(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172226
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20231129BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20231129BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20231129BHJP
F25B 6/04 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B60H1/22 651Z
B60H1/22 651B
B60H1/32 613E
F25B1/00 399Y
F25B6/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083882
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 宣伯
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA11
3L211BA02
3L211CA19
3L211DA05
3L211DA26
3L211DA28
(57)【要約】
【課題】外気温度が特に低い場合や暖房起動時の急速な室内温度の上昇要求に対応させると共に、臨界温度が低い冷媒の冷媒回路を用いる場合であっても効率的な熱交換を行う。
【解決手段】冷媒回路、冷媒回路により温調される熱媒体が循環する熱媒体回路、及び、熱媒体が流れる複数の熱交換器が空気流通路に配置して温調した空気を車室内に送風する空調ユニットを備え、冷媒回路は、冷媒の循環方向に沿って順に設けられ、熱媒体に冷媒の熱を放熱する第1冷媒熱媒体熱交換器及び第2冷媒熱媒体熱交換器を含み、熱媒体回路は、第1冷媒熱媒体熱交換器又は第2冷媒熱媒体熱交換器の何れか一方を通過した熱媒体を複数の熱交換器の少なくとも1つに流入させる流路と、第1冷媒熱媒体熱交換器及び第2冷媒熱媒体熱交換器の双方を通過した熱媒体を複数の熱交換器に流入させる流路とを切替える流路切替部を備える車両用空調装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒回路と、
前記冷媒回路により加熱又は冷却される熱媒体が循環する熱媒体回路と、
前記熱媒体回路を循環する熱媒体が流れる複数の熱交換器が空気流通路に配置され、前記空気流通路を通過する空気を温調して車室内に送風する空調ユニットと、を備えた車両用空調装置であって、
前記冷媒回路は、冷媒の循環方向に沿って順に設けられ、前記熱媒体回路を循環する熱媒体に冷媒の熱を放熱する第1冷媒熱媒体熱交換器及び第2冷媒熱媒体熱交換器を含み、
前記熱媒体回路は、前記第1冷媒熱媒体熱交換器又は前記第2冷媒熱媒体熱交換器の何れか一方を通過した熱媒体を複数の前記熱交換器の少なくとも1つに流入させる流路と、前記第1冷媒熱媒体熱交換器及び前記第2冷媒熱媒体熱交換器の双方を通過した熱媒体を複数の前記熱交換器に流入させる流路とを切替える流路切替部を備えた、車両用空調装置。
【請求項2】
前記流路切替部は、前記第2冷媒熱媒体熱交換器を通過した熱媒体を、前記空気流通路の上流側に配置された前記熱交換器に流入させるか、又は、前記第1冷媒熱媒体熱交換器に流入させるかの何れかに切替える、請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記流路切替部は、前記第1冷媒熱媒体熱交換器を通過した熱媒体を前記空気流通路の下流側に配置された前記熱交換器に流入させると共に、前記第2冷媒熱媒体熱交換器を通過した熱媒体を前記空気流通路の上流側に配置された前記熱交換器に流入させる、請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記流路切替部は、前記第2冷媒熱媒体熱交換器を通過した熱媒体を前記第1冷媒熱媒体熱交換器に流入させ、前記空調ユニットの複数の前記熱交換器に流入させる、請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記流路切替部は、前記第2冷媒熱媒体熱交換器及び前記第1冷媒熱媒体熱交換器を順に通過した熱媒体を、前記空気流通路の下流側に配置された前記熱交換器を通過させた後に、前記空気流通路の上流側に配置された前記熱交換器に流入させる、請求項1記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置として、ヒートポンプ式の冷媒回路を用いたものが知られている。このような車両用空調装置は、一般に、圧縮機、放熱用の凝縮器、膨張機構、吸熱用の蒸発器を備えた冷媒回路と、凝縮器又は蒸発器にて冷媒と熱交換した熱媒体が循環する熱媒体回路と、熱媒体回路を循環する熱媒体が通過する熱交換器を内部に備える車室内空調ユニットによって構成されており、凝縮器での放熱で高温になった熱媒体を車室内空調ユニットの熱交換器に送ることで暖房運転を行い、蒸発器での吸熱で低温になった熱媒体を車室内空調ユニットの熱交換器に送ることで冷房運転を行っている。
