(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172219
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】空気調和装置の室内ユニット
(51)【国際特許分類】
F24F 1/0067 20190101AFI20231129BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20231129BHJP
F28F 9/013 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
F24F1/0067
F28F21/08 A
F28F9/013 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083874
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】中野 寛之
【テーマコード(参考)】
3L051
【Fターム(参考)】
3L051BF03
3L051BJ03
(57)【要約】
【課題】本開示が解決しようとする課題は、銅管に比べて強度が弱いアルミニウム又はアルミニウム合金製の伝熱管を用いた熱交換器において、輸送時の振動などに起因する外力によって伝熱管の位置ずれ、伝熱管同士の接触、損傷などが生じないように適正に保護することである。
【解決手段】壁部270が、曲管部207bと直管部207aとの境界の一部と対向するように貫通穴261の周縁に形成されることによって、室内ユニット2の姿勢にかかわらず、壁部270が管を支持するので、耐振動性が向上する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフィン(206)と、前記フィン(206)を貫通する直管部(207a)および隣接する前記直管部同士を繋ぐU字状の曲管部(207b)を有する複数の伝熱管(207)とを含む、1つ以上の熱交換部(20a、20b、20c、20d)で構成された熱交換器(20)と、
1つ又は複数の前記熱交換部が固定される固定板(26)と、
を備え、
前記伝熱管(207)は、アルミニウム又はアルミニウム合金製であり、
前記固定板(26)は、
少なくとも1つの前記熱交換部の前記曲管部(207b)が挿入される貫通穴(261)が形成されている板状の基部(260)と、
前記基部(260)の前記貫通穴(261)の周囲から前記曲管部(207b)の挿入方向に延び、前記曲管部(207b)の周面に対向する面を有する壁部(270)と、
を含み、
前記壁部(270)は、前記曲管部(207b)と前記直管部(207a)との境界の一部と対向するように前記貫通穴(261)の周縁に形成されている、
空気調和装置の室内ユニット(2)。
【請求項2】
前記壁部(270)は、前記室内ユニットの据え付け姿勢における前記貫通穴(261)の上部周縁に位置する第1壁部(271)を含む、
請求項1に記載の空気調和装置の室内ユニット(2)。
【請求項3】
前記壁部(270)は、前記室内ユニットの据え付け姿勢における前記貫通穴(261)の下部周縁に位置する第2壁部(272)を含む、
請求項2に記載の空気調和装置の室内ユニット(2)。
【請求項4】
前記第1壁部(271)および前記第2壁部(272)の少なくとも一方に、前記曲管部(207b)を固定する爪(270a)が形成されている、
請求項3に記載の空気調和装置の室内ユニット(2)。
【請求項5】
前記室内ユニットは壁掛け式である、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の空気調和装置の室内ユニット(2)。
【請求項6】
前記室内ユニットは壁掛け式であり、
前記熱交換部は、第1熱交換部(20a)と第2熱交換部(20b)とを含み、
前記第1熱交換部(20a)は、前記第2熱交換部(20b)よりも前記室内ユニットが据え付けられる壁に近く、
前記第1壁部(271)の平面部は、前記第2壁部(272)の平面部よりも前記壁に近い位置に設けられている、
