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特開2023-172277真空シール装置、および真空チェンバ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172277
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】真空シール装置、および真空チェンバ装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/16 20060101AFI20231129BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
F16J15/16 C
F16C13/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083961
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】近藤 丈雅
(72)【発明者】
【氏名】古川 恭治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 悠紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳
【テーマコード(参考)】
3J043
3J103
【Fターム(参考)】
3J043AA15
3J043DA02
3J043DA20
3J043HA04
3J103AA02
3J103AA23
3J103AA83
3J103BA41
3J103FA13
3J103FA30
3J103GA02
3J103GA32
3J103HA03
3J103HA06
3J103HA12
3J103HA18
3J103HA31
3J103HA41
(57)【要約】
【課題】回転部材と固定部材間での摩耗の低減と気密性の保持との両立を図る。
【解決手段】真空シール装置(15)は、第1のロール(21)と、第1のロールと接触する第2のロール(22)と、第1のロールを保持し、第1のロールと同軸の第1の空間(25a)を有する第1の保持部材(25)と、第2のロール(22)を保持し、第2のロールと同軸の第2の空間(26a)を有する第2の保持部材(26)と、を備える。第1の保持部材の内周面(26c)は、第1のロールの外周面と対向し、第1のロールと第2のロールとを対応して回転させることによって、シート材料を通過させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の弾性材料から構成される第1の外周面を有し、第1の中心軸線を回転対称の軸とする第1のロールと、
第2の弾性材料から構成され、前記第1のロールの外周面と接触する第2の外周面を有し、前記第1の中心軸線と並列な、第2の中心軸線を回転対称の軸とする第2のロールと、
前記第1のロールを保持する、前記第1のロールと同軸の第1の空間と、前記第1の空間を規定し、かつ前記第1の外周面と対向する第1の内周面と、を有する第1の保持部材と、
前記第2のロールを保持する、前記第2のロールと同軸の第2の空間と、前記第2の空間を規定し、かつ前記第2の外周面と対向する第2の内周面と、を有し、前記第1の保持部材と隙間を有して対向する、第2の保持部材と、
を備え、
前記第1のロールと前記第2のロールとを対応して回転させることによって、シート材料を前記第1のロールと前記第2のロールとの間および前記隙間を通過させる、真空シール装置。
【請求項2】
前記第1の外周面と前記第1の内周面との間には、前記第1のロールを前記第1の保持部材に対して回転可能としつつ、前記第1の内周面に沿う気体の流れを制限する、第1の間隙が形成され、
前記第2の外周面と前記第2の内周面との間には、前記第2のロールを前記第2の保持部材に対して回転可能としつつ、前記第2の内周面に沿う気体の流れを制限する、第2の間隙が形成される、請求項1に記載の真空シール装置。
【請求項3】
前記第1、第2の弾性材料は、ゴム材料またはスポンジ材料である、請求項1に記載の真空シール装置。
【請求項4】
前記第1のロールを回転させる第1の回転機構と、
前記第1のロールと対応するように前記第2のロールを回転させる第2の回転機構と、
