(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172265
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】車両の下部車体構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
B62D25/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083944
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】黒田 一平
(72)【発明者】
【氏名】西本 允也
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB06
3D203BB08
3D203BB12
3D203BB22
3D203BB54
3D203BC09
3D203CA24
3D203CA52
3D203CA62
(57)【要約】
【課題】質量およびコストを増大させることなく、サイドシル前端部に入力される後方向衝撃荷重をサイドシル後方へ伝達すること。
【解決手段】車両の下部且つ車幅方向外側に配置され、内部に車両前後方向に延びる閉断面10sを形成するサイドシル10と、サイドシル10の前方に位置するホイール6を備え、サイドシル10には、前端部27と、前端部27より後方に位置する本体部28とを有するサイドシルアウタ21を備え、サイドシルアウタ21の前端部27には、該前端部27の前面部271および側面部24に沿った形状を有するアウタ側補強部材50が閉断面10sの内側又は外側から接合され、本体部28の前端42fは、アウタ側補強部材50の側面部51の後端54と車両前後方向において対向し、本体部28は、側面部51の後端54に対して閉断面10sの内側へ突出する突出部43を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の下部且つ車幅方向外側に配置されるとともに、車幅方向内側に位置するサイドシルインナと、車幅方向外側に位置し、前端部と本体部とを有するサイドシルアウタと、が協働して車両前後方向に延びる閉断面を形成するサイドシルと、
前記サイドシルアウタの前方に位置するホイールと、
前記サイドシルアウタの前記前端部の前面部及び側面部に沿った形状を有するアウタ側補強部材と、を備え、
前記アウタ側補強部材は、前記前端部に対して前記閉断面の内側又は前記閉断面の外側から取り付けられ、
前記本体部の前端は、前記アウタ側補強部材の側面部の後端と車両前後方向において対向し、
前記本体部は、車幅方向において前記アウタ側補強部材の前記側面部の前記後端よりも、前記前端部の前記側面部の側に配置されるとともに、前記後端に対して、前記前端部の前記側面部の側と反対側まで突出する突出部を有することを特徴とする
車両の下部車体構造。
【請求項2】
前記アウタ側補強部材の前記側面部には、前記本体部の前端より後方へ延出する延出部が設けられた
請求項1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項3】
前記突出部は、前記本体部において前後方向に延びるビードで形成された
請求項2に記載の車両の下部車体構造。
【請求項4】
前記アウタ側補強部材の前記側面部には、前記後端から前方へ連続して延びる補強部材横稜線が、前記突出部において前後方向に延びる突出部横稜線と略同じ高さに形成された
請求項3に記載の車両の下部車体構造。
【請求項5】
前記本体部の上面部と側面部との境界部には、前記本体部の前端から後方向へ延びるアウタ横稜線が形成され、
前記延出部は、前記本体部の前記上面部と前記側面部とに係合可能に前記アウタ横稜線に沿って後方へ延出する構成とした
請求項4に記載の車両の下部車体構造。
【請求項6】
前記突出部には、車両上下方向に互いに離間して車幅方向へ延びる一対の横壁部を有し、
前記一対の横壁部のうち、少なくとも一方の横壁部と前記アウタ側補強部材の前記後端とは車両正面視で重複する
請求項5に記載の車両の下部車体構造。
【請求項7】
前記アウタ側補強部材における、前記突出部の前記一対の横壁部のうち少なくとも一方の横壁部と同じ高さ部位には、前記後端から前方へ凹む後端凹部が形成された
請求項6に記載の車両の下部車体構造。
【請求項8】
前記アウタ側補強部材は前記前端部に対して前記閉断面の内側から備えた
請求項1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項9】
前記サイドシルアウタの前記前端部と前記本体部との車両前後方向の境界は、前記サイドシルから上方へ延びるヒンジピラーの前後幅の間に位置する
請求項1乃至請求項8のうちいずれかに記載の車両の下部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、車幅方向外側に車両前後方向に延びる閉断面を形成するサイドシルと、サイドシルの前方にホイールとを備えた車両の下部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に車両の前面における、フロントサイドフレームよりも車幅方向外側の端部に対して車両前方からバリア(障壁)が部分的に衝突する、所謂スモールオーバーラップ衝突の際には、後退するホイ-ルがサイドシル前端部に衝突することで、サイドシル前端部には車両後方向きの衝撃荷重が入力される。このような車両後方向きの衝突荷重をサイドシル前端部からサイドシル後方に荷重伝達することで車体の過度な補強を抑制できるため好ましい。
【0003】