請求項3または請求項4に記載の空気調和装置の室内ユニット(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アルミニウム又はアルミニウム合金製の伝熱管を用いた室内熱交換器を搭載した、空気調和装置の室内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍機器に使用される熱交換器には伝熱管として銅管が広く使用されているが、近年の銅価格の高騰により、代替の管材として、例えば特許文献1(特開2009-63216号公報)に開示されているような、アルミニウム又はアルミニウム合金が検討されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、アルミニウム又はアルミニウム合金製の伝熱管は銅管に比べて強度が弱い。それゆえ、輸送時の振動などに起因する外力によって伝熱管の位置ずれ、伝熱管同士の接触、損傷などが生じないように適正に保護する、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の空気調和装置の室内ユニットは、熱交換器と、固定板とを備える。熱交換器は、1つ以上の熱交換部で構成されている。熱交換部は、複数のフィンと、複数の伝熱管とを含む。伝熱管は、フィンを貫通する直管部および隣接する直管部同士を繋ぐU字状の曲管部を有する。固定板は、1つ又は複数の熱交換部が固定される。伝熱管は、アルミニウム又はアルミニウム合金製である。固定板は、板状の基部と、壁部とを含む。基部は、少なくとも1つの熱交換部の曲管部が挿入される貫通穴が形成されている。壁部は、基部の貫通穴の周囲から曲管部の挿入方向に延び、曲管部の周面に対向する面を有する。壁部は、曲管部と直管部との境界の一部と対向するように貫通穴の周縁に形成されている。
【0005】
この室内ユニットでは、管材がアルミニウム又はアルミニウム合金製であり、強度が銅管に比べて低いので、壁部により管を支持することにより、管の変形を抑制し、熱交換器の強度を適正に維持することができる。特に、壁部が曲管部と直管部との境界の一部と対向するように存在しているので、室内ユニットの姿勢にかかわらず、壁部が管を支持するので、耐振動性が向上する。
【0006】
第2観点の空気調和装置の室内ユニットは、第1観点の空気調和装置の室内ユニットであって、壁部が第1壁部を含む。第1壁部は、室内ユニットの据え付け姿勢における貫通穴の上部周縁に位置する。
【0007】
この室内ユニットでは、第1壁部が、貫通穴の上部周縁から管を支持するので、上下方向、特に上方向の耐振動性が向上する。
【0008】
第3観点の空気調和装置の室内ユニットは、第2観点の空気調和装置の室内ユニットであって、壁部が第2壁部を含む。第2壁部は、室内ユニットの据え付け姿勢における前記貫通穴の下部周縁に位置する。
【0009】
この室内ユニットでは、第2壁部が、貫通穴の下部周縁から管を支持するので、上下方向、特に下方向の耐振動性が向上する。それゆえ、第1壁部と併設されれば、上下方向の耐振動性がさらに向上する。
【0010】
第4観点の空気調和装置の室内ユニットは、第3観点の空気調和装置の室内ユニットであって、第1壁部および第2壁部の少なくとも一方に、曲管部を固定する爪が形成されている。この室内ユニットでは、振動に対する耐振動性がさらに高まる。
【0011】
第5観点の空気調和装置の室内ユニットは、第1観点から第4観点のいずれか1つの空気調和装置の室内ユニットであって、室内ユニットは壁掛け式である。
【0012】
第6観点の空気調和装置の室内ユニットは、第3観点または第4観点の空気調和装置の室内ユニットであって、室内ユニットは壁掛け式である。熱交換部は、第1熱交換部と第2熱交換部とを含む。第1熱交換部は、第2熱交換部よりも室内ユニットが据え付けられる壁に近い。第1壁部の平面部は、第2壁部の平面部よりも壁に近い位置に設けられている。
【0013】
この室内ユニットでは、第1熱交換部は、一般に上部が下部よりも前方になる姿勢であり、かかる場合、第1壁部が曲管部の外側かつ上側の位置から管を支持するので、上下方向、特に上方向の耐振動性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の一実施形態に係る空気調和装置の外観図である。
【
図5】固定板によって一体化された第1熱交換部、第2熱交換部、第3熱交換部および第4熱交換部の斜視図である。
【
図7】第1変形例に係る壁部の周辺の斜視図である。
【
図8】第2変形例に係る壁部の周辺の斜視図である。
