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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172209
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】パッキン
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/12 20060101AFI20231129BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
F16J15/12 A
F16J15/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083861
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】392034263
【氏名又は名称】岡安ゴム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000228383
【氏名又は名称】日本ガスケット株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】岡 浩史
(72)【発明者】
【氏名】岡 敬二郎
(72)【発明者】
【氏名】内田 健二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 綾一
【テーマコード(参考)】
3J040
【Fターム(参考)】
3J040AA17
3J040BA02
3J040BA03
3J040EA15
3J040EA17
3J040EA42
3J040FA02
3J040FA05
3J040HA01
3J040HA03
3J040HA21
3J040HA30
(57)【要約】
【課題】本開示に係るパッキンは、様々な大きさ、又は/及び、様々な形状のパッキンを提供できる。
【解決手段】本開示に係るパッキンは、芯材と、前記芯材を覆うゴム製又は樹脂製の第1被覆体とを有する環状のパッキンであって、前記芯材には当該芯材同士が接続された接続部があり、前記接続部がゴム製又は樹脂製の第2被覆体で覆われている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、前記芯材を覆うゴム製又は樹脂製の第1被覆体とを有する環状のパッキンであって、前記芯材には当該芯材同士が接続された接続部があり、前記接続部がゴム製又は樹脂製の第2被覆体で覆われているパッキン。
【請求項2】
前記第1被覆体と前記第2被覆体とは、同じ材料である請求項1に記載のパッキン。
【請求項3】
前記接続部において、前記芯材の両端部が接触している請求項1又は2に記載のパッキン。
【請求項4】
前記芯材は、線形状である請求項1又は2に記載のパッキン。
【請求項5】
少なくとも2本の第1芯材と、第2芯材と、前記第1芯材と前記第2芯材とを覆うゴム製又は樹脂製の第1被覆体とを有する環状のパッキンであって、
前記第1芯材と前記第2芯材とを接続して接続部を形成して環状の枠体を形成し、
前記接続部がゴム製又は樹脂製の第2被覆体で覆われているパッキン。
【請求項6】
前記第1被覆体と前記第2被覆体とは、同じ材料である請求項5に記載のパッキン。
【請求項7】
前記芯材は、線形状である請求項5又は6に記載のパッキン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車用部品に用いられるパッキン、各種機械部品に用いられるパッキン、窓枠等の建材に用いられるパッキン、家電製品その他に用いられるパッキン等のパッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芯材を用いたパッキンに関しては、特許文献1及び特許文献2に記載されている。
特許文献1に開示されたパッキンは、管の接合部に配置されるものである。特許文献1に記載されたパッキンは、第1芯材と、第2芯材を有し、両者がゴムで被覆されている。
特許文献1のパッキンに内蔵されている第1芯材及び第2芯材は、いずれも対象物たる管の端面形状に合致するように、環状に成型されたものである。
即ち、特許文献1に開示されたパッキンに使用されている芯材は、予め環状に成形されており、つなぎ目はない。
【0003】
