(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172207
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】光ファイバ敷設構造及び光ファイバ敷設構造の修理方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/50 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
G02B6/50 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083859
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 進太郎
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 直樹
(72)【発明者】
【氏名】平 陽兵
(72)【発明者】
【氏名】玉野 慶吾
(72)【発明者】
【氏名】十川 貴行
【テーマコード(参考)】
2H038
【Fターム(参考)】
2H038AA05
2H038AA07
2H038CA34
2H038CA37
2H038CA68
(57)【要約】
【課題】光ファイバの断線によるリスクを低減する光ファイバ敷設構造及び光ファイバ敷設構造の修理方法を提供する。
【解決手段】ボックスカルバート1に光ファイバケーブル11を敷設する光ファイバ敷設構造10は、光ファイバケーブル11がボックスカルバート1の側壁7の内部を通過する区間である複数の内部通過区間13と、内部通過区間13同士の間の区間であり光ファイバケーブル11がボックスカルバート1の側壁7の外部を通過する区間である複数の外部通過区間15と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体に光ファイバを敷設する光ファイバ敷設構造であって、
前記光ファイバが前記躯体の内部を通過する区間である複数の内部通過区間と、
前記内部通過区間同士の間の区間であり前記光ファイバが前記躯体の外部を通過する区間である複数の外部通過区間と、を備える、光ファイバ敷設構造。
【請求項2】
前記躯体は、前記光ファイバの一部をなす単位光ファイバを含み前記光ファイバの敷設方向に連結される複数の単位躯体部を有し、
前記単位光ファイバは、
前記内部通過区間に対応する位置で前記単位躯体部の内部に埋設されるとともに、両端部が前記内部通過区間と前記外部通過区間との境界に対応する位置から前記単位躯体部の外部に引き出され、
前記外部通過区間のうちの少なくとも一部は、
互いに隣接する前記単位躯体部の前記単位光ファイバの端部同士を接続する光ファイバ接続部を有する、請求項1に記載の光ファイバ敷設構造。
【請求項3】
前記外部通過区間のうちの他の一部は、
他の前記単位躯体部を互いの間に挟んで配置された前記単位躯体部の前記単位光ファイバの端部同士を接続するスキップ接続部を有する、請求項2に記載の光ファイバ敷設構造。
【請求項4】
前記内部通過区間と前記外部通過区間との境界部において前記光ファイバを保護する光ファイバ保護部を備える、請求項1~3の何れか1項に記載の光ファイバ敷設構造。
【請求項5】
前記内部通過区間と前記外部通過区間との境界部に設けられ前記躯体の内部から前記躯体の外部に前記光ファイバを引き出すための箱抜き部を備える、請求項1~3の何れか1項に記載の光ファイバ敷設構造。
【請求項6】
前記光ファイバに断線箇所が発生した際に請求項2に記載の光ファイバ敷設構造を修理する光ファイバ敷設構造の方法であって、
前記断線箇所を間に挟む2つの外部通過区間において前記断線箇所を含む前記単位光ファイバを前記光ファイバから切り離し、