【0003】
従来、前述した車両用空調装置は、各種運転モードに対応して熱媒体回路の流路切り替えが行われており、冷房運転や暖房運転の効率改善に際して、車室内空調ユニットの内部に設けられる複数の熱交換器に対して、熱媒体を直列に流すことなどが行われている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術によると、車室内空調ユニット内に設けた複数の熱交換器に対して暖房運転時には全ての熱交換器に高温の熱媒体を流すことで暖房効率の改善を図っている。しかしながら、これによると、車室内空調ユニット内の複数の熱交換器に流れる熱媒体の温度帯が一様になるので、外気温度が特に低い場合や急速な室内温度の上昇の要求に対しては、十分な効率改善が望めない問題があった。
【0006】
また、冷媒回路を流れる冷媒は、環境負荷を考慮してCO2やプロパンなどの自然系冷媒を用いることが検討されている。このような自然系冷媒の中には、臨界温度が低いものがあり、冷媒回路のサイクルの高圧側が超臨界条件になって、フロンのような冷媒のように凝縮せず、温度を徐々に低下させる冷却過程になる。このため、臨界温度が低い冷媒を採用する場合には、従来の冷媒回路における凝縮器のような冷媒熱媒体熱交換器では効率的な熱交換を行い難い問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題としている。すなわち、ヒートポンプ式冷媒回路を備えた車両用空調装置において、外気温度が特に低い場合や暖房起動時の急速な室内温度の上昇要求に対応できるような効率改善が可能であること、臨界温度が低い冷媒の冷媒回路を用いる場合であっても効率的な熱交換を行えるようにすること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明の一態様は、以下の構成を具備する。
すなわち、本発明の一態様に係る車両用空調装置は、冷媒回路と、前記冷媒回路により加熱又は冷却される熱媒体が循環する熱媒体回路と、前記熱媒体回路を循環する熱媒体が流れる複数の熱交換器が空気流通路に配置され、前記空気流通路を通過する空気を温調して車室内に送風する空調ユニットと、を備えた車両用空調装置であって、前記冷媒回路は、冷媒の循環方向に沿って順に設けられ、前記熱媒体回路を循環する熱媒体に冷媒の熱を放熱する第1冷媒熱媒体熱交換器及び第2冷媒熱媒体熱交換器を含み、前記熱媒体回路は、前記第1冷媒熱媒体熱交換器又は前記第2冷媒熱媒体熱交換器の何れか一方を通過した熱媒体を複数の前記熱交換器の少なくとも1つに流入させる流路と、前記第1冷媒熱媒体熱交換器及び前記第2冷媒熱媒体熱交換器の双方を通過した熱媒体を複数の前記熱交換器に流入させる流路とを切替える流路切替部を備える。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴を備えた本発明の車両用空調装置によると、外気温度が特に低い場合や暖房起動時の急速な室内温度の上昇要求に対応できるような効率改善が可能であること、臨界温度が低い冷媒の冷媒回路を用いる場合であっても効率的な熱交換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の制御部の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る車両用空調装置における第1暖房モード実行時の熱媒体の流れを示す説明図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る車両用空調装置における第2暖房モード実行時の熱媒体の流れを示す説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る車両用空調装置における冷房モード実行時の熱媒体の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る熱媒体回路10は、例えば、車両に搭載され、車載機器の温調や車室内の空調を行う車両用空調装置1に適用される。
車両用空調装置1は、熱源となる冷媒回路Rと、冷媒との熱交換によって温度管理された熱媒体を循環させる熱媒体回路10と、熱媒体回路10を循環する熱媒体によって温度調節された空気を車室内に供給する空調ユニット80と、を備えている。
【0013】
図1に示す例では、冷媒回路Rは、圧縮機11、凝縮器12(第1凝縮器121及び第2凝縮器122)、膨張弁13、蒸発器14及びアキュームレータ15が順次冷媒配管で接続されて構成され、冷媒を循環させる閉回路である。凝縮器12は、冷媒回路Rにおいて冷媒の循環方向上流側から順に配置された第1凝縮器121及び第2凝縮器122を含んでいる。なお、冷媒回路Rは、例えば、凝縮器12の下流側にレシーバを備えるような回路であってもよい。
【0014】
熱媒体回路10は、高温熱媒体流路20、低温熱媒体流路30、温調対象熱媒体流路40、タンク50、流路切替部としての第1流路切替部V1、第2流路切替部V2、四方弁61及び四方弁62を含んで構成されている。
【0015】