特許文献2に開示されたパッキンは、押し出し成形によって、中心部に線材を有する長尺のゴムを成形し、当該長尺のゴムを寸法切りし、接着剤等で両端をつなげて環状に形づけられたものである。
特許文献2に開示されたパッキンは、寸法切りされた長尺ゴムの両端のゴム部分が接着剤で接着されているが、芯材同士は繋がっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-17330号公報
【特許文献2】特開2001-4031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたパッキンは、芯材を成形するのに金型等が必要である。ここでパッキンは、複数のサイズがあり、内蔵される芯材のサイズも多数である。そのため特許文献1の構造によると、パッキンのサイズに合わせて多数の金型が必要であり、互換性が低いという問題がある。
【0006】
特許文献2に開示されたパッキンは、ゴム部分だけが接着剤で接合されており、芯材部分は接合されていないので、接合部分の強度が低いという問題がある。
例えば一部に矩形部分や異形部分を含む形状のパッキンや、三次元形状のパッキンを作る場合、接合部分に無理な力がかかり、接続部が引き裂かれてパッキンが壊れる虞がある。又、パッキンを装置等に装着した後に、パッキンに振動が加わると接続部が引き裂かれ、パッキンが壊れる虞があるという課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るパッキンは、芯材と、前記芯材を覆うゴム製又は樹脂製の第1被覆体とを有する環状のパッキンであって、前記芯材には当該芯材同士が接続された接続部があり、前記接続部がゴム製又は樹脂製の第2被覆体で覆われているものである。
【0008】
本開示の別の一態様に係るパッキンは、少なくとも2本の第1芯材と、第2芯材と、前記第1芯材と前記第2芯材とを覆うゴム製又は樹脂製の第1被覆体とを有する環状のパッキンであって、前記第1芯材と前記第2芯材とを接続して接続部を形成して環状の枠体を形成し、前記接続部がゴム製又は樹脂製の第2被覆体で覆われているものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様のパッキンによれば、様々な大きさ、又は/及び、様々な形状のパッキンを提供できる。又、2次元、3次元などの様々で複雑な形状のパッキンに加工しても接続部が引き裂かれず、強度を向上させたパッキンを提供できる。又、パッキンを装置等に装着した後に、パッキンに振動が加わっても接続部が引き裂かれず、強度を向上させたパッキンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1のパッキンが装着される電子制御ユニットの概略の斜視図である。
図2図1の電子制御ユニットの概略の分解斜視図である。
図3図1の電子制御ユニットの蓋部を取り除いた本体部内部の概略平面図である。
図4】実施形態1におけるパッキンの概略の構造を表す図で、(a)はパッキンの概略平面図を表し、(b)は(a)のA-A断面であって図4の楕円領域の断面図である。(c)は(a)のB-B断面図である。
図5】(a)から(g)は、実施形態1におけるパッキンの接続部の構造を列挙した斜視図である。
図6】(a)から(s)は、実施形態1におけるパッキンの断面形状の例を列挙した断面図である。
図7】実施形態2であって、パッキンが装着された部材の要部の概略構成図である。
図8図7に示したパッキン全体の平面図である。
図9】実施形態3のパッキンであって、(a)はその平面図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は(a)の一部拡大図、(d)は(c)のB-B断面図である。
図10】実施形態1乃至3のパッキンの製造方法の工程を示す模式図である。
図11】実施形態1乃至3のパッキンの製造方法の図10に続く工程を示す模式図である。
図12】(a)、(b)は、実施形態1乃至3のパッキンの製造方法であって成形工程を示す模式図である。
図13】実施形態1乃至3のパッキンの製造方法であって、第2被覆体装着工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示のより具体的な実施形態を説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。以下の説明において、同一または類似する構成要素については、同じ参照符号を付している。
