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特開2023-172275粉体転写ローラ装置及び粉体転写方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172275
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】粉体転写ローラ装置及び粉体転写方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/08 20060101AFI20231129BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20231129BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20231129BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20231129BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20231129BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20231129BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20231129BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B05C1/08
H01M4/04 Z
H01M4/139
B05C11/10
B05D7/24 301A
B05D1/28
B05D7/00 A
B05D3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083959
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】佐々 幸次朗
(72)【発明者】
【氏名】中島 章五
【テーマコード(参考)】
4D075
4F040
4F042
5H050
【Fターム(参考)】
4D075AC19
4D075AC28
4D075AC29
4D075AC34
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC94
4D075AE01
4D075BB05X
4D075BB05Y
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DA15
4D075DA20
4D075DC13
4D075DC18
4D075DC19
4D075EA02
4D075EA10
4F040AA22
4F040AB15
4F040AC01
4F040BA25
4F040CB01
4F040CB06
4F040CB16
4F040CB26
4F040CB29
4F040CB36
4F042AA22
4F042AB03
4F042BA05
4F042BA12
4F042BA25
4F042CA01
4F042CB08
4F042CC02
4F042CC07
4F042DF24
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB09
5H050GA22
5H050GA29
5H050GA30
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】粉体材料を粉体の状態のままで所望の形状に成形する技術を提供する。
【解決手段】粉体転写ローラ装置(100)は、周面の一部に凹部を設けた第1ローラ(31)と、第1ローラ(31)と対向して配置された全周面が平坦な第2ローラ(41)であって、第1ローラ(31)と当該第2ローラ(41)との間に供給された粉体(25)を第1ローラ(31)の凹部(32)との間で圧密する第2ローラ(41)と、第1ローラ(31)と第2ローラ(41)との間に粉体(25)を供給する粉体供給装置(21)と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面の一部に凹部を設けた第1ローラと、
前記第1ローラと対向して配置された全周面が平坦な第2ローラであって、前記第1ローラと当該第2ローラとの間に供給された粉体を前記第1ローラの前記凹部との間で圧密する第2ローラと、
前記第1ローラと前記第2ローラとの間に前記粉体を供給する粉体供給装置と、
を備える粉体転写ローラ装置。
【請求項2】
前記第1ローラの周速度は前記第2ローラの周速度よりも大きい、請求項1に記載の粉体転写ローラ装置。
【請求項3】