高温熱媒体流路20は、冷媒回路Rにおける凝縮器12と一体になって、熱媒体-冷媒の熱交換を行う冷媒熱媒体熱交換器である高温熱交換器21を備えている。高温熱交換器21は、第1凝縮器121と一体になって熱媒体-冷媒の熱交換を行う第1高温熱交換器211(第1冷媒熱媒体熱交換器)と、第2凝縮器122と一体になって熱媒体-冷媒の熱交換を行う第2高温熱交換器212(第2冷媒熱媒体熱交換器)とを含んでいる。高温熱媒体流路20では、第1ポンプP1によって圧送された熱媒体が、高温熱交換器21を通過する間に冷媒回路Rにおける凝縮器12での冷媒の放熱で高温になって循環する。
【0016】
高温熱媒体流路20は、第1高温熱交換器211を含む第1高温熱媒体流路201と第2高温熱交換器212を含む第2高温熱媒体流路202とを含んでいる。第1高温熱媒体流路201及び第2高温熱媒体流路202は、第1流路切替部V1、四方弁61及び四方弁62を制御することで、夫々独立した流路とすることができると共に、互いに接続され第1高温熱交換器211及び第2高温熱交換器212を含む1つの流路とすることができる。
【0017】
低温熱媒体流路30は、冷媒回路Rにおける蒸発器14と一体になって、熱媒体-冷媒の熱交換を行う低温熱交換器31を備えており、第2ポンプP2によって圧送された熱媒体が、低温熱交換器31を通過する間に冷媒回路Rにおける蒸発器14での冷媒の吸熱で低温になって循環する。
【0018】
温調対象熱媒体流路40は、電動車両におけるバッテリの温調を行うバッテリ用熱交換器41と、走行用モータの温調を行うモータ用熱交換器42と、インバータの温調を行うインバータ用熱交換器43と、パワーコントロールユニットの温調を行うPCU用熱交換器44と、室外熱交換器45とを備えている。温調対象熱媒体流路40において熱媒体は第3ポンプP3によって圧送される。
【0019】
なお、温調対象熱媒体流路40では、バッテリ用熱交換器41を含む第1流路401と、室外熱交換器45を含む第2流路402と、モータ用熱交換器42、インバータ用熱交換器43及びPCU用熱交換器44を含む第3流路403とが、第2流路切替部V2を介して接続されている。第1流路401、第2流路402及び第3流路403は、第2流路切替部V2を制御することで、互いに独立した流路とすることができるほか、一部又は全部が接続した流路とすることができる。
【0020】
タンク50は、高温熱媒体流路20に接続される流入口52と、温調対象熱媒体流路40に接続される流入口54と、低温熱媒体流路30に接続される流出口53とを備えている。
高温熱媒体流路20には、第1ポンプP1の熱媒体上流側に流入口52に接続される接続部28が設けられている。温調対象熱媒体流路40には、各温調対象用熱交換器の熱媒体下流側に流入口54に接続される接続部48が設けられている。低温熱媒体流路30には、第2ポンプP2の熱媒体上流側に流出口53に接続される接続部38が設けられている。
【0021】
すなわち、タンク50は、
図1に示すように、流入口52によって高温熱媒体流路20における第1ポンプP1の上流側と接続され、流入口54によって温調対象熱媒体流路40におけるモータ用熱交換器42の熱媒体下流側と接続され、流出口53によって低温熱媒体流路30における第2ポンプP2の熱媒体上流側に接続される。
【0022】
また、接続部28からタンク50の流入口52に至る経路にリリーフ弁57が設けられている。これにより、高温熱媒体流路20を循環する熱媒体の温度の上昇により熱媒体が膨張し、高温熱媒体流路20の回路容量に対して熱媒体量が大きくなった場合に、リリーフ弁57が開状態となり、高温熱媒体流路20から熱媒体が流入口52を介してタンク50に流入する。
【0023】
同様に、接続部48からタンク50の流入口54に至る経路にリリーフ弁58が設けられている。これにより、温調対象熱媒体流路40を循環する熱媒体の温度の上昇により熱媒体が膨張し、温調対象熱媒体流路40の回路容量に対して熱媒体量が大きくなった場合に、リリーフ弁58が開状態となり、温調対象熱媒体流路40から熱媒体が流入口54を介してタンク50に流入する。
【0024】
一方、低温熱媒体流路30を循環する熱媒体の温度が低下して熱媒体が収縮すると、タンク50に貯留した熱媒体が流出口53から流出し、接続部38を介して低温熱媒体流路30に流入する。
【0025】
なお、熱媒体回路10を循環する熱媒体としては、添加剤が入っていない水或いは不凍性剤や防腐剤等の添加剤が混合された水、更には油等の液熱媒体などを採用することができる。
【0026】
空調ユニット80は、空気(外気又は内気)を空調ユニット80に吸い込む吸込口83と、吸込口83から吸い込まれた空気が通過する空気流通路84と、空気流通路84内に設けられ熱媒体回路10を循環する熱媒体が流れる第1熱交換器81及び第2熱交換器82とを備えている。
【0027】
空調ユニット80では、吸込口83から空気流通路84に導入された空気を第1熱交換器81及び第2熱交換器82に通風させ、第1熱交換器81及び第2熱交換器82において熱媒体と熱交換することで温調された空気を車室内に送風する。
【0028】
図2に、車両用空調装置1の制御を司る制御部100の概略構成を示す。なお、
