(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172262
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】杖グリップ
(51)【国際特許分類】
A45B 9/02 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
A45B9/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083939
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】520134038
【氏名又は名称】株式会社ケアマート
(74)【代理人】
【識別番号】100212255
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 将之
(72)【発明者】
【氏名】清水 義生
【テーマコード(参考)】
3B104
【Fターム(参考)】
3B104AA03
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、利用者が安心して体重をかけられ、掌や手首への負担が軽減され、滑りにくく、握持しやすい形状の杖用グリップを提供することである。
【解決手段】本発明は、杖用グリップであって、上面が略水平をなすグリップ主軸と、当該グリップ主軸の左右いずれか一方の側面に母指球に当接するための突起部分とを備えることを特徴とする、杖用グリップを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
杖用グリップであって、上面が略水平をなすグリップ主軸と、当該グリップ主軸の左右いずれか一方の側面に母指球に当接するための突起部分とを備えることを特徴とする、杖用グリップ。
【請求項2】
前記突起部分の上面と前記グリップ主軸の上面とが連続していることを特徴とする、請求項1の杖用グリップ。
【請求項3】
前後に略対称であることを特徴とする、請求項1または2の杖用グリップ。
【請求項4】
請求項3に記載の杖用グリップを備えることを特徴とする、歩行補助用杖。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢、疾患または負傷等により歩行機能に不自由を有する者の補助用の器具である杖において、持ちやすさを改善した杖のグリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
杖は、足腰の弱った利用者が体重の一部を預けることで、歩行を補助する器具である。しかし、杖に体重を預けるに際して、掌や手首に負荷がかかる。かかる負担を軽減しようとして、種々の形状のグリップが考案されてきた。例えば特許文献1(特開2013―233234号公報、渡邊眞人ら)は、細くなった側の先端を上方に向けた略勾玉形状をしており、該略勾玉形状の凸面側には波形状の把持溝が複数形成されている杖用グリップを提供する。また、例えば、特許文献2(特開2015-009010号公報、日野祐子)は、横向きの卵型の杖用グリップを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013―233234号公報
【特許文献2】特開2015-009010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の杖用グリップは、傾斜した構造のグリップであるため上から体重をかけると手がグリップから滑ってしまい、利用者が転倒する恐れがある。また、上記特許文献2の杖用グリップは、中央部分が大きく膨らんでいるため指が回りきらず、握持に不安がある。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、利用者が安心して体重をかけられ、掌や手首への負担が軽減され、滑りにくく、握持しやすい形状の杖用グリップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、グリップの傾斜や曲面は利用者に不安感を与え、誤使用による転倒を誘発するのであって、利用者が安心して体重をかけられるのは結局のところ水平のグリップであることを見出し、かつ、掌への負担はグリップの上面の表面積の増加によって軽減可能であるが、とりわけ親指付根の母指球に当接する面をグリップに作出することで顕著に負担軽減が可能であることを見出した。
【0007】
したがって、本発明は、杖用グリップであって、上面が略水平をなすグリップ主軸と、当該グリップ主軸の左右いずれか一方の側面に母指球に当接するための突起部分とを備えることを特徴とする、杖用グリップを提供する(以下、本発明の杖用グリップ)。
【0008】
本発明の杖用グリップにおいて、グリップ主軸は、概ねの形状としては横向きの四角柱または六角柱のような多角柱、円柱、楕円柱などであってよいが、多角柱である場合にはその上面が略水平になるようにいずれかの面が上面になるように配置され、円柱または楕円柱である場合には上面が略水平になるように切り取られていてもよい。ここで、水平とは、本発明の杖用グリップを杖のシャフトに取り付けて、杖を使用時のように立たせた場合に、当該杖用グリップの上面が重力方向に対して垂直面を形成することをいう。また、グリップ上面の水平は厳密に要求されるものではないという意味で「略」水平なる用語は理解すべきであり、例えば10度以下、好ましくは5度以下の傾斜や同等の屈曲は許容される。
