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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172253
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20231129BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20231129BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20231129BHJP
   H01M 50/54 20210101ALI20231129BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M4/66 A
H01M50/54
H01M4/70 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083927
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】森岡 一裕
(72)【発明者】
【氏名】平野 浩一
(72)【発明者】
【氏名】本田 和義
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 覚
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5H017CC01
5H017DD06
5H017EE01
5H017EE07
5H017HH03
5H029AJ03
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL12
5H029AM11
5H029AM12
5H029HJ04
5H043AA05
5H043AA19
5H043EA32
(57)【要約】
【課題】生産性および体積エネルギー密度が高い電池を提供する。
【解決手段】電池1は、電極集電体50と、電極集電体50上に、電極集電体50側から電極層40、固体電解質層30および対極層20の順で積層された構造を有する発電要素70と、発電要素70の対極層20に積層される傾斜構造部10aを有する対極集電体10と、を備える。発電要素70は、電極集電体50側に位置する第1主面70bと、第1主面70bに背向し、第1主面70bに対して傾斜している第2主面70cと、を有する。傾斜構造部10aの厚みは、第1主面70bに対する第2主面70cの傾斜によって発電要素70の厚みが小さくなる方向に進むに従って大きくなる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極集電体と、
前記電極集電体上に、前記電極集電体側から電極層、固体電解質層および対極層の順で積層された構造を有する発電要素と、
前記発電要素の前記対極層に積層される傾斜構造部を有する傾斜集電体と、を備え、
前記発電要素は、前記電極集電体側に位置する第1主面と、前記第1主面に背向し、前記第1主面に対して傾斜している第2主面と、を有し、
前記傾斜構造部の厚みは、前記第1主面に対する前記第2主面の傾斜によって前記発電要素の厚みが小さくなる方向に進むに従って大きくなる、
電池。
【請求項2】
前記傾斜構造部の最大厚みと最小厚みとの差は15μm以下である、
請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記傾斜構造部の最小厚みに対する最大厚みの比は3.5以下である、
請求項1に記載の電池。
【請求項4】
前記傾斜集電体は、金属箔からなる、
請求項1に記載の電池。
【請求項5】
前記傾斜集電体は、金属箔と、前記金属箔に積層された導電性樹脂層と、を含む、
請求項1に記載の電池。
【請求項6】
前記傾斜集電体は、厚みの分布を有する支持部材と、前記支持部材を覆う金属箔と、を含む、
請求項1に記載の電池。
【請求項7】
前記傾斜集電体は、前記金属箔を覆う導電性樹脂層をさらに含む、
請求項6に記載の電池。
【請求項8】
積層された複数の前記発電要素と、
少なくとも1つが前記傾斜集電体であり、前記対極層に積層される複数の対極集電体と、を備え、
前記電極集電体は、積層方向に沿って並ぶ複数の電極集電部と、前記複数の電極集電部のうち隣り合う電極集電部同士を接続し、第1方向において折り返されている折り返し部と、を有し、
前記複数の電極集電部のそれぞれの両面には、前記発電要素が積層され、
前記複数の対極集電体は、前記複数の電極集電部のそれぞれを、電極集電部の両面に積層された前記発電要素を介して挟むように配置される、
請求項1から7のいずれか1項に記載の電池。
【請求項9】
複数の前記発電要素のそれぞれにおける、前記第1主面に対する前記第2主面の傾斜によって前記発電要素の厚みが小さくなる方向は、互いに同じ方向である、
請求項8に記載の電池。
【請求項10】
前記複数の対極集電体のそれぞれは、前記傾斜集電体である、
請求項9に記載の電池。
【請求項11】
前記複数の対極集電体は、前記傾斜集電体として、前記複数の電極集電部のうち隣り合う電極集電部に積層されて対面する前記発電要素の間に位置する第1傾斜集電体と、前記電池において積層方向の端部に配置される第2傾斜集電体と、を含み、
前記第2傾斜集電体の前記傾斜構造部の最大厚みと最小厚みとの差は、前記第1傾斜集電体の前記傾斜構造部の最大厚みと最小厚みとの差よりも小さい、
請求項10に記載の電池。
【請求項12】
複数の前記発電要素のそれぞれの前記第1方向と交差する第2方向における端面を覆い、前記複数の対極集電体のそれぞれの一端と接続される接続部材をさらに備える、
請求項8に記載の電池。
【請求項13】
複数の前記発電要素は、前記第1主面に対して前記第2主面が傾斜することで厚みが小さくなる方向が互いに異なる第1発電要素と第2発電要素とを含む、
請求項8に記載の電池。
【請求項14】
複数の前記発電要素のそれぞれにおいて、前記第1主面に対する前記第2主面の傾斜によって前記発電要素の厚みが小さくなる方向は、前記第1方向と交差する、
請求項8に記載の電池。
【請求項15】
前記電極層は負極層であり
前記対極層は正極層である、
請求項8に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2には全固体電池の積層セルに関する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-243395号公報
【特許文献2】国際公開第2020/145177号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術においては、電池の体積エネルギー密度と生産性との両立が求められている。そこで、本開示は、生産性および体積エネルギー密度が高い電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態に係る電池は、電極集電体と、前記電極集電体上に、前記電極集電体側から電極層、固体電解質層および対極層の順で積層された構造を有する発電要素と、前記発電要素の前記対極層に積層される傾斜構造部を有する傾斜集電体と、を備え、前記発電要素は、前記電極集電体側に位置する第1主面と、前記第1主面に背向し、前記第1主面に対して傾斜している第2主面と、を有し、前記傾斜構造部の厚みは、前記第1主面に対する前記第2主面の傾斜によって前記発電要素の厚みが小さくなる方向に進むに従って大きくなる。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、電池の生産性および体積エネルギー密度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施の形態1に係る電池の斜視図である。
図2図2は、実施の形態1に係る電池の断面図である。
図3図3は、実施の形態1に係る電池の別の断面図である。
図4A図4Aは、実施の形態1に係る対極集電体の断面図である。
図4B図4Bは、実施の形態1に係る対極集電体の他の例の断面図である。
図4C図4Cは、実施の形態1に係る対極集電体の他の例の断面図である。
図4D図4Dは、実施の形態1に係る対極集電体の他の例の断面図である。
図4E図4Eは、実施の形態1に係る対極集電体の他の例の断面図である。
図4F図4Fは、実施の形態1に係る対極集電体の他の例の断面図である。
図5図5は、実施の形態1に係る電池の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、実施の形態1に係るセル積層集電体の斜視図である。
図7図7は、実施の形態1に係るセル積層集電体の断面図である。
図8図8は、実施の形態1に係るセル積層集電体の別の断面図である。
図9図9は、厚みが均一な発電要素を説明するための断面図である。
図10図10は、実施の形態1に係る発電要素を説明するための断面図である。
図11図11は、実施の形態1に係るセル積層集電体がつづら折り状に折り返された状態を示す断面図である。
図12図12は、比較例に係る電池の断面図である。
図13図13は、実施の形態2に係る電池の断面図である。
図14図14は、実施の形態3に係る電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の一態様を得るに至った経緯)
電池の製造において、負極層、固体電解質層および正極層が積層された発電要素の形成プロセスには様々な方法を用いることができる。生産性の観点から、各層の材料を溶媒に分散させたスラリーをダイコート法などの塗布法で集電体上に塗布し、溶媒を乾燥させて発電要素を形成するプロセスが知られている。さらに、負極層、固体電解質層および正極層を積層方向に重ねて塗布する積層塗工することで、例えば転写法のように、各層を個別に形成して、転写することで積層するプロセスと比べて生産性を高めることができる。
【0009】
ダイコート法でスラリーを塗布する場合、塗布における流れ方向の厚みの均一性が高い。一方で、塗布幅方向(ダイコート用のダイの吐出口の延在方向)においては、厚みが分布する場合がある。厚みの分布は、設計によって異なるが、通常は最大で10%、より好ましくは最大で5%である。これは、例えば、塗布幅方向の一端の厚みが50μmの場合、もう一端の厚みは最小で45μm、より好ましくは最小で47.5μmであることを意味する。
【0010】
また、塗布幅方向で負極層の厚みが分布する場合、塗布幅方向で負極層の容量が変わることになる。そのため、電池の信頼性の観点から、塗布幅方向の正負極の容量比が一定となるように、正極層も負極層と同様の厚みの分布を有することが好ましい。そのため、積層塗工すると、塗布幅方向に厚みの分布は累積し、発電要素全体では、負極層が厚い側はより厚くなり、負極層が薄い側はより薄くなる。このように、発電要素が厚みの分布を有すると、電池をパッケージ化する場合等に無駄な空間が発生しやすく、体積エネルギー密度が低下する。
【0011】
一方、発電要素の各層の厚みの分布を無くすために、塗工条件を調整することも考えられる。しかし、塗布幅方向の厚みを均一にすることが難しく、実現するには調整等に多くの時間を要するため、電池の生産性が低下する。
【0012】
