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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172280
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20231129BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20231129BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B41J2/17 207
B41J2/165 207
B41J2/175 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083964
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 好輝
(72)【発明者】
【氏名】久保 智幸
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 聡
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸昌
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥爾
(72)【発明者】
【氏名】山本 啓介
(72)【発明者】
【氏名】花丸 健志朗
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EA27
2C056EA29
2C056EB13
2C056EB47
2C056EB56
2C056EC26
2C056FA10
2C056JC13
2C056JC23
(57)【要約】
【課題】廃液貯留部の使用可能な残量を正確に検知することができるコンパクトでコストが安価な液体吐出装置を提供する。
【解決手段】インクジェットプリンタ(1)は、シートの有無を検出するためのメディアセンサ(90)と、シートにインクを吐出するノズルを具備した記録ヘッド(41)と、廃液を貯留する廃液ケースを有するとともに、本体筐体に挿抜可能な廃液ボックスと、制御部(100)と、を備えている。制御部(100)は、メディアセンサ(90)による、廃液ケースの色判別を行う色判別処理と、色判別処理の判別結果に基づき、廃液ボックスの使用可能な残量を判断する判断処理と、を含む処理を実行する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
印刷媒体の有無を検出するためのメディアセンサと、
前記印刷媒体に液体を吐出するノズルを具備した液体吐出ヘッドと、
前記液体の廃液を貯留し、少なくとも一部が透明な部分である容器を有するとともに、前記筐体に挿抜可能な廃液貯留部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記メディアセンサによる、前記部分の色判別を行う色判別処理と、
前記部分に対する前記色判別処理の判別結果に基づき、前記廃液貯留部の使用可能な残量を判断する判断処理と、
を含む処理を実行する、液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記判断処理において、前記部分に対する前記色判別処理の判別結果の値を基に、前記廃液貯留部の使用可能な残量について、所定の複数段階に分けて判断する、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記メディアセンサと前記容器との間に設けられるとともに、前記所定の複数段階にそれぞれ応じた複数の検知窓を、さらに備える、請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記液体吐出ヘッドから液体を所定のフラッシング領域に排出させるフラッシング処理を実行し、
前記複数の検知窓と、前記所定のフラッシング領域とは、所定の方向に沿って配置されている、請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記メディアセンサと前記容器との間で前記印刷媒体を支持する支持部材を、さらに備え、
前記複数の検知窓が、前記支持部材に設けられている、請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記支持部材は、印刷媒体をコルゲートに支持するための複数のリブを備え、
前記検知窓は、隣接する2つの前記リブの間に設けられている、請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記液体吐出ヘッドをメンテナンスするメンテナンスユニットと、
前記廃液貯留部と前記メンテナンスユニットとの間に設けられたチューブとを、さらに備え、
前記チューブの一端部に設けられたジョイントは、前記廃液貯留部を前記筐体から抜去する抜去方向とは反対側の前記廃液貯留部の壁面に設けられている、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記廃液貯留部は、前記容器の内部に配置されるとともに、前記廃液を吸収する吸収フォームを、さらに備える、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
情報を報知する報知部を、さらに備え、
前記制御部は、
前記判断処理において、前記部分に対する前記色判別処理の判別結果の値を基に、前記廃液貯留部を交換することを促す交換段階であると判断した場合、前記報知部に対して、前記廃液貯留部を交換することを促す報知処理を実行させる、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記部分に対する前記色判別処理の判別結果に基づいて、前記筐体の内部に前記廃液貯留部が装着されているか否かを判断する判断処理を実行する、請求項1から9のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
筐体と、
印刷媒体に液体を吐出するノズルを具備した液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを走査方向に移動可能に支持するキャリッジと、
前記キャリッジに搭載されたセンサと、
前記液体の廃液を貯留し、少なくとも一部が透明な部分である容器を有するとともに、前記筐体に挿抜可能な廃液貯留部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記センサによる、前記部分の色判別を行う色判別処理と、
前記部分に対する前記色判別処理の判別結果に基づき、前記廃液貯留部の使用可能な残量を判断する判断処理と、
を含む処理を実行する、液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷媒体に対して、液体としてのインクを吐出することにより、所望の印刷処理を印刷媒体に施す液体吐出装置が知られている。また、従来の液体吐出装置では、その液体の吐出性能及び印刷性能を維持するために、印刷処理に用いないインク(液体)を廃液として廃液貯留部に回収することが実用化されている。
【0003】
