(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172289
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂組成物ワニス及びプリプレグ
(51)【国際特許分類】
C08L 25/08 20060101AFI20231129BHJP
C08L 71/12 20060101ALI20231129BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C08L25/08
C08L71/12
C08J5/24 CET
C08J5/24 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083986
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】末満 千豊
(72)【発明者】
【氏名】金 載勲
(72)【発明者】
【氏名】林 翔太
(72)【発明者】
【氏名】立花 信一郎
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB09
4F072AB28
4F072AD05
4F072AD42
4F072AE02
4F072AF24
4F072AG03
4F072AG17
4F072AG19
4F072AH02
4F072AH31
4F072AH51
4F072AJ04
4F072AJ11
4F072AK02
4F072AK14
4F072AL13
4J002BC04W
4J002CH07X
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】誘電特性に優れるプリント配線板が得られる樹脂組成物、及びこれを含むプリプレグを提供すること。
【解決手段】本発明の脂組成物は、(A)ビニル芳香族共重合体、(B)ポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物であって、(A)ビニル芳香族共重合体は、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位と、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位とを有し、モノビニル芳香族化合物由来の構造単位の割合が55~95mol%、ジビニル芳香族化合物由来の構造単位の割合が5~45mol%、数平均分子量が2000~8000であり、(B)ポリフェニレンエーテルのOH基数が20~900μmol/gであり、重量平均分子量が10000~50000である、ことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビニル芳香族共重合体
(B)ポリフェニレンエーテル
を含む樹脂組成物であって、
前記(A)ビニル芳香族共重合体は、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位と、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位とを有し、モノビニル芳香族化合物由来の構造単位の割合が55~95mol%、ジビニル芳香族化合物由来の構造単位の割合が5~45mol%、数平均分子量が2000~8000であり、
前記(B)ポリフェニレンエーテルのOH基数が20~900μmol/gであり、重量平均分子量が10000~50000である、ことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)ビニル芳香族共重合体の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィの面積値として得られる、分子量1000以下の成分の割合が1~30%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)ビニル芳香族共重合体の、硼素含有量が0.5~5ppmである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)ポリフェニレンエーテルが、下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位との合計100mol%に対して、下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位5~90mol%と、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位10~95mol%とを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R
11は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子であり、R
12は、各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子である。)
【化2】
{式(2)中、R
22は、各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の飽和若しくは不飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子であり、2つのR
22は、両方がともに水素原子ではなく、R
21は、下記式(3)で表される部分構造である。
【化3】
(式(3)中、R
31は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8の直鎖アルキル基、又は2つのR
31が結合した炭素数1~8の環状アルキル構造であり、R
32は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキレン基であり、bは各々独立に、0又は1であり、R
33は、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基である。)}
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物と、芳香族系溶剤とを含む、樹脂組成物ワニス。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物と、基材と、芳香族系溶剤とを含み、芳香族系溶剤を0.1~1.0wt%含む、プリプレグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂組成物ワニス及びプリプレグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報ネットワーク技術の著しい進歩又は情報ネットワークを活用したサービスの拡大に伴い、電子機器には情報量の大容量化、及び処理速度の高速化が求められている。これらの要求に応えるため、電子機器に搭載されるプリント配線板には、従来から求められていた絶縁信頼性、耐熱性、剛性、難燃性等の特性に加え、低誘電率・低誘電正接が強く求められている。したがって、プリント配線板を構成する主要な絶縁材料である、樹脂組成物とガラスクロス基材では、特に誘電正接の更なる改良が検討されている。
【0003】
樹脂組成物としては、低い誘電率・誘電正接、及び高い耐熱性を有するポリフェニレンエーテル(PPE)の組成物が、上述のプリント配線板用材料として好適に使用される。例えば、特許文献1に記載の樹脂組成物は、特定の変性PPEと、架橋剤として特定のシアヌレート化合物と、ブタジエン及びスチレンの共重合体と、有機過酸化物とを所定の割合で含有すると、低誘電率及び低誘電正接に優れることが開示されている。
【0004】
