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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172212
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】圧電基板
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/87 20230101AFI20231129BHJP
   H10N 30/20 20230101ALI20231129BHJP
【FI】
H01L41/047
H01L41/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083865
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】竹屋 和人
(72)【発明者】
【氏名】井上 正良
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 誠志
(57)【要約】
【課題】圧電体層の端部付近での反りの低減が図られる圧電基板を提供する。
【解決手段】圧電基板1において、圧電体層2の最も端部2C寄りに位置する最外素子相当部分Pfでは、第2の電極4の面積R2が第1の電極3の面積R1よりも大きくなっており、第1の電極3における圧電体層2の厚さ方向Dの中心K1からの距離T1が第2の電極4における圧電体層2の厚さ方向Dの中心K1からの距離T2よりも大きくなっており、圧電体層2の厚さ方向Dから見た場合に、第1の電極3が第2の電極4の延在方向の中心K2よりも圧電体層2の端部2Cの反対側に偏在している。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び当該第1面と反対側の第2面とを有する圧電体層と、
前記圧電体層の前記第1面側に設けられた第1の電極と、
前記圧電体層の前記第2面側に設けられた第2の電極と、を備え、
前記圧電体層、前記第1の電極、及び前記第2の電極によって構成される素子相当部分が前記圧電体層の前記第1面及び第2面の面内方向に配列され、
前記圧電体層の最も端部寄りに位置する最外素子相当部分では、
前記第2の電極の面積が前記第1の電極の面積よりも大きくなっており、
前記第1の電極における前記圧電体層の厚さ方向の中心からの距離が前記第2の電極における前記圧電体層の厚さ方向の中心からの距離よりも大きくなっており、
前記圧電体層の厚さ方向から見た場合に、前記第1の電極が前記第2の電極の延在方向の中心よりも前記圧電体層の端部の反対側に偏在している圧電基板。
【請求項2】
前記最外素子相当部分では、前記第1の電極は、前記圧電体層の前記第1面上に配置され、前記第2の電極は、前記圧電体層の内部に配置されている請求項1記載の圧電基板。
【請求項3】
前記圧電体層の厚さ方向から見た場合に、前記第1の電極の形成領域は、前記第2の電極の形成領域内に位置している請求項1又は2記載の圧電基板。
【請求項4】
前記圧電体層の前記端部から前記第1の電極までの距離は、前記圧電体層の前記端部から前記第2の電極までの距離よりも大きくなっている請求項1又は2記載の圧電基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の圧電基板として、例えば特許文献1に記載の圧電アクチュエータがある。この従来の圧電アクチュエータでは、内部電極、圧電セラミック層、表面電極がこの順に振動板上に積層されている。内部電極は、表面電極の端部よりも外方に張出した張出領域を有している。圧電セラミック層は、透光性を有しており、内部電極の張出領域を視認できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-267980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような圧電基板では、焼成の際の圧電体層と電極との収縮応力の違いに起因して反りが生じることが課題となっている。圧電基板に反りが生じている場合、反りの周辺の領域の変位量と反りのない領域の変位量との間にばらつきが生じることが問題となる。近年では、圧電基板の高変位化及び低背化の要求を満たすべく、圧電体層及び電極の薄型化が進んでいる。このため、反りの問題がより顕著となり、圧電基板をキャビティに取り付けた際のクラックの発生なども懸念事項となっている。
