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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172238
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 41/24 20060101AFI20231129BHJP
   H05B 41/392 20060101ALI20231129BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H05B41/24
H05B41/392
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083898
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高下 敦史
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 繁樹
【テーマコード(参考)】
3K072
4C058
【Fターム(参考)】
3K072AA19
3K072DA10
3K072DD09
3K072DE02
3K072EB06
3K072GA02
4C058AA23
4C058BB06
4C058DD01
4C058DD03
4C058DD12
4C058KK02
4C058KK12
(57)【要約】
【課題】紫外線を発する放電ランプが低出力で点灯制御されている場合であっても、放電ランプの立ち消えを精度よく検知できる光源装置を提供する。
【解決手段】光源装置は、紫外線を発する放電ランプの点灯回路を備える。点灯回路は、直流電源に接続された一次側巻線及び放電ランプに接続された二次側巻線を含む変圧器と、一次側巻線と直流電源との間に接続されたスイッチング素子と、スイッチング素子の導通制御を行う制御部とを備える。制御部は、調光動作制御モードの実行中、100m秒~30秒の範囲内で設定された点灯検知期間内において、一時的にスイッチング素子のON/OFF周波数及びON/OFFデューティ比のうちの少なくとも一方を変化させて一次側巻線に入力される一次側電力を上昇させる点灯検知制御を実行する構成である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を発する放電ランプと、前記放電ランプを点灯するための点灯回路とを備えた光源装置であって、
前記点灯回路は、
直流電源と、
前記直流電源に接続された一次側巻線、及び前記放電ランプに接続された二次側巻線を含み、前記一次側巻線に印加された電圧を昇圧する変圧器と、
前記一次側巻線と前記直流電源との間に接続されたスイッチング素子と、
前記スイッチング素子の導通制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、前記放電ランプの光出力を基準光出力よりも低下させる旨の調光指令信号が入力されると、前記放電ランプを前記基準光出力の下で点灯させる基準動作制御モードの実行時と比較して、前記スイッチング素子のON/OFF周波数及びON/OFFデューティ比のうちの少なくとも一方を変化させて前記二次側巻線から出力される二次側電力を低下させる調光動作制御モードを実行する構成であり、
前記制御部は、前記調光動作制御モードの実行中、100m秒~30秒の範囲内で設定された点灯検知期間内において、一時的に前記スイッチング素子のON/OFF周波数及びON/OFFデューティ比のうちの少なくとも一方を変化させて前記二次側電力を上昇させる点灯検知制御を実行する構成であることを特徴とする、光源装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記放電ランプを点灯する旨の点灯指令信号が前記調光指令信号と共に入力されると、点灯動作初期である始動期間内において前記二次側電力を前記基準動作制御モードの実行時と同等以上となるように前記スイッチング素子を導通制御した後、前記始動期間の終了後である定常期間内において前記二次側電力を前記調光動作制御モードの実行時と同等となるように前記スイッチング素子を導通制御する構成であり、
前記制御部は、前記定常期間内に前記点灯検知制御を実行する構成であることを特徴とする、請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記一次側巻線を流れる一次側電流又は前記二次側巻線を流れる二次側電流を検知して、検知結果を前記制御部に出力する第一電流検知部を備え、
前記制御部は、前記点灯検知制御の実行中に、前記第一電流検知部による検知結果に基づく値が所定の第一閾値を下回っている場合には、前記放電ランプが不点灯状態にあると判定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記一次側巻線を流れる一次側電流を検知して、検知結果を前記制御部に出力する第一電流検知部と、
前記二次側巻線を流れる二次側電流を検知して、検知結果を前記制御部に出力する第二電流検知部とを備え、
前記制御部は、前記点灯検知制御の実行中に、前記第一電流検知部による検知結果に基づく値が前記第一閾値を下回っている場合には、前記放電ランプが不点灯状態にあると判定し、
前記制御部は、前記基準動作制御モード又は前記調光動作制御モードの実行中に、前記第二電流検知部による検知結果に基づく値が前記第一閾値よりも低い第二閾値を下回っている場合には、前記二次側巻線が開放された無負荷状態にあると判定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の光源装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記調光動作制御モードの実行中、前記点灯検知期間内において、前記二次側電力を前記基準動作制御モードの実行時と同等の値に上昇させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光源装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記点灯検知制御の実行中に前記第一電流検知部で連続的に検知された値に対して、10m秒~50m秒の時間で移動平均処理が行われた値と、前記第一閾値を対比することを特徴とする、請求項3に記載の光源装置。
【請求項7】
前記第一電流検知部は、
前記一次側巻線又は前記二次側巻線に接続された検知用抵抗と、
前記検知用抵抗に接続された入力側端子と、前記制御部に接続された出力側端子とを含み、前記検知用抵抗で検知された電圧を増幅して前記出力側端子から出力する増幅器と、
前記増幅器の前記入力側端子又は前記出力側端子に接続されたノイズ緩和コンデンサとを備えることを特徴とする、請求項3に記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光源装置に関し、特に、紫外線放電ランプ及びその点灯回路を含む光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、菌又はウイルスに対する不活化を行う目的で、紫外線を利用する技術の開発が進められている。本出願人は、紫外線放電ランプの一種であるエキシマランプを用いて、菌又はウイルスの不活化を行う技術を開発している(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-115525号公報
【特許文献2】特開2010-062157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
菌又はウイルスの不活化のために紫外線放電ランプ(以下、「放電ランプ」と略記することがある。)を点灯して紫外線を出射させるに際し、利用態様によっては紫外線の照度を調整したい事情が存在する場合がある。なお、本明細書において、「不活化」とは、菌又はウイルスを死滅させること、及び感染力若しくは毒性を失わせることを包括する概念を指す。また、本明細書において、「菌」とは細菌や真菌(カビ)等の微生物を指す。