図2において、本実施形態に係る車両用空調装置1による動作に直接関係しない構成については図示及び説明を適宜省略している。
【0029】
制御部100は、走行用モータ、インバータ、パワーコントロールユニットの駆動制御やバッテリの充放電制御を含む車両全般の制御を司る車両コントローラ200に車両通信バスを介して接続され、情報の送受信を行う。制御部100及び車両コントローラ200には、例えばECU(Electronic Control Unit)やマイクロコンピュータなど、プロセッサを備えたコンピュータを適用することができる。
【0030】
制御部100には、次の各センサや機器が接続され、これらの各センサ等の出力が入力される。すなわち、制御部100には、高温熱交換器21に流入して凝縮器12によって加熱された熱媒体の温度を検出する温度センサTC1、低温熱交換器31に流入して蒸発器14によって冷却された熱媒体の温度を検出する温度センサTC2、空調ユニット80の第1熱交換器81及び第2熱交換器82に流入する熱媒体の温度を検出する温度センサTC80、バッテリの温度を検出するバッテリ温度センサTC41(バッテリ自体の温度、バッテリ用熱交換器41に流入又は流出する熱媒体の温度のうち、いずれかの温度)、モータの温度を検出するモータ温度センサTC42(モータ自体の温度、モータ用熱交換器42に流入又は流出する熱媒体の温度のうち、いずれかの温度)、インバータの温度を検出するインバータ温度センサTC43(インバータ自体の温度、インバータ用熱交換器43に流入又は流出する熱媒体の温度のうち、いずれかの温度)、及び、パワーコントロールユニットの温度を検出するPCU温度センサTC44(PCU自体の温度、PCU用熱交換器44に流入又は流出する熱媒体の温度のうち、いずれかの温度)、及び空調操作部300が接続されている。
【0031】
一方、制御部100の出力には、膨張弁13、第1ポンプP1、第2ポンプP2、第3ポンプP3、第1流路切替部V1、第2流路切替部V2及び四方弁61,62が接続されている。そして、制御部100は各センサの出力と空調操作部300にて入力された設定、車両コントローラ200からの情報に基づいてこれらを制御する。
【0032】
このように構成された車両用空調装置1では、制御部100によって第1流路切替部V1、第2流路切替部V2及び四方弁61,62を制御することにより、熱媒体回路10の高温熱媒体流路20、低温熱媒体流路30及び温調対象熱媒体流路40をそれぞれ独立した流路又は接続した流路となるように切替えることができる。
【0033】
また、車両用空調装置1では、制御部100によって第1流路切替部V1、第2流路切替部V2及び四方弁61,62を制御することにより、熱媒体回路10の高温熱媒体流路20又は低温熱媒体流路30の一方又は両方が、空調目的や目標空調温度に応じて第1熱交換器81又は第2熱交換器82に選択的に接続される。
【0034】
これにより、高温熱媒体流路20又は低温熱媒体流路30の一方又は両方において温調された熱媒体が、第1流路切替部V1又は第2流路切替部V2の少なくともいずれか一方を経由して第1熱交換器81又は第2熱交換器82の少なくともいずれか一方に流入する。
【0035】
このとき、制御部100は、高温熱媒体流路20において、第1高温熱媒体流路201と第2高温熱媒体流路202とを接続した流路とし、第1高温熱交換器211及び第2高温熱交換器212を通過した熱媒体を第1熱交換器81及び第2熱交換器82の双方に流すように制御することができる。この場合、第2高温熱交換器212と第1高温熱交換器211とを順に通過した熱媒体が、空気流通路84の下流側に配置された第2熱交換器82を流れた後に、空気流通路84の上流側に配置された第1熱交換器81に流れる。
【0036】
また、制御部100は、第1高温熱媒体流路201と第2高温熱媒体流路202とを独立した流路として、第1高温熱交換器211を通過した熱媒体を空気流通路84の下流側に配置された第2熱交換器82に流しつつ、第2高温熱交換器212を通過した熱媒体を空気流通路84の上流側に配置された第1熱交換器81に流すよう制御することができる。
【0037】
制御部100は、第1流路切替部V1を制御して、高温熱媒体流路20の高温熱交換器21に流入して凝縮器12によって加熱された熱媒体を、空調ユニット80に配置された第1熱交換器81及び第2熱交換器82に流し、空調ユニット80の空気流通路84を通過する空気を加熱する。空調ユニット80で温められた空気を車室内に供給することで、車室内の暖房を行うことができる。
【0038】
制御部100は、低温熱媒体流路30の低温熱交換器31に流入して蒸発器14によって冷却された熱媒体を、第1流路切替部V1によって空調ユニット80に配置された第1熱交換器81及び第2熱交換器82に流すように制御して、空調ユニット80を通過する空気を冷却する。空調ユニット80で冷却された空気を車室内に供給することで、車室内の冷房を行うことができる。
【0039】
