(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172279
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20231129BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B41J2/17 203
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083963
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】花丸 健志朗
(72)【発明者】
【氏名】久保 智幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥爾
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 聡
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸昌
(72)【発明者】
【氏名】山本 啓介
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 好輝
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA27
2C056EB29
2C056EB44
2C056EC26
2C056JC13
(57)【要約】
【課題】製造コストの増加を抑えることを目的とする。
【解決手段】液体吐出装置は、本体筐体(11)に対して挿抜可能である廃液タンク(60)と、制御部(100)と、を備え、廃液タンク(60)は、廃液タンク(60)の内部と外部とを連通する連通口と、前記連通口よりも鉛直方向の下方に位置し、廃液タンク(60)の装着により第1接点(28)と電気的に接続する第2接点(19)と、を有し、廃液タンク(60)が本体筐体(11)に装着された状態において、制御部(100)は、第2接点(19)の電流値又は電圧値に基づいて、漏電が発生したことを異常として検知する検知処理を実行する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体筐体と、
液体を吐出する液体吐出部と、
第1接点と、
前記本体筐体に対して挿抜可能である廃液タンクと、
制御部と、
を備え、
前記廃液タンクは、前記廃液タンクの内部と外部とを連通する連通口と、前記連通口よりも鉛直方向の下方に位置し、前記廃液タンクの装着により前記第1接点と電気的に接続する第2接点と、を有し、
前記廃液タンクが前記本体筐体に装着された状態において、
前記制御部は、前記第2接点の電流値又は電圧値に基づいて、漏電が発生したことを異常として検知する検知処理を実行する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記第1接点は、付勢部により、前記廃液タンクを前記本体筐体から抜去する方向に付勢されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記液体吐出装置は、複数の前記第1接点を備え、
複数の前記第1接点は、鉛直方向に対して交差する方向に並んでいることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第1接点は、前記液体吐出装置が備えるコンタクトピンに設けられ、
前記コンタクトピンは、先端に前記第1接点を有し、前記先端に向かって先細りした形状であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記連通口は、前記廃液タンクの鉛直方向に沿う壁面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記連通口は、前記液体吐出部からの液体を前記廃液タンクに導入するための導入口であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記連通口は、前記廃液タンクが前記本体筐体に装着された状態において、廃液タンクの内部と外部との間において気体の出入りを可能とする大気連通口であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記第2接点は、前記連通口が形成された廃液タンクの壁面と同一平面上に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記第2接点が形成される面は、前記廃液タンクの鉛直方向に沿う面であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記廃液タンクの外部にて漏出した液体を受けて、受けた液体が流れる流路を有し、前記流路により受けた液体を前記第2接点へと案内する廃液案内部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記廃液案内部は、前記流路に流れる液体を保持する保持部を有することを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記廃液案内部は、前記廃液案内部にて受けた液体を前記第2接点に受け渡す部分であって、前記第2接点側に向かうにつれ前記流路の幅が漸次狭くなっている受渡部を有することを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記廃液案内部は、前記廃液タンクに設けられていることを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
表示部を更に備え、
前記制御部は、