【
図9】第2熱交換部に対応する第1基部の周辺の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(1)空気調和装置1の構成
図1は、本開示の一実施形態に係る空気調和装置1の外観図である。
図1において、空気調和装置1は、室内の壁面などに取り付けられる室内ユニット2と、室外に設置される室外ユニット3とを備えている。
【0016】
図2は、空気調和装置1の冷媒回路の構成図である。
図2において、冷媒回路は、室内熱交換器20、アキュムレータ31、圧縮機32、四路切換弁33、室外熱交換器30及び電動膨張弁34を含んでいる。
【0017】
(1-1)室内ユニット2
室内ユニット2には、室内熱交換器20およびファン21が搭載されている。室内熱交換器20は、接触する空気との間で熱交換を行う。ファン21は、室内空気を吸い込み、室内熱交換器20との間で熱交換を行わせ、熱交換された後の空気を室内に排出する。
【0018】
(1-2)室外ユニット3
室外ユニット3には、圧縮機32、圧縮機32の吐出側に接続される四路切換弁33、圧縮機32の吸入側に接続されるアキュムレータ31、四路切換弁33に接続された室外熱交換器30、及び室外熱交換器30に接続された電動膨張弁34を含んでいる。電動膨張弁34は、フィルタ35および液閉鎖弁36を介して配管41に接続されている。配管41は、室内熱交換器20の一端と接続されている。また、四路切換弁33は、ガス閉鎖弁37を介して配管42に接続されている。配管42は、室内熱交換器20の他端と接続されている。配管41,42は、
図1の冷媒配管4に相当する。また、室外ユニット3は、プロペラファン38をさらに含んでいる。プロペラファン38は、室外熱交換器30での熱交換後の空気を外部に排出する。プロペラファン38は、モータ39によって回転駆動される。
【0019】
(2)室内ユニット2の詳細構成
室内ユニット2は、
図1に示すように、正面視に置いて横方向に長いケーシング23を有している。ケーシング23は、室内熱交換器20およびファン21を収容している。室内熱交換器20は分割されており、分割されている室内熱交換器20の隙間がシールド部材24によって覆われている。シールド部材24は、当該隙間を空気が通過することを防ぐ(
図3参照)。
【0020】
(2-1)ケーシング23
図3は、室内ユニット2の側面断面図である。
図3において、ケーシング23は、前面パネル23aおよび底フレーム23bを含む。
【0021】
前面パネル23aは、上面230、下面232、前面235及び側面236,237(
図1参照)を有している。
【0022】
上面230は、室内熱交換器20の上方を覆っている。上面230は、複数のスリット状の開口からなる吸込口231を有している。
【0023】
下面232は、室内熱交換器20及びファン21の下方を覆っている。下面232は、室内ユニット2の長手方向に沿う開口である吹出口233を有している。
【0024】
吹出口233には、水平フラップ234が設けられている。水平フラップ234は、室内ユニット2の長手方向に平行な軸を中心に回動自在に設けられている。水平フラップ234は、モータによって回動し、吹出口233の開閉、および吹出空気の案内を行う。
【0025】
前面235は、概ね平坦に形成されており、室内熱交換器20の前方を覆っている。側面236、237は、室内熱交換器20の側方を覆っている。側面236,237として、左側面236と右側面237とが存在し、左側面236は正面視において室内熱交換器20の左側方、右側面は室内熱交換器20の右側方に配置されている(
図1参照)。
【0026】
底フレーム23bは、室内熱交換器20の後方を覆うとともに、室内ユニット2の背面を構成している。
【0027】
また、ドレンパン238が、室内熱交換器20の下方に配置されている。冷房運転時、吸込口231から吸い込まれた空気が、室内熱交換器20の内部を通過する冷媒との間で熱交換を行うので、室内熱交換器20の表面に水滴が発生する。ドレンパン238は、その水滴を受ける。ドレンパン238には、溜まった水滴を外部に排出するドレンホース(図示せず)が取り付けられている。
【0028】
(2-2)ファン21
