(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172248
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】スタビライザユニット
(51)【国際特許分類】
B60G 21/055 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
B60G21/055
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083914
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 献
(72)【発明者】
【氏名】能瀬 悠希
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎也
(72)【発明者】
【氏名】井頭 健治
(72)【発明者】
【氏名】石井 孝明
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301BA20
3D301DA66
3D301DA71
3D301DB02
3D301DB18
(57)【要約】
【課題】スタビライザユニットの構造によって搭載性を高くする技術を提供する。
【解決手段】スタビライザユニットは、サスペンションメンバと、車幅方向に延びるスタビライザバーと、前記スタビライザバーを前記サスペンションメンバに取り付けるスタビライザ用マウント部材と、を備え、前記スタビライザバーは、前記スタビライザ用マウント部材に支持されている支持部分の延長上で、前記サスペンションメンバに車両走行用のモータユニットを固定するモータ用マウント部材と重なっており、前記支持部分よりも前記車幅方向の内側において、車両後方に曲げられて、前記モータ用マウント部材の後方を通過してもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンションメンバと、
車幅方向に延びるスタビライザバーと、
前記スタビライザバーを前記サスペンションメンバに取り付けるスタビライザ用マウント部材と、を備え、
前記スタビライザバーは、
前記スタビライザ用マウント部材に支持されている支持部分の延長上で、前記サスペンションメンバに車両走行用のモータユニットを固定するモータ用マウント部材と重なっており、
前記支持部分よりも前記車幅方向の内側において、車両後方に曲げられて、前記モータ用マウント部材の後方を通過する、スタビライザユニット。
【請求項2】
前記サスペンションメンバは、前記スタビライザバーの前記支持部分よりも車両後方に位置する部分の下方に、下側に窪む溝を備える、請求項1に記載のスタビライザユニット。
【請求項3】
前記サスペンションメンバは、前記モータ用マウント部材と前記車幅方向において少なくとも2箇所で締結される第1締結部分と、前記モータ用マウント部材と車両前後方向において少なくとも2箇所で締結される第2締結部分と、を備え、
前記第1締結部分の前記車幅方向の長さは、前記第2締結部分の前記車両前後方向の長さよりも長い、請求項1又は2に記載のスタビライザユニット。
【請求項4】
前記スタビライザバーは、前記モータ用マウント部材に配置されるクッション部材よりも下方に配置されている、請求項1又は2に記載のスタビライザユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、車両に搭載されるスタビライザユニットを開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、前側にスタビライザバーを取り付けている車両が開示されている。スタビライザバーは、車幅方向に互いに離間して配置される一対のスタビライザブラケットによって、サスペンションメンバに取り付けられている。スタビライザバーは、一対のスタビライザブラケットの間で、車幅方向に直線状に延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
小型車両では、限られたスペースに、車両に搭載すべき部品を配置しなければならない。走行用モータを備える電動車両では、車両衝突時に高圧ケーブルが破損しないようにスペースを確保したり、バッテリの搭載スペースを確保しなければならず、部品の配置が難しい。
【0005】