また、電池を用いてデバイスを駆動させるには、駆動に必要な電圧および容量を確保する必要がある。一定の電圧および容量をもつ単位電池を直列または並列で組み合わせて使用することができるが、組電池にすることでパック体積の増大に繋がり体積エネルギー密度を低下させてしまう一因となる。このため、予め単位電池の容量を大きくすることは有用である。単位電池の容量は、例えば、電池反応面積を増大することで大きくすることができる。電池の容量を高めるための製造方法としてけんかい式および積層方式等の製造方法が知られている。
【0013】
けんかい方式は、体積エネルギー密度を高くすることが可能である一方で、けんかいする際に電池の発電要素に曲げ方向の応力が印加されるため、活物質等が含まれる層が集電体から剥離して電池性能および信頼性を低下させてしまう場合がある。積層方式は、個片化された複数の発電要素を積層方向に積み重ねる方式であり、大容量化に適した工法である一方、生産性の向上に余地が存在する。
【0014】
例えば、積層方式において、効率的に発電要素を形成して生産性を向上するために、連続プロセスで複数の発電要素を形成することが考えられる。この場合に、同じ流れ方向で積層塗工すると、形成される発電要素の厚みの分布は、同じ側の厚みが小さくなる。このような発電要素を単純に積層する場合、発電要素の厚みの分布が累積し、電池全体の厚みの分布が大きくなる。そのため、電池をパッケージ化する場合等に無駄な空間がさらに発生しやすくなる。
【0015】
本開示は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、生産性および体積エネルギー密度が高い電池の製造方法および電池を提供する。
【0016】
(本開示の概要)
以下に、本開示に係る電池の複数の例について示す。
【0017】
<1>電極集電体と、
前記電極集電体上に、前記電極集電体側から電極層、固体電解質層および対極層の順で積層された構造を有する発電要素と、
前記発電要素の前記対極層に積層される傾斜構造部を有する傾斜集電体と、を備え、
前記発電要素は、前記電極集電体側に位置する第1主面と、前記第1主面に背向し、前記第1主面に対して傾斜している第2主面と、を有し、
前記傾斜構造部の厚みは、前記第1主面に対する前記第2主面の傾斜によって前記発電要素の厚みが小さくなる方向に進むに従って大きくなる、
電池。
【0018】
これにより、生産性を高めるために、多少の厚みの分布を許容して発電要素を形成する場合であっても、発電要素の厚みが小さくなる方向に進むに従って厚みが大きくなる傾斜構造部が発電要素に積層されて、電池全体としては発電要素の厚みの分布の影響を緩和して、厚みの分布を小さくできる。よって、電池の形状の歪みを低減でき、電池をパッケージ化する場合などに、無駄な空間が形成されにくい。よって、電池の生産性および体積エネルギー密度を高めることができる。
【0019】
<2>前記傾斜構造部の最大厚みと最小厚みとの差は15μm以下である、
<1>に記載の電池。
【0020】
これにより、傾斜構造部における厚みの分布が小さくなるため、容易に傾斜集電体を形成することができる。
【0021】
<3>前記傾斜構造部の最小厚みに対する最大厚みの比は3.5以下である、
<1>または<2>に記載の電池。
【0022】
これにより、傾斜構造部における厚みの分布が小さくなるため、容易に傾斜集電体を形成することができる。
【0023】
<4>前記傾斜集電体は、金属箔からなる、
<1>から<3>のいずれか1つに記載の電池。
【0024】
これにより、傾斜集電体の構成を簡素化できる。
【0025】
<5>前記傾斜集電体は、金属箔と、前記金属箔に積層された導電性樹脂層と、を含む、
<1>から<3>のいずれか1つに記載の電池。
【0026】
これにより、導電性樹脂層を塗布等によって作製可能であるため、厚みの分布の調整が容易であり、傾斜構造部を有する傾斜集電体を形成しやすくなる。
【0027】
<6>前記傾斜集電体は、厚みの分布を有する支持部材と、前記支持部材を覆う金属箔と、を含む、
<1>から<3>のいずれか1つに記載の電池。
【0028】
これにより、支持部材は、発電要素の対極層との電気的な接続とは関係なく材料を選択できるため、支持部材を容易に所望の形状に加工できる材料を選択でき、傾斜構造部を有する傾斜集電体を形成しやすくなる。
【0029】
<7>前記傾斜集電体は、前記金属箔を覆う導電性樹脂層をさらに含む、
<6>に記載の電池。
【0030】
これにより、導電性樹脂層の厚みおよび厚みの分布を調整して、傾斜構造部の厚みおよび厚みの分布を容易に調整できる。
【0031】
<8>積層された複数の前記発電要素と、
少なくとも1つが前記傾斜集電体であり、前記対極層に積層される複数の対極集電体と、を備え、
前記電極集電体は、積層方向に沿って並ぶ複数の電極集電部と、前記複数の電極集電部のうち隣り合う電極集電部同士を接続し、第1方向において折り返されている折り返し部と、を有し、
前記複数の電極集電部のそれぞれの両面には、前記発電要素が積層され、
前記複数の対極集電体は、前記複数の電極集電部のそれぞれを、電極集電部の両面に積層された前記発電要素を介して挟むように配置される、
<1>から<7>のいずれか1項に記載の電池。
【0032】
これにより、発電要素が両面に形成された電極集電体を折り返して発電要素が積層されるため、個片化した電極集電体を用いて発電要素と共に積層するよりも工数を減らして、電池の生産性をさらに高めることができる。
【0033】
<9>複数の前記発電要素のそれぞれにおける、前記第1主面に対する前記第2主面の傾斜によって前記発電要素の厚みが小さくなる方向は、互いに同じ方向である、
<8>に記載の電池。
【0034】
これにより、例えば連続プロセス等によって効率的に発電要素を形成して、複数の発電要素のそれぞれの厚みが小さくなる方向が同じになり、発電要素の厚みの分布が累積する場合であっても、傾斜集電体によって、電池全体としては累積した発電要素の厚みの分布の影響を緩和して、厚みの分布を小さくできる。よって、生産性および体積エネルギー密度を高めることができる。
【0035】
<10>前記複数の対極集電体のそれぞれは、前記傾斜集電体である、
<9>に記載の電池。
【0036】
これにより、複数の対極集電体のそれぞれによって、電池全体としては累積した発電要素の厚みの分布の影響を緩和して、厚みの分布を小さくできる。
【0037】
<11>前記複数の対極集電体は、前記傾斜集電体として、前記複数の電極集電部のうち隣り合う電極集電部に積層されて対面する前記発電要素の間に位置する第1傾斜集電体と、前記電池において積層方向の端部に配置される第2傾斜集電体と、を含み、
前記第2傾斜集電体の前記傾斜構造部の最大厚みと最小厚みとの差は、前記第1傾斜集電体の前記傾斜構造部の最大厚みと最小厚みとの差よりも小さい、
<10>に記載の電池。
【0038】
これにより、2つの発電要素に挟まれる第1傾斜集電体の傾斜構造部よりも、端部に配置されるために1つの発電要素が積層されることになる第2傾斜集電体の傾斜構造部の最大厚みと最小厚みとの差が小さくなる。そのため、積層される発電要素の数に応じて傾斜集電体の厚みの分布が調整され、電池の最上面および最下面を平行に近づけることができる。
【0039】
<12>複数の前記発電要素のそれぞれの前記第1方向と交差する第2方向における端面を覆い、前記複数の対極集電体のそれぞれの一端と接続される接続部材をさらに備える、
<8>から<11>のいずれか1つに記載の電池。
【0040】
これにより、複数の対極集電体同士が接続されるため、複数の対極集電体を一括して複数の発電要素の間に差し込む等によって、複数の対極集電体が複数の発電要素のそれぞれの対極層に積層されるように配置できる。よって、電池の生産性を高めることができる。
【0041】
<13>複数の前記発電要素は、前記第1主面に対して前記第2主面が傾斜することで厚みが小さくなる方向が互いに異なる第1発電要素と第2発電要素とを含む、
<8>に記載の電池。
【0042】
これにより、複数の発電要素が積層されていても、発電要素の厚みの分布が累積しにくい。よって、電池全体の厚みの分布を小さくできる。
【0043】
<14>複数の前記発電要素のそれぞれにおいて、前記第1主面に対する前記第2主面の傾斜によって前記発電要素の厚みが小さくなる方向は、前記第1方向と交差する、
<8>から<13>のいずれか1つに記載の電池。
【0044】
これにより、流れ方向に交差する方向で厚みが分布するダイコート法等の塗布プロセスで発電要素の形成を行う場合に、第1方向を流れ方向として、連続プロセスで電極集電体上に発電要素を形成できる。
【0045】
<15>前記電極層は負極層であり
前記対極層は正極層である、
<1>から<14>のいずれか1つに記載の電池。
【0046】
例えば、発電要素の形成において、電極集電体側の電極層を対極層よりも大きく形成することで、各層の位置合わせの精度が低くても発電要素を形成でき、生産性を高めやすい。この場合に、大きく形成する電極層が負極層であり、対極層が正極層であることで、負極層が正極層からのイオンを受容しやすくなり、金属析出を抑制できる。そのため、電極層を対極層よりも大きく形成して生産性を高めた場合でも信頼性を高めることができる。
【0047】
以下では、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0048】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0049】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0050】
また、本明細書において、平行または直交などの要素間の関係性を示す用語、および、矩形または直方体などの要素の形状を示す用語、ならびに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0051】
また、本明細書および図面において、x軸、y軸およびz軸は、三次元直交座標系の三軸を示している。x軸およびy軸はそれぞれ、電池の発電要素の平面視形状が矩形である場合に、当該矩形の第1辺、および、当該第1辺に直交する第2辺に平行な方向に一致する。z軸は、例えば、電池に含まれる複数の発電要素の積層方向に一致する。本明細書において、x軸方向は第1方向の一例であり、y軸方向は第2方向の一例である。
【0052】
また、本明細書において、「積層方向」は、複数の発電要素が積層されて並ぶ方向である。また、本明細書において、「平面視」とは、単独で使用される場合など、特に断りのない限り、発電要素の主面(例えば第1主面)に対して垂直な方向から見たときのことをいう。なお、「側面の平面視」などのように、「ある面の平面視」と記載されている場合は、当該「ある面」を正面から見たときのことをいう。
【0053】
また、本明細書において、「上方」および「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)および下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上方」および「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔を空けて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。以下の説明では、z軸の負側を「下方」または「下側」とし、z軸の正側を「上方」または「上側」とする。