さらに、従来の液体吐出装置には、交換式の廃液貯留部の使用状況を判断するためのデータを記憶する記憶メディアを備えた記憶機構を廃液貯留部に設置したものがある。そして、この従来の液体吐出装置には、記憶メディアに記憶されたデータと、廃液貯留部の廃液量をカウントするカウンタからのカウント結果とを使用して、廃液貯留部の使用状況を判断することが開示されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-130762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のような従来の液体吐出装置では、廃液貯留部に記憶機構を設置していたので、廃液貯留部、ひいては液体吐出装置の大型化及びコストアップを抑えることが困難であった。また、従来の液体吐出装置では、上記カウント結果は廃液貯留部内での廃液の蒸発などの廃液の変化量については考慮されておらず、廃液貯留部の使用可能な残量を正確に検知することが難しいことがあった。
【0006】
本開示は、廃液貯留部の使用可能な残量を正確に検知することができるコンパクトでコストが安価な液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の液体吐出装置は、筐体と、印刷媒体の有無を検出するためのメディアセンサと、前記印刷媒体に液体を吐出するノズルを具備した液体吐出ヘッドと、前記液体の廃液を貯留し、少なくとも一部が透明な部分である容器を有するとともに、前記筐体に挿抜可能な廃液貯留部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記メディアセンサによる、前記部分の色判別を行う色判別処理と、前記部分に対する前記色判別処理の判別結果に基づき、前記廃液貯留部の使用可能な残量を判断する判断処理と、を含む処理を実行する。
【0008】
上記構成によれば、容器の透明な部分に対して、メディアセンサによる色判別処理が実行された後、その色判別結果に基づき、廃液貯留部の使用可能な残量を判断する判断処理が実行される。これにより、廃液貯留部に記憶機構を設置することなく、廃液貯留部内での廃液の変化量を考慮しつつ、廃液貯留部の使用可能な残量を判断することができる。この結果、廃液貯留部の使用可能な残量を正確に検知することができるコンパクトでコストが安価な液体吐出装置を構成することができる。
【0009】
本開示の液体吐出装置において、前記制御部は、前記判断処理において、前記部分に対する前記色判別処理の判別結果の値を基に、前記廃液貯留部の使用可能な残量について、所定の複数段階に分けて判断してもよい。
【0010】
上記構成によれば、制御部は、廃液貯留部の使用可能な残量について、所定の複数段階に分けて判断するので、廃液貯留部の使用可能な残量をより正確に検知することができる。
【0011】
本開示の液体吐出装置は、前記メディアセンサと前記容器との間に設けられるとともに、前記所定の複数段階にそれぞれ応じた複数の検知窓を、さらに備えてもよい。
【0012】
上記構成によれば、制御部は、判断処理において、複数の検知窓により、所定の複数段階をそれぞれ正確に判断することができる。これにより、廃液貯留部の使用可能な残量のより正確な検知を確実に行うことができる。
【0013】
本開示の液体吐出装置において、前記制御部は、前記液体吐出ヘッドから液体を所定のフラッシング領域に排出させるフラッシング処理を実行し、前記複数の検知窓と、前記所定のフラッシング領域とは、所定の方向に沿って配置されてもよい。
【0014】
上記構成によれば、複数の検知窓と所定のフラッシング領域とが所定の方向に沿って配置されているので、フラッシング処理を実行する場合でも、液体吐出装置が大型化するのを容易に抑えることができる。この結果、吐出性能を容易に抑えることができ、印刷性能に優れたコンパクトな液体吐出装置を容易に構成することができる。
【0015】
本開示の液体吐出装置は、前記メディアセンサと前記容器との間で前記印刷媒体を支持する支持部材を、さらに備え、前記複数の検知窓が、前記支持部材に設けられてもよい。
【0016】
上記構成によれば、複数の検知窓が支持部材に設けられているので、液体吐出装置が大型化するのを容易に抑えることができる。
【0017】
本開示の液体吐出装置において、前記支持部材は、印刷媒体をコルゲートに支持するための複数のリブを備え、前記検知窓は、隣接する2つの前記リブの間に設けられてもよい。
【0018】
上記構成によれば、隣接する2つのリブの間に検知窓が設けられているので、印刷媒体に対する吐出性能の向上を図る場合でも、液体吐出装置が大型化するのを容易に抑えることができる。この結果、印刷性能に優れたコンパクトな液体吐出装置を容易に構成することができる。
【0019】
本開示の液体吐出装置は、前記液体吐出ヘッドをメンテナンスするメンテナンスユニットと、前記廃液貯留部と前記メンテナンスユニットとの間に設けられたチューブとを、さらに備え、前記チューブの一端部に設けられたジョイントは、前記廃液貯留部を前記筐体から抜去する抜去方向とは反対側の前記廃液貯留部の壁面に設けられてもよい。
【0020】
上記構成によれば、メンテナンスユニットを設ける場合でも、液体吐出装置が大型化するのを容易に抑えることができる。この結果、吐出性能を容易に維持することができ、印刷性能に優れた液体吐出装置を容易に構成することができる。
【0021】
本開示の液体吐出装置において、前記廃液貯留部は、前記容器の内部に配置されるとともに、前記廃液を吸収する吸収フォームを、さらに備えてもよい。
【0022】
上記構成によれば、廃液貯留部には吸収フォームが設けられているので、廃液貯留部の廃液量を増やすことができる。これにより、廃液貯留部の交換頻度を低減することができ、メンテナンス作業を簡略化することができる液体吐出装置を容易に構成することができる。
【0023】
本開示の液体吐出装置は、情報を報知する報知部を、さらに備え、前記制御部は、前記判断処理において、前記部分に対する前記色判別処理の判別結果の値を基に、前記廃液貯留部を交換することを促す交換段階であると判断した場合、前記報知部に対して、前記廃液貯留部を交換することを促す報知処理を実行させてもよい。
【0024】
上記構成によれば、制御部は、報知部に対して、廃液貯留部を交換することを促す報知処理を実行させるので、廃液貯留部をより適切に用いることができる。
【0025】
本開示の液体吐出装置は、前記制御部は、前記部分に対する前記色判別処理の判別結果に基づいて、前記筐体の内部に前記廃液貯留部が装着されているか否かを判断する判断処理を実行してもよい。
【0026】
上記構成によれば、制御部は上記判断処理を実行することにより、廃液貯留部が筐体に正常に装着されたかどうかを判断することができる。これにより、液体吐出装置に異常が生じるのを確実に抑えることができる。
【0027】
本開示の液体吐出装置は、筐体と、印刷媒体に液体を吐出するノズルを具備した液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドを走査方向に移行可能に支持するキャリッジと、前記キャリッジに搭載されたセンサと、前記液体の廃液を貯留し、少なくとも一部が透明な部分である容器を有するとともに、前記筐体に挿抜可能な廃液貯留部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記センサによる、前記部分の色判別を行う色判別処理と、前記部分に対する前記色判別処理の判別結果に基づき、前記廃液貯留部の使用可能な残量を判断する判断処理と、を含む処理を実行する。