【0009】
本発明の杖用グリップにおいて、グリップ主軸の外周は、必要とされるグリップ主軸の機械的強度や利用者の手の大きさによっても変化するが、好ましくは50mm~140mm、より好ましくは70~120mmである。グリップ主軸の外周が大きすぎると、グリップを握ったときに指が回りきらず十分な握持ができなくなり、グリップ主軸の外周が小さすぎると、容易にグリップを握持できても杖に体重をかけたときに手にグリップが食い込んで利用者の負担が増すためである。
【0010】
本発明の杖用グリップにおいて、グリップ主軸は、さらに、杖のシャフトと連結するための連結部材、例えばネジまたはネジ穴を有していてよい。また、本発明の杖用グリップにおいて、グリップ主軸は、さらに、指を掛けるための波形の凹凸をその側面および/または下面側に備えていてもよい。
【0011】
本発明の杖用グリップにおいて、母指球に当接するための突起部分は、上記グリップ主軸の左右いずれか一方の側面に設けられる。このとき、当該突起部分の上面とグリップ主軸の上面とは、段差や隙間があればその部分が掌への負担となるため、連続していることが好ましい。当該突起部分は、母指球に当接するだけの大きさを有していることが好ましく、例えば前後幅として30~100mm、好ましくは例えば40~90mm、より好ましくは50~80mmであり、左右幅として、10~60mm、好ましくは例えば15~50mmである。当該突起部分の上下幅は、上記グリップ主軸と合わせてもよいが、握持を容易にするために上記グリップ主軸よりも薄く、例えばグリップ主軸の上下幅の1/2以下とすることが好ましい。
【0012】
より好ましい態様において、本発明の杖用グリップは、左右いずれの手でも利用可能なように、前後に略対称である。
【0013】
更なる態様において、本発明は、上記本発明の杖用グリップを備えた杖を提供する。かかる態様の杖に用いるシャフト部分は、当該技術分野において用いられるどのような形状や素材であってもよく、典型的な例をあげるならば、木製またはアルミ製の円柱形のシャフトであってその下端部に石突のゴムを備えている。
【発明の効果】
【0014】
かかる本発明の杖用グリップは、単純にして安心感のある水平なグリップであって、突起部分を片側側面に設けていることで利用者がグリップを握ったときに母指球に当接して利用者の負担を軽減できる。さらに、好適なグリップ径および突起部分の厚みを設定することで確実な握持を容易に実現できる。さらに、本発明の杖用グリップを前後に略対象とすることで、左右のいずれの手でも、杖の左右を反転させることで、全く同じ使い心地で使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の杖用グリップの斜視図である。当該グリップにシャフトも接合されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の杖用グリップを具体化した実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。また、本明細書を通じて、上下左右前後は杖を現実に使用する際の進行方向を前とし、地面側を下として説明するが、あくまで説明の便宜のための相対的な区別に過ぎない。以下では本発明の杖用グリップの斜視図、上面図および右側面図(
図1~3)を用いて説明する。
【0017】
第一の態様における本発明の杖用グリップ(1)は、
図1に示す通り、グリップの下側でシャフト(2)と結合して、杖となる。杖用グリップ(1)は、主軸が外周80mm、前後の長さ150mmの四角柱であり、四角柱の面の一つが杖用グリップの上面を構成して、杖を直立させたときにこの杖用グリップ(1)の上面が水平となっている。当該杖用グリップ(1)の右側面中央には突起部分(11)が設けられている。突起部分(11)は最大前後幅60mm、左右幅50mmの半楕円の板状である。突起部分(11)の上面は前記グリップ主軸の上面と連続しており、突起部分(11)の下面は前記グリップ主軸の側面中ごろからしばらく水平に伸びた後先端に向かって上向きに傾斜して、突起部分(11)先端の厚みが根本部分と比較して薄くなっている。当該杖用グリップ(1)は、シャフト(2)結合部分を中心として前後に対称である。
【0018】
第一の態様における本発明の杖用グリップ(1)は左手で使用することを想定した向きとなっており、もし右手で使用するのであれば杖を前後反転させるだけで、同様に使用できる。左手で本発明の杖用グリップ(1)を握持する際には、例えば、第一指と第二指を巻き付けるようにして突起部分(11)を握り、残りの指でグリップ主軸の左側面を抑え、第二指と第三指の間にグリップ主軸が挟み込まれるようにして、使用する。右手で本発明の杖用グリップ(1)を握持する際には、杖を前後反転させて突起部分(11)が左側に向くようにして、例えば、第一指と第二指を巻き付けるようにして突起部分(11)を握り、残りの指でグリップ主軸の右側面を抑え、第二指と第三指の間にグリップ主軸が挟み込まれるようにして、使用する。
【符号の説明】
【0019】
1 杖用グリップ
11 突起部分
2 シャフト