【0054】
また、本明細書において、「Aを覆う」という表現は、「A」の少なくとも一部を覆うことを意味する。すなわち、「Aを覆う」とは、「Aの全てを覆う」場合だけでなく、「Aの一部のみを覆う」場合も含む表現である。「A」は、例えば、層または端子などの所定の部材の端面、側面および主面などである。
【0055】
また、本明細書において、「第1」、「第2」などの序数詞は、特に断りのない限り、構成要素の数または順序を意味するものではなく、同種の構成要素の混同を避け、構成要素を区別する目的で用いられている。
【0056】
また、本明細書において、ある構成要素の「端面」とは、ある構成要素の互いに背向する2つの主面を繋ぐ面である。
【0057】
(実施の形態1)
[全体構成]
まず、実施の形態1に係る電池の構成について説明する。
【0058】
図1は、本実施の形態に係る電池1の斜視図である。図2は、本実施の形態に係る電池1の断面図である。図3は、本実施の形態に係る電池1の別の断面図である。なお、図1では、実際には見えていない箇所の電極集電体50および対極集電体10の形状が破線で示されている。また、図2は、図1のII-II線を通る積層方向に沿った断面を表している。また、図3は、図1のIII-III線を通る積層方向に沿った断面を表している。
【0059】
図1から図3に示されるように、電池1は、複数の発電要素70と、電極集電体50と、複数の対極集電体10と、第1絶縁部材60と、第2絶縁部材61と、第3絶縁部材62と、を備える。電池1は、例えば全固体電池である。
【0060】
電池1の概略形状は直方体状である。電池1の概略形状は扁平な直方体状であってもよい。ここで、扁平とは、厚み(例えば、z軸方向の長さ)が主面の各辺(例えば、x軸方向およびy軸方向の各々の長さ)または最大幅より短いことを意味する。なお、本明細書に係る図面において、電池1の層構造を分かりやすくするため、各層および集電体等の厚みを誇張して図示している。
【0061】
[発電要素]
複数の発電要素70は、隣り合う発電要素70の間に電極集電体50または対極集電体10を挟みながら、所定の方向(z軸方向)に沿って積層されている。複数の発電要素70が積層されて並ぶ方向は、実質的にz軸方向に沿った方向であれば、わずかに湾曲または傾斜していてもよい。発電要素70は、電池の発電部の最小構成であり、単位セルとも称される。複数の発電要素70は、電気的に並列接続されるように積層されている。図示される例では、電池1が備える発電要素70の個数が8個であるが、これに限らない。後述するように、発電要素70は、複数の電極集電部51の両面に積層されるため、発電要素70の数は、例えば、4個以上の偶数である。
【0062】
発電要素70の平面視形状は、例えば、矩形状である。本実施の形態においては、平面視において、発電要素70の形状は、x軸方向に平行な互いに対向する2辺と、y軸方向に平行な互いに対向する2辺とを含む矩形である。
【0063】
複数の発電要素70の各々は、電極層40と、対極層20と、固体電解質層30と、を含む。電極層40および対極層20はそれぞれ、活物質を含み、電極活物質層および対極活物質層とも称される。複数の発電要素の各々では、電極層40、固体電解質層30、および対極層20がこの順で、実質的にz軸方向に沿って積層されている。
【0064】
なお、電極層40は、発電要素70の正極層および負極層の一方である。対極層20は、発電要素70の正極層および負極層の他方である。以下では、電極層40が負極層であり、対極層20が正極層である場合を一例として説明する。この場合には、後述するように、電極集電体50上に発電要素70を形成する場合において、発電要素70における電極集電体50側に負極層である電極層40を配置することになる。電極層40を大きく形成することでその後に形成する固体電解質層30および対極層20を形成しやすくなり、生産性を高めることができる。また、大きく形成する電極層40が負極層であることで、正極層からのイオンを受容しやすくなり、金属析出を抑制でき、生産性を高めた場合でも信頼性を高めることができる。
【0065】
複数の発電要素70の構成および形状は、互いに実質的に同一である。隣り合う2つの発電要素70では、発電要素70を構成する各層の並び順が逆になっている。つまり、発電要素70を構成する各層の並び順が交互に入れ替わりながら、複数の発電要素70は、z軸方向に沿って並んで積層されている。これにより、複数の発電要素70は、電気的に並列接続されるように積層される。また、例えば、z軸方向に沿って見た場合に、複数の発電要素70の外縁の位置は揃っている。
【0066】
複数の発電要素70のうちの互いに隣り合う2つの発電要素70は、電極集電体50または対極集電体10を介して積層されている。また、隣り合う発電要素70では、電極層40同士または対極層20同士が対面するように積層される。そのため、対面する電極層40の間には電極集電体50が配置され、対面する対極層20の間には対極集電体10が配置される。また、複数の発電要素70の各々は、他の発電要素70を介さずに、電極集電体50と対極集電体10とに挟まれている。各発電要素70において、電極層40は電極集電体50に接し、対極層20は対極集電体10に接する。
【0067】
x軸方向と交差する方向、具体的にはx軸方向と直交するy軸方向における発電要素70の端面70aにおいて対極層20、固体電解質層30および電極層40それぞれの端面は面一である。また、y軸方向における、電極集電体50の電極集電部51の端面50aと当該電極集電部51の両面に積層された2つの発電要素70の端面70aとは面一である。上記の電極集電部51の端面50aと2つの発電要素70の端面70aとが面一でつながった面は、例えば、一括切断により形成された切断面である。複数の発電要素70のそれぞれの端面70aは、例えば、z軸方向に平行であり、z軸方向に沿って見た場合に同じ位置である。
【0068】
複数の発電要素70はそれぞれ、電極集電体50側(具体的には電極集電部51側)に位置する第1主面70bと、第1主面70bに背向し、第1主面70bに対して傾斜している第2主面70cと、を有する。第1主面70bは、第2主面70cよりも電極集電体50に近く、発電要素70の電極層40が電極集電体50に電気的に接続される面である。第2主面70cは、第1主面70bよりも対極集電体10に近く、発電要素70の対極層20が対極集電体10に電気的に接続される面である。第2主面70cは、発電要素70が厚みの分布を有するために、第1主面70bに対して傾斜している。発電要素70の厚みは、例えば、所定の方向に進むに従って、線形状に変化する。具体的には、発電要素70の各層が厚みの分布を有する。また、発電要素70のうち少なくとも電極層40と対極層20とは、厚みが小さくなる方向が同じである。これにより、発電要素70の各層の厚みに分布がある場合でも、電池1が機能する際のイオン授受のバランスが保たれ、電池1の信頼性を高めることができる。
【0069】
第1主面70bに対する第2主面70cの傾斜によって発電要素70の厚みが小さくなる方向は、電極集電体50が折り返されている方向であるx軸方向と交差する。具体的には、第1主面70bに対する第2主面70cの傾斜によって発電要素70の厚みが小さくなる方向は、x軸方向と直交するy軸方向に沿っている。
【0070】
本実施の形態においては、複数の発電要素70のそれぞれにおける、第1主面70bに対する第2主面70cの傾斜によって発電要素70の厚みが小さくなる方向は、互いに同じである。図示される例では、複数の発電要素70のそれぞれの厚みは、y軸方向の負側に進むに従って小さくなっている。また、複数の発電要素70のそれぞれの厚みは、例えば、x軸方向においては分布しておらず、均一である。
【0071】
発電要素70の平均厚みは、例えば、15μm以上750μm以下であり、30μm以上500μm以下であってもよい。発電要素70の平均厚みに対する発電要素70における最大厚みと最小厚みとの差の割合、つまり発電要素70の厚みのばらつきは、例えば、1%以上10%以下であり、1%以上5%以下であってもよい。発電要素70内での電池反応の均一性を高める観点からは、発電要素70における最大厚みと最小厚みとの差を小さくするように発電要素70は形成されるが、発電要素70における最大厚みと最小厚みとの差を無くすためには非常に精密な塗工等が必要になり、生産性が低下する。発電要素70における厚みのばらつきが当該範囲にあることで、生産性を低下させることを抑制しつつ、発電要素70内での電池反応の均一性を高めることができる。
【0072】
次に、発電要素70の各層について説明する。
【0073】
固体電解質層30は、電極層40と対極層20との間に配置される。固体電解質層30は、電極層40と対極層20との各々に接する。固体電解質層30の平均厚みは、例えば、5μm以上150μm以下である。
【0074】
固体電解質層30は、少なくとも固体電解質を含み、必要に応じて、バインダー材料を含んでいてもよい。固体電解質層30は、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質を含んでいてもよい。
【0075】
固体電解質としては、リチウムイオン伝導体、ナトリウムイオン伝導体またはマグネシウムイオン伝導体など公知の材料が用いられうる。固体電解質には、例えば、硫化物固体電解質、ハロゲン系固体電解質または酸化物固体電解質等の固体電解質材料が用いられる。硫化物固体電解質としては、リチウムイオンを伝導できる材料の場合、例えば、硫化リチウム(LiS)および五硫化二リン(P)からなる合成物が用いられる。また、硫化物固体電解質としては、LiS-SiS、LiS-BまたはLiS-GeSなどの硫化物が用いられてもよく、上記硫化物に添加剤としてLiN、LiCl、LiBr、LiPOおよびLiSiOのうち少なくとも1種が添加された硫化物が用いられてもよい。
【0076】
酸化物固体電解質としては、リチウムイオンを伝導できる材料の場合、例えば、LiLaZr12(LLZ)、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO(LATP)または(La,Li)TiO(LLTO)などが用いられる。
【0077】
バインダー材料としては、例えば、エラストマー類が用いられ、ポリフッ化ビニリデン、アクリル樹脂またはセルロース樹脂などの有機化合物が用いられてもよい。
【0078】
電極層40は、電極集電体50の主面に接している。電極層40と電極集電体50との間には導電材料を含む層である集電体層が設けられていてもよい。電極層40は、固体電解質層30を介して対極層20に対向して配置されている。電極層40の平均厚みは、例えば5μm以上300μm以下であるが、これに限らない。
【0079】
電極層40は、少なくとも負極活物質を含み、必要に応じて、固体電解質、導電助剤およびバインダー材料のうち少なくとも1つを含んでもよい。負極活物質としては、リチウムイオン、ナトリウムイオンまたはマグネシウムイオンを吸蔵および放出(挿入および脱離、または、溶解および析出)できる公知の材料が用いられうる。負極活物質としては、リチウムイオンを離脱および挿入することができる材料の場合、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維もしくは樹脂焼成炭素などの炭素材料、金属リチウム、リチウム合金またはリチウムと遷移金属元素との酸化物などが用いられる。