【0028】
上記構成によれば、容器の透明な部分に対して、センサによる色判別処理が実行された後、その色判別結果に基づき、廃液貯留部の使用可能な残量を判断する判断処理が実行される。これにより、廃液貯留部に記憶機構を設置することなく、廃液貯留部内での廃液の変化量を考慮しつつ、廃液貯留部の使用可能な残量を判断することができる。この結果、廃液貯留部の使用可能な残量を正確に検知することができるコンパクトでコストが安価な液体吐出装置を構成することができる。
【発明の効果】
【0029】
本開示の一態様によれば、廃液貯留部の使用可能な残量を正確に検知することができるコンパクトでコストが安価な液体吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本開示の一実施形態に係るインクジェットプリンタの外観斜視図である。
図2】インクジェットプリンタの内部構成の概略を示す断面図である。
図3】インクジェットプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図4】インクジェットプリンタの要部構成を示す平面図である。
図5図4に示した廃液ボックスとフラッシングユニットとの断面を示す概略図である。
図6図4に示したプラテンと廃液ボックスとの関係を示す斜視図である。
図7】(A)は、プラテンを示す平面図であり、(B)は、プラテンの一部の拡大断面図である。
図8】廃液ボックスの具体例を示す斜視図である。
図9】廃液ボックスの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔実施形態〕
(インクジェットプリンタ1の構成概要)
以下、本開示の実施形態について図1図4を参照しつつ説明する。図1は、本開示の一実施形態に係るインクジェットプリンタ1の外観斜視図である。図2は、インクジェットプリンタ1の内部構成の概略を示す断面図である。図3は、インクジェットプリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。図4は、インクジェットプリンタ1の要部構成を示す平面図である。
【0032】
図1において、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、液体吐出装置の一例である。以下の説明では、図1に示すようにインクジェットプリンタ1が使用可能に設置された状態を基準として、設置面側を下として上下方向を定義し、開口20が設けられている側を前として前後方向を定義し、前方からインクジェットプリンタ1を視て左側を左として左右方向を定義する。なお、左右方向は後述するキャリッジ40(図2)の移動方向である走査方向と称する場合がある。
【0033】
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、本体筐体11とインクジェットプリンタ1の上方に積層されたスキャナ筐体12とによって、全体として略直方体形状を形成している。本体筐体11は、筐体の一例である。
【0034】
本体筐体11の前面には、表示部DPと、操作パネル13と、カートリッジカバー14と、が設けられている。表示部DPは、報知部の一例である。操作パネル13は、不図示の各種操作ボタンを有する。カートリッジカバー14は、本体筐体11に対して、回動可能に設けられている。カートリッジカバー14の内部には、図4に示すように、カートリッジケース140に装着されたインクカートリッジ141が配置されている。図1に戻り、本体筐体11の前面には、開口20が形成されており、給送トレイ21及び排出トレイ22は、本体筐体11の前面に形成された開口20を通じてインクジェットプリンタ1に対して着脱可能に設けられている。スキャナ筐体12は、図示しない原稿媒体に記録された画像を読み取る、図示しないスキャナを有している。
【0035】
図1において、ボックス交換部15が、本体筐体11の左右方向における側面に設けられている。本実施形態においては、ボックス交換部15は、例えば、本体筐体11の左側面に設けられている。ボックス交換部15は、本体筐体11に対して、回動可能な蓋部151と、蓋部151を開くと露出する廃液ボックス60が収容可能な収容部152(図2)と、により構成されている。つまり、ボックス交換部15は、蓋部151を開閉することにより、本体筐体11に対して廃液ボックス60の挿抜が可能となるように構成されている。なお、廃液ボックス60は、廃液貯留部の一例である。
【0036】
収容部152は、廃液ボックス60の形状にあわせて構成されており、挿抜方向における本体筐体11の内部側には、廃液ボックス60の側面が当接する壁を備えている。この壁により、廃液ボックス60の内側方向への移動を規制する。
【0037】
なお、ボックス交換部15は、蓋部151を開閉する構成に限定するものではない。例えば、廃液ボックス60と、蓋部151を有する廃液ボックス60のボックス保持部と、により本体筐体11に対して着脱可能な廃液ボックスユニットを挿抜する構成であってもよい。この場合、廃液ボックスユニットを本体筐体11から抜き取ると、ボックス交換部15には廃液ボックスユニットの形状に対応する開口が露出する。また、露出した開口に対して廃液ボックスユニットを挿入すると、廃液ボックスユニットが有する蓋部151により、露出した開口は塞がれる。
【0038】
なお、ボックス交換部15が設けられる位置は、本体筐体11の左右方向における側面に限られるものではない。例えば、本体筐体11の前後方向における面に設けられていてもよいし、本体筐体11の上下方向における面に設けられていてもよい。また、以下の説明では、廃液ボックス60を挿抜する方向を挿抜方向と称する場合がある。
【0039】
(インクジェットプリンタ1の内部構成)
次に、本実施形態のインクジェットプリンタ1の内部構成について、図2を用いて説明する。
【0040】
図2に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、給送部3と、記録部4と、搬送機構5と、を備えている。
【0041】
給送部3は、軸30と、給送アーム31と、給送ローラ32と、を有している。給送部3は、給送ローラ32の正回転によって、給送トレイ21に収容されたシートPを搬送路Rへ給送する。給送ローラ32は、給送アーム31の先端部に回転可能に支持されている。給送アーム31は、インクジェットプリンタ1のフレームに支持された軸30に回動可能に支持されている。給送アーム31は、自重又はバネ等による弾性力によって、給送トレイ21へ向けて回動付勢されている。シートPは、印刷媒体の一例である。具体的には、シートPとしては、印刷用紙などの紙媒体に限らず、他にも、例えばOHPシート等のプラスチックからなる樹脂媒体であってもよい。
【0042】
搬送路Rは、給送トレイ21の後端部から上方に延び、ガイド部材33で区画される領域にて湾曲し、記録部4の位置を経由して、排出トレイ22に至る経路である。
【0043】
給送ローラ32は、後述の制御部100(図3)の指示に従って、給送モータ107(図3)が駆動されると、給送トレイ21からシートPを1枚ずつ取り出す。給送トレイ21から取り出されたシートPは、搬送路Rに沿って送り出されて、記録部4へと供給される。
【0044】