前記第1ローラと当接して移動するシート部材をさらに備え、前記シート部材の移動速度は、前記第1ローラの周速度よりも大きい、請求項2に記載の粉体転写ローラ装置。
【請求項4】
前記第1ローラと対向して配置された全周面が平坦な第3ローラであって、前記第1ローラの前記凹部に付着した前記粉体が転写される第3ローラを更に備える、請求項2に記載の粉体転写ローラ装置。
【請求項5】
前記第3ローラの周速度は前記第1ローラの周速度よりも大きい、請求項4に記載の粉体転写ローラ装置。
【請求項6】
前記第3ローラと当接して移動するシート部材をさらに備え、前記シート部材の移動速度は、前記第3ローラの周速度よりも大きい、請求項4又は5に記載の粉体転写ローラ装置。
【請求項7】
前記第3ローラと対向して配置された支持ローラであって、前記第3ローラと当該支持ローラとの間に配置された前記シート部材を前記第3ローラに押圧して支持する支持ローラを更に備える、請求項6に記載の粉体転写ローラ装置。
【請求項8】
前記粉体は蓄電池の電極材料粉体であり、前記第1ローラの前記凹部は前記蓄電池の電極の形状と大きさに対応して形成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の粉体転写ローラ装置。
【請求項9】
周面の一部に凹部を設けた第1ローラと、前記第1ローラと対向して配置された全周面が平坦な第2ローラとの間に粉体を供給する供給ステップと、
前記第1ローラに付着した前記粉体を、第1ローラに当接して移動するシート部材に転写する転写ステップと、を含み、
前記供給ステップにおいて、前記第1ローラの周速度は前記第2ローラの周速度よりも大きく、
前記転写ステップにおいて、前記シート部材の移動速度は、前記第1ローラの周速度よりも大きい、
粉体転写方法。
【請求項10】
コンピュータに、
周面の一部に凹部を設けた第1ローラと、前記第1ローラと対向して配置された全周面が平坦な第2ローラとの間に粉体を供給する供給ステップと、
前記第1ローラに付着した前記粉体を、第1ローラに当接して移動するシート部材に転写する転写ステップと、を実行させ、
前記供給ステップにおいて、前記第1ローラの周速度は前記第2ローラの周速度よりも大きく、
前記転写ステップにおいて、前記シート部材の移動速度は、前記第1ローラの周速度よりも大きい、
プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体転写ローラ装置及び粉体転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末、電気自動車等に用いられる二次電池としてリチウムイオン電池が知られている。リチウムイオン電池は、リチウムイオン含有遷移金属酸化物を正極に用い、炭素系材料を負極活物質に用いている。正極と負極は、リチウムイオンを含む電解質中にセパレータを挟んで配置されており、この正極と負極の間をリチウムイオンが電解質中を移動することにより、充電と放電が行われる。
【0003】
正極の材料は、活物質としてコバルト、マンガン、ニッケル、リン酸鉄等の酸化物を含むリチウム化合物が用いられ、負極の材料は活物質としてグラファイト、カーボン等が用いられる。このような材料を用いた正極又は負極は、主として、上記の材料と導電助剤、バインダ等を溶媒中に分散させたスラリー状の電極材料を集電箔に塗布し、乾燥させることで製造されてきた。例えば、特許文献1には、集電箔の上方に離隔して設けられ、集電箔の上面に塗布されたスラリー状の電極材料を乾燥させる乾燥装置と、集電箔と接触して設けられ、乾燥装置と並行して電極材料を加熱する加熱装置と、を備える電極板の製造装置が開示されている。このような製造装置を用いることにより、電極材料の急激な温度上昇が抑えられるため、マイグレーションの発生を抑制することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-91726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術は、スラリー状の電極材料を加熱して乾燥させる必要がある。乾燥方法としては、特許文献1に開示された方法も含めて、電気的乾燥方法が一般的に用いられている。しかしながら、電気的乾燥方法では、大量の電力を消費するという問題がある。そのため、電極材料をスラリー状にすることなく、粉体状のままで電極板に加工することが望まれている。
【0006】
上記の課題に鑑み、本発明の一態様は、粉体材料を粉体の状態のままで所望の形状に成形する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る粉体転写ローラ装置は、周面の一部に凹部を設けた第1ローラと、前記第1ローラと対向して配置された全周面が平坦な第2ローラであって、前記第1ローラと当該第2ローラとの間に供給された粉体を前記第1ローラの前記凹部との間で圧密する第2ローラと、前記第1ローラと前記第2ローラとの間に前記粉体を供給する粉体供給装置と、を備える。