さらに、制御部100は、第1流路切替部V1、第2流路切替部V2及び四方弁61,62を制御して、温調対象熱媒体流路40に含まれる各温調対象用熱交換器(バッテリ用熱交換器41、モータ用熱交換器42、インバータ用熱交換器43、PCU用熱交換器44)の目標温度に応じて、高温熱媒体流路20の高温の熱媒体又は低温熱媒体流路30の低温の熱媒体を、温調対象熱媒体流路40に循環させる。高温熱媒体流路20又は低温熱媒体流路30において温調された熱媒体を温調対象熱媒体流路40に循環させることで、バッテリ用熱交換器41、モータ用熱交換器42、インバータ用熱交換器43、及びPCU用熱交換器44の温調を行うことができる。
【0040】
以下、このように構成された車両用空調装置1による動作について説明する。本実施形態に係る車両用空調装置1では、例えば、外気温度が特に低い場合や車両用空調装置の起動時などの急速な車室内温度の上昇要求に対応可能な第1暖房モード、車室内温度の上昇要求が第1暖房モードよりも低い第2暖房モード、冷房モード、除湿モード、車載機器の冷却又は暖機を含む温調モードなどの様々な動作モードを実行することができる。
【0041】
上記した各種動作モードの実行時において、車両用空調装置1の冷媒回路Rでは、制御部100により圧縮機11の回転数等を適宜制御しながら、凝縮器12の放熱と蒸発器14の吸熱を利用して車室内に供給される空気を目標温度に調整し、車室内の空調を行う。冷媒回路Rにおいて、冷媒は、次のように循環する。
【0042】
すなわち、圧縮機11から吐出された高圧のガス冷媒は、凝縮器12において高温熱交換器21を通過する熱媒体と熱交換することにより放熱して液化凝縮し、高圧の液冷媒となる。凝縮器12から流出した高圧液冷媒は、膨張弁13によって減圧されて膨張し、低圧冷媒となり、蒸発器14に流入する。蒸発器14に流入した低圧冷媒は、蒸発器14において低温熱交換器31を通過する熱媒体と熱交換することにより蒸発し、ガス冷媒となって蒸発器14を流出し、アキュームレータ15を介して圧縮機11へ戻る。
【0043】
以下、急速な車室内温度の上昇要求に対応可能な第1暖房モード、車室内温度の上昇要求が第1暖房モードよりも低い第2暖房モード、及び冷房モードについて説明する。
【0044】
(暖房モードについて)
(1)第1暖房モード
本実施形態に係る第1暖房モードは、急速な車室内温度の上昇要求に対応可能な暖房モードであり、バッテリを第2高温熱交換器212及び各種車載機器の廃熱を利用して暖機しつつ、室外熱交換器45を吸熱源として用いて車室内の暖房とシート毎の暖房を行う動作モードである。
【0045】
第1暖房モードの実行時は、高温熱媒体流路20のうち第1高温熱媒体流路201と第2高温熱媒体流路202とを夫々独立の流路とし、第1高温熱媒体流路201の第1高温熱交換器211において加熱された熱媒体を、第2熱交換器82に導入させる。また、第2高温熱媒体流路202の第2高温熱交換器212において加熱された熱媒体を、第1熱交換器81に導入させる。
第1暖房モードにおける熱媒体の流れを
図3に示す。
【0046】
図3では、熱媒体の流れについて、高温の熱媒体が循環する配管を黒色の実線で示し、低温の熱媒体が循環する配管を一点鎖線で示し、高温と低温との中間の温度帯の熱媒体が循環する配管を灰色の実戦で示している。
制御部100は、第1流路切替部V1、第2流路切替部V2及び四方弁61,62を制御して、熱媒体回路10において以下のように熱媒体を循環させる。
【0047】
制御部100は、高温熱媒体流路20の第1高温熱媒体流路201と第2高温熱媒体流路202とを夫々独立した流路とし、温調対象熱媒体流路40のうち第1流路401と第3流路403とが第2高温熱媒体流路202と接続した流路とする。また、制御部100は、第1高温熱媒体流路201に第2熱交換器82を接続させ、第2高温熱媒体流路202に第1熱交換器81を接続させる。
【0048】
これにより、第1高温熱交換器211を通過して加熱された熱媒体は、第1流路切替部V1を経由して第2熱交換器82に流れ、2熱交換器82に流入した熱媒体は、空気流通路84を通過する空気と熱交換する。第2熱交換器82を流れた熱媒体は、四方弁62を経て第1ポンプP1によって第1高温熱交換器211に戻る循環を繰り返す。
【0049】
一方、第2高温熱交換器212を通過して加熱された熱媒体は、四方弁62及び第1流路切替部V1を経由して第1熱交換器81に流入し、空気流通路84を通過する空気と熱交換する。第1熱交換器81を出た熱媒体は、第1流路切替部V1、四方弁61及び第2流路切替部V2を経由して第3ポンプP3によりバッテリ用熱交換器41に流入してバッテリを加熱する。
【0050】
バッテリ用熱交換器41を通過した熱媒体は、第2流路切替部V2を経由して、PCU用熱交換器44、インバータ用熱交換器43及びモータ用熱交換器42に順次流入する。PCU用熱交換器44、インバータ用熱交換器43及びモータ用熱交換器42を通過して各車載機器と熱交換を行うことにより廃熱を回収した熱媒体は、ECH46において必要に応じて加熱され、四方弁61を経由して、第2高温熱交換器212に戻る循環を繰り返す。
これにより、第1熱交換器81、第2熱交換器82により車室内の暖房を行うことができる。
【0051】
第1高温熱交換器211によって加熱された熱媒体が第1高温熱媒体流路201を循環する過程において、熱媒体が温度上昇により膨張し、回路容量に対して熱媒体量が多くなると、リリーフ弁57が開状態となり、熱媒体が接続部28を経て流入口52からタンク50に流入して貯留される。