【0005】
圧電基板の中央側では、その周囲の素子相当部分の応力に相殺されることで、圧電基板の反りが比較的生じにくい傾向がある。一方、圧電基板の端部側では、圧電体層がフリーとなっている分、周囲の素子相当部分の応力による相殺の影響が小さくなる。このため、電極の配置状態によっては、圧電基板に反りが顕著に生じ易くなる傾向がある。したがって、圧電体層の端部付近での反りを低減することが、圧電基板の全体の反りの低減に効果的に寄与することになると考えられる。
【0006】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、圧電体層の端部付近での反りの低減が図られる圧電基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る圧電基板は、第1面及び当該第1面と反対側の第2面とを有する圧電体層と、圧電体層の第1面側に設けられた第1の電極と、圧電体層の第2面側に設けられた第2の電極と、を備え、圧電体層、第1の電極、及び第2の電極によって構成される素子相当部分が圧電体層の第1面及び第2面の面内方向に配列され、圧電体層の最も端部寄りに位置する最外素子相当部分では、第2の電極の面積が第1の電極の面積よりも大きくなっており、第1の電極における圧電体層の厚さ方向の中心からの距離が第2の電極における圧電体層の厚さ方向の中心からの距離よりも大きくなっており、圧電体層の厚さ方向から見た場合に、第1の電極が第2の電極の延在方向の中心よりも圧電体層の端部の反対側に偏在している。
【0008】
この圧電基板では、最外素子相当部分において、第2の面積を第1の電極の面積よりも大きくする一方で、第1の電極における圧電体層の厚さ方向の中心からの距離が第2の電極における圧電体層の厚さ方向の中心からの距離よりも大きくなっている。また、圧電体層の厚さ方向から見た場合に、第1の電極が第2の電極の延在方向の中心よりも圧電体層の端部の反対側に偏在している。この圧電基板では、圧電体層の厚さ方向の中心からの第1の電極の距離と、第2の電極の延在方向の中心に対する第1の電極の偏在度合いとを、第1の電極の面積と第2の電極の面積との比を基準に調整することで、圧電基板の端部領域において第1の電極による応力と第2の電極による応力とをバランス良く相殺できる。したがって、圧電体層の端部付近での反りを低減できる。
【0009】
最外素子相当部分では、第1の電極は、圧電体層の第1面上に配置され、第2の電極は、圧電体層の内部に配置されていてもよい。この場合、第2の電極による応力を第1の電極による応力で効率的に相殺できる。したがって、圧電体層の端部付近での反りを一層効果的に低減できる。
【0010】
圧電体層の厚さ方向から見た場合に、第1の電極の形成領域は、第2の電極の形成領域内に位置していてもよい。この場合、第1の電極による応力の全体を第2の電極による応力の相殺に用いることができる。したがって、圧電体層の端部付近での反りを一層効果的に低減できる。
【0011】
圧電体層の端部から第1の電極までの距離は、圧電体層の端部から第2の電極までの距離よりも大きくなっていてもよい。これにより、第1の電極を第2の電極の延在方向の中心よりも圧電体層の端部の反対側により確実に偏在させることができる。したがって、第1の電極による応力と第2の電極による応力とを一層バランス良く相殺でき、圧電体層の端部付近での反りの低減効果を更に高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、圧電体層の端部付近での反りの低減が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の一実施形態に係る圧電基板を示す模式的な平面図である。
図2図1に示した圧電基板の端部付近の構成を示す要部拡大平面図である。
図3図1に示した圧電基板の端部付近の構成を示す要部拡大断面図である。