前記検知処理にて異常を検知した場合、前記表示部にエラーを表示させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記エラーとして前記廃液タンクの交換を促す表示を前記表示部に表示させる交換表示処理を更に実行することを特徴とする請求項14に記載の液体吐出装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記液体吐出装置の記憶領域に記憶された前記廃液タンクの内部に溜められている液体の量を推定するためのカウント値を参照し、該カウント値が閾値を超えている場合、前記交換表示処理を行うことを特徴とする請求項15に記載の液体吐出装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記エラーとして前記廃液タンクの挿入状態の確認を促す表示を前記表示部に表示させる確認表示処理を更に実行することを特徴とする請求項14に記載の液体吐出装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記液体吐出装置の記憶領域に記憶された前記廃液タンクの内部に溜められている液体の量を推定するためのカウント値を参照し、該カウント値が閾値を超えていない場合、前記確認表示処理を行うことを特徴とする請求項17に記載の液体吐出装置。
【請求項19】
前記制御部は、
前記確認表示処理にて、前記第2接点に付着した液体を除去する対応が必要であることを促す表示を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項17または18に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、廃インクを溜める廃液保持容器を有する液体吐出装置が開示されている。液体吐出装置内で発生した廃インクは、廃インクチューブから排出部を通り、排出部から廃液保持容器に溜められている。廃液保持容器は、液体吐出装置から取り外し可能であり、廃インクにより一杯になると新しい廃液保持容器に交換される。廃液保持容器には、データが記憶されるROMホルダが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、交換式の廃液保持容器では、廃液保持容器内の廃インクが一杯になることにより、又は廃液保持容器が不完全に装着されていることにより、廃液保持容器から廃インクが漏出することがある。
【0005】
廃液保持容器から漏出した廃インクを検知するため、漏出を検知するセンサを設けることがある。しかし、漏出を検知するセンサを設けるために製造コストが増加するという問題点があった。
【0006】
本開示は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造コストの増加を抑えることができる液体吐出装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の液体吐出装置は、本体筐体と、液体を吐出する液体吐出部と、第1接点と、前記本体筐体に対して挿抜可能である廃液タンクと、制御部と、を備える。前記廃液タンクは、前記廃液タンクの内部と外部とを連通する連通口と、前記連通口よりも鉛直方向の下方に位置し、前記廃液タンクの装着により前記第1接点と電気的に接続する第2接点と、を有する。前記廃液タンクが前記本体筐体に装着された状態において、前記制御部は、前記第2接点の電流値又は電圧値に基づいて、漏電が発生したことを異常として検知する検知処理を実行する。
【0008】
上記構成によれば、廃液タンクが本体筐体に装着された状態において、制御部は検知処理を実行する。これにより、例えば、連通口から漏出した液体が連通口の下方に位置する第2接点上に流れると、第2接点の電流値又は電圧値等が大きくなり、漏電が発生したことを検知することができる。即ち、制御部は、廃液タンクから液体が漏出していることを検知することができる。よって、液体の漏出を検知するセンサを別途設けることなく、液体の漏出を判定することができる。これにより、製造コストの増加を抑えることができる。
【0009】
本開示の液体吐出装置は、前記第1接点は、付勢部により、前記廃液タンクを前記本体筐体から抜去する方向に付勢されている構成としてもよい。
【0010】
本開示の液体吐出装置は、複数の前記第1接点を備え、複数の前記第1接点は鉛直方向に対して交差する方向に並んでいる構成としてもよい。
【0011】
本開示の液体吐出装置は、前記第1接点は、前記液体吐出装置が備えるコンタクトピンに設けられ、前記コンタクトピンは、先端に前記第1接点を有し、前記先端に向かって先細りした形状である構成としてもよい。
【0012】
本開示の液体吐出装置は、前記連通口は、前記廃液タンクの鉛直方向に沿う壁面に形成されている構成としてもよい。
【0013】
本開示の液体吐出装置は、前記連通口は、前記液体吐出部からの液体を前記廃液タンクに導入するための導入口である構成としてもよい。
【0014】
本開示の液体吐出装置は、前記連通口は、前記廃液タンクが前記本体筐体に装着された状態において、廃液タンクの内部と外部との間において気体の出入りが可能な大気連通口である構成としてもよい。
【0015】
本開示の液体吐出装置は、前記第2接点は、前記連通口が形成された廃液タンクの壁面と同一平面上に設けられている構成といてもよい。
【0016】
本開示の液体吐出装置は、前記第2接点が形成される面は、前記廃液タンクの鉛直方向に沿う面である構成としてもよい。
【0017】
本開示の液体吐出装置は、前記廃液タンクの外部にて漏出した液体を受けて、受けた液体が流れる流路を有し、前記流路により受けた液体を前記第2接点へと案内する廃液案内部を更に備えてもよい。
【0018】
本開示の液体吐出装置は、前記廃液案内部は、前記流路に流れる液体を保持する保持部を有する構成としてもよい。
【0019】
本開示の液体吐出装置は、前記廃液案内部は、前記廃液案内部にて受けた液体を前記第2接点に受け渡す部分であって、前記第2接点側に向かうにつれ前記流路の幅が漸次狭くなっている受渡部を有する構成としてもよい。
【0020】
本開示の液体吐出装置は、前記廃液案内部は、前記廃液タンクに設けられている構成としてもよい。
【0021】
本開示の液体吐出装置は、表示部を更に備え、前記制御部は、前記検知処理にて異常を検知した場合、前記表示部にエラーを表示させてもよい。
【0022】
本開示の液体吐出装置は、前記制御部は、前記エラーとして前記廃液タンクの交換を促す表示を前記表示部に表示させる交換表示処理を更に実行する構成としてもよい。
【0023】
本開示の液体吐出装置は、前記制御部は、前記液体吐出装置の記憶領域に記憶された前記廃液タンクの内部に溜められている液体の量を推定するためのカウント値を参照し、該カウント値が閾値を超えている場合、前記交換表示処理を行う構成としてもよい。
【0024】