前記単位光ファイバが切り離された前記光ファイバの切り離し部同士を、新たな迂回用光ファイバを介して接続する、光ファイバ敷設構造の修理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ敷設構造及び光ファイバ敷設構造の修理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート躯体に埋込まれた光ファイバにレーザーパルス光を入射し散乱光を観測し分析することで、コンクリート躯体のひずみ分布や温度分布を計測する技術が知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。この種のコンクリート躯体の構築の際には、コンクリート型枠内に光ファイバケーブルが予め配線され、コンクリートが打設されることで、光ファイバケーブルとコンクリート躯体とが一体化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光ファイバケーブルは細く、折れやすく、接触に弱い材料であるため、型枠内の鉄筋組立時に鉄筋に接触したり、コンクリート打設時に打設圧(コンクリート骨材との接触を含む)を受けたり、締固め時にバイブレータに接触したりすることで、断線が生じる虞がある。コンクリート躯体のある箇所で光ファイバケーブルの断線が生じた場合には、計測装置からみて断線箇所以降の箇所の計測は出来なくなる。例えば、計測装置に近い位置で断線が発生すれば、計測対象区間の大部分が計測不可能となる。また、コンクリート打設中に型枠内で光ファイバケーブルが断線した場合には復旧はほぼ不可能であり、また,鉄筋・型枠の組立て中に復旧する場合であっても、断線箇所によっては大きな手戻りが発生してしまう。このように光ファイバによる計測手法は、光ファイバ全長に亘って分布的にひずみや温度を計測できる一方で、光ファイバの断線に対するリスクが大きい。この課題に鑑み、本発明は、光ファイバの断線によるリスクを低減する光ファイバ敷設構造及び光ファイバ敷設構造の修理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の要旨は以下の〔1〕~〔6〕の通りである。
【0006】
〔1〕躯体に光ファイバを敷設する光ファイバ敷設構造であって、前記光ファイバが前記躯体の内部を通過する区間である複数の内部通過区間と、前記内部通過区間同士の間の区間であり前記光ファイバが前記躯体の外部を通過する区間である複数の外部通過区間と、を備える、光ファイバ敷設構造。
【0007】
〔2〕前記躯体は、前記光ファイバの一部をなす単位光ファイバを含み前記光ファイバの敷設方向に連結される複数の単位躯体部を有し、前記単位光ファイバは、前記内部通過区間に対応する位置で前記単位躯体部の内部に埋設されるとともに、両端部が前記内部通過区間と前記外部通過区間との境界に対応する位置から前記単位躯体部の外部に引き出され、前記外部通過区間のうちの少なくとも一部は、互いに隣接する前記単位躯体部の前記単位光ファイバの端部同士を接続する光ファイバ接続部を有する、〔1〕に記載の光ファイバ敷設構造。
【0008】
〔3〕前記外部通過区間のうちの他の一部は、他の前記単位躯体部を互いの間に挟んで配置された前記単位躯体部の前記単位光ファイバの端部同士を接続するスキップ接続部を有する、〔2〕に記載の光ファイバ敷設構造。
【0009】
〔4〕前記内部通過区間と前記外部通過区間との境界部において前記光ファイバを保護する光ファイバ保護部を備える、〔1〕~〔3〕の何れか1項に記載の光ファイバ敷設構造。
【0010】
〔5〕前記内部通過区間と前記外部通過区間との境界部に設けられ前記躯体の内部から前記躯体の外部に前記光ファイバを引き出すための箱抜き部を備える、〔1〕~〔3〕の何れか1項に記載の光ファイバ敷設構造。
【0011】
〔6〕前記光ファイバに断線箇所が発生した際に〔2〕に記載の光ファイバ敷設構造を修理する光ファイバ敷設構造の方法であって、前記断線箇所を間に挟む2つの外部通過区間において前記断線箇所を含む前記単位光ファイバを前記光ファイバから切り離し、前記単位光ファイバが切り離された前記光ファイバの切り離し部同士を、新たな迂回用光ファイバを介して接続する、光ファイバ敷設構造の修理方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光ファイバの断線によるリスクを低減する光ファイバ敷設構造及び光ファイバ敷設構造の修理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る光ファイバ敷設構造が適用されるボックスカルバートの一例を示す斜視図である。
【
図2】ボックスカルバートの側壁を、ボックスカルバートの内側から見た状態を模式的に示す正面図である。
【
図3】(a)は、光ファイバ引出部近傍を示す側壁の破断斜視図である。(b)は、光ファイバ引出部の箱体近傍を示す断面図であり、(c)はその箱体のIIIc-IIIc断面図である。
【
図4】(a)は、断線が発生した光ファイバ敷設構造を示す図であり、(b)は、修理後の光ファイバ敷設構造を示す図である。