【0052】
一方、制御部100は、低温熱媒体流路30と温調対象熱媒体流路40の第2流路402とが接続した流路となるように第1流路切替部V1及び第2流路切替部V2を制御し、低温熱交換器31を通過して冷却された熱媒体を、低温熱媒体流路30及び温調対象熱媒体流路40の第2流路402に循環させる。
すなわち、低温熱交換器31を通過して冷却された熱媒体は、第1流路切替部V1及び第2流路切替部V2を経由して室外熱交換器45に流入し、外気と熱交換した後に第2流路切替部V2を経由して、第2ポンプにより低温熱交換器31に戻る。
【0053】
上記循環を繰り返すことで、室外熱交換器45を吸熱源として用いることができる。
低温熱媒体流路30と温調対象熱媒体流路40の第2流路402とが接続された流路において、熱媒体の温度が低下して収縮することで回路容量に対して熱媒体量が少なくなると、タンク50に貯留された熱媒体が流出口53から流出し、接続部38を経て低温熱媒体流路30に流入する。
【0054】
上述のように第1暖房モードでは、空調ユニット80の2つの熱交換器、つまり、第1熱交換器81及び第2熱交換器82のうち、空気流通方向下流側に配置された第2熱交換器82に第1高温熱交換器211において加熱された熱媒体が流入する。同時に、空気流通方向上流側に配置された第1熱交換器81に第2高温熱交換器212において加熱された熱媒体が流入する。
【0055】
ここで、冷媒回路Rにおいて、第1高温熱交換器211は第2高温熱交換器212よりも冷媒の循環方向上流側に配置されているため、第1高温熱交換器211において加熱される熱媒体は第2高温熱交換器212において加熱される熱媒体よりも高温となる。このため、第1高温熱媒体流路201を循環する熱媒体は、第2高温熱媒体流路202を循環する熱媒体よりも高温であり、第1熱交換器81には、第2熱交換器82よりも低温の熱媒体が流入することとなる。
【0056】
したがって、空気流通路84に導入された空気に対して、第2熱交換器82を通過する前に、予め、第1熱交換器81において予め加熱し、これを第2熱交換器82においてより高温の熱媒体によってさらに加熱するので、熱媒体と空気との間で効率的な熱交換を行うことができ、暖房運転時の効率を向上させることができる。
また、冷媒回路において2つの凝縮器を用いて、2段階に分けて冷媒と熱媒体との熱交換を行わせることで、CO2のような臨界温度が低い冷媒であっても、効率的な暖房運転を実現することができる。
【0057】
(2)第2暖房モード
本実施形態に係る第2暖房モードは、バッテリをその他の各種車載機器の廃熱を利用して暖機しつつ、室外熱交換器45を吸熱源として用いて車室内の暖房とシート毎の暖房を行う動作モードである。
【0058】
第2暖房モードの実行時は、高温熱媒体流路20の第1高温熱媒体流路201と第2高温熱媒体流路202とを接続させて1つの流路とし、第1高温熱交換器211及び第2高温熱交換器212の双方において加熱された熱媒体を、第1熱交換器81及び第2熱交換器82に導入させる。
第2暖房モードにおける熱媒体の流れを
図4に示す。
【0059】
図4では、熱媒体の流れについて、高温の熱媒体が循環する配管を黒色の実線で示し、低温の熱媒体が循環する配管を一点鎖線で示し、高温と低温との中間の温度帯の熱媒体が循環する配管を灰色の実戦で示している。
制御部100は、第1流路切替部V1、第2流路切替部V2及び四方弁61,62を制御して、熱媒体回路10において以下のように熱媒体を循環させる。
【0060】
制御部100は、第1高温熱媒体流路201と第2高温熱媒体流路202とを接続させて1つの流路とし、第1高温熱交換器211及び第2高温熱交換器212を通過して加熱された熱媒体を循環させる。
すなわち、第1高温熱交換器211を通過して加熱された熱媒体は、第1流路切替部V1を経由して第2熱交換器82に流入する。
【0061】
第2熱交換器82に流入した熱媒体は、空気流通路84を通過する空気と熱交換した後に、四方弁62及び第1流路切替部V1を経由して第1熱交換器81に流入し、空気流通路84を通過する空気と熱交換する。第1熱交換器81を出た熱媒体は、第1流路切替部V1及び四方弁61を経由して第2高温熱交換器212に流入し加熱される。第2高温熱交換器212を出た熱媒体は、四方弁62を経て第1ポンプP1によって第1高温熱交換器211に戻る循環を繰り返す。これにより、第1熱交換器81及び第2熱交換器82により車室内の暖房を行うことができる。
【0062】
なお、高温熱交換器21によって加熱された熱媒体が循環する過程において、熱媒体が温度上昇により膨張し、回路容量に対して熱媒体量が多くなると、リリーフ弁57が開状態となり、熱媒体が接続部28を経て流入口52からタンク50に流入して貯留される。
【0063】
制御部100は、低温熱媒体流路30と温調対象熱媒体流路40のうち室外熱交換器45を含む第2流路402とが接続した流路となるように第1流路切替部V1及び第2流路切替部V2を制御し、低温熱交換器31を通過して冷却された熱媒体を、低温熱媒体流路30及び第2流路402に循環させる。
【0064】