また、例えば特許文献2には、樹脂組成物の調製においては、ヘテロ原子を含まない芳香族化合物の重合体を用いると、さらなる低誘電率、及び低誘電正接に優れる樹脂組成物が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-82200号公報
【特許文献2】国際公開第2017/115813号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ヘテロ原子を含まない芳香族化合物の重合体の場合、脆さや接着性に大きな課題があり、プリント配線板に求められる、耐熱性、加工性、成型性、導体密着性等の主要特性を全て満たす樹脂組成物としては、現在、主にPPE組成物が使用されている。そして、第5世代移動通信システム(5G)の普及に伴い、特性バランスに優れたPPE組成物の、さらなる低誘電正接化が課題になっている。しかし、現在幅広く使用されている、低分子量化して末端を架橋性官能基に変性したPPEは、低分子量化したことによりPPE本来の誘電特性が減じられるという課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、誘電特性に優れるプリント配線板が得られる樹脂組成物、及びこれを含むプリプレグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、上記の課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
(A)ビニル芳香族共重合体
(B)ポリフェニレンエーテル
を含む樹脂組成物であって、
前記(A)ビニル芳香族共重合体は、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位と、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位とを有し、モノビニル芳香族化合物由来の構造単位の割合が55~95mol%、ジビニル芳香族化合物由来の構造単位の割合が5~45mol%、数平均分子量が2000~8000であり、
前記(B)ポリフェニレンエーテルのOH基数が20~900μmol/gであり、重量平均分子量が10000~50000である、ことを特徴とする樹脂組成物。
[2]
前記(A)ビニル芳香族共重合体の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィの面積値として得られる、分子量1000以下の成分の割合が1~30%である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
前記(A)ビニル芳香族共重合体の、硼素含有量が0.5~5ppmである、[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
前記(B)ポリフェニレンエーテルが、下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位との合計100mol%に対して、下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位5~90mol%と、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位10~95mol%とを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R
11は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子であり、R
12は、各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子である。)
【化2】
{式(2)中、R
22は、各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の飽和若しくは不飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子であり、2つのR
22は、両方がともに水素原子ではなく、R
21は、下記式(3)で表される部分構造である。
【化3】
(式(3)中、R
31は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8の直鎖アルキル基、又は2つのR
31が結合した炭素数1~8の環状アルキル構造であり、R
32は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキレン基であり、bは各々独立に、0又は1であり、R
33は、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基である。)}
[5]
[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物と、芳香族系溶剤とを含む、樹脂組成物ワニス。
[6]
[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物と、基材と、芳香族系溶剤とを含み、芳香族系溶剤を0.1~1.0wt%含む、プリプレグ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、誘電特性に優れるプリント配線板が得られる樹脂組成物、及びこれを含むプリプレグを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について説明する。以下の実施形態は、本発明の一態様であるため、本発明は以下の実施形態のみに限定されない。従って、以下の実施形態は、本発明の要旨の範囲内で適宜変形して実施可能である。また、本明細書での「~」とは、特に断りがない場合、その両端の数値を上限値、及び下限値として含む意味である。本明細書において、数値範囲の上限値、及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0011】
本実施形態の樹脂組成物は、(A)ビニル芳香族共重合体、及び(B)ポリフェニレンエーテルを含む組成物であって、前記(A)ビニル芳香族共重合体は、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位と、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位とを有し、モノビニル芳香族化合物由来の構造単位の割合が55~95mol%、ジビニル芳香族化合物由来の構造単位の割合が5~45mol%、数平均分子量が2000~8000であり、前記(B)ポリフェニレンエーテルのOH基数が20~900μmol/gであり、重量平均分子量が10000~50000である。
【0012】
[(A)ビニル芳香族共重合体]
本実施形態の(A)ビニル芳香族共重合体(以下、単に「共重合体」と呼ぶこともある)は、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位と、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位とを有し、モノビニル芳香族化合物由来の構造単位の割合が55~95mol%、ジビニル芳香族化合物由来の構造単位の割合が5~45mol%、数平均分子量が2000~8000である、共重合体である。
【0013】
共重合体は、モノビニルベンゼン由来の構造単位の割合が55mol%以上であることにより、PPEとの相溶性、真空プレス成型時の流動性、及び、基板の低い誘電正接が得られる。モノビニルベンゼン由来の構造単位の割合が95mol%以下であることにより、モノビニルベンゼン以外の低誘電正接構造単位、架橋性構造単位等を共重合体に導入できる。このような観点から、モノビニルベンゼン由来の構造単位の割合は、55~95mol%であることが好ましく、65~85mol%であることがより好ましい。
【0014】