図4】(a)は、比較例に係る圧電基板の端部付近の構成を示す要部拡大断面図であり、(b)は、(a)の構成における圧電基板の端部付近の反りの様子を示す模式的な側面図である。
図5】(a)は、実施例に係る圧電基板の端部付近の構成を示す要部拡大断面図であり、(b)は、(a)の構成における圧電基板の端部付近の反りの様子を示す模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る圧電基板の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本開示の一実施形態に係る圧電基板を示す模式的な平面図である。図1に示す圧電基板1は、例えばインクジェットプリンタの印刷ヘッドに設けられる圧電アクチュエータに適用される基板である。圧電基板1は、図1に示すように、圧電体層2と、複数の第1の電極3(図2参照)と、複数の第2の電極4(図2参照)とを備えている。圧電体層2は、平面視において矩形の薄板状をなしている。圧電体層2は、第1面2A及び当該第1面2Aと反対側の第2面2Bとを有している。ここでは、圧電体層2の平面形状は長方形状であり、一対の長辺2a,2aと、一対の短辺2b,2bとを有している。
【0016】
圧電体層2は、圧電材料によって構成されている。本実施形態では、圧電体層2は、圧電セラミック材料によって構成されている。圧電セラミック材料としては、例えばPZT[Pb(Zr,Ti)O]、PT(PbTiO)、PLZT[(Pb,La)(Zr,Ti)O]、チタン酸バリウムなどが挙げられる。圧電体層2は、例えば上述した圧電セラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体によって構成されている。
【0017】
圧電基板1には、圧電体層2、第1の電極3、及び第2の電極4によって構成される複数の素子相当部分Pが設けられている。素子相当部分Pは、圧電体層2の第1面2A及び第2面2Bの面内方向に配列されている。圧電基板1の中央領域F1は、圧電的に活性な活性部6となっている。圧電基板1の端部領域F2は、圧電的に不活性な不活性部7となっている。図1の例では、不活性部7は、活性部6を挟むように圧電体層2の一方の長辺2a側と他方の長辺2a側とにそれぞれ配置されている。
【0018】
活性部6の素子相当部分Pは、第1の電極3及び第2の電極4を介した電圧印加による電界を圧電体層2に生じさせる部分である。活性部6では、圧電体層2に生じた電界に基づいて電歪効果による変形が生じ得る。不活性部7の素子相当部分Pは、電圧印加による電界を圧電体層2に生じさせない部分である。不活性部7では、電歪効果による変形は生じない。本実施形態では、不活性部7の素子相当部分Pを構成する第1の電極3は、例えば電圧の印加に寄与しないダミー電極となっている。不活性部7の素子相当部分Pを構成する第2の電極4は、例えば活性部6に電圧を供給する引出電極となっている。
【0019】
次に、上述した圧電基板1の端部領域F2の構成について更に詳細に説明する。
【0020】
図2は、図1に示した圧電基板の端部付近の構成を示す要部拡大平面図である。また、図3は、その断面図である。図2及び図3では、圧電体層2の一方の長辺2a側の端部2C付近の構成を示しているが、他方の長辺2a側の端部付近の構成も同様となっている。図2及び図3に示すように、圧電基板1の端部領域F2には、圧電体層2の最も端部2C寄りに位置する複数の素子相当部分P(以下「最外素子相当部分Pf」)によって不活性部7が構成されている。複数の最外素子相当部分Pfは、圧電体層2の端部2Cに沿うように、圧電体層2の短辺2b,2b同士を結ぶ方向に配列されている(図2参照)。
【0021】
圧電体層2の最外素子相当部分Pfは、中央側の素子相当部分Pと同様に、圧電体層2、第1の電極3、及び第2の電極4によって構成されている。第1の電極3は、圧電体層2の第1面2A側に設けられている。第2の電極資格は、圧電体層2の第2面2B側に設けられている。ここでは、第1の電極3及び第2の電極4は、いずれも平面視において矩形状をなしている。
【0022】