【0080】
固体電解質としては、上述の固体電解質材料が用いられうる。また、導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイトまたはカーボンファイバーなどの導電材料が用いられる。また、バインダー材料としては、上述のバインダー材料が用いられうる。
【0081】
例えば、電極層40の含有材料を溶媒と共に練り込んだペースト状の塗料を、電極集電体50の主面上に塗工し乾燥させることにより、電極層40が作製される。電極層40の密度を高めるために、乾燥後に、電極層40をプレスしてもよい。
【0082】
対極層20は、対極集電体10の主面に接している。対極層20と対極集電体10との間には導電材料を含む層である集電体層が設けられていてもよい。対極層20の平均厚みは、例えば5μm以上300μm以下であるが、これに限らない。
【0083】
対極層20は、少なくとも正極活物質を含み、必要に応じて、固体電解質、導電助剤およびバインダー材料のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0084】
正極活物質としては、リチウムイオン、ナトリウムイオンまたはマグネシウムイオンを吸蔵および放出(挿入および脱離、または、溶解および析出)できる公知の材料が用いられうる。正極活物質としては、リチウムイオンを離脱および挿入することができる材料の場合、例えば、コバルト酸リチウム複合酸化物(LCO)、ニッケル酸リチウム複合酸化物(LNO)、マンガン酸リチウム複合酸化物(LMO)、リチウム‐マンガン‐ニッケル複合酸化物(LMNO)、リチウム‐マンガン‐コバルト複合酸化物(LMCO)、リチウム‐ニッケル‐コバルト複合酸化物(LNCO)またはリチウム‐ニッケル‐マンガン‐コバルト複合酸化物(LNMCO)などが用いられる。
【0085】
固体電解質としては、上述の固体電解質材料が用いられうる。また、導電助剤としては、上述の導電材料が用いられうる。また、バインダー材料としては、上述のバインダー材料が用いられうる。
【0086】
例えば、対極層20の含有材料を溶媒と共に練り込んだペースト状の塗料を、固体電解質層30の主面上に塗工し乾燥させることにより、対極層20が作製される。対極層20の密度を高めるために、乾燥後に、対極層20をプレスしてもよい。
【0087】
[集電体]
次に、電池1が備える集電体について説明する。
【0088】
電極集電体50は、複数の発電要素70のそれぞれの電極層40と電気的に接続される。電極集電体50は、各発電要素70を電気的に並列接続する機能を担っている。なお、本明細書において、電気的に接続されるとは、特に断りの無い限り、実質的に同電位になるように電気的に接続されることを意味する。電極集電体50は、複数の発電要素70のそれぞれの電極層40と接している。電極集電体50は、例えば、つづら折り状にx軸方向において折り曲げられた1枚の集電体である。
【0089】
電極集電体50は、積層方向(z軸方向)に沿って並ぶ複数の電極集電部51と、複数の電極集電部51のうち隣り合う電極集電部51同士を接続し、x軸方向において折り返されている電極折り返し部52と、電極集電部51から電池1の外側に向かって延びる電極引出部53と、を有する。電極集電部51と電極折り返し部52と電極引出部53とは、例えば、同じ材料からなる1つの部材を加工して形成された、各々の部位に対して付された呼称である。
【0090】
複数の電極集電部51はそれぞれ、発電要素70が積層される層状の部分である。電極集電部51は、平面視において、発電要素70と重なる。複数の電極集電部51は、所定の間隔を空けてz軸方向に沿って並んでいる。z軸方向において隣り合う電極集電部51同士は、電極折り返し部52によって接続されている。複数の電極集電部51のそれぞれの両面には、発電要素70が、電極層40が電極集電体50に電気的に接続されるように積層されている。つまり、発電要素70における電極集電部51側には、電極層40が配置され、電極集電部51の両面は電極層40に接している。例えば、複数の電極集電部51はそれぞれ、互いに平行である。
【0091】
電極折り返し部52は、隣り合う電極集電部51の間で電極集電体50が折り返されることで形成された折り返し部分である。電極集電体50は、つづら折り状に折り返されているため、x軸方向の正側から負側に向かって折り返される電極折り返し部52と、x軸方向の負側から正側に向かって折り返される電極折り返し部52とを有する。電極集電体50は、例えば、複数の電極折り返し部52を有し、図示される例では、電極集電体50は、3回折り返されているため、3つの電極折り返し部52を有する。電極折り返し部52は、電極集電体50が折り返されることで対面する2つの発電要素70を、x軸方向の正側または負側から覆っている。電極折り返し部52と発電要素70の端面との間には、第1絶縁部材60が配置されている。
【0092】
電極折り返し部52の発電要素70側は、第1絶縁部材60に接している。これにより、電池1を小型化できるため、体積エネルギー密度を向上できる。なお、電極折り返し部52と第1絶縁部材60との間に隙間が設けられていてもよい。
【0093】
電極引出部53は、電極集電体50が折り返されずに電池1の外側に引き出された電極集電体50の端部である。電極引出部53は、平面視において、電池1の電極引出部53以外の部分よりもx軸方向に突出している。電極引出部53は、露出しており、電池1の電極端子として利用される。本実施の形態では、電極集電体50は、2つの電極引出部53を有し、2つの電極引出部53はどちらもx軸方向の負側に引き出されている。2つの電極引出部53が引き出される方向は、電極集電体50が折り返される回数によって決まるため、電極集電体50が折り返される回数によっては、2つの電極引出部53の一方がx軸方向の負側に引き出され、他方がx軸方向の正側に引き出される。なお、電池1は、電極引出部53に代えて別の端子構造が設けられていてもよい。
【0094】
電極集電体50の材料としては、公知の材料が用いられうる。例えば、電極集電体50の材料としては、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、白金もしくは金、または、これらの2種以上の合金などからなる箔状体、板状体または網目状体などが用いられる。電極集電体50の厚みは、例えば、5μm以上100μm以下であるが、これに限らない。
【0095】
複数の対極集電体10は、発電要素70の対極層20と電気的に接続される。つまり、複数の発電要素70のそれぞれの対極層20は、複数の対極集電体10のいずれかに電気的に接続される。複数の対極集電体10は、積層方向(z軸方向)に沿って並んでいる。
【0096】
対極集電体10は、平面視において、発電要素70と重なる。複数の対極集電体10は、所定の間隔を空けてz軸方向に沿って並んでいる。複数の対極集電体10のそれぞれは、発電要素70を挟んで複数の電極集電部51のいずれかに対向して配置される。発電要素70における対極集電体10側には、対極層20が配置され、対極集電体10の少なくとも一方の面は対極層20に接している。複数の対極集電体10は、両面に発電要素70が積層された複数の電極集電部51のそれぞれを、電極集電部51の両面に積層された発電要素70を介して挟むように配置される。つまり、複数の対極集電体10のうちのz軸方向に沿って隣り合う2つの対極集電体10の間には、複数の電極集電部51のいずれかの両面に積層された2つの発電要素70が配置される。電池1では、対極集電体10と、電極集電部51の両面に積層された2つの発電要素70と当該電極集電部51とで構成される積層構造とが、交互にz軸方向に沿って並んで積層されている。そのため、電池1において、最上部および最下部の集電体は対極集電体10になる。また、複数の対極集電体10のうち最上部および最下部以外の対極集電体10は、電極集電体50が折り返されることにより対面する2つの発電要素70の間に位置する。
【0097】
複数の対極集電体10はそれぞれ、厚みの分布を有する傾斜構造部10aを有する傾斜集電体である。傾斜構造部10aは、発電要素70の対極層20に積層される。傾斜構造部10aは、対極集電体10において、所定の方向に進むに従って厚みが連続的に変化する部分である。傾斜構造部10aの厚みは、例えば、所定の方向に進むに従って線形状に変化する。対極集電体10において傾斜構造部10aは、発電要素70を挟んで電極集電部51に対向して配置され、当該発電要素70の対極層20に電気的に接続される。本実施の形態においては、複数の対極集電体10はそれぞれ、全体が傾斜構造部10aで構成されている。なお、対極集電体10は、対極層20に積層される領域が傾斜構造部10aで構成されていればよく、厚みの分布を有さない平板状の部分を含んでいてもよい。
【0098】
傾斜構造部10aの厚みは、第1主面70bに対する第2主面70cの傾斜によって発電要素70の厚みが小さくなる方向に進むに従って大きくなる。つまり、傾斜構造部10aは、傾斜構造部10aが発電要素70に積層されることで、電池1全体としては発電要素70の厚みの分布の影響が緩和されるように傾斜した構造である。そのため、対極集電体10が傾斜構造部10aを有することにより、電池1全体の厚みの分布を小さくできる。また、傾斜構造部10aの厚みは、例えば、x軸方向においては分布しておらず、均一である。傾斜構造部10aは、例えば、y軸方向およびz軸方向に平行な断面(x軸方向に垂直な断面)において、台形状またはくさび状の断面形状を有する。
【0099】
傾斜構造部10aの平均厚みは、例えば、5μm以上100μm以下である。
【0100】
また、傾斜構造部10aの最大厚みと最小厚みとの差は、例えば15μm以下である。これにより、傾斜構造部10aを容易に形成できる。また、この場合には、一例として、発電要素70の平均厚みが150μmで、発電要素70の厚みのばらつきが最大で5%である場合でも、2つ分の発電要素70の厚みばらつきによる電池1全体の厚みの分布への影響を完全に緩和することができる。また、傾斜構造部10aの最大厚みと最小厚みとの差は、例えば3μm以上である。なお、本明細書において、傾斜構造部10aの最大厚みおよび最小厚みは、対極層20が積層される領域における傾斜構造部10aの最大厚みおよび最小厚みである。
【0101】
また、傾斜構造部10aの最小厚みに対する最大厚みの比は、例えば、3.5以下である。これにより、傾斜構造部10aを容易に形成できる。傾斜構造部10aにおいて、例えば、最小厚みが6μmであり、最大厚みが21μmである場合には、最小厚みに対する最大厚みの比は、3.5であり、最小厚みが20μmであり、最大厚みが35μmである場合には、1.75である。また、傾斜構造部10aの最小厚みに対する最大厚みの比は、例えば、1.15以上である。
【0102】
また、図3に示されるように、電池1における積層方向の端部(つまり最下部および最上部)に位置する対極集電体10の傾斜構造部10aの最大厚みと最小厚みとの差は、隣り合う電極集電部51に積層されて対面する発電要素70の間に位置する対極集電体10の傾斜構造部10aの最大厚みと最小厚みとの差よりも小さい。2つの発電要素70に挟まれて積層される対極集電体10の傾斜構造部10aよりも、端部に位置して1つの発電要素70に積層される対極集電体10の傾斜構造部10aは、積層される発電要素70の数が少ない。そのため、積層される発電要素70の数に応じて傾斜構造部10aの最大厚みと最小厚みとの差を調整することで、電池1の最上面および最下面を平行に近づけることができる。最上部の対極集電体10の上面および最下部の対極集電体10の下面、つまり、電池1の最上面および最下面は、例えば互いに平行である。
