30Tの外径の1.2倍以上であることが好ましく、1.4倍以上であることがより好ましい。一方、第1孔部1Hの短径の長さが、医療器具30の筒状部30Tの外径の4倍以下であることにより、基材シート10の強度が向上する。そのため、第1孔部1Hの短径の長さは、医療器具30の筒状部30Tの外径の4倍以下であることが好ましく、3倍以下であることがより好ましい。
【0031】
第1フラップ1Fは、医療器具30の遠位端部から近位端部に向かう方向に延在していることが好ましい。これにより医療器具30が長手方向30Xに動き難くなる。
【0032】
第1フラップ1Fは、貫通孔1Pを有していることが好ましい。例えば、第1フラップ1Fを起立させた状態で、貫通孔1Pに医療器具30を挿入することにより、医療器具30を支持し易くすることができる。
【0033】
第1フラップ1Fは、医療器具30の筒状部30Tを支持していることが好ましい。第1フラップ1Fが医療器具30の筒状部30Tを支持することにより、医療器具30は動き難くなる。
【0034】
図1に示すように、基材シート10は、第2切込み2Sにより形成された第2フラップ2Fと、第2フラップ2Fの起立により形成された第2孔部2Hとを有し、第2フラップ2Fは医療器具30を支持していることが好ましい。これにより医療器具30は一層、動き難くなると共に、第2孔部2Hを介して、医療用シース20に滅菌ガスを供給することができる。
【0035】
図1に示す通り、第2フラップ2Fは、基材シート10の一方面側10Aにおいて、上側すなわち手前側に向かって起立しており、第2フラップ2Fの下側すなわち奥側に第2孔部2Hが形成されていることが好ましい。
【0036】
第2フラップ2Fは、医療器具30の近位端部を、近位端部から遠位端部に向かう方向に支持していることが好ましい。これにより医療器具30が長手方向30Xに動き難くなる。
【0037】
図1、
図2に示すように、基材シート10は、更に、第3切込み3Sにより形成された第3フラップ3Fと、第3フラップ3Fの起立により形成された第3孔部3Hとを有し、第3フラップ3Fは医療器具30を支持していることが好ましい。基材シート10は、更に、第4切込み4Sにより形成された第4フラップ4Fと、第4フラップ4Fの起立により形成された第4孔部4Hとを有し、第4フラップ4Fは医療器具30を支持していることが好ましい。これにより医療器具30は一層、動き難くなると共に、第3孔部3H、第4孔部4Hを介して、医療用シース20に滅菌ガスを供給することができる。
【0038】
図1に示す通り、第3フラップ3F、及び第4フラップ4Fは、基材シート10の一方面側10Aにおいて、それぞれ上側すなわち手前側に向かって起立しており、各フラップの下側すなわち奥側に第3孔部3H、及び第4孔部4Hがそれぞれ形成されていることが好ましい。
図1に示す通り、第3フラップ3F、及び第4フラップ4Fは、それぞれ医療器具30を上側から抑えつけるようにして医療器具30を支持していることが好ましい。
【0039】
第3フラップ3Fは、第1フラップ1Fよりも医療器具30の近位側を支持していることが好ましい。更に、第4フラップ4Fは、第3フラップ3Fよりも医療器具30の近位側を支持していることが好ましい。更に第3フラップ3Fは、医療用シース20側から医療器具30に向かって延在していることが好ましい。更に第4フラップ4Fは、医療用シース20とは反対側から医療器具30に向かって延在していることが好ましい。これにより、医療器具30が幅方向に動き難くなる。
【0040】
第1フラップ1F、第3フラップ3F、及び第4フラップ4Fは、医療器具30の筒状部30Tを支持し、且つ第2フラップ2Fは、医療器具30の近位端部を支持することが好ましい。これにより、医療器具30が長手方向30Xと幅方向に動き難くなる。
【0041】
第2切込み2S、第3切込み3S、第4切込み4Sの形状は、それぞれ、U字型、V字型、コの字型、またはS字型であることが好ましく、U字型またはコの字型であることがより好ましく、U字型であることが更に好ましい。
【0042】
第2フラップ2F、第3フラップ3F、第4フラップ4Fの外縁の形状は、それぞれ、U字形、V字形、コの字形、またはS字形であることが好ましく、U字形またはコの字形であることがより好ましく、U字形であることが更に好ましい。これにより、フラップは医療器具30を支持し易くなる。
【0043】
第2孔部2H、第3孔部3H、第4孔部4Hの外縁の形状は、それぞれ半円形、半楕円形、三角形、四角形、またはこれらの組合わせ形状であることが好ましい。
【0044】