ファン21は、クロスフローファンである。ファン21は、円筒形状のロータと、ロータの周面に回転軸方向に延びる羽根とを有し、回転軸と交わる方向に空気流を生成する。ファン21は、モータ22によって回転駆動される(
図2参照)。
【0029】
(2-3)室内熱交換器20
図3に示すように、室内熱交換器20は、フィン・アンド・チューブ式の熱交換器である。室内熱交換器20は、ファン21の前方、上方および後部上方を取り囲むように配置されている。室内熱交換器20は、側面視において概ね逆V字型の断面形状を有している。
【0030】
(2-3-1)熱交換部20a,20b,20c,20d
図4は、室内熱交換器20の斜視図である。
図4において、室内熱交換器20は、第1熱交換部20a、第2熱交換部20b、第3熱交換部20c、第4熱交換部20dを有している。各熱交換部20a,20b,20c,20dそれぞれは、水平方向に長い直方体の形状を呈している。
【0031】
第1熱交換部20aは、上端が室内ユニット2の前方へ向けて傾斜して配置されており、ファン21の上方から後部上方を覆うように配置されている。第2熱交換部20bは、上端が室内ユニット2の後方へ向けて傾斜して第1熱交換部20aの前方に配置されている。第2熱交換部20bは、ファン21の前部上方を覆うように配置されている。
【0032】
第2熱交換部20bの上端は、第1熱交換部20aの上端に近接している。このように第1熱交換部20aの上端と第2熱交換部20bの上端とが近接することにより、逆V字型の頂上部分Tが形成されている。
【0033】
第3熱交換部20cは、第2熱交換部20bの下方に配置されており、第3熱交換部20cの上端は第2熱交換部20bの下端に近接している。第3熱交換部20cは、ファン21の前方を覆うように配置されている。第4熱交換部20dは、第3熱交換部20cの下方に配置されている。第4熱交換部20dの上端は、第3熱交換部20cの下端に近接している。
【0034】
各熱交換部20a,20b,20c,20dは、複数のフィン206と、複数の伝熱管207とを含んでいる。複数のフィン206、および複数の伝熱管207はアルミニウム又はアルミニウム合金製である。
【0035】
伝熱管207は、直管部207aと曲管部207bとを有している。直管部207aは、フィン206を貫通する真っ直ぐな管である。曲管部207bは、隣接する直管部207a同士を繋ぐU字状の管のうち、真っ直ぐな管の部分を除いた円弧状の管である。したがって、U字状の管全体を「曲管部207b」と言うのではない。
【0036】
曲管部207bは、第1曲管部207baと第2曲管部207bbとを含む。第1曲管部207baは、直管をU字状に曲げることによって、直管部207aとシームレスに一体となっている円弧状の管部である。
【0037】
第2曲管部207bbは、2つの直管部207aの開放端に接続された後に、ロウ付けされるU字状の管のうち、真っ直ぐな管の部分を除いた円弧状の管部である。
【0038】
図4に示すように、室内熱交換器20では、伝熱管207の直管部207aが各熱交換部20a,20b,20c,20dの長手方向に平行に配置され、各熱交換部20a,20b,20c,20dの両側端において曲管部207bによって折り返されている。
【0039】
また、曲管部207bは、各熱交換部20a,20b,20c,20dの両側面から室内熱交換器20の長手方向と平行に突出している。
【0040】
室内熱交換器20がケーシング23に配置された状態では、曲管部207bは、ケーシング23の側面236,237に向けて水平方向へ突出する。
【0041】
室内熱交換器20の右側面(
図4の正面視右側)には、伝熱管207の終端部208が突出している。この終端部208には、他の冷媒回路構成部品に接続される冷媒配管が接続されるため、曲管部207bは設けられていない。
【0042】
(2-3-2)シールド部材24
図3に示すように、第1熱交換部20aと第2熱交換部20bとによって形成される頂上部分Tに隙間が存在する。当該隙間は、吸込口231のすぐ内側であって、吸込口231とファン21との間に位置しており、空気が通り易いので熱交換率の低下の原因となる。それゆえ、シールド部材24が、この隙間を塞ぐように取り付けられている。
【0043】
シールド部材24は、頂上部分Tに沿って上方から被せられるため、頂上部分Tの形状に合うようにV字型の断面形状となっている。頂上部分Tの隙間は室内熱交換器20の長手方向に沿って存在し、シールド部材24も室内熱交換器20の長手方向の長さと略同じ長さの細長い形状である。