本開示の液体吐出装置は、前記制御部は、前記エラーとして前記廃液タンクの挿入状態の確認を促す表示を前記表示部に表示させる確認表示処理を更に実行する構成としてもよい。
【0025】
本開示の液体吐出装置は、前記制御部は、前記液体吐出装置の記憶領域に記憶された前記廃液タンクの内部に溜められている液体の量を推定するためのカウント値を参照し、該カウント値が閾値を超えていない場合、前記確認表示処理を行う構成としてもよい。
【0026】
本開示の液体吐出装置は、前記制御部は、前記確認表示処理にて、前記第2接点に付着した液体を除去する対応が必要であることを促す表示を前記表示部に表示させる構成としてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本開示の一態様によれば、製造コストの増加を抑えることができる液体吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本開示の実施形態1に係るインクジェットプリンタの外観斜視図である。
【
図2】実施形態1に係るインクジェットプリンタの内部構成の概略を示す断面図である。
【
図3】実施形態1に係るインクジェットプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態1に係る廃液タンクの構成を示す断面図である。
【
図5】実施形態1に係るインクジェットプリンタの制御部による制御の流れを示すフローチャートである。
【
図6】実施形態2に係る廃液タンクの構成を示す斜視図である。
【
図7】実施形態2に係る廃液タンクの構成を示す断面図である。
【
図8】実施形態2に係る廃液タンクの廃液ガイドの変形例1を示す斜視図である。
【
図9】実施形態2に係る廃液タンクの廃液案内部の変形例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔実施形態1〕
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。
【0030】
図1は、インクジェットプリンタ1の外観斜視図である。
図1に示すインクジェットプリンタ1は、液体吐出装置の一例である。以下の説明では、
図1に示すようにインクジェットプリンタ1が使用可能に設置された状態を基準として、設置面側を下として上下方向を定義し、開口20が設けられている側を前として前後方向を定義し、前方からインクジェットプリンタ1を視て左側を左として左右方向を定義する。なお、左右方向は後述するキャリッジ40(
図2参照)の移動方向である走査方向と称する場合がある。
【0031】
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、本体筐体11とインクジェットプリンタ1の上方に積層されたスキャナ筐体12とによって、全体として略直方体形状を形成している。
【0032】
本体筐体11の前面には、操作パネル13と、カートリッジカバー14と、タンク交換部15と、が設けられている。操作パネル13は、各種操作ボタンおよび表示部131を有する。カートリッジカバー14は、本体筐体11に対して、回動可能に設けられている。カートリッジカバー14の内部には、カートリッジケース(図示せず)に装着されたインクカートリッジ(図示せず)が配置されている。また、本体筐体11の前面には、開口20が形成されており、給送トレイ21および排出トレイ22は、本体筐体11の前面に形成された開口20を通じてインクジェットプリンタ1に対して着脱可能に設けられている。スキャナ筐体12は、シートPに記録された画像を読み取るスキャナを有している。
【0033】
タンク交換部15は、本体筐体11の左右方向における側面に設けられている。本実施形態においては左側面に設けられている。タンク交換部15は、本体筐体11に対して、回動可能な蓋部により構成されており、蓋部を開閉することにより、本体筐体11に対して廃液タンク60の挿抜が可能となるように構成されている。なお、タンク交換部15は、蓋部を開閉する構成に限定するものではない。例えば、廃液タンク60と、蓋部を有する廃液タンク60のタンク保持部と、により本体筐体11に対して着脱可能な廃液タンクユニットを挿抜する構成であってもよい。この場合、廃液タンクユニットを本体筐体11から抜き取ると、タンク交換部15には廃液タンクユニットの形状に対応する開口が露出する。また、露出した開口に対して廃液タンクユニットを挿入すると、廃液タンクユニットが有する蓋部により、露出した開口は塞がれる。
【0034】
〔インクジェットプリンタ1の内部構成〕
次に、インクジェットプリンタ1の内部構成について、
図2を用いて説明する。
図2は、インクジェットプリンタ1の内部構成の概略を示す断面図である。
【0035】
図2に示すように、インクジェットプリンタ1は、給送部3と、記録部4と、搬送機構5と、を備えている。
【0036】
給送部3は、軸30と、給送アーム31と、給送ローラ32と、を有している。給送部3は、給送ローラ32の正回転によって、給送トレイ21に収容されたシートPを搬送路Rへ給送する。給送ローラ32は、給送アーム31の先端部に回転可能に支持されている。給送アーム31は、インクジェットプリンタ1のフレームに支持された軸30に回動可能に支持されている。給送アーム31は、自重又はバネ等による弾性力によって、給送トレイ21へ向けて回動付勢されている。
【0037】
搬送路Rは、給送トレイ21の後端部から上方に延び、ガイド部材33で区画される領域にて湾曲し、記録部4の位置を経由して、排出トレイ22に至る経路である。
【0038】
給送ローラ32は、制御部100(
図3参照)により給送モータ34(
図3参照)が駆動されると、給送トレイ21からシートPを1枚ずつ取り出す。給送トレイ21から取り出されたシートPは、搬送路Rに沿って送り出され、記録部4へと供給される。
【0039】
記録部4は、給送部3の上方に配置されている。記録部4は、キャリッジ40と、記録ヘッド41と、複数のノズル42と、プラテン43とを有している。キャリッジ40は、キャリッジモータ44(
図3参照)の駆動力が伝達されて、左右への移動方向である走査方向、すなわち、搬送されるシートPの幅方向に往復移動する。シートPへの画像記録において、インクジェットプリンタ1の制御部100は、シートPが停止している状態でキャリッジ40をシートPの幅方向に移動させながら記録ヘッド41のノズル42からインクを吐出させ、1行分の画像をシートPに記録させる記録処理と、搬送ローラ50および排出ローラ52を駆動させてシートPを所定の改行量だけ搬送する搬送処理とを繰り返す。