【0012】
本開示の一態様を示すパッキンは、自動車用部品に用いられるパッキン、各種機械部品に用いられるパッキン、窓枠等の建材に用いられるパッキン、家電製品その他に用いられるパッキンである。
ここでパッキンとは、複数の部材間に配されて、気体、液体、粉体等の流体の通過を阻止又は抑制する総称である。例えば内部空間と外部空間とが二つの区画壁で仕切られており、前記区画壁の間に配されて両者の隙間を封鎖して、気体、液体、粉体等の流体が、内部空間から外部空間に、又は外部空間から内部空間に移動するのを阻止する、又は抑制するものである。パッキンは静止していてもよいし、移動してもよい。パッキンのことをガスケットと呼んでもよい。
【0013】
(実施形態1)
以下、本開示の一態様として、自動車用部品である自動車を制御する電子制御ユニット(ECU)に用いられるパッキンについて図面を用いて説明する。
パッキンの構造の説明に先立って、パッキンが装着される電子制御ユニット(ECU)について説明する。
【0014】
(電子制御ユニットの全体構成)
図1は、実施形態1のパッキン1が装着された電子制御ユニット10の概略の斜視図である。
図1に示す様に、電子制御ユニット10は、蓋部2と、本体部3と、コネクタ部7とを備えている。本体部3は、底面及び側面壁8で覆われ、一面が開口した箱型であり、内部に各種の電子部品を有している。本体部3の開口には蓋部2が装着されている。
図2は、電子制御ユニット10の概略の分解斜視図である。
【0015】
図3は、電子制御ユニット10の蓋部2を取り除いた本体部3の内部の概略平面図である。
図3に示す様に、本体部3の底面及び側面壁8で覆われた領域に、CPU、各種LSI、メモリ、抵抗、コンデンサ等の電子部品が収容されている。
本体部3の開口には蓋部2が取り付けられている。蓋部2は、ネジ5によって本体部3に固定されている。即ち蓋部2に設けられた孔と本体部3に設けられたネジ穴6にネジ5が挿通されて締め付けられ、蓋部2が本体部3に固定されている。
本実施形態では、電子制御ユニット10の本体部3と蓋部2の間にパッキン1が介在されている。
即ち、図2に示す様に、電子制御ユニット10には、蓋部2と本体部3との間にパッキン1が配置されている。
パッキン1は、側面壁8の上面の表面で、側面壁8の上面の幅に収まるように、配置されている。またパッキン1は、ネジ穴6を避けるように、ネジ穴6の内側を通るように配置されている。
【0016】
(パッキン)
次にパッキン1について説明する。
図4は、パッキン1の概略の構造を表す図で、図4(a)はパッキン1の概略平面図を表し、図4(b)はパッキン1の破線部の長手方向の概略の断面図を表し、図4(c)はパッキン1の長手方向に垂直な概略断面図を表している。
図4(a)に示す様に、パッキン1は、本体部3の開口の平面形状に沿うように成形されたものであり、四角形を基調とし、図4の左側面には、コネクタ部7を避けるために、内側にコの字型に窪んだ凹部23を有している。
また、パッキン1の四隅には、内側に窪んだアール部(R)を有している、
このように、パッキン1は、単純な円形、矩形などの形状だけではなく、複雑な形状をしている。パッキン1の平面形状は限定されるものではなく、単純な四角形や円形等であってもよい。
図4(c)に示す様に、図4(a)の破線部以外のパッキン1の全体的な構造は、パッキン1の内部に配置された1本の芯材20と、1本の芯材20を被覆する第1被覆体21とを有する。
図4(b)は、図4(a)の破線部の概略の断面図である。芯材20は、一本の線材の一方の第1芯材端20aと、他方の第2芯材端20bが接続されて環状を呈するものである。即ち、図4(b)に示す様に、一本の線材は、一方の第1芯材端20aと他方の第2芯材端20bとを有する。パッキン1は、線材を一方の第1芯材端20aと他方の第2芯材端20bとが、任意の位置で線材が接続して接合された接続部12を有する。
【0017】
接続部12において、パッキン1は、接続部12を中心に一定の長さの領域が、第2被覆体22で覆われている。パッキン1は、第2被覆体22以外は、第1被覆体21で被覆されている。
【0018】
芯材20の材料は、ステンレス、亜鉛メッキ鉄、真鍮、銅等の金属、又はそれらの合金を使用することができる。
第1被覆体21は、ゴム製材料、又は樹脂製材料である。