ところで、スモールオーバーラップ衝突に対してサイドシル前端部を補強する補強部材を備えた構成として特許文献1の車両側部構造が提案されている。
【0004】
特許文献1の車両側部構造は、サイドシル前端部における車幅方向外側に位置するサイドシルアウタ前端部の車幅方向内面に、少なくとも前面および車幅方向外面を補強するアウタ側補強部材(30)が設けられている。
【0005】
しかし、アウタ側補強部材(30)は、サイドシル前端部よりもサイドシル後方へと延びているため、質量およびコストの増大を招くおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、質量およびコストを増大させることなく、サイドシル前端部に入力される後方向衝撃荷重をサイドシル後方へ伝達する車両の下部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の車両の下部車体構造は、車両の下部且つ車幅方向外側に配置されるとともに、車幅方向内側に位置するサイドシルインナと、車幅方向外側に位置し、前端部と本体部とを有するサイドシルアウタと、が協働して車両前後方向に延びる閉断面を形成するサイドシルと、前記サイドシルアウタの前方に位置するホイールと、前記サイドシルアウタの前記前端部の前面部及び側面部に沿った形状を有するアウタ側補強部材と、を備え、アウタ側補強部材は、前記前端部に対して前記閉断面の内側又は前記閉断面の外側から取り付けられ、前記本体部の前端は、前記アウタ側補強部材の側面部の後端と車両前後方向において対向し、前記本体部は、車幅方向において前記アウタ側補強部材の前記側面部の前記後端よりも、前記前端部の前記側面部の側に配置されるとともに、前記後端に対して、前記前端部の前記側面部の側と反対側まで突出する突出部を有することを特徴とする。
【0009】
前記構成によれば、サイドシルに前方から後方向衝撃荷重が入力された際、アウタ側補強部材により、サイドシルアウタの前端部の形状を保持しつつ後方に変位しようとする。その際、後退するアウタ側補強部材の後端と、サイドシルアウタの本体部に設けられた突出部の前端とが係り合ってアウタ側補強部材から後方に位置する本体部への荷重伝達がなされる。
【0010】
従って、質量およびコストを増大させることなく、サイドシルに前方から入力される後方向衝撃荷重を後方へと伝達することができる。
【0011】
この発明の態様として、前記アウタ側補強部材の前記側面部には、前記本体部の前端より後方へ延出する延出部が設けられることが好ましい。
【0012】
前記構成によれば、サイドシルに前方から入力された後方向衝撃荷重によって、アウタ側補強部材が後退する際、延出部は、前記本体部の側面部に係合し、本体部に対するアウタ側補強部材の車幅方向の相対移動を規制することができる。
【0013】
よって、後退するアウタ側補強部材の後端と、本体部に設けられた突出部とをより確実に係り合わせて、アウタ側補強部材から本体部への荷重伝達効率を高めることができる。
【0014】
この発明の態様として、前記突出部は、前記本体部において前後方向に延びるビードで形成されることが好ましい。
前記構成によれば、前記突出部をビードで形成することで、前記本体部の前後方向の荷重伝達効率を高めることができる。
【0015】
この発明の態様として、前記アウタ側補強部材の前記側面部には、前記後端から前方へ連続して延びる補強部材横稜線が、前記突出部において前後方向に延びる突出部横稜線と略同じ高さに形成されることが好ましい。
【0016】
前記構成によれば、サイドシルに前方から後方向衝撃荷重が入力された際、前記アウタ側補強部材が後退することで、同じ高さに有する補強部材横稜線と突出部横稜線とが車両前後方向に連続する。
【0017】
すなわち、補強部材横稜線によって剛性が向上した前記アウタ側補強部材の側面部の後端と、突出部横稜線突出部によって剛性が向上した本体部の突出部の前端とがしっかりと係り合う(当接する)。従って、アウタ側補強部材から本体部への荷重伝達効率を高めることができる。
【0018】
この発明の態様として、前記本体部の上面部と側面部との境界部には、前記本体部の前端から後方向へ延びるアウタ横稜線が形成され、前記延出部は、前記本体部の前記上面部と前記側面部とに係合可能に前記アウタ横稜線に沿って後方へ延出する構成としたことが好ましい。
【0019】
前記構成によれば、サイドシルに前方から入力された後方向衝撃荷重によって、アウタ側補強部材が後退する際、延出部は、前記本体部の側面部のみならず上面部にも係合するため、本体部に対するアウタ側補強部材の車幅方向の相対移動のみならず上下方向の相対移動も規制することができる。
【0020】
これにより、アウタ側補強部材が後退する際、補強部材横稜線と突出部横稜線との高さの相対位置がずれることを抑制し、補強部材横稜線と突出部横稜線とを車両前後方向において、より確実に連続させることができる。
【0021】
この発明の態様として、前記突出部には、車両上下方向に互いに離間して車幅方向へ延びる一対の横壁部を有し、一対の横壁部のうち、少なくとも一方の横壁部と前記アウタ側補強部材の前記後端とは車両正面視で重複することが好ましい。
【0022】
前記構成によれば、車両正面視で一対の横壁部のうち、少なくとも一方の横壁部と前記アウタ側補強部材の前記後端とは重複するため、サイドシル前端部に後方向衝撃荷重が入力された際、後退したアウタ側補強部材と本体部とを確実に係合させることができる。
従って、アウタ側補強部材から本体部への荷重伝達効率を高めることができる。
【0023】