第2孔部2H、第3孔部3H、第4孔部4Hの短径の長さは、それぞれ、医療用シース20の外径よりも大きいことが好ましい。これにより、滅菌ガスが各孔部を通過し易くなって、医療用シース20に滅菌ガスを供給し易くすることができる。そのため、当該短径の長さは、医療用シース20の外径の2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましい。一方、当該短径の長さが、医療用シース20の外径の30倍以下であることにより、基材シート10の強度が向上する。そのため、当該短径の長さは、医療用シース20の外径の30倍以下であることが好ましく、20倍以下であることがより好ましい。
【0045】
第2孔部2H、第3孔部3H、第4孔部4Hの短径の長さは、それぞれ、医療器具30の外径よりも大きいことが好ましい。これにより、各孔部の形状に対応する形状を有する各フラップが医療器具30を支持し易くなると共に、滅菌ガスが各孔部を通過し易くなる。そのため、各孔部の短径の長さは、医療器具30の外径の1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましい。一方、各孔部の短径の長さが、医療器具30の外径の4倍以下であることにより、基材シート10の強度が向上する。そのため、各孔部の短径の長さは、医療器具30の外径の4倍以下であることが好ましく、2倍以下であることがより好ましい。
【0046】
図4に示す通り、基材シート10は、更に、第5切込み5Sと、幅方向において第5切込み5Sと対向する第6切込み6Sとを有していることが好ましい。基材シート10は、更に、第5切込み5Sの両端を除く1点と、第6切込み6Sの両端を除く1点とを通る第7切込み7Sを有していることが好ましい。
【0047】
第5切込み5Sと第6切込み6Sと第7切込み7Sにより、第5フラップ5Fと第6フラップ6Fとを形成することができる。第5フラップ5Fと第6フラップ6Fを起立させて医療用シース20の内腔20Lに配置することにより、医療用シース20を内腔20L側から保持することができる。これにより医療用シース20は変形し難くなる。
【0048】
基材シート10は、第5フラップ5Fの起立により形成された第5孔部と、第6フラップ6Fの起立により形成された第6孔部とを有していることが好ましい。これにより、第5孔部と第6孔部から医療用シース20に滅菌ガスを供給することができる。
図2に示す態様では第5孔部5Hと第6孔部6Hとが連結して一つの孔部を形成しているが、第5孔部5Hと第6孔部6Hは分離して独立して存在していてもよい。
【0049】
図4に示す通り、第5切込み5Sは、直線状に延在している直線状部5S0を有していることが好ましい。更に第6切込み6Sは、直線状に延在している直線状部6S0を有していることが好ましい。直線状部5S0の延在方向と、直線状部6S0の延在方向は平行であることが好ましい。これにより、第5フラップ5F等により医療用シース20の内腔20L側を支持し易くなる。平行とは、各延在方向のなす角度が5度以下であることを意味する。当該角度は、より好ましくは3度以下、更に好ましくは2度以下、最も好ましくは0度である。
【0050】
図4に示す通り、第5切込み5Sは、直線状部5S0の一端部に隣接する第1傾斜部5S1と、直線状部5S0の他端部に隣接する第2傾斜部5S2とを有していることが好ましい。更に、第6切込み6Sは、直線状部6S0の一端部に隣接する第1傾斜部6S1と、直線状部6S0の他端部に隣接する第2傾斜部6S2とを有していることが好ましい。第1傾斜部5S1と第1傾斜部6S1は、直線状部5S0の一端部と直線状部6S0の一端部から互いに離れる方向に向かって延在していることが好ましい。第2傾斜部5S2と第2傾斜部6S2は、直線状部5S0の他端部と直線状部6S0の他端部から互いに離れる方向に向かって延在していることが好ましい。当該構成により、第5フラップ5Fと第6フラップ6Fの基端部を例えばテーパ状にすることができる。このような形状の第5フラップ5Fと第6フラップ6Fの基端部によって、固定に伴う医療用シース20の両端部にかかる力を緩和することができるため、医療用シース20の両端部が傷付き難くなる。またこれにより、医療用シース20が軸方向20Xに移動し難くなる。
【0051】
第1傾斜部5S1、第2傾斜部5S2、第1傾斜部6S1、及び第2傾斜部6S2は、それぞれ直線状であることが好ましいが、弧状、波状等の非直線状であってもよい。
【0052】