ゴム製材料としては、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、アクリルゴム(ACM)、エチレン・アクリルゴム(AEM)、フッ素ゴム(FKM、FPM)、シリコーンゴム(VQM)、液状NBR、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)等から、1種、あるいは2種以上のゴムを適当にブレンドして使用することができる。
第2被覆体22の材料は、ゴム製材料、又は樹脂製材料で、第1被覆体21と同じ材料が用いられる。第2被覆体22の材料は、第1被覆体21と異なる材料が用いられてもよい。
第1被覆体21及び第2被覆体22の樹脂製材料としては、弾性変形する一般的な樹脂材料が用いられる。
【0019】
図5は、パッキン1の接続部12の構成例を列挙したものである。線材の接続方法は限定されるものではなく、溶接、ロウ付けの他、物理的な嵌合構造や、他の接続部材を介在させる方法が考えられる。
図5(a)は、溶接により接続部12を作製したもので、例えば、フラッシュバット溶接で、第1芯材端20aの端部と第2芯材端20bの端部とを接触させ電流を流して、第1芯材端20aの端部と第2芯材端20bの端部とを溶かして溶接して接続部12を作製している。接続部12における第1芯材端20aの直径と第2芯材端20bの直径とは、ほぼ同じ厚みである。図5(a)の接続部12は、溶接により、強固に接合している。
図5(b)は、ロウ材13でロウ付けして、接続部12を作製したものである。
図5(c)は、第1芯材端20aがコの字状のフックであり、第2芯材端20bが円弧状のフックで、接続部12を作製したものである。
図5(d)は、第1芯材端20aがコの字状のフックであり、第2芯材端20bもコの字状のフックで、接続部12を作製したものである。
図5(e)は、第1芯材端20aが円状のフックであり、第2芯材端20bが円状のフックで、接続部12を作製したものである。
図5(f)は、第1芯材端20aと第2芯材端20bとをねじって、接続部12を作製したものである。
図5(g)は、パイプ25に、第1芯材端20aと第2芯材端20bとを挿入し、パイプ25を圧着して、接続部12を作製したものである。パイプ25から、第1芯材端20aと第2芯材端20bとを引っ張って抜けないなら、圧着は不要である。
【0020】
図6は、パッキン1の断面における概略構成図である。
図6に示す様に、パッキン1は、ほぼ中心部に芯材20を有し、その周りに第1被覆体21で覆われている。
図6(a)から(s)に示す様に、第1被覆体21の断面の形状は、正方形、矩形、三角形、菱形、六角形などの多角形、星形形状、楕円形状、円弧形状、凸形状などの断面形状である。
第2被覆体22の断面の形状は、第1被覆体21の断面の形状と同様の形状が用いられる。
芯材20の断面形状は、ここでは円形である。芯材20が線形状となるものであれば、芯材20の断面形状は、円形だけではなく、楕円形状、矩形、三角形、多角形、星形形状など断面の形状でもよい。
【0021】
パッキン1の大きさは、限定されるものではなく、周長が数センチであってもよく、数メートルに及ぶものであってもよい。
【0022】
上記した様に、パッキン1は、第1被覆体21及び第2被覆体22が、蓋部2の下面の表面の凹凸と本体部3の側面壁8の上面の表面の凹凸に入り込むように変形して、本体部3の内部と本体部3の外部とを遮断する(図2参照)。
自動車は、温度、湿度、埃、振動など様々な外部の環境下で使用されるため、本体部3の内部の電子部品を保護するために、パッキン1は、外部の気体、液体、粉体等の流体が、本体部3の内部に移動するのを阻止できる、又は抑制できる。
【0023】
このように、本開示の一態様のパッキン1によれば、様々な大きさ、又は/及び、様々な形状のパッキン1を提供できる。又、2次元、3次元などの様々な複雑な形状のパッキン1に加工しても接続部が引き裂かれず、強度を向上させたパッキン1を提供できる。又、パッキン1を装置等に装着した後に、パッキン1に振動が加わっても接続部が引き裂かれず、強度を向上させたパッキン1を提供できる。又、パッキン1は、蓋部2と本体部3の間に設置するだけで、接着剤などを用いて固定していないので、簡単に取り外し可能で、古いパッキン1を新しいパッキン1と交換可能である。
【0024】
(実施形態2)
実施形態2は、図7に示す様に、ガスケットに関し、より詳しくは、例えば電気自動車のモーターのハウジング52とPCU(パワーコントロールユニット)のケーシング53との間に介在されて、それらの間のシールを維持するパッキン51に関するものである。