この発明の態様として、前記アウタ側補強部材における、前記突出部の前記一対の横壁部のうち少なくとも一方の横壁部と同じ高さ部位には、前記後端から前方へ凹む後端凹部が形成されることが好ましい。
【0024】
前記構成によれば、サイドシルの前方から入力された車両後方向への衝撃荷重によって前記アウタ側補強部材が後退する際、前記後端凹部の周縁は、前記突出部に備えた一方の横壁部のうち後端凹部と同じ高さに有する横壁部に係合する。
【0025】
よって、後退する前記アウタ側補強部材の前記後端と、前記本体部に設けられた突出部とをより確実に係り合わせて、前記アウタ側補強部材から前記本体部への荷重伝達効率を高めることができる。
【0026】
この発明の態様として、前記アウタ側補強部材は前記前端部に対して前記閉断面側から備えることが好ましい。
【0027】
前記構成によれば、前記アウタ側補強部材を前記前端部に対して前記閉断面の外側から備える場合と比してアウタ側補強部材をコンパクト化、簡易形状化できるため、重量の増加を抑制できる。また、前記アウタ側補強部材を成形により形成する場合には、成形性を高めることができる。
【0028】
この発明の態様として、前記サイドシルアウタの前記前端部と前記本体部との車両前後方向の境界は、前記サイドシルから上方へ延びるヒンジピラーの前後幅の間に位置することが好ましい。
【0029】
前記構成によれば、ヒンジピラーの下部は、前記前端部と前記本体部とに跨ってサイドシルに接続されるため、サイドシル前端部に後方向衝撃荷重が入力された際、前記前端部から車両後方の前記本体部へと確実に荷重伝達することができる。
【発明の効果】
【0030】
前記構成によれば、質量およびコストを増大させることなく、サイドシル前端部に入力される後方向衝撃荷重をサイドシル後方へ伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図3】
図2のA-A線矢視に沿った要部を上方かつ車室側から視た斜視断面図
【
図4】サイドシルアウタ前端部およびその周辺を車室側から視た斜視図
【
図5】
図2のA-A線矢視に沿った要部を後方かつ車室外側から視た斜視断面図
【
図6】サイドシルインナ前端部およびその周辺を車室外側から視た斜視図
【
図10】スモールオーバーラップ衝突時の車両のサイドシル前端部の挙動をシミュレーション解析した結果を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
なお、本実施形態の車両の下部車体構造1の側面は、略左右対称形状であるため、車両下部の右側の構造に基づいて説明する。図中、矢印Fは車両前方、矢印Uは車両上方、矢印OUTは車幅方向外側(車室外側)、矢印INは車幅方向内側(車室側)を夫々示すものとする。また、図中、「×」印はスポット溶接個所を示す。
【0033】
図1、
図2に示すように、本実施形態の下部車体構造1は、車室の底面の車幅方向の中央において上方へ突出するとともに前後方向に延びるトンネル部2が設けられている。車室の底面におけるトンネル部2に対して左右各側には、車室の床面を形成する板状のフロアパネル3(
図1参照)が水平に配設される。車室の底面における左右各側の端部には、前後方向に延びるサイドシル10を備えている。左右各側のフロアパネル3は、車幅方向外側端部が左右夫々に対応するサイドシル10の車幅方向内面に接合される。なお、
図1に示すように、フロアパネル3には、前後方向に延びるフロアフレーム4と車幅方向に延びるクロスメンバ5が設けられている。
【0034】
図1、
図2に示すように、車体におけるサイドシル10よりも前方には、前輪としてのホイール6が設けられている。ホイール6は、サイドシル10の前端よりも前方に配置されるとともに、サイドシル10と少なくとも一部が車幅方向において一致する位置に配置される。
【0035】
図1に示すように、本実施形態において、ホイール6は、車幅方向内端がサイドシル10の車幅方向内端よりも車幅方向外側に配置され、サイドシル10に対して車幅方向外側寄りの位置に配置されている。なお、図示省略するがホイール6の上側過半部は、アーチ形状のホイールハウスにより覆われている。
【0036】
サイドシル10の前部には、車室のサイドドア開口の前縁に沿って上下方向に延びるヒンジピラー7の下部が接合される(
図2において仮想線で示したヒンジピラー7参照)。なお、ヒンジピラー7の下部、すなわち、サイドシル10の前部への付け根部分は、下方程前後方向に末広がり状に形成される。
【0037】
ヒンジピラー7は、車幅方向内側に配置された不図示のヒンジピラーインナと、車幅方向外側に配置されたヒンジピラーアウタ7aとを備え、これら両部材を接合固定して内部に上下方向に連続して延びる不図示の閉断面を構成する。
【0038】
図1~
図7に示すように、サイドシル10は、車幅方向の外側に開放した断面ハット状のサイドシルインナ11と、車幅方向の内側に開放した断面ハット状のサイドシルアウタ21とを備える。サイドシル10は、
図3~
図7に示すように、車幅方向内側に位置するサイドシルインナ11と車幅方向外側に位置するサイドシルアウタ21とが協働して内部に前後方向に連続して延びる閉断面10sが形成される。
【0039】
具体的には、
図6、
図7に示すように、サイドシルインナ11は、略水平に延びるインナ側上面部12と、インナ側上面部12の車幅方向の外縁から上方に延びる上端フランジ部13と、インナ側上面部12の車幅方向の内縁から下方に延びるインナ側側面部14と、インナ側側面部14の下縁から車幅方向の外側に延びるインナ側下壁部15と、インナ側下壁部15の車幅方向外縁から下方に延びる下端フランジ部16とを有する。
【0040】
図4、