【0005】
放電ランプを含む光源装置が設置される場所は、種々想定される。放電ランプの設置場所によっては、高い照度の紫外線が要求される場合や、逆に人体等への影響に鑑みて低い照度の紫外線が要求される場合が考えられる。一例として、天井に設置された光源装置から下方に向けて紫外線を照射することで、空間中又は対象物表面に存在し得る菌又はウイルスを不活化する場合が想定される。この場合、光源装置が設置される天井の高さが変わると、空間中又は対象物表面への紫外線照度が変化する。つまり、光源装置の設置場所に応じて、光出力の調整が必要となる場面が考えられる。
【0006】
本願の出願時において、人体に照射される紫外線の積算照射量は、ACGIH(American Conference of Governmental Industrial Hygienists:アメリカ合衆国産業衛生専門官会議)で定められている規制値以内にすることが推奨されている。このため、前記光源装置を人間が存在し得る環境下で利用する場合には、人体に照射される紫外線の積算照射量を上記ACGIHの規制値以内に留めるべく、放電ランプを低出力で運転させたいという事情が存在する。典型的な一例として、放電ランプを低い光出力で長時間にわたって連続点灯させたいというニーズが存在する。
【0007】
なお、本明細書において、放電ランプの光出力を調整することを「調光」と称する場合がある。
【0008】
放電ランプの光出力を調整する(調光する)ためには、放電ランプに対する供給電力を制御することが必要となる。しかしながら、放電ランプの特性上、放電ランプに対する供給電力を低下させると、「立ち消え」と称される、点灯中の放電ランプが不点灯となる現象が生じる懸念がある(上記特許文献2参照)。
【0009】
本願の出願人は、特に小型の紫外線ランプを搭載した不活化用の光源装置の開発を進めている。小型の紫外線ランプは、その定格出力が相対的に低い。したがって、このような紫外線ランプを、例えば定格出力の50%又は30%といった低出力で運転させると、紫外線ランプに対する供給電力が極めて低くなる結果、上記の立ち消えが生じる蓋然性が高まることが予想される。
【0010】
不活化の目的で利用される光源装置は、周囲に人間が存在しない環境下で利用されることも想定される。この場合、仮に紫外線ランプが立ち消えにより不点灯になっていると、当該環境内に存在し得る菌又はウイルスに対する不活化性能が、所望レベルよりも低下してしまう。
【0011】
主ピーク波長が200nm~240nmの紫外線は、低圧水銀ランプから放射される波長254nmの成分を含む紫外線とは異なり、人体に対する影響が極めて低いことが知られている。このため、上記波長帯の紫外線を発する放電ランプ(例えば、発光ガスとしてKrCl又はKrBrが含まれるエキシマランプ)が搭載された光源装置は、周囲に人間が存在する時間帯においても、不活化の目的で利用されることが想定される。しかし、上記波長帯の紫外線は可視光とは異なり視認ができないため、上記エキシマランプが立ち消えの状態にあるか否かを周囲の人間が検知することは難しい。つまり、周囲に人間が存在し得る環境下で光源装置が利用されたとしても、やはり、紫外線ランプが立ち消えにより不点灯になっていると、当該環境内に存在し得る菌又はウイルスに対する不活化性能が、所望レベルよりも低下してしまう。
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑み、低出力で点灯制御されている場合であっても、紫外線を発する放電ランプの立ち消えを精度よく検知することのできる光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る光源装置は、紫外線を発する放電ランプと、前記放電ランプを点灯するための点灯回路とを備え、
前記点灯回路は、
直流電源と、
前記直流電源に接続された一次側巻線、及び前記放電ランプに接続された二次側巻線を含み、前記一次側巻線に印加された電圧を昇圧する変圧器と、
前記一次側巻線と前記直流電源との間に接続されたスイッチング素子と、
前記スイッチング素子の導通制御を行う制御部とを備える。
【0014】
前記制御部は、前記放電ランプの光出力を基準光出力よりも低下させる旨の調光指令信号が入力されると、前記放電ランプを前記基準光出力の下で点灯させる基準動作制御モードの実行時と比較して、前記スイッチング素子のON/OFF周波数及びON/OFFデューティ比のうちの少なくとも一方を変化させて、前記二次側巻線から出力される二次側電力を低下させる調光動作制御モードを実行する構成である。
【0015】
更に、前記制御部は、前記調光動作制御モードの実行中、100m秒~30秒の範囲内で設定された点灯検知期間内において、一時的に前記スイッチング素子のON/OFF周波数及びON/OFFデューティ比のうちの少なくとも一方を変化させて前記二次側電力を上昇させる点灯検知制御を実行する構成である。
【0016】
点灯状態下にあった放電ランプが、不点灯になったか否か、すなわち立ち消えが生じたか否かを判定する方法として、放電ランプに接続されているノードを流れる電流量を検知することが考えられる。放電ランプが点灯中であれば前記ノードに高電流が流れる一方、立ち消え状態にある場合には前記ノードに流れる電流が低下する。このため、判定の基準となる閾値を予め設定しておくと共に、検知された電流量がこの閾値を下回っている場合には立ち消えが生じていると判定することが、一見すると可能であるように思われる。
【0017】
しかしながら、上記の方法を放電ランプが低出力で点灯される場合、すなわち調光動作の実行中に適用すると、立ち消えの発現が誤検知されてしまう可能性がある。この理由は以下の通りである。
【0018】
放電ランプに接続されたノードを流れる電流を検知するためには、一般的には電流検知用の抵抗が前記ノードに接続される。この抵抗の値を大きくすると、ジュール熱が高まり、不要な消費電力や温度上昇を招く。このため、電流検知用の抵抗としては、放電ランプが、常に定格出力で点灯されるか調光状態で点灯されるかにかかわらず、小さい抵抗値を示すことが求められる。具体的には、電流検知用の抵抗は0.5Ω以下であるのが好ましく、0.1Ω以下であるのがより好ましく、0.05Ω以下であるのが特に好ましい。なお、この電流検知用の抵抗は、電流値の検知性能を十分に発現させる観点から、0.01Ω以上であるのが好ましい。
【0019】
特に、放電ランプを含む光源装置を小型化する観点からは、部品のサイズについても一定の制約を受ける。かかる観点からも、電流検知用の抵抗としては、上記のように抵抗値が小さいものを用いるのが好ましい。
【0020】
しかし、抵抗値の小さい電流検知用の抵抗をノードに接続すると、この抵抗の両端に生じる電位差も必然的に小さくなる。よって、この電位差に基づいてリファレンス値と比較することで立ち消えの発現を精度よく検知しようとすると、抵抗で検知された電圧を増幅器(典型的にはオペアンプ)にて増幅した上で前記リファレンス値に基づく値と比較することが必要となる。比較対象となるリファレンス値との差分を確保して比較結果を精度良く判定する観点から、抵抗で検知された電圧が小さい場合には増幅器による増幅率を高める必要がある。しかし、増幅器の増幅率を高めるほどノイズの重畳量も高まり、誤差が生じやすくなる。つまり、立ち消えが生じているにもかかわらず、重畳したノイズが増幅される結果、閾値を上回っているとして立ち消えが生じていないと誤判定される懸念が生じる。また、この懸念を解消すべく、基準となる閾値を上昇させると、逆に、立ち消えが生じていないにもかかわらず閾値を下回ってしまい、立ち消えが生じていないと誤判定される可能性も考えられる。
【0021】
これに対し、上記構成の光源装置によれば、光出力を基準光出力よりも低下させた状態で点灯するモード、すなわち調光動作制御モードの実行中において、100m秒~30秒の範囲内で設定された点灯検知期間内に、一時的に、放電ランプに対して供給される二次側電力を上昇する制御が行われる。つまり、調光動作制御モードの実行中において低出力で点灯中であっても、極めて短い点灯検知期間において、一時的に変圧器の二次側巻線から高い二次側電力が出力される。この期間内に流れる電流を検知することで、極めて高い増幅率を示す増幅器を介することなく、閾値との対比が可能となる。