【0008】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る粉体転写方法は、周面の一部に凹部を設けた第1ローラと、前記第1ローラと対向して配置された全周面が平坦な第2ローラとの間に粉体を供給する供給ステップと、前記第1ローラに付着した前記粉体を、第1ローラに当接して移動するシート部材に転写する転写ステップと、を含み、前記供給ステップにおいて、前記第1ローラの周速度は前記第2ローラの周速度よりも大きく、前記転写ステップにおいて、前記シート部材の移動速度は、前記第1ローラの周速度よりも大きい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、粉体材料を粉体の状態のままで所望の形状に成形する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態1に係る粉体転写ローラ装置の制御部を含む制御構成図である。
図2】実施形態1に係る粉体転写ローラ装置の側面図である。
図3】実施形態1に係る粉体転写ローラ装置の斜視図である。
図4】実施形態1の変形例に係る粉体転写ローラ装置の側面図である。
図5】実施形態1に係る粉体転写方法の流れを示すフローチャートである。
図6】本発明の実施形態2に係る粉体転写ローラ装置の制御部を含む制御構成図である。
図7】実施形態2に係る粉体転写ローラ装置の側面図である。
図8】実施形態2に係る粉体転写方法S2の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る粉体転写ローラ装置100の制御部1を含む制御構成図である。図2は、本実施形態に係る粉体転写ローラ装置100の側面図である。本実施形態に係る粉体転写ローラ装置100は、粉体を所定の形状でシート部材に転写するローラ転写装置である。本実施形態の粉体とは、粉末状又は粒体状の物質を指す。粉体の大きさは特に限定されないが、数ミクロンから数百ミクロン程度の粒径のものが好ましい。粉体の形状は特に限定されず、球状、棒状、又は不定形等でもよい。なお、粉体はローラに付着する性質を有することが好ましい。粉体の材質は特に限定されないが、本実施形態においては、蓄電池の正極又は負極の電極材料となる電極材料粉体である。具体的には、前述のように、正極の材料は、コバルト、マンガン、ニッケル、リン酸鉄等の酸化物を含むリチウム化合物の活物質、導電助剤、バインダ等であり、負極の材料はグラファイト、カーボン等の活物質、導電助剤、バインダ等であるが、これらに限定されない。
【0012】
粉体転写ローラ装置100は、図1に示すように、ホッパー開閉装置2、第1ローラ駆動モータ3、第2ローラ駆動モータ4と、これらを制御する制御部1を備えている。図2に示すように、ホッパー開閉装置2は、第1ローラ31と第2ローラ41の上部に配置されているホッパー(粉体供給装置)21の供給口を開閉する装置である(図示せず)。ホッパー21の供給口を開くと、下方に設置された第1ローラ31と第2ローラ41との間に粉体25が供給される。第1ローラ31は第1ローラ駆動モータ3(図示せず)により駆動され、第2ローラ41は第2ローラ駆動モータ4(図示せず)により駆動される。ホッパー21は特許請求の範囲に記載した粉体供給装置の1種であるが、粉体供給装置はホッパー21に限定されない。なお、図2には制御部1は図示していない。
【0013】
図1に示すように、制御部1は、プロセッサ11とメモリ12とを備えている。制御部1は、ホッパー開閉装置2、第1ローラ駆動モータ3、第2ローラ駆動モータ4を制御する。
【0014】
メモリ12は、一例として、各種の揮発性のRAM(Random Access Memory)及び不揮発性のROM(Read Only Memory)等から構成される。ROMには、各種のプログラムが記憶されている。各種のプログラムとは、例えば、ホッパー開閉装置制御プログラム、第1ローラ駆動モータ制御プログラム、及び第2ローラ駆動モータ制御プログラム等である。
【0015】
プロセッサ11は、メモリ12のROMに記憶した各種プログラムをRAMに展開して実行することにより、ホッパー開閉装置2の制御部、第1ローラ駆動モータ3の制御部、第2ローラ駆動モータ4の制御部としての機能を実現する。プロセッサ11は、MPU(Micro Processing Unit)、CPU(Central Processing Unit)等の汎用プロセッサを用いて構成することができる。また、プロセッサ11は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はPLD(Programmable Logic Device)等の専用プロセッサを含んでいてもよい。