【0044】
(2-3-3)固定板26
図5は、固定板26によって一体化された第1熱交換部20a、第2熱交換部20b、第3熱交換部20cおよび第4熱交換部20dの斜視図である。
図5において、固定板26は、樹脂成型品である。固定板26は、第1熱交換部20a、第2熱交換部20b、第3熱交換部20cおよび第4熱交換部20dそれぞれの両端(
図5には、一端側のみ記載)に配置されている。また、固定板26は、板状の基部260と壁部270とを有している。
【0045】
(2-3-3-1)基部260
基部260は、各熱交換部20a、20b、20c、20dの長手方向の端面に重なるように配置される。基部260は、第1基部260a、第2基部260b、第3基部260cおよび第4基部260dを含む。第1基部260a、第2基部260b、第3基部260cおよび第4基部260dは一体的に成形される。以下、第1基部260a、第2基部260b、第3基部260cおよび第4基部260dに共通の事項を説明するときのみ、「基部260」という名称を使う。
【0046】
第1基部260aは第1熱交換部20aに対応し、第2基部260bは第2熱交換部20bに対応する。第3基部260cは第3熱交換部20cに対応し、第4基部260dは第4熱交換部20dに対応する。
【0047】
図6は、固定板26の一部分の拡大図である。
図6において、基部260は、曲管部207bが挿入される貫通穴261が形成されている。また、
図5に示すように、第1基部260aに形成された貫通穴261には、第1熱交換部20aの曲管部207bが挿入される。
【0048】
また、第2基部260bに形成された貫通穴261には、第2熱交換部20bの曲管部207bが挿入される。さらに、第3基部260cに形成された貫通穴261には、第3熱交換部20cの曲管部207bが挿入される。そして、第4基部260dに形成された貫通穴261には、第4熱交換部20dの曲管部207bが挿入される。
【0049】
(2-3-3-2)壁部270
壁部270は、貫通穴261の周縁から曲管部207bの挿入方向に延び、その壁面が曲管部207bの周面に対向する。
【0050】
本実施形態では、1つの貫通穴261の周縁に2つの壁部270が設けられている。説明の便宜上、室内ユニット2の据え付け姿勢のときの室内熱交換器20の姿勢(
図5の室内熱交換器20の姿勢)において、曲管部207bの上側に位置する壁部270が第1壁部271であり、曲管部207bの下側に位置する壁部270が第2壁部272である。
【0051】
以下、第1壁部271および第2壁部272に共通の事項を説明するときのみ、「壁部270」という名称を使う。
【0052】
壁部270には、曲管部207bを固定する爪270aが設けられている。具体的には、爪270aは、曲管部207bのU字状の内側円弧の中央部に当たる位置に設けられている。
【0053】
固定板26は、貫通穴261に曲管部207bが挿入されるように各熱交換部20a、20b、20c、20dの端面に向かって押し付けられると、曲管部207bのU字状の外側円弧は爪270aを乗り越えて進み、曲管部207bのU字状の内側円弧が爪270aに掛かる。
【0054】
爪270aは、曲管部207bのU字状の内側円弧に隙間なく掛かるので、爪270aと曲管部207bとが、固定板26を各熱交換部20a、20b、20c、20dの端面に密着させる。その結果、各熱交換部20a、20b、20c、20dが一体となる。
【0055】
第1壁部271と第2壁部272との最短距離は、伝熱管に銅管が使用される場合に比べて大きく設定されている。これは、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の伝熱管は銅管に比べて強度が弱いので、曲管部207bの挿入時に爪270aの引っ掛かりによって曲管部207bが変形することを防止するためである。
【0056】
爪270aは、曲管部207bの貫通穴261への挿入方向(以下、X方向という。)に対しては強固な保持力を発揮するが、X方向と直交する方向に対する保持力はX方向に対する保持力よりも弱い。
【0057】