図7に示すように、サイドシルアウタ21は、略水平に延びるアウタ側上面部22と、アウタ側上面部22の車幅方向の外縁から上方に延びる上端フランジ部23と、アウタ側上面部22の車幅方向の外縁から下方に延びるアウタ側側面部24と、アウタ側側面部24の下縁から車幅方向の内側に延びるアウタ側下壁部25と、アウタ側下壁部25の車幅方向の内縁から下方に延びる下端フランジ部26とを有する。
【0041】
サイドシル10は、長手方向の直交断面視においてサイドシルインナ11とサイドシルアウタ21との各上端フランジ部13,23同士が溶接等により接合されるとともに各下端フランジ部16,26同士が溶接等により接合されることでサイドシル10の内部に上述した閉断面10sが形成される。
【0042】
上述したサイドシル10は、
図1~
図6に示すように、サイドシル10の前端から後方へ延びるサイドシル前端部31と、サイドシル前端部31の後端よりも略全体が後方に配置されたサイドシル本体部41とを備えている。
図2に示すように、サイドシル前端部31とサイドシル本体部41との境界部は、ヒンジピラー7の前後幅の間、当例ではヒンジピラー7の前後方向の略中間位置に相当する。
【0043】
図1~
図5、
図9に示すように、サイドシルアウタ21は、サイドシルアウタ前端部27とサイドシルアウタ本体部28とを備えている。
図1、
図3、
図5、
図6、
図9に示すように、サイドシルインナ11は、サイドシルインナ前端部17とサイドシルインナ本体部18とを備えている。サイドシルアウタ前端部27とサイドシルインナ前端部17とでサイドシル前端部31が形成されるとともに、サイドシルアウタ本体部28とサイドシルインナ本体部18とでサイドシル本体部41が形成される。
【0044】
図3~
図5に示すように、サイドシルアウタ前端部27とサイドシルアウタ本体部28との境界部において、サイドシルアウタ前端部27の後端フランジ32とサイドシルアウタ本体部28の前端フランジ42とは互いに板厚方向に重ね合わせた状態でスポット溶接等により接合される。本実施形態においては、サイドシルアウタ前端部27の後端フランジ32は、サイドシルアウタ本体部28の前端フランジ42に対して閉断面10sの外側(車幅方向外側)から接合される。
【0045】
なお、本実施形態において、サイドシルアウタ21は、
図1~
図5に示すように、サイドシルアウタ前端部27とサイドシルアウタ本体部28との少なくとも2部材で形成されるが、互いの境界部を含めて前後方向に連続する単一の部材で形成してもよい。
【0046】
一方、サイドシルインナ11は、
図1、
図3、
図5、
図6に示すように、サイドシルインナ前端部17とサイドシルインナ本体部18とを別部材で形成することなく単一の部材で形成されるが、互いの境界部を隔てた前後各側の領域を別部材で形成してもよい。
【0047】
図1、
図3~
図5、
図9に示すように、サイドシルアウタ前端部27は、サイドシルアウタ21の前壁を形成するアウタ前面部271と、アウタ前面部271より後方に位置するアウタ前端後部272とを備えている。
【0048】
アウタ前面部271およびアウタ前端後部272は、上述したように車幅方向の内側に開放した断面ハット状に形成される(
図7参照)。但し、
図4に示すように、アウタ前面部271は、アウタ前端後部272の前端から前方に向けて上下方向および車幅方向へ緩やかに縮径する椀形状に形成される。
【0049】
具体的に、
図4に示すように、アウタ前面部271には、アウタ前端後部272と同様に、アウタ側上面部22、上端フランジ部23、アウタ側側面部24a(24)、アウタ側下壁部25および下端フランジ部26を有している。但し、
図1、
図3~
図5、
図9に示すように、アウタ前面部271のアウタ側側面部24aは、アウタ前端後部272のアウタ側側面部24aの前端から前方程サイドシルアウタ21の車幅方向内端まで緩やかに傾斜する。
【0050】
図2、
図4に示すように、アウタ前面部271のアウタ側上面部22およびアウタ側下壁部25は、アウタ前端後部272のアウタ側上面部22およびアウタ側下壁部25の各前端から前方程サイドシルアウタ21の上下方向中間部付近まで緩やかに傾斜する。
【0051】
また、
図4、
図9に示すように、サイドシルアウタ前端部27は、アウタ前面部271の後端とアウタ前端後部272の前端との境界部に、該境界部に沿って上下方向に延びる稜線が形成されることがなく、前後方向へ滑らかに連続している。
【0052】
また、上述したように、サイドシルアウタ本体部28は、上述したように車幅方向の内側に開放した断面ハット状に形成される(
図4参照)。
なお、
図4に示すように、サイドシルアウタ本体部28には、アウタ側上面部22とアウタ側側面部24b(24)との境界部に沿って前後方向に延びるアウタ横稜線241が形成される。
【0053】
図3、
図4、
図9に示すように、サイドシルアウタ本体部28のアウタ側側面部24bにおける上下方向の略中間位置には、周辺に対して車幅方向内側へ突出するアウタ側突出部43が設けられている。アウタ側突出部43は、サイドシルアウタ本体部28の前端42fから後方へ連続して延びている。
【0054】
但し、アウタ側突出部43は、スモールオーバーラップ衝突時に後退する、後述するアウタ側補強部材50の後端54と係合して該アウタ側補強部材50を前端42fによって受け止め可能な前後方向の長さを有していれば、サイドシル10の後部まで延びない構成であってもよい。
【0055】
図4に示すように、アウタ側突出部43は、サイドシルアウタ本体部28のアウタ側側面部24bにおいて、周辺に対して車幅方向内側へ立ち上がる上壁部44と、上壁部44の車幅内端から下方へと縦壁状に延びる縦壁部45と、周辺に対して車幅方向内側へ縦壁部45の下端まで立ち上がる下壁部46とを有している。