【0025】
以下、実施形態2について説明すると、図7乃至図8において、パッキン51は、全体として略長方形の枠状に形成されたパッキン51である。このパッキン51は、モーターのハウジング52とPCU(パワーコントロールユニット)のケーシング53との間に介在されて、それらの間のシールを維持するようになっている。
モーター及びPCUはともに電気自動車に搭載されるものであって、モーターのハウジング52は全体として立方体形状となっており、他方、PCUのケーシング53は、下面全域が開口した箱型となっている。図7において、ケーシング53の右側が外部であって、左側がケーシング53の内部となる。
【0026】
モーターのハウジング52はアルミダイカスト製であって、その上面52Aは鋳肌のままなので多数の微小な凹凸がある粗面となっている。そして、ハウジング52の上面52Aの輪郭に沿った外周部分が枠状のシール面52Bとなっている。他方、PCUのケーシング53もアルミダイカスト製であって、その開口部の輪郭となる下面が枠状のシール面53Aとなっている。
パッキン51は、下方側となるハウジング52のシール面52Bと上方側となるケーシング53のシール面53Aとの間に装着されるものであって、全体として略長方形の枠状となっている。
【0027】
実施形態2のパッキン51は、無端状に連続する鉄製又はSUS製の基材となる芯材56と、この芯材56の全周及び長手方向全域を所定の厚さで被覆したゴムシール57とによって構成されている。
芯材56の断而形状は円形であって、その直径は0.5から2mm程度に設定されている。他方、芯材56を被覆したゴムシール57も断面円形となっており、その直径(外径)は3から6mm程度に設定されている。このゴムシール57の厚さは、0.8mm以上に設定されている。ゴムシール57の材料としては、NBR、EPDMを含む通常のゴム、発泡ゴム、エストラマーを用いる。
【0028】
本実施形態のパッキン51についても、図8の矢印の領域において、芯材56が溶接等によって、一体的に接合されている。
即ち図8の矢印の領域は接続部12であり、芯材56の周囲が第2被覆体22で覆われている。他の領域については、芯材56の周囲が第1被覆体21で覆われている。
【0029】
実施形態2においては、基材となる芯材56として鉄製又はSUS製の線材を用いているので、パッキン51全体として剛性を備えており、図8に示す枠状の形状が常時、維持されるようになっている。
【0030】
以上のように構成されたパッキン51を上記シール面52B、53Aの間に組み付ける際には、図8に示すように、枠状に維持されたパッキン51を、先ず下方側となるハウジング52のシール面52Bに設置させる。この時、パッキン51全体として剛性を備えて枠状に維持されているので、パッキン51の全域をシール面52Bの全域にわたって容易に装着させることができる。
【0031】
その後、ケーシング53のシール面53Aをパッキン51に設置させた後に、ハウジング52とケーシング53の所要箇所を締結用のボルトとナットによって連結する。これにより、パッキン51のゴムシール57の下面側の箇所が弾性変形して、ハウジング52のシール面52Bに密着するとともに、ゴムシール57の上面側となる箇所も押圧されて、ケーシング53のシール面53Aに密着する。
【0032】
このように、組付け完了時に両シール面52B、53A間にパッキン51全体が挟持されることにより、ゴムシール57が弾性変形することで両シール面52B、53Aに密着し、それらの間のシールが確実に維持されるようになっている。
実施形態2においては、パッキン51をシール面52B、53A間に組み付ける際には、パッキン51自体が剛性を有して両シール面52B、53Aの輪郭に応じた形状に維持されているので、作業者はパッキン51の装着作業を容易に行うことができる。
また、ハウジング52のシール面52Bがアルミダイカストの鋳肌のままの粗面である場合も、ゴムシール57が弾性変形してシール面52Bの凹凸に応じて密着することができる。そのため、モーターのハウジング52は、鋳造後において上面52A、及びシール面52Bの表面を研磨する作業を必要としない。つまり、本実施例のパッキン51を用いることにより、従来では必要であった鋳造後におけるハウジング52の表面仕上げ作業を省略することが可能となる。その分だけ、モーターのハウジング52の製造コストを低減させることができる。
【0033】