【0016】
図2に示すように、第1ローラ31と第2ローラ41は、ホッパー21から供給された粉体25を圧密して第1ローラ31に付着させる。第1ローラ31に付着した圧密粉体は符号71で示している。第1ローラ31に付着した圧密粉体71は、さらにシート部材60に転写される。図2では、シート部材60に転写された圧密粉体を符号72で示している。本実施形態において「粉体が転写される」とは、粉体がローラ又はシート部材に付着することを指す。なお、図2では圧密粉体71、72は厚く記載されているが、これは分かりやすくするためであって、実際の厚さを示すものではない。以下、同様である。
【0017】
第1ローラ31と第2ローラ41の材質は特に限定されない。ただし、粉体25を圧密できること、及び粉体25を付着させることができる材質であることが好ましいため、金属製であることが好ましい。
【0018】
第1ローラ31は、周面の一部に凹部32が設けられている。第2ローラ41は、第1ローラ31と対向して配置されており、その全周面が平坦である。第2ローラ41は、第1ローラ31と第2ローラ41との間に供給された粉体25を第1ローラ31の凹部32との間で圧密する。本実施形態において、圧密するとは、粉体25に圧力をかけて密度を高め、粉体25を固形化することを指す。第1ローラ31の周面と第2ローラ41の周面とは、ゼロコンマ数ミリメートル(mm)から1mm程度離間していてもよい。
【0019】
第1ローラ31に凹部32を設ける理由は次のとおりである。粉体25を第1ローラ31と第2ローラ41との間で圧密した場合、あまり強い圧力をかけて圧密すると、圧密粉体71が第1ローラ31に強固に付着してしまい、シート部材60に十分転写することができない。つまり、弱い圧力で緩く圧密された圧密粉体71だけが第1ローラ31に適度に付着し、さらに第1ローラ31からシート部材60に転写される。そのため、所定の形状の凹部32を設けて、その凹部32と第2ローラ41との間の粉体25を緩く圧密することにより、凹部32に存在する粉体25のみをシート部材60に転写することができる。そこで、所定の形状の凹部32を設けておくことで、その形状に対応した圧密粉体71がシート部材60に転写されることになる。
【0020】
以上のように構成することで、粉体25を転写に適するように弱く(緩く)圧密することができる。粉体25を緩く圧密することにより、凹部32と第2ローラ41との間に存在する粉体25が緩く圧密されてシート部材60に転写されやすくなる。なお、凹部の数は特に限定されない。凹部の周面からの深さは0.1mmから数mm程度であってもよい。
【0021】
第1ローラ31の周速度は、第2ローラ41の周速度よりも大きくなるように制御されていることが好ましい。この条件に設定することにより、圧密された圧密粉体71が第1ローラ31に付着することが促進される。逆に、第1ローラ31の周速度が第2ローラ41の周速度以下である場合、圧密粉体71が第1ローラ31に転写されにくい。第1ローラ31の周速度と第2ローラ41の周速度の比は、1.1:1から2.0:1程度であることが好ましく、1.4:1から1.6:1程度であることがより好ましい。
【0022】
また、シート部材60は第1ローラ31と当接して移動し、その移動速度(搬送速度)は、第1ローラ31の周速度よりも大きいことが好ましい。このような条件に設定することにより、圧密粉体72がシート部材60に転写されることが促進される。シート部材60の移動速度と第1ローラ31の周速度との比は、上述の第1ローラ31の周速度と第2ローラ41の周速度の比の範囲と同程度であることが好ましい。
【0023】
凹部32の形状と大きさについて説明する。図3は、実施形態1に係る粉体転写ローラ装置100の斜視図である。凹部32の形状と大きさは、製造する蓄電池の正極又は負極の形状と大きさに対応して形成されている。具体的には、一例として図3に示すように、凹部32の形状は矩形である。また、凹部32の大きさは、製造する電極材料の大きさに対応している。凹部32の深さは、製造する電極材料の厚さに対応している。つまり、シート部材60に転写された電極材料となる圧密粉体72の形状は凹部32の形状に対応しており、大きさは凹部32の大きさに対応している。ただし、転写する際に、速度が相対的に大きいローラに付着又は速度が相対的に大きいシート部材に転写されるため、回転方向又は移動方向の長さがやや長くなって転写される。そこで、凹部32の回転方向の長さは電極材料の長さよりもやや短めに設定しておくことが好ましい。なお、分かりやすくするため、図3では第2ローラ41は図示していない。
【0024】
以上のような構成により、粉体転写ローラ装置100は、蓄電池の電極材料をスラリー状にすることなく、粉体の状態から電極板を製造することができる。
【0025】