を備える、請求項1に記載の真空シール装置。
【請求項5】
第1の剛性材料から構成され、前記第1の外周面と接触する第3の外周面を有し、前記第1、第2の中心軸線と並列な第3の中心軸線を回転対称の軸とする第3のロールと、
第2の剛性材料から構成され、前記第2の外周面と接触する第4の外周面を有し、前記第1、第2、第3の中心軸線と並列な、第4の中心軸線を回転対称の軸とする第4のロールと、
を備え、
前記第1の保持部材は、前記第3のロールを保持する、前記第3のロールと同軸の第3の空間と、前記第3の空間を規定し、かつ前記第3の外周面と対向する第3の内周面と、を有し、
前記第2の保持部材は、前記第4のロールを保持する、前記第4のロールと同軸の第4の空間と、前記第4の空間を規定し、かつ前記第4の外周面と対向する第4の内周面と、を有し、
前記第1のロールを回転することによって、前記第2、第3、および第4のロールは回転する、請求項1から4のいずれか1項に記載の真空シール装置。
【請求項6】
前記第3の内周面と前記第3の外周面との間には、前記第3のロールを前記第1の保持部材に対して回転可能としつつ、前記第3の内周面に沿う気体の流れを制限する、第3の間隙が形成され、
前記第4の内周面と前記第4の外周面との間には、前記第4のロールを前記第2の保持部材に対して回転可能としつつ、前記第4の内周面に沿う気体の流れを制限する、第4の間隙が形成される、請求項5に記載の真空シール装置。
【請求項7】
前記第1、第2の剛性材料は、金属材料またはプラスチック材料である、請求項5に記載の真空シール装置。
【請求項8】
前記第1、第2、第3、および第4のロールは、前記第1、第2、第3、および第4の中心軸線に直交する直線上に配置される、請求項5に記載の真空シール装置。
【請求項9】
前記第1、および第2のロールと対応するように、前記第3のロールを回転させる第3の回転機構と、
前記第1、第2、および第3のロールと対応するように、前記第4のロールを回転させる第4の回転機構と、
を備える、請求項5に記載の真空シール装置。
【請求項10】
前記第1のロールの端部から突出する回転軸と、
前記端部を保持する第5の空間と、前記第5の空間を規定し、かつ前記端部に対向する内面と、前記回転軸が配置される貫通孔と、を有する第3の保持部材と、
前記回転軸と前記貫通孔との間を回転可能に封止する回転封止部材と、
前記端部と前記内面との間を封止する端部封止部材と、
を備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の真空シール装置。
【請求項11】
真空チェンバと、
前記真空チェンバ内を真空にする真空ポンプと、
請求項1から4のいずれか1項に記載の、1以上の真空シール装置と、
を備え、
前記1以上の真空シール装置によって、前記シート材料を前記真空チェンバ内に導入、または前記真空チェンバ内から導出する、真空チェンバ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空シール装置、および真空チェンバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空チェンバ内にシート材料を出し入れするために、真空シール装置が用いられる。特許文献1は、シート状部材の移動面を中心として対向配置され、互いに回動自在に密着されたロール群を有する真空シール装置を開示する(要約参照)。ロール群の内、ロール18は、真空チェンバに設けられた耐摩耗性部材19に対して付勢されることで、ロール18と耐摩耗性部材19との間での気密性を保持している(段落[0024]および図2参照)。また、回転するロール16、17、18は、ダストシール材38に接触している(段落[0030]および図2図5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-115897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、回転するロール18と固定された耐摩耗性部材19とが互いに接触し、かつその間に付勢力が働いている。このため、ロール18と耐摩耗性部材19との間に大きな摩擦力が発生し、ロール18が摩耗して、粉体(ダスト)が発生し易い。また、回転するロール16、17、18とダストシール材38との間の摩擦により、ロール16、17、18またはダストシール材38が摩耗して、粉体(ダスト)となり易い。このようにして発生するダストによって、真空チェンバ内の環境が悪化する可能性がある。