さらに、組付け後に時間が経過して、パッキン51を交換する場合においてはシール面52B、53Aに接培剤を塗布していないので、古いパッキン51を容易に取り外すことができ、その後、新しいパッキン51も上述したように容易に装着することができる。そのため、実施形態2によれば、従来と比較して、着脱が容易で、かつ、シール性が良好なパッキン51を提供することができる。
【0034】
(実施形態3)
図9は、本発明のさらに別の実施例のパッキン551を示したものである。上記図7乃至図8の実施例では、基材として断面円形の芯材56と、それに被覆したゴムシール57とでパッキン51を構成していたが、この図9の実施例のパッキン551においては、前述したシール面52B、53Aの輪郭に対応する形状の薄板状で幅の狭い芯材511と、その上面511Aと、上面511Aと反対側の下面511Bとに長手方向にわたって無端状に固着した第1被覆体であるゴムシール517A、517Bとから構成している。
図9(a)に示す様に、この実施例では、芯材511の材料となるSUS板の歩留まりを向上させるために、芯材511を複数に分割した分割部材511a(例えば、第1芯材)、511b(例えば、第2芯材)から511fで構成されており、隣り合う位置の分割部材の境界部511X(接続部)を溶接することで、全体として段付枠状をした芯材511(枠体とも言う)を構成している。
本実施例のパッキン551では、各分割部材の境界部511Xが接続部12であり、芯材511の周囲において、境界部511Xの少なくとも一部が、第2被覆体517’で、覆われている。他の領域については、芯材511の周囲が第1被覆体517A、517Bで覆われている。
【0035】
図9(d)に示す様に、パッキン551では、境界部511X(接続部)において、一方の分割部材511dと、他方の分割部材511cが接続されている。即ち、一方の分割部材600の芯材の一端部560aと、他方の分割部材511cの芯材の一端部511dが溶接されて一体化している。
この実施例では、隣り合う分割部材511d、511cの境界部511Xで、芯材の一端部560aと一端部560bを溶接することで、全体として枠状をした芯材511が構成されている。
また接合部およびその周辺の領域は、第2被覆体517’で覆われている。
即ち、芯材511の複数個所には、その長手方向と直交する方向の溶接個所(境界部511X)が存在する(図9を参照)。図9(b)、(c)に示す様に、境界部511X(接続部)を覆うように、上面511A及び下面511Bにおいて、第2被覆体517’で境界部511X(接続部)の少なくとも一部が覆われている。
【0036】
ゴムシール517A、517Bの材料は、上記実施例で示したものと同じ材料を用いることができ、あるいは、CIPGを用いる。
芯材511の幅は4から10mm、厚さは0.15から0.4mmを想定している。また、ゴムシールとしてはCIPGを採用する場合の厚さは0.8mm以上に設定されており、幅は厚さの50%から150%に設定されている。
このように、芯材511の上面511A、下面511Bの幅方向の中央には、長手方向に連続する無端状のゴムシール517A、517Bを固着させてあるので、パッキン551を両シール面52B、53Aの間に組み付けると、ゴムシール517A、517B、第2被覆体517’がシール面52B、53Aに密着することになる。
また、芯材511はSUS製であって剛性を備えているので、全体として枠状に形状が維持されている。
【0037】
したがって、この図9に示した実施例のパッキン551であっても、上記図7乃至図8に示した実施例と同様の作用、効果を得ることができる。
しかも、この実施例においては、材料となるSUS板を、芯材511を構成するための複数の直線状をした分割部材511aから511fとして用意すればよいので、材料費が高価なSUSを無駄なく、歩留まりよく材料取りすることができる。
また、隣り合う分割部材の境界部511Xは溶接されているが、その部分の表面処理をすることなくゴムシール517A、517Bで覆って上面511A、下面511Bに固着させることができる。つまり、境界部511Xの溶接箇所のバリ取り作業は不要である。そのため、材料となるSUS板を歩留まりよく活用することができ、比較的安価にパッキン551を製造することが可能である。
なお、上記した各実施例では鉄製又はSUS製の芯材を用いていたが、代わりにゴムシールより硬質な樹脂あるいはゴムを用いても良い。
【0038】
(実施形態4)