【
図5】(a)は、変形例に係る光ファイバ引出部近傍を示す側壁の破断斜視図である。(b)は、他の変形例に係る光ファイバ引出部近傍を示す側壁の断面図である。
【
図6】(a)は、変形例に係る光ファイバ敷設構造を示す側壁の破断斜視図である。(b)は、他の変形例に係る光ファイバ敷設構造を示す側壁の破断斜視図である。
【
図7】更に他の変形例に係る光ファイバ敷設構造を示す側壁の破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明に係る光ファイバ敷設構造及び光ファイバ敷設構造の修理方法の実施形態について詳細に説明する。互いに同一又は同等の構成要素には図面上で同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0015】
本実施形態の光ファイバ敷設構造は、例えば、ボックスカルバート、橋脚、桁、ケーソン等の種々のコンクリート躯体に適用することができる。以下においては、
図1に示されるボックスカルバート1に光ファイバケーブル11を敷設する敷設構造を例として説明する。ボックスカルバート1は、単位ブロック3(単位躯体部)ごとに施工されるものであり、当該ボックスカルバート1の長手方向(図中の矢印A方向)に連結される複数の単位ブロック3で構成される。本実施形態の光ファイバ敷設構造では、当該ボックスカルバート1の長手方向にほぼ全長に亘って光ファイバケーブル11が敷設される。
【0016】
図1に示されるように、光ファイバケーブル11は、ボックスカルバート1の1つの側壁7の下部の位置に配置されている。ここで光ファイバケーブル11とは、例えば0.9mm径の光ファイバ心線であってもよいし、束ねられた複数の光ファイバ心線を含むような狭義の光ファイバケーブルであってもよい。
【0017】
ボックスカルバート1に敷設された光ファイバケーブル11の端部には、計測装置5が接続される。この計測装置5は、光ファイバケーブル11の光ファイバ素線にレーザーパルス光を入射するとともに、光ファイバ素線の長手方向の各位置から戻ってくる散乱光を受光する。そして計測装置では、上記の散乱光の強度や波長が、光ファイバ素線に加わったひずみや温度変化に依存するとの原理に基づいて、光ファイバケーブル11の長手方向の各位置のひずみ、各位置の温度が取得され、ひいては、ボックスカルバート1における長手方向のひずみ分布や温度分布が取得される。
【0018】
図2は、ボックスカルバート1のうち光ファイバケーブル11が敷設された側壁7を、当該ボックスカルバート1の内側から見た状態を模式的に示す正面図である。ボックスカルバート1の長手方向Aが
図2の左右方向に対応する。以下において「右側/左側」、「右方/左方」等の語を説明に用いる場合には
図2の左右に対応させるものとする。
【0019】
ボックスカルバート1における光ファイバ敷設構造10は、光ファイバケーブル11が側壁7の内部を通過する複数の内部通過区間13と、内部通過区間13同士の間の区間であり光ファイバケーブル11が側壁7の外部を通過する複数の外部通過区間15と、を備えている。内部通過区間13と外部通過区間15とはボックスカルバート1の長手方向に交互に並んでいる。
【0020】
内部通過区間13は、光ファイバケーブル11が側壁7内に埋設され当該側壁7に一体化されている区間である。内部通過区間13は、ボックスカルバート1の各単位ブロック3に1つずつ設定されている。外部通過区間15の光ファイバケーブル11は、側壁面7aを通じて側壁7の外部に引き出され、ボックスカルバート1の中空部内に存在している。なお、外部通過区間15の光ファイバケーブル11は、側壁面7aに接着剤で貼着されるか、または、フレキシブルステンレス管などの保護管や所定のボックス等で覆われることにより保護されていてもよい。
【0021】
各単位ブロック3の側壁7には、光ファイバケーブル11の一部をなす単位光ファイバケーブル21が設置されている。各単位ブロック3の側壁7の右端部及び左端部には、それぞれ単位光ファイバケーブル21を側壁7の内部から外部に引き出すための光ファイバ引出部23が設けられている。単位光ファイバケーブル21の大部分は側壁7の内部に埋設されており、この単位光ファイバケーブル21の両端部27,27は、それぞれ光ファイバ引出部23を通じて側壁面7a側から側壁7の外部に引き出され、ボックスカルバート1の中空部内に存在している。互いに隣接する単位ブロック3の単位光ファイバケーブル21の端部27同士は、光ファイバ接続部25で接続されている。光ファイバ接続部25では、上記の単位光ファイバケーブル21の端部同士が融着接続又はコネクタ接続によって接続されている。