図2に戻り、シート部材60は、蓄電池の電極板の集電箔となる部材である。具体的には、シート部材60は、一例として、銅箔等の金属箔である。長尺のシート部材60は、一対の搬送ローラ64、65によって図の矢印方向に搬送される。また、シート部材60は、テンションローラ62、63でテンションを与えられている。なお、搬送ローラ64、65は、図示しない2つの搬送ローラ駆動モータによって駆動される。また、2つの搬送ローラ駆動モータは、それぞれ制御部1によって制御される。あるいは、シート部材60を巻き取る巻き取りローラを備え、巻き取りローラを回転させてシート部材60を巻き取ることでシート部材60を搬送してもよい(図示せず)。この場合、巻き取りローラが制御部1によって制御される。
【0026】
シート部材60は、第1ローラ31に対向する位置にシート部材60を挟んで配置された支持ローラ61により支持されている。支持ローラ61は、シート部材60を第1ローラに押圧して支持する。支持ローラ61は、このような構成より、圧密粉体72がシート部材60に転写されるように補助する機能を有する。支持ローラ61は、合成ゴム製、合成樹脂製又は金属製であってもよい。
【0027】
強く圧密された圧密粉体71は、シート部材60に転写されにくく、第1ローラ31に付着する。そのため、図2に示すように、第1ローラ31に残った圧密粉体を掻き取るスクレーパ33と、掻き取った圧密粉体71を回収する回収ボックス34を備えていてもよい。また、第2ローラ41に残った圧密粉体71を掻き取るスクレーパ42と、掻き取った圧密粉体71を回収する回収ボックス43を備えていてもよい。
【0028】
(変形例)
図4は、本実施形態の変形例に係る粉体転写ローラ装置100Aの側面図である。粉体転写ローラ装置100Aの構成は、粉体転写ローラ装置100の構成と比べて、第2ローラ41Aの大きさが小さい。粉体転写ローラ装置100Aのこれ以外の構成は、粉体転写ローラ装置100の構成と同じである。この変形例に示すように、第1ローラ31と第2ローラ41の大きさ(直径)は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0029】
粉体転写ローラ装置100Aにおいては、第2ローラ41Aの大きさが小さいことから、第1ローラ31と第2ローラ41Aの間の下方に、圧密されないで落下する粉体25を受ける回収ボックス(図示せず)を配置する空間を確保することが容易となる。
【0030】
(粉体転写方法S1)
次に、本実施形態に係る粉体転写方法S1について説明する。図5は、本実施形態に係る粉体転写方法S1の流れを示すフローチャートである。粉体転写方法S1は、以下のステップS11とS12を含む。まず、ステップS11において、制御部1は、ホッパー開閉装置2を制御して、周面の一部に凹部を設けた第1ローラ31と、第1ローラ31と対向して配置された全周面が平坦な第2ローラ41との間に粉体25を供給する(供給ステップ)。
【0031】
なお、制御部1は、この供給ステップS11において、第1ローラ31の周速度が第2ローラ41の周速度よりも大きくなるように制御する。これにより、供給された粉体25は、圧密されて第1ローラ31に付着する。制御部1、第1ローラ31、第2ローラ41等の構成は粉体転写ローラ装置100で説明したとおりである。
【0032】
次に、ステップS12において、制御部1は、第1ローラ31に付着した粉体(圧密粉体)71を、第1ローラ31に当接して移動するシート部材60に転写する(転写ステップ)。
【0033】
具体的には、制御部1は、この転写ステップS12において、シート部材60の移動速度が第1ローラ31の周速度よりも大きくなるように制御する。これにより、圧密粉体71はシート部材60に転写される。シート部材60の構成は粉体転写ローラ装置100で説明したとおりである。
【0034】
以上の構成を有する粉体転写ローラ装置100、100A及び粉体転写方法S1によれば、粉体25を粉体の状態のままで所望の形状に成形する技術を提供することができる。
【0035】
このような構成によれば、蓄電池の電極板を製造するにあたり、従来技術のように電極材料を含むスラリーを電力を用いて乾燥させる必要がなくなる。つまり、電極板の製造に要する電力消費量を大きく低減することができる。
【0036】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図面を参照して以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0037】
図6は、本発明の実施形態2に係る粉体転写ローラ装置100Bの制御部1Bを含む制御構成図である。図7は、本実施形態に係る粉体転写ローラ装置100Bの側面図である。本実施形態に係る粉体転写ローラ装置100Bは、実施形態1に係る粉体転写ローラ装置100と同様の目的のために用いられる装置である。