【0005】
本発明の一態様は、回転部材と固定部材間での摩擦の低減と、気密性の保持の両立を図った真空シール装置、および真空チェンバ装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る真空シール装置は、第1の弾性材料から構成される第1の外周面を有し、第1の中心軸線を回転対称の軸とする第1のロールと、第2の弾性材料から構成され、前記第1のロールの外周面と接触する第2の外周面を有し、前記第1の中心軸線と並列な、第2の中心軸線を回転対称の軸とする第2のロールと、前記第1のロールを保持する、前記第1のロールと同軸の第1の空間と、前記第1の空間を規定し、かつ前記第1の外周面と対向する第1の内周面と、を有する第1の保持部材と、前記第2のロールを保持する、前記第2のロールと同軸の第2の空間と、前記第2の空間を規定し、かつ前記第2の外周面と対向する第2の内周面と、を有し、前記第1の保持部材と隙間を有して対向する、第2の保持部材と、を備え、前記第1のロールおよび前記第2のローラを対応して回転させることによって、シート材料を前記第1のロールと前記第2のロールとの間および前記隙間を通過させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、回転部材と固定部材間での摩擦の低減と、気密性の保持の両立を図った真空シール装置、および真空チェンバ装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る真空システムを表す図である。
図2】本発明の実施形態に係る真空シール装置の一例を表す斜視図である。
図3】真空シール装置を側方から見た一部断面図である。
図4】真空シール装置を上方から見た一部断面図である。
図5】本発明の変形例に係る真空シール装置の一例を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る真空システム10を表す。ここで、上下方向をZ軸とし、シート材料Shの搬送方向をX軸とするXYZ座標を設定する。このXYZ座標は、後の図2図5においても同様である。
【0010】
真空システム10は、真空下でのシート材料Shの処理を可能とするシステムであり、真空チェンバ装置11、送り出しローラ12a、保持ローラ13a、13b、巻き取りローラ12bを有する。真空チェンバ装置11は、真空チェンバ11a、真空チェンバ11a内を真空に保持する真空ポンプ14、真空チェンバ11a内にシート材料Shを搬入する真空シール装置15a、真空チェンバ11a内からシート材料Shを搬出する真空シール装置15bを有する。
【0011】
送り出しローラ12a、巻き取りローラ12bが対応して回転することで、送り出しローラ12aから巻き取りローラ12bに向かって(X軸正方向に向かって)、シート材料Shが搬送される。送り出しローラ12aから送り出されたシート材料Shは、保持ローラ13a、真空シール装置15aを介して、真空チェンバ11a内に搬入される。真空チェンバ11a内に搬入されたシート材料Shに対して、種々の処理(例えば、表面へのコーティング)が行われる。処理が終了したシート材料Shは、真空シール装置15bを介して、真空チェンバ11a内から搬出され、保持ローラ13bを経由して、巻き取りローラ12bに巻き取られる。
【0012】
真空シール装置15a、15bは、シート材料Shの搬入、搬出する役割は異なるが、実質的に同様の構成とすることができる。このため、以下では、真空シール装置15a、15bを纏めて、真空シール装置15として表すことにする。
【0013】
(真空シール装置15の詳細)
以下、真空シール装置15の詳細を説明する。図2図3、および図4はそれぞれ、真空シール装置15の斜視図、側方(Y軸負側)からみた一部断面図、上方(Z軸正側)からみた一部断面図である。
【0014】
図2に示すように、真空シール装置15は、シートロール21、22、バックアップロール23、24(以下、シートロール21等ともいう)、保持部材25~28を有する。