すなわち、アウタ側突出部43は、サイドシルアウタ前端部27に対してアウタ側補強部材50を重ね合わせた側と同じ側(閉断面10sの内側)へ突出する。
【0056】
アウタ側突出部43の縦壁部45と上壁部44との境界部には、該境界部に沿ってアウタ側突出部43の前端42fから後方へ連続して延びる上側横稜線47が形成されるとともに、アウタ側突出部43の縦壁部45と下壁部46との境界部には、該境界部に沿ってアウタ側突出部43の前端42fから後方へ連続して延びる突出部下側横稜線48が形成される。
【0057】
図3、
図5、
図6、
図8、
図9に示すように、サイドシルインナ前端部17は、サイドシルインナ11の前壁を形成するインナ前面部171と、インナ前面部171より後方に位置するインナ前端後部172とを備えている。
【0058】
図6に示すように、サイドシルインナ11は、インナ前面部171が車幅方向および上下方向に延びる縦壁状に形成されるのに対してインナ前端後部172およびサイドシルインナ本体部18(
図9参照)に亘って、上述したように車幅方向の外側に開放した断面ハット状に形成される。
【0059】
具体的には、サイドシルインナ11は、インナ前面部171の上端からインナ側上面部12が、インナ前面部171の車幅方向内端からインナ側側面部14が、インナ前面部171の下端からインナ側下壁部15が、夫々後方へ連続して延びている。
【0060】
そして、
図5、
図6、
図8、
図9に示すように、インナ前面部171とインナ側側面部14との境界部には、該境界部に沿って上下方向に延びるインナ縦稜線141が形成される。なお、本実施形態においては、インナ前面部171とインナ前端後部172とは互いに別部材で形成され、互いの境界部において端部同士を板厚方向に重ね合わせた状態で溶接等により接合される(
図3、
図5、
図6参照)。
【0061】
また、
図6、
図7に示すように、サイドシルインナ11には、インナ側上面部12とインナ側側面部14との境界部に沿って前後方向に延びるインナ横稜線142が形成される。
【0062】
また、
図3~
図6、
図8、
図9に示すように、上述したインナ前面部171の車幅方向外端とアウタ前面部271の車幅方向内端との夫々には、前方に突出する前端フランジ部19,29が形成され、夫々の前端フランジ部19,29は互いに車幅方向に重ね合わせた状態で溶接等により接合される。
【0063】
図3~
図5、
図7~
図9に示すように、サイドシルアウタ前端部27には、該サイドシルアウタ前端部27を補強するアウタ側補強部材50を備えている。アウタ側補強部材50は、サイドシルアウタ前端部27に沿った形状を有している。
具体的には、
図4等に示すように、アウタ側補強部材50は、椀形状のサイドシルアウタ前端部27に対応して椀形状に形成され、サイドシルアウタ前端部27のアウタ側側面部24aに沿ったアウタ側側面補強部51、アウタ側下壁部25に沿ったアウタ側下壁補強部52およびアウタ側上面部22に沿ったアウタ側上壁補強部53を備えている。
【0064】
アウタ側補強部材50は、サイドシルアウタ前端部27に対して略全体が重合するようにサイドシル10の閉断面10sの内側から溶接等により接合される。
【0065】
図4等に示すように、アウタ側補強部材50は、サイドシルアウタ前端部27における、前端フランジ部29を除く前後方向の略全長に亘って形成され、後端54の略全体がサイドシルアウタ本体部28の前端42fより前方に位置している。
【0066】
図3~
図5、
図7、
図8に示すように、アウタ側補強部材50の後端54の上部には、サイドシルアウタ本体部28の前端42fよりも後方へ延出する延出部33が設けられている。延出部33は、サイドシルアウタ本体部28のアウタ横稜線241に沿って直線状に延出している(
図4参照)。
【0067】
図4等に示すように、延出部33は、アウタ側補強部材50のアウタ側側面補強部51の後端54から後方へ延出する延出部縦壁34と、アウタ側補強部材50のアウタ側上壁補強部53の後端54から後方へ延出する延出部上壁35とを備えている。延出部縦壁34と延出部上壁35とは、延出部縦壁34の上端と延出部上壁35の車幅方向外端とが一体に形成され、延出方向の直交断面視で略L字形状に形成されている。
【0068】
延出部33の延出部縦壁34と延出部上壁35とは、何れもサイドシルアウタ本体部28の前端42fよりも後方へ延出する。延出部縦壁34は、サイドシルアウタ本体部28のアウタ側側面部24bに対して閉断面10sの内側(すなわち車幅方向内側)から隣接して配置されるとともに、延出部上壁35は、サイドシルアウタ本体部28のアウタ側上面部22に対して閉断面10sの内側(すなわち下側)から隣接して配置される。
【0069】
すなわち、延出部33は、延出部上壁35が下方からサイドシルアウタ本体部28のアウタ側上面部22に重合(係合)するとともに、延出部縦壁34が車幅方向内側からサイドシルアウタ本体部28のアウタ側側面部24bに重合(係合)する。
なお、
図3、
図4に示すように、延出部33は、下端がサイドシルアウタ本体部28のアウタ側突出部43の上壁部44よりも上方に配置される。
【0070】
また、
図3、
図4、
図7の特に
図7に示すように、サイドシルアウタ本体部28のアウタ側側面部24bの上下方向における、アウタ側突出部43以外の部位は、アウタ側補強部材50のアウタ側側面補強部51の後端54よりも車幅方向外側に位置する。これに対して、サイドシルアウタ本体部28のアウタ側側面補強部51におけるアウタ側突出部43は、少なくとも縦壁部45がアウタ側補強部材50のアウタ側側面補強部51の後端54よりも車幅方向内側に位置する。これにより、