図2の例では、第1の電極3及び第2の電極4は、平面視において長方形状をなしている。第1の電極3の長辺3a,3aは、圧電体層2の長辺2a,2a同士を結ぶ方向に延在しており、第1の電極3の短辺3b,3bは、圧電体層2の短辺2b,2b同士を結ぶ方向に延在している。第2の電極4の長辺4a,4aは、圧電体層2の長辺2a,2a同士を結ぶ方向に延在しており、第2の電極4の短辺4b,4bは、圧電体層2の短辺2b,2b同士を結ぶ方向に延在している。第1の電極3及び第2の電極4は、全体として圧電体層2の長辺2a,2a同士を結ぶ方向に延在している。
【0023】
第1の電極3及び第2の電極4は、いずれも導電性材料によって構成されている。導電性材料としては、例えばAg、Cu、Ag-Pd合金などが用いられる。第1の電極3及び第2の電極4は、いずれも例えば上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。第1の電極3及び第2の電極4のパターン形成には、例えばスクリーン印刷が用いられる。
【0024】
本実施形態では、図2に示すように、圧電体層2の厚さ方向Dから見た場合に、第1の電極3の形成領域は、第2の電極4の形成領域内に位置している。すなわち、本実施形態では、圧電体層2の厚さ方向Dから見た場合に、第1の電極3の形成領域の全体が第2の電極4の形成領域と重なった状態となっている。
【0025】
最外素子相当部分Pfでは、図2に示すように、第2の電極4の面積R2は、第1の電極3の面積R1よりも大きくなっている。第1の電極3の面積R1と第2の電極4の面積R2との比は、特に制限はないが、例えば1:2~1:15とすることができる。
【0026】
最外素子相当部分Pfでは、図3に示すように、第1の電極3における圧電体層2の厚さ方向Dの中心K1からの距離T1が第2の電極4における圧電体層2の厚さ方向Dの中心K1からの距離T2よりも大きくなっている。本実施形態では、第1の電極3は、圧電体層2の第1面2A上に設けられた表面電極となっている。したがって、第1の電極3における圧電体層2の厚さ方向Dの中心K1からの距離T1は、圧電体層2の厚さの半分に相当している。第2の電極4は、圧電体層2における第2面2B側の内部に設けられた内部電極となっている。したがって、第2の電極における圧電体層2の厚さ方向Dの中心K1からの距離T2は、圧電体層2の厚さの半分未満となっている。
【0027】
第1の電極3における圧電体層2の厚さ方向Dの中心K1からの距離T1と、第2の電極における圧電体層2の厚さ方向Dの中心K1からの距離T2との比は、特に制限はないが、例えば2:1~10:1とすることができる。距離T1に対する距離T2の比は、例えば面積R2に対する面積R1の比を基準に決定される。例えば面積R2に対する面積R1の比が1に近づく程、距離T1に対する距離T2の比を1に近づけてもよい。
【0028】
最外素子相当部分Pfでは、図2及び図3に示すように、圧電体層2の厚さ方向Dから見た場合に、第1の電極3が第2の電極4の延在方向の中心K2よりも圧電体層2の端部2Cの反対側に偏在している。第1の電極3が第2の電極4の延在方向の中心K2よりも圧電体層2の端部2Cの反対側に偏在していることで、図2に示すように、圧電体層2の端部2Cから第1の電極3までの距離T3は、圧電体層2の端部2Cから第2の電極4までの距離T4よりも大きくなっている。第2の電極4の延在方向の中心K2に対する第1の電極3の偏在度合いは、例えば面積R2に対する面積R1の比を基準に決定される。例えば面積R2に対する面積R1の比が1に近づく程、第1の電極3を第2の電極4の延在方向の中心K2に近づけてもよい。
【0029】
図2の例のように、第1の電極3の短辺3b及び第2の電極4の短辺4bが圧電体層2の長辺2aに対して平行である場合には、距離T3は圧電体層2の長辺2aから第1の電極3の短辺3bまでの垂線の長さで表され、距離T4は圧電体層2の長辺2aから第2の電極4の短辺4bまでの垂線の長さで表される。第1の電極3の短辺3b及び第2の電極4の短辺4bが圧電体層2の長辺2aに対して平行でない場合(例えば短辺3b,4bが湾曲している場合など)には、距離T3は圧電体層2の長辺2aから第1の電極3の短辺3bのうち最も長辺2a寄りとなる位置までの垂線の長さで表され、距離T4は圧電体層2の長辺2aから第2の電極4の短辺4bのうち最も長辺2a寄りとなる位置までの垂線の長さで表される。
【0030】