【0040】
キャリッジ40には、液体吐出部の一例である記録ヘッド41が搭載されている。記録ヘッド41の下面には、複数のノズル42が設けられている。複数のノズル42は、前後方向に配列されることにより、ノズル列を形成しており、ノズル面421には、左右方向に並んだ4つのノズル列が形成されている。複数のノズル42からは、右側に位置するノズル列を形成するものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。なお、ノズル列の配置順はこれに限られるものではなく、製品ごとに適宜変更されてもよい。
【0041】
プラテン43は、記録ヘッド41の下方に位置しており、左右方向におけるシートPの全長にわたって延びている。プラテン43は、記録処理時に、シートPを下側から支持する。プラテン43に支持されたシートPに対して、キャリッジ40が移動する過程において、記録ヘッド41がインク滴を選択的に吐出することによって、シートPに画像が記録される。
【0042】
搬送機構5は、前後方向において、キャリッジ40およびプラテン43を挟むように前後に配置された搬送ローラ50と、排出ローラ52と、を有する。搬送ローラ50の下方には、搬送ローラ50と対向する位置にピンチローラ51が設けられている。搬送ローラ50は、搬送モータ54(
図3参照)によって駆動される。ピンチローラ51は、搬送ローラ50の回転に伴って回転する。搬送ローラ50およびピンチローラ51が正回転することにより、シートPは、搬送ローラ50およびピンチローラ51に挟持されて、搬送路Rに沿って記録部4へと搬送される。
【0043】
排出ローラ52は、キャリッジ40およびプラテン43を挟んで搬送ローラ50よりも下流側に位置するように設けられている。排出ローラ52の上方には、排出ローラ52と対向する位置に拍車ローラ53が設けられている。排出ローラ52は、搬送モータ54によって駆動される。拍車ローラ53は、排出ローラ52の回転に伴って回転する。排出ローラ52および拍車ローラ53が正回転することにより、シートPは、排出ローラ52および拍車ローラ53に挟持されて、排出トレイ22へ排出される。
【0044】
[インクジェットプリンタ1の電気的構成]
図5は、インクジェットプリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。
図5に示すように、インクジェットプリンタ1は、上述した各部に加え、制御部100と、給送モータ34と、搬送モータ54と、キャリッジモータ44と、メンテナンスユニット16、ICチップ18と、通信インターフェース(I/F)108とを備えている。
【0045】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、EEPROM(登録商標)104、及びASIC105を有し、これらが内部バス106によって接続されている。
【0046】
ROM102には、CPU101が各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。RAM103は、CPU101が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、又はデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM104には、電源オフ後も保持すべき設定情報が格納される。一例として、EEPROM104には、カウント値が記憶されている。制御部100は、ROM102から読み出した制御プログラムに基づいて、給送モータ34、搬送モータ54、キャリッジモータ44、及び記録ヘッド41等を制御する。
【0047】
ASIC105には、給送モータ34、搬送モータ54、キャリッジモータ44、記録ヘッド41、操作パネル13、メンテナンスユニット16、ICチップ18、及び通信I/F108等が接続されている。ASIC105は、給送モータ34、搬送モータ54、及びキャリッジモータ44に駆動電流を供給する。制御部100は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって、給送モータ34、搬送モータ54、及びキャリッジモータ44の回転を制御する。
【0048】
制御部100は、記録ヘッド41の振動素子に駆動電圧を印加することによって、ノズル42からインク滴を吐出させる。制御部100は、操作パネル13からの操作を受け付ける。また、制御部100は、操作パネル13の表示部131に表示画面を表示させる。
【0049】
メンテナンスユニット16は、記録ヘッド41のノズル42の吐出状態を回復させるためのメンテナンスを行う。メンテナンスユニット16は、制御部100により動作が制御される。メンテナンスユニット16は、キャップ(図示せず)と、吸引ポンプ(図示せず)と、を有する。
【0050】
キャップは、昇降機構により上方に向かって駆動されると、待機位置にて待機する記録ヘッド41のノズル面421を覆う。記録ヘッド41の待機位置は、シートPに画像を記録しない時において、キャリッジ40が所定の位置に待機する位置である。キャップは、ノズル面421を覆うことでノズル42を封止する。
【0051】
吸引ポンプは、キャップに接続されている。吸引ポンプは、駆動モータが駆動することにより、キャップにより封止されたノズル42内のインク(廃液)を吸引する。駆動モータは、制御部100により制御されている。吸引ポンプは、例えばチューブポンプである。吸引ポンプにはインクチューブ17(
図4参照)が接続されている。インクチューブ17は、吸引ポンプにより吸引されたノズルのインクを廃液タンク60に導入するためのチューブである。吸引ポンプにより吸引されたインクは、インクチューブ17を介して廃液タンク60に導入される。
【0052】
制御部100は、ICチップ18との間にて情報の通信を行う。ICチップ18は、後述する廃液タンク60に設けられる。ICチップ18は、記憶素子を備え、廃液タンク60に関する情報を記憶する。ICチップ18は、接触式のICチップ18であり、コンタクトピン25とICチップ18とが電気的に接続されることにより、情報の通信が可能となる。
【0053】
通信I/F108は、LAN等のネットワークに接続され、インクジェットプリンタ1用のドライバが組み込まれたPC等の外部装置との接続を可能にしている。インクジェットプリンタ1は、通信I/F108を介して、印刷ジョブを受信可能である。
【0054】
〔廃液タンクの構成〕
図4を参照して廃液タンク60の構成について説明する。
図4は、廃液タンク60の構成を示す断面図である。
図4の符号1000は、本体筐体11に廃液タンク60が装着されていない状態を示す図である。
図4の符号1001は、本体筐体11に廃液タンク60が装着されている状態を示す図である。
図4の符号1002は、廃液タンク60からインクが漏出した状態を示す図である。なお、挿抜方向D2について、本体筐体11に廃液タンク60を装着する方向(以下、装着方向)は、紙面上、右側を向く方向であり、廃液タンク60を本体筐体11から抜去する方向(以下、抜去方向)は、紙面上、左側を向く方向であるものとして説明する(
図6~
図9において、同じ)。
【0055】
廃液タンク60は、略矩形状のタンクである。
図4に示すように、廃液タンク60は、廃液貯留部61と、導入口64と、大気連通口65と、ICチップ18と、を有している。
【0056】
廃液貯留部61は、液体を溜めることができる廃液タンク60の内部空間である。廃液タンク60の内壁面62は、廃液貯留部61を構成する。廃液貯留部61には、インクチューブ17を介してメンテナンスユニット16から送られてきたインクが溜められる。廃液貯留部61には、液体を吸収することができる不織布、スポンジ、もしくは綿などで構成されたフォーム(図示せず)が配置されている。廃液貯留部61内に送られてきたインクはフォームにより吸収される。
【0057】
導入口64は、廃液タンク60の内部(廃液貯留部61)と外部とを連通する開口である。導入口64は、連通口の一例である。導入口64は、廃液タンク60の鉛直方向D1に沿う外壁面63に形成されている。より、詳細には、導入口64は、装着方向を向く廃液タンク60の外壁面631に形成されている。導入口64は、記録ヘッド41からのインクを廃液タンク60に導入する。廃液タンク60が本体筐体11に装着された状態において、導入口64にはインクチューブ17が嵌合される。即ち、導入口64にインクチューブ17が嵌合されることにより、廃液タンク60にインクチューブ17が接続される。
【0058】
大気連通口65は、廃液タンク60の内部(廃液貯留部61)と廃液タンク60の外部とを連通する開口である。大気連通口65は、連通口の一例である。大気連通口65は、廃液タンク60が本体筐体11に装着された状態において、廃液タンク60の内部と外部との間において気体の出入りを可能とする開口である。大気連通口65は、廃液タンク60の鉛直方向D1に沿う外壁面63(631)に形成されている。より、詳細には、大気連通口65は、装着方向を向く廃液タンク60の外壁面631に形成されている。即ち、大気連通口65は、導入口64が形成されている外壁面631と同一平面上に形成されている。
【0059】
廃液タンク60には、ICチップ18が設けられている。ICチップ18は、本体筐体11に廃液タンク60が装着されることにより、後述するコンタクトピン25の第1接点28と電気的に接続する第2接点19を有する。第2接点19は、導入口64よりも鉛直方向D1の下方に位置するように設けられている。また、ICチップ18は、大気連通口65よりも鉛直方向D1の下方に位置するように設けられている。ICチップ18は、導入口64及び大気連通口65が形成された廃液タンク60の外壁面631と同一平面上に設けられている。
【0060】
ICチップ18の第2接点19は、複数設けられている。複数の第2接点19は、鉛直方向D1に沿う方向に並んでいる。ICチップ18の第2接点19が形成される面181は、廃液タンク60の鉛直方向D1に沿う面である。第2接点19は、導入口64が形成された廃液タンク60の外壁面631と同一平面上に設けられている。より詳細には、導入口64が形成された廃液タンク60の外壁面631と、第2接点19が形成される面181とは同一平面を形成している。これにより、外壁面631に沿って流れるインク(廃液)は、第2接点19が形成される面181に流れる構成となっている。
【0061】
コンタクトピン25は、廃液タンク60に設けられたICチップ18と電気的に接続するための部材である。コンタクトピン25は、ICチップ18の第2接点19と電気的に接続するための第1接点28を有する。コンタクトピン25は、先端に第1接点28を有し、先端に向かって先細りした形状である。即ち、コンタクトピン25は、針のような形状である。上記構成によれば、インクが付着した第2接点19に第1接点28が当接したとしても、第1接点28にインクが残存しにくくなる。そのため、廃液タンク60を再び装着した際に、第1接点28と第2接点19との間にて漏電を生じにくくすることができる。これにより、廃液タンク60からの液漏れの誤検知を防止することができる。
【0062】
本体筐体11には、第1コンタクトピン251及び第2コンタクトピン252が設けられている。なお、本明細書において、単にコンタクトピン25と称する場合、コンタクトピン25は第1コンタクトピン251及び第2コンタクトピン252を含むものとして説明する。第1コンタクトピン251及び第2コンタクトピン252は、鉛直方向D1に沿って並んでいる。
【0063】
コンタクトピン25の基端は、ベース部材26に接続している。ベース部材26には付勢部27が接続されている。付勢部27は、例えばバネなどの付勢部材により構成される。付勢部27は、ベース部材26を本体筐体11に支持すると共にベース部材26を抜去方向に付勢する。即ち、コンタクトピン25は、付勢部27により、抜去方向に付勢されている。なお、コンタクトピン25は別部材の付勢部27により付勢される場合に限らず、例えば板バネなどのようにコンタクトピン25自体が付勢部を有する構成であってもよい。上記構成によれば、第2接点19に第1接点28を確実に当接させることができる。そのため、第1接点28と第2接点19との間で電気的に確実に接続することができる。これにより、第1接点28と第2接点19との間における接続不良を防ぐことができる。
【0064】
図4の符号1000に示すように、本体筐体11に廃液タンク60が装着されていない状態では、コンタクトピン25の第1接点28は、ICチップ18の第2接点19と電気的に接続していない。即ち、第1接点28と第2接点19は、電気的に接続していない。また、導入口64にはインクチューブ17が嵌合されていない。