記録部4は、給送部3の上方に配置されている。記録部4は、キャリッジ40と、液体吐出ヘッドの一例である記録ヘッド41と、複数のノズル42と、支持部材の一例であるプラテン43とを有している。キャリッジ40は、左右方向に延びたガイドレール9Aと、ガイドレール9Bとに支持されている。キャリッジ40は、記録ヘッド41を走査方向に移動可能に支持する。具体的には、キャリッジモータ112(図3)の駆動力が伝達されて、キャリッジ40は、左右への移動方向である走査方向、つまり、搬送されるシートPの幅方向に往復移動する。
【0045】
本実施形態のインクジェットプリンタ1では、シートPへの印刷において、制御部100(図3)は、シートPの搬送が停止している状態でキャリッジ40を走査方向に移動させながら記録ヘッド41のノズル42からインク滴を吐出させる。そして、制御部100は、1行分の画像をシートPに記録させる記録処理と、搬送ローラ50及び排出ローラ52を駆動させてシートPを所定の改行量だけ搬送する搬送処理とを繰り返す。
【0046】
キャリッジ40には、記録ヘッド41が搭載されている。記録ヘッド41の下面には、複数のノズル42が設けられている。複数のノズル42は、前後方向に配列されることにより、ノズル列を形成しており、ノズル面421には、左右方向に並んだ4つのノズル列が形成されている。複数のノズル42からは、右側に位置するノズル列を形成するものから順番に、例えば、ブラック、イエロー、シアン、及びマゼンタのインクが吐出される。なお、ノズル列の配置順はこれに限られるものではなく、製品ごとに適宜変更されてもよい。
【0047】
記録ヘッド41は、制御部100(図3)からの指示に従って、図示しないピエゾ素子などの振動素子を振動させることによって、ノズル42からインク滴を吐出する。
【0048】
プラテン43は、記録ヘッド41の下方に位置しており、左右方向におけるシートPの全長にわたって延びている。プラテン43は、記録処理時に、シートPを下側から支持する。プラテン43に支持されたシートPに対して、キャリッジ40が移動する過程において、記録ヘッド41がインク滴を選択的に吐出することによって、シートPに画像が記録される。また、プラテン43には、廃液ボックス60の有無及び廃液ボックス60の使用可能な残量を判断するための複数の検知窓と、シートPをコルゲート(波形状)に支持するための複数のリブとが設けられている(詳細は後述。)。
【0049】
搬送機構5は、前後方向において、キャリッジ40及びプラテン43を挟むように前後に配置された搬送ローラ50と、排出ローラ52と、を有する。搬送ローラ50の下方には、搬送ローラ50と対向する位置にピンチローラ51が設けられている。搬送ローラ50は、搬送モータ108(図3)によって駆動される。ピンチローラ51は、搬送ローラ50の回転に伴って回転する。搬送ローラ50およびピンチローラ51が正回転することにより、シートPは、搬送ローラ50およびピンチローラ51に挟持されて、搬送路Rに沿って記録部4へと搬送される。
【0050】
排出ローラ52は、キャリッジ40及びプラテン43を挟んで搬送ローラ50よりも下流側に位置するように設けられている。排出ローラ52の上方には、排出ローラ52と対向する位置に拍車ローラ53が設けられている。排出ローラ52は、搬送モータ(不図示)によって駆動される。拍車ローラ53は、排出ローラ52の回転に伴って回転する。排出ローラ52及び拍車ローラ53が正回転することにより、シートPは、排出ローラ52および拍車ローラ53に挟持されて、排出トレイ22へ排出される。
【0051】
(インクジェットプリンタ1の電気的構成)
図3に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、上述した各部に加え、制御部100と、給送モータ107と、搬送モータ108と、キャリッジモータ112と、リニアエンコーダ113と、メディアセンサ90と、通信I/F(インターフェース)130と、を備えている。
【0052】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、EEPROM(登録商標)104、及びASIC105を有し、これらが内部バス106によって接続されている。
【0053】
ROM102には、CPU101が各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。RAM103は、CPU101が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、又はデータ処理の作業領域として使用される。
【0054】
EEPROM104には、電源オフ後も保持すべき設定情報が格納される。制御部100は、ROM102から読み出した制御プログラムに基づいて、給送モータ107、搬送モータ108、キャリッジモータ112、記録ヘッド41、表示部DP等を制御する。
【0055】
ASIC105には、給送モータ107、搬送モータ108、キャリッジモータ112、記録ヘッド41、メディアセンサ90、表示部DP、操作パネル13、及び通信I/F130が接続されている。また、ASIC105には、図示しないレジセンサ及びロータリエンコーダ等が接続されている。
【0056】
ASIC105は、給送モータ107、搬送モータ108、及びキャリッジモータ112に駆動電流を供給する。制御部100は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって、給送モータ107、搬送モータ108、及びキャリッジモータ112の回転を制御する。
【0057】
リニアエンコーダ113は、例えば、キャリッジモータ112の近傍に設けられて、キャリッジ40の位置の検出に用いられる。制御部100は、リニアエンコーダ113から出力されるパルス信号に基づいて、キャリッジ40の位置を検出する。また、制御部100は、検出したキャリッジ40の位置に基づいて、後に詳述するように、メディアセンサ90による、色判別結果を用いた廃液ボックス60の使用可能な残量の判断処理を行う。
【0058】
また、制御部100は、記録ヘッド41の振動素子に駆動電圧を印加することによって、ノズル42からインク滴を吐出させる。また、制御部100は、シートPの有無を検出するためのメディアセンサ90の検知結果を基に、プラテン43上にシートPが存在しているか否かについて判断する。
【0059】
具体的にいえば、メディアセンサ90は、後掲の図4に示すように、キャリッジ40に搭載されており、プラテン43に対向してキャリッジ40とともに走査方向に移動するようになっている。また、メディアセンサ90は、例えば、発光素子及び受光素子を含んだ光センサを用いて構成されている(図示せず)。そして、制御部100は、光センサの受光素子からの出力信号の大きさに基づき、プラテン43上のシートPの有無を判断する。メディアセンサ90は、センサの一例である。
【0060】
また、制御部100は、後に詳述するように、メディアセンサ90の検知結果を基に、廃液ボックス60の本体筐体11への挿抜状態及び廃液ボックス60の使用可能な残量を判断する。更に、制御部100は、ロータリエンコーダから出力されるパルス信号に基づいて搬送ローラ50の回転量を検知する。制御部100は、レジセンサから出力される検出信号に基づいて、シートPが搬送ローラ50との当接位置を通過したことを検知する。そして、制御部100は、レジセンサからON信号が出力された後、ロータリエンコーダから出力されるパルス信号に基づいて、搬送路RにおけるシートPの搬送量を推定する。
