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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172243
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】電磁接触器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/54 20060101AFI20231129BHJP
   H01H 50/00 20060101ALI20231129BHJP
   H01H 9/44 20060101ALI20231129BHJP
   H01H 50/16 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H01H50/54 G
H01H50/00 D
H01H50/54 B
H01H9/44 A
H01H50/16 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083903
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】草野 祐馬
(72)【発明者】
【氏名】堤 貴志
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 裕也
(72)【発明者】
【氏名】小西 弘純
(72)【発明者】
【氏名】石井 智大
【テーマコード(参考)】
5G027
【Fターム(参考)】
5G027AA03
5G027BB03
(57)【要約】
【課題】可動接触子の回転を規制して主回路の開閉時の導通不良を回避して接触信頼性を向上させると同時に、可動接触子の接点間の絶縁低下や消弧性能の低下を解決した電磁接触器を提供する。
【解決手段】可動接触子13が上方及び下方に移動する際には、接点支え14の四方(前後左右)に固定した摺動部材43の前側摺動部45、後側摺動部46、左側摺動部47及び右側摺動部48が、回転規制部材50の前側回転規制部53、後側回転規制部54、左側回転規制部55及び右側回転規制部56に当接して摺動するので、可動接触子13の回動が規制される。そして、設計変更によりアーク消弧用永久磁石42a,42bを配置変更しても、摺動部材の前後左右に配置した摺動部と、回転規制部材の前後左右に配置した回転規制部が可動プランジャ21の磁気吸引による偏心を規制し、可動プランジャの直動性を向上させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1固定接点及び第2固定接点を設けた第1及び第2固定接触子と、
前記第1固定接点及び前記第2固定接点に接離可能な第1及び第2可動接点を長手方向の両端に設けた可動接触子と、
前記可動接触子に可動接触子支持部を介して連結された可動プランジャを駆動して前記第1及び第2固定接触子に接離する進退方向に前記可動接触子を駆動する電磁石ユニットと、
前記第1及び第2固定接触子、前記可動接触子及び電磁石ユニットを収納する収納ケースと、
前記第1固定接点及び前記第1可動接点の間、前記第2固定接点及び前記第2可動接点の間に発生したアークを引き伸ばす少なくとも一対のアーク消弧用永久磁石と、を備え、
前記可動接触子支持部の近傍に、前記可動接触子が進退する際の回転を規制する回転規制手段が配置されていることを特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
前記可動接触子支持部は、
前記可動プランジャの一端に固定された樹脂製の接点支えと、
頂板部及び当該頂板部の両端から平行に延びる一対の脚部が前記接点支えに固定されているスプリング押さえと、
当該スプリング押さえの内部に配置した前記可動接触子の長手方向中央部を前記頂板部側に付勢する接触スプリングと、を備え、
前記電磁石ユニットは、励磁することにより磁力を発生させて前記可動プランジャを駆動する励磁コイルと、前記励磁コイルを囲んでいる励磁ヨークと、を備えており、
前記回転規制手段は、前記接点支えの回転方向に沿う側面に固定された金属製の平坦な摺動部と、前記励磁ヨークに固定されて前記摺動部に対向配置されている金属製の平坦な回転規制部と、を備えていることを特徴とする請求項1記載の電磁接触器。
【請求項3】
前記接点支えの四方の側面に、4枚の前記摺動部が夫々固定され、前記励磁ヨークに、前記4枚の摺動部が各々摺動する4枚の前記回転規制部が対向して固定されていることを特徴とする請求項2記載の電磁接触器。
【請求項4】