直線状部5S0に対する第1傾斜部5S1と第2傾斜部5S2との傾斜角度は、それぞれ1度以上であることが好ましく、3度以上であることがより好ましく、5度以上であることが更に好ましい。これにより、医療用シース20の端部が傷付き難くなると共に、医療用シース20が軸方向20Xに移動し難くなる。一方、傾斜角度は90度以下であることが好ましく、45度以下であることがより好ましく、30度以下であることが更に好ましい。これにより医療用シース20を着脱し易くすることができる。当該傾斜角度は、第1傾斜部5S1の場合、第1傾斜部5S1の両端を結ぶ仮想線分の、直線状部5S0の両端を結ぶ仮想線分に対する傾斜角度である。以下、傾斜角度について同様である。
【0053】
直線状部6S0に対する第1傾斜部6S1と第2傾斜部6S2との傾斜角度は、それぞれ1度以上であることが好ましく、3度以上であることがより好ましく、5度以上であることが更に好ましい。これにより、医療用シース20の端部が傷付き難くなると共に、医療用シース20が軸方向20Xに移動し難くなる。一方、傾斜角度は90度以下であることが好ましく、45度以下であることがより好ましく、30度以下であることが更に好ましい。これにより医療用シース20を着脱し易くすることができる。
【0054】
第7切込み7Sは、直線状に延在していることが好ましい。これにより、基材シート10を製造し易くなるためコストを低減することができる。
【0055】
基材シート10は、第5切込み5S、第6切込み6S、及び第7切込み7Sのうち第5切込み5Sのみ有していてもよく、第5切込み5Sと第6切込み6Sのみ有していてもよい。この場合、医療用シース20は、例えば
図5に示すように、軸方向20Xに延在する切込み20Sを有することが好ましい。医療用シース20の切込み20Sから内腔20L内に第5切込み5Sの切込み縁等を挿入することにより、医療用シース20の内腔20L側を支持できるため医療用シース20が変形し難くなる。また、第5切込み5Sと第6切込み6Sにより橋部を形成して、医療用シース20の切込み20Sから内腔20L内に橋部を挿入することにより、医療用シース20の内腔20L側を支持してもよい。第5切込み5Sと第6切込み6Sの形状は、それぞれ、U字型、V字型、コの字型、またはS字型であってもよい。この場合、第5切込み5Sにより形成されるフラップの外縁の形状は、U字形、V字形、コの字形、またはS字形であってもよい。また、第6切込み6Sにより形成されるフラップの外縁の形状は、U字形、V字形、コの字形、またはS字形であってもよい。また、例えば第3フラップ3F、第4フラップ4Fのように、第5切込み5Sのみにより形成されるフラップと、第6切込み6Sのみにより形成されるフラップをそれぞれ起立させて、医療用シース20を上側から抑えつけるようにして医療用シース20を支持してもよい。
【0056】
また、医療用シース20は、必ずしも基材シート10の切込みにより形成されたフラップ、橋部、切込み縁等により着脱可能に基材シート10に固定されている必要は無い。例えば、基材シート10が、少なくとも一端部が基材シート10に固定されている固定部材を有し、当該固定部材を介して医療用シース20が着脱可能に基材シート10に固定されていてもよい。例えば、固定部材のうち、基材シート10に固定されていない非固定部の少なくとも一部を医療用シース20の内腔20Lに挿入することにより、医療用シース20を着脱可能に基材シート10に固定することができる。固定部材は、シート状または棒状であることが好ましく、シート状であることがより好ましい。シート状であることにより、医療用シース20の内腔20L側を支持しつつ、加熱滅菌ガス等の滅菌ガスを内腔20Lに供給し易くすることができる。固定部材は、上述した樹脂層および/または紙層で挙げた成分を含んでいることが好ましい。基材シート10は、2つ以上の固定部材を有していてもよい。
【0057】
図1に示す通り、医療用シース20の軸方向20Xにおける一端から第1孔部1Hまでの最短距離は、医療用シース20の軸方向20Xの長さの2分の1以下であることが好ましい。これにより、医療用シース20に第1孔部1Hから滅菌ガスを供給し易くすることができる。当該最短距離は、医療用シース20の軸方向20Xの長さの3分の1以下であることがより好ましい。一方、当該最短距離は、医療用シース20の軸方向20Xの長さの10分の1以上であることがより好ましい。これにより、医療器具30の取り外しの際に、意図していないタイミングでの医療用シース20の脱落を防止し易くすることができる。
【0058】
医療用シース20は、医療器具30よりも基材シート10の図心10Cから離れた位置に配置されていることが好ましい。第1孔部1H等を通過した滅菌ガスは、包装袋40内における対流により、包装袋40の中心よりも外縁近傍の領域に移動し易いため、医療用シース20が図心10Cから離れた位置に配置されていることにより滅菌され易くなる。