【0061】
表示部DPは、液晶パネルなどの表示パネルを含んでおり、制御部100の指示に従って、所定の情報を表示する。操作パネル13は、ユーザからの印刷ジョブなどの指示を入力する入力装置であり、入力した指示を受け付けて制御部100に出力する。なお、表示部DPにタッチパネルを設置することにより、ユーザからの指示を受け付ける構成でもよい。
【0062】
通信I/F130は、LAN等のネットワークまたはUSBメモリなどに接続可能に構成され、インクジェットプリンタ1用のドライバが組み込まれたパーソナルコンピュータ等の外部装置との接続を可能にしている。インクジェットプリンタ1は、通信I/F130を介して、印刷ジョブを受信可能である。
【0063】
以上の構成において、インクジェットプリンタ1は、搬送機構5によってシートPを搬送方向に搬送しつつ、キャリッジ40とともに記録ヘッド41を走査方向に移動させながらインクを吐出させることにより、シートPに画像を印刷する。
【0064】
(カートリッジケース140)
次に、カートリッジケース140について、図4を用いて説明する。図4に示すように、カートリッジケース140は、左右方向に並ぶ4つのインクカートリッジ141を備えている。各インクカートリッジ141は、カートリッジケース140に対して取り外し可能に設けられている。インクカートリッジ141には、それぞれ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが貯留されている。各インクカートリッジ141に貯留されたインクは、チューブ142を介して、記録ヘッド41に供給される。
【0065】
(メンテナンスユニット8)
次に、メンテナンスユニット8について、図4を用いて説明する。図4に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、メンテナンスユニット8を備える。メンテナンスユニット8は、キャップ80と、ポンプ81と、チューブ82とを備えている。メンテナンスユニット8は、キャリッジ40の走査経路よりも下方に位置し、走査方向においてプラテン43よりも外側となる位置に配置されている。本実施形態においては、左右方向における右側に配置されている。なお、メンテナンスユニット8が配置される位置は右側に限定するものではなく、左側に配置されてもよい。この場合、廃液ボックス60とフラッシングユニット70とが配置される位置が右側となる。
【0066】
キャップ80は、ゴム素材により構成されている。キャップ80は、記録ヘッド41よりも下方に位置し、走査方向においてプラテン43よりも外側となる位置に配置されている。キャリッジ40をプラテン43よりも外側のメンテナンス位置に移動させると、キャップ80とノズル面421とが対向する。
【0067】
キャップ80は、例えば、図示しない昇降機構により上下方向に移動可能に構成されている。キャップ80は、メンテナンス位置において上方向に移動することで、ノズル面421と接する。
【0068】
ポンプ81は、モータ(不図示)に駆動されることによって、ノズル42内のインク等をキャップ80及びチューブ82を通じて吸引し、チューブ82を通じて廃液ボックス60に排出する。
【0069】
チューブ82は、メンテナンスユニット8から排出されたインクを移送する流路であって、後述の接続部63(図5)を介して廃液ボックス60に連結されることにより、メンテナンスユニット8と廃液ボックス60とを接続する。チューブ82は、可撓性を有する素材で構成されており、キャップ80からポンプ81を経由して廃液ボックス60へとインクを移送する。
【0070】
メンテナンスユニット8は、以上の構成により、記録ヘッド41のメンテナンスを行う。より詳細には、メンテナンスユニット8は、ノズル42内のインクや空気、及びノズル42の下面に形成されている開口に付着した異物を吸引するパージ動作を実行する。なお、ノズル42内のインクや空気、及びノズル42の開口に付着した異物のことを、以下では「インク等」と称する。メンテナンスユニット8によって吸引除去されたインク等は、廃液として、廃液ボックス60に保持される。
【0071】
(廃液ボックス60)
次に、廃液ボックス60について、図4及び図5を用いて説明する。図5は、図4に示した廃液ボックス60とフラッシングユニット70との断面を示す概略図である。フラッシングユニット70については後述する。
【0072】
図5に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、インク等を貯留する廃液ボックス60を備えている。廃液ボックス60は、図5に示すように、廃液ケース61と、インク吸収フォーム62と、接続部63と、を有している。
【0073】
廃液ケース61は、容器の一例であり、例えば、透明な合成樹脂材料を用いて構成されている。廃液ケース61は、例えば、複数の直方体を組み合わせた直方体状の箱体である。また、廃液ケース61は、フラッシングユニット70に対向する開口61Aを有している。廃液ケース61の内部には、インク吸収フォーム62が設けられている。更に、廃液ケース61には、後に詳述するように、本体筐体11に対する、廃液ボックス60の装着の有無(挿抜状態)を判断するための反射膜が設けられている。
【0074】
なお、上記の説明では、透明な合成樹脂材料を用いた廃液ケース61について説明した。しかしながら、本開示の実施形態はこれに限定されるものではなく、廃液ケース61は、液体の廃液を貯留し、少なくとも一部が透明な部分である容器であれば何等限定されない。すなわち、廃液ケース61は、メディアセンサ90により、その内部の後述の色判別処理が実施可能なものであればよい。具体的には、廃液ケース61は、メディアセンサ90の発光素子からの入射光及びメディアセンサ90の受光素子に向かう出射光を透過可能な透光性を有する材料であれば何等限定されない。
【0075】
インク吸収フォーム62は、例えば、インク等を吸収することができる不織布、スポンジ、もしくは綿などで構成されている。また、インク吸収フォーム62は、例えば、白色の構成材料により構成されている。インク吸収フォーム62は、インク等を吸収することにより、白色から順次黒色に変色するようになっている。すなわち、インク吸収フォーム62では、ブラックのインク自体を吸収したり、イエロー、シアン、及びマゼンタのインクの混色であるブラックのインクを吸収したりすることにより、その吸収度合いの進行に応じて、黒色に変色するようになっている。
【0076】
すなわち、インク吸収フォーム62では、メンテナンスユニット8からのインク等及びフラッシングユニット70からのインクを、後述の挿入方向H(図6)に沿って吸収して黒色に変色する。これにより、廃液ボックス60では、インク等は廃液ケース61の内部において、挿入方向H(図6)に沿って順次貯留される。
【0077】
接続部63は、ジョイントの一例であり、廃液ケース61に対してチューブ82を接続する部分である。接続部63は、例えば、廃液ボックス60を本体筐体11から抜去する抜去方向とは反対側の廃液ボックス60の廃液ケース61の壁面61Bに設けられている。接続部63は、左右方向において、廃液ケース61の内部と外部とを連通する連通孔を形成している。接続部63は、チューブ82が接続可能に構成されており、メンテナンスユニット8と接続部63とをチューブ82により接続することで、メンテナンスユニット8から排出されるインク等を廃液ボックス60の廃液ケース61へ貯留する。