【0015】
シートロール21等は、Z軸方向(上下)に直線状に(シートロール21等の中心軸線C1~C4に直交する直線上に)配置される。シートロール21等の中心軸線C1~C4は互いに並列(例えば、平行)である。
【0016】
シートロール21等は、バックアップロール23、シートロール21、シートロール22、バックアップロール24の順で、接触するように、上下に配置される。すなわち、シートロール21(第1のロール)の外周面(第1の外周面:後述の外周部21bの側面)は、下方において、シートロール22(第2のロール)の外周面(第2の外周面:後述の外周部22bの側面)と、上方において、バックアップロール23(第3のロール)の外周面(第3の外周面:後述の外周軸部23aの側面)と接触する。シートロール22の外周面は、下方において、バックアップロール24(第4のロール)の外周面(第4の外周面:後述の外周軸部24aの側面)と接触する。
【0017】
このように、シートロール21、22、バックアップロール23、24は、接触関係にある。このため、例えば、シートロール21、22を対応して回転させると、この回転に伴って、バックアップロール23、24も回転する。具体的には、第1の回転機構(モータ等の動力源)によって、シートロール21を回転させる。また、第2の回転機構(モータ等の動力源)によって、シートロール21に対応するように、シートロール22を回転させる。ここで、第1、第2の回転機構は、互いに独立した動力源から構成されてよい。また、第1、第2の回転機構は、ギヤなどの連結機能によって、連動して動作する一体的な動力源から構成されてよい。
【0018】
シートロール21、22に加えて、バックアップロール23、24の少なくともいずれかを併せて回転させてもよい。例えば、第3の回転機構(モータ等の動力源)によって、シートロール21、22と対応するように、バックアップロール23を回転させる。また、第4の回転機構(モータ等の動力源)によって、シートロール21、22、およびバックアップロール23に対応するように、バックアップロール24を回転させる。ここで、第1~第4の回転機構は、互いに独立した動力源から構成されてよい。また、第1~第4の回転機構の少なくとも一部は、ギヤなどの連結機能によって、連動して動作する一体的な動力源から構成されてよい。
【0019】
シートロール21、22を接触させて、対応して回転させることで、シート材料Shをシートロール21、22の間を通過させることができる。シートロール21、22の回転方向に応じて、シート材料Shの搬送方向をX軸正方向、X軸負方向のいずれとすることも可能である。すなわち、真空シール装置15は、図1の搬入用の真空シール装置15a、搬出用の真空シール装置15bの何れとしても機能し得る。
【0020】
後述のように、シートロール21、22の外周面(外周部21b、22bの側面)は弾性を有する。このため、シートロール21、22を回転させて、シート材料Shを通過させるときに、シートロール21、22間の気密を保持することができる。例えば、シート材料Shに多少の凹凸があっても、この凹凸に応じて、シートロール21、22が変形することで、シートロール21、22間の気密は保持される。
【0021】
後述のように、バックアップロール23、24、特に、その外周面(後述の外周軸部23a、24aの側面)は剛性を有する。このため、バックアップロール23、24は、ローラ21、22の撓みを矯正し、シートロール21、22間での気密性を向上させることができる。この詳細は、後述する。
【0022】
シートロール21およびバックアップロール23は、保持部材25、27、28に保持される。シートロール22およびバックアップロール24は、保持部材26、27、28に保持される。保持部材25、26はZ軸方向(上下)に隙間を有して対向配置される。保持部材25、26のY軸方向の両側に、保持部材27、28が配置される。
【0023】
保持部材25、27間、保持部材25、28間、保持部材26、27間、保持部材26、28間は、それぞれ、シール部材CE1、CE2、CE3、CE4によって封止される。なお、シール部材CE1~CE4は、シートロール21、22、バックアップロール23、24を気密に通過させる開口を有する。
【0024】