共重合体は、ジビニルベンゼン由来の構造単位の割合が5mol%以上であることにより、PPEとの相溶性、基板の耐熱性や高Tg、低い誘電正接が得られる。ジビニルベンゼン由来の構造単位の割合が45mol%以下であることにより、樹脂組成物の硬化中にゲル化し、局在化することを防止し、また積層板作製時にガラスクロスへの含浸性を高める。このような観点から、ジビニルベンゼン由来の構造単位の割合は、5~45mol%であることが好ましく、10~35mol%であることがより好ましい。
【0015】
共重合体は、数平均分子量が2000以上であることにより、樹脂組成物をガラスクロス基材へ塗布する際、揮発性を制御でき、安定特性の製品が得られる。数平均分子量が8000以下であることにより、溶剤溶解性、PPE相溶性、又は真空プレス成型時流動性への悪影響を発現させない。このような観点から、共重合体の数平均分子量(Mn)は、2000~8000であること好ましく、2500~7000であることがより好ましく、3000~6000であることがさらに好ましい。
【0016】
共重合体は、分子量1000以下の成分の量が1%以上(GPC面積値)であることにより、樹脂組成物をガラスクロス基材へ塗布し、乾燥後、プリプレグの樹脂粉の脱落量を抑えられ、基板成型後の耐熱試験時のクラック防止や絶縁層間の絶縁信頼性を向上できる傾向にある。分子量1000以下の成分の量が30%以下(GPC面積値)であることにより、樹脂粉の脱落量を抑えながら、基板成型時の硬化阻害と基板Tg低下を抑えられる傾向にある。このような観点から、共重合体の分子量1000以下の成分の量が、1~30%(GPC面積値)であることが好ましい。当該成分の量は1~20%であることがより好ましく、1~10%であることがさらに好ましい。
【0017】
共重合体は、モノビニルベンゼンモノマー量が0.01~5.0mol%であることが好ましい。0.01mol%以上であることにより、プリプレグ成型後のプリプレグ表面の樹脂粉の脱落量を抑えながら、真空プレス成型時流動性を向上できる傾向にある。5.0mol%以下であることにより、基板Tg低下を抑え、プリプレグの保存安定性を向上できる傾向にある。
【0018】
共重合体は、硼素の含有量が0.5ppm以上であることにより、硼素成分を多量に含有する低誘電ガラスクロス基材との界面密着性が向上し、炭化水素化合物の重合体の共通課題の接着性を改善することができる傾向にある。5ppm以下であることにより、基板の吸水性を抑えられる。硼素含有量は、例えば、重合触媒に硼素化合物を用い、精製により硼素含有量を調製することができる傾向にある。このような観点から、共重合体の硼素含有量は、0.5~5ppmであることが好ましく、0.5~3ppmであることがより好ましい。
【0019】
本実施形態では、共重合体を構成するモノビニルベンゼンの例としては、スチレン、エチルビニルベンゼン、エチルビニルナフタレン、エチルビニルビフェニル、等が挙げられる。共重合体を構成するジビニルベンゼンの例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、等が挙げられる。中でもPPEとの相溶性の観点で、スチレン、ジビニルベンゼンが最も好適である。
【0020】
さらに、本実施形態の共重合体の特性を損なわない範囲で、モノビニルベンゼン、ジビニルベンゼン以外の共重合可能なモノマーを導入してもよい。例えば、ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、インデン、アセナフチレン等の環状オレフィン化合物等が挙げられる。
【0021】
共重合体の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比として表される分子量分布(Mw/Mn)は2.5以下又は2.5未満であることが好ましい。Mw/Mnが2.5以下又は2.5未満であることにより、溶剤溶解性、PPE相溶性、又は真空プレス成型時流動性への悪影響を発現させない。このような観点から、共重合体のMw/Mnは、1以上2.0以下、又は1以上2.0未満であることがより好ましい。
【0022】
本実施形態に係る共重合体の製造方法としては、上記で説明されたモノビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、それらと共重合可能なモノマーなどを用いる既知の重合方法を採用してよく、例えば、カチオン重合、アニオン重合、ラジカル重合、配位重合など、単独で、又は組み合わせて使用することができる。本実施形態のひとつの具体的な合成については、実施例に記載の方法を参照することができる。
【0023】
本実施形態に係る樹脂組成物における共重合体の配合量は、共重合体、PPEの合計量に対して、5~70質量%である。共重合体配合量は、他の成分との相溶性の観点、又は樹脂組成物の成形体、樹脂組成物を含むプリプレグ、複数のプリプレグの積層板、プリプレグと基板の積層体などの誘電正接の低減、耐熱性の向上、及び良好な外観の観点から、10~50質量%であることが好ましく、15~40質量%であることがより好ましい。
【0024】
[(B)ポリフェニレンエーテル]
本実施形態では、(B)ポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物が提供される。(B)ポリフェニレンエーテルは、フェニレンエーテル単位を繰り返し構造単位として含む。フェニレンエーテル単位中のフェニレン基は、置換基を有してもよく、有していなくてもよい。
【0025】
また、本実施形態の(B)ポリフェニレンエーテルは、下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位とを少なくとも含み、化合物中の繰り返し単位が下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位とのみからなっていてもよい。
【化4】
(式(1)中、R
11は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子であり、R
12は、各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子である。)
【化5】
{式(2)中、R
22は、各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の飽和若しくは不飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子であり、2つのR
22は、両方がともに水素原子ではなく、R
21は、下記式(3)で表される部分構造である。
【化6】
(式(3)中、R
31は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8の直鎖アルキル基、又は2つのR
31が結合した炭素数1~8の環状アルキル構造であり、R
32は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキレン基であり、bは各々独立に、0又は1であり、R
33は、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基のいずれかである。)}
【0026】
上記式(1)中、R11は、各々独立に、炭素数1~6の飽和炭化水素基又は炭素数6~12のアリール基であることが好ましく、より好ましくはメチル基又はフェニル基さらに好ましくはメチル基である。式(1)中、2つのR11は、共に同じ構造であることが好ましい。
上記R11の炭素数1~6の飽和炭化水素基、炭素数6~12のアリール基における置換基としては、炭素数1~10の飽和又は不飽和炭化水素基、炭素数6~10のアリール基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0027】