【0022】
1つの単位ブロック3における左右の光ファイバ引出部23同士の間の区間が内部通過区間13に対応する。また、1つの単位ブロック3における右端部の光ファイバ引出部23と、隣接する単位ブロック3における左端部の光ファイバ引出部23と、の間の区間が外部通過区間15に対応し、外部通過区間15には光ファイバ接続部25が含まれている。そして、内部通過区間13と外部通過区間15との境界の位置に光ファイバ引出部23が存在している。光ファイバケーブル11は、光ファイバ接続部25を介して直列接続された複数の単位光ファイバケーブル21によって構成される。
【0023】
このボックスカルバート1の施工方法においては、既設の単位ブロック3に隣接して新たな単位ブロック3が構築され、新たな単位ブロック3の単位光ファイバケーブル21の端部27が、既設の単位ブロック3の単位光ファイバケーブル21の端部27に対して接続されて光ファイバ接続部25が構成される、といった手順が繰り返される。光ファイバ引出部23は、単位光ファイバケーブル21同士の接続処理の作業性を高めるために、ボックスカルバート1の内部から作業者がアクセスし易い位置に配置されることが好ましい。
【0024】
続いて、光ファイバ引出部23の詳細について説明する。
図3(a)は光ファイバ引出部23近傍を示す側壁7の破断斜視図である。
図3(b)は光ファイバ引出部23の箱体24近傍を示す側面図であり、
図3(c)はその箱体24のIIIc-IIIc断面図である。図に示されるように、光ファイバ引出部23は、側壁7に埋め込まれた箱体24を含む箱抜き部として形成されている。箱体24は、例えば10cm×10cm×2cm程度の大きさの略直方体をなす中空構造の箱体であり、内部に単位光ファイバケーブル21を通過させる。なお、このような箱抜き部は側壁7の断面欠損となるので、光ファイバ引出部23は、側壁7の中でも構造上の耐荷力や耐変形性能への影響が小さい部位(例えば中立軸近傍)に設置されることが好ましい。
【0025】
2つの光ファイバ引出部23,23を有する単位ブロック3(
図2)が構築される際には、コンクリート型枠内で光ファイバ引出部23,23に対応する位置に上記の箱体24,24が設置される。更に、単位光ファイバケーブル21が、側壁7内における埋込予定位置に設置される。そして、単位光ファイバケーブル21の両端部27,27が、それぞれ箱体24,24の内部を通過し、更にコンクリート型枠を貫通して当該コンクリート型枠外に引き出されるように設置される。このように設置された箱体24,24及び単位光ファイバケーブル21を埋め込むように、コンクリート型枠内にコンクリートが打設される。
【0026】
箱体24は、コンクリート内に埋め込まれるとともにその一部がコンクリート表面に表出するので、箱体24の材料は、耐アルカリ性や耐候性に優れる材料であることが好ましい。この観点から、箱体24の材料として、例えばASA樹脂(Acrylate Sthrene Acrylonitrile)が採用される。また、コンクリートは自己収縮や乾燥収縮などにより収縮するので、箱体24のうちコンクリート内に埋め込まれる部分の表面の材料には、コンクリートの変形を吸収できるように、伸縮性の材料(例えばウレタン)が採用されることが好ましい。また、コンクリートの収縮が箱体24に拘束されてひび割れが発生しにくいように、箱体24の角部が面取りされていることが好ましい。また、箱体24の内部で発生し得る光ファイバケーブル11のねじれ等をコンクリート打設の前に修正可能とするために、箱体24の側壁は、着脱可能なカバー24e(
図3(c))とされることが好ましい。
【0027】
次に、箱体24の構造について説明する。箱体24には、側壁7の内部に位置し側壁7内の単位光ファイバケーブル21を引き込むケーブル引込口24aと、側壁面7aに露出するように位置し単位光ファイバケーブル21を側壁7の外部に引き出すケーブル引出口24bと、を備えている。箱体24の内部には、ケーブル引込口24aとケーブル引出口24bとの間で単位光ファイバケーブル21を通過させる円形のケーブル通過空間24cが形成されている。そして、ケーブル通過空間24c内には、当該ケーブル通過空間24cよりも小径の円形をなすケーブル巻回部24dが形成されている。ケーブル巻回部24dは、ケーブル通過空間24cに対してケーブル引込口24a及びケーブル引出口24b側に偏心して位置している。