図3および図4に示すように、シートロール21は、軸部21a、および外周部21bを有する。軸部21a、および外周部21bは、中心軸線C1に対して回転対称性を有する。軸部21aは、中心軸線C1を中心に回転される略円柱形状の部材である。外周部21bは、軸部21aを覆い、軸部21aと共に回転される略円筒形状の部材である。軸部21a(シートロール21)の両側の端部それぞれから一対の回転軸21cが突出する。軸部21aおよび回転軸21cは、金属材料またはプラスチック材料等の剛性材料から構成され、外周部21bは、ゴム材料(例えば、ニトリルゴム)、スポンジ材料等の弾性材料から構成される。すなわち、シートロール21(第1のロール)は、第1の弾性材料から構成される第1の外周面(外周部21bの側面)を有し、第1の中心軸線(中心軸線C1)を回転対称の軸とする。
【0025】
シートロール22は、シートロール21と同様、軸部22a、および外周部22bを有し、軸部22a(シートロール22)の両側の端部それぞれから一対の回転軸22cが突出する。シートロール22(第2のロール)は、第2の弾性材料から構成され、シートロール21の外周面(第1の外周面)と接触する第2の外周面(外周部22bの側面)を有し、第1の中心軸線(中心軸線C1)と並列な、第2の中心軸線(中心軸線C2)を回転対称の軸とする。シートロール22は、シートロール21と対応する構成を有することから、詳細な説明を省略する。
【0026】
バックアップロール23は、外周軸部23aを有する。外周軸部23aは、中心軸線C3に対して回転対称性を有する。外周軸部23aは、中心軸線C3を中心に回転される略円柱形状の部材である。外周軸部23a(バックアップロール23)の両側の端部それぞれから一対の回転軸23cが突出する。外周軸部23aおよび回転軸23cは、金属材料またはプラスチック材料等の剛性材料から構成される。すなわち、バックアップロール23(第3のロール)は、第1の剛性材料から構成され、第1の外周面(シートロール21の外周面)と接触する第3の外周面を有し、第1、第2の中心軸線(中心軸線C1,C2)と並列な第3の中心軸線(中心軸線C3)を回転対称の軸とする。
【0027】
バックアップロール24は、バックアップロール23と同様、外周軸部24aを有し、外周軸部24a(バックアップロール23)の両側の端部それぞれから一対の回転軸24cが突出する。バックアップロール24(第4のロール)は、第2の剛性材料から構成され、第2の外周面(シートロール22の外周面)と接触する第4の外周面を有し、前記第1、第2、第3の中心軸線(中心軸線C1,C2、C3)と並列な、第4の中心軸線(中心軸線C4)を回転対称の軸とする。バックアップロール24は、バックアップロール23と対応する構成を有することから、詳細な説明を省略する。
【0028】
図3に示すように、保持部材25は、シートロール21を保持する空間25a(第1の空間)と、バックアップロール23を保持する空間25b(第3の空間)と、空間25aを規定する内周面25c(第1の内周面)と、空間25bを規定する内周面25d(第3の内周面)とを有する。空間25aは、空間25bと連通し、保持部材25のZ軸負方向側において開口する。
【0029】
空間25aは、略円柱形状であり、中心軸線C1と同軸である。内周面25c(第1の内周面)は、空間25a(第1の空間)を規定し、シートロール21の外周面(第1の外周面)と対向する。空間25aの内周面25cとシートロール21の外周面とは、対向し、その間に間隙G1(第1の間隙)を形成する。間隙G1は、シートロール21を保持部材25に対して回転可能としつつ、保持部材25の内周面25cに沿う気体(空気)の流れを制限する。間隙G1の大きさは、略円柱形状の空間25aの半径と、略円柱形状のシートロール21の半径との差によって規定される。
【0030】
空間25bは、略円柱形状であり、中心軸線C3と同軸である。内周面25d(第3の内周面)は、空間25b(第3の空間)を規定し、バックアップロール23の外周面(第3の外周面)と対向する。空間25bの内周面25dとバックアップロール23の外周面とは、対向し、その間に間隙G3(第3の間隙)を形成する。間隙G3は、バックアップロール23を保持部材25に対して回転可能としつつ、保持部材25の内周面25dに沿う気体(空気)の流れを制限する。間隙G3の大きさは、略円柱形状の空間25bの半径と、略円柱形状のバックアップロール23の半径との差によって規定される。