【0059】
医療用シース20の軸方向20Xと医療器具30の長手方向30Xとのなす角度が20度以下であることが好ましい。これにより、第1孔部1Hと第2孔部2Hとが、医療用シース20の両端に近づき易くなるため、効率的に医療用シース20に第1孔部1H等から滅菌ガスを供給することができる。当該角度は、より好ましくは10度以下、更に好ましくは5度以下、更により好ましくは1度以下、最も好ましくは0度である。
【0060】
医療用シース20は、軸方向20Xに延在するチューブであることが好ましい。医療用シース20は、例えばバルーンカテーテル、マイクロカテーテル、貫通用カテーテル等の処置用のカテーテルを、先に体内に挿入されたガイディングカテーテルへ挿入しやすくするために用いるものであることが好ましい。医療用シース20の軸方向20Xの長さは、4cm以上、40cm以下であることが好ましく、6cm以上、20cm以下であることがより好ましく、8cm以上、18cm以下であることが更に好ましい。医療用シース20の内径は、0.2mm以上、4.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以上、2.5mm以下であることがより好ましく、1.0mm以上、2.0mm以下であることが更に好ましい。医療用シース20の外径は、内径の1.01倍以上、2.00倍以下であることが好ましく、1.02倍以上、1.50倍以下であることがより好ましく、1.05倍以上、1.20倍以下であることが更に好ましい。
【0061】
図5に示す通り、医療用シース20は、軸方向20Xに延在する切込み20Sを有することが好ましい。治療部位によっては、バルーンカテーテル等の処置用のカテーテルを体内に挿入する際に、ガイディングカテーテルの近位端部にシースの遠位部を挿入し、当該シースを介してガイディングカテーテル内に処置用のカテーテルを挿入する場合がある。このような場合、当該挿入後にシースを処置用のカテーテルから外す必要があるが、医療用シース20が切込み20Sを有していることにより、切込み20Sを開けて医療用シース20を外すことができる。更にこれにより、医療用シース20をシート10に着脱し易くすることができる。
【0062】
図5に示す通り、医療用シース20は、遠位端から近位端に向かって広がる開口20Oと外側面とを近位端部に有することが好ましい。当該構成はいわゆるフレア形状と呼ばれる形状であり、開口20Oからバルーンカテーテル等の処置用のカテーテルを容易に挿入することができる。
【0063】
医療用シース20は、樹脂を含むことが好ましく、樹脂からなることがより好ましい。樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン等の芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素樹脂等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく、2種類以上、併用して用いてもよい。医療用シース20の軸方向20Xと垂直な方向における医療用シース20の断面の外縁の形状としては、円形または楕円形が好ましく、円形がより好ましい。また医療用シース20の軸方向20Xと垂直な方向における医療用シース20の断面の内腔20Lの外縁の形状としては、円形または楕円形が好ましく、円形がより好ましい。
【0064】
長手方向30Xを有する医療器具30は、シリンジ、ダイレータ、またはトルクデバイスであることが好ましく、シリンジであることがより好ましい。シリンジは、外筒、及び少なくとも先端部が外筒の内部に配置された押子を有することが好ましい。更に押子の先端部にはガスケットが設けられていることが好ましい。更に、外筒は、本体部と、本体部の遠位端に連結し外径が本体部の外径よりも小さい筒先部とを有していることが好ましい。
【0065】
医療器具30は筒状部30Tを有し、筒状部30Tの外径は、医療用シース20の外径よりも大きいことが好ましい。これにより、医療器具セット101を積み重ねたときに医療用シース20が圧縮され難くなる。なお、医療器具30がシリンジの場合、筒状部30Tはシリンジの外筒の本体部に相当する。
【0066】
医療器具30の長手方向30Xの長さは、医療用シース20の軸方向20Xの長さの0.6倍以上、1.5倍以下であることが好ましく、0.8倍以上、1.3倍以下であることがより好ましく、0.9倍以上、1.2倍以下であることが更に好ましい。これにより、第1孔部1Hと第2孔部2Hとが、医療用シース20の両端に近づき易くなるため、効率的に医療用シース20に第1孔部1H等から滅菌ガスを供給することができる。