【0022】
上記の制御が実行されると、仮に立ち消えが生じていない場合には、調光動作中であっても短い時間にわたって一時的に光出力が上昇する。しかしながら、上記の光源装置は、紫外線ランプを搭載しているため、調光動作中に一時的に光出力が高まったことが、周囲の人間に視認されることはない。このため、点灯検知期間として、可視光を発するランプの光出力の一時的な上昇に伴うちらつきが視認されないような時間、具体的には20m秒以下、典型的には1m秒程度という極めて短い時間に設定する必要がない。100m秒~30秒の範囲内という比較的長い時間によって点灯検知期間を設定することで、移動平均処理や、コンデンサを用いた平滑化処理という、ノイズ重畳による誤差を回避するための処理を行う時間が確保できる。
【0023】
上記の検知を行うに際しては、放電ランプに接続されたノードを流れる電流(二次側電流)を検知するものとしても構わないし、変圧器の一次側巻線に接続されたノードを流れる電流(一次側電流)を検知するものとしても構わない。
【0024】
つまり、前記光源装置は、前記一次側巻線を流れる一次側電流又は前記二次側巻線を流れる二次側電流を検知して、検知結果を前記制御部に出力する第一電流検知部を備え、
前記制御部は、前記点灯検知制御の実行中に、前記第一電流検知部による検知結果に基づく値が所定の第一閾値を下回っている場合には、前記放電ランプが不点灯状態にあると判定するものとしても構わない。
【0025】
前記制御部は、前記放電ランプを点灯する旨の点灯指令信号が前記調光指令信号と共に入力されると、点灯動作初期である始動期間内において前記二次側電力を前記基準動作制御モードの実行時と同等以上となるように前記スイッチング素子を導通制御した後、前記始動期間の終了後である定常期間内において前記二次側電力を前記調光動作制御モードの実行時と同等となるように前記スイッチング素子を導通制御する構成であり、
前記制御部は、前記定常期間内に前記点灯検知制御を実行する構成であるものとしても構わない。
【0026】
消灯状態の放電ランプを点灯させるに際しては、放電を開始させるための動作(始動動作)が必要となる。具体的には、放電ランプに対する印加電圧を高め、更に必要に応じて点灯補助のための光源(LED光源等)を点灯させる処理が行われる。本明細書では、消灯状態の放電ランプの点灯を開始するための処理が行われる期間を、「始動期間」と称する。また、本明細書では、始動期間が終了して放電ランプが点灯状態となった後、その点灯状態が継続する期間を、「定常期間」と称する。
【0027】
点灯指令信号が調光指令信号と共に制御部に入力される状態とは、例えば、消灯状態の放電ランプに対して、50%調光で点灯させる指示が与えられる状態に対応する。この場合、始動期間においては、定常期間よりも高い電力が放電ランプに対して供給される。ひとたび放電が開始されると、放電ランプに対して供給される電力が低下して50%の光出力で点灯する状態が継続される。上記の構成によれば、このような調光状態で点灯されている期間、すなわち定常期間内において、一時的に、点灯検知期間内において変圧器の二次側巻線から高い二次側電力が出力され、立ち消えの判定を行うことが可能となる。
【0028】
前記光源装置は、
前記一次側巻線を流れる一次側電流を検知して、検知結果を前記制御部に出力する第一電流検知部と、
前記二次側巻線を流れる二次側電流を検知して、検知結果を前記制御部に出力する第二電流検知部とを備え、
前記制御部は、前記点灯検知制御の実行中に、前記第一電流検知部による検知結果に基づく値が前記第一閾値を下回っている場合には、前記放電ランプが不点灯状態にあると判定し、
前記制御部は、前記基準動作制御モード又は前記調光動作制御モードの実行中に、前記第二電流検知部による検知結果に基づく値が前記第一閾値よりも低い第二閾値を下回っている場合には、前記二次側巻線が開放された無負荷状態にあると判定するものとしても構わない。
【0029】
放電ランプが不点灯になる原因として、上述した「立ち消え」以外に、点灯回路と放電ランプとの間の電気的な接続不良が挙げられる。この電気的な接続不良は、接続線の断線や、物理的な接続状態の不良等によって起こり得る。このような電気的な接続不良が生じると、変圧器の二次側巻線が開放された無負荷状態になる。変圧器の二次側巻線に接続されたノード(以下、「二次側回路」と称する。)が開放されると抵抗値が極大化し、変圧器の二次側が高電圧となり、変圧器の一次側の電圧値も高くなる。これにより、スイッチング素子に過大な電圧が加わり、場合によってはスイッチング素子を破損させる懸念がある。
【0030】
放電ランプが不点灯であることが検知された場合、その不点灯となった原因が、立ち消えに起因したものであるか、無負荷に起因したものであるかによって、その後に取り得る措置が異なることが想定される。立ち消えに起因した不点灯の場合には、例えば、管理者又はシステム側で、光源装置に対して再始動を行う指令を行って点灯状態に復帰させることが考えられる。一方、無負荷に起因した不点灯の場合には、保守作業員によって光源装置の内部を点検する必要が生じる。
【0031】
変圧器の二次側回路が無負荷である場合、変圧器の二次側巻線には実質的に電流が流れない。このため、第二電流検知部によって二次側巻線を流れる電流(二次側電流)を検知し、この検知結果が極めて低い値に設定された閾値(第二閾値)よりも低い場合には、変圧器の二次側回路が無負荷状態にあると判定できる。
【0032】
一方で、放電ランプに立ち消えが生じている場合には、変圧器の二次側回路が無負荷である場合と比較して、高い電流が流れる。上述したように、光源装置は、一次側巻線に印加された電圧を昇圧する変圧器を備えているため、この変圧器の一次側巻線に接続されたノード(以下、「一次側回路」と称する。)に流れる電流(一次側電流)は、二次側電流よりも高くなる。
【0033】
よって、立ち消えの検知を行うに際しては、二次側電流よりも高い一次側電流に基づく値と、所定の閾値(第一閾値)と比較することで、増幅器の増幅率を低く抑制しながらも、精度良く検知を行うことができる。そして、この構成によれば、一次側電流に基づく値が第一閾値を下回る場合には、立ち消えが生じていると判定できる。一方、二次側電流に基づく値が第二閾値を下回る場合には、無負荷状態にあると判定できる。これにより、放電ランプが不点灯状態になる原因を特定することができる。
【0034】
前記制御部は、前記調光動作制御モードの実行中、前記点灯検知期間内において、前記二次側電力を前記基準動作制御モードの実行時と同等の値に上昇させるものとしても構わない。
【0035】
ここで、基準動作制御モードは、放電ランプに対して供給される二次側電力が放電ランプの定格電力となるように、制御部がスイッチング素子の導通制御を行う制御モードであるものとしても構わない。
【0036】
前記制御部は、前記点灯検知制御の実行中に前記第一電流検知部で連続的に検知された値に対して、10m秒~50m秒の時間で移動平均処理が行われた値と、前記第一閾値を対比するものとしても構わない。
【0037】
上述したように、調光動作制御モードの実行中に、一時的に二次側電力が上昇する点灯検知期間は、可視光の強度が変化することで人間が視認できない上限時間とされる20m秒と比較して十分に長い、100m秒~30秒の範囲内である。このため、連続的に検知された電流値に対して移動平均処理を行うのに十分な時間が確保できる。これにより、仮に瞬時的なノイズ電流が重畳した場合であっても、ノイズ電流の存在を事実上無効化した上で、閾値(第一閾値)と比較することができ、精度よく立ち消えの判定が行える。
【0038】
前記第一電流検知部は、
前記一次側巻線又は前記二次側巻線に接続された検知用抵抗と、
前記検知用抵抗に接続された入力側端子と、前記制御部に接続された出力側端子とを含み、前記検知用抵抗で検知された電圧を増幅して前記出力側端子から出力する増幅器と、