図7に示すように、上述したアウタ側突出部43は、上壁部44と下壁部46との各前端42f(
図4参照)が、アウタ側補強部材50のアウタ側側面補強部51の後端54と正面視で重複する(
図7中の領域Z1、Z2参照)。
【0071】
さらにまた、
図3、
図4に示すように、アウタ側補強部材50のアウタ側側面補強部51の後方かつ下部には、アウタ側補強部材50の後端54から前方へ直線状に連続して延びる補強部材横稜線55が形成される。さらに、
図4に示すように、アウタ側補強部材50の補強部材横稜線55は、サイドシルアウタ本体部28のアウタ側突出部43に有する突出部下側横稜線48と略同じ高さに形成される。
【0072】
また、
図3、
図4に示すように、アウタ側補強部材50のアウタ側側面補強部51の後部における、延出部33よりも下方かつ補強部材横稜線55よりも上方、すなわち、サイドシルアウタ本体部28のアウタ側突出部43に有する上側横稜線47と略同じ高さ位置には、後端凹部56が後端54から前方へ切り欠き状に形成されている。この後端凹部56は、サイドシルアウタ本体部28の前端42fに向けて開口している。
【0073】
また、
図3、
図5~
図9に示すように、サイドシルインナ11には、インナ側補強部材60と、インナ横稜線補強部材70(
図3、
図5、
図6、
図7、
図8参照)とを備えている。
【0074】
インナ側補強部材60は、サイドシルインナ前端部17に備え、該サイドシルインナ前端部17を補強する。インナ側補強部材60は、サイドシルインナ前端部17におけるインナ前面部171と、インナ前端後部172のインナ側側面部14とに対して、これらの間を筋交い状に連結するようにサイドシル10の閉断面10sの内側から接合される。
【0075】
具体的には、
図5、
図6、
図8、
図9等に示すように、インナ側補強部材60は、インナ前面部171と接合可能に車幅方向に沿って水平に延びるインナ側補強部材前部61と、インナ側側面部14と接合可能に前後方向に沿って水平に延びるインナ側補強部材側面部62と、インナ側補強部材側面部62の前端からインナ側補強部材前部61の車幅方向内端まで前方程車幅方向外側へ傾斜して水平に延びる筋交い部63とを備えている。インナ側補強部材60の延在方向における、インナ縦稜線141を跨ぐ部分、すなわち筋交い部63は、インナ縦稜線141に対して閉断面10sの内側へ離間して備えている。
【0076】
インナ側補強部材60の上下方向の中間位置には、車幅方向の内側へ突出するビード64が設けられている。ビード64は、
図5、
図6、
図9に示すように、インナ側補強部材60の延在方向における、少なくとも筋交い部63に、当例では、延在方向の全長に亘って連続して形成される。上述したインナ側補強部材60はアウタ側補強部材50よりも高強度に形成される。
なお、
図9は、サイドシル前端部31をビード64の高さにおいて切断した水平断面図である。
【0077】
また、
図6、
図8等に示すように、上述したインナ横稜線補強部材70は、インナ側上面部12とインナ側側面部14との境界部に位置するインナ横稜線142に沿って延在する。さらに、インナ横稜線補強部材70は、インナ側補強上壁71とインナ側補強縦面72とを備え、インナ側補強上壁71の車幅方向内端とインナ側補強縦面72の上端とが一体に形成された長手方向の直交断面がL字形状に形成される。
【0078】
インナ横稜線補強部材70は、サイドシルインナ11のインナ側上面部12とインナ側側面部14とのコーナー部において、インナ側上面部12に対してインナ側補強上壁71を接合するとともに、インナ側側面部14に対してインナ側補強縦面72を接合することで、これらインナ側上面部12とインナ側側面部14との境界部に位置するインナ横稜線142を補強する。
【0079】
上述した本実施形態の車両の下部車体構造1は、
図1、
図2に示すように、車両の下部且つ車幅方向外側に配置されるサイドシル10と、サイドシルアウタ21の前方に位置するホイール6を備えている。
【0080】
サイドシル10は、車幅方向内側に位置するサイドシルインナ11と、車幅方向外側に位置するサイドシルアウタ21とが協働して車両前後方向に延びる閉断面10s(
図3参照)を形成する。また、サイドシルアウタ21は、サイドシルアウタ前端部27とサイドシルアウタ本体部28とを有する。
【0081】
さらに、本実施形態の車両の下部車体構造1は、
図3~
図5、
図7~
図9に示すように、サイドシルアウタ前端部27(サイドシルアウタ21の前端部)におけるアウタ前面部271(前面部)およびアウタ前端後部272のアウタ側側面部24a(側面部)に沿った形状を有するアウタ側補強部材50を備えている。アウタ側補強部材50は、サイドシルアウタ前端部27に対して閉断面10sの内側から略重ね合わせて取り付けられている。
【0082】
さらにまた、本実施形態の車両の下部車体構造1は、
図3、
図4、
図9に示すように、サイドシルアウタ本体部28のアウタ側側面部24bの前端42fが、アウタ側補強部材50のアウタ側側面補強部51(側面部)の後端54と車両前後方向において対向する。
【0083】
加えて、サイドシルアウタ本体部28のアウタ側側面部24bは、
図7等に示すように、車幅方向においてアウタ側補強部材50のアウタ側側面補強部51の後端54よりも、車幅方向外側(詳しくは、サイドシルアウタ前端部27のアウタ側側面部24aの側)に配置されるとともに、前記後端54に対して、車幅方向内側(サイドシルアウタ前端部27のアウタ側側面部24aの側と反対側)まで突出するアウタ側突出部43を有することを特徴とする。