【0028】
光ファイバ引出部23においては、側壁7内の単位光ファイバケーブル21の端部27が、ケーブル引込口24aを通じて箱体24内に引き込まれ、ケーブル巻回部24dの周囲でループ状に360°巻回されてケーブル通過空間24cを通過し、ケーブル引出口24bを通じて側壁7の外部に引き出される。この引出し部分が光ファイバ接続部25まで延びて、当該光ファイバ接続部25において他の単位光ファイバケーブル21の端部27に接続される。
【0029】
ケーブル引出口24bから単位光ファイバケーブル21の端部27を引っ張ると、ケーブル通過空間24cの単位光ファイバケーブル21のループが小さくなりケーブル巻回部24dに巻き付くところまで箱体24から端部27を引き出すことができる。また、この端部27をケーブル引出口24bから押込むと、ケーブル通過空間24cの単位光ファイバケーブル21のループが大きくなりケーブル通過空間24c内で一杯に広がるまで箱体24に端部27を押込むことができる。従って、側壁7から引き出される端部27の長さを調整し、単位光ファイバケーブル21の余長部分を箱体24内に収容することができる。例えば、単位光ファイバケーブル21の端部27を、作業に必要な長さ分だけ引き出して光ファイバ接続部25における接続処理(例えば融着接続処理)を行い、接続処理後は、余長部分を箱体24内に押し戻す、といったことが可能である。
【0030】
また、ケーブル通過空間24c内では、単位光ファイバケーブル21の湾曲の曲率半径がケーブル巻回部24dの半径よりも小さくならない。従って、ケーブル巻回部24dの半径を適切に設定することにより、単位光ファイバケーブル21が小さい曲率半径で湾曲して破損することが回避される。また、ケーブル引出口24bは側壁7の外部に向かうに従って拡径するラッパ状を呈している。従って、ケーブル引出口24bの縁部で単位光ファイバケーブル21が折れ曲がって損傷するといった可能性が低減される。また、ケーブル引出口24bを剛性が低い弾性部材で形成することにより、ケーブル引出口24bにおける単位光ファイバケーブル21の損傷の可能性が更に低減される。
【0031】
また、ケーブル引込口24aには、単位光ファイバケーブル21を保護するための光ファイバ保護部29が設けられている。光ファイバ保護部29では、例えば、ケーブル引込口24aに挿通されたフレキシブルステンレス管に単位光ファイバケーブル21が挿通されることで、単位光ファイバケーブル21の折れ曲がりによる断線が抑制される。また、ケーブル引込口24aとフレキシブルステンレス管との隙間がコーキング材(粘土,パテ,樹脂など)で埋められるとともに、フレキシブルステンレス管の端部において当該フレキシブルステンレス管と単位光ファイバケーブル21との隙間がコーキング材で埋められることでコンクリートが箱体24内部に侵入することが防止される。ここでは、ケーブル引込口24aの位置におけるコンクリート圧を考慮して適切なコーキング剤が採用される。
【0032】
続いて、本発明に係る光ファイバ敷設構造の修理方法の実施形態について説明する。この光ファイバ敷設構造10の光ファイバケーブル11は、例えば、鉄筋・型枠の組立て中やコンクリート打設中に断線する可能性がある。ここで、
図4(a)に示されるように、長手方向Aに並ぶ単位ブロック3A,3B,3C,… に亘って光ファイバケーブル11が敷設され、この光ファイバケーブル11のうち、単位ブロック3B内に埋設された部分に断線箇所31が発生したものとする。この場合、単位ブロック3Aに接続された計測装置5から見て、断線箇所31よりも遠い位置のひずみ分布や温度分布の計測は不可能になってしまう。
【0033】
そこで、光ファイバ敷設構造10の修理方法として、
