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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172291
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】固体酸化物形燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0265 20160101AFI20231129BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20231129BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20231129BHJP
   H01M 8/0247 20160101ALI20231129BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20231129BHJP
   H01M 8/1213 20160101ALI20231129BHJP
【FI】
H01M8/0265
H01M8/12 101
H01M8/02
H01M8/0247
H01M8/0258
H01M8/1213
H01M8/12 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083988
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 祐介
(72)【発明者】
【氏名】市原 敬士
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126AA08
5H126AA09
5H126AA12
5H126BB06
5H126EE03
5H126EE11
5H126EE22
5H126EE31
5H126JJ02
5H126JJ03
5H126JJ04
(57)【要約】
【課題】改質反応の偏りによる温度低下を抑制し、発電性能の低下を抑制可能な固体酸化物形燃料電池を提供する。
【解決手段】固体電解質層と、固体電解質層の一方の面に配置されたアノード電極と、固体電解質層の他方の面に配置されたカソード電極と、を備える発電セル2が、セパレータ5を介して複数積層された固体酸化物形燃料電池100が提供される。固体酸化物形燃料電池100は、アノード電極とセパレータ5との間に配置され、燃料ガスが流れるアノード流路6を形成する流路形成部材3を備え、アノード電極及びアノード流路6の少なくとも一方に改質触媒が配置される。アノード流路6は、流路断面積が大きい改質反応促進部62と、改質反応促進部62よりも流路断面積が小さい改質反応抑制部61とを有し、改質反応促進部62及び改質反応抑制部61は、セパレータ5または流路形成部材3によりアノード流路6の流路断面積を変えることで形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質層と、前記固体電解質層の一方の面に配置されたアノード電極と、前記固体電解質層の他方の面に配置されたカソード電極と、を備える発電セルが、セパレータを介して複数積層された固体酸化物形燃料電池であって、
前記アノード電極と前記セパレータとの間に配置され、燃料ガスが流れるアノード流路を形成する流路形成部材を備え、
前記発電セルのアノード電極及び前記アノード流路の少なくとも一方に改質触媒が配置され、
前記アノード流路は、流路断面積が大きい改質反応促進部と、前記改質反応促進部よりも流路断面積が小さい改質反応抑制部とを有し、
前記改質反応促進部及び前記改質反応抑制部は、前記セパレータまたは前記流路形成部材により前記アノード流路の流路断面積を変えることで形成される、
固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池であって、
前記セパレータは、前記改質反応抑制部において、前記改質反応促進部におけるよりも積層方向の厚みが大きい、
固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池であって、
前記流路形成部材は、前記アノード電極に接合する部位と、前記セパレータに接合する部位とを有し、
前記流路形成部材は、前記改質反応促進部において、前記アノード電極及び前記セパレータに接合する部位の少なくとも一方に、前記流路形成部材を積層方向に貫通する開口部が設けられる、