前記増幅器の前記入力側端子又は前記出力側端子に接続されたノイズ緩和コンデンサとを備えるものとしても構わない。
【0039】
上述したように、調光動作制御モードの実行中に、一時的に入力電力が上昇させる点灯灯検知期間は、可視光の強度が変化することで人間が視認できない上限時間とされる20m秒と比較して十分に長い、100m秒~30秒の範囲内である。このため、仮に瞬時的なノイズ電流が重畳した場合であっても、このノイズ電流に起因した電流量の上昇を時定数を用いて平滑化処理を行うのに十分な時間が確保できる。これにより、仮に瞬時的なノイズ電流が重畳した場合であっても、このノイズの存在を事実上無効化した上で、閾値(第一閾値)と比較することができるため、精度よく立ち消えの判定が行える。
【発明の効果】
【0040】
本発明の光源装置によれば、紫外線を発する放電ランプが低出力で点灯制御されている場合であっても、立ち消えの発現を精度よく検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の光源装置の一実施形態の構成を模式的に示す回路ブロック図である。
図2A】放電ランプの外観の一例を模式的に示す斜視図である。
図2B】放電ランプの外観の一例を模式的に示す斜視図であり、図2Aから一部の要素を除去した図面である。
図3】駆動回路からスイッチング素子に供給される電圧信号V24、変圧器の一次側電流I1、変圧器の二次側電圧V2、及び変圧器の二次側電流I2の、それぞれの時間変化を模式的に示すタイミングチャートである。
図4】調光制御動作モードの実行中における、変圧器の一次側電圧V1、点灯指令信号Q2、制御信号S1、変圧器の二次側電圧V2、二次側電力P2、始動補助光源に対する制御信号S18、及び判定結果信号J20の、それぞれの時間変化を模式的に示すタイミングチャートである。
図5A】点灯検知期間が設けられていない場合において、調光動作の実行中に放電ランプが立ち消えを生じたときの、一次側電流I1の挙動を模式的に示すタイミングチャートである。立ち消えの判定に利用される閾値電流Ith1の値は、始動期間Tα内に流れる電流Isと定常期間Tβ内に流れる電流Iaの間に設定されている。
図5B】点灯検知期間が設けられていない場合において、調光動作の実行中に放電ランプが立ち消えを生じたときの、一次側電流I1の挙動を模式的に示すタイミングチャートである。立ち消えの判定に利用される閾値電流Ith1の値は、定常期間Tβ内に流れる電流Iaよりも低い値に設定されている。
図5C】点灯検知期間が設けられている場合において、調光動作の実行中に放電ランプが立ち消えを生じたときの、一次側電流I1の挙動を模式的に示すタイミングチャートである。立ち消えの判定に利用される閾値電流Ith1の値は、始動期間Tα内に流れる電流Isと定常期間Tβ内に流れる電流Iaの間に設定されている。
図5D】点灯検知期間が設けられている場合において、調光動作の実行中に放電ランプが立ち消えが生じなかったときの、一次側電流I1の挙動を模式的に示すタイミングチャートである。立ち消えの判定に利用される閾値電流Ith1の値は、始動期間Tα内に流れる電流Isと定常期間Tβ内に流れる電流Iaの間に設定されている。
図6】制御部において行われる移動平均処理の内容を説明するための模式的な図面である。
図7A】ノイズ緩和用のコンデンサが備えられていない場合において、ノイズ電流に由来した信号が重畳した第一結果信号Z31の態様を模式的に示すタイミングチャートである。
図7B】ノイズ緩和用のコンデンサが備えられた場合において、ノイズ電流に由来した信号が重畳した第一結果信号Z31の態様を模式的に示すタイミングチャートである。
図8A】本発明の光源装置の別実施形態の構成を模式的に示す回路ブロック図である。
図8B】本発明の光源装置の別実施形態の構成を模式的に示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明に係る光源装置の実施形態について、以下において図面を参照して説明する。
【0043】
図1は、本発明に係る光源装置の一実施形態の構成を模式的に示す回路ブロック図である。光源装置1は、紫外線Ry1を発する放電ランプ10、及び放電ランプ10を点灯駆動するための点灯回路2を備える。図1に示すように、点灯回路2は、制御部20と、直流電源21と、スイッチング素子22と、変圧器30とを含む。変圧器30は、一次側巻線L1と二次側巻線L2とを含む。一次側巻線L1は、直流電源21及びスイッチング素子22と接続されて、一次側回路c1を形成する。二次側巻線L2は、放電ランプ10と接続されて、二次側回路c2を形成する。
【0044】
本実施形態の光源装置1が備える放電ランプ10は、例えば誘電体バリア放電ランプの一種であるエキシマランプである。図2A及び図2Bは、放電ランプ10の外観を模式的に示す斜視図である。ただし、図2A及び図2Bに図示される放電ランプ10の構造は、あくまで一例である。つまり、本発明に係る光源装置1が備える放電ランプ10は、変圧器30の二次側巻線L2から出力される二次側電圧V2が印加されることで紫外線Ry1を発する限りにおいて、任意の構造が採用され得る。
【0045】
図2Aに示すように、放電ランプ10は、一方の面に光取り出し面43が形成された蓋部41と本体ケーシング部42とを含む。図2Bは、図2Aから蓋部41の一部の図示を除去した状態の模式図である。図2Bに示す例では、放電ランプ10は、複数の発光管15と、各発光管15に対して電圧を印加するための電極(11,12)とを含む。電極(11,12)は、それぞれ接続部(44a,45a)を介して電源線(44,45)に接続される。電源線(44,45)は、点灯回路2に接続されている。図2Bに示す例では、放電ランプ10が複数の発光管15を備える構成が図示されているが、単一の発光管15を備えるものとしてもよい。
【0046】
発光管15は、石英ガラス等の誘電体で構成されており、内部には所定の発光ガスが封入されている。電極(11,12)に対して、例えば1kHz~1MHz程度の高周波の電圧が印加されると、発光管15を介して発光ガスに対して前記電圧が印加される。このとき、発光ガスが封入されている放電空間内(発光管15の内部)で放電プラズマが生じ、発光ガスの原子が励起されてエキシマ状態となる。その後、エキシマ状態の原子が基底状態に移行する際に、エキシマ発光を生じる。
【0047】
放電ランプ10から出射される紫外線Ry1の波長は、封入される発光ガスの物質に依存して決定される。例えば、発光ガスとしてKrClを含む場合、放電ランプ10から出射される紫外線Ry1は、主ピーク波長が222nm近傍のスペクトルを示す。発光ガスにKrBrが含まれる場合には、紫外線Ry1は主ピーク波長が207nm近傍のスペクトルを示す。ただし、本発明において、放電ランプ10の発光管15内に封入されるガス種は任意であり、得たい紫外線Ry1の波長に応じて適宜選択されるものとして構わない。また、波長を長波長側に変換する目的で、発光管15の管壁又は光取り出し面43に蛍光体が設けられていてもよい。
【0048】
放電ランプ10から発せられる紫外線Ry1の主ピーク波長が200nm~240nmとなるように、発光管15に封入される発光ガスの種類又は蛍光体が選択されることにより、放電ランプ10を低圧水銀ランプとする場合と比較して、人体への影響を極力低下させることが可能となる。
【0049】
図1に戻り、点灯回路2の説明を続ける。図1に示す点灯回路2は、フライバック方式と呼ばれる回路である。ただし、本発明は、点灯回路2がフライバック方式である場合には限定されず、フルブリッジ方式やプッシュプル方式であっても構わない。
【0050】
変圧器30の一次側巻線L1には、直流電源21及びスイッチング素子22が接続されている。直流電源21は、例えば不図示の商用電源をAC/DC変換するAC/DCコンバータによって構成されるものとしても構わない。この場合、図1に示すように、点灯回路2は、直流電源21から出力される電圧波形を平滑化するための平滑コンデンサ25を備えるものとしても構わない。別の例として、直流電源21が電池で構成されていても構わない。
【0051】
点灯回路2は、駆動回路24を備える。駆動回路24は、制御部20からの制御信号S1に基づいて、スイッチング素子22のON/OFFを切り替えるための電圧信号V24をスイッチング素子22に対して出力する。
【0052】
本実施形態の光源装置1は、放電ランプ10から出射される紫外線Ry1の強度を調整する機能、すなわち調光機能を搭載している。具体的には、制御部20に対して調光指令信号Q1が入力されると、制御部20は駆動回路24に対して出力する制御信号S1を変化させる。調光指令信号Q1は、例えば不図示の調光指示部から送信されるものとしても構わない。駆動回路24は、制御信号S1に基づいてスイッチング素子22のON/OFF周波数及びON/OFFデューティ比のうちの少なくとも一方を変化させる。例えば、スイッチング素子22のON/OFFデューティ比を低下させるものとしても構わないし、スイッチング素子22のON/OFF周波数を上昇させるものとしても構わない。また、例えば、スイッチング素子22のON/OFF周波数とON/OFFデューティ比の両者を変化させても構わない。これにより、二次側電流I2が低下し、放電ランプ10に対して供給される二次側電力P2の値が低下する。この結果、紫外線Ry1の光出力が低下する。この点に関して、図3に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0053】
図3は、駆動回路24からスイッチング素子22に供給される電圧信号V24、変圧器30の一次側電流I1、変圧器30の二次側電圧V2、及び変圧器30の二次側電流I2の時間変化を模式的に示すタイミングチャートである。なお、図3では、制御部20に対して調光指令信号Q1が入力されたことで、基準光出力の下で点灯させる基準動作制御モードの実行時よりも、スイッチング素子22のON/OFFデューティが低下された状態が示されている。また、図3は、不点灯状態にあった放電ランプ10に対して点灯を開始させる期間である始動期間ではなく、放電ランプ10が点灯された状態が継続している期間(定常期間)における、上記各電圧又は電流の時間変化が模式的に示されている。
【0054】
図3に示すように、時刻t1において駆動回路24からスイッチング素子22に対して出力される電圧信号V24がLowからHighに変化すると、スイッチング素子22がOFF状態からON状態に遷移する。これにより、変圧器30の一次側電流I1が時間の経過と共に上昇する。その後、時刻t2において電圧信号V24がHighからLowに変化すると、スイッチング素子22がON状態からOFF状態に遷移する。このとき、変圧器30の二次側巻線L2に逆起電力が発生し、インパルス状の二次側電圧V2が生じる。この二次側電圧V2が、一対の電極(11,12)から放電ランプ10の発光管15に印加され、紫外線Ry1が出射する。スイッチング素子22は、制御部20からの制御信号S1に基づいてON/OFFが高周波で切り替えられる。これにより、上述したように、電極(11,12)に対して例えば1kHz~1MHz程度の高周波電圧が印加される。変圧器30は、一次側巻線L1に入力される一次側電圧V1よりも高い二次側電圧V2を誘起して、放電ランプ10に対して印加するために設けられている。
【0055】
放電ランプ10が誘電体バリア放電ランプの場合、放電ランプ10は、誘電体からなる発光管15を挟むように一対の電極(11,12)を備えているため、等価的にキャパシタ素子を構成する(以下では、「等価キャパシタC10」と表記する。)。このため、放電ランプ10に対して二次側電圧V2が印加されることで、放電ランプ10によって構成される等価キャパシタC10に電荷が充電される。
【0056】
変圧器30の二次側巻線L2に二次側電圧V2が誘起されることで、二次側巻線L2には二次側電流I2が流れる。この二次側電流I2は、変圧器30に蓄積されたエネルギーを放出しながら流れるため、時間の経過と共にゼロ値に近づく。二次側電流I2によって、変圧器30に蓄積されたエネルギーの放出が完了すると、等価キャパシタC10に蓄積された電荷が放電される。この放電により、変圧器30の二次側巻線L2には、先ほどとは逆向きの電流(二次側電流I2)が流れ、二次側電圧V2はゼロ値に近づくように変化する。
【0057】
等価キャパシタC10の放電が完了した後も、変圧器30の二次側巻線L2が電圧源となって、等価キャパシタC10への充電を行いながら引き続き二次側電流I2を流し続ける。その後、二次側電流I2の流れがなくなると、変圧器30の一次側巻線L1に一次側電圧V1が誘起される。この誘起電圧は、直流電源21とは逆極性の電圧であり、スイッチング素子22に備えられた寄生ダイオードを介して、一次側巻線L1には逆向きの一次側電流I1(回生電流)が流れる。一次側電流I1は、徐々にゼロ値に近づき、時刻t2aにおいてゼロ値となる。時刻t3においてスイッチング素子22が再びON状態になると、引き続き、時刻t1~t2と同様に一次側電流I1の値が増加していく。以下は、同様の現象が繰り返される。
【0058】
調光動作制御モードの実行時には、放電ランプ10からの紫外線Ry1の出力を基準光出力とするモード(基準動作制御モード)と比較して、スイッチング素子22のON/OFF周波数及びON/OFFデューティ比のうちの少なくとも一方が変化する。例えば、スイッチング素子22のON/OFF周波数又はON/OFFデューティ比を単独で変化させると、二次側電圧V2の波高値が変化する。また、スイッチング素子22のON/OFF周波数及びON/OFFデューティ比の両者を変化させることで、二次側電圧V2をほぼ一定に保ちながら、単位時間内に放電ランプ10に対して二次側電圧V2が印加される頻度を変化させることができる。
【0059】
これにより、単位時間内に放電ランプ10に対して二次側電圧V2が印加される頻度又は二次側電圧V2の波高値が低下するため、単位時間あたりに放電ランプ10に対して供給される二次側電力P2が低下する。よって、調光制御モードの実行時には、基準動作制御モードの実行時と比較して、放電ランプ10からの紫外線Ry1の出力が低下する(調光される)。なお、二次側電力P2を低下させるに際し、二次側電圧V2の変動を抑制することで、二次側電圧V2の低下によって引き起こされやすくなる放電ランプ10の立ち消えを、更に生じにくくする効果が期待できる。更に、二次側電圧V2の変動を抑制することで、二次側電圧V2が上昇する可能性も低下するため、部品の耐圧性の自由度が向上すると共に、確保すべき絶縁距離に関する制約も緩和されるという付加的な効果も得られる。
【0060】
上述したように、二次側電圧V2の周波数は、1kHz~1MHz程度の高周波である。例えば、二次側電圧V2の周波数が100kHzである場合、インパルス状の波形として現れている、図3に示す二次側電流I2の周期は、0.01m秒という極めて短い時間であり、実際には連続的に電流が流れているとみなすことができる。また、一次側電流I1については、図3に示すように経時的に変化を示すものの、その周期はやはり極めて短い時間であるため、同様に連続的に電流が流れているとみなすことができる。
【0061】
図1に示すように、本実施形態の光源装置1は、変圧器30の一次側回路c1に接続された第一電流検知部31と、変圧器30の二次側回路c2に接続された第二電流検知部32とを備える。第一電流検知部31で検知された電流値に基づく電圧信号は、増幅器51を介して増幅された後、制御部20に入力される。第二電流検知部32で検知された電流値に基づく電圧信号は、増幅器52を介して増幅された後、制御部20に入力される。なお、本実施形態においては、第一電流検知部31で検知された電流量に重畳するノイズ電流を除去するためのコンデンサ(61,62)と、第二電流検知部32で検知された電流量に重畳するノイズ電流を除去するためのコンデンサ(65,66)とが、点灯回路2に搭載されている。第一電流検知部31は、典型的には抵抗であり、その抵抗値は0.5Ω以下であるのが好ましく、0.1Ω以下であるのがより好ましく、0.05Ω以下であるのが特に好ましい。なお、この抵抗は、電流値の検知性能を十分に発現させる観点から、0.01Ω以上であるのが好ましい。第二電流検知部32は、典型的には抵抗であり、その抵抗値は、第一電流検知部31と同様の条件から選択されるものして構わない。
【0062】
第一電流検知部31は、放電ランプ10の立ち消えが発現していないかどうかを検知するために設けられている。一方、第二電流検知部32は、放電ランプ10が変圧器30の二次側巻線L2に対して電気的に接続されているかどうかを検知するために設けられている。上述したように、放電ランプ10が点灯中においては、一次側回路c1及び二次側回路c2の双方ともに、電流が連続的に流れているとみなすことができるため、各電流検知部(31,32)によって検知された電流値に基づいて、放電ランプ10が不点灯状態となっていないかどうかを判定することが可能となる。
【0063】
以下、図4に示すタイミングチャートに基づき、第一電流検知部31の検知結果によって放電ランプ10の立ち消えを検知した場合の点灯回路2の動作について説明する。なお、図4では、説明の都合上、不点灯状態にある放電ランプ10に対して点灯を開始する初期段階の期間(始動期間)と、点灯が開始されてから点灯状態が継続される期間(定常期間)の両者が示されている。
【0064】
図示しない主電源がONになると、時刻t10において一次側電圧V1はHighレベルに遷移する。その後、制御部20は、光源装置1の図示しない信号送信部から点灯指令信号Q2を受信する。なお、図4では、点灯指令信号Q2が調光指令信号Q1と共に制御部20に対して入力される場合が想定されている。また、図4では、主電源がONになる時刻t10の後、時刻t11において制御部20が点灯指令信号Q2を受信する場合が示されているが、時刻t11が時刻t10と同時刻であっても構わない。
【0065】
制御部20は、調光指令信号Q1と共に点灯指令信号Q2を受信すると、まず、始動期間Tα内において二次側電力P2を基準動作制御モードの実行時と同等以上とするための、スイッチング素子22用の制御信号S1を生成し、駆動回路24に対して送信する。制御部20は、調光指令信号Q1を受信したことで、放電ランプ10を調光動作させることを認識する。しかし、不点灯状態にある放電ランプ10に対して点灯を開始させる期間(始動期間Tα)においては、放電ランプ10内で放電を生じさせるために、調光動作制御モードの実行中よりも高い二次側電力P2を放電ランプ10に対して供給する必要がある。図4のタイミングチャートでは、始動期間Tαにおける二次側電力P2の値Psが、調光動作制御モードの実行中の定常期間Tβにおける二次側電力P2の値Paよりも高いことが示されている。図4では、定常期間Tβ内においても、一時的に二次側電力P2がPaよりも高い値(ここではPs)に遷移しているが、この点については後述される。
【0066】
制御部20は、時刻t11において、始動期間Tαにおいては二次側電力P2の値がPsとなるようにスイッチング素子22を導通制御するための制御信号S1を生成し、駆動回路24に対して出力する。図4では、この制御信号S1の内容を符号Ssで表記している。駆動回路24は、制御内容Ssに対応する制御信号S1に基づいて、スイッチング素子22をON/OFF制御する。時刻t11以後、スイッチング素子22のON/OFF制御が開始されると、変圧器30の二次側巻線L2には二次側電圧V2が誘起される。
【0067】
始動期間Tαにおける二次側電力P2の値Psは、基準動作制御モードの実行時における定常期間内の二次側電力P2の値と同等であるものとしても構わないし、基準動作制御モードの実行時における定常期間内の二次側電力P2の値よりも高い値としても構わない。典型的には、始動期間Tαにおける二次側電力P2の値Psは、放電ランプ10の定格電力とされる。ただし、この電力値Psは、放電ランプ10の定格電力よりも低い値であっても構わない。逆に、始動期間Tαに限って放電ランプ10に対して供給される電力値であることに鑑み、始動期間Tαにおける二次側電力P2の値Psを放電ランプ10の定格電力よりも高い値としても構わない。
【0068】
図1に示すように、放電ランプ10は始動補助用光源18を備えているものとしても構わない。この場合、制御部20は、始動期間Tα内において始動補助用光源18を点灯させるための制御信号S18を出力する。始動補助用光源18は、典型的にはLED光源であり、このLED光源のON/OFF制御を行う電源駆動回路(不図示)に対して、制御信号S18が送信される。始動補助用光源18は、制御信号S18に基づいて電流が供給されて点灯する。始動補助用光源18からの光は、放電ランプ10に対して照射され、放電開始用のトリガとして機能する。
【0069】
制御部20は、変圧器30の一次側回路c1に接続された第一電流検知部31による検知結果に対応した信号が入力される。以下では、この信号を、「第一結果信号Z31」と称する(図1参照)。
【0070】
制御部20は、入力された第一結果信号Z31に基づく値を、所定の閾値(第一閾値Th1)と対比する。第一閾値Th1に関する情報は、制御部20が搭載しているメモリ等の記憶領域に予め記録されている。時刻t11の時点では、放電ランプ10が放電を開始していないため、二次側電力P2はゼロ値を示している。このため、一次側回路c1には、ランプ放電時と比較して一次側電流I1が流れない。よって、時刻t11~t12の間においては、第一結果信号Z31に基づく値は第一閾値Th1よりも低い。制御部20は、この対比結果に基づき、時刻t11~t12の間において放電ランプ10が不点灯であると判定する。制御部20は、この判定結果に関する信号(以下、「判定結果信号J20」と称する。)を出力する。図4では、放電ランプ10が不点灯であることを示す判定結果信号J20の内容を、符号k0で表記している。
【0071】
判定結果信号J20は、例えば光源装置1が備える不図示の結果出力部に送信される。より具体的な一例として、光源装置1とは離れた位置に配置された結果出力部に対して、無線通信を介して判定結果信号J20が送信される。結果出力部は、例えば時刻t11~t12の間において、内容k0に対応する判定結果信号J20が入力されることで、放電ランプ10が不点灯である旨の情報を出力する。
【0072】
図4のタイミングチャートでは、時刻t12の時点で放電ランプ10の放電が成功し、時刻t12以後、放電ランプ10の点灯が開始した場合が示されている。すなわち、時刻t12以後、放電ランプ10に供給される二次側電力P2の値は、Psに上昇する。この時刻t12以後は二次側回路c2に電流が流れるため、一次側回路c1に流れる電流量も増加する。つまり、この時間帯においては、制御部20に入力された第一結果信号Z31に基づく値は、所定の閾値(第一閾値Th1)よりも高い値を示す。制御部20は、この対比結果に基づき、時刻t12~t13の間において放電ランプ10が点灯状態にあると判定し、判定結果信号J20を出力する。図4では、放電ランプ10が点灯状態にあることを示す判定結果信号J20の内容を、符号k1で表記している。
【0073】
このように、放電ランプ10がひとたび点灯を開始すると、始動期間Tαから定常期間Tβに移行する。図4では、この移行タイミングを時刻t13としている。始動期間Tαから定常期間Tβに移行する時刻t13において、始動補助用光源18はOFF状態に遷移する。上述したように、この例では、時刻t11よりも前の時点で調光指令信号Q1が入力されている。このため、定常期間Tβにおいては、放電ランプ10を調光指令信号Q1に示された出力下での点灯状態(例えば50%出力、30%出力等)とすべく、二次側電力P2が調整される。
【0074】
制御部20は、時刻t13において、二次側電力P2の値を、調光動作の実行中に放電ランプ10に対して供給すべき電力値Paとするためのスイッチング素子22用の制御信号S1を生成し、駆動回路24に対して送信する。図4では、この制御信号S1の内容を、符号Saで表記している。駆動回路24は、制御内容Saに対応する制御信号S1に基づいて、スイッチング素子22をON/OFF制御する。この結果、時刻t13以後において、二次側電力P2はPsからPaに低下する。