【0103】
本実施の形態において、隣り合う電極集電部51に積層されて対面する発電要素70の間に位置する対極集電体10は、第1傾斜集電体の一例である。また、電池1における積層方向の端部に位置する対極集電体10は、第2傾斜集電体の一例である。
【0104】
隣り合う電極集電部51に積層されて対面する発電要素70の間に位置する対極集電体10の傾斜構造部10aの最大厚みと最小厚みとの差は、例えば、発電要素70の最大厚みと最小厚みとの差の2倍である。また、電池1における積層方向の端部に位置する対極集電体10の傾斜構造部10aの最大厚みと最小厚みとの差は、例えば、発電要素70の最大厚みと最小厚みとの差と同じである。これにより、電池1の全体の厚みを均一にできる。
【0105】
対極集電体10の材料としては、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、白金もしくは金、または、これらの2種以上の合金などからなる箔状体、板状体または網目状体などが用いられる。また、下記で説明するように、対極集電体10の材料には、金属箔と、導電性樹脂層および支持部材の少なくとも一方とを組み合わせて用いてもよい。
【0106】
[対極集電体の構成]
ここで、対極集電体10の詳細構成について説明する。
【0107】
図4Aは、本実施の形態に係る対極集電体10の断面図である。
【0108】
図4Aに示されるように、対極集電体10は、厚みの分布を有する金属箔11からなる。金属箔11は、主面11aと、主面11aに背向し、主面11aに対して傾斜している主面11bとを有する。主面11bは、y軸方向の負側に進むに従って金属箔11の厚みが大きくなるように、主面11aに対して傾斜している。
【0109】
対極集電体10は、例えば、金属箔11の製造時に、圧延工法によって厚みに分布を持たせるように加工されることで形成される。また、対極集電体10は、厚みが均一な金属箔に電界めっき法などを用いて、厚みに分布を持たせるように金属を析出させることで形成されてもよい。
【0110】
金属箔11は、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、白金もしくは金、または、これらの2種以上の合金などで構成される。
【0111】
このように、対極集電体10は金属箔11からなるため、構成を簡素化できる。
【0112】
なお、対極集電体10は、厚みの分布を有する金属箔11からなる例に限らない。例えば、電池1は、図4Bから図4Fで示されるような対極集電体を傾斜集電体として対極集電体10の代わりに備えていてもよい。
【0113】
図4Bから図4Fは、本実施の形態に係る対極集電体の他の例の断面図である。
【0114】
まず、本実施の形態に係る対極集電体の他の例として、対極集電体10Aについて説明する。図4Bに示されるように、対極集電体10Aは、金属箔11と、厚みの分布を有し、金属箔11に積層された導電性樹脂層12とからなる。また、対極集電体10Aは、対極集電体10と同様に、全体が傾斜構造部10Aaで構成されている。
【0115】
導電性樹脂層12は、金属箔11の主面11aおよび主面11bに積層され、主面11aおよび主面11bと接している。導電性樹脂層12は、主面11aおよび主面11bの全面を覆っている。なお、導電性樹脂層12は、対極集電体10Aにおいて、対極層20が積層される領域に形成されていれば、主面11aおよび主面11bの全面を覆っていなくてもよい。
【0116】
導電性樹脂層12は、金属箔11側に位置する主面12aと、主面12aに背向し、主面12aに対して傾斜している主面12bとを有する。主面12bは、y軸方向の負側に進むに従って導電性樹脂層12の厚みが大きくなるように、主面12aに対して傾斜している。そのため、金属箔11と導電性樹脂層12とは、厚みが大きくなる方向が同じである。これにより、金属箔11単独で対極集電体を構成する場合よりも対極集電体10Aの厚みの分布がさらに大きくなる。
【0117】
導電性樹脂層12は、例えば、金属、炭素またはこれらを主成分とする材料の微粒子と、樹脂とを含む。微粒子形状は、球状、繊維状または鱗片状等であり、特に制限されない。導電性樹脂層12は、カーボンコートであってもよい。これにより、対極集電体10Aと対極層20とを低抵抗に接続できる。
【0118】
導電性樹脂層12は、例えば、上記の微粒子と樹脂とを溶媒に分散させたスラリーを作製し、ダイコート等の塗布プロセスを用いてスラリーを塗布し、乾燥することで形成される。このように、導電性樹脂層12は、塗布等によって作製可能であるため、厚みの分布の調整が容易であり、傾斜構造部10Aaを有する対極集電体10Aを形成しやすい。
【0119】
次に、本実施の形態に係る対極集電体の他の例として、対極集電体10Bについて説明する。図4Cに示されるように、対極集電体10Bは、厚みが均一な金属箔13と、金属箔13に積層された導電性樹脂層14とからなる。
【0120】
金属箔13は、厚みが均一な平板状である。金属箔13は、主面13aと、主面13aに背向し、主面13aに平行な主面13bとを有する。また、対極集電体10Bは、対極集電体10と同様に、全体が傾斜構造部10Baで構成されている。
【0121】
導電性樹脂層14は、金属箔13の主面13aおよび主面13bに積層され、主面13aおよび主面13bと接している。導電性樹脂層14は、主面13aおよび主面13bの全面を覆っている。なお、導電性樹脂層14は、対極集電体10Bにおいて、対極層20が積層される領域に形成されていれば、主面13aおよび主面13bの全面を覆っていなくてもよい。
【0122】
導電性樹脂層14は、金属箔13側に位置する主面14aと、主面14aに背向し、主面14aに対して傾斜している主面14bとを有する。主面14bは、y軸方向の負側に進むに従って導電性樹脂層14の厚みが大きくなるように、主面14aに対して傾斜している。
【0123】
このように、導電性樹脂層14は、導電性樹脂層12と同様に、塗布等によって形成可能であるため、厚みの分布の調整が容易である。よって、対極集電体10Bでは、容易に準備可能な厚みが均一な金属箔13に導電性樹脂層14を積層するだけで傾斜構造部10Baを形成できる。
【0124】
次に、本実施の形態に係る対極集電体の他の例として、対極集電体10Cについて説明する。図4Dに示されるように、対極集電体10Cは、厚みの分布を有する支持部材15と、支持部材15を覆う金属箔16とからなる。また、対極集電体10Cは、対極集電体10と同様に、全体が傾斜構造部10Caで構成されている。
【0125】
支持部材15は、全体が厚みの分布を有する傾斜構造部15cで構成される板状の部材である。支持部材15は、主面15aと、主面15aに背向し、主面15aに対して傾斜している主面15bとを有する。主面15bは、y軸方向の負側に進むに従って傾斜構造部15cの厚みが大きくなるように、主面15aに対して傾斜している。
【0126】
図示されている例では、傾斜構造部15cの断面形状はくさび状であるが、台形状であってもよい。
【0127】
支持部材15の材料としては、傾斜形状を付与するための成形性および重量の観点から、例えば、樹脂が用いられる。支持部材15の材料としては、金属またはセラミックが用いられてもよい。また、支持部材15は、導電性であってもよく、絶縁性であってもよい。
【0128】
金属箔16は、主面15aおよび主面15bを覆っている。金属箔16は、例えば、傾斜構造部15cのy軸方向の正側の端部で折れ曲がって、主面15aおよび主面15bの全体を一体で覆っている。金属箔16は、傾斜構造部15cに直接接合されていてもよく、接着剤等によって傾斜構造部15cに接合されていてもよい。金属箔16の厚みは、例えば、均一である。対極集電体10Cにおいては、金属箔16上に対極層20が積層される。
【0129】
このように、対極集電体10Cでは、金属箔16に覆われ、厚みの分布を有する支持部材15を用いて傾斜構造部10Caを形成できる。支持部材15は、発電要素70の対極層20との電気的な接続とは関係なく材料を選択できるため、容易に所望の形状に加工できる。例えば、傾斜構造部10Caの最大厚みと最小厚みとの差を15μm以上にすることも可能である。そのため、発電要素70の平均厚みが大きくなり、それに伴って発電要素70の厚みの分布量も大きくなる場合でも、電池1の厚みの分布量を小さくできる。傾斜構造部10Caの最大厚みと最小厚みとの差は、30μm以上であってもよく、50μm以上であってもよい。
【0130】
次に、本実施の形態に係る対極集電体の他の例として、対極集電体10Dについて説明する。図4Eに示されるように、対極集電体10Dは、厚みの分布を有する支持部材17と、支持部材17を覆う金属箔16とからなる。また、対極集電体10Dは、一部が傾斜構造部10Daで構成されている。
【0131】
支持部材17は、厚みの分布を有する傾斜構造部17cと、厚みが均一な平板部17dで構成される板状の部材である。傾斜構造部17cは、対極集電体10Cにおける傾斜構造部15cに対応する部分である。平板部17dは、y軸方向の負側における傾斜構造部17cの端部から、y軸方向の負側に向かって延在している。支持部材17は、主面17aと、主面17aに背向する主面17bとを有する。
【0132】
傾斜構造部17cにおいて、主面17bは、y軸方向の負側に進むに従って傾斜構造部17cの厚みが大きくなるように、主面17aに対して傾斜している。また、平板部17dにおいては、主面17aと主面17bとは平行である。
【0133】
図示されている例では、傾斜構造部17cの断面形状はくさび状であるが、台形状であってもよい。
【0134】
金属箔16は、傾斜構造部17cにおいて主面17aおよび主面17bを覆っている。金属箔16は、例えば、傾斜構造部17cのy軸方向の正側の端部で折れ曲がって、傾斜構造部17cにおける主面17aおよび主面17bの全体を一体で覆っている。図示される例では、金属箔16は、平板部17dにおいては主面17aおよび主面17bを覆っていない。金属箔16は、平板部17dにおいては主面17aおよび主面17bを覆っていてもよい。つまり、金属箔16は、主面17aおよび主面17bの全体を覆っていてもよい。対極集電体10Dにおいては、傾斜構造部10Daは、支持部材17の傾斜構造部17cと金属箔16とで構成される。対極集電体10Dにおいては、金属箔16上に対極層20が積層される。
【0135】
このように、対極集電体10Dでは、端部に厚みが均一な平板部17dが形成されているため、支持部材17が導電性を有する場合には、平板部17dを外部との接続が容易な引出端子として利用できる。また、平板部17dが金属箔16で覆われることで、平板部17dと金属箔16とで構成される部分が引出端子として利用されてもよい。
【0136】