【0038】
粉体転写ローラ装置100Bは、図6に示すように、ホッパー開閉装置2、第1ローラ駆動モータ3、第2ローラ駆動モータ4、第3ローラ駆動モータ5と、これらを制御する制御部1Bを備えている。図7に示すように、粉体転写ローラ装置100Bは、実施形態1で説明した粉体転写ローラ装置100に比べて、第3ローラ51と図示しない第3ローラ駆動モータ5を備えていることが異なっている。そこで以下では主として第3ローラ51について説明し、それ以外の部材の説明は省略する。
【0039】
第3ローラ51は全周面が平坦であり、第1ローラ31と対向して配置されている。第1ローラ31に付着した粉体25(圧密粉体71)は、第3ローラ51に転写される。なお、第3ローラ51の周速度は、第1ローラ31の周速度よりも大きいことが好ましい。このような条件に設定することにより、圧密粉体71が第3ローラ51に転写されることが促進される。
【0040】
図7に示すように、第3ローラ51に転写された圧密粉体72は、次にシート部材60に転写されて圧密粉体73となる。シート部材60は、第3ローラ51と当接して移動し、シート部材60の移動速度は、第3ローラ51の周速度よりも大きいことが好ましい。このような条件に設定することにより、圧密粉体72がシート部材60に転写されることが促進される。シート部材60の移動速度と第3ローラ51の周速度の比は、前述の第1ローラ31の周速度と第2ローラ41の周速度の比の範囲と同程度であることが好ましい。シート部材60は、図示しない一対の搬送ローラにより搬送され、その搬送ローラは制御部1Bによって制御されることは実施形態1と同様である。あるいは、シート部材60を巻き取る巻き取りローラを備え、巻き取りローラを回転させてシート部材60を巻き取ることでシート部材60を搬送してもよいことも実施形態1と同様である。
【0041】
なお、第3ローラ51には、緩く圧密されて転写された圧密粉体72のほかに、強く圧密されて転写された圧密粉体72Aが付着している。このような圧密粉体72Aは、シート部材60に転写されにくく、第3ローラ51に付着したままとなるため、スクレーパ52で掻き取り、回収ボックス53に回収される。
【0042】
なお、粉体転写ローラ装置100Bにおいては、支持ローラ61は、第3ローラ51と対向してシート部材60を挟んで配置されており、第3ローラ51と支持ローラ61との間に配置されたシート部材60を第3ローラ51に押圧して支持する。支持ローラ61は、このような構成より、圧密粉体72がシート部材60に転写されるように補助する機能を有する。
【0043】
(粉体転写方法S2)
次に、本実施形態に係る粉体転写方法S2について説明する。図8は、本実施形態に係る粉体転写方法S2の流れを示すフローチャートである。粉体転写方法S2は、以下のステップS21~S23を含む。まず、ステップS21において、制御部1Bは、ホッパー開閉装置2を制御して、周面の一部に凹部を設けた第1ローラ31と、第1ローラ31と対向して配置された全面が平坦な第2ローラ41との間に粉体25を供給する(供給ステップ)。
【0044】
なお、この供給ステップS21において、制御部1Bは、第1ローラ31の周速度が第2ローラ41の周速度よりも大きいように制御する。これにより、供給された粉体25は、圧密されて第1ローラ31に付着する。
【0045】
次に、ステップS22において、制御部1Bは、第1ローラ31に付着した粉体(圧密粉体71)を第3ローラ51に転写する(第1転写ステップ)。
【0046】
具体的には、この第1転写ステップS22において、制御部1Bは、第3ローラ51の周速度が第1ローラ31の周速度よりも大きいように制御する。これにより、第1ローラ31の圧密粉体71は第3ローラ51に転写される。
【0047】
次に、ステップS23において、第3ローラ51に転写した粉体(圧密粉体72)を、第3ローラ51に当接して移動するシート部材60に転写する(第2転写ステップ)。
【0048】
具体的には、この第2転写ステップS23において、制御部1Bは、シート部材60の移動速度が、第3ローラ51の周速度よりも大きくなるように制御する。これにより、第3ローラ51の圧密粉体72がシート部材60に転写される。
【0049】
以上の構成を有する粉体転写ローラ装置100B及び粉体転写方法S2によれば、粉体25を粉体の状態のままで所望の形状に成形する技術を提供することができる。さらに、第3ローラ51を用いることにより、余分な圧密粉体71を除去して凹部32に付着させた圧密粉体71のみを選択的にシート部材に転写することができる。
【0050】
このような構成によれば、蓄電池の電極板を製造するにあたり、従来技術のように電極材料を含むスラリーを電力を用いて乾燥させる必要がなくなる。つまり、電極板の製造に要する電力消費量を大きく低減することができる。