上記式(1)中、R12は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~6の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは水素原子又はメチル基である。式(1)中、2つのR12は、異なることが好ましく、一方が水素原子、他方が炭素数1~6の炭化水素基(好ましくはメチル基)であることがより好ましい。
上記R12の炭素数1~6の炭化水素基、炭素数6~12のアリール基における置換基としては、炭素数1~10の飽和又は不飽和炭化水素基、炭素数6~10のアリール基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0028】
上記式(2)中、R22は、各々独立に、水素原子、炭素数1~15の飽和若しくは不飽和炭化水素基、又は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基であることが好ましく、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~10のアリール基であることがより好ましく、さらに好ましくは水素原子又はメチル基である。式(2)中、2つのR22は異なることが好ましく、一方が水素原子、他方が炭素数1~6の炭化水素基(好ましくはメチル基)であることがより好ましい。
上記R22の炭素数1~20の飽和又は不飽和炭化水素基、炭素数6~12のアリール基における置換基としては、炭素数1~10の飽和又は不飽和炭化水素基、炭素数6~10のアリール基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0029】
上記式(3)で表される部分構造としては、好ましくは、2級及び/又は3級炭素を含む基であり、例えばイソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、tert-アミル基、2,2-ジメチルプロピル基、シクロヘキシル基や、これらの末端にフェニル基を有する構造等が挙げられ、より好ましくは、tert-ブチル基、シクロヘキシル基であり、さらに好ましくはtert-ブチル基である。
なお、上記R31の炭素数1~8の直鎖アルキル基における置換基、上記R32の炭素数1~8のアルキレン基における置換基、及び上記R33の炭素数1~8のアルキル基及びフェニル基における置換基、としては、炭素数1~10の飽和又は不飽和炭化水素基、炭素数6~10のアリール基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0030】
本実施形態において、ポリフェニレンエーテルをNMR、質量分析等の手法で解析することによりその構造を同定できる。ポリフェニレンエーテルの構造を同定する具体的方法としては、フラグメンテーションを起こしにくいことが知られている電界脱離質量分析法(FD-MS)を実施し、検出されるイオンの間隔により繰り返しユニットを推定することが可能である。さらに電子イオン化法(EI)でフラグメントイオンのピーク解析やNMRによる構造解析と組み合わせることでポリフェニレンエーテルの構造を推定する方法が挙げられる。
【0031】
本実施形態のポリフェニレンエーテルは、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位の合計100mol%に対して、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位を5~90mol%と式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位を10~95mol%含有することが好ましい。溶剤溶解性に優れ、低誘電正接であるポリフェニレンエーテルを得る観点より、式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位は、15mol%以上であることが好ましく、より好ましくは20mol%以上である。同様の観点から、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位は、85mol%以下であることが好ましく、より好ましくは80mol%以下である。
本実施形態のポリフェニレンエーテルに含まれる式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位は、1種であっても複数種であってもよい。また、本実施形態のポリフェニレンエーテルに含まれる式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位は、1種であっても複数種であってもよい。
【0032】
本実施形態のポリフェニレンエーテルに含まれるモノマー単位(例えば、ポリフェニレンエーテルに含まれるフェノールに由来する全モノマー単位)100mol%に対して、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位の合計モルは、75mol%以上であることが好ましく、より好ましくは90mol%以上、さらに好ましくは95mol%以上である。
【0033】
式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位のそれぞれの割合は、例えば1H-NMR、13C-NMR等の解析手法を用いて求めることができ、より具体的には後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0034】
式(1)のフェノールは未置換のオルト位を有さないため(即ち、ヒドロキシル基が結合する炭素原子の2つのオルト位の炭素原子には水素原子が結合しないため)、フェノール性ヒドロキシル基とパラ位の炭素原子だけにおいて別のフェノール性モノマーと反応できる。従って、式(1)から誘導された繰り返し単位は、下記式(8)の構造を有する繰り返し単位を含む。
【化7】
(式(8)中、R
11とR
12は式(1)と同様である。)
【0035】
式(2)のフェノールは、フェノール性ヒドロキシル基に加えて、フェノールのオルト位又はパラ位のいずれかで別のフェノール性モノマーと反応可能である。従って、式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位は、下記式(9)、下記式(10)のモノマー単位あるいはこれらの組み合わせを有する。
【化8】
【化9】
(式(9)、式(10)中のR
21、R
22は、式(2)と同様である。)
【0036】
本実施形態におけるポリフェニレンエーテルのOH基数は20~900μmol/gである。OH基数が900μmol/g以下であることにより、(A)ビニル芳香族共重合体との相溶性が上がり、基板の耐熱性、Tg、誘電正接が得られる。OH基数は、好ましくは700μmol/g以下であり、より好ましくは500μmol/g以下である。また、ポリフェニレンエーテルのOH基数は20μmol/g以上であることにより、銅等との接着性が向上し、また合成の安定性が工場する傾向にある。OH基数は、好ましくは50μmol以上であり、より好ましくは100μmol以上である。
本実施形態におけるポリフェニレンエーテルの重量平均分子量は、10000~50000である。重量平均分子量が10000以上であることにより、PPE構造由来の高い耐熱性、Tgや低い誘電正接が得られる。重量平均分子量が50000以下であることにより、溶剤への溶解性や基板成型時の樹脂流動性を維持できる。一方、低分子量の末端変性PPEに比べて、架橋性や樹脂流動性が下がるため、上記の共重合体との組成物が必要になる。PPEの重量平均分子量は、好ましくは、15000~40000であり、より好ましくは20000~35000である。
【0037】