【0031】
間隙G1、間隙G3は、連通し、全体としてラビリンスシールとして機能する。すなわち、図3に示すように、シートロール21のX軸負方向側から間隙G1に空気が侵入した場合、この空気は経路d1を通って、間隙G3のX軸負方向側に移動し、経路d2、d3を通って、間隙G1のX軸正方向側に達し、経路d4を通って、真空チェンバ11a内に到達する。すなわち、空気は経路d1~d4を通過しないと真空チェンバ11a内に到達できず、長く、狭い経路d1~d4を通ることで、真空チェンバ11a内への空気の流入が制限される。
【0032】
保持部材26は、シートロール22を保持する空間26a(第2の空間)と、バックアップロール24を保持する空間26b(第4の空間)と、空間26aを規定する内周面26c(第2の内周面)と、空間26bを規定する内周面26d(第4の内周面)とを有する。空間26aは、空間26bと連通し、保持部材25のZ軸正方向側において開口する。
【0033】
空間26aは、略円柱形状であり、中心軸線C2と同軸である。内周面26c(第2の内周面)は、空間26a(第2の空間)を規定し、シートロール22の外周面(第2の外周面)と対向する。空間26aの内周面26cとシートロール22の外周面とは、対向し、その間に間隙G2(第2の間隙)を形成する。間隙G2は、シートロール22を保持部材26に対して回転可能としつつ、保持部材26の内周面26cに沿う気体(空気)の流れを制限する。間隙G2の大きさは、略円柱形状の空間26aの半径と、略円柱形状のシートロール22の半径との差によって規定される。
【0034】
空間26bは、略円柱形状であり、中心軸線C4と同軸である。内周面26d(第4の内周面)は、空間26b(第4の空間)を規定し、バックアップロール24の外周面(第4の外周面)と対向する。空間26bの内周面26dとバックアップロール24の外周面とは、対向し、その間に間隙G4(第4の間隙)を形成する。間隙G4は、バックアップロール24を保持部材26に対して回転可能としつつ、保持部材26の内周面26dに沿う気体(空気)の流れを制限する。間隙G4の大きさは、略円柱形状の空間26bの半径と、略円柱形状のバックアップロール24の半径との差によって規定される。
【0035】
間隙G2、G4は、連通し、全体としてラビリンスシールとして機能する。間隙G2、G4は、保持部材25の間隙G1、G3と対応することから、詳細な説明は省略する。
【0036】
図4に示すように、保持部材27(第3の保持部材)は、空間27a(第5の空間)、および貫通孔27bを有する。保持部材27は、略円柱形状の空間27a内に、シートロール21(軸部21aおよび外周部21b)の端部を保持する。保持部材27は、空間27aを規定し、シートロール21の端部(端面)に対向する内面27cを有する。貫通孔27bは、空間27aと連通し、回転軸21cが配置される。貫通孔27bを通じて、モータ等の回転機構を回転軸21cに接続できる。空間27aおよび貫通孔27b内に、回転部材RM、回転封止部材CR、固定部材ST、および端部封止部材CE0が配置される。
【0037】
回転部材RMは、例えば、ベアリング機構であり、回転軸21cと貫通孔27bとの間を回転可能に固定する。回転封止部材CRは、例えば、オイルシール(一例として、Oリング)であり、回転軸21cと貫通孔27bとの間を回転可能に封止する。回転封止部材CRは、例えば、Oリング形状の固定部材STによって、保持部材27に固定される。端部封止部材CE0は、例えば、Oリングであり、シートロール21の端部と内面27cとの間を封止する。
【0038】
図4の右側に示すように、シートロール21のX軸負方向側の間隙G1に空気が侵入した場合、この空気は間隙G1をY軸負方向に進み(経路d11)、シートロール21の端部に達して、この端部上をX軸正方向に移動して(経路d12)、シートロール21のY軸負方向の端部に達し、X軸正方向側の間隙G1を移動して(経路d13)、真空チェンバ11a内に入る可能性がある。ここでは、シートロール21の端部と空間27aの内面27cとの間の間隙G5を封止することで、シートロール21の回転を可能としつつ、間隙G5を経由する空気の流入を制限できる。