【0078】
なお、廃液ボックス60での接続部63の設置位置は、壁面61Bに限定されるものではなく、接続部63を介在させて廃液ボックス60とメンテナンスユニット8とを接続することができるものであればよい。
【0079】
但し、上記のように、抜去方向とは反対側の廃液ボックス60の壁面61Bに接続部63を設ける場合の方が、廃液ボックス60の交換作業を容易に行うことができる点で好ましい。すなわち、この場合、記録ヘッド41をメンテナンスするメンテナンスユニット8を設ける場合でも、インクジェットプリンタ1が大型化するのを容易に抑えることができる。この結果、インクジェットプリンタ1において、吐出性能を容易に維持することができる。従って、印刷性能に優れたインクジェットプリンタ1を容易に構成することができる。
【0080】
(フラッシングユニット70)
フラッシングユニット70は、図5に示すように、廃液ガイド71と、廃液ガイド71を固定するためのガイド固定枠72と、を備えている。フラッシングユニット70は、フラッシング処理時にノズル42から吐出されるインクのミスト飛散を防止するとともに、廃液ボックス60へインクを案内するように構成されている。
【0081】
フラッシング処理とは、フラッシングユニット70の上面側に設けられた所定のフラッシング領域FLと対向する位置である、フラッシング位置にキャリッジ40を移動させた状態で、記録ヘッド41を駆動させる。そして、制御部100が、シートPに向けたインクの吐出とは別に、複数のノズル42から所定のフラッシング領域FLを通して廃液ガイド71側にインクを吐出させる動作である。
【0082】
廃液ガイド71は、フラッシング処理により吐出されるインクのミスト飛散を防止するために、インクの吐出方向である上下方向に対して交差するように傾斜面710を有している。傾斜面710は、例えば、図4に示すように、上方に向けて左側から右側へ登り勾配となるように構成されている。
【0083】
フラッシング処理により吐出されたインクは、廃液ガイド71が有する傾斜面710に当たると、傾斜面710に沿って廃液ボックス60の開口61Aを通してインク吸収フォーム62へ案内される。
【0084】
ガイド固定枠72は、廃液ガイド71を保持する保持部の一例である。ガイド固定枠72は、廃液ガイド71を固定する枠体であり、上面視において略矩形の形状により構成されている。ガイド固定枠72は、例えば、本体筐体11にネジ締結されることにより、本体筐体11に固定される。ガイド固定枠72の上面が、所定のフラッシング領域FLを構成している。
【0085】
(プラテン43及び廃液ボックス60の配置)
次に、プラテン43及び廃液ボックス60の配置について、図6図8を用いて説明する。図6は、図4に示したプラテン43と廃液ボックス60との関係を示す斜視図である。図7(A)は、プラテン43を示す平面図であり、図7(B)は、プラテン43の一部の拡大断面図である。図8は、廃液ボックス60の具体例を示す斜視図である。
【0086】
図6に示すように、プラテン43は、廃液ボックス60の上方に配置されている。プラテン43には、複数、例えば、6つの検知窓43a、43b、43c、43d、43e、及び43fが各々所定の間隔を置いて設けられている。また、プラテン43及び廃液ボックス60では、廃液ボックス60が本体筐体11に装着されたときに、これらの検知窓43a~43fと所定のフラッシング領域FLとは、所定の方向である、廃液ボックス60の挿入方向Hに沿って配置されている。
【0087】
図7(A)及び図7(B)も参照して、各検知窓43a~43fは、プラテン43の本体を開口した隙間である。また、検知窓43aは、図6に示すように、廃液ボックス60が本体筐体11に装着されたときに、廃液ケース61の上面に設けられた反射膜64に対向するようになっている。反射膜64は、例えば、光反射率が高い白色のテープを用いて構成されており、図8に示すように、開口61Aの挿入方向H側に開口61Aに近接して、廃液ケース61の上面に取り付けられている。
【0088】
本実施形態のインクジェットプリンタ1では、メディアセンサ90がキャリッジ40の移動に伴い、検知窓43a~43fのいずれかの上方に位置すると、メディアセンサ90は、廃液ケース61の色判別を行う色判別処理を実行するようになっている。すなわち、制御部100は、メディアセンサ90により、検知窓43aを通して、反射膜64の白色の判別を行う。また、制御部100は、メディアセンサ90により、各検知窓43b~43fを通して、廃液ケース61内のインク吸収フォーム62の色を判別する。
【0089】
また、プラテン43には、隣接する2つの検知窓43a~43fの間に、本体筐体11の上側に突出した複数のリブ43g、43h、43i、43j、及び43kが設けられている。これらのリブ43g~43kは、図7(B)に示すように、シートPをコルゲート(波形状)に支持する。このように、プラテン43は、リブ43g~43kを介してコルゲートにシートPを支持するので、シートPを適切に搬送することができるとともに、シートPに対する印刷性能の低下を抑制することができる。
【0090】
具体的にいえば、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、シートPをコルゲートに支持することにより、シートPに対してインクを吐出した場合における、シートPでのカール(浮き)などの変形を抑制することができる。これにより、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、搬送機構5によるシートPの搬送時において、シートPの姿勢を安定しつつ搬送することができるとともに、排出トレイ22にシートPを排出した後に、シートPが丸く変形するのを抑えることができる。
【0091】
また、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、各検知窓43b~43eは、隣接する2つのリブ43g~43kの間に設けられていることとなる。この結果、シートPに対する吐出性能の向上を図る場合でも、インクジェットプリンタ1が大型化するのを容易に抑えることができる。従って、本実施形態では、印刷性能に優れたコンパクトなインクジェットプリンタ1を容易に構成することができる。
【0092】
(インクジェットプリンタ1の動作例)
以下に、本実施形態のインクジェットプリンタ1の動作例について具体的に説明する。なお、以下の説明では、制御部100による、廃液ボックス60に対する判断処理について主に説明する。
【0093】
(廃液ボックス60の挿抜状態の判断処理)
まず、制御部100が、本体筐体11に対して、廃液ボックス60が正常に装着されているか否かを判断する、廃液ボックス60の挿抜状態の判断処理について説明する。
【0094】
制御部100は、キャリッジモータ112を制御することにより、メディアセンサ90が検知窓43aの上方となるように、キャリッジ40を走査方向に移動させる。そして、制御部100は、メディアセンサ90による、廃液ケース61の色判別を行う色判別処理を実行する。
【0095】
具体的にいえば、制御部100は、メディアセンサ90の受光素子の出力信号を入力して、A/D(Analog/Digital)変換を行うことにより、例えば、256階調の検知データを取得する。そして、制御部100は、取得した検知データの階調値が反射膜64によって予め定められている第1閾値よりも小さいことを判別した場合、メディアセンサ90の検知結果が白色であると判別する。一方、制御部100は、取得した検知データの階調値が第1閾値以上であることを判別した場合、メディアセンサ90の検知結果が黒色であると判別する。