すなわち、アウタ側突出部43は、アウタ側補強部材50のアウタ側側面補強部51の後端54を車幅方向に跨ぐように形成されている(
図7参照)。
【0084】
これにより、サイドシルアウタ本体部28のアウタ側突出部43は、サイドシル前端部31に後方向への衝撃荷重が入力された際、前端42fが後退したアウタ側補強部材50の後端54と係合するように構成される。
【0085】
上述した車両の下部車体構造1の作用効果を
図10を用いて説明する。
図10は、スモールオーバーラップ衝突の際に、衝撃荷重が入力したサイドシルアウタ前端部27の挙動をシミュレーション解析した結果を
図8中のD-D線矢視断面に基づいて示した断面図である。また、
図10(a)は衝突初期、
図10(b)は衝突中期、
図10(c)は衝突後期をそれぞれ示している。同図中のドットは、応力分布のイメージを示し、ドットが濃い部分ほど応力(衝突エネルギー)が高いことを示している。
【0086】
スモールオーバーラップ衝突の際に後退するホイール6(
図10においては省略)が主にサイドシルアウタ前端部27に衝突することにより、
図10(a)に示すように、サイドシルアウタ前端部27には車両後方への衝突荷重が入力される。ここで、サイドシルアウタ前端部27はアウタ側補強部材50を備えているため、形状を保持しつつアウタ側補強部材50と共に後方へと変位する。
【0087】
そして
図10(b)に示すように、後退するアウタ側補強部材50の後端54は、サイドシルアウタ本体部28に設けられたアウタ側突出部43の前端42fに当接することで互いに係り合う。なお、
図10(b)は、後退するアウタ側補強部材50の後端54とアウタ側突出部43の前端42fとが当接した直後の状態を示す。
【0088】
すなわち、特に
図10(b)中の領域X1および
図10(c)中の領域X2に示すように、アウタ側補強部材50の後端54とアウタ側突出部43の前端42fとの係合部分において応力が集中し、アウタ側補強部材50の後端54からサイドシルアウタ本体部28に設けられたアウタ側突出部43の前端42fへと荷重伝達がなされる。
【0089】
よって、
図10(c)に示すように、サイドシルアウタ前端部27は、前方から入力された衝突荷重によって潰れきる前に衝突荷重をアウタ側補強部材50を介して後方に位置するサイドシルアウタ本体部28へと効率よく伝達することができる。
【0090】
また、アウタ側補強部材50は、サイドシルアウタ21におけるサイドシルアウタ前端部27よりも後方に至るまで設けずとも、前方から入力された衝突荷重を後方に位置するサイドシルアウタ本体部28を利用して後方へと効率よく伝達できるため、質量、コストの増大を抑制できる。
【0091】
従って、質量およびコストを増大させることなく、サイドシル前端部31に前方から入力される衝撃荷重をサイドシル10の後方へと効率よく伝達することができる。
【0092】
この発明の態様として、
図3~
図5、
図7、
図8に示すように、アウタ側補強部材50のアウタ側側面補強部51には、サイドシルアウタ本体部28の前端42fより後方へ延出する延出部33が設けられたものである。
【0093】
前記構成によれば、サイドシル前端部31に入力された車両後方への衝撃荷重によってアウタ側補強部材50が後退する際、延出部33は、サイドシルアウタ本体部28のアウタ側側面部24b(側面部)に車幅方向において係合し、サイドシルアウタ本体部28に対するアウタ側補強部材50の車幅方向の相対移動を規制することができる。
【0094】
よって、後退するアウタ側補強部材50の後端54と、サイドシルアウタ本体部28に設けられたアウタ側突出部43の前端42fとをより確実に係り合わせて、アウタ側補強部材50からサイドシルアウタ本体部28への荷重伝達効率を高めることができる。
【0095】
この発明の態様として、
図3、
図4、
図8、
図9に示すように、アウタ側突出部43は、サイドシルアウタ本体部28において前後方向に連続して延びるビード状に形成されたものである。
このように、アウタ側突出部43をビード状に形成することで、サイドシルアウタ本体部28の前後方向の荷重伝達効率を高めることができる。
【0096】
図4に示すように、アウタ側補強部材50のアウタ側側面補強部51には、後端54から前方へ連続して延びる補強部材横稜線55が、アウタ側突出部43において前後に延びる突出部下側横稜線48(突出部横稜線)と略同じ高さに形成されたものである。
【0097】
前記構成によれば、サイドシル前端部31に後方向への衝撃荷重が入力された際、アウタ側補強部材50が後退することで、
図10(b)(c)に示すように、互いに同じ高さに有する補強部材横稜線55と突出部下側横稜線48とが車両前後方向に連続する。
【0098】
すなわち、補強部材横稜線55によって剛性が向上したアウタ側補強部材50のアウタ側側面補強部51の後端54と、突出部下側横稜線48によって剛性が向上したサイドシルアウタ本体部28のアウタ側突出部43の前端42fとがしっかりと係り合う(当接する)。従って、アウタ側補強部材50からサイドシルアウタ本体部28への荷重伝達効率を高めることができる。
【0099】
この発明の態様として、
図4、
図7に示すように、サイドシルアウタ本体部28のアウタ側上面部22とアウタ側側面部24bとの境界部には、前後方向に延びるアウタ横稜線241が形成され、
図3、
図4、
図7、
図8に示すように、延出部33は、サイドシルアウタ本体部28のアウタ側上面部22とアウタ側側面部24bとに係合可能にアウタ横稜線241に沿って後方へ延出する構成としたものである。
【0100】