【0039】
経路d11、d12、d13は、一種のラビリンスシールとして機能する。すなわち、空気は経路d11、d12、d13を通過しないと真空チェンバ11a内に到達できず、長く、狭い経路d11、d12、d13によって、空気の流入を制限できる。これに加えて、シートロール21の端部と内面27cの間に端部封止部材CE0を配置することで、気密性をより向上できる。
【0040】
保持部材27は、バックアップロール23に対応する、空間、貫通孔、内面、回転部材RM、回転封止部材CR、固定部材ST、および端部封止部材CE0をも有する。この空間、貫通孔、内面は、空間27a、貫通孔27b、内面27cに対応するため、詳細な説明は省略する。
【0041】
保持部材28は、シートロール22に対応する、空間28a、貫通孔28b、内面28c、回転部材RM、回転封止部材CR、固定部材ST、および端部封止部材CE0を有する。保持部材28は、バックアップロール24に対応する、空間、貫通孔、内面、回転部材RM、回転封止部材CR、固定部材ST、および端部封止部材CE0をも有する。空間28a、貫通孔28b、内面28c等は、保持部材27の空間27a、貫通孔27b、内面27cに対応するため、詳細な説明は省略する。
【0042】
バックアップロール23、24は、剛性を有することから、シートロール21、22の撓みを矯正し、シートロール21、22間の気密性を向上させることができる。ここで、シートロール21、22、バックアップロール23、24は、中心軸線C1~C4に直交する直線上に配置される。バックアップロール23、24によって、ローラ21、22を上下から押圧することで、ローラ21、22の撓みをより効果的に矯正し、シール性を向上できる。
【0043】
バックアップロール23は、剛性を有することから、高精度での加工が容易である。このため、バックアップロール23を回転可能としつつ、保持部材25の内周面25dとの間の間隙G2を小さくして、空気が間隙G2を通りにくくして、シール性をより向上することができる。すなわち、バックアップロール23、24での間隙G3、G4をシートロール21、22での間隙G1、G2よりも小さくして(G3、G4<G1、G2)、間隙G1、G3、および間隙G2、G4でのラビリンスシール性を向上することができる。一例として、間隙G1、G2を0.2mm~0.6mm、間隙G3、G4を0.02mm~0.1mmとすることができる。
【0044】
(変形例)
図5は、本発明の変形例に係る真空シール装置15の一例を表す斜視図である。変形例に係る真空シール装置15は、バックアップロール23、24を有さず、保持部材25~28は、バックアップロール23、24を保持するための空間を有しない。この場合、間隙G1、G3の各々は、単独でラビリンスシールとして機能する。
【0045】
(まとめ)
以上のように、本実施形態では、回転部材(シートロール21、22、バックアップロール23、24)は、周囲の間隙G1、G2、G3、G4によって、回転可能に封止されている(ラビリンスシール)。この結果、シートロール21、22、バックアップロール23、24の回転可能性と、封止の両立が図られる。回転部材は、固定部材(保持部材25~28)と、実質的に接触する必要はないので、回転部材と固定部材間の摩擦に起因する摩耗を低減できる。
【0046】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0047】
(まとめ)
態様1の真空シール装置は、第1の弾性材料から構成される第1の外周面を有し、第1の中心軸線を回転対称の軸とする第1のロールと、第2の弾性材料から構成され、前記第1のロールの外周面と接触する第2の外周面を有し、前記第1の中心軸線と並列な、第2の中心軸線を回転対称の軸とする第2のロールと、前記第1のロールを保持する、前記第1のロールと同軸の第1の空間と、前記第1の空間を規定し、かつ前記第1の外周面と対向する第1の内周面と、を有する第1の保持部材と、前記第2のロールを保持する、前記第2のロールと同軸の第2の空間と、前記第2の空間を規定し、かつ前記第2の外周面と対向する第2の内周面と、を有し、前記第1の保持部材と隙間を有して対向する、第2の保持部材と、を備え、前記第1のロールと前記第2のロールとを対応して回転させることによって、シート材料を前記第1のロールと前記第2のロールとの間および前記隙間を通過させる。