すなわち、低温熱交換器31を通過して冷却された熱媒体は、第1流路切替部V1及び第2流路切替部V2を経由して室外熱交換器45に流入し、外気と熱交換した後に再び第2流路切替部V2を経由して、第2ポンプP2により低温熱交換器31に戻る。
【0065】
上記循環を繰り返すことで、室外熱交換器45を吸熱源として用いることができる。低温熱媒体流路30と温調対象熱媒体流路40の第2流路402とが接続された流路において、熱媒体の温度が低下して収縮することで回路容量に対して熱媒体量が少なくなると、タンク50に貯留された熱媒体が流出口53から流出し、接続部38を経て低温熱媒体流路30に流入する。
【0066】
制御部100は、温調対象熱媒体流路40の第1流路401と第3流路403とが独立した流路となるように第2流路切替部V2及び四方弁61を制御し、温調対象熱媒体流路40の第1流路401と第3流路403とにおいて熱媒体を循環させる。すなわち、温調対象熱媒体流路40では、PCU用熱交換器44、インバータ用熱交換器43及びモータ用熱交換器42を順次通過してそれらの廃熱により中程度の温度となった熱媒体が、四方弁61及び第2流路切換部V2を経由して第3ポンプP3によってバッテリ用熱交換器41に圧送されることで、バッテリを暖機する。
【0067】
バッテリ用熱交換器41においてバッテリを暖機することで温度が低下した熱媒体は、再びPCU用熱交換器44、インバータ用熱交換器43及びモータ用熱交換器42を通過することでその温度が上昇する。このような循環を繰り返すことで、バッテリの暖機を行いつつ、その他の車載機器の温調を行うことができる。なお、必要に応じて、モータ用熱交換器42の下流に設けられたECH46を作動させて熱媒体を加熱することができる。
【0068】
温調対象熱媒体流路40の第1流路401と第3流路403を循環する過程において、熱媒体が温度上昇により膨張し、回路容量に対して熱媒体量が多くなると、リリーフ弁58が開状態となり、熱媒体が接続部48を経て流入口54からタンク50に流入して貯留される。
【0069】
上述のように第2暖房モードでは、第1高温熱交換器211と第2高温熱交換器212のうち、冷媒の循環方向下流側に配置された第2高温熱交換器212によって予め熱媒体を加熱した後に、冷媒の循環方向上流側に配置された第1高温熱交換器211で再び熱媒体を加熱する。このとき、冷媒回路Rにおいて、第1高温熱交換器211は第2高温熱交換器212よりも冷媒の循環方向上流側に配置されているため、上述したように第1高温熱交換器211を通過する熱媒体は第2高温熱交換器212を通過するときよりも高温となる。
【0070】
そして、第2高温熱交換器212と第1高温熱交換器211とにおいて2段階で加熱された熱媒体は、空調ユニット80の空気流通方向下流側に配置された第2熱交換器82に流入し、第2熱交換器82において空気と熱交換した後に、空気流通方向上流側に配置された第1熱交換器81に流入し、熱媒体の残りの熱量で空気と熱交換する。
【0071】
このように、空気流通路84に導入された空気に対して、第2熱交換器82を通過する前に、予め、第1熱交換器81において予め加熱し、これを第2熱交換器82において再び加熱する。つまり、第2熱交換器82において空気と熱交換をした後の熱媒体の残りの熱量を第1熱交換器81における空気の加熱に利用するため、熱媒体と空気との間で効率的な熱交換を行うことができ、空調ユニット80の暖房効率を向上させることができる。
また、冷媒回路Rにおいて第1凝縮器121と第2凝縮器122の2つの凝縮器を用いて2段階に分けて冷媒と熱媒体との熱交換を行わせることで、CO2のような臨界温度が低い冷媒であっても、効率的な暖房運転を実現することができる。
【0072】
(冷房モードについて)
【0073】
本実施形態における冷房モードは、バッテリ用熱交換器41にも冷却された熱媒体を導入させて車室内の冷房と同時にバッテリの冷却を行う動作モードである。この冷房モードでは、室外熱交換器45において、冷媒回路Rの放熱はもちろん、モータ用熱交換器42、インバータ用熱交換器43及びPCU用熱交換器44などのバッテリ用熱交換器41以外の各車載機器の廃熱を回収した熱媒体の放熱も行う。
【0074】
冷房モードの実行時は、低温熱媒体流路30において、蒸発器14を通過する冷媒と低温熱交換器31を通過する熱媒体とを熱交換させて冷却された熱媒体を、空調ユニット80の第1熱交換器81及び第2熱交換器82に導入させる。
【0075】
本実施形態に係る冷房モードにおける熱媒体の流れを
図5に示す。
図5では、熱媒体の流れについて、高温の熱媒体が循環する配管を黒色の実線で示し、低温度の熱媒体が循環する配管を一点鎖線で示している。
制御部100は、第1流路切替部V1、第2流路切替部V2及び四方弁61,62を制御して、熱媒体回路10において以下のように熱媒体を循環させる。
【0076】
制御部100は、低温熱媒体流路30と温調対象熱媒体流路40うちバッテリ用熱交換器41を含む第1流路401とを接続した流路となるように第1流路切替部V1、第2流路切替部V2及び四方弁62を制御し、低温熱交換器31を通過して冷却された熱媒体を、低温熱媒体流路30及び第1流路401に循環させる。
【0077】