前記4枚の摺動部は本体部に一体に形成されており、前記本体部は、前記可動プランジャに固定されていることを特徴とする請求項3記載の電磁接触器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主回路の開閉を行う電磁接触器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁接触器として、例えば特許文献1のように、収納ケースの中に固定接点を有する一対の固定接触子及び一対の固定接触子の各々の固定接点に接離可能な長尺な可動接触子が収納されている接点機構と、接点機構の可動接触子が一対の固定接触子に接離する方向に可動接触子を駆動する電磁石ユニットと、可動接触子が接離する際の回転を規制する回転規制部と、が収納されているとともに、収納ケースの外側に、固定接点及び可動接点の間に発生したアークを引き伸ばすアーク消弧用永久磁石を配置した装置が知られている。
【0003】
回転規制部は、可動接触子の長手方向に互いに離間し、短手方向から可動接触子を挟み込むように2対配置され、可動接触子の進退方向に延在する4本の金属製の摺動ガイドで構成されている。そして、可動接触子が接離方向に移動する際に、4本の摺動ガイドが可動接触子の短手方向の側部に接することで、可動接触子の回転を規制して主回路の開閉時の導通不良を回避して信頼性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-118111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の電磁接触器は、金属製の4本の摺動ガイドが可動接触子の近傍に配置されているので、可動接触子の接点間の絶縁性が低下しやすい。また、可動接触子の開離動作で発生したアークが摺動ガイドで短絡しやすいなど、アーク消弧用永久磁石でアークを十分に引き延ばすことができず、消弧性能の面でも問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、可動接触子の回転を規制して主回路の開閉時の導通不良を回避して接触信頼性を向上させると同時に、可動接触子の接点間の絶縁低下や消弧性能の低下を解決した電磁接触器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電磁接触器は、第1固定接点及び第2固定接点を設けた第1及び第2固定接触子と、第1固定接点及び第2固定接点に接離可能な第1及び第2可動接点を長手方向の両端に設けた可動接触子と、可動接触子に可動接触子支持部を介して連結された可動プランジャを駆動して第1及び第2固定接触子に接離する進退方向に可動接触子を駆動する電磁石ユニットと、第1及び第2固定接触子、可動接触子及び電磁石ユニットを収納する収納ケースと、第1固定接点及び第1可動接点の間、第2固定接点及び第2可動接点の間に発生したアークを収納ケース内に設けたアーク消弧空間に引き伸ばす少なくとも一対のアーク消弧用永久磁石と、可動接触子支持部の近傍に、可動接触子が進退する際の回転を規制する回転規制部が配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電磁接触器によれば、第1及び第2固定接触子と可動接触子の接点から離間した位置である可動接触子及び可動プランジャを連結する可動接触子支持部の近傍に可動接触子が進退する際の回転を規制する回転規制部を配置しているので、可動接触子の回転を規制して主回路の開閉時の導通不良を回避して信頼性を向上させるとともに、可動接触子の接点間の絶縁低下を防止することができる。
【0009】
また、可動接触子の開離動作で発生したアークが短絡しやすい金属部材が近傍に存在しないので、発生したアークをアーク消弧用永久磁石で十分に引き延ばすことができるので、消弧性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る一実施形態の電磁接触器を示す断面図である。
図2図1におけるII-II線矢視図である。
図3】一実施形態の電磁接触器において一対の固定接触子を固定している上ケース及び下ケースを除いた内部構造を示す斜視図である。
図4図3の状態を垂直軸回りに90度回転させて示す斜視図である。
図5】一実施形態の電磁接触器の効果を説明するために示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0012】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
なお、以下の説明で記載されている「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」、「長尺方向」、「短尺方向」等の方向を示す用語は、添付図面の方向を参照して用いられている。
【0014】
本発明に係る主回路の電源側及び負荷側の間に接続した一実施形態の電磁接触器について、図1から図4を参照して説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の電磁接触器1は、接点機構2と、この接点機構2の後述する可動接触子を駆動する電磁石ユニット3とを備えている。