図2の例では、第1の電極3の全体が第2の電極4の延在方向の中心K2よりも圧電体層2の端部2Cの反対側に位置している。したがって、平面視において、第2の電極4の延在方向の中心K2よりも端部2C側では、第1の電極3と第2の電極4とが対向しておらず、第2の電極4の延在方向の中心K2よりも端部2Cの反対側では、第1の電極3と第2の電極4とが対向した状態となっている。
【0031】
図2の例では、第1の電極3は、第2の電極4の延在方向の中心K2から離間し、且つ当該中心K2寄りに位置しているが、第1の電極3は、第2の電極4の延在方向の中心K2と端部2Cから遠い方の短辺4bとの中間に位置していてもよく、端部2Cから遠い方の短辺4b寄りに位置していてもよい。第1の電極3の偏在とは、第1の電極3の半分を超える領域が第2の電極4の延在方向の中心K2よりも端部2Cの反対側に位置していることを指している。第1の電極3の偏在には、第1の電極3の短辺3bが第2の電極4の延在方向の中心K2と重なっている態様も含まれ得る。第1の電極3の偏在には、第1の電極3の大部分が第2の電極4の延在方向の中心K2よりも圧電体層2の端部2Cの反対側に位置し、第1の電極3の一部分が第2の電極4の延在方向の中心K2を超えて圧電体層2の端部2C側に位置している態様も含まれ得る。
【0032】
続いて、上述した構成を有する圧電基板1の作用効果を説明する。
【0033】
図4(a)は、比較例に係る圧電基板の端部付近の構成を示す要部拡大断面図である。同図に示すように、比較例に係る圧電基板101は、不活性部107を構成する最外素子相当部分Pfcにおいて、第2の電極104の延在方向の中心K2よりも端部102C側と、第2の電極104の延在方向の中心K2よりも圧電体層102の端部102Cの反対側とにそれぞれ第1の電極103が配置されている点で、実施例に係る圧電基板1(図5(a)参照)と相違している。
【0034】
図4(a)に示すように、圧電基板101では、焼成の際の圧電体層と電極との収縮応力の違いに起因し、第1面102A側に向かって凸となるように第1の電極103の応力S1が圧電体層102に作用し、第2面102B側に向かって凸となるように第2の電極104の応力S2が圧電体層102に作用する。このとき、圧電基板101の中央側の素子相当部分(不図示)では、その周囲の素子相当部分の応力に相殺されることで、圧電基板101の反りが比較的生じにくい傾向がある。
【0035】
一方、圧電基板101の端部領域F2cでは、圧電体層102の端部102Cがフリーとなっている分、周囲の素子相当部分による応力の相殺の影響が小さくなる。このため、比較例に係る圧電基板101のように、最外素子相当部分Pfcにおいて、第1の電極103と第2の電極104とを圧電体層102の厚さ方向Dに対して一定の対称性をもって配置する場合、図4(b)に示すように、端部領域F2cにおいて圧電体層102の厚さ方向Dの一方側(ここでは第1面102A側)に圧電基板101が大きく反ってしまうことが考えられる。このような反りが生じた圧電基板101をキャビティ(不図示)に取り付けた場合、例えば反りの基端部分においてクラックGが発生してしまうことが考えられる。
【0036】
これに対し、実施例に係る圧電基板1では、図5(a)に示すように、最外素子相当部分Pfにおいて、第2の電極の面積R2を第1の電極3の面積R1よりも大きくする一方で、第1の電極3における圧電体層2の厚さ方向Dの中心からの距離T1が第2の電極4における圧電体層2の厚さ方向Dの中心K1からの距離T2よりも大きくなっている。また、圧電体層2の厚さ方向Dから見た場合に、第1の電極3が第2の電極4の延在方向の中心K2よりも圧電体層2の端部2Cの反対側に偏在している。
【0037】
かかる圧電基板1では、圧電体層2の厚さ方向Dの中心K1からの第1の電極3の距離T1と、第2の電極4の延在方向の中心K2に対する第1の電極3の偏在度合いとを、第1の電極3の面積R1と第2の電極4の面積R2との比を基準に調整することで、圧電基板1の端部領域F2において第1の電極3による応力と第2の電極4による応力とをバランス良く相殺できる。したがって、圧電基板1では、図5(b)に示すように、圧電体層2の端部2C付近での反りを低減できる。
【0038】