【0096】
更に、制御部100は、色判別処理の判別結果に基づいて、本体筐体11の内部に廃液ボックス60が装着されているか否かを判断する判断処理を実行する。つまり、制御部100は、色判別処理の判別結果が白色である場合、制御部100は、メディアセンサ90の下方に反射膜64が存在していると判断する。それにより、制御部100は、廃液ボックス60が本体筐体11に正常に装着されていると判断する。
【0097】
一方、制御部100は、色判別処理の判別結果が白色である場合、制御部100は、メディアセンサ90の下方に反射膜64が存在していると判断する。それにより、制御部100は、廃液ボックス60が本体筐体11に正常に装着されていると判断する。
【0098】
以上のように、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、制御部100は、廃液ケース61に対する色判別処理の判別結果に基づき、本体筐体11の内部に廃液ボックス60が装着されているか否かを判断する判断処理を実行している。これにより、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、廃液ボックス60が本体筐体11に正常に装着されたかどうかを判断することができる。この結果、本実施形態では、インクジェットプリンタ1に異常が生じるのを確実に抑えることができる。
【0099】
(廃液ボックス60の使用可能な残量の判断処理)
次に、制御部100が、廃液ボックス60の交換の要否の判断結果を基にユーザに廃液ボックス60の交換を促す表示を行うか否かを決定する、廃液ボックス60の使用可能な残量の判断処理について説明する。
【0100】
制御部100は、キャリッジモータ112を制御することにより、メディアセンサ90が検知窓43b~43fの各上方となるように、キャリッジ40を走査方向に移動させる。そして、制御部100は、検知窓43b~43fごとに、メディアセンサ90による、廃液ケース61及びその内部のインク吸収フォーム62についての色判別を行う色判別処理を実行する。
【0101】
具体的にいえば、制御部100は、リニアエンコーダ113によるキャリッジ40の位置の検出結果を基に、検知窓43b~43fの各位置を判断する。そして、制御部100は、検知窓43b~43fごとに、メディアセンサ90の受光素子の出力信号を入力して、A/D(Analog/Digital)変換を行うことにより、例えば、256階調の検知データを取得する。そして、制御部100は、取得した検知データの階調値が予め定められている第2閾値よりも大きいことを判別した場合、メディアセンサ90の検知結果が黒色であると判別する。一方、制御部100は、取得した検知データの階調値が第2閾値未満であることを判別した場合、メディアセンサ90の検知結果が白色であると判別する。
【0102】
更に、制御部100は、色判別処理の判別結果に基づいて、廃液ボックス60の使用可能な残量を判断する判断処理を実行する。具体的にいえば、制御部100は、検知窓43b~43fごとに、色判別処理の判別結果の値が黒色または白色のいずれか一方を示しているかについて判別する。この判別を行うことにより、制御部100は、判断処理において、廃液ケース61及びインク吸収フォーム62に対する色判別処理の判別結果の値を基に、廃液ボックス60の使用可能な残量について、所定の複数段階に分けて判断する。
【0103】
すなわち、プラテン43には、検知窓43b~43fが所定の間隔を置いて挿入方向Hに沿って設けられている。また、廃液ボックス60では、インク等は廃液ケース61の内部において、挿入方向Hに沿って順次貯留される。このため、制御部100は、検知窓43b~43fのうち、リニアエンコーダ113によるキャリッジ40の位置の検出結果を基に、黒色の判別結果を示している検知窓の位置を検知する。さらに、制御部100は、廃液ボックス60の使用可能な残量について、所定の複数段階に分けて判断することが可能となる。これにより、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、制御部100は、廃液ボックス60の使用可能な残量をより正確に検知することができる。
【0104】
詳細にいえば、制御部100は、黒色の判別結果を示している検知窓が廃液ボックス60の挿入方向Hの挿入先側の端部に近いほど、廃液ボックス60の使用可能な残量が少ないと判断する。すなわち、制御部100は、例えば、検知窓43bのみが黒色の判別結果を示している場合、制御部100は、廃液ボックス60の使用可能な残量が比較的多い量であると判断する。
【0105】
また、制御部100は、例えば、検知窓43bから検知窓43eまでが黒色の判別結果を示している場合、制御部100は、廃液ボックス60の使用可能な残量が比較的少ない量であると判断する。つまり、制御部100は、廃液ボックス60の貯留量が「nearFULL」の基準として検知窓43eを用いて、廃液ボックス60の使用率が90%程度であると判断する。
【0106】
また、制御部100は、例えば、検知窓43bから検知窓43fまでが黒色の判別結果を示している場合、制御部100は、廃液ボックス60の使用可能な残量がほぼ零に近い量であると判断する。つまり、制御部100は、廃液ボックス60の貯留量が「FULL」の基準として検知窓43fを用いて、廃液ボックス60の使用率が実質的に100%であると判断する。
【0107】
以上のように、制御部100は、廃液ボックス60の使用可能な残量について、所定の複数段階に分けて判断するので、制御部100は、廃液ボックス60の使用可能な残量をより正確に検知することができる。
【0108】
また、制御部100は、例えば、「nearFULL」の基準としての検知窓43eの色判別処理の結果が黒色である場合には、廃液ボックス60を交換することを促す交換段階であると判断する。更に、制御部100は、表示部DPに対して、廃液ボックス60を交換することを促す、例えば、メッセージなどの表示処理を実行させる。これにより、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、ユーザに対して廃液ボックス60の適切な交換時期を視認させることができ、廃液ボックス60をより適切に用いることができる。この結果、本実施形態では、廃液ボックス60の満杯による、インクジェットプリンタ1の停止などの発生を抑えることができる。
【0109】
なお、上記の説明以外に、例えば、報知部として、表示部DPに追加または表示部DPに代えて、スピーカなどの音声出力部に廃液ボックス60を交換することを促す音声出力を行わせる構成でもよい。
【0110】
以上のように、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、シートPの有無を検出するためのメディアセンサ90と、シートPにインクを吐出するノズル42を具備した記録ヘッド41と、を備えている。本実施形態のインクジェットプリンタ1は、廃液を貯留する廃液ケース61を有するとともに、本体筐体11に挿抜可能な廃液ボックス60と、制御部100と、を備えている。本実施形態のインクジェットプリンタ1では、制御部100は、メディアセンサ90による、廃液ケース61及びインク吸収フォーム62の色判別を行う色判別処理と、色判別処理の判別結果に基づき、廃液ボックス60の使用可能な残量を判断する判断処理と、を含む処理を実行する。