【0067】
包装袋40は、上述の通り、基材シート10、医療用シース20、及び医療器具30を内包している。包装袋40は、下層41と上層42を有していることが好ましい。下層41と上層42の外縁は互いに接合していることが好ましく、全周にわたって接合していることがより好ましい。これにより、滅菌後における医療用シース20等の滅菌状態を維持し易くなる。
【0068】
上層42は、樹脂フィルムを含むことが好ましく、樹脂フィルムからなることが好ましい。樹脂フィルムは、ポリエチレン層、ポリプロピレン層、エチレン・酢酸ビニル層、ポリエチレンテレフタレート層、ポリアミド層、塩化ビニル層、ポリウレタン層、ポリスチレン層、またはこれらの積層体を含んでいることが好ましく、ポリエチレン層、ポリプロピレン層、エチレン・酢酸ビニル層、ポリエチレンテレフタレート層、またはこれらの積層体を含んでいることがより好ましい。
【0069】
下層41は、不織布、紙層、またはこれらの積層体を含むことが好ましく、不織布または紙層を含むことがより好ましく、不織布または紙層からなることが更に好ましい。これにより下層41は通気性を発揮することができる。不織布は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエルテル、またはこれらの混合物を含んでいることが好ましい。紙層は、アンコート紙、和紙、またはこれらの積層体を含んでいることが好ましい。不織布および/または紙層は、穴あきの樹脂フィルムが積層されていてもよい。
【0070】
下層41と上層42は、接合部43において、ヒートシール性樹脂により接合されていてもよく、接着剤により接合されていてもよい。
【0071】
包装袋40は、上述の通り、基材シート10の一方面側10Aとは反対側の他方面側10Bと対向する位置に通気部40Vを有している。通気部40Vより包装袋40内に滅菌ガスを供給することができる。
【0072】
図1、
図2、及び
図3の態様では、包装袋40の下層41が不織布により形成されており、下層41の接合部43以外の部分が通気部40Vに相当する。包装袋40の下層41のうち通気部4の面積率は、50面積%以上であることが好ましく、70面積%以上であることがより好ましく、90面積%以上であることが更により好ましい。一方、当該面積率は、100面積%以下であってもよく、95面積%以下であってもよい。
【0073】
上述の通り、医療器具セット101は、積み重ねて滅菌処理することができる。当該滅菌としては、高圧蒸気滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌が挙げられる。
【0074】
第2の実施の形態に係る医療器具について説明する。
図6は、第2の実施の形態に係る医療器具セットの一方面側の平面図である。
図7は、第2の実施の形態に係る医療器具セットの他方面側の平面図である。
図8は、
図6の各部材を配置する前の基材シートの平面図である。なお、第2の実施の形態に係る医療器具セットについて、第1の実施の形態に係る医療器具セットと重複する部分の詳細な説明は省略する。
【0075】
図6、
図7に示すように第2の実施の形態に係る医療器具セット102は、基材シート10と、基材シート10の一方面側10Aに着脱可能に固定された軸方向20Xを有する医療用シース20と、基材シート10の一方面側10Aに着脱可能に固定された長手方向30Xを有する医療器具30と、基材シート10、医療用シース20、及び医療器具30を内包する包装袋40とを有している。
【0076】
医療器具セット102は、更に、医療用長尺体50と、医療用長尺体50の少なくとも一部が内部に配置された保護管60とを有し、保護管60は巻回された状態で、基材シート10の一方面側10Aに着脱可能に固定されており、巻回された保護管60より内側に医療用シース20と医療器具30が配置されていることが好ましい。医療器具セット102を積み重ねた場合であっても、巻回された保護管60により、医療用シース20が保護されて変形し難くなる。
【0077】
保護管60の厚さ方向の断面の外縁の形状としては、円形、楕円形、多角形、角丸多角形、またはこれらの組み合わせ形状が好ましく、円形、楕円形、または角丸多角形がより好ましく、円形または楕円形が更に好ましく、円形が更により好ましい。保護管60の厚さ方向の断面の内腔の外縁の形状としては、円形、楕円形、多角形、角丸多角形、またはこれらの組み合わせ形状が好ましく、円形、楕円形、または角丸多角形がより好ましく、円形または楕円形が更に好ましく、円形が更により好ましい。保護管60は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、またはこれらの混合物を含んでいてもよい。