次に、本実施の形態に係る対極集電体の他の例として、対極集電体10Eについて説明する。図4Fに示されるように、対極集電体10Eは、厚みの分布を有する支持部材17と、支持部材17を覆う金属箔16と、金属箔16を覆う導電性樹脂層18とからなる。つまり、対極集電体10Eは、対極集電体10Dに導電性樹脂層18が追加された構成である。また、対極集電体10Eは、一部が傾斜構造部10Eaで構成されている。
【0137】
導電性樹脂層18は、例えば、金属箔16の支持部材17側とは反対側の全面を覆う。導電性樹脂層18は、厚みが均一であってもよく、厚みに分布を有していてもよい。対極集電体10Eにおいては、傾斜構造部10Eaは、支持部材17の傾斜構造部17cと、金属箔16と、導電性樹脂層18とで構成される。対極集電体10Eにおいては、導電性樹脂層18上に対極層20が積層される。
【0138】
このように、対極集電体10Eでは、金属箔16がさらに導電性樹脂層18で覆われている。そのため、導電性樹脂層18の厚みおよび厚みの分布を調整することで、傾斜構造部10Eaの厚みおよび厚みの分布を容易に調整できる。
【0139】
なお、本実施の形態に係る対極集電体は、上記した例に限らず、例えば、さらに別の層等を含んでいてもよい。
【0140】
[絶縁部材]
次に、再び図1から図3を参照し、電池1が備える絶縁部材について説明する。
【0141】
第1絶縁部材60は、x軸方向における発電要素70の端面を覆い、当該端面に接している。これにより、発電要素70と電極折り返し部52との接触による短絡を抑制できる。電池1では、各発電要素70に対して、x軸方向における正側および負側の発電要素70の端面を覆うように複数の第1絶縁部材60が設けられている。
【0142】
第1絶縁部材60は、例えば、x軸方向における発電要素70の端面において、電極層40の端面および固体電解質層30の端面を完全に覆い、対極層20の端面の一部を覆う。第1絶縁部材60は、電極集電体50の主面にも接している。そのため、第1絶縁部材60は、電極集電体50の発電要素70が積層された面から、当該発電要素70の対極層20の端面の一部までを連続的に覆っている。また、第1絶縁部材60は、対極層20の主面を覆っていない。なお、第1絶縁部材60は、固体電解質層30および対極層20の端面を覆っていなくてもよい。また、第1絶縁部材60は、対極層20の主面を覆っていてもよい。
【0143】
第2絶縁部材61は、電極集電部51の端面50aと当該電極集電部51の両面に積層された2つの発電要素70の端面70aとを覆う。また、第2絶縁部材61は、端面50aおよび端面70aに接している。これにより、発電要素70が保護され、短絡を抑制できる。電池1では、各電極集電部51の両面に積層された2つの発電要素70に対して、y軸方向における正側および負側のそれぞれで当該電極集電部51および当該2つの発電要素70の端面70aを覆うように複数の第2絶縁部材61が設けられている。第2絶縁部材61は、例えば、y軸方向における発電要素70の端面70aを完全に覆っている。
【0144】
第3絶縁部材62は、x軸方向における発電要素70の端面および対極集電体10の端面を覆う。これにより、x軸方向における発電要素70の端面および対極集電体10の端面が保護される。第3絶縁部材62は、発電要素70における電極集電体50の電極折り返し部52が配置される側とは反対側の端面を覆う。電池1では、x軸方向における正側および負側の複数の発電要素70のそれぞれの端面のうち、電極折り返し部52に覆われていない発電要素70の端面の全面を覆うように複数の第3絶縁部材62が設けられている。
【0145】
また、第3絶縁部材62は、x軸方向における発電要素70の端面のうち第1絶縁部材60に覆われていない部分に接している。また、第3絶縁部材62は、x軸方向における発電要素70の端面のうち第1絶縁部材60に覆われている部分を、第1絶縁部材60の外側から覆っている。
【0146】
第1絶縁部材60、第2絶縁部材61および第3絶縁部材62はそれぞれ、例えば、樹脂および金属酸化物の少なくとも一方を含む。樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂およびポリイミド樹脂等が挙げられる。樹脂は、熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂であってもよい。金属酸化物としては、例えば、酸化ケイ素、酸化チタンおよび酸化アルミ等が挙げられる。
【0147】
なお、電池1は、第1絶縁部材60、第2絶縁部材61および第3絶縁部材62のうち少なくとも1つを備えていなくてもよい。
【0148】
[製造方法]
次に、本実施の形態に係る電池1の製造方法について、図5から図11を参照しながら説明する。
【0149】
図5は、本実施の形態に係る電池1の製造方法の一例を示すフローチャートである。図6は、本実施の形態に係るセル積層集電体2の斜視図である。図7は、本実施の形態に係るセル積層集電体2の断面図である。図8は、本実施の形態に係るセル積層集電体2の別の断面図である。図9は、厚みが均一な発電要素71を説明するための断面図である。図10は、本実施の形態に係る発電要素70を説明するための断面図である。図11は、本実施の形態に係るセル積層集電体2がつづら折り状に折り返された状態を示す断面図である。なお、図6においては、発電要素70の層構造等の詳細構成の図示は省略されている。また、図7は、図6のVII-VII線を通る積層方向に沿った断面を表している。また、図8は、図6のVIII-VIII線を通る積層方向に沿った断面を表している。また、図9および図10では、図8に対応する位置での断面が示されている。
【0150】
図5に示されるように、電池1の製造方法では、まず、電極集電体50の両面に発電要素70を形成する(ステップS11)。具体的には、図6および図7に示されるように、x軸方向に延在する長尺状の電極集電体50を準備する。電極集電体50は、x軸方向に沿って並ぶ複数の部位である複数の電極集電部51を有する。複数の電極集電部51は、後の工程において複数の電極集電部51の間で折り返すことができるように、互いに離間している。そして、複数の電極集電部51それぞれの両面に、電極層40、固体電解質層30および対極層20を電極集電体50側からこの順で順次積層することで発電要素70を形成する。1つの電極集電部51に対して、2つの発電要素70が形成される。これにより、電極集電体50の両面に、x軸方向に沿って並ぶ複数の発電要素70が形成される。また、1つの電極集電部51の両面に形成された発電要素70同士は、平面視において同じ位置である。
【0151】
電極層40、固体電解質層30および対極層20は、それぞれ、例えば、塗布法を用いて順に積層される。塗布法を用いることにより、容易に発電要素70を電極集電体50上に積層することができる。塗布法としては、例えば、ダイコート法、ドクターブレード法、ロールコーター法、スクリーン印刷法、グラビアロール法またはインクジェット法等のコーティング方法が用いられる。これらの中でも、長尺状の電極集電体50上に効率的に電極層40、固体電解質層30および対極層20を形成できる観点から、塗布法としてダイコート法が用いられてもよい。
【0152】
塗布法を用いる場合、電極層40、固体電解質層30および対極層20のそれぞれを形成する材料(上述の電極層40、固体電解質層30および対極層20それぞれの材料)と溶媒とを適宜混合してスラリーを得る塗料化工程を行う。
【0153】
塗料化工程に用いられる溶媒には、公知の全固体電池(たとえば、リチウムイオン全固体電池)を作製する際に用いられる公知の溶媒が用いられうる。
【0154】
塗料化工程で得られた各層のスラリーを、電極集電体50の複数の電極集電部51の両面に、電極層40、固体電解質層30および対極層20の順番で積層塗工を実施する。例えば、ロールtoロールプロセスなどを用いて、x軸方向に沿って電極集電体50を流しながら、ダイコート用のダイからスラリーを吐出して、電極集電体50上にスラリーを塗工する。これにより、連続プロセスで発電要素70を形成でき、生産性を高めることができる。このように連続プロセスで発電要素70を形成する場合、x軸方向は、連続プロセスの流れ方向であるとも言える。ダイコート用のダイは、例えば、x軸方向に直交する方向に延在する吐出口を有するダイを用いる。これにより、吐出口の延在方向の長さの幅の層を容易に形成できる。各層のスラリーを順次塗工し、全ての層の塗工後に、必要に応じて、溶媒等を除去する熱処理を実施する。
【0155】
ダイコート法などの塗布プロセスでは、図9に示されるように、それぞれ厚みが均一な電極層41、固体電解質層31および対極層21が塗布されることで厚みが均一な発電要素71が形成されることが理想的である。しかし、現実的には、ダイコート用のダイと電極集電体50との距離の不均一、および、ダイの吐出口の延在方向におけるダイからのスラリーの吐出ムラ等によって、流れ方向と交差するy軸方向において厚みを均一にすることは難しく、実現するには調整等に多くの時間を要する。そのため、厚みが均一な発電要素71を形成するためには生産性が低下する。
【0156】
そのため、本実施の形態では、図10に示されるように、所定範囲の厚みの分布を許容して、電極層40、固体電解質層30および対極層20を塗布して、発電要素70を形成する。また、この際、電極層40と対極層20とが対向する位置での電極層40と対極層20との容量のバランスをとるため、電極層40および対極層20は、厚みが小さくなる方向が互いに同じになるように塗布される。そのため、発電要素70全体としても、所定の方向に進むに従って厚みが小さくなる。これにより、電池1の信頼性の低下を抑制しながら生産性を高めることができる。また、ダイコート法などの塗布プロセスでは、流れ方向では、厚みの均一性を高めることが容易であり、流れ方向と交差するy軸方向において発電要素70の厚みが分布する。また、本実施の形態においては、連続プロセスで発電要素70を形成するため、x軸方向に沿って並ぶ全ての発電要素70において、厚みの小さくなる方向が同じである。図示される例では、x軸方向に沿って並ぶ全ての発電要素70は、y軸方向の負側に進むに従って厚みが小さくなる。
【0157】
また、電極集電部51を挟んで対向する位置での発電要素70の容量を同じにすることで電池1の信頼性を高めることができるため、同じ電極集電部51の両面に形成される2つの発電要素70においても、同じ方向(y軸方向の負側)に進むに従って厚みが小さくなるように発電要素70を形成する。
【0158】
また、発電要素70の形成では、例えば、平面視において、電極層40、固体電解質層30および対極層20の順で面積が小さくなるように、電極層40、固体電解質層30および対極層20を積層する。電極層40、固体電解質層30および対極層20の位置を完全に合わせて塗布することは困難であり、精密な位置合わせをする場合には生産性の低下を招く。一方、このような面積関係により、固体電解質層30および対極層20の形成位置がずれても、下側の層からはみ出て形成されにくくなるため、塗布速度を速めても電池1の信頼性を担保できる。また、上述のように、この場合に電極層40が負極層であることにより、正極層よりも負極層が大きく形成されて、金属の析出を抑制できる。
【0159】