【0065】
廃液タンク60を本体筐体11に装着するため本体筐体11に対して廃液タンク60を装着方向に押し込むと、先ずICチップ18の第2接点19にコンタクトピン25の第1接点28が当接する。更に廃液タンク60を装着方向に押し込むと、コンタクトピン25は、廃液タンク60により付勢部材の付勢する方向とは反対方向に押し込まれる。更に、廃液タンク60を装着方向に押し込むと、導入口64にインクチューブ17が嵌合する。
図4の符号1001に示すように、本体筐体11に廃液タンク60が装着された状態では、第1接点28は第2接点19に当接し、導入口64にはインクチューブ17が嵌合した状態である。
【0066】
図4の符号1002を参照して、廃液タンク60の外部に液体が漏出した場合について説明する。廃液タンク60の廃液貯留部61がインクで一杯になると、導入口64とインクチューブ17との間の僅かな隙間から、又は大気連通口65から廃液タンク60の外部に廃液貯留部61内のインクが漏出する。また、廃液タンク60の廃液貯留部61がインクで一杯でない場合であっても、インクチューブ17と導入口64の接続が不完全であることにより、導入口64からインクが漏出する可能性がある。
【0067】
図4の符号1002では、導入口64からインクが漏出した場合が示されている。導入口64から漏出したインクは、廃液タンク60の外壁面63に沿って、鉛直方向D1に流れ落ちる。導入口64から漏出したインクが導入口64の下方に位置するICチップ18の第2接点19上に流れると、漏電が発生する。
【0068】
制御部100は、第2接点19に流れる電流値をモニターしている。制御部100は、第2接点19の電流値に基づいて、漏電が発生したことを異常として検知する検知処理を実行する。より詳細には、制御部100は、第2接点19に流れる電流が閾値を超えるか否かを判定することにより、異常(漏電)を検知する。これにより、液体の漏出を検知するセンサを別途設けることなく、液体の漏出を検知することができる。なお、制御部100は、第2接点19の電圧値をモニターし、第2接点19の電圧値が閾値を超えるか否かを判定することにより、異常を検知する構成としてもよい。制御部100は、異常を検知した場合、表示部131にエラーを表示させる。
【0069】
〔制御部による制御の流れ〕
制御部100による、第1接点28と第2接点19との間で漏電が生じた後の制御の流れについて、
図5のフローチャートを参照して説明する。
図5は、インクジェットプリンタ1の制御部100による制御の流れを示すフローチャートである。
【0070】
図5に示すように、先ず、制御部100は、第1接点28と第2接点19との間にて漏電が生じると、インクジェットプリンタ1の記憶領域に記憶されたカウント値を参照する(S1)。カウント値は、廃液タンク60の内部に溜められている液体の量を推定するためのデータから算出された値である。
【0071】
次に、制御部100は、ステップS1にて参照したカウント値が閾値を超えているか否かを判定する(S2)。カウント値が閾値を超えている場合(S2:YES)、制御部100は、エラーとして廃液タンク60の交換を促す表示を表示部131に表示させる(S3)。ステップS3は、本開示の交換表示処理に相当する。ステップS3の後、制御部100は、廃液タンク60のICチップ18を認証できたか否かを判定する(S4)。廃液タンク60のICチップ18を認証できなかった場合(S4:NO)、制御部100はステップS4を繰り返す。廃液タンク60のICチップ18を認証できた場合(S4:YES)、制御部100は記憶部に記憶されたカウント値をリセットする(S5)。続いて、制御部100は、廃液タンク60の交換を促す表示を表示部131から消去する(S6)。ステップS6の後、制御部100は処理を終了する。
【0072】
カウント値が閾値を超えていない場合(S2:NO)、制御部100は、エラーとして廃液タンク60の挿入状態の確認を促す表示を表示部131に表示させる(S7)。ステップS7において、制御部100は、ICチップ18の第2接点19に付着したインクを除去する対応が必要であることを促す表示を表示部131に更に表示させる。ステップS7は、本開示の確認表示処理に相当する。
【0073】
次に、制御部100は、廃液タンク60のICチップ18を認証することができたか否かを判定する(S8)。廃液タンク60のICチップ18を認証することができなかった場合(S8:NO)、制御部100はステップS8を繰り返す。廃液タンク60のICチップ18を認証することができた場合(S8:YES)、制御部100は廃液タンク60の挿入状態の確認を促す表示を表示部131から消去する(S9)。ステップS9において、ICチップ18に付着した液体を除去する対応が必要であることを促す表示についても表示部131から消去する。ステップS9の後、制御部100は処理を終了する。
【0074】
〔本実施形態の作用効果〕
上記構成によれば、廃液タンク60が本体筐体11に装着された状態において、制御部100は検知処理を実行する。これにより、例えば、導入口64及び大気連通口65から漏出したインク(液体)が導入口64及び大気連通口65の下方に位置する第2接点19上に流れると、第2接点19の電流値又は電圧値等が大きくなり、漏電が発生したことを検知することができる。即ち、制御部100は、廃液タンク60からインクが漏出していることを検知することができる。よって、インクの漏出を検知するセンサを別途設けることなく、液体の漏出を判定することができる。これにより、製造コストの増加を抑えることができる。
【0075】
上記構成によれば、導入口64及び大気連通口65から漏出した液体を、導入口64及び大気連通口65が形成された外壁面631に沿って下方に流すことができる。そのため、導入口64及び大気連通口65の下方に設けられた第2接点と、第1接点との間にて漏電を生じさせることができる。これにより、液体が漏出したことを検知し易くすることができる。
【0076】
上記構成によれば、導入口64及び大気連通口65から漏出したインクは、廃液タンク60の外壁面631を伝って下方に流れ、同一平面上の下方に設けられた第2接点19上にそのまま流れる。そのため、第1接点28と第2接点19との間にて漏電が生じる。これにより、廃液タンク60からインクが漏出したことを検知し易くすることができる。