【0051】
〔まとめ〕
以上に説明した実施形態は以下のように記載することができる。
(態様1)
周面の一部に凹部を設けた第1ローラと、前記第1ローラと対向して配置された全周面が平坦な第2ローラであって、前記第1ローラと当該第2ローラとの間に供給された粉体を前記第1ローラの前記凹部との間で圧密する第2ローラと、前記第1ローラと前記第2ローラとの間に前記粉体を供給する粉体供給装置と、を備える粉体転写ローラ装置。
上記の構成によれば、粉体材料を粉体の状態のままで所望の形状に成形することができる。
【0052】
(態様2)
前記第1ローラの周速度は前記第2ローラの周速度よりも大きい、態様1に記載の粉体転写ローラ装置。
上記の構成によれば、第2ローラよりも第1ローラに圧密された粉体を付着させやすくすることができる。
【0053】
(態様3)
前記第1ローラと当接して移動するシート部材をさらに備え、前記シート部材の移動速度は、前記第1ローラの周速度よりも大きい、態様2に記載の粉体転写ローラ装置。
上記の構成によれば、第1ローラからシート部材に粉体を付着させやすくすることができる。
【0054】
(態様4)
前記第1ローラと対向して配置された全周面が平坦な第3ローラであって、前記第1ローラの前記凹部に付着した前記粉体が転写される第3ローラを更に備える、態様2に記載の粉体転写ローラ装置。
上記の構成によれば、第1ローラに付着させた粉体をさらに第3ローラの凹部に選択的に付着させることができる。
【0055】
(態様5)
前記第3ローラの周速度は前記第1ローラの周速度よりも大きい、態様4に記載の粉体転写ローラ装置。
上記の構成によれば、粉体を第1ローラから第3ローラに付着させやすくすることができる。
【0056】
(態様6)
前記第3ローラと当接して移動するシート部材をさらに備え、前記シート部材の移動速度は、前記第3ローラの周速度よりも大きい、態様4又は5に記載の粉体転写ローラ装置。
上記の構成によれば、粉体を第3ローラからシート部材に付着させやすくすることができる。
【0057】
(態様7)
前記第3ローラと対向して配置された支持ローラであって、前記第3ローラと当該支持ローラとの間に配置された前記シート部材を前記第3ローラに押圧して支持する支持ローラを更に備える、態様6に記載の粉体転写ローラ装置。
上記の構成によれば、粉体を確実に第3ローラからシート部材に転写することができる。
【0058】
(態様8)
前記粉体は蓄電池の電極材料粉体であり、前記第1ローラの前記凹部は前記蓄電池の電極の形状と大きさに対応して形成されている、態様1から7のいずれかに記載の粉体転写ローラ装置。
上記の構成によれば、電極材料粉体を粉体の状態のままで所望の形状に成形することができる。
【0059】
(態様9)
周面の一部に凹部を設けた第1ローラと、前記第1ローラと対向して配置された全周面が平坦な第2ローラとの間に粉体を供給する供給ステップと、前記第1ローラに付着した前記粉体を、第1ローラに当接して移動するシート部材に転写する転写ステップと、を含み、前記供給ステップにおいて、前記第1ローラの周速度は前記第2ローラの周速度よりも大きく、前記転写ステップにおいて、前記シート部材の移動速度は、前記第1ローラの周速度よりも大きい、粉体転写方法。
上記の構成によれば、粉体材料を粉体の状態のままで所望の形状に成形することができる。
【0060】
(態様10)
コンピュータに、周面の一部に凹部を設けた第1ローラと、前記第1ローラと対向して配置された全周面が平坦な第2ローラとの間に粉体を供給する供給ステップと、前記第1ローラに付着した前記粉体を、第1ローラに当接して移動するシート部材に転写する転写ステップと、を実行させ、前記供給ステップにおいて、前記第1ローラの周速度は前記第2ローラの周速度よりも大きく、前記転写ステップにおいて、前記シート部材の移動速度は、前記第1ローラの周速度よりも大きい、プログラム。
【0061】
(態様11)
態様10に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体。
【0062】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1、1B…制御部
2…ホッパー開閉装置
3…第1ローラ駆動モータ
4…第2ローラ駆動モータ
5…第3ローラ駆動モータ
11…プロセッサ
12…メモリ
21…ホッパー
25…粉体
31…第1ローラ
32…凹部
33、42、52…スクレーパ
34、43、53…回収ボックス
41…第2ローラ
51…第3ローラ
60…シート部材
61…支持ローラ
62、63…テンションローラ
71,72、72A…圧密粉体
100、100A、100B…粉体転写ローラ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8