前記構成によれば、サイドシル前端部31に入力された後方向への衝撃荷重によって、アウタ側補強部材50が後退する際、延出部33は、サイドシルアウタ本体部28のアウタ側側面部24bのみならずアウタ側上面部22にも係合することで、サイドシルアウタ本体部28に対するアウタ側補強部材50の車幅方向の相対移動のみならず上下方向の相対移動も規制することができる。
【0101】
これにより、アウタ側補強部材50が後退する際、補強部材横稜線55と突出部下側横稜線48との高さの相対位置がずれることを抑制し、補強部材横稜線55と突出部下側横稜線48とを、より確実に車両前後方向に連続させることができる。
【0102】
この発明の態様として、
図3、
図4、
図7に示すように、アウタ側突出部43には、車両上下方向に互いに離間して車幅方向へ延びる上壁部44および下壁部46(一対の横壁部)を有し、
図7等に示すように、上壁部44と下壁部46とは何れもアウタ側補強部材50の後端54と車両正面視で重複するものである(
図7中の領域Z1、Z2参照)。
【0103】
前記構成によれば、上壁部44と下壁部46とは何れもアウタ側補強部材50の後端54と車両正面視で重複するため、サイドシル前端部31に後方向への衝撃荷重が入力された際、後退したアウタ側補強部材50の後端54とサイドシルアウタ本体部28のアウタ側突出部43の前端42fとを確実に係合(当接)させることができる。
【0104】
従って、アウタ側補強部材50からサイドシルアウタ本体部28への荷重伝達効率を高めることができる。
【0105】
この発明の態様として、
図3、
図4、
図10(a)に示すように、アウタ側補強部材50における、アウタ側突出部43に備えた上壁部44の少なくとも一部と上下方向に一致する高さ部位には、後端54から前方へ凹む後端凹部56が形成されたものである。
【0106】
前記構成によれば、サイドシル前端部31に入力された車両後方への衝撃荷重によってアウタ側補強部材50が後退する際、後端凹部56の周縁は、
図10(b)に示すように、アウタ側突出部43に備えた上壁部44に係合する。
【0107】
よって、後退するアウタ側補強部材50の後端54と、サイドシルアウタ本体部28に設けられたアウタ側突出部43とをより確実に係り合わせて、アウタ側補強部材50からサイドシルアウタ本体部28への荷重伝達効率を高めることができる。
【0108】
この発明の態様として、
図2に示すように、サイドシルアウタ前端部27とサイドシルアウタ本体部28との前後方向の境界は、サイドシル10から上方へ延びるヒンジピラー7の前後幅の間に位置する。
【0109】
前記構成によれば、ヒンジピラー7の下部は、サイドシルアウタ前端部27とサイドシルアウタ本体部28とに跨ってサイドシル10に接続されるため、サイドシル前端部31に後方向への衝撃荷重が入力された際、サイドシル前端部31から車両後方に位置するサイドシルアウタ本体部28へとより確実に荷重伝達することができる。
【0110】
また、上述した実施形態においては、
図3~
図5、
図7~
図9に示すように、アウタ側補強部材50はサイドシルアウタ前端部27に対して閉断面10sの内側から備えたものである。
【0111】
前記構成によれば、アウタ側補強部材50をサイドシルアウタ前端部27に対して閉断面10sの外側から備える場合と比してアウタ側補強部材50をコンパクト化、簡易形状化できるため、重量の増加を抑制できる。また、アウタ側補強部材50を成形により形成する場合においても、アウタ側補強部材50をサイドシルアウタ前端部27に対して閉断面10sの外側から備える場合と比して材料を引き延ばす必要がないため、容易に成形することができる。
【0112】
但し、本発明は、上述した実施形態に限定せず、例えば図示省略するが、アウタ側補強部材50をサイドシルアウタ前端部27に対して閉断面10sの外側から備えた構成についても排除しない。
【0113】
この場合、延出部33についても、サイドシルアウタ本体部28に対して閉断面10sの外側に配置されることになる。また、アウタ側突出部43は、サイドシルアウタ本体部28に対して閉断面10sの外側へ突出される。詳しくは、アウタ側突出部43は、アウタ側補強部材50のアウタ側側面補強部51の後端54に対して、車幅方向においてサイドシルアウタ前端部27の側からサイドシルアウタ前端部27の側と反対側(車幅方向外側)へ突出された構成となる。
【0114】
このように、この発明は、上述した実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
【符号の説明】
【0115】
1…車両の下部車体構造
6…ホイール
7…ヒンジピラー
10…サイドシル
10s…閉断面
11…サイドシルインナ
21…サイドシルアウタ
22…アウタ側上面部(本体部の上面部)
24a(24)…サイドシルアウタ前端部のアウタ側側面部(サイドシルアウタの前端部の側面部)
24b(24)…サイドシルアウタ本体部のアウタ側側面部(サイドシルアウタの本体部の側面部)
27…サイドシルアウタ前端部(サイドシルアウタの前端部)
28…サイドシルアウタ本体部(サイドシルアウタの本体部)
33…延出部
42f…サイドシルアウタ本体部の前端(本体部の前端)
43…アウタ側突出部(突出部)
44,46…アウタ側突出部の上壁部および下壁部(一対の横壁部)
45…縦壁部
48…突出部下側横稜線(突出部横稜線)
50…アウタ側補強部材
51…アウタ側補強部材のアウタ側側面補強部(アウタ側補強部材の側面部)
54…アウタ側補強部材の後端
55…補強部材横稜線
56…後端凹部
241…アウタ横稜線
271…アウタ前面部(サイドシルアウタの前面部)