【0077】
上記構成によれば、第2接点19が形成された面181は鉛直方向D1に沿う面であり、面181上に漏出したインクを流すことができる。そのため、第1接点28と第2接点19との間にて漏電が生じる。これにより、インクが漏出したことを検知し易くすることができる。
【0078】
上記構成によれば、第1接点28と第2接点19との間にて漏電が生じた場合、表示部131にエラーが表示される。これにより、ユーザは、廃液タンク60の外部にインクが漏出したことを認知することができる。
【0079】
上記構成によれば、第1接点28と第2接点19との間にて漏電が生じた場合、表示部131に廃液タンク60の交換を示す表示がなされる。これにより、ユーザは、廃液タンク60の交換が必要であることを認知することができる。
【0080】
上記構成によれば、第1接点28と第2接点19との間にて漏電が生じた場合であっても、カウント値が閾値を超えていない場合、交換表示処理が行われない。これにより、不必要に廃液タンクを交換してしまうことを防ぐことができる。
【0081】
上記構成によれば、第1接点28と第2接点19との間にて漏電が生じた場合、表示部131に廃液タンク60の挿入状態の確認を示す表示がなされる。これにより、ユーザは、廃液タンク60の挿入状態の確認が必要であることを認知することができる。
【0082】
上記構成によれば、第1接点28と第2接点19との間にて漏電が生じた場合であっても、カウント値が閾値を超えている場合、確認表示処理が行われない。これにより、ユーザが不必要に廃液タンク60の挿入状態の確認を行ってしまうことを防ぐことができる。
【0083】
上記構成によれば、ユーザは、第2接点19に付着したインクを除去する対応が必要であることを認識することができる。そのため、ユーザが指示された対応を取ることにより、廃液タンク60を挿入し直したとしても第1接点28と第2接点19との間にて漏電が生じることがない。これにより、インク漏れによるエラーを解除することができる。
【0084】
〔実施形態2〕
本開示の実施形態2について、
図6及び
図7を参照して以下に説明する。
図6は、廃液タンク60Aの構成を示す斜視図である。
図7は、廃液タンク60Aの構成を示す断面図である。
図7の符号1003は、本体筐体11に廃液タンク60Aが装着されている状態を示す図である。
図7の符号1004は、本体筐体11に廃液タンク60Aが装着されていない状態を示す図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。実施形態2における廃液タンク60Aの構成は、実施形態1の廃液タンク60Aの構成と比較して、廃液案内部を備えている点で異なる。
【0085】
図6及び
図7に示すように、廃液タンク60Aは、装着方向に向かって突出する凸部66を有している。凸部66には、導入口64及び大気連通口65が形成されている。より詳細には、凸部66の装着方向側の外壁面632に、導入口64及び大気連通口65が形成されている。
【0086】
廃液タンク60Aには廃液ガイド70が設けられている。廃液ガイド70は、廃液タンク60Aの外部に漏出したインクをICチップ18の第2接点19へと案内する部材である。廃液ガイド70は、廃液案内部の一例である。廃液ガイド70は、鉛直方向D1において、廃液タンク60Aの凸部66の下方に設けられている。即ち、廃液ガイド70は、鉛直方向D1において、導入口64及び大気連通口65の下方に設けられている。
【0087】
廃液ガイド70は、廃液タンク60Aの外部に漏出したインクを受ける。鉛直方向D1において上側に位置する廃液ガイド70の上面は、廃液タンク60Aの外部にて漏出したインクを受けて、受けたインクが流れる流路を構成する部分である。廃液ガイド70は、流路により受けた液体を第2接点19へと案内する。
【0088】
廃液ガイド70は、誘導部71と、平坦部72と、受渡部73とを有する。誘導部71は、誘導部71にて受けたインクを受渡部73へと誘導する部分である。誘導部71の上面(流路)は、鉛直方向D1に向かって延出する。誘導部71は、挿抜方向D2において、導入口64及び大気連通口65と略同じ位置に位置している。即ち、誘導部71は、導入口64及び大気連通口65から漏出したインクを受け易い位置に設けられている。誘導部71の装着方向側の端部711は、挿抜方向D2において、導入口64及び大気連通口65よりも装着方向側に位置している。これにより、誘導部71は、
図7の符号1004に示すように、導入口64に嵌合されていないインクチューブ17から漏出したインクを受けることも可能である。誘導部71の上面に沿って流れるインクは、平坦部72へと流れる。
【0089】
平坦部72は、誘導部71の抜去方向側の端部から続く部分である。平坦部72は、誘導部71よりも鉛直方向D1の下方に設けられている。鉛直方向D1において上側に位置する平坦部72の上面(流路)は、鉛直方向D1に直交する面である。誘導部71から流れてきたインクは、平坦部72にて一時的に流れが滞る。これにより、平坦部72にて漏出したインクを保持することができる。平坦部72は、保持部の一例である。
【0090】
受渡部73は、平坦部72の抜去方向側の端部から続く部分であり、廃液ガイド70にて受けたインクをICチップ18の第2接点19に受け渡す部分である。受渡部73は、鉛直方向D1において、第2接点19よりも上方に位置する。受渡部73の抜去方向側の端部731は、挿抜方向D2において、第2接点19と略同じ位置に位置する。これにより、受渡部73から第2接点19上にインクを受け渡し易くすることができる。受渡部73の鉛直方向D1の上側に位置する上面(流路)は、鉛直方向D1の下方に向かって延出する。受渡部73は、第2接点19側に向かうにつれ受渡部73の上面の幅が漸次狭くなっている。
【0091】
導入口64及び大気連通口65からインクが漏出すると、漏出したインクは凸部66の外壁面632を伝って鉛直方向D1に流れる。外壁面632を伝ってきたインクは、鉛直方向D1における凸部66の下部から廃液ガイド70上に滴り落ちる。廃液ガイド70は、鉛直方向D1における上面にて漏出したインクを受ける。廃液ガイド70にて受けたインクは、廃液ガイド70の上面に沿って、鉛直方向D1に流れる。廃液ガイド70上を流れるインクは、受渡部73により第2接点19へと受け渡される。