【0048】
態様2の真空シール装置は、態様1に記載の真空シール装置において、前記第1の外周面と前記第1の内周面との間には、前記第1のロールを前記第1の保持部材に対して回転可能としつつ、前記第1の内周面に沿う気体の流れを制限する、第1の間隙が形成され、
前記第2の外周面と前記第2の内周面との間には、前記第2のロールを前記第2の保持部材に対して回転可能としつつ、前記第2の内周面に沿う気体の流れを制限する、第2の間隙が形成される。
【0049】
態様3の真空シール装置は、態様1または2に記載の真空シール装置において、前記第1、第2の弾性材料は、ゴム材料またはスポンジ材料である。
【0050】
態様4の真空シール装置は、態様1~3のいずれかに記載の真空シール装置において、前記第1のロールを回転させる第1の回転機構と、前記第1のロールと対応するように前記第2のロールを回転させる第2の回転機構と、を備える。
【0051】
態様5の真空シール装置は、態様1~4のいずれかに記載の真空シール装置において、第1の剛性材料から構成され、前記第1の外周面と接触する第3の外周面を有し、前記第1、第2の中心軸線と並列な第3の中心軸線を回転対称の軸とする第3のロールと、
第2の剛性材料から構成され、前記第2の外周面と接触する第4の外周面を有し、前記第1、第2、第3の中心軸線と並列な、第4の中心軸線を回転対称の軸とする第4のロールと、を備え、前記第1の保持部材は、前記第3のロールを保持する、前記第3のロールと同軸の第3の空間と、前記第3の空間を規定し、かつ前記第3の外周面と対向する第3の内周面と、を有し、前記第2の保持部材は、前記第4のロールを保持する、前記第4のロールと同軸の第4の空間と、前記第4の空間を規定し、かつ前記第4の外周面と対向する第4の内周面と、を有し、前記第1のロールを回転することによって、前記第2、第3、および第4のロールは回転する。
【0052】
態様6の真空シール装置は、態様5に記載の真空シール装置において、前記第3の内周面と前記第3の外周面との間には、前記第3のロールを前記第1の保持部材に対して回転可能としつつ、前記第3の内周面に沿う気体の流れを制限する、第3の間隙が形成され、
前記第4の内周面と前記第4の外周面との間には、前記第4のロールを前記第2の保持部材に対して回転可能としつつ、前記第4の内周面に沿う気体の流れを制限する、第4の間隙が形成される。
【0053】
態様7の真空シール装置は、態様5または6に記載の真空シール装置において、前記第1、第2の剛性材料は、金属材料またはプラスチック材料である。
【0054】
態様8の真空シール装置は、態様5~7のいずれかに記載の真空シール装置において、前記第1、第2、第3、および第4のロールは、前記第1、第2、第3、および第4の中心軸線に直交する直線上に配置される。
【0055】
態様9の真空シール装置は、態様5~8のいずれかに記載の真空シール装置において、前記第1、および第2のロールと対応するように、前記第3のロールを回転させる第3の回転機構と、前記第1、第2、および第3のロールと対応するように、前記第4のロールを回転させる第4の回転機構と、を備える。
【0056】
態様10の真空シール装置は、態様1~9のいずれかに記載の真空シール装置において、前記第1のロールの端部から突出する回転軸と、前記端部を保持する第5の空間と、前記第5の空間を規定し、かつ前記端部に対向する内面と、前記回転軸が配置される貫通孔と、を有する第3の保持部材と、前記回転軸と前記貫通孔との間を回転可能に封止する回転封止部材と、前記端部と前記内面との間を封止する端部封止部材と、
を備える。
【0057】
態様11の真空チェンバ装置は、真空チェンバと、前記真空チェンバ内を真空にする真空ポンプと、態様1~10のいずれかに記載の、1以上の真空シール装置と、を備え、前記真空シール装置によって、前記シート材料を前記真空チェンバ内に導入、または前記真空チェンバ内から導出す。
【符号の説明】
【0058】
10…真空システム、11…真空チェンバ装置、15…真空シール装置、21、22…シートロール、23、24…バックアップロール、25、26、27、28…保持部材
図1
図2
図3
図4
図5