すなわち、低温熱交換器31を通過して冷却された熱媒体は、第1流路切替部V1を経由して第2熱交換器82に流れ、第2熱交換器82に流入した熱媒体は、四方弁62及び第1流路切替部V1を経由して第1熱交換器81に流入し、空気流通路84を通過する空気と熱交換する。
【0078】
第1熱交換器81を出た熱媒体は、第1流路切替部V1及び第2流路切換部V2を経由して第3ポンプP3によりバッテリ用熱交換器41に圧送され、バッテリ用熱交換器41を通過し、第2流路切替部V2を経由して第2ポンプP2により低温熱交換器31に戻る循環を繰り返す。これにより、車室内を冷房すると共にバッテリを冷却する。
【0079】
なお、低温熱媒体流路30及び第1流路401を循環する熱媒体の温度が下がることにより熱媒体が収縮し、回路容量に対して熱媒体量が少なくなると、タンク50に貯留された熱媒体が流出口53から流出し、接続部38を介して低温熱媒体流路30に流入する。
【0080】
一方、制御部100は、高温熱媒体流路20の第1高温熱媒体流路201と第2高温熱媒体流路202とを接続して1つの流路とし、第1高温熱媒体流路201と第2高温熱媒体流路202と温調対象熱媒体流路40のうち第2流路402及び第3流路403とをさらに接続した流路となるように、第1流路切替部V1、第2流路切替部V2及び四方弁61,62を制御する。これにより、第1高温熱交換器211及び第2高温熱交換器212を通過して加熱された熱媒体を第1高温熱媒体流路201、第2高温熱媒体流路202、第2流路402及び第3流路403に循環させる。
【0081】
すなわち、熱媒体は、第2高温熱交換器212を通過して加熱され、四方弁62を経て第1ポンプP1によって第1高温熱交換器211に圧送され、第1高温熱交換器211において更に加熱される。このようにして加熱された熱媒体は、第1流路切替部V1、四方弁61及び第2流路切替部V2を順に経由して室外熱交換器45に流入し、再び第2流路切替部V2を経由して、PCU用熱交換器44、インバータ用熱交換器43、モータ用熱交換器42、及びECH46に順次流入する。その後、四方弁61を経て再び第2高温熱交換器212に戻る循環を繰り返す。これにより、第1高温熱交換器211、第2高温熱交換器212、PCU用熱交換器44、インバータ用熱交換器43及びモータ用熱交換器42の放熱を室外熱交換器45で行う。
【0082】
このとき、第1高温熱媒体流路201、第2高温熱媒体流路202、第2流路402及び第3流路403を循環する熱媒体が、温度上昇により膨張して、回路容量に対して熱媒体量が多くなった場合、熱媒体がタンク50に流入して貯留される。熱媒体のタンク50への流入は、リリーフ弁57が開状態となり、熱媒体が接続部28を経て流入口52からタンク50に流入するか、あるいは、リリーフ弁58が開状態となり接続部48を経て流入口54からタンク50に流入するかの何れかとなる。
【0083】
上述のように冷房モードでは、空調ユニット80の2つの熱交換器、つまり、第1熱交換器81及び第2熱交換器82の双方に低温の熱媒体を流すことができる。特に、第2熱交換器82を通過した熱媒体を第1熱交換器81に流すことで、第2熱交換器82を通過する前の空気を、予め、第1熱交換器81において冷却することができる。
【0084】
つまり、第2熱交換器82において空気と熱交換をした後に残った熱媒体の熱を第1熱交換器81における空気の冷却に利用するため、空調ユニット80の空調能力を向上させると共にシステム全体の熱効率を向上させることができる。
【0085】
また、冷媒回路Rにおいて第1凝縮器121と第2凝縮器122の2つの凝縮器を用いて2段階に分けて冷媒と熱媒体との熱交換を行わせることで、CO2のような臨界温度が低い冷媒であっても、効率的な冷房運転を実現することができる。
【0086】
また、上述のように、制御部100では、第2熱交換器82に流した熱媒体を第1熱交換器81にも流すように第1流路切替部V1を切替えるよう制御する。すなわち、空調ユニット80に含まれる複数の第1熱交換器81及び第2熱交換器82の双方に、加熱又は冷却された熱媒体を流すように第1流路切替部V1を切替えることができるため、暖房モード実行時又は冷房モード実行時の空調能力を向上させることができる。
【0087】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0088】
R:冷媒回路、1:車両用空調装置、10:熱媒体回路、
11:圧縮機、12:凝縮器、13:膨張弁、14:蒸発器、15:アキュームレータ、
20:高温熱媒体流路、21:高温熱交換器、
30:低温熱媒体流路、31:低温熱交換器、
40:温調対象熱媒体流路、41:バッテリ用熱交換器、42:モータ用熱交換器、43:インバータ用熱交換器、44:PCU用熱交換器、45:室外熱交換器、46:ECH、
50:タンク、52:流入口、53:流出口、54:流入口、57:リリーフ弁、58:リリーフ弁、
28,38,48:接続部、61,62:四方弁、
80:空調ユニット、81:第1熱交換器、82:第2熱交換器、83:吸込口、84:空気流通路、
100:制御部、200:車両コントローラ、300:空調操作部、
V1:第1流路切替部、V2:第2流路切替部