本実施形態におけるポリフェニレンエーテルは、式(1)のフェノールと式(2)のフェノールに加え、下記式(11)の2価フェノールに由来する構造を含有する3元共重合体を不純物(本明細書において、単に「不純物A」と称する場合がある。)として含有しても良い。本実施形態のポリフェニレンエーテルは、上記ポリフェニレンエーテルと上記不純物Aとの混合物であってもよい。実施形態のポリフェニレンエーテル100モル%に対する不純物Aのモル割合としては、10モル%以下であることが好ましく、より好ましくは5モル%以下である。
【0038】
上記不純物Aは、例えば、1価フェノールの酸化重合の際に副生成物として発生する下記式(12)と1価フェノールから構成されるポリフェニレンエーテルとの反応により、式(11)のz=0である2価フェノール由来の構造を含有する3元共重合体として合成され得る。
【化10】
{式(11)中、R
11とR
12は、式(1)と同様である。zは、0又は1であり、Yは、
【化11】
(式中、R
41は各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、及びハロゲン原子のいずれか)のいずれかである。}
【化12】
(式(12)中、R
11とR
12は、式(1)と同様である。)
【0039】
本実施形態におけるポリフェニレンエーテルの平均水酸基数は、未変性のポリフェニレンエーテルの場合には3.0個/分子未満であることが好ましく、より好ましくは2.5個/分子未満であり、さらに好ましくは2.0個/分子未満である。平均水酸基数が3.0個/分子を超えた場合には構造制御が出来ていない多分岐型の未変性のポリフェニレンエーテルであることを意味している。
【0040】
本実施形態におけるポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテルに含まれる水酸基が官能基(例えば、不飽和炭素結合を含む官能基等)へ変性された変性ポリフェニレンエーテルであっても良い。変性ポリフェニレンエーテルの場合には、平均水酸基数が0.2個/分子未満であることが好ましく、0.1個/分子未満であることがより好ましく、0.01個/分子未満であることがさらに好ましい。
【0041】
本実施形態におけるポリフェニレンエーテルは、下記式(4)、式(5)、式(6)、及び式(7)からなる群から選ばれる少なくとも一つの部分構造を有しても良い。
【化13】
【化14】
【化15】
(式(6)中、R
6は、水素原子又は炭素数1~10の飽和若しくは不飽和の炭化水素基であり、上記飽和若しくは不飽和の炭化水素はR
6の合計炭素数が1~10個となる範囲内で置換基を有していてもよい。)
【化16】
(式(7)中、R
7は、炭素数1~10の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基であり、上記飽和又は不飽和の2価の炭化水素はR
7の合計炭素数が1~10個となる範囲内で置換基を有していてもよく、R
8は、水素原子又は炭素数1~10の飽和若しくは不飽和の炭化水素基であり、該飽和又は不飽和の炭化水素はR
8の合計炭素数が1~10個となる範囲内で置換基を有していてもよい。)
【0042】
なお、上記式(4)、式(5)、式(6)、式(7)からなる群から選ばれる少なくとも一つで表される部分構造は、ポリフェニレンエーテルに含まれる水酸基と直接結合してよい。
【0043】
本実施形態におけるポリフェニレンエーテルは、フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールを含んでも良い。上記1価フェノールは、フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に結合する不飽和炭化水素基は1つであることが好ましい。上記不飽和炭化水素は、上記1価フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子の両方のオルト位の炭素原子に一つずつ結合していてもよいし、一方のオルト位の炭素原子に一つ結合していてもよい。なお、フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する上記1価フェノールは、上記式(1)のフェノール、又は上記式(2)のフェノールとは異なる1価のフェノールをいう。
【0044】
不飽和炭化水素基としては、炭素数3~10の不飽和の炭化水素基であることが好ましく、炭素数3~5の不飽和の炭化水素基であることが好ましい。このような不飽和炭化水素基としては、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、1-プロピニル、2-プロピニル等)等が挙げられる。
上記不飽和炭化水素は、炭素数3~10の条件を満たす限度で置換基を有していてもよい。
【0045】
フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールの導入率としては、硬化性官能基数の調整のため適宜調整してよいが、式(1)のフェノールとフェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールの合計に対して、フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールは0.1~30mol%であることが好ましく、0.1~25mol%であることがさらに好ましい。
【0046】
本実施形態のポリフェニレンエーテル中の、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位とフェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールから誘導された繰り返し単位の合計に対する、フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する上記1価フェノールから誘導された繰り返し単位のモル割合としては、0.1~40mol%であることが好ましく、より好ましくは0.1~10mol%である。
【0047】
なお、樹脂組成物に含まれるPPEは、1種でもよいし、2種以上のPPEの組合せでもよい。
【0048】
本実施形態に係る樹脂組成物におけるPPE配合量は、共重合体、PPEの合計量に対して、30~95質量%である。PPE配合量は、他の成分との相溶性の観点、又は樹脂組成物の成形体、樹脂組成物を含むプリプレグ、複数のプリプレグの積層板、プリプレグと基板の積層体などの誘電正接の低減、耐熱性の向上、及び良好な外観の観点から、50~90質量%であることが好ましく、60~85質量%であることがより好ましい。
【0049】
[添加剤]
本実施形態では、樹脂組成物には、特性を損なわない範囲で一般的な架橋剤を添加してもよく、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)等のトリアルケニルイソシアヌレート化合物、及び/又はトリアリルシアヌレート(TAC)等のトリアルケニルシアヌレート化合物は、PPEとスチレン系共重合物の相溶性をさらに向上させ、積層板の耐熱性又は導体密着性をさらに向上させる。
トリアルケニルイソシアヌレート/トリアルケニルシアヌレート以外にも、例えば、分子中にメタクリル基を2個以上有する多官能メタクリレート化合物、分子中にアクリル基を2個以上有する多官能アクリレート化合物、ポリブタジエン等の分子中にビニル基を2個以上有する多官能ビニル化合物、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン等の分子中にマレイミド基を2個以上有する多官能マレイミド化合物等が挙げられる。