【0075】
調光指令信号Q1には、放電ランプ10の最大出力に対してどの程度の割合で放電ランプ10を出力させるべきかについての情報が示されているものとして構わない。別の例として、調光時の出力が一種類で固定されている場合には、必ずしも調光指令信号Q1において目標出力に関する情報が示されている必要はない。この場合、制御部20は、調光指令信号Q1が入力されたことをもって、放電ランプ10を所定の出力に低下させるよう、スイッチング素子22を制御することができる。
【0076】
このように、放電ランプ10の出力を最大出力から低下させた状態で放電ランプ10を点灯させる動作制御モードを、「調光動作制御モード」と称する。
【0077】
調光動作が開始されて、放電ランプ10の出力がPsからPaに低下した時刻t13~t14の間、制御部20は、放電ランプ10が点灯中であるか否かを明確に判定することができない。この理由については、後述される。
【0078】
時刻t13~t14の間において、制御部20から出力される判定結果信号J20には、調光動作制御モードの実行中であることを示す内容が示されるものとしても構わない。図4では、放電ランプ10が調光動作制御モードの実行中であることを示す判定結果信号J20の内容が、符号kaで表記されている。
【0079】
時刻t13~t14の間において、放電ランプ10が点灯であるか否かを明確に判定することができない理由について、図5A図5Dを参照して説明する。図5A図5Bは、本実施形態の点灯検知期間が設けられていない場合の、一次側電流I1の挙動を模式的に示すタイミングチャートであり、対比説明のために図示されたものであるる。図5C図5Dは、本実施形態の点灯検知期間が設けられている場合の、一次側電流I1の挙動を模式的に示すタイミングチャートである。
【0080】
上述したように、始動期間時刻t12において点灯が開始すると、放電ランプ10に対して値Psに対応する二次側電力P2が供給される。このとき、一次側回路c1には値Isに対応する一次側電流I1が流れる(図5A図5D参照)。その後、時刻t13において、調光動作の実行中に定常期間Tβに移行すると、放電ランプ10に対して供給される二次側電力P2は、PsからPaに低下する(図4参照)。その結果、一次側回路c1に流れる一次側電流I1も、IsからIaに低下する(図5A図5D参照)。
【0081】
ここで、図5Aに示すように、放電ランプ10の点灯/不点灯を判定するための第一閾値Th1が、Isよりも低い閾値電流Ith1に基づいて設定されている場合、始動期間Tα中においては、一次側電流I1が閾値電流Ith1よりも高いことをもって、放電ランプ10が点灯していることが判定できる。しかし、この場合、定常期間Tβに移行した後、一次側電流I1がIsからIaに低下すると、図5Aに示すように一次側電流I1が閾値電流Ith1よりも低くなり、制御部20は点灯中の放電ランプ10を不点灯状態にあると誤判定してしまう。
【0082】
このような誤判定を回避するための一つの方法として、閾値電流Ith1を図5Aに示す値よりも低下させる方法が考えられる(図5B参照)。つまり、調光動作の実行中に流れることが想定される一次側電流I1の値Iaよりも低い閾値電流Ith1を予め設定しておく。そして、この閾値電流Ith1に基づく第一閾値Th1と、第一電流検知部31による検知結果に対応した第一結果信号Z31とを制御部20が対比する。この方法によれば、調光動作の実行中においても立ち消えが判定できるように思われる。
【0083】
しかしながら、実際には、放電ランプ10が立ち消えを生じた後であっても、点灯回路2にはノイズ電流Izが流れる。図5A図5Bでは、時刻t13の後の時刻t50において放電ランプ10が立ち消えを生じた場合が示されている。図5A及び図5Bでは、説明のためにノイズ電流Izが誇張して表記されている。しかし、実際においても、放電ランプ10の調光の程度(最大出力に対する出力の割合)によっては、放電ランプ10が立ち消え状態の下で流れるノイズ電流Izの瞬時値が、放電ランプ10が点灯中に流れる一次側電流I1の値Iaに近くなる場合がある。
【0084】
つまり、図5Bに示すように、閾値電流Ith1の値をIsよりも低く設定していたとしても、実際に立ち消えが発生した時刻t50以後に流れるノイズ電流Izに起因した第一結果信号Z31を受けて、制御部20が放電ランプ10が点灯中であると誤判定する蓋然性がある。このような事情は、放電ランプ10が小型であり、最大出力(典型的には定格出力)が1W~10W程度であって、かつ調光動作が実行される場合に顕著となる。定格出力が低い小型の放電ランプ10の場合、調光動作の実行中に一次側回路c1に流れることが想定される一次側電流I1の値Iaは極めて低くなり、ノイズ電流Izの瞬時値と同等のレベルを示すことがある。
【0085】
このような事情に鑑み、本実施形態の光源装置1においては、図5Aを参照して上述したのと同様に、閾値電流Ith1の値として、始動期間Tα内に流れることが想定される一次側電流I1の値Isよりは低く、調光制御動作モードの定常期間Tβ内に流れることが想定される一次側電流I1の値Iaよりは高い値に設定される(図5C図5D参照)。その上で、本実施形態の光源装置1においては、調光動作制御モードの定常期間Tβ内に設けられた期間Tc(以下、「点灯検知期間Tc」と称する。)において、二次側電力P2を一時的に上昇させる制御が行われる(図4参照)。図4では、時刻t14~t15、時刻t16~t17の期間が、点灯検知期間Tcに対応する。
【0086】
つまり、制御部20は、調光動作制御モードの定常期間Tβ内である時刻t14において、二次側電力P2の値が、基準動作制御モードの実行時における定常期間内と同等のPsとなるようにスイッチング素子22を導通制御するための制御信号S1を生成し、駆動回路24に対して出力する。図4の例では、始動期間Tα内と同一の制御内容Ssに対応する制御信号S1に基づいて、スイッチング素子22がON/OFF制御される。スイッチング素子22は、時刻t13~t14の間と比較して、ON/OFFの切替周波数又はON/OFFデューティ比が上昇される。この結果、調光動作制御モードの定常期間Tβ内であるにもかかわらず、二次側電力P2が、時刻t14~t15の間において一時的にPaからPsに上昇する。
【0087】
この場合、仮に定常期間Tβ内の時刻t50の時点で立ち消えが生じていた場合、図5Cに示すように、時刻t14~t15に係る点灯検知期間Tc内に流れる一次側電流I1の値は、閾値電流Ith1よりも低くなる。そして、上述したように、閾値電流Ith1の値は、放電ランプ10が立ち消え中に流れる可能性のあるノイズ電流Izよりも高い。よって、制御部20側において、閾値電流Ith1に基づく第一閾値Th1と、第一電流検知部31による検知結果に対応した第一結果信号Z31とを対比することで、調光動作制御モードの定常期間Tβ中においても立ち消えが生じていることを判定できる。
【0088】
また、仮に定常期間Tβ内の時刻t50の時点で立ち消えが生じていなかった場合、図5Dに示すように、時刻t14~t15に係る点灯検知期間Tc内に流れる一次側電流I1の値は、閾値電流Ith1よりも高くなる。このため、制御部20側において、閾値電流Ith1に基づく第一閾値Th1と、第一電流検知部31による検知結果に対応した第一結果信号Z31とを対比することで、調光動作制御モードの定常期間Tβ中において立ち消えが生じておらず、点灯状態にあることを判定できる。
【0089】
図4の例では、時刻t15以後、時刻t16以前の時刻t50の時点で放電ランプ10が立ち消えを生じた場合が示されている。この場合、時刻t14~t15に係る点灯検知期間Tc内において、制御部20は、第一電流検知部31による検知結果に対応した第一結果信号Z31が、閾値電流Ith1に基づく第一閾値Th1よりも高いことを検知して、放電ランプ10が点灯中であることを示す判定結果信号J20を出力する。図4の例では、放電ランプ10が点灯状態にあることを示す判定結果信号J20の内容を、符号k1で表記している。