図4(b)に示されるように、単位ブロック3Bを迂回して光ファイバケーブル11が接続される。具体的には、単位ブロック3Aと単位ブロック3Bとの間の光ファイバ接続部25Bと、単位ブロック3Bと単位ブロック3Cとの間の光ファイバ接続部25Cと、において光ファイバケーブル11の接続が解除され、単位ブロック3Bの単位光ファイバケーブル21が切り離される。ここでは、光ファイバ接続部25B,25Cにおいて光ファイバケーブル11同士が融着接続されている場合は、光ファイバ接続部25B,25C近傍において光ファイバケーブル11が切断されればよい。光ファイバ接続部25B,25Cにおいて光ファイバケーブル11同士がコネクタ接続されている場合は、光ファイバ接続部25B,25Cにおいてコネクタの接続を解除すればよい。そして、これらの光ファイバ接続部25Bと光ファイバ接続部25Cとの間が、新たに準備された迂回用光ファイバケーブル12を介して接続される。これらの接続は、融着接続であってもコネクタ接続であってもよい。修理後の光ファイバ敷設構造10によれば、単位ブロック3Bの断線箇所31を迂回するように光ファイバケーブル11が単位ブロック3A,3C,3D,… に亘って接続されることになる。
【0034】
従って、単位ブロック3Bにおけるひずみ分布や温度分布の計測は不可能になるものの、それ以外の単位ブロックにおけるひずみ分布や温度分布の計測は維持され、計測可能範囲が極端に喪失されることは回避される。すなわち、計測装置5から見て断線箇所31以遠のひずみ分布や温度分布が計測不可能になってしまうといった状態は回避される。ここで、光ファイバ接続部25B,25Cは、光ファイバケーブル11が側壁7の外部を通過する区間である外部通過区間15に属しており、ボックスカルバート1内から比較的容易にアクセス可能であるので、上記のような修理は比較的容易に実行可能である。
【0035】
修理後の光ファイバ敷設構造10において、単位ブロック3Bを迂回して単位ブロック3Aと単位ブロック3Cとを繋ぐ区間は、光ファイバケーブル11が側壁7の外部を通過する外部通過区間15に該当する。この外部通過区間15を、「外部通過区間15B」とすれば、外部通過区間15Bは、単位ブロック3Bを互いの間に挟んで配置された単位ブロック3A,3Cの単位光ファイバケーブル21の端部同士を接続するスキップ接続部(迂回用光ファイバケーブル12及び光ファイバ接続部25B,25C)を有するものである。
【0036】
なお、外部通過区間15Bにおける上記の迂回用光ファイバケーブル12、光ファイバ接続部25B及び光ファイバ接続部25C等は、側壁面7aに接着剤で貼着されるか、または、フレキシブルステンレス管などの保護管や所定のボックス等で覆われることにより保護されていてもよい。また、迂回用光ファイバケーブル12が側壁面7aに対して長手方向Aに延びる状態で一体的に接着されてもよい。この場合、計測装置5が、迂回用光ファイバケーブル12の散乱光に基づいて単位ブロック3Bの側壁面7aにおけるひずみ分布や温度分布を取得することができる。また、単位ブロック3Bの側壁面7aを切削して長手方向Aに延びる溝を形成し、この溝に迂回用光ファイバケーブル12を埋め込んで単位ブロック3Bの側壁7と一体化させてもよい。この場合には、計測装置5が、迂回用光ファイバケーブル12の散乱光に基づいて単位ブロック3Bの側壁面7a近傍におけるひずみ分布や温度分布を更に高精度で取得することができる。
【0037】
続いて、光ファイバ敷設構造10による作用効果について説明する。光ファイバ敷設構造10には、光ファイバケーブル11がボックスカルバート1の側壁7の外部を通過する外部通過区間15が断続的に存在している。内部通過区間13において光ファイバケーブル11に断線箇所31が発生した場合には、当該内部通過区間13を間に挟む2つの外部通過区間15,15において光ファイバケーブル11の所定の処理を行なうことで、断線箇所31を迂回するための光ファイバ敷設構造10の修理を比較的容易に行なうことができる。従って、このような光ファイバ敷設構造10によれば、光ファイバケーブル11の断線で計測可能範囲が激減するリスクに対し冗長性を持たせることができる。すなわち、光ファイバ敷設構造10によれば、光ファイバケーブル11の断線によるリスクが低減される。
【0038】
また、光ファイバ敷設構造10によれば、光ファイバケーブル11のうち外部通過区間15において側壁7の外部に露出した部分に温度変化を付与し、その際の計測装置5の計測値の変化を検知することにより、計測範囲内における当該部分の位置を特定することができる。なお、このような位置特定のために、温度変化を付与する機構(例えば,ヒーターなど)が所定の外部通過区間15の光ファイバケーブル11に設けられてもよい。
【0039】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、実施例の変形例を構成することも可能である。各実施形態等の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0040】