それゆえ、X方向と直交する方向に作用する力は、必然的に貫通穴261の周面で受け止められる。曲管部207bの変形を防止するために、貫通穴261の周面と曲管部207bとの接触幅を増やして面圧を低減することが望ましい。
【0058】
特に、X方向と直交する方向に作用する力は、室内ユニット2が輸送されているときの振動によって発生し易い。ところが、室内ユニット2の輸送時の姿勢は、必ずしも据え付け姿勢と一致するものではないので、輸送時の振動方向を特定することは困難である。
【0059】
それゆえ、貫通穴261の周面と曲管部207bとの接触幅を増やすために、貫通穴261の全周縁に壁を設けることが好ましい。但し、それは、製造コストの観点から合理的ではない。
【0060】
そこで、本実施形態では、壁部270は、曲管部207bと直管部207aとの境界207cの一部と対向するように貫通穴261の周縁に形成されている。「曲管部207bと直管部207aとの境界207c」は、たとえ直管の開放端にU字状の管がロウ付けによって接続されている場合であっても、ロウ付け部分ではなく、管が円弧状から直線状に変わる部分である。
【0061】
したがって、本実施形態では、壁部270は、爪270aを形成するために必要な部分と、曲管部207bと直管部207aとの境界207cの一部と対向するために必要な部分とで構成されている。
【0062】
(3)壁部270の変形例
(3-1)第1変形例
図5および
図6では、壁部270の高さが均一であるが、必ずしも、壁部270の高さが均一である必要はない。
【0063】
図7は、第1変形例に係る壁部270の周辺の斜視図である。
図7において、壁部270は、曲管部207bのU字状の内側円弧よりも高い位置まで突出する第1部分W1と、突出量が第1部分W1より小さい第2部分W2とを有する。
【0064】
爪270aは、第1部分W1に設けられている。第2部分W2は、少なくとも曲管部207bと直管部207aとの境界207cに対向していれば、曲管部207bと確実に接触することができる。
【0065】
第2部分W2の形状は、1つの壁部270当たりに要する樹脂量を減少させるので、壁部270の数量が多くなるほど減量効果が高まる。
【0066】
(3-2)第2変形例
図6および
図7では、壁部270が、曲管部207bと直管部207aとの境界207cの約1/2と対向するように貫通穴261の周縁に形成されている。しかし、必ずしも、境界207cの約1/2と対向させる必要はない。
【0067】
図8は、第2変形例に係る壁部270の周辺の斜視図である。
図8において、壁部270が、曲管部207bと直管部207aとの境界207cの約1/4と対向するように貫通穴261の周縁に形成されている。
【0068】
第1壁部271は、曲管部207bと直管部207aとの境界207cの上側約1/4と対向するように貫通穴261の周縁に形成されている。第2壁部272は、曲管部207bと直管部207aとの境界207cの下側約1/4と対向するように貫通穴261の周縁に形成されている。
【0069】
それゆえ、
図8のX方向と直交する方向に作用する力は、貫通穴261の周面および第1壁部271と第2壁部272とで受け止められ、伝熱管207への局部的な応力集中が回避されるので、変形が防止される。
【0070】
(3-3)第3変形例
上記第2変形例では、第1壁部271が、曲管部207bと直管部207aとの境界207cの上側約1/4と対向するように貫通穴261の周縁に形成されている、と説明したが、境界207cの上側約1/4が、ファン21から視て遠い側に位置する「外側の1/4」なのか、ファン21から視て近い側に位置する「内側の1/4」なのか特定していない。
【0071】
第3変形例では、第1基部260a、第2基部260b、第3基部260cおよび第4基部260dについて、境界207cの上側約1/4が、「外側の1/4」であるのか、それとも「内側の1/4」であるのか、を特定する。
【0072】
室内熱交換器20は、V字を反転させたような形状をしているので、室内ユニット2の据え付け姿勢における曲管部207bの姿勢が、熱交換部ごとに異なる。
【0073】
(3-3-1)第1基部260aの場合(壁側の基部)
図5および
図8に示すように、第1熱交換部20aの曲管部207bは、上部が下部に対して前方となるように傾倒しているので、第1熱交換部20aに対応する第1基部260aの貫通穴261も上部が下部に対して前方となるように傾倒している。