本明細書では、スタビライザユニットの構造によって搭載性を高くする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書では、スタビライザユニットが開示されている。スタビライザユニットは、サスペンションメンバと、車幅方向に延びるスタビライザバーと、前記スタビライザバーを前記サスペンションメンバに取り付けるスタビライザ用マウント部材と、を備え、前記スタビライザバーは、前記スタビライザ用マウント部材に支持されている支持部分の延長上で、前記サスペンションメンバに車両走行用のモータユニットを固定するモータ用マウント部材と重なっており、前記支持部分よりも前記車幅方向の内側において、車両後方に曲げられて、前記モータ用マウント部材の後方を通過してもよい。
【0007】
上記の構成によれば、スタビライザバーを曲げることによって、モータ用マウント部材を避けてスタビライザバーを配置することができる。これにより、スタビライザバーのサスペンションメンバへの取り付け位置を、モータ用マウント部材よりも後方に配置せずに済む。この結果、スタビライザ装置の後方に配置される部品を後方に下げずに済み、限られたスペースに部品を搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【0009】
本明細書が開示するスタビライザユニットの技術要素を、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0010】
前記サスペンションメンバは、前記スタビライザバーの前記支持部分よりも車両後方に位置する部分の下方に、下側に窪む溝を備えていてもよい。
【0011】
スタビライザバーでは、車両の挙動に合わせたねじれが発生する。スタビライザバーが曲がっているため、スタビライザバーでは、スタビライザ用マウント部材で支持されている支持部分を中心として、曲がっている部分が揺動する。上記の構成によると、サスペンションメンバが、下側に窪む溝を有しているために、スタビライザバーが揺動しても、サスペンションメンバに接触することを抑制することができる。
【0012】
前記サスペンションメンバは、前記モータ用マウント部材と前記車幅方向において少なくとも2箇所で締結される第1締結部分と、前記モータ用マウント部材と車両前後方向において少なくとも2箇所で締結される第2締結部分と、を備え、前記第1締結部分の前記車幅方向の長さは、前記第2締結部分の前記車両前後方向の長さよりも長くてもよい。
【0013】
サスペンションメンバとモータ用マウント部材とを複数箇所で締結する際には、締結箇所同士の間隔を広くする方が、モータ用マウント部材を安定してサスペンションメンバに取り付けることができる。この構成によれば、車幅方向の第1締結部分の長さを長くすることによって、車両前後方向の第2締結部分の長さを長くせずに、サスペンションメンバにモータを安定して取り付けることができる。
【0014】
前記スタビライザバーは、前記モータ用マウント部材に配置されるクッション部材よりも下方に配置されていてもよい。
【0015】
モータ用マウント部材に支持されるモータの振動は、モータ用マウント部材に配置されるクッション部材によって吸収される。この構成によれば、スタビライザバーをクッション部材よりも下方に配置することによって、クッション部材で支持されているモータユニットが振動しても、スタビライザバーに接触することを回避することができる。
【0016】
(実施例)
図1に示すように、スタビライザユニット10は、走行用のモータユニット50を備える電動車に搭載される。スタビライザユニット10は、車両の前端部に配置される空間、即ち、ボンネットの下方に形成される空間に配置される。スタビライザユニット10は、車両の前側に配置される一対の駆動輪100の間に配置される。
【0017】
スタビライザユニット10は、サスペンションメンバ12と、スタビライザ装置20と、を備える。
図2に示すように、サスペンションメンバ12は、車幅方向の両端のそれぞれに配置されるコイルスプリング、ダンパ及びサスペンションアームを備えるサスペンション装置(図示省略)に取り付けられ、サスペンション装置を支持している。サスペンションメンバ12は、略四角形の枠組みを有する。
【0018】
スタビライザ装置20は、サスペンションメンバ12の車両後側のクロス部12aに取り付けられている。スタビライザ装置20は、スタビライザバー24と、一対のマウント部材22、22と、を備える。スタビライザバー24は、車幅方向に延びており、その両端において、駆動輪100の車軸にリンクに連結されている。
【0019】
スタビライザバー24は、一対のマウント部材22、22によって、サスペンションメンバ12に取り付けられている。一対のマウント部材22、22は、車両前後方向に同一の位置に配置されている。一対のマウント部材22、22は、車幅方向に隙間を置いて配置されている。スタビライザバー24は、マウント部材22に挿入されている状態で、サスペンションメンバ12に対してねじれ可能に支持している。スタビライザバー24は、一対のマウント部材22、22の間において、2個の支持部分24a、24aと、2個の第1車幅方向部分24b、24bと、4個の屈曲箇所24c、24c、24c、24cと、2個の斜行部分24d、24dと、第2車幅方向部分24eと、を備える。