実施形態4として、本開示のパッキン1の製造方法について、図10乃至図13を用いて説明する。
図10及び図11は、パッキン1の製造方法の工程を示す模式図で、パッキン1の製造工程は、工程(a)から工程(i)を有する。
実施形態4では、1本の芯材20に、第1被覆体21及び第2被覆体22を被覆する工程について説明する。また第1被覆体21及び第2被覆体22は、ゴム材料の場合について説明する。
図10の工程(a)は、押出成形工程を示す図で、押出成形機30により、芯材20にゴム製の第1被覆体21が被覆される。
押出成形機30は、スクリュー31と、ヒータ32と、ヘッド部33とを有する。
図10(a)に示す様に、スクリュー31により加硫前の生ゴム26が押出成形機30に挿入され、さらに生ゴム26はヘッド部33に挿入される。
【0039】
ヘッド部33は、侵入通路34と、合流室35と、挿入孔36と、排出孔37とを有する。
生ゴムは、侵入通路34を通過して、合流室35に流れ込む。一方、芯材20は、挿入孔36に挿入され、合流室35に到達する。合流室35で、芯材20の周りに生ゴム26が被覆される。生ゴム26が被覆された芯材20が、排出孔37から排出される。
【0040】
図10(b)は加熱工程を示す図で、工程(b)において、加熱装置40により、排出された生ゴム26に200℃程度の温度をかけて、生ゴム26を加硫しゴム製の第1被覆体21を作製する。
【0041】
図10(c)は冷却工程を示す図で、工程(c)において、冷却装置50の噴射装置42から水を噴射して、ゴム製の第1被覆体21を冷却する。
【0042】
図10(d)は厚み調整工程を示す図で、工程(d)において、厚み調整機60の2つのベルトローラ61を上下で芯材20付きゴム製の第1被覆体21に押さえ付けて、芯材20付きゴム製の第1被覆体21の厚みを整える。以上の工程によって、芯材20の周囲が、第1被覆体21で被覆された長尺部材15が成形される。
【0043】
図10(e)は長尺部材15を切断する切断工程を示す図で、工程(e)において、切断機70のカッター71により、長尺部材15を所定の長さに切断する。即ち芯材20の周囲が加硫ゴムで被覆された長尺部材15を所定の長さに切断する。
【0044】
図11(f)は、切断機70から切断した芯材20付きゴム製の第1被覆体21(長尺部材15)を取り出した図である。長尺部材15の両端部において、両端部の芯材20の切断面と第1被覆体21の切断面とは、同一平面である。
【0045】
図11(g)は、長尺部材15の両端部において、第1被覆体21をはぎ取って、第1芯材端20aと第2芯材端20bとを突出させる図である。即ち、長尺部材15の両端近傍のゴム層を剥がす。
【0046】
図11(g)において、所定の長さのゴム層(第1被覆体21)をニッパで切断して、第1被覆体21から第1芯材端20aと第2芯材端20bとを突出させる。
切断工程(e)から直ぐに芯材20付きゴム製の第1被覆体21を取り出し、所定の時間が経過すると、第1被覆体21から所定の長さの第1芯材端20a及び第2芯材端20bが突出する場合もある。その場合は、所定の長さの第1被覆体21をニッパで切断して、第1被覆体21から第1芯材端20aと第2芯材端20bとを突出させる必要はない。
【0047】
図11(h)は、第1芯材端20aと第2芯材端20bとを接合する図である。
図11(h)において、例えば、図5(a)で説明したフラッシュバット溶接で、第1芯材端20aの端部と第2芯材端20bの端部とを接触させ電流を流して、第1芯材端20aの端部と第2芯材端20bの端部とを溶かして溶接して接続部12を作製している。
【0048】
長尺部材15の両端の芯材20を接合することにより、長尺部材15が環状につなげられる。
次に、長尺部材15の芯材20を塑性変形させ、例えば図3の本体部3等の対象物の形状に合致する形に賦形する。
例えば図12(a)の様な、賦形する形状に合わせた溝603を有する型605を準備し、図12(b)の様に、当該型605の溝603に長尺部材15をはめ込んで賦形する。
型605は、木型や樹脂型等の簡単なもので足る。
【0049】
図13に示す様に、続いて、露出した芯材20の領域を金型610に入れる。金型610は、環状に繋がれた長尺部材15の一部の領域だけを入れるものである。実施例の金型610は、下型611と、上型612によって構成される簡単な金型であり、上型612にゲート部615が設けられている。
また下型611と、上型612には、それぞれ溝状の成形キャビティ620、621が形成されている。