複数の電極集電部51のそれぞれの両面に発電要素70が形成された電極集電体50は、電池1に含まれる数の発電要素70を含むx軸方向の長さになるように切断される。また、電極集電体50の端部に、所定の長さの発電要素70が積層されない領域(電池1における電極引出部53)を設けて電極集電体50が切断される。これにより、電池1に含まれる数の発電要素70が積層された電極集電体50であるセル積層集電体2が得られる。なお、この切断処理は、後述するステップS16で、電極集電体50を折り返すことが完了するまでであれば、どのタイミングで行われてもよい。また、あらかじめ必要な長さの電極集電体50が準備されて、目的とする数の発電要素70が形成されていれば、この切断処理は行われなくてもよい。
【0160】
次に、電極集電体50および発電要素70を、x軸方向に沿って切断することで切断面2aを形成する(ステップS12)。具体的には、ステップS12では、x軸方向、かつ、発電要素70の主面に交差(例えば直交)する方向に沿って、電極集電体50、および、複数の電極集電部51のそれぞれの両面に積層された発電要素70を一括で切断する。例えば、対極層20、固体電解質層30、電極層40および電極集電体50それぞれの端面同士が面一となるように一括切断される。その結果、図8に示されるように、電極集電体50(電極集電部51)のy軸方向における端面50aと、電極集電部51の両面に積層された2つの発電要素70のy軸方向における端面70aとで構成される切断面2aが形成される。切断面2aは、例えば、電極集電体50および発電要素70のy軸方向における両側の端部に形成される。また、端面70aは、対極層20、固体電解質層30および電極層40それぞれの端面同士が面一となった面で構成されている。これにより、ステップS11で発電要素70が形成された時点では発電要素70の各層の大きさが異なる場合でも、発電要素70の各層の大きさを近づけることができる。対極層20と電極層40との大きさの差となる部分は、電池容量に寄与しないため、発電要素70の各層の大きさを近づけることで、電池1の体積エネルギー密度を高めることができる。また、x軸方向に沿って切断されるため、x軸方向に沿って見た場合に、x軸方向に沿って並ぶ発電要素70同士の位置も揃うことになる。
【0161】
切断は、例えば、刃物によって切り下される方法で行われてもよく、回転刃によってスリットを形成するようにして行われてもよい。また、切断は、レーザーまたはジェットなどによって行われてもよい。また、切断後、切断面2aを研磨してもよい。これにより、切断に伴うバリ等を除去して、短絡等を抑制できる。
【0162】
次に、複数の電極集電部51のそれぞれの両面に形成された発電要素70に対して、高圧プレス処理を行う(ステップS13)。これにより、発電要素70を緻密化して、電池性能を高めることができる。高圧プレス処理は、例えばロールプレス等により、複数の発電要素70に対して連続プロセスで行われる。この場合にも、x軸方向に電極集電体50を流しながら、複数の電極集電部51の両面に形成された発電要素70に対して順次プレスが行われる。そのため、この場合もx軸方向が連続プロセスの流れ方向となる。なお、高圧プレス処理(ステップS13)は、ステップS12の前に行われてもよく、ステップS11と並行して、発電要素70の各層に対して行われてもよい。
【0163】
次に、x軸方向における発電要素70の端面を覆う第1絶縁部材60を形成する(ステップS14)。図6および図7に示されるように、複数の電極集電部51のそれぞれの両面に形成された発電要素70のx軸方向における正側および負側の端面に第1絶縁部材60を形成する。なお、図6から図8には、ステップS14まで完了した状態のセル積層集電体2が示されている。
【0164】
第1絶縁部材60は、例えば、ステップS11で挙げた塗布法を用いて形成されうる。例えば、図7に示されるように、電極集電体50に接する部分から対極層20の端面の一部までを覆うように第1絶縁部材60の材料を塗布する。第1絶縁部材60の形成には、ステップS11と同じ方法が用いられてもよく、ステップS11と異なる方法が用いられてもよい。
【0165】
第1絶縁部材60の材料として、例えば、絶縁性物質(例えば、金属酸化物)を溶媒に分散させた塗料を発電要素70の端面および電極集電体50上に塗布し、乾燥して溶媒を蒸発することで第1絶縁部材60を得ることができる。第1絶縁部材60の材料として、樹脂が用いられる場合には、樹脂を溶解または分散させた溶液が発電要素70の端面および電極集電体50上に塗布されてもよいし、紫外線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂が発電要素70の端面および電極集電体50上に塗布されて、硬化処理が行われてもよい。第1絶縁部材60の形成に用いられる溶媒には、金属酸化物または樹脂を分散または溶解させる一般的な有機溶媒または水系溶媒等が用いられうる。
【0166】
このような発電要素70の端面を覆う第1絶縁部材60が形成されることにより、電極集電体50を折り返す際に発電要素70に応力が加わった場合でも、発電要素70の端面での発電要素70の割れまたは欠け等による崩落を抑制できる。
【0167】
次に、切断面2aを覆う第2絶縁部材61を形成する(ステップS15)。第2絶縁部材61は、例えば、切断面2aにおいて、発電要素70の端面70aおよび電極集電部51の端面50aを全て覆うように形成される。第2絶縁部材61は、例えば、ステップS11で挙げた塗布法を用いて形成されうる。
【0168】
このような切断面2aを覆う第2絶縁部材61が形成されることにより、切断面2aにおいて発電要素70が第2絶縁部材61に保護されると共に、対極集電体10と発電要素70および電極集電部51とが近接する部分での接触による短絡を抑制できる。
【0169】
なお、ステップS12からステップS15の順序は、ステップS16の前であれば特に制限されず、入れ替わってもよい。
【0170】
次に、複数の電極集電部51のうち隣り合う電極集電部51に形成された発電要素70が対面するように電極集電体50をx軸方向において折り返すと共に、各発電要素70の対極層20に対極集電体10を積層する(ステップS16)。ステップS16においては、数の発電要素70がz軸方向に沿って並んで積層されるように、電極集電体50をx軸方向においてつづら折り状に折り返す。また、対極集電体10は、電極集電体50を折り返すことで対面する発電要素70の間、および、z軸方向の端部に位置する発電要素70の電極集電部51側とは反対側に位置するように配置される。電極集電体50が折り返されることで対面する発電要素70では、当該発電要素70の対極層20同士が向かい合う。対極集電体10は、この向かい合った対極層20の間に配置される。また、傾斜構造部10aの厚みが、第1主面70bに対する第2主面70cの傾斜によって発電要素70の厚みが小さくなる方向に進むに従って大きくなるように、対極集電体10を配置する。これにより、複数の発電要素70が積層された積層体が形成される。ステップS16で形成される積層体は、例えば、図1から図3で示される電池1から第3絶縁部材62を除いた構成を有する。
【0171】
具体的には、電極集電体50を折り返す際に、電極集電体50を折り返すことで対面する発電要素70で対極集電体10を挟むように対極集電体10を配置する。この操作を全ての発電要素70が積層されるまで繰り返す。これにより、例えば、図11に示されるように、電極集電体50は、x軸方向において、つづら折り状になるように折り返されて、全ての発電要素70が積層され、かつ、折り返し部分である電極折り返し部52が形成される。図11では、対極集電体10を除いて、電極集電体50(セル積層集電体2)が折り返された状態が図示されている。また、対極集電体10は、電極集電体50を折り返すことで対面する発電要素70の間に配置される。セル積層集電体2では、x軸方向に沿って切断面2aが形成され、発電要素70の端面70aおよび電極集電体50の端面の位置が揃っているため、折り返しでの位置規制が容易である。なお、電極集電体50を折り返す際に対極集電体10を配置せず、図11で示される状態に折り返されたセル積層集電体2を固定して、折り返されて固定されたセル積層集電体2に対極集電体10をy軸方向に沿って差し込んでもよい。これによっても、電極集電体50を折り返すことで対面する発電要素70の間に対極集電体10を配置することが可能である。
【0172】
このように、電極集電体50がつづら折り状になるように折り返されて、複数の発電要素70が積層された積層体が形成される。これにより、電極集電体50を、複数の発電要素70ごとに個片化する必要が無く、個片化した電極集電体を用いて発電要素70を積層するよりも工数を減らして、電池1の生産性を高めることができる。
【0173】
次に、必要に応じて複数の発電要素70が積層された積層体に接着プレスを行う(ステップS17)。具体的には、平板プレス等によって、複数の発電要素70が積層された積層体を積層方向にプレスし、対極集電体10と発電要素70とを密着させる。
【0174】
次に、発電要素70における電極集電体50の電極折り返し部52が配置される側とは反対側の端面を覆う第3絶縁部材62を形成する(ステップS18)。第3絶縁部材62は、x軸方向の両側のどちらにも電極折り返し部52が形成されていない発電要素70におけるx軸方向の両側の端面にも形成される。これにより、発電要素70の端面のうち電極折り返し部52で覆われずに露出する部分を保護できる。第3絶縁部材62は、例えば、ステップS11で挙げた塗布法を用いて形成されうる。なお、第3絶縁部材62の形成(ステップS18)は、接着プレス(ステップS17)の前に行われてもよい。
【0175】
以上の工程を経て、図1から図3で示される電池1が得られる。
【0176】
[効果]
本実施の形態に係る電池1の効果について、比較例に係る電池1Xと比較しながら説明する。図12は、比較例に係る電池1Xの断面図である。電池1Xは、本実施の形態に係る電池1と比較して、傾斜構造部10aを有する対極集電体10の代わりに、厚みが均一な対極集電体10Xを備える点で相違する。
【0177】
上述のように、複数の電極集電部51のそれぞれの両面に、厚みが小さくなる方向が同じである発電要素70を形成して、電極集電体50を折り返して複数の発電要素70を積層すると、全体として発電要素70の厚みの分布が累積する。そのため、図12で示されるように、厚みが均一な対極集電体10Xを用いた場合には、電池1X全体としての厚みの分布が非常に大きくなる。また、発電要素70が積層される方向が電池1Xの最下面または最上面に垂直な方向から傾斜する。そのため、電池1の形状が歪み、パッケージ化する場合、および、機器等に収容する場合などに、電池1Xには無駄な空間が形成されやすく、電池1Xの実質的な体積エネルギー密度が低下する。また、この傾向は、積層する発電要素70の数が増えるほど大きくなる。
【0178】
これに対して、図3等に示されるように、本実施の形態に係る電池1は、発電要素70の対極層20に積層され、厚みの分布を有する傾斜構造部10aを有する対極集電体10を備える。傾斜構造部10aの厚みは、第1主面70bに対する第2主面70cの傾斜によって発電要素70の厚みが小さくなる方向に進むに従って大きくなる。
【0179】