【0020】
2個の支持部分24a、24aのそれぞれは、一対のマウント部材22、22のそれぞれに挿入され、把持されている部分である。支持部分24aの車両内側には、第1車幅方向部分24bが連結されている。第1車幅方向部分24bは、直線状に、車幅方向に平行に配置されている。2個の支持部分24a、24a及び2個の第1車幅方向部分24b、24bは、互いに同一軸24X上に並んで配置されている。第1車幅方向部分24bは、車両内側の端において、屈曲箇所24cによって車両後方に屈曲され、斜行部分24dに連結される。斜行部分24dは、車幅方向に対して後方に傾斜して配置されている。
【0021】
斜行部分24dは、第1車幅方向部分24bの車両内側の端において、屈曲箇所24cによって車幅方向に平行になるように屈曲され、第2車幅方向部分24eの一端に連結される。第2車幅方向部分24eは、車幅方向に平行に配置されている。第2車幅方向部分24eは、軸24Xよりも車両後方において、軸24Xに平行に配置されている。第2車幅方向部分24eは、車幅方向中央を跨いで延びている。第2車幅方向部分24eは、他端において屈曲箇所24cによって車両前方に屈曲され、斜行部分24dに連結される。斜行部分24dから第2車幅方向部分24eと反対側の車幅方向外側に向かって、車幅方向中央を挟んで反対側と同様に、斜行部分24d、屈曲箇所24c、第1車幅方向部分24bが順に並んでいる。支持部分24a、第1車幅方向部分24b、屈曲箇所24c、斜行部分24d、屈曲箇所24c、及び、第2車幅方向部分24eは、車幅方向中央において、車幅方向において対称に配置されている。
【0022】
第2車幅方向部分24eの車両前方には、モータ用マウント部材16が配置されている。モータ用マウント部材16は、モータユニット50を、サスペンションメンバ12に取り付ける。モータ用マウント部材16は、モータユニット50の車両後端において、モータユニット50を支持する。モータユニット50は、車両前端に配置される2個のモータ用マウント部材14、14によって、サスペンションメンバ12に取り付ける。
【0023】
図3に示すように、モータ用マウント部材16は、基部16aと、支持部16bと、を備える。基部16aは、サスペンションメンバ12に、4個のボルト16cによって締結されている。
図2に示すように、車幅方向に並ぶ2個のボルト16cは、車両前後方向に同一の位置に配置されている。車両前後方向に並ぶ2個のボルト16cは、車幅方向に同一の位置に配置されている。車幅方向に並ぶ2個のボルト16cの間隔は、車両前後方向に並ぶ2個のボルト16cよりも長い。
【0024】
基部16aは、サスペンションメンバ12から上方に延びている。基部16aは、支持部分24a及び第1車幅方向部分24bの軸24X上に、即ち、支持部分24a及び第1車幅方向部分24bの延長線上に配置されいる。基部16aの上端には、支持部16bが配置されている。支持部16bは、クッション部材を含む。クッション部材は、ゴム製である。クッション部材は、モータユニット50の振動を吸収する。スタビライザバー24の第2車幅方向部分24eは、基部16aの後方に位置し、支持部16b、即ち、クッション部材の下方に配置されている。なお、支持部16bは、クッション部材に加えて、モータユニット50に取り付けられる取付部を備えていてもよい。
【0025】
スタビライザバー24は、サスペンションメンバ12の上方に配置されている。第2車幅方向部分24eの下方に位置するサスペンションメンバ12のクロス部12aには、下方に窪む溝12bが配置されている。溝12bは、第2車幅方向部分24eの車幅方向全長に亘って配置されている。これにより、第2車幅方向部分24eとサスペンションメンバ12との距離が広げられている。車両前後方向において、溝12bは、第2車幅方向部分24eよりも長い。
【0026】
(効果)
スタビライザ装置20では、スタビライザバー24が、モータ用マウント部材16が配置されている箇所において、車両後方に曲げられて、第2車幅方向部分24eにおいて、モータ用マウント部材16の車両後方に配置される。この構成によると、モータ用マウント部材16を避けてスタビライザバー24を配置することができる。これにより、スタビライザバー24のサスペンションメンバ12への取り付け位置、即ち、マウント部材22の位置を、モータ用マウント部材16よりも後方に配置せずに済む。この結果、スタビライザ装置20の後方に配置される部品を後方に下げずに済み、限られたスペースに部品を搭載することができる。スタビライザバー24の車両後方に配置されるステアリングギアを車両後方に配置せずに済み、モータユニット50から車両前後方向に、ステアリングギアよりも車両後方に配置されるバッテリユニットまで延びる高圧ケーブルの周囲に、車両衝突時に高圧ケーブルが破損しないようにスペースを確保することができる。このように、限られたスペースの中で、必要な構成を配置しやすくすることができる。また、高圧ケーブルの周囲にスペースを配置することができるため、バッテリユニットの配置スペースを大きくすることができる。これにより、バッテリユニットを拡大して、充電容量の増加を図ることができる。