【0090】
一方、立ち消えが生じた時刻t50よりも後段の時間帯である、時刻t16~t17に係る点灯検知期間Tc内において、制御部20は、第一結果信号Z31が第一閾値Th1よりも低いことを検知する。そして、制御部20は、放電ランプ10が不点灯状態にあることを示す、内容k0が示された判定結果信号J20を、不図示の結果出力部に出力する。結果出力部は、この判定結果信号J20が入力されると、放電ランプ10が不点灯状態にある(立ち消えが発生している)旨の情報を、例えば管理用の端末又はサーバ等に出力する。これにより、調光動作中においても、放電ランプ10の立ち消えを検知することが可能となる。また、制御部20は、第一結果信号Z31に基づいて放電ランプ10の立ち消えを判定した後、スイッチング素子22に対して再び始動期間Tαの開始時点と同様の制御動作を行うものとしても構わない。
【0091】
次に、第二電流検知部32について説明する。
【0092】
放電ランプ10の点灯開始時又は点灯動作中において、何らかの外的な要因等により、放電ランプ10と変圧器30の二次側巻線L2との接続状態が不良となる場合がある。仮に、このような状態で点灯回路2が運転を継続すると、二次側回路c2が開放端となり無負荷状態となるため、変圧器30の二次側電圧V2が極めて高電圧となる。この結果、変圧器30の一次側電圧V1も上昇し、スイッチング素子22を損傷させる懸念がある。
【0093】
かかる観点から、光源装置1は、放電ランプ10が二次側回路c2に対して正しく接続されているかどうかを判定するための第二電流検知部32を備えている。制御部20は、変圧器30の二次側回路c2に接続された第二電流検知部32による検知結果に対応した信号が入力される。以下では、この信号を、「第二結果信号Z32」と称する(図1参照)。
【0094】
制御部20は、入力された第二結果信号Z32に基づく値を、所定の閾値(第二閾値Th2)と対比する。この第二閾値Th2に関する情報は、制御部20が搭載しているメモリ等の記憶領域に予め記録されている。
【0095】
上述したように、第二電流検知部32は、放電ランプ10と二次側回路c2との電気的な接続状態を検知する目的で設けられている。このため、仮に両者が不接続である場合には、二次側回路c2に流れる二次側電流I2は、実質的にゼロ値となる。よって、比較基準となる閾値電流は、図5C図5Dを参照して上述した閾値電流Ith1よりも低い値とすることができる。すなわち、第二閾値Th2は第一閾値Th1よりも低い値として構わない。
【0096】
放電ランプ10と二次側回路c2との電気的な接続が不良である場合、すなわち、二次側回路c2が無負荷である場合であっても、一次側回路c1が無負荷でない限り一次側回路c1には電流I1が流れる。このため、一次側回路c1側で、放電ランプ10と二次側回路c2との電気的な接続状態を検知しようとすると、放電ランプ10が立ち消えによって電流量が低下しているのか、二次側回路c2が無負荷状態にあることによって電流量が低下しているのかを区別することが困難となる。
【0097】
一方、変圧器30の二次側回路c2は、一次側回路c1と比較して点灯中に流れる電流量が低下する。このため、不点灯時と点灯時に流れ得る電流量の変化の幅が小さくなる。この結果、二次側回路c2を流れる電流を立ち消えの判定のために検知しようとすると、変化の幅を増大するために増幅器52の増幅率を高める必要がある。しかし、増幅器52の増幅率を高めると、重畳されるノイズ電流Izの値も増幅されてしまい、判定精度が低下することが予想される。
【0098】
上記の構成によれば、第二電流検知部32は、放電ランプ10と二次側回路c2との電気的な接続の判定に特化して配置されているため、上述したように、極めて低い値を第二閾値Th2として設定できる。そして、光源装置1は、第二電流検知部32とは別に、一次側電流I1に基づく第一電流検知部31を設けているため、放電ランプ10の立ち消えの有無の判定を、精度よく行うことができる。
【0099】
なお、制御部20は、点灯検知期間Tc内において、連続的に入力された第一結果信号Z31に基づく値に対して移動平均処理を行い、この平均値と第一閾値Th1とを対比するものとしても構わない(図6参照)。例えば、図6に示すように、所定の平均処理期間τsの間にわたって、サンプリング間隔ti毎に得られた第一結果信号Z31に基づく値に対して平均値Ai(A1,A2,A3,…)を算出し、得られた平均値Aiと第一閾値Th1とを対比することで、サンプリング間隔ti毎に放電ランプ10の立ち消えを判定するものとしても構わない。
【0100】
かかる処理を行うことで、仮に立ち消えが生じている時間内に、瞬時的に高いノイズ電流Izが重畳した場合であっても、ノイズ電流Izの影響を低下させた状態で、第一閾値Th1と対比できる。これにより、高精度に立ち消えの有無を判定できる。このような処理は、点灯検知期間Tcが、上述したように100m秒~30秒といった比較的長い時間として設定されることにより実現できる。この場合、平均処理期間τsを10m秒~50m秒の時間で設定することができる。サンプリング間隔tiの一例は、500μ秒~5m秒である。
【0101】
更に、図1を参照したように、光源装置1は、第一電流検知部31で検知された電流量に重畳するノイズ電流Izを緩和するためのコンデンサ(61,62)を備えている。これにより、上述したように、ノイズ電流Izに基づく点灯状態の誤判定を抑制する効果が更に高められる。コンデンサ(61,62)を備えることで、第一結果信号Z31に現れる一次側電流I1の変化の態様は緩やかになる。しかし、上述したように、光源装置1は、点灯検知期間Tcとして、100m秒~30秒といった、比較的長い時間が設定されるため、コンデンサ(61,62)による信号の平滑化に要する時間を点灯検知期間Tc内に設けることができる。コンデンサ(61,62)の静電容量は、例えば0.01μF~0.1μFである。
【0102】
コンデンサ(61,62)が存在しない場合、第一結果信号Z31には、ノイズ電流Izに由来する高レベルのノイズ信号N1が重畳する可能性がある(図7A参照)。これに対し、コンデンサ(61,62)を設けることで、第一結果信号Z31に重畳するノイズ信号N2のレベルを抑制できる(図7B参照)。この結果、放電ランプ10の立ち消えの有無の判定を精度良く行える。
【0103】
なお、図1では、第二電流検知部32で検知された電流値に基づく電圧信号が増幅される増幅器52の前後にもコンデンサ(65,66)が設けられている。しかし、本発明において、コンデンサ(65,66)を備えるか否かは任意である。
【0104】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0105】
〈1〉光源装置1は、第一電流検知部31を備える一方、第二電流検知部32を備えない構成としても構わない(図8A参照)。この場合において、第一電流検知部31が、二次側回路c2に接続されていても構わない(図8B参照)。
【0106】
〈2〉図1を参照して上述した光源装置1は、第一電流検知部31で検知された電圧信号を増幅する増幅器51の前段及び後段に、ノイズ緩和用のコンデンサ(61,62)を設けていた。しかし、ノイズ緩和用のコンデンサ(61,62)を備えていない光源装置1についても、本発明の射程範囲内である。
【0107】
増幅器51を備えていない光源装置1についても、本発明の射程範囲内である。
【符号の説明】
【0108】
1 :光源装置
2 :点灯回路
10 :放電ランプ
15 :発光管
18 :始動補助用光源
20 :制御部
21 :直流電源
22 :スイッチング素子
24 :駆動回路
25 :平滑コンデンサ
30 :変圧器
31 :第一電流検知部
32 :第二電流検知部
41 :蓋部
42 :本体ケーシング部
43 :光取り出し面
51 :増幅器
52 :増幅器
c1 :一次側回路
c2 :二次側回路
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図8A
図8B