圧電基板1では、最外素子相当部分Pfにおいて、第1の電極3が圧電体層2の第1面2A上に配置され、第2の電極4が圧電体層2の内部に配置されている。このような構成により、第2の電極4による応力を第1の電極3による応力で効率的に相殺できる。したがって、圧電体層2の端部2C付近での反りを一層効果的に低減できる。
【0039】
圧電基板1では、圧電体層2の厚さ方向Dから見た場合に、第1の電極3の形成領域が第2の電極4の形成領域内に位置している。このような構成により、第1の電極3による応力の全体を第2の電極4による応力の相殺に用いることができる。したがって、圧電体層2の端部2C付近での反りを一層効果的に低減できる。
【0040】
圧電基板1では、圧電体層2の端部2Cから第1の電極3までの距離T3が、圧電体層2の端部2Cから第2の電極4までの距離T4よりも大きくなっている。これにより、第1の電極3を第2の電極4の延在方向の中心K2よりも圧電体層2の端部2Cの反対側により確実に偏在させることができる。したがって、第1の電極3による応力と第2の電極4による応力とを一層バランス良く相殺でき、圧電体層2の端部2C付近での反りの低減効果を更に高めることができる。
【0041】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、一つの最外素子相当部分Pfにおいて単体の第1の電極3が配置されているが、一つの最外素子相当部分Pfにおいて複数の第1の電極3が配置されていてもよい。上記実施形態では、第1の電極3が圧電体層2の第1面2A上に位置する表面電極となっているが、第1の電極3が圧電体層2の内部に位置する内部電極となっていてもよい。上記実施形態では、圧電体層2の厚さ方向Dから見た場合に、第1の電極3の形成領域の全体が第2の電極4の形成領域と重なっているが、第1の電極3の形成領域の一部が第2の電極4の形成領域の外側にはみ出ていてもよい。
【0042】
上記実施形態では、圧電基板1の用途として、インクジェットプリンタの印刷ヘッドに設けられる圧電アクチュエータを例示したが、圧電基板1の用途はこれに限られない。圧電基板1の他の用途としては、例えば圧電センサ、加速度センサ、超音波モータ、発振器などが挙げられる。
【0043】
本開示の要旨は、以下の[1]~[4]のとおりである。
[1]第1面及び当該第1面と反対側の第2面とを有する圧電体層と、前記圧電体層の前記第1面側に設けられた第1の電極と、前記圧電体層の前記第2面側に設けられた第2の電極と、を備え、前記圧電体層、前記第1の電極、及び前記第2の電極によって構成される素子相当部分が前記圧電体層の前記第1面及び第2面の面内方向に配列され、前記圧電体層の最も端部寄りに位置する最外素子相当部分では、前記第2の電極の面積が前記第1の電極の面積よりも大きくなっており、前記第1の電極における前記圧電体層の厚さ方向の中心からの距離が前記第2の電極における前記圧電体層の厚さ方向の中心からの距離よりも大きくなっており、前記圧電体層の厚さ方向から見た場合に、前記第1の電極が前記第2の電極の延在方向の中心よりも前記圧電体層の端部の反対側に偏在している圧電基板。
[2]前記最外素子相当部分では、前記第1の電極は、前記圧電体層の前記第1面上に配置され、前記第2の電極は、前記圧電体層の内部に配置されている[1]記載の圧電基板。
[3]前記圧電体層の厚さ方向から見た場合に、前記第1の電極の形成領域は、前記第2の電極の形成領域内に位置している[1]又は[2]記載の圧電基板。
[4]前記圧電体層の前記端部から前記第1の電極までの距離は、前記圧電体層の前記端部から前記第2の電極までの距離よりも大きくなっている[1]~[3]のいずれか記載の圧電基板。
【符号の説明】
【0044】
1…圧電基板、2…圧電体層、2A…第1面、2B…第2面、2C…端部、3…第1の電極、4…第2の電極、D…圧電体層の厚さ方向、K1…圧電体層の厚さ方向の中心、K2…第2の電極の延在方向の中心、P…素子相当部分、Pf…最外素子相当部分、R1…第1の電極の面積、R2…第2の電極の面積、T1…圧電体層の厚さ方向の中心からの第1の電極の距離、T2…圧電体層の厚さ方向の中心からの第2の電極の距離、T3…圧電体層の端部から第1の電極までの距離、T4…圧電体層の端部から第2の電極までの距離。
図1
図2
図3
図4
図5