【0016】
接点機構2及び電磁石ユニット3は、収納ケース6内に同一空間に密封状態で収納されている。収納ケース6は、樹脂製の上ケース4と、上ケース4に接合されている樹脂製の下ケース5とで構成されている。収納ケース6内にはアーク消弧用のガスが封入されている。収納ケース6の上ケース4には、他の部材への取付部7が設けられている。
【0017】
接点機構2は、上ケース4にインサート成形によって固定された一対の固定接触子11、12(以下、第1固定接触子11、第2固定接触子12と称する)と、これら第1固定接触子11及び第2固定接触子12に接離可能な可動接触子13とを備えている。
【0018】
第1固定接触子11及び第2固定接触子12は、導電性金属材料で形成されて上ケース4に左右方向に所定間隔を離して固定される。そして、左側の第1固定接触子11の下端面には固定接点11aが形成され、右側の第2固定接触子12の下端面には固定接点12aが形成されている。
【0019】
また、可動接触子13は、導電性金属を材料とした左右方向に長く延びる導電板である。可動接触子13は、電磁石ユニット3の後述する可動プランジャ21に連結された接点支え14、接触スプリング15及びスプリング押さえ16に支持されている。これら接点支え14、接触スプリング15及びスプリング押さえ16が、本発明に記載した可動接触子支持部に対応している。可動接触子13の左端側の上面には、左側の第1固定接触子11の固定接点11aに接触する可動接点13aが形成され、可動接触子13の右端側の上面には、右側の第2固定接触子12の固定接点12aに接触する可動接点13bが形成されている。接点支え14の下部は可動プランジャ21の上端に固定されており、接点支え14の上部には、頂板部16aと頂板部16aの両端から下方に延びる一対の脚部16bとを備えたスプリング押さえ16の一対の脚部16bが固定されている。可動接触子13は、スプリング押さえ16の頂板部16aと接点支え14との間を左右方向に貫通するように配置され、可動接触子13と接点支え14との間に配置された接触スプリング15によって常時上方向に付勢された状態でスプリング押さえ16の頂板部16aと接触スプリング15との間に挟持され、これによって可動接触子13が支持されている。
【0020】
電磁石ユニット3は、図1に示すように、可動プランジャ21、アーマチュア22、スプール24、励磁コイル25、励磁ヨーク31、補助ヨーク32、永久磁石33及び復帰ばね34を備え、収納ケース6内部の接点機構2の下方に配置されている。
【0021】
可動プランジャ21は、磁性体で構成される上下方向に延びる丸軸状部材である。可動プランジャ21の下端には、可動プランジャ21よりも径の大きい円板状の磁性体で構成されるアーマチュア22が固定されている。可動プランジャ21の上端に固定された接点支え14は、可動プランジャ21の上方移動とともに上方向に移動し、可動プランジャ21の下方移動とともに下方向に移動する。そして、接点支え14の上方向の移動にともなって可動接触子13が上方向に移動し、接点支え14の下方向の移動にともなって可動接触子13が下方向に移動する。なお、可動プランジャ21の外周の下側には円筒形状の摺動カラー26が配置され、上側には円筒形状のプランジャリング27が配置されている。
【0022】
励磁ヨーク31は、開口部が下方を向いているU字形状の上部ヨーク体35と、上部ヨーク体35の開口部を閉塞して連結されている下部ヨーク体36と備えている。上部ヨーク体35の上板35a及び下部ヨーク体36には、可動プランジャ21が通過する可動プランジャ貫通孔37a,37bが形成されている。
【0023】
可動プランジャ21の上方向への移動は、アーマチュア22が下部ヨーク体36の可動プランジャ貫通孔37bの下部周縁に当接することで規制され、可動プランジャ21の下方向への移動は、アーマチュア22が補助ヨーク32の上面に当接することで規制される。スプール24は、可動プランジャ21の外周を囲って上下方向に延びる円筒状の部材であり、スプール24の外周に、可動プランジャ21を駆動する励磁コイル25が巻装されている。この励磁コイル25は、端子(不図示)に電気的に接続されている。永久磁石33は、環状部材であり、励磁ヨーク31の下部ヨーク体36の下側であって可動プランジャ21のアーマチュア22の周囲に設置されている。この永久磁石33の下側に、磁性体で構成される円環板状の補助ヨーク32が設置されている。永久磁石33は、下部ヨーク体36の下面に吸着され、補助ヨーク32は永久磁石33の下面に吸着された状態で設置される。復帰ばね34は、摺動カラー26の下端面と、可動プランジャ21に固定されたアーマチュア22との間に可動プランジャ21を囲繞するように設置されており、励磁コイル25の励磁状態を解除したときに可動接触子13を第1固定接触子11及び第2固定接触子12に対して開離させる。