例えば、光ファイバ引出部23の箱抜き部としては、前述の箱体24(
図3)を含むものには限定されず、例えば、
図5(a)に示されるようなハンドホール状の箱体26を含むものであってもよい。箱体26内には単位光ファイバケーブル21の余長部を格納することができる。また、箱抜き部が設計上の問題となる場合には、単位光ファイバケーブル21の端部27が引き出された後、箱体26をコンクリート等で埋め戻してもよい。この場合、外部に引き出された単位光ファイバケーブル21は、スイッチボックスやカバーなどで保護されることが好ましい。また、単位光ファイバケーブル21の余長部を側壁面7aに沿わせて、シート状の材料で覆うことで、側壁面7aからの保護材の出っ張りを最小限とすることもできる。また、単位光ファイバケーブル21が箱体26の壁を貫通する部分には、前述した光ファイバ保護部29(
図3(b))の構成が適用されてもよい。
【0041】
また、光ファイバ引出部23は、箱抜き部には限定されず、例えば、
図5(b)に示されるように構築されたものであってもよい。すなわち、
図5(b)に示されるように、単位ブロック3のコンクリート型枠33には、単位光ファイバケーブル21を挿通させるための貫通穴35が設けられ、貫通穴35には緩衝材37を介してフレキシブルステンレス管39が挿通され、フレキシブルステンレス管39内に単位光ファイバケーブル21が挿通される。フレキシブルステンレス管39は、例えば、コンクリート型枠33から内側に向けて10cm程度、コンクリート型枠33から外側に向けて1m程度の範囲に亘って単位光ファイバケーブル21の周囲に設置される。この状態のコンクリート型枠33に対してコンクリートが打設されコンクリート型枠33が脱型されることで、光ファイバ引出部23が構築される。このようなフレキシブルステンレス管39を含む光ファイバ引出部23により、例えば脱型時における単位光ファイバケーブル21の折れ曲がりによる断線が抑制される。フレキシブルステンレス管39は、内部通過区間13と外部通過区間15との境界部において単位光ファイバケーブル21を保護する光ファイバ保護部として機能する。
【0042】
また、前述の実施形態では、ボックスカルバート1の側壁7に対して1本の光ファイバケーブル11が敷設される例を説明したが、例えば
図6(a)に示されるように、側壁7には、複数本の光ファイバケーブル11が敷設されてもよい。
図6(a)では側壁7の上部と下部とにそれぞれ1本ずつ合計2本の光ファイバケーブル11が敷設される。また、側壁7に対して複数の光ファイバケーブル11が敷設される場合には、例えば
図6(b)に示されるように、1つの光ファイバ引出部23が複数の光ファイバケーブル11で共用されてもよい。
【0043】
また、前述の実施形態では、内部通過区間13において光ファイバケーブル11がボックスカルバート1の長手方向(A方向)に敷設される例を説明したが、これには限定されず、内部通過区間13において光ファイバケーブル11はどの方向に延びていてもよい。例えば、内部通過区間13における1本の光ファイバケーブル11が、互いに異なる方向に延びる複数の部分を有していてもよい。例えば、内部通過区間13において光ファイバケーブル11は、例えば高さ方向(上下方向)に延在する部分を含むように敷設されてもよい。具体例として、
図7に示されるように、内部通過区間13において光ファイバケーブル11を蛇行させるように配置することで、側壁7の長手方向のひずみ分布と高さ方向(上下方向)のひずみ分布との両方を計測することができる。この場合、内部通過区間13の光ファイバケーブル11のうち上下方向に延びる部分は、側壁7の主筋に沿うように配置されてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…ボックスカルバート(躯体)、3,3A~3D…単位ブロック(単位躯体部)、10…光ファイバ敷設構造、11…光ファイバケーブル(光ファイバ)、12…迂回用光ファイバケーブル(スキップ接続部)、13…内部通過区間、15…外部通過区間、21…単位光ファイバケーブル(単位光ファイバ)、24,26…箱体(箱抜き部)、25…光ファイバ接続部、25B,25C…光ファイバ接続部(スキップ接続部、切り離し部)、27…端部、29…光ファイバ保護部、31…断線箇所、39…フレキシブルステンレス管(光ファイバ保護部)。