【0078】
保護管60の外径は、医療用シース20の外径より大きいことが好ましい。これにより、複数の医療器具セット102を積み重ねたときに医療用シース20が変形し難くなる。なおこれらの外形は厚さ方向における外径である。
【0079】
医療用長尺体50は、バルーンカテーテル、マイクロカテーテル、または貫通用カテーテルであることが好ましく、バルーンカテーテルであることがより好ましい。また医療用長尺体50は近位端部にハンドル部を有していることが好ましい。保護管60は、医療用長尺体50の少なくとも一部を内部に配置できるものであればよい。保護管60は、巻回された状態で複数のクリップにより、その形状が固定されていることが好ましい。
【0080】
基材シート10は、一対の切込み8Sにより形成された一対のフラップ8Fと、一対のフラップ8Fの起立により形成された一対の孔部8Hとを有し、一対のフラップ8Fは保護管60を着脱可能に固定していることが好ましい。基材シート10が一対の孔部8Hを有していることにより、孔部8Hから医療用シース20に滅菌ガスを供給することができる。
【0081】
一対のフラップ8Fの各中心を結ぶ仮想直線と、医療用シース20の軸方向20Xとのなす角度が10度以下であることが好ましい。これにより、一対の孔部8Hが、医療用シース20の両端に近づき易くなるため、効率的に医療用シース20に一対の孔部8Hとから滅菌ガスを供給することができる。
【0082】
医療用シース20は、一対の切込み8Sのうちの一方の切込み8S1から他方の切込み8S2に至るまでの領域8Rの外側に位置していることが好ましい。領域8Rは、保護管60を着脱するときに変形し易い領域であるため、当該領域8Rの外側の領域に医療用シース20を配置することにより、意図していないタイミングでの医療用シース20の脱離を防止し易くすることができる。また逆に、医療用シース20を着脱するときに意図していないタイミングでの保護管60の脱離を防止し易くすることができる。
【0083】
一対のフラップ8Fは、それぞれ、基材シート10の外側に向かう方向に延在していることが好ましい。これにより、各フラップ8Fは巻回された保護管60を保持し易くなる。
【0084】
基材シート10の外縁において、
図6、
図8に示すように各頂点T1、T2、T3、T4のうち他の頂点T2、T3、T4よりも図心10Cに近い側に位置する頂点T1が存在していてもよい。これにより、頂点T1に隣接する包装袋40の接合部43の領域を広く確保することができるため、当該領域から包装袋40を開封し易くすることができる。
【0085】
図示していないが、医療器具セット101、102は、それぞれ、基材シート10の一方面側10Aの着脱可能に固定された他の部材を有していてもよい。他の部材は、基材シート10の一方側10Jの領域に着脱可能に固定されていることが好ましい。他の部材として、マンドレル、ガイドワイヤ、針、ダイレータ、リラッパー、トルカー、活栓、アダプター等が挙げられる。基材シート10は、他の切込みと、他の切込みにより形成された他のフラップと、他のフラップの起立により形成された他の孔部とを有していてもよい。他の部材は、他のフラップにより支持されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0086】
1F 第1フラップ
1H 第1孔部
1P 貫通孔
1S 第1切込み
2F 第2フラップ
2S 第2切込み
3F 第3フラップ
2H 第2孔部
3S 第3切込み
4F 第4フラップ
4S 第4切込み
5F 第5フラップ
5H 第5孔部
5S 第5切込み
5S0 直線状部
5S1 第1傾斜部
5S2 第2傾斜部
6F 第6フラップ
6H 第6孔部
6S 第6切込み
6S0 直線状部
6S1 第1傾斜部
6S2 第2傾斜部
7S 第7切込み
8F 一対のフラップ
8H 一対の孔部
8R 領域
8S 一対の切込み
8S1 一方の切込み
8S2 他方の切込み
10 基材シート
10A 一方面側
10B 他方面側
10C 図心
10D 仮想直線
10J 一方側の領域
10K 他方側の領域
10L 長径
10M 短径
20 医療用シース
20L 内腔
20O 開口
20S 切込み
20X 軸方向
30 医療器具
30T 筒状部
30X 長手方向
40 包装袋
40V 通気部
41 下層
42 上層
43 接合部
50 医療用長尺体
60 保護管
101、102 医療器具セット