その他に、熱可塑性樹脂として、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-ブチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体、スチレン-イソブチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-エチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-ブタジエン-ブチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン‐イソプレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレンの単独重合体(ポリスチレン)、等が挙げられ、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、及びポリスチレンからなる群より選択される1種以上であることがより好ましい。熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは30,000~300,000、より好ましくは31,000~290,000である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用い、標準ポリスチレン換算により求められる値である。
【0050】
[有機過酸化物]
本実施形態では、樹脂組成物の重合反応を促進する能力を有する任意の有機過酸化物を使用することができる。有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。なお、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等のラジカル発生剤も樹脂組成物のための反応開始剤として使用することができる。中でも、耐熱性、及び機械特性に優れ、さらに低い誘電率、及び低い誘電正接を有する硬化物を提供することができるという観点から、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
【0051】
有機過酸化物の1分間半減期温度は、好ましくは、155℃~185℃、又は160℃~180℃、又は165℃~175℃である。本明細書では、1分間半減期温度は、有機過酸化物が分解して、その活性酸素量が半分になる時間が1分間となる温度である。1分間半減期温度は、ラジカルに対して不活性な溶剤、例えばベンゼン等に有機過酸化物を0.05mol/L~0.1mol/Lの濃度となるように溶解させ、有機過酸化物溶液を窒素雰囲気下で熱分解させる方法で確認される値である。
【0052】
有機過酸化物の1分間半減期温度が155℃以上であることにより、樹脂組成物を加熱加圧成型に供する際、PPEを十分に溶融させてから架橋剤との反応を開始できるので、成型性に優れる傾向にある。一方、有機過酸化物の1分間半減期温度が185℃以下であることにより、通常の加熱加圧成型条件(例えば最高到達温度200℃)での有機過酸化物の分解速度が十分であるため、架橋剤との架橋反応を効率的かつ緩やかに進めることができるので、良好な電気特性(特に誘電正接)を有する硬化物を形成可能である。
【0053】
1分間半減期温度が155℃~185℃の範囲内にある有機過酸化物としては、例えば、t-へキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(155.0℃)(括弧内は1分間半減期温度、以下同じ。)、t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート(166.0℃)、t-ブチルペルオキシラウレート(159.4℃)、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(158.8℃)、t-ブチルペルオキシ2-エチルへキシルモノカーボネート(161.4℃)、t-へキシルパーオキシベンゾエート(160.3℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(158.2℃)、t-ブチルペルオキシアセテート(159.9℃)、2,2-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ブタン(159.9℃)、t-ブチルパーオキシベンゾエート(166.8℃)、n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルペルオキシ)バレラート(172.5℃)、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(175.4℃)、ジクミルパーオキサイド(175.2℃)、ジ-t-へキシルパーオキサイド(176.7℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(179.8℃)、及びt-ブチルクミルパーオキサイド(173.3℃)等が挙げられる。
【0054】
有機過酸化物の含有量は、樹脂組成物の合計質量100質量%を基準として、反応率を高くすることができるという観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、得られる硬化物の誘電率、及び誘電正接を低く抑えることができるという観点から、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
[難燃剤]
樹脂組成物は、難燃剤を含むことが好ましい。難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等の無機難燃剤;ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエタン、4,4-ジブロモビフェニル、エチレンビステトラブロモフタルイミド等の芳香族臭素化合物;レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート等のリン系難燃剤等が挙げられる。これらの難燃剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、難燃剤は、樹脂組成物が硬化した際に低誘電率及び低誘電正接となる観点から、デカブロモジフェニルエタンであることが好ましい。
【0055】
難燃剤の含有量は、特に限定されないが、UL規格94V-0レベルの難燃性を維持するという観点から、樹脂組成物の合計100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上である。また、得られる硬化物の誘電率、及び誘電正接を低く維持できる観点から、難燃剤の含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。
【0056】
[シリカフィラー]
樹脂組成物は、シリカフィラーを含有してよい。シリカフィラーとしては、天然シリカ、合成シリカのいずれも使用でき、例えば、溶融シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、及び中空シリカが挙げられる。シリカフィラーの含有量は、PPE、及び架橋剤として使用可能な全成分の合計100質量部に対して、10~100質量部であることができる。また、シリカフィラーは、その表面にシランカップリング剤等を用いて表面処理をされたものであってもよい。
【0057】
樹脂組成物は、上記の成分以外に、熱安定剤、酸化防止剤、UV吸収剤、界面活性剤、滑剤等の添加剤をさらに含んでもよい。
【0058】
<樹脂組成物ワニス>
樹脂組成物は、ガラスクロス基材に含侵させる際に好適な流動性を得る観点から、溶剤を含有した樹脂組成物ワニスとすることができる。プリプレグの製造工程においては、ガラスクロス基材に樹脂組成物ワニスを含浸させた後、熱風乾燥機等で溶剤分を乾燥除去することが好ましい。樹脂組成物中の固形成分は、ワニス中に溶解又は分散していてよい。溶剤の量は、樹脂組成物ワニスの流動性が好適な範囲となるように適宜調整すればよいが、例えば、樹脂組成物ワニス中の溶剤の量が、20~80質量%、又は30~70質量%、又は40~60質量%であってよい。