【0024】
図2に示すように、上ケース4の前後方向に離間した内壁には、上部が四角形状に開口し、下部に底板(不図示)を設けた一対の磁石収納空間40a,40bが形成されて、一対の磁石収納空間40a,40bの間に接触子収納空間41が設けられている。この接触子収納空間41には、可動接触子支持部(接点支え14、接触スプリング15及びスプリング押さえ16)に支持された可動接触子13と、可動接触子13の可動接点13a,13bに固定接点11a、12aが接離する第1固定接触子11及び第2固定接触子12が配置されている。
【0025】
一対の磁石収納空間40a,40bは左右方向に長尺な空間であり、これら一対の磁石収納空間40a,40bの各々に、直方体形状のアーク消弧用永久磁石42a,42bが収納されている。前側の磁石収納空間40aに収納されたアーク消弧用永久磁石42aのアーク消弧用永久磁石42b側に対向する着磁面はN極とされている。また、後側の磁石収納空間40bに収納されたアーク消弧用永久磁石42bのアーク消弧用永久磁石42a側に対向する着磁面はS極とされている。これにより、アーク消弧用永久磁石42aのN極から出た磁束が、接触子収納空間41を通過してアーク消弧用永久磁石42bに流れる。
【0026】
次に、図1図3及び図4を参照して、本実施形態の接点機構2の詳細について説明する。
【0027】
接点支え14は、上方から見て略長方形状に形成された樹脂製の部材であり、図1で示すように、接点支え14の下部には可動プランジャ21の上端がインサート成形により固定されている。
【0028】
図3に示すように、接点支え14の上部には、スプリング押さえ16の一対の脚部16bの下端がインサート成形により固定されている。そして、スプリング押さえ16の頂板部16aと接触スプリング15との間に左右方向に貫通しながら挟持された可動接触子13は、前後方向の側部がスプリング押さえ16の一対の脚部16bとの間に僅かな隙間を設けた状態で配置されている。
【0029】
接点支え14の下部及び側部には、金属板材で形成した摺動部材43がインサート成形により固定されている。この摺動部材43は、接点支え14の下部に固定され、且つ可動プランジャ21の上端に固定されている四角形状の本体部44(図1参照)と、本体部44の四方から立ち上がり、接点支え14の前後左右の側部に固定される前側摺動部45、後側摺動部46、左側摺動部47及び右側摺動部48(図3及び図4参照)と、を備えている。なお、前側摺動部45、後側摺動部46、左側摺動部47及び右側摺動部48が本発明に記載した4枚の摺動部に対応する。
【0030】
電磁石ユニット3の励磁ヨーク31を構成する上部ヨーク体35の上板35aには、金属板材で形成した回転規制部材50が固定されている。回転規制部材50は、プランジャリング27を挿通する貫通孔51を形成して上板35aにかしめ固定される固定部52と、貫通孔51の縁部から立ち上がり、摺動部材43の前側摺動部45、後側摺動部46、左側摺動部47及び右側摺動部48に対向する前側回転規制部53、後側回転規制部54、左側回転規制部55及び右側回転規制部56と、を備えている。なお、前側回転規制部53、後側回転規制部54、左側回転規制部55及び右側回転規制部56が、本発明に記載した4枚の回転規制部に対応する。
【0031】
次に、第1実施形態の電磁接触器1の動作について説明する。
【0032】
本実施形態の電磁接触器1は、図1に示すように、第1固定接触子11に負極(-)端子を接続し、第2固定接触子12に正極(+)端子を接続している。
【0033】
今、電磁石ユニット3の励磁コイル25が無励磁状態にあって、電磁石ユニット3で可動プランジャ21を上方向に移動させる励磁力を発生していない釈放状態にあるものとする。この釈放状態では、可動プランジャ21が復帰ばね34によって下方向に付勢され、アーマチュア22が補助ヨーク32に永久磁石33の作用によって吸着している。このため、可動プランジャ21連結されている可動接触子13が、第1固定接触子11及び第2固定接触子12に対して下方に所定距離だけ離間している。このため、第1固定接触子11及び第2固定接触子12の間の電流路が遮断状態となる(接点機構2の開極状態)。
【0034】
この接点機構2の開状態から、電磁石ユニット3の励磁コイル25に通電すると、電磁石ユニット3で励磁力が発生し、可動プランジャ21を、永久磁石33による補助ヨーク32に対する吸着力及び復帰ばね34の付勢力に抗して上方に押し上げ、アーマチュア22が励磁ヨーク31の下部ヨーク体36の下面に吸着される。このように、可動プランジャ21が上方向に移動することにより、可動プランジャ21に連結されている可動接触子13も上方向に移動し、可動接触子13の両接点13a,13bが、第1固定接触子11の固定接点11a及び第2固定接触子12の固定接点12aに対して接触スプリング15の接触圧で接触して第1固定接触子11及び第2固定接触子12の間の電流路が通電状態となる(接点機構2の閉極状態)。そして、接点機構2の閉状態から、電磁石ユニット3の励磁コイル25への通電を停止すると、電磁石ユニット3で可動プランジャ21を上方向に移動させる励磁力がなくなることで、可動プランジャ21が復帰ばね34の付勢力によって下方向に移動し、アーマチュア22が補助ヨーク32に永久磁石33の作用によって吸着する。可動プランジャ21が下方向に移動すると、可動プランジャ21に連結している可動接触子13が第1固定接触子11及び第2固定接触子12から下方に離間する開極開始状態となる。
【0035】
接点機構2の開極状態により可動接触子13が下方に移動する際には、両接点13a,13bが、第1固定接触子11の固定接点11a及び第2固定接触子12の固定接点12aに対向しない方向に回動しようとする。可動接触子13の回動は、可動接触子13の前後方向の側部に近接しているスプリング押さえ16の一対の脚部16bを介して接点支え14に伝達される。接点支え14は、側面に固定されている摺動部材43の前側摺動部45、後側摺動部46、左側摺動部47及び右側摺動部48が、これらに対向している前側回転規制部53、後側回転規制部54、左側回転規制部55及び右側回転規制部56に当接することで可動接触子13の回動が規制される。また、接点機構2の閉極状態により可動接触子13が上方に移動する際にも、接点支え14に設けた摺動部材43の前側摺動部45、後側摺動部46、左側摺動部47及び右側摺動部48が、これらに対向している前側回転規制部53、後側回転規制部54、左側回転規制部55及び右側回転規制部56に当接することで可動接触子13の回動が規制される。
【0036】
また、接点機構2の開極開始状態では、接点機構2の固定接点11a及び可動接点13aの間に第1アークが発生し、固定接点12a及び可動接点13bの間に第2アークが発生し、これら第1及び第2アークによって電流の通電状態が継続されることになる。第1アークの電流方向は、可動接点13aから固定接点11aに向う方向であり、第2アークの電流方向は、固定接点11aから可動接点13aに向う方向である。このとき、図2に示すように、接触子収納空間41を挟んで前後方向からアーク消弧用永久磁石42a,42bが対向配置されており、アーク消弧用永久磁石42bのN極から出てアーク消弧用永久磁石42aのS極に流れる磁束φ1が第1アーク及び第2アークを横切る。第1アークの電流の流れと磁束φ1との関係から、フレミング左手の法則により接触子収納空間41の左側に向かう側にローレンツ力F1が発生する。また、第2アークの電流の流れと磁束φ1との関係から、フレミング左手の法則により接触子収納空間41の右側に向かう側に大きなローレンツ力F2が発生する。
【0037】
第1アークは、ローレンツ力F1の発生により接触子収納空間41の左側に引き延ばされていき、収納ケース6に封入されているアーク消弧用のガスとの接触により冷却されていく。また、第2アークも、ローレンツ力F2の発生により接触子収納空間41の右側に引き延ばされていき、収納ケース6内のアーク消弧用のガスとの接触により冷却されていく。このように、接点機構2の開極開始状態で発生する第1及び第2アークは、接触子収納空間41の左側及び右側に引き延ばされていき、収納ケース6内に封入されているアーク消弧用のガスに接触することで、効率よく冷却されて消弧される。そして、本実施形態は、第1アーク及び第2アークが短絡しやすい金属部材が近傍に存在しないので、第1アーク及び第2アークを接触子収納空間41の左側及び右側に十分に引き延ばすことができる。
【0038】
次に、本実施形態の電磁接触器1の効果について説明する。
【0039】
可動接触子13が上方及び下方に移動する際には、接点支え14に固定されている摺動部材43の前側摺動部45、後側摺動部46、左側摺動部47及び右側摺動部48が、これらに対向する前側回転規制部53、後側回転規制部54、左側回転規制部55及び右側回転規制部56に当接して摺動するので、可動接触子13の回動が規制される。これにより、本実施形態の電磁接触器1は、可動接触子13の可動接点13a,13bと、第1固定接触子11の固定接点11a及び第2固定接触子12の固定接点12aとの導通不良を回避するので、主回路の信頼性を十分に確保することができる。
【0040】
また、可動接触子13の回動を規制する摺動部材43及び回転規制部材50は、可動接触子13の接点間(可動接触子13の接点13a,13bと、第1固定接触子11の固定接点11a及び第2固定接触子12の固定接点12a)に対して上下方向に十分に離間した位置に配置されているので、可動接触子13の接点間の絶縁性が低下しない。また、可動接触子13の開離動作でアークが発生しても、可動接触子13に対して上下方向に十分に離間している摺動部材43及び回転規制部材50にはアークが短絡しないので、遮断性能を十分に確保することができる。