このように、生産性を高めるために、多少の厚みの分布を許容して発電要素70を形成する場合であっても、対極集電体10の傾斜構造部10aが、電池1全体としては発電要素70の厚みの分布の影響を緩和して、厚みの分布を小さくできる。また、発電要素70が積層される方向を、電池1の最下面または最上面に垂直な方向に近づけることができる。よって、電池1の形状の歪みを低減でき、電池1をパッケージ化する場合、および、電池1を機器等に収容する場合などに、無駄な空間が形成されにくい。よって、電池1の生産性および体積エネルギー密度を高めることができる。特に、厚みが小さくなる方向が同じである発電要素70が積層されている場合には、厚みの分布が累積するが、各発電要素70に対極集電体10の傾斜構造部10aが積層されることで、累積した厚みの分布を緩和した電池1を実現できる。
【0180】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0181】
図13は、本実施の形態に係る電池101の断面図である。なお、図13は、図3に対応する位置での断面を表している。
【0182】
図13に示されるように、本実施の形態に係る電池101は、実施の形態1に係る電池1と比較して、複数の対極集電体10のうち一部の対極集電体10が対極集電体110に置き換えられている点、および、複数の発電要素70が、発電要素70の厚みが小さくなる方向が互いに反対方向である発電要素70を含む点で相違する。
【0183】
複数の発電要素70において、電極集電体50を折り返すことで対面する発電要素70は、第1主面70bに対して第2主面70cが傾斜することで厚みが小さくなる方向が、互いに反対方向である。そのため、複数の発電要素70が積層されていても、発電要素70の厚みの分布が累積しにくい。つまり、電池101全体の厚みの分布を小さくできる。よって、電池101の体積エネルギー密度を高めることができる。電極集電体50を折り返すことで対面する2つの発電要素70のうち、一方は第1発電要素の一例であり、他方は第2発電要素の一例である。
【0184】
対極集電体110は、電極集電体50を折り返すことで対面する発電要素70の間に配置されている。また、電池101において、最上部および最下部の対極集電体は、対極集電体10である。
【0185】
このように、電池101においては、一部の対極集電体が傾斜構造部10aを有する対極集電体10である。電池101においては、複数の発電要素70が積層されていても、発電要素70の厚みの分布が累積しにくいため、一部の対極集電体のみが傾斜構造部10aを有する対極集電体10であっても、体積エネルギー密度への発電要素70の厚みの分布の影響を十分に低減できる。例えば、電池101の最上面と最下面とは平行である。
【0186】
電池101は、例えば、上記で説明した電池1の製造方法におけるステップS11において、x軸方向に並ぶ複数の電極集電部51のうち隣り合う電極集電部51に形成される発電要素70の厚みが小さくなる方向が互いに反対方向になるように、発電要素70を形成する。例えば、発電要素70を形成する連続プロセスにおいて、x軸方向に並ぶ複数の電極集電部51を1つとばしで、発電要素70の厚みが小さくなる方向が同じになるように発電要素70を形成する。続いて、上記でとばされた電極集電部51に、すでに形成した発電要素70とは逆方向で発電要素70の厚みが小さくなるように発電要素70を形成する。このようにして発電要素70が形成された電極集電体50を用いて、ステップS12からステップS18の工程が行われることで、電池101を製造できる。
【0187】
なお、複数の発電要素70のそれぞれで厚みが小さくなる方向が同じであっても、複数の発電要素70の厚みの分布が小さい場合には、電池101のように、複数の対極集電体のうち、一部(例えば最上部および最下部)の対極集電体のみに傾斜構造部10aを有する対極集電体10が用いられてもよい。
【0188】
(実施の形態3)
続いて、実施の形態3について説明する。以下では、実施の形態1および2との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0189】
図14は、本実施の形態に係る電池201の断面図である。なお、図14は、図3に対応する位置での断面を表している。
【0190】
図14に示されるように、本実施の形態に係る電池201は、実施の形態1に係る電池1と比較して、接続部材210をさらに備える点で相違する。
【0191】
接続部材210は、複数の対極集電体10のそれぞれの一端と接続される。図示される例では、接続部材210は、複数の対極集電体10のそれぞれのy軸方向における負側の端部と接続されている。対極集電体10において接続部材210に接続される箇所は、対極集電体10における傾斜構造部10aの厚みが大きくなる方向の端部である。また、接続部材210は、複数の発電要素70のそれぞれのy軸方向の負側における端面70aを覆う。
【0192】
接続部材210と複数の対極集電体10とは、例えば、一体で形成されており、くし形状を有する複合集電体211を構成している。つまり、接続部材210と複数の対極集電体10とは、例えば、一体化されている。接続部材210は、例えば、対極集電体10と同じ金属を用いて形成される。なお、接続部材210と複数の対極集電体10とは、別の部材として形成して接続されていてもよい。また、図4Bから図4Fで例示した対極集電体のように、複合集電体211は、金属箔、導電性樹脂層および支持部材のうちの2つ以上を組み合わせて形成されていてもよい。例えば、複合集電体211と同様の形状の支持部材と、当該支持部材を覆う金属箔とで複合集電体が形成されてもよい。
【0193】
複数の対極集電体10は、複合集電体211のくし形状における複数のくしば部分に相当する。また、接続部材210は、複合集電体211のくし形状における根元部分に相当する。
【0194】
接続部材210は、例えば、複数の対極集電体10を互いに電気的に接続する。そのため、複合集電体211は、各発電要素70を電気的に並列接続する機能を担っている。
【0195】
接続部材210の発電要素70側は、第2絶縁部材61に接している。これにより、電池201を小型化できるため、体積エネルギー密度を向上できる。なお、接続部材210と第2絶縁部材61との間に隙間が設けられていてもよい。
【0196】
接続部材210は、露出しており、例えば、電池201の対極端子として利用される。これにより、対極端子を形成する工程が必要なく、電池201の生産性を高めることができる。また、端子部分を省スペース化できるため、電池201の体積エネルギー密度を向上できる。
【0197】
電池201は、例えば、上記で説明した電池1の製造方法におけるステップS16において、電極集電体50を折り返すことで対面する発電要素70の間に複数の対極集電体10の最上部および最下部以外の対極集電体10を差し込むことで形成される。例えば、図11で示されるような状態で折り返されたセル積層集電体2を固定する。そして、複数の対極集電体10のうちのz軸方向に沿って隣り合う2つの対極集電体10の間に、1つの電極集電部51の両面に積層された2つの発電要素70が配置されるように、折り返されて固定されたセル積層集電体2に対極集電体10をy軸方向に沿って差し込む。これにより、図14で示される電池201が得られる。
【0198】
このように、電極集電体50を折り返すことで対面する発電要素70の間に、複合集電体211のくしば部分である対極集電体10を差し込むことで、一括して複数の対極集電体10を発電要素70の対極層に積層できるため、生産性を高めることができる。また、例えば、発電要素70の平面視形状の長辺と短辺との差が大きい場合、および、基板実装用途などの発電要素70のサイズが小さい場合などでは、複数の対極集電体10同士を電気的に接続するための端子構造が、相対的に大きくなりやすい。そのため、あらかじめ複数の対極集電体10が接続されたくし形状の複合集電体211を用いることで、接続部材210によって複数の対極集電体10を電気的に接続し、端子構造を小型化して体積エネルギー密度を高めることができる。
【0199】
(他の実施の形態)
以上、本開示に係る電池について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態に施したものや、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本開示の範囲に含まれる。
【0200】
例えば、上記の実施の形態では、全ての複数の電極集電部51の両面に発電要素70が積層されていたが、これに限らない。例えば、複数の電極集電部51のうち、最も電極集電体50の端部側に位置する電極集電部51には、片面のみに発電要素70が積層されてもよい。これにより、最上部および最下部の集電体を電極集電体50(具体的には電極集電部51)にすることも可能である。また、この場合には、発電要素70の数は奇数個でありうる。
【0201】
また、例えば、上記の実施の形態では、複数の発電要素70が積層されていたが、これに限らない。本開示に係る電池は、例えば、1つの発電要素70と、1つの対極集電体10と、1つの電極集電部51とで構成される電池であってもよい。また、本開示に係る電池は、例えば、1つの電極集電部51と、1つの電極集電部51の両面に形成された2つの発電要素70と、1つの電極集電部51の両面に形成された2つの発電要素70を挟むように配置される2つの対極集電体10とで構成される電池であってもよい。
【0202】
また、例えば、上記の実施の形態では、全体が繋がった1つの電極集電体50が用いられたが、これに限らない。電極集電体として、個片化された複数の平板状の電極集電体を用いてもよい。つまり、電極集電体は、電極集電部51に相当する部分だけで構成されていてもよい。
【0203】
また、例えば、上記実施の形態では、電極集電体50上に電極層40、固体電解質層30および対極層20を積層することで発電要素70を形成したがこれに限らない。例えば、電極集電体50上に電極層40または電極層40および固体電解質層30を積層し、対極集電体10上に対極層20または対極層20および固体電解質層30を積層してもよい。そして、電極集電体50上の電極層40または電極層40および固体電解質層30と、対極集電体10上の対極層20または対極層20および固体電解質層30とが対面して積層されるように、電極集電体50に対極集電体10を積層することで発電要素70が形成されてもよい。
【0204】
また、上記の実施の形態は、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0205】
本開示に係る電池は、例えば、各種の電子機器または自動車などに用いられる全固体電池などの二次電池として利用されうる。
【符号の説明】
【0206】
1、101、201 電池
2 セル積層集電体
2a 切断面
10、10A、10B、10C、10D、10E、110 対極集電体
10a、10Aa、10Ba、10Ca、10Da、10Ea、15c、17c 傾斜構造部
11、13、16 金属箔
11a、11b、12a、12b、13a、13b、14a、14b、15a、15b、17a、17b 主面
12、14、18 導電性樹脂層
15、17 支持部材
17d 平板部
20 対極層
30 固体電解質層
40 電極層
50 電極集電体
50a 端面
51 電極集電部
52 電極折り返し部
53 電極引出部
60 第1絶縁部材
61 第2絶縁部材
62 第3絶縁部材
70 発電要素
70a 端面
70b 第1主面
70c 第2主面
210 接続部材
211 複合集電体
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14