【0092】
本実施形態において、第1コンタクトピン251及び第2コンタクトピン252は、鉛直方向D1に対して直交する方向に並んでいる。なお、第1コンタクトピン及び第2コンタクトピンは、鉛直方向D1に対して交差する方向に並んでいればよい。上記構成によれば、第1コンタクトピン251の第1接点28に付着したインクが下方に滴り落ちたとしても、滴り落ちたインクが第2コンタクトピン252の第1接点28に付着することがない。そのため、第1接点28と第2接点19との間にて漏電を生じさせにくくすることができる。これにより、エラーからの復帰をし易くすることができる。
【0093】
なお、本実施形態において、第2接点19は導入口64及び大気連通口65の真下に設ける構成として説明したが、これに限られない。廃液ガイド70を設けることにより、第2接点は、鉛直方向D1において、導入口64及び大気連通口65の真下以外の部分に設けることも可能である。廃液ガイド70を、導入口64及び/又は大気連通口65の真下部分から第2接点19に向かって延出させる構成とすることにより、導入口64及び/又は大気連通口65の真下以外の位置に設けられた第2接点19上にインクを案内することができる。これにより、廃液タンク60Aに設けられる第2接点19の位置に自由度が生まれる。
〔変形例1〕
図8を参照して、実施形態2に係る廃液タンク60Aの廃液ガイド70の変形例について説明する。
図8は、廃液タンク60Aの廃液ガイドの変形例1を示す斜視図である。変形例1は、実施形態2に係る廃液ガイド70と比較して、廃液ガイド70Aに液体貯留部72Aが設けられている点で異なる。
【0094】
図8に示すように、廃液ガイド70Aには、誘導部71と受渡部73との間に液体貯留部72Aが設けられている。液体貯留部72Aは、保持部の一例である。液体貯留部72Aは、インクを貯留可能な凹部721を有する。液体貯留部72Aの受渡部73と接続する部分には、溝部722が設けられている。溝部722は凹部721に貯留したインクを受渡部73へ案内するための溝である。
【0095】
誘導部71から流れてきたインクは、凹部721にて貯留される。即ち、液体貯留部72Aにて一時的にインクが保持される。凹部721に一定量以上のインクが流れ込むと、凹部721からインクが溢れる。凹部721から溢れたインクは、溝部722を介して受渡部73へ流れる構成となっている。
【0096】
〔変形例2〕
図9を参照して、実施形態2に係る廃液タンク60Bの廃液案内部の変形例について説明する。
図9は、廃液タンク60Bの廃液案内部の変形例2を示す図である。変形例2は、実施形態2と比較して、廃液タンク60Bに形成されたガイド溝により廃液タンク60Bの外部に漏出したインクを第2接点19へ案内している点で異なる。
【0097】
図9の符号1005に示すように、廃液タンク60Bの外壁面631には、導入口64から第2接点19へと延出するガイド溝67が形成されている。ガイド溝67は、廃液案内部の一例である。ガイド溝67の基端は、鉛直方向D1において、導入口64の下方部分に形成されている。ガイド溝67の終端は、鉛直方向D1において、ICチップ18の上方に形成されている。より詳細には、ガイド溝67の終端は、鉛直方向D1において、第2接点19の上方に形成されている。ガイド溝67は、鉛直方向D1に沿って直線的に形成されている。
【0098】
ガイド溝67は、ガイド溝67の基端にて導入口64から漏出したインクを受ける。また、大気連通口65から漏出したインクは、外壁面631に沿って鉛直方向D1の下方に流れる。下方に流れたインクは、大気連通口65の下方に位置する導入口64の周縁部に沿って流れる。ガイド溝67は、導入口64の周縁に沿って流れるインクを導入口64の下方にて受ける。ガイド溝67に受けたインクは、ガイド溝67に沿って下方に流れる。ガイド溝67に沿って流れるインクは、ガイド溝67の終端にて第2接点19へと受け渡される。
【0099】
図9の符号1006に示すように、廃液タンク60Bには、鉛直方向D1に対して交差する方向に延出する部分を有するようにガイド溝671が形成されてもよい。ガイド溝671が鉛直方向D1に対して交差する方向に延出することにより、ICチップ18を導入口64の真下以外の位置設けることができる。即ち、ガイド溝671を備える構成とすることにより、廃液タンク60Bに設けられる第2接点19の位置に自由度が生まれる。
【0100】
〔本実施形態の作用効果〕
上記構成によれば、廃液タンク60A,60Bの外部にて漏出したインクは、廃液ガイド70,70A及びガイド溝67,671により第2接点19へと案内される。そのため、漏出したインクを第2接点19上へ流すことができる。これにより、廃液タンク60の外部にてインクが漏出したことを確実に検知することができる。
【0101】
上記構成によれば、廃液タンク60の外部にて漏出したインクが、一時的に平坦部72又は液体貯留部72Aにより保持される。そのため、廃液タンク60の挿抜時に少量の液体が偶発的に漏出したような場合であっても、第2接点19上に液体が流れることがない。これにより、第1接点28と第2接点19との間に生じる不要な漏電を防ぐことができる。
【0102】
上記構成によれば、第2接点19へ液体を受け渡す受渡部73は、第2接点19側に向かうにつれ流路の幅が狭くなっている。そのため、受渡部73の流路に沿って流れるインクは、確実に第2接点へ受け渡すことができる。これにより、インクを第2接点19へ確実に案内することができる。
【0103】
上記構成によれば、廃液ガイド70,70A及びガイド溝67,671は、廃液タンク60と共に移動する。そのため、廃液タンク60が不完全に挿入されたような場合であっても、廃液ガイド70,70A及びガイド溝67,671上を流れるインクを第2接点19へと受け渡すことができる。これにより、廃液ガイド70,70A及びガイド溝67,671上のインクを第2接点へ確実に案内することができる。
【0104】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1 インクジェットプリンタ
11 本体筐体
16 メンテナンスユニット
17 インクチューブ
18 ICチップ
19 第2接点
25 コンタクトピン
28 第1接点
41 記録ヘッド
60 廃液タンク
64 導入口
65 大気連通口
100 制御部
131 表示部
D1 鉛直方向
D2 挿抜方向