【0074】
一般的に、室内ユニット2の据え付け姿勢における上下方向の振動が多いと推定されるので、第1基部260aでは、第1壁部271が、曲管部207bと直管部207aとの境界207cの上側かつ外側の約1/4と対向するように貫通穴261の周縁に形成されている。また、第2壁部272は、曲管部207bと直管部207aとの境界207cの下側かつ内側の約1/4と対向するように貫通穴261の周縁に形成されている。
【0075】
(3-3-2)第2基部260bの場合
図9は、第2熱交換部20bに対応する第2基部260bの周辺の斜視図である。
図5および
図9において、第2熱交換部20bの曲管部207bは、上部が下部に対して後方となるように傾倒しているので、第2熱交換部20bに対応する第2基部260bの貫通穴261も上部が下部に対して後方となるように傾倒している。
【0076】
室内ユニット2の据え付け姿勢における上下方向の振動が多いという観点から、第2基部260bでは、第1壁部271が、曲管部207bと直管部207aとの境界207cの上側かつ外側の約1/4と対向するように貫通穴261の周縁に形成されている。また、第2壁部272は、曲管部207bと直管部207aとの境界207cの下側かつ内側の約1/4と対向するように貫通穴261の周縁に形成されている。
【0077】
(3-3-3)第3基部260cおよび第4基部260dの場合
図5に示すように、第3熱交換部20cおよび第4熱交換部20dの曲管部207bは、上部と下部とが鉛直方向に並んでいる。
【0078】
室内ユニット2の据え付け姿勢における上下方向の振動が多いことに鑑みて、第3基部260cおよび第4基部260dでは、第1壁部271および第2壁部272のいずれか一方が曲管部207bと直管部207aとの境界207cの上側かつ外側の約1/4、他方が下側かつ内側の約1/4と対向するように貫通穴261の周縁に形成されればよい。
【0079】
(4)特徴
(4-1)
壁部270は、曲管部207bと直管部207aとの境界の一部と対向するように貫通穴261の周縁に形成されている。管材がアルミニウム又はアルミニウム合金製の場合、強度が銅管に比べて低いので、壁部270により管を支持することにより、管の変形を抑制し、室内熱交換器20の強度を適正に維持することができる。特に、壁部270が曲管部207bと直管部207aとの境界207cの一部と対向するように存在しているので、室内ユニット2の姿勢にかかわらず、壁部270が管を支持するので、耐振動性が向上する。
【0080】
(4-2)
壁部270が第1壁部271を含む。第1壁部271は、室内ユニット2の据え付け姿勢における貫通穴261の上部周縁に位置する。それゆえ、上下方向、特に上方向の耐振動性が向上する。
【0081】
(4-3)
壁部270が第2壁部272を含む。第2壁部272は、室内ユニット2の据え付け姿勢における貫通穴261の下部周縁に位置する。それゆえ、上下方向、特に下方向の耐振動性が向上する。また、第2壁部272が第1壁部271と併設されれば、上下方向の耐振動性がさらに向上する。
【0082】
(4-4)
第1壁部271および第2壁部272の少なくとも一方に、曲管部207bを固定する爪270aが形成されている。それゆえ、振動に対する耐振動性がさらに高まる。
【0083】
(4-5)
室内ユニット2は壁掛け式である。
【0084】
(4-6)
第1壁部271の平面部は、第2壁部272の平面部よりも壁に近い位置に設けられている。第1熱交換部20aは、一般に上部が下部よりも前方になる姿勢であり、かかる場合、第1壁部271が曲管部207bの外側かつ上側の位置から管を支持するので、上下方向、特に上方向の耐振動性が高まる。
【0085】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0086】
2 室内ユニット
20 熱交換器
20a 第1熱交換部
20b 第2熱交換部
20c 第3熱交換部
20d 第4熱交換部
26 固定板
206 フィン
207 伝熱管
207a 直管部
207b 曲管部
260 基部
261 貫通穴
270 壁部
270a 爪
271 第1壁部
272 第2壁部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】