【0111】
以上の構成により、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、従来例と異なり、廃液ボックス60に記憶機構を設置することなく、廃液ボックス60の使用可能な残量を判断することができる。また、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、制御部100が廃液ケース61の内部のインク吸収フォーム62に対して、その色判別処理を実行しているので、たとえ、蒸発などにより、インク吸収フォーム62に吸収されたインク等が変化したとしても、廃液ボックス60の使用可能な残量を正確に検知することができる。この結果、本実施形態では、廃液ボックス60の使用可能な残量を正確に検知することができるコンパクトでコストが安価なインクジェットプリンタ1を構成することができる。
【0112】
また、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、廃液ボックス60の使用可能な残量の判断処理にメディアセンサ90を利用しているので、判断処理専用のセンサなどを用いることなく、廃液ボックス60の使用可能な残量を判断することができる。これにより、本実施形態では、インクジェットプリンタ1のコンパクト化及び低コスト化を簡単に図れることができる。また、メディアセンサ90は、廃液の変化量の影響を受け難いので、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、廃液ボックス60の使用可能な残量の正確な判断を容易に行うことが可能となる。
【0113】
また、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、複数の検知窓43b~43fがプラテン43に設けられているので、制御部100は、判断処理において、複数の検知窓43b~43fにより、所定の複数段階をそれぞれ正確に判断することができる。これにより、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、廃液ボックス60の使用可能な残量のより正確な検知を確実に行うことができる。
【0114】
なお、上記の説明では、プラテン43に複数の検知窓43b~43fを設けた場合について説明した。しかしながら、本開示の実施形態は、所定の複数段階にそれぞれ応じた複数の検知窓をメディアセンサ90と廃液ケース61との間に設けるものであれば何等限定されない。
【0115】
但し、上記のように、プラテン43に複数の検知窓43b~43fを設ける場合の方が、インクジェットプリンタ1が大型化するのを容易に抑えることができる点で好ましい。
【0116】
また、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、複数の検知窓43a~43fと所定のフラッシング領域とが挿入方向Hに沿って配置されている。これにより、本実施形態では、フラッシング処理を実行する場合でも、インクジェットプリンタ1が大型化するのを容易に抑えることができる。この結果、本実施形態では、吐出性能を容易に抑えることができ、印刷性能に優れたコンパクトなインクジェットプリンタ1を容易に構成することができる。
【0117】
なお、上記の説明では、透明容器としての廃液ケース61の内部にインク吸収フォーム62を設けた場合について説明した。本開示の実施形態は、これに限定されるものではなく、廃液を吸収するインク吸収フォーム62の設置を割愛する構成でもよい。
【0118】
但し、上記の実施形態のように、インク吸収フォーム62を廃液ケース61の内部に設ける場合の方が、廃液ボックス60の貯留量(廃液量)を増やすことができる。この結果、廃液ボックス60の交換頻度を低減することができ、メンテナンス作業を簡略化することができるインクジェットプリンタ1を容易に構成することができる点で好ましい。
【0119】
また、上記の説明以外に、メディアセンサ90に代えて、例えば、スキャナ筐体12に設けられた、図示しない原稿媒体に記録された画像を読み取るスキャナを廃液ボックス60の使用可能な残量の判断処理に用いることもできる。
【0120】
また、上記の説明以外に、廃液ケース61の内部にインク吸収フォーム62の設置を割愛した場合には、メディアセンサ90に代えて、インク等の液面までの距離を計測するTOF(Time of Flight)方式やBGS(Back ground Suppression)方式などの距離センサを廃液ボックス60の使用可能な残量の判断処理に用いることもできる。
【0121】
なお、上記の説明では、色判別処理にメディアセンサ90を用いた場合について説明したが、本開示の実施形態はこれに限定されない。具体的には、記録ヘッド41を走査方向に移動可能に支持するキャリッジ40と、キャリッジ40に搭載されたセンサとを備え、センサにより、廃液ケース(容器の透明な部分)61の色判別を行う色判別処理を行えるものであれば、何等限定されない。
【0122】
〔変形例〕
本開示の変形例について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0123】
図9は、廃液ボックス60の変形例を示す斜視図である。本変形例と実施形態との相違点は、廃液ケース61を不透明な材料を用いて構成するとともに、その内部を透視可能とする透明な部分の一例としての開口を設けた点である。
【0124】
図9に示すように、本変形例の廃液ボックス60は、任意の色に着色されて透明ではない材料を用いた廃液ケース61を備えている。この廃液ケース61には、その上面に開口61Bが形成されている。この開口61Bは、プラテン43の検知窓43b~43fに対向可能に形成されている。そして、本変形例では、制御部100は開口61Bを介してメディアセンサ90をインク吸収フォーム62と対向させることにより、メディアセンサ90による、インク吸収フォーム62の色判別を行う色判別処理を実行する。
【0125】
以上の構成により、本変形例は、実施形態と同様な効果を奏する。
【0126】
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる構成についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0127】
1 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
8 メンテナンスユニット
11 本体筐体(筐体)
40 キャリッジ
41 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
42 ノズル
43 プラテン(支持部材)
43a~43f 検知窓
43g~43h リブ
44a~44g 導光樹脂
60 廃液ボックス(廃液貯留部)
61 廃液ケース(容器)
61B 壁面
62 インク吸収フォーム(吸収フォーム)
63 接続部(ジョイント)
82 チューブ
90 メディアセンサ(センサ)
100 制御部
P シート(印刷媒体)
FL フラッシング領域
DP 表示部(報知部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9