【0041】
また、樹脂で形成されている本実施形態の接点支え14は、第1固定接触子11、第2固定接触子12及び可動接触子13を流れる主回路と、電磁石ユニット3に流れる駆動回路とを仕切る絶縁部材として機能するので、主回路と駆動回路との絶縁距離を十分に確保した電磁接触器1を提供することができる。
【0042】
また、接点機構2の開極開始状態により、固定接点11a及び可動接点13aの間に第1アークが発生し、固定接点12a及び可動接点13bの間に第2アークが発生すると、接点機構2を挟んで配置したアーク消弧用永久磁石42a,42b間を流れる磁束φ1が第1アーク及び第2アークを横切ってローレンツ力F1,F2が発生することで、第1アーク及び第2アークが接触子収納空間41の左側及び右側に引き延ばされていき、収納ケース6内に封入されているアーク消弧用のガスに接触することで、効率よく冷却されて消弧されるので、遮断性能を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態のように接点支え14の四方(前後左右)に固定した前側摺動部45、後側摺動部46、左側摺動部47及び右側摺動部48が、これらに四方(前後左右)から対向する前側回転規制部53、後側回転規制部54、左側回転規制部55及び右側回転規制部56に当接して摺動することで、設計変更によりアーク消弧用永久磁石42a,42bを配置変更しても、摺動カラー26及びプランジャリング27を上下に摺動する可動プランジャ21の直動性を向上させることができる。すなわち、図5(a)に示すように、例えば、接点支え14の前後2方向に前側摺動部45及び後側摺動部46を固定し、これらに対向する前側回転規制部53及び後側回転規制部54を摺動自在に配置した従来の構造とする。また、設計変更によりアーク消弧用永久磁石42a,42bを上ケース4の左右の内壁に配置変更する。このような従来構造では、可動プランジャ21が、アーク消弧用永久磁石42aからアーク消弧用永久磁石42bに流れる磁束φ1に吸引されて偏心し、摺動部材43及び回転規制部材50に可動プランジャ21の偏心を規制する部材が無いので、摺動カラー26及びプランジャリング27を摺動する可動プランジャ21の直動性に影響を与えてしまうおそれがある。これに対して、本実施形態では、図5(b)に示すように、設計変更によりアーク消弧用永久磁石42a,42bを上ケース4の左右の内壁に配置変更しても、接点支え14の四方(前後左右)に固定した摺動部材43の前側摺動部45、後側摺動部46、左側摺動部47及び右側摺動部48が、これらに四方(前後左右)から対向する回転規制部材50の前側回転規制部53、後側回転規制部54、左側回転規制部55及び右側回転規制部56に当接して摺動することで、可動プランジャ21の磁気吸引による偏心を規制し、可動プランジャ21の直動性を向上させることができるのである。
【0044】
なお、設計変更によりアーク消弧用永久磁石42a,42bを、上ケース4の左右の内壁から前後の内壁に配置変更する場合も同様に、可動プランジャ21の磁気吸引による偏心を規制し、可動プランジャ21の直動性を向上させることができる、という効果を奏することができる。
【0045】
また、本実施形態におけるアーク消弧用永久磁石42a,42bの磁石配置パターンは一例であり、前側に分割した一対のアーク消弧用永久磁石が配置され、且つ後側に分割した一対のアーク消弧用永久磁石が配置されている磁石配置パターン、前後方向に一対のアーク消弧用永久磁石が配置され、且つ左右方向に一対のアーク消弧用永久磁石が配置されている磁石配置パターンも考えられる。
【符号の説明】
【0046】
1 電磁接触器
2 接点機構
3 電磁石ユニット
6 収納ケース
4 上ケース
5 下ケース
7 取付部
11 第1固定接触子
11a 固定接点
12 第2固定接触子
12a 固定接点
13 可動接触子
13a 可動接点
13b 可動接点
14 接点支え
15 接触スプリング
16 スプリング押さえ
16a 頂板部
16b 脚部
21 可動プランジャ
22 アーマチュア
24 スプール
25 励磁コイル
26 摺動カラー
27 プランジャリング
31 励磁ヨーク
32 補助ヨーク
33 永久磁石
34 復帰ばね
35 上部ヨーク体
36 下部ヨーク体
35a 上板
37a,37b 可動プランジャ貫通孔
40a,40b 磁石収納空間
41 接触子収納空間
42a,42b アーク消弧用永久磁石
43 摺動部材
44 本体部
45 前側摺動部
46 後側摺動部
47 左側摺動部
48 右側摺動部
50 回転規制部材
51 貫通孔
52 固定部
53 前側回転規制部
54 後側回転規制部
55 左側回転規制部
56 右側回転規制部

図1
図2
図3
図4
図5