【0059】
溶剤としては、樹脂組成物中の成分の溶解性の観点から、トルエン、キシレン等の芳香族系化合物、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、及びクロロホルムが好ましい。これらの溶剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0060】
室温程度でも樹脂組成物ワニスの好適な流動性を確保し易くする観点からも、溶剤としては、トルエン等の芳香族系化合物を含むことが好ましく、例えば、トルエン・メチルエチルケトン混合溶剤、トルエン・シクロヘキサノン混合溶剤、及びトルエン・シクロペンタノン混合溶剤等が好ましい。また、本実施形態の樹脂組成物であれば、トルエン単独の溶剤であってもかかる溶剤に好適に溶解し、ひいては、基板への含浸性に優れるため、溶剤としてはトルエン単独の溶剤も好ましい。
さらに、プリプレグ中の芳香族系化合物溶剤の含量が、0.1~1.0wt%であると、プリプレグの粉落ちを抑え、かつ硬化阻害も抑えられる。0.1~0.5wt%がより好ましい。
【0061】
<積層板(積層体)>
本実施形態はまた、本実施形態に係る樹脂組成物に、基材として、Eガラス繊維、Lガラス繊維、Sガラス繊維、石英ガラス繊維等から形成されるガラスクロス、又はアラミド樹脂繊維等から形成される有機繊維クロスを含侵させて得られるプリプレグ、及びそのプリプレグを所望により複数用いて得られる積層板(積層体)(具体的には金属張積層板)を提供する。積層板の誘電正接は、実施例に記載の方法により10GHzで測定されるときに、0.0033未満であることが好ましく、0.0031以下であることがより好ましい。金属張積層板は、本実施形態のプリプレグと、金属箔とを積層して硬化して得られる。金属張積層板は、プリプレグの硬化物(「硬化物複合体」ともいう。)と金属箔とが積層して密着している形態を有することが好ましく、電子回路基板用材料として好適に用いられる。金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、及び銅箔が挙げられ、これらの中でも銅箔は電気抵抗が低いため好ましい。金属箔と組合せる硬化物複合体は、1枚でも複数枚でもよく、用途に応じて複合体の片面又は両面に金属箔を重ねて積層板に加工する。積層板の製造方法としては、例えば、前述のプリプレグを形成し、これを金属箔と重ねた後、樹脂組成物を硬化させることにより、硬化物積層体と金属箔とが積層されている積層板を得る方法が挙げられる。その積層板の特に好ましい用途の1つはプリント配線板である。プリント配線板は、金属張積層板から金属箔の少なくとも一部が除去されていることが好ましい。
【0062】
<プリント配線板>
本実施形態に係るプリント配線板は、金属張積層板から金属箔の一部が除去されたものである。本実施形態のプリント配線板は、典型的には、上述した本実施形態のプリプレグを用いて、加圧加熱成型する方法で形成できる。本実施形態のプリント配線板は、本実施形態のプリプレグから製造されることにより、優れた耐熱性、及び電気特性(低誘電率、及び低誘電正接)を有し、さらには環境変動に伴う電気特性の変動を抑制可能であり、さらには優れた絶縁信頼性、及び機械特性を有する。
【実施例0063】
以下に実施例を挙げて、本実施形態を詳細に説明する。ただし、本実施形態は実施例に限定されるものではない。
【0064】
[材料]
以下の材料を用いた。
【0065】
(共重合体)
表1の6種類の組み合わせについて、表1に記載の各成分と酢酸プロピルを[酢酸プロピル]/[モノマー]=0.95(mol比)で混合した。触媒として三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体[触媒]/[モノマー]=0.038(mol比)量を添加した。70℃で30分間加熱して重合したのち、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し重合停止させた後、エバポレーターで濃縮し、10種類の(共)重合体を得た。
使用したモノマーを以下に示す。
・St:スチレン
・DVB:ジビニルベンゼン
・EVB:エチルビニルベンゼン
【0066】
【0067】
(ビニル芳香族共重合体の各構造単位の比率の測定方法)
日本電子製核磁気共鳴分光装置(機種名:JNM-ECZ500R/S1型)を用い、13C-NMR及び1H-NMR分析により測定した。溶媒としてクロロホルム-d1を使用し、テトラメチルシランの共鳴線を内部標準として使用した。5.8ppm~7.7ppmのピークの面積値に対する5.2ppmと5.7ppmのピークの面積値の比率を、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)の比率とし、1からジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)の比率を引いた値を、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)の比率とした。
【0068】
(ビニル芳香族共重合体の分子量分布の測定方法)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用い、分子量既知の標準ポリスチレンの溶出時間との比較により、スチレン系エラストマーの数平均分子量(Mn)を求めた。具体的には、試料濃度1.0質量%(溶媒:クロロホルム)の測定試料を調製後、測定装置にはHLC-8320GPC(東ソー株式会社製)を用い、次の条件にて測定した。
カラム:Shodex製K-806Lを3本を直列に接続
溶離液:クロロホルム
注入量:100μL
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI
【0069】
(PPE)
・PPE1:ジメチルフェノール・2-tert-ブチル-5-メチルフェノール共重合物、Mw25000、OH基数300μmol/g
重合槽底部に、酸素含有ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフルを備え、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた40リットルのジャケット付き重合槽に、30.9L/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、2.4gの酸化第二銅、18.1gの47質量%臭化水素水溶液、5.8gのジ-t-ブチルエチレンジアミン、28.1gのジ-n-ブチルアミン、85.6gのブチルジメチルアミン、17.9kgのトルエン、及び1617gの2,6-ジメチルフェノール、383gの2-tert-ブチル-5-メチルフェノールを入れ、均一溶液とした。次に、重合槽へ21.0L/分の速度で乾燥空気をスパージャーより導入し始め、重合を開始した。乾燥空気を105分間通気し、重合混合物を得た。なお、重合中は内温が40℃になるようコントロールした。重合終結時の重合混合物(重合液)は均一な溶液状態であった。
乾燥空気の通気を停止し、重合混合物に25.9gのエチレンジアミン四酢酸4ナトリウム塩(同仁化学研究所製試薬)を2kgの水溶液として添加した。70℃で150分間、重合混合物を撹拌し、その後20分静置し、液-液分離により有機相と水相とを分離した。上記有機相をロータリーエバポレーターによりポリマー濃度が30質量%になるまで濃縮した。