【0027】
スタビライザバー24では、車両の挙動に合わせたねじれが発生する。スタビライザバー24が曲がっているため、スタビライザバー24では、マウント部材22で支持されている支持部分24a、即ち軸24Xを中心として、斜行部分24d及び第2車幅方向部分24eが揺動する。サスペンションメンバ12では、第2車幅方向部分24eの下方に溝12bが配置されている。この構成によると、スタビライザバー24が揺動しても、サスペンションメンバ12に接触することを抑制することができる。
【0028】
モータ用マウント部材16とサスペンションメンバ12とは、4個のボルト16cによって締結されている。締結箇所同士の間隔を広くする方が、モータ用マウント部材16を安定してサスペンションメンバ12に取り付けることができる。車幅方向に並ぶ2個のボルト16cの間隔は、車両前後方向に並ぶ2個のボルト16cよりも長い。この構成によれば、車両前後方向に並ぶ2個のボルト16cの間隔を長くせずに、モータ用マウント部材16を介して、サスペンションメンバ12にモータユニット50を安定して取り付けることができる。
【0029】
第2車幅方向部分24eは、支持部16b、即ち、クッション部材の下方に配置されている。この構成によれば、スタビライザバー24を支持部16bよりも下方に配置することによって、支持部16bで支持されているモータユニット50が振動しても、スタビライザバー24に接触することを回避することができる。これにより、モータ用マウント部材16、即ち、モータユニット50とスタビライザバー24との間隔を短くすることができる。
【0030】
モータユニット50とスタビライザバー24との距離を縮めることによって、車両前端部分のスペースを、ラジエータ及び熱循環用の配管のスペースとして利用することができる。
【0031】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0032】
(1)スタビライザバー24は、2個の第1車幅方向部分24b、24b、4個の屈曲箇所24c、24c、24c、24c、2個の斜行部分24d、24d、及び第2車幅方向部分24e以外の構成を有していてもよい。例えば、スタビライザバー24は、2個の支持部分24a、24aと、2個の第1車幅方向部分24b、24bと、を有しており、2個の第1車幅方向部分24b、24bの間では、車両後方に湾曲するような形状を有していてもよい。スタビライザバー24は、車両前後方向において、モータ用マウント部材16と重なる部分において、モータ用マウント部材16よりも後方に配置されていればよい。
【0033】
(2)サスペンションメンバ12は、溝12bを備えていてなくてもよい。この場合、サスペンションメンバ12のクロス部12aは、車両後方に向かって下方に傾斜していてもよい。あるいは、溝12bは、2個の斜行部分24d、24d、及び第2車幅方向部分24eに沿った形状を有していてもよい。
【0034】
(3)サスペンションメンバ12は、モータ用マウント部材16との締結として、4個以外の複数のボルト16cによって締結されていてもよい。例えば、サスペンションメンバ12は、6個のボルト16cによって、モータ用マウント部材16と締結されていてもよい。車両前後方向に沿って3個のボルト16cが並ぶ2個の締結部分が車幅方向に互いに間隔を有して配置されていてもよい。2個の締結部分の車幅方向の間隔は、車両前後方向の締結部分の長さよりも長くてもよい。2個の締結部分の間隔が「第1締結部分の車幅方向の長さ」の一例であり、車両前後方向の締結部分の長さが「第2締結部分の車幅方向の長さ」の一例である。
【0035】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0036】
10 :スタビライザユニット
12 :サスペンションメンバ
12b :溝
16 :モータ用マウント部材
16a :基部
16b :支持部
16c :ボルト
20 :スタビライザ装置
22 :マウント部材
24 :スタビライザバー
24a :支持部分
24b :第1車幅方向部分
24c :屈曲箇所
24d :斜行部分
24e :第2車幅方向部分
50 :モータユニット
100 :駆動輪