【0050】
続いてゲート部615から、ゴム又は樹脂を注入し、露出した芯材20の周囲に、第2被覆体22を装着する。
下型611は、露出した芯材20の領域だけを入れるものであるから、あらゆる形状のパッキン1、51、551を製造する型として共用することができる。
【0051】
図11(i)は、接続部12に第2被覆体22を被覆した状態を示す斜視図である。
図11(i)において、例えば、第1被覆体21と同じ径となる溝を有する上下の金型に接続部12を設置して、接続部12中心として、所定の長さの第2被覆体22が被覆されるように生ゴムを流し込み、熱により加硫してゴム製の第2被覆体22を形成する。
上記したように、図10乃至図11の工程(a)から工程(i)により、パッキン1を製造することができる。
【0052】
(実施形態5)
実施形態5において、図9のパッキン551の製造方法について説明する。
基本的には、実施形態4と同様である。異なる点は、実施形態4では、1本の芯材20を曲げて接合しているのに対して、実施形態5では、少なくとも2本の分割部材511aと分割部材511bとを芯材として用いる点である。
図9の分割部材511aの一端部560aと分割部材511bの一端部560bとを接合し接続部511Xを作製する。そして、接続部511Xに第2被覆体517’を形成する。
それ以外は、実施形態4と同様である。
実施形態5では、複数の芯材を繋ぎ合わせることができるので、様々な大きさ、又は/及び、様々な形状のパッキンを提供できる。
【0053】
尚、実施形態1から実施形態5に係る発明は、矛盾が生じない限り、置き換えたり、組合せたりすることができる。
【0054】
以上のように、本開示は、以下の項目に記載のパッキンを含む。
【0055】
〔項目1〕
芯材と、前記芯材を覆うゴム製又は樹脂製の第1被覆体とを有する環状のパッキンであって、前記芯材には当該芯材同士が接続された接続部があり、前記接続部がゴム製又は樹脂製の第2被覆体で覆われているパッキン。
上記態様によれば、様々な大きさ、又は/及び、様々な形状のパッキンを提供できる。又、2次元、3次元などの様々の複雑な形状のパッキンに加工しても接続部が引き裂かれず、強度を向上させたパッキンを提供できる。又、パッキンを装置等に装着した後に、パッキンに振動が加わっても接続部が引き裂かれず、強度を向上させたパッキンを提供できる。
【0056】
〔項目2〕
前記第1被覆体と前記第2被覆体とは、同じ材料である項目1に記載のパッキン。
上記態様によれば、前記第1被覆体と前記第2被覆体とが同じように変形するので、シール特性に優れる。
【0057】
〔項目3〕
前記接続部において、前記芯材の両端部が接触している項目1又は2に記載のパッキン。
上記態様によれば、2次元、3次元などの様々の複雑な形状のパッキンに加工しても接続部が引き裂かれず、強度を向上させたパッキンを提供できる。又、パッキンを装置等に装着した後に、パッキンに振動が加わっても接続部が引き裂かれず、強度を向上させたパッキンを提供できる。
【0058】
〔項目4〕
前記芯材は、線形状である項目1乃至3のいずれかに記載のパッキン。
上記態様によれば、2次元、3次元などの様々の複雑な形状のパッキンを提供できる。
【0059】
〔項目5〕
少なくとも2本の第1芯材と、第2芯材と、前記第1芯材と前記第2芯材とを覆うゴム製又は樹脂製の第1被覆体とを有する環状のパッキンであって、
前記第1芯材と前記第2芯材とを接続して接続部を形成して環状の枠体を形成し、
前記接続部がゴム製又は樹脂製の第2被覆体で覆われているパッキン。
上記態様によれば、複数の芯材を繋ぎ合わせることができるので、様々な大きさ、又は/及び、様々な形状のパッキンを提供できる。
【0060】
〔項目6〕
前記第1被覆体と前記第2被覆体とは、同じ材料である項目5に記載のパッキン。
上記態様によれば、前記第1被覆体と前記第2被覆体とが同じように変形するので、シール特性に優れる。
【0061】
〔項目7〕
前記芯材は、線形状である項目5又は6に記載のパッキン。
上記態様によれば、2次元、3次元などの様々の複雑な形状のパッキンを提供できる。
【符号の説明】
【0062】
1 パッキン
12 接続部
15 長尺部材
20 芯材
20a 第1芯材端
20b 第2芯材端
21 第1被覆体
22 第2被覆体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13