上記溶液を、ポリマー溶液に対するメタノールの比が4となるメタノールを混合し、ポリマーの析出を行った。ガラスフィルターを用いた減圧濾過により湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。さらに湿潤ポリフェニレンエーテルに対するメタノールの比が4となる量のメタノールにより湿潤ポリフェニレンエーテルを洗浄した。上記洗浄操作を三回行った。その後、湿潤ポリフェニレンエーテルを、140℃、1mmHgで120分保持し、乾燥状態のPPE1を得た。
【0070】
・PPE2:ジメチルフェノール重合物、Mw30000、OH基数100μmol/g
フェノール原料を2kgの2,6-ジメチルフェノールとし、空気を導入し始めてから117分後に空気の通気を止めた他はPPE1と同様の方法で操作を実施した。
【0071】
・PPE3:製品名「SA90」、Sabicイノベーティブプラスチックス社製、Mw:4000、OH基数1100μmol/g
【0072】
(PPEの分子量分布の測定方法)
測定装置として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(株式会社島津製作所製、LC-2030C Plus)を用い、標準ポリスチレンとエチルベンゼンにより検量線を作成し、この検量線を利用して、得られた変性ポリフェニレンエーテルの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)の測定を行った。標準ポリスチレンとしては、分子量が、3,650,000、2,170,000、1,090,000、681,000、204,000、52,000、30,200、13,800、3,360、1,300、550のものを用いた。
カラムは、昭和電工(株)製K-805Lを2本直列につないだものを使用した。溶剤は、クロロホルムを使用し、溶剤の流量は1.0mL/分、カラムの温度は40℃として測定した。測定用試料としては、変性ポリフェニレンエーテルの1g/Lクロロホルム溶液を作製して用いた。検出部のUVの波長は、標準ポリスチレンの場合は254nm、ポリフェニレンエーテルの場合は283nmとした。
【0073】
(PPEのОH基数の測定方法)
ポリフェニレンエーテルを5.0mg秤量した。そして、この秤量したポリフェニレンエーテルを、25mLの塩化メチレンに溶解させた。調製した溶液2.0mLに対して、2質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)のエタノール溶液を150μL添加した後、UV分光光度計(日立製作所:U-3210型)を用いて、318nmの吸光度(Abs)を測定した(セル長1cmの吸光度測定用セルを使用)。そして、その測定結果に基づき、吸光度から得られるОH基数を、下記数式(1)により求めた。
OH基数(μmol/g)=[(25×Abs)/(ε×5)]×106 ・・・数式(1)
(ここで、εは、吸光係数を示し、4700L/mol・cmである。)
【0074】
(PPEの一分子当たりのOH基数の測定方法)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて求めた数平均分子量(詳細は上記に記載)を用いて、ポリフェニレンエーテル1分子当たりのOH基数を下記数式(2)により求めた。
1分子当たりの平均水酸基数(個/分子)=(ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて求めた数平均分子量)×(吸光度から得られるOH基数)/106 ・・・数式(2)
【0075】
(PPEのジメチルフェノール・2-tert-ブチル-5-メチルフェノール共重合物のモル割合の測定方法)
実施例及び比較例で得られたPPEを測定溶媒(水酸基を消失させるため重水を1滴加えた重クロロホルム)に溶解し、テトラメチルシランを内部標準として用い、1H-NMR測定(JEOL製500MHz)を行った。測定の際、ポリフェニレンエーテルは事前に80℃、1mmHgで8時間保持することでトルエンや水等の揮発成分を除去し、乾燥状態の未変性ポリフェニレンエーテルとして測定を行った。ジメチルフェノール、2-tert-ブチル-5-メチルフェノールから誘導される単位のシグナルを同定し、それぞれの割合を算出した。
【0076】
(有機過酸化物)
・PBP:ビス(1-tert-ブチルペルオキシ-1-メチルエチル)ベンゼン(製品名「パーブチルP」、日油社製)
【0077】
<樹脂組成物ワニスの調製>
表2の12種類の樹脂組成物を得るように、予め各材料を計量し、容器にトルエン/メチルエチルケトン混合溶剤を50:50の比率で入れ、ミキサーで攪拌しながら、各材料を混合溶剤に投入し、80℃に加熱しながら5時間以上混合して、60質量%の樹脂組成物ワニスを調製した。
【0078】
<プリプレグの作製>
低誘電率ガラスクロスL2116(重量94g/m2、厚さ91μm)を、約100N/mの一定張力で樹脂組成物ワニスに含浸させ、スリットで掻き落とし、120℃で10分間乾燥して、プリプレグを作製した。乾燥後、10本の回転ロールを経て、約200N/mの一定張力でプリプレグを芯管に巻き取った。最初に、スリット掻き落し後の未乾燥のプリプレグ(樹脂付きガラスクロス)から200mm×200mmを切り出し、樹脂付着量が50wt%となるスリット掻き落し条件であることを確認した。
【0079】
<評価方法>
【0080】
(1)プリプレグ樹脂粉落ち、積層板外観、積層板耐熱性
プリプレグを巻き取った芯管から巻き出し、200mm×200mmにカットした。カット後のプリプレグの樹脂付着量と、前記の乾燥前のプリプレグの樹脂付着量から、プリプレグの樹脂粉落ち量を算出した。
プリプレグを8枚重ね、室温から昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力5kg/cm2の条件で真空プレスを行い、130℃まで達したら昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力40kg/cm2の条件で真空プレスを行い、200℃まで達したら温度を200℃に維持したまま圧力40kg/cm2、かつ60分間の条件で真空プレスを行うことによって積層板を作製した。
【0081】
積層板の外観評価として、ガラスクロス糸束への樹脂未含浸部を示す積層板の外観のカスレの有無を目視により評価した(表2中、〇はカスレ無し、×はカスレ有りを表す)。
積層板の耐熱性評価として、積層板を、50mm×50mmにカットし、5点を、121℃飽和蒸気圧のプレッシャークッカーに10時間入れ、取り出し、表面の水分を拭き取った後、288℃のハンダ浴に20秒間浸漬し、積層板の膨れ度を次の評価基準に従って評価した。
〇(良好):膨れが全くなし
×(不良):膨れが1個以上発生
【0082】
(2)基板誘電正接(Df、10GHz)
上記耐熱性評価と同様に、プリプレグを8枚重ねて積層板を作製し、10GHzでの誘電正接を、空洞共振法にて測定した。測定装置としてネットワークアナライザー(N5230A、AgilentTechnologies社製)、及び関東電子応用開発社製の空洞共振器(Cavity Resornator CPシリーズ)を用いて測定した。
(3)層間絶縁信頼性
プリプレグ1枚を上下に厚さ12μmの銅箔を重ねて両面銅張積層板を作製し、50mm×50mmに切り出し、上下の銅箔をエッチングして電極上のパターンを形成し、評価試料を作製した。85℃85%の恒温恒湿槽の中に評価試料10点を入れ、100Vの電圧をかけ、1000hr後の短絡数(割合)から層間絶縁信頼性(%)を評価した。
【0083】
結果を表2に示す。
【0084】
【0085】
表2から明らかなように、実施例では、誘電特性、層間絶縁信頼性に優れ、またプリプレグ樹脂粉落ち、積層板の外観においていずれも良好な結果が得られたが、これに対し、比較例では十分な結果が得られなかった。
【0086】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。