固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池であって、
前記改質触媒は、前記発電セルのアノード電極に配置され、
前記流路形成部材は、前記改質反応促進部において、前記アノード電極に接合する部位に、前記流路形成部材を積層方向に貫通する開口部が設けられる、
固体酸化物形燃料電池。
【請求項5】
請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池であって、
前記流路形成部材は、前記改質反応促進部及び前記改質反応抑制部において、前記アノード電極及び前記セパレータに接合する部位の少なくとも一方に、前記流路形成部材を貫通する開口部が設けられ、
前記改質反応促進部において前記流路形成部材に設けられた開口部は、前記改質反応抑制部において前記流路形成部材に設けられた開口部よりも、開口面積が大きい、
固体酸化物形燃料電池。
【請求項6】
請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池であって、
前記改質反応促進部において前記流路形成部材に設けられた開口部は、前記改質反応抑制部において前記流路形成部材に設けられた開口部よりも、開口幅が大きい、
固体酸化物形燃料電池。
【請求項7】
請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池であって、
前記改質反応抑制部において前記流路形成部材に設けられる開口部は、前記アノード流路における燃料ガスの流れ方向に間隔を置いて複数設けられる、
固体酸化物形燃料電池。
【請求項8】
請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池であって、
前記流路形成部材は、多孔質材料により構成され、前記改質反応抑制部における空隙率が、前記改質反応促進部における空隙率よりも小さい、
固体酸化物形燃料電池。
【請求項9】
請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池であって、
前記カソード電極と前記セパレータとの間に配置され、空気が流れるカソード流路を形成するカソード流路形成部材をさらに備え、
前記アノード流路を流れる燃料ガスと、前記カソード流路を流れる空気とは、流れ方向が同一であり、
前記改質反応抑制部は、前記アノード流路における上流側に形成され、
前記改質反応促進部は、前記アノード流路における下流側に形成される、
固体酸化物形燃料電池。
【請求項10】
請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池であって、
前記カソード電極と前記セパレータとの間に配置され、空気が流れるカソード流路を形成するカソード流路形成部材をさらに備え、
前記アノード流路を流れる燃料ガスと、前記カソード流路を流れる空気とは、流れ方向が反対であり、
前記改質反応促進部は、前記アノード流路における中央部に形成され、
前記改質反応抑制部は、前記アノード流路における流路入口付近及び流路出口付近に形成される、
固体酸化物形燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
アノード流路または電解質のアノード極側に改質触媒が配置された内部改質型の固体酸化物形燃料電池(SOFC)においは、吸熱反応である改質反応が起こり易い部分の温度が大きく低下し、発電性能が低下する虞がある。
【0003】
特許文献1は、セパレータと電極との間に配置された波形の流路形成部材により、電極側の燃料ガス流路(電極側流路)と、セパレータ側の燃料ガス流路(セパレータ側流路)とを形成し、一方の流路に改質触媒を配置した燃料電池が開示されている。この燃料電池では、流路形成部材を上流側と下流側とに分割し、ガスの流れ方向に直交する方向に半ピッチずらして、上流側の電極側流路を下流側のセパレータ側流路に、上流側のセパレータ側流路を下流側の電極側流路に接続している。これにより、燃料ガスの半分は、上流側において改質触媒が配置されていない流路を通るため、下流側に到達するまで改質されない。このようにして、改質反応が集中することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1-140560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の燃料電池では、流路形成部材を分割した箇所において、上流側の電極側流路と下流側の電極側流路とがオーバーラップする部分があり、改質後のアノードガスが、下流側の電極側流路に混入する虞がある。このため、上流側のセパレータ側流路から下流側の電極側流路に供給される燃料ガスの流量が少なくなり、依然として発電性能が低下する虞がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みたものであり、改質反応の偏りによる温度低下を抑制し、発電性能の低下を抑制可能な固体酸化物形燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、固体電解質層と、固体電解質層の一方の面に配置されたアノード電極と、固体電解質層の他方の面に配置されたカソード電極と、を備える発電セルが、セパレータを介して複数積層された固体酸化物形燃料電池が提供される。この固体酸化物形燃料電池は、アノード電極とセパレータとの間に配置され、燃料ガスが流れるアノード流路を形成する流路形成部材を備え、発電セルのアノード電極及びアノード流路の少なくとも一方に改質触媒が配置される。アノード流路は、流路断面積が大きい改質反応促進部と、改質反応促進部よりも流路断面積が小さい改質反応抑制部とを有し、改質反応促進部及び改質反応抑制部は、セパレータまたは流路形成部材によりアノード流路の流路断面積を変えることで形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アノード流路が、流路断面積が大きい改質反応促進部と、改質反応促進部よりも流路断面積が小さい改質反応抑制部とを有している。これにより、改質反応抑制部における燃料ガスの流速が、改質反応促進部における流速よりも大きくなるため、改質反応抑制部における改質率が小さくなる。従って、改質反応が起こり易い部分の付近に改質反応抑制部を形成することで、改質反応の偏りを抑制することができ、改質集中による温度低下を抑制し、発電性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の第1実施形態による固体酸化物形燃料電池を示す分解斜視図である。
図2図2は、セルユニットの分解斜視図である。
図3図3は、アノード流路の断面模式図である。
図4図4は、第1実施形態による固体酸化物形燃料電池の効果を説明する図である。
図5図5は、第1実施形態の変形例による固体酸化物形燃料電池におけるアノード流路の断面模式図である。
図6図6は、第1実施形態の変形例による固体酸化物形燃料電池の効果を説明する図である。
図7図7は、第2実施形態による固体酸化物形燃料電池におけるアノード流路の断面模式図である。
図8図8は、流路形成部材の上面図である。
図9図9は、変形例による流路形成部材の上面図である。
図10図10は、第2実施形態の変形例による固体酸化物形燃料電池におけるアノード流路の断面模式図である。
図11図11は、流路形成部材の上面図である。
図12図12は、第3実施形態による固体酸化物形燃料電池におけるアノード流路の断面模式図である。
図13図13は、流路形成部材の上面図である。
図14図14は、変形例による流路形成部材の上面図である。
図15図15は、変形例による流路形成部材の上面図である。
図16図16は、第4実施形態による固体酸化物形燃料電池における流路形成部材の上面図である。
図17図17は、変形例による流路形成部材の上面図である。
図18図18は、第5実施形態による固体酸化物形燃料電池におけるアノード流路の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による固体酸化物形燃料電池100(以下、単に「燃料電池」ともいう)を示す分解斜視図である。図1に示すように、固体酸化物形燃料電池100は、複数のセルユニット1を上下方向に積層して構成される。なお、本実施形態の固体酸化物形燃料電池100は、主に車両等に搭載されるが、これに限定されるものではない。
【0012】
図2は、固体酸化物形燃料電池100を構成するセルユニット1の分解斜視図である。図2に示すように、セルユニット1は、発電セル2、金属製のアノード流路形成部材(流路形成部材)3、金属製のカソード流路形成部材4、セパレータ5、アノードスペーサ31及びカソードスペーサ41等を含む。
【0013】
発電セル2は、固体電解質層の一方の面にアノード電極を、他方の面にカソード電極を配置した膜電極接合体21(図3参照)により構成される。本実施形態では、発電セル2の下面側をアノード電極、上面側をカソード電極とする。発電セル2には、アノードガス(燃料ガス)及びカソードガス(空気)が供給され、発電セル2は、アノード電極及びカソード電極での電極反応に基づき発電する。また、本実施形態では、発電セル2は、アノード電極、カソード電極をそれぞれ支持する金属支持層(メタルサポート)22,23(図3参照)を含む。金属支持体22,23を構成する材料は、フェライト系ステンレスが好ましいが、これに限られない。以下、アノード電極とアノード電極を支持する金属支持体22を含めてアノード電極、カソード電極とカソード電極を支持する金属支持体23を含めてカソード電極ともいう。発電セル2のアノード電極には、不図示の改質触媒が均一に配置されている。
【0014】
また、発電セル2の発電に寄与する領域であるアクティブエリア24は、アクティブエリア24の外周を囲むように配置された枠体であるセルフレーム25に固定されている。セルフレーム25は、外周縁から延設された複数の突出部を有し、突出部には、穴部26が形成されている。なお、発電セル2とセルフレーム25との間は、セルシール部材27によりシールされている。
【0015】
アノード流路形成部材3は、金属等の導電性材料からなり、発電セル2のアノード電極と後述のセパレータ5との間に配置され、発電セル2のアノード電極側に、燃料ガスが流れるアノード流路6(図3参照)を形成する。アノード流路形成部材3は、発電セル2の幅方向に直線的に延びる凹凸が長手方向に繰り返し設けられる、いわゆる波型形状に形成される。これにより、発電セル2のアノード電極とセパレータ5との間に複数のアノード流路6が区画される。各アノード流路6の内周面には、改質触媒が均一に配置されている。なお、本実施形態では、燃料ガスは、図2の右下から左上方向に向かって流れるものとする。
【0016】
カソード流路形成部材4は、金属等の導電性材料からなり、発電セル2のカソード電極と(隣接するセルユニット1の)セパレータ5との間に配置され、発電セル2のカソード電極側にカソードガス(空気)が流れるカソード流路を形成する部材である。カソード流路形成部材4は、アノード流路形成部材3と同様に、波型形状に形成され、発電セル2のカソード電極とセパレータ5との間に複数のカソード流路が区画される。なお、本実施形態では、カソードガス(空気)は、図2の右下から左上方向に向かって流れるものとする。即ち、本実施形態の固体酸化物形燃料電池100は、燃料ガスと空気とが同一方向に流れるコフローの燃料電池である。
【0017】
なお、図2に示すように、アノード流路6を形成するアノード流路形成部材3及びカソード流路を形成するカソード流路形成部材4は、それぞれ上流側と下流側とで2つに分割されているが、これに限られない。例えば、それぞれ1つの部材でアノード流路6、カソード流路を形成してもよい。また、図2では、2つに分割された流路形成部材3,4が、それぞれ上流側と下流側とで離間しているが、流路形成部材3,4は、上流側の流路形成部材と下流側の流路形成部材を、隙間を開けずに近接させて配置してもよい。
【0018】
セパレータ5は、導電性を有する板状の部材で、一方の面(上面)がアノード流路形成部材3に導電接合される。これにより、セパレータ5と発電セル2のアノード電極とは、アノード流路形成部材3を介して電気的に接続される。一方、セパレータ5の他方の面(下面)は、隣接するセルユニット1のカソード流路形成部材4に接合される。また、セパレータ5は、アノード流路6の上流側に、セパレータ5の積層方向のおける厚みを大きくするシムプレート51が設置されている。
【0019】
また、セパレータ5は、外周縁から延設されて突出する複数の突出部を有し、当該突出部には、セルフレーム25の穴部26と対応する位置に穴部52が形成されている。セパレータ5の穴部52と、セルフレーム25の穴部26とが重なることで、アノード流路6に供給される燃料ガスが流れる孔と、アノード流路6から出ていく燃料ガスが流れる孔とが形成される。セパレータ5の穴部52と、セルフレーム25の穴部26とが重なることで形成される孔の周囲には、シール部材11が設けられる。
【0020】
アノードスペーサ31は、セパレータ5の外周上に積層される枠体であり、発電セル2とセパレータ5との間に配置され、アノード流路6の高さを確保する。アノードスペーサ31は、外形が発電セル2(セルフレーム25)及びセパレータ5と重なり合うように配置される。
【0021】
カソードスペーサ41は、カソード流路形成部材4の長手方向両端に配置され、カソード流路の高さを確保するとともに、カソード流路形成部材4の長手方向両端をシールする。
【0022】
上記のように、本実施形態の固体酸化物形燃料電池100は、アノード電極とセパレータ5との間にアノード流路6を形成する流路形成部材3を備え、改質触媒がアノード流路6及び発電セル2のアノード電極に配置されている。即ち、固体酸化物形燃料電池100は、燃料ガスがアノード流路6内及び発電セル2のアノード電極内で改質される、いわゆる内部改質型の燃料電池である。
【0023】
ところで、内部改質型の固体酸化物形燃料電池においては、吸熱反応である改質反応が起こり易い部分の温度が大きく低下し、発電性能が低下する虞がある。例えば、アノード流路及びアノード電極に改質触媒が均一に配置されている場合、アノード流路の入口付近で改質が起こり易くなる。そのため、アノード流路の上流側の温度が大きく低下し、発電性能が低下する虞がある。
【0024】
そこで、本実施形態においては、セパレータ5により、アノード流路6の流路断面積を変えることで、アノード流路6内の燃料ガスの流速を変えて、改質反応の偏りを是正することとした。具体的には、改質反応が起こり易いアノード流路6の上流側におけるセパレータ5の厚みを大きくして、アノード流路6の上流側の流路断面積を下流の流路断面積よりも小さくしている。これにより、アノード流路6には、下流側よりも流路断面積が小さい上流側の改質反応抑制部61(図3参照)と、上流側よりも流路断面積が大きい下流側の改質反応促進部62(図3参照)とが形成される。従って、アノード流路6の上流側の改質反応抑制部61における燃料ガスの流速が、アノード流路6の下流側の改質反応促進部62における流速よりも大きくなるため、改質反応抑制部(上流側)61における改質率が低くなる。よって、改質反応が起こり易いアノード流路6の上流側における改質反応を抑制することができ、改質反応の偏りが是正されるため、改質集中による温度低下が抑制され、発電性能の低下が抑制される。
【0025】
以下、アノード流路6の詳細を説明する。
【0026】
図3は、アノード流路6の断面模式図であり、(a)は図2のA-A線(アノード流路6の上流側)、(b)は図2のB-B線(アノード流路6の下流側)、(c)は図2のC-C線に沿った断面の一部を表した模式図である。なお、図3の(c)において、燃料ガスは、図の右から左に向かって流れるものとする。
【0027】
図3に示すように、発電セル2(膜電極接合体21)のアノード電極側の金属支持体22と、セパレータ5との間には、アノード流路形成部材(流路形成部材)3が配置されている。流路形成部材3は、発電セル2のアノード電極(金属支持体22)に接合する部位(第1接合部32)と、セパレータ5に接合する部位(第2接合部33)とを有し、第1接合部32と第2接合部33とは、連結部34により連結されている。これにより、アノード電極とセパレータ5との間には、セパレータ5、連結部34及び流路形成部材3(第1接合部32)に囲まれた空間と、アノード電極、連結部34及び流路形成部材3(第2接合部33)に囲まれた空間とが複数形成される。そして、アノード電極、連結部34及び流路形成部材3(第2接合部33)に囲まれた空間が、燃料ガスが流れるアノード流路6となる。アノード流路6の内周面及びアノード電極には、改質触媒が均一に配置されており、アノード流路6を流れる燃料ガスは、アノード流路6内及びアノード電極において改質される。
【0028】
なお、流路形成部材3は、第1接合部32において金属支持体22に溶接され、第2接合部33においてセパレータ5に溶接されている。これにより、接合部32,33のずれが防止され、剛性が向上する。
【0029】
また、図3の(a)及び(c)に示すように、アノード流路6の上流側のセパレータ5には、セパレータ5の積層方向における厚みを大きくするシムプレート51が設置されている。これにより、アノード流路6の上流側の流路断面積が、下流側の流路断面積よりも小さくなり、上流側の流速が、下流側の流速よりも大きくなる。従って、燃料ガスの流量を触媒が塗布されている空間の体積で除した値で表される空間速度SVは、上流側が下流側よりも大きくなる。
【0030】
ここで、燃料ガスの改質率は、空間速度SVが大きいほど低くなるため、アノード流路6の上流側の改質率は、下流側の改質率よりも低くなる。即ち、アノード流路6には、改質反応が抑制される上流側の改質反応抑制部61と、改質反応が促進される下流側の改質反応促進部62とが形成される。
【0031】
アノード流路及びアノード電極に改質触媒が均一に配置されている場合、アノード流路の流路断面積が一定であると、アノード流路の入口付近で改質が起こり易くなり、アノード流路の上流側の温度が大きく低下する虞がある。これに対し、本実施形態の固体酸化物形燃料電池100では、上記の通り、アノード流路6が上流側に流路断面積が小さい改質反応抑制部61を有し、下流側に流路断面積が大きい改質反応促進部62を有している。このため、改質反応のピークが、上流側から下流側にシフトし、改質反応の偏りが是正される。従って、改質集中による温度低下が抑制される。
【0032】
図4は、本実施形態の固体酸化物形燃料電池100の効果を説明するグラフであり、燃料ガス供給時におけるアノード流路6内の各位置の温度を示している。図4の横軸は、燃料ガスの流れ方向におけるアノード流路6の入口からの距離を表し、縦軸は、燃料ガス供給時におけるアノード流路6内の温度を表している。なお、図4における横軸の0はアノード流路6の入口、loutはアノード流路6の出口である。
【0033】
図4の曲線Cは、アノード流路6の流路断面積が一定の場合の温度曲線である。図4に示すように、アノード流路6の流路断面積が一定の場合、アノード流路6に燃料ガスが供給されると、流路の入口付近において改質反応が集中し、アノード流路6の温度が大きく低下する。また、アノード流路6の下流側において、発電が集中し、出口loutに近づくほど発電による発熱によりアノード流路6の温度が高くなる。従って、アノード流路6の流路断面積が一定の場合、流路の入口付近と出口付近の温度差ΔTが大きい。
【0034】
一方、図4の曲線Cは、本実施形態のように、アノード流路6の上流側に改質反応抑制部61を有し、下流側に改質反応促進部62を有している場合の温度曲線である。アノード流路6が上流側に流路断面積が小さい改質反応抑制部61を有し、下流側に流路断面積が大きい改質反応促進部62を有している場合、改質反応の偏りが是正され、曲線Cに示すように、流路の入口付近における温度低下が抑制される。また、入口付近における温度低下が抑制されるため、上流側における発電性能が向上し、発電がアノード流路6の下流側に集中することも抑制される。このように、温度低下を引き起こす改質反応の集中、及び発熱反応である発電の集中が抑制されるため、アノード流路の流路断面積が一定の場合に比べ、流路の入口付近と出口lout付近の温度差ΔTが小さくなる。
【0035】
ここで、アノード流路6の流路断面積が一定の場合における流路の出口温度をアノード流路6の耐熱限界温度Tmaxとすると、温度差ΔTが小さい本実施形態では、流路断面積が一定の場合に比べ、流路内(燃料ガス)の平均温度をより高い温度に上昇させることができる。即ち、本実施形態の固体酸化物形燃料電池100では、図4の曲線Cから曲線Cまで、流路内(燃料ガス)の平均温度を底上げすることができる。一方、温度差ΔTが大きいアノード流路6の流路断面積が一定の場合、流路内(燃料ガス)の平均温度を上昇させると、出口lout付近におけるアノード流路6の温度が耐熱限界温度Tmaxを超えてしまうため、これ以上平均温度を上昇させることはできない。
【0036】
このように、本実施形態の固体酸化物形燃料電池100では、改質集中による温度低下を抑制できるだけでなく、燃料ガスの平均温度を上昇させることができるため、発電性能がより向上する。
【0037】
なお、燃料ガスの平均温度の底上げは、例えば、燃料電池スタック(固体酸化物形燃料電池100)に供給する燃料ガスの温度を上昇させたり、冷却用の空気流量を絞ること等で行うことができる。
【0038】
上記した第1実施形態の固体酸化物形燃料電池100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0039】
固体酸化物形燃料電池100は、発電セル2のアノード電極とセパレータ5との間に配置され、燃料ガスが流れるアノード流路6を形成する流路形成部材3を備え、発電セル2のアノード電極及びアノード流路6に改質触媒が配置される。そして、アノード流路6は、セパレータ5により流路断面積を変えることで形成される流路断面積が大きい改質反応促進部62と、改質反応促進部62よりも流路断面積が小さい改質反応抑制部61とを有している。これにより、改質反応抑制部61における燃料ガスの流速が、改質反応促進部62における流速よりも大きくなるため、改質反応抑制部61における改質率が小さくなる。従って、改質反応が起こり易い部分の付近に改質反応抑制部61を形成することで、改質反応の偏りを抑制することができ、改質集中による温度低下を抑制し、発電性能の低下を抑制することができる。
【0040】
また、改質反応の偏りが抑制され、改質集中による温度低下が抑制されるため、燃料ガス供給時におけるアノード流路6内の温度差が小さくなる。従って、アノード流路6内の燃料ガスの平均温度を上昇させることができ、発電性能をより向上させることができる。
【0041】
固体酸化物形燃料電池100は、セパレータ5が、改質反応抑制部61において、改質反応促進部62よりも積層方向の厚みが大きい。即ち、セパレータ5の厚みを大きくすることで、流路断面積が小さい改質反応抑制部61を形成している。従って、改質反応が起こり易い部分の付近におけるセパレータ5の厚みを大きくすることで、改質反応の偏りを抑制することができ、改質集中による温度低下を抑制することができる。即ち、温度低下による発電性能の低下を抑制することができる。
【0042】
固体酸化物形燃料電池100は、アノード流路6を流れる燃料ガスと、カソード流路を流れる空気とは、流れ方向が同一であり、改質反応抑制部61は、アノード流路6における上流側に形成され、改質反応促進部62は、アノード流路6における下流側に形成される。これにより、コフローの燃料電池において改質反応が起こり易いアノード流路6の上流側の改質反応が抑制される。従って、改質反応の偏りが抑制され、改質集中による温度低下が抑制される。よって、温度低下による発電性能の低下を抑制することができる。
【0043】
なお、本実施形態においては、アノード流路6は、上流側に流路断面積が小さい改質反応抑制部61を有し、下流側に流路断面積が大きい改質反応促進部62を有しているが、必ずしもこれに限られない。例えば、以下の第1実施形態の変形例で説明するように、アノード流路6を流れる燃料ガスと、カソード流路を流れる空気の流れ方向が反対であるカウンターフローの燃料電池においては、改質反応抑制部61を流路入口付近と流路出口付近に形成することが好ましい。また、例えば、本実施形態と異なり、改質触媒が均一に配置されていない場合において、触媒の配置量が多い部分に改質反応抑制部61を形成し、触媒の配置量が少ない部分に改質反応促進部62を形成してもよい。
【0044】
また、本実施形態においては、シムプレート51を設置することでセパレータ5の厚みを大きくしているが、必ずしもこれに限られない。例えば、改質反応抑制部61を形成する部分の厚みを大きくした1枚のセパレータ5を用いてもよい。
【0045】
また、本実施形態においては、セパレータ5の厚みを大きくすることで、改質反応抑制部61を形成しているが、アノード流路6の流路断面積を変えることができれば、必ずしもこれに限られない。例えば、後述する第2~第5実施形態のように、流路形成部材3を用いてアノード流路6の流路断面積を変えてもよい。
【0046】
また、本実施形態においては、発電セル2のアノード電極及びアノード流路6に改質触媒を配置しているが、必ずしもこれに限られず、アノード電極及びアノード流路6の一方にのみ改質触媒を配置してもよい。
【0047】
また、本実施形態のように、流路形成部材3は、接合部32,33において、それぞれ金属支持体22、セパレータ5に溶接されることが好ましいが、必ずしもこれに限られず、例えば、拡散接合やろう付け等のような溶接以外の方法により(金属)接合してもよい。
【0048】
さらに、本実施形態のように、発電セル2は金属支持体22,23を備えることが好ましいが、必ずしもこれに限られず、金属支持体22,23を有していない構成であってもよい。
【0049】
(第1実施形態の変形例)
図5及び図6を参照して、第1実施形態の変形例による固体酸化物形燃料電池100を説明する。本変形例では、セパレータ5の厚みを大きくする箇所が第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
図5は、燃料ガスの流れ方向に沿ったアノード流路6の断面模式図である。本変形例においては、固体酸化物形燃料電池100は、アノード流路6を流れる燃料ガスとカソード流路を流れる空気の流れ方向が反対である、いわゆるカウンターフローの燃料電池であるものとする。また、図5において、燃料ガスは、図の右から左に向かって流れるものとする。なお、図5において、流路形成部材3は、第1実施形態と異なり、2つに分割されていないが、第1実施形態のように分割された構成であってもよい。
【0051】
図5に示すように、本変形例では、セパレータ5は、アノード流路6の入口63の付近と、出口64の付近に、セパレータ5の積層方向における厚みを大きくするシムプレート51が設置されている。これにより、アノード流路6の入口63付近及び出口64付近において、流路断面積が小さい改質反応抑制部61が形成され、アノード流路6の中央部65に、改質反応抑制部61よりも流路断面積が大きい改質反応促進部62が形成される。
【0052】
ここで、カウンターフローの燃料電池においては、低温の空気が供給されるカソード流路の入口と、アノード流路6の出口64とが、発電セル2を介して隣接している。このため、アノード流路6の出口64付近の温度が低下しやすい。従って、アノード流路の流路断面積が一定の場合、燃料ガス供給時におけるアノード流路内の温度は、改質反応が起こり易いアノード流路の入口付近と、出口付近において低くなり、中央部において高くなる。一方、本実施形態においては、アノード流路6の入口63付近及び出口64付近において、流路断面積が小さい改質反応抑制部61が形成されているため、アノード流路6の入口63付近及び出口64付近の流速が低下し、改質率が低くなる。従って、アノード流路6の入口63付近及び出口64付近の温度低下が抑制される。
【0053】
図6は、本実施変形例における燃料ガス供給時のアノード流路6内の温度を表すグラフであり、図4と同様に、横軸は、燃料ガスの流れ方向におけるアノード流路6の入口63からの距離を表し、縦軸は、燃料ガス供給時におけるアノード流路6内の温度を表している。図6の横軸における0はアノード流路6の入口63、loutは、アノード流路6の出口64である。
【0054】
図6の曲線Cは、アノード流路6の流路断面積が一定の場合の温度曲線である。図6の曲線Cに示すように、カウンターフローの燃料電池において、アノード流路の流路断面積が一定の場合、アノード流路に燃料ガスが供給されると、流路の入口付近において改質反応が集中し、アノード流路内の温度が大きく低下する。また、アノード流路の出口と、低温の空気が流れるカソード流路の入口とが近接しているため、アノード流路出口付近の温度も大きく低下する。従って、アノード流路の入口及び出口付近の温度が低温になり、アノード流路の中央部において高温となる。また、これにより、アノード流路の中央部において、発電が集中するため、発電による発熱により、アノード流路6の中央部の温度がさらに高くなる。従って、アノード流路の流路断面積が一定の場合、流路の入口付近及び出口付近と中央部の温度差ΔTが大きい。
【0055】
一方、図6の曲線Cは、本実施形態のように、アノード流路6の入口63及び出口64付近に流路断面積が小さい改質反応抑制部61を有し、中央部65に流路断面積が大きい改質反応促進部62を有している場合の温度曲線である。アノード流路6が入口63及び出口64付近に改質反応抑制部61を有し、中央部65に改質反応促進部62を有している場合、改質反応の偏りが是正され、曲線Cに示すように、流路の入口63及び出口64付近における温度低下が抑制される。また、入口63及び出口64付近における温度低下が抑制されるため、入口63及び出口64付近における発電性能が向上し、発電がアノード流路6の中央部65に集中することも抑制される。従って、アノード流路6の流路断面積が一定の場合に比べ、流路の入口63及び出口64付近と中央部65の温度差ΔTが小さくなる。
【0056】
ここで、アノード流路6の流路断面積が一定の場合における流路中央部の温度をアノード流路6の耐熱限界温度Tmaxとすると、温度差ΔTが小さい本実施形態では、流路断面積が一定の場合に比べ、流路内(燃料ガス)の平均温度をより高い温度に上昇させることができる。即ち、本実施形態の固体酸化物形燃料電池100では、図6の曲線Cから曲線Cまで、流路内(燃料ガス)の平均温度を底上げすることができる。一方、温度差ΔTが大きいアノード流路6の流路断面積が一定の場合、流路内(燃料ガス)の平均温度を上昇させると、流路の中央部付近におけるアノード流路6の温度が耐熱限界温度Tmaxを超えてしまうため、これ以上平均温度を上昇させることはできない。
【0057】
このように、本変形例の固体酸化物形燃料電池100においても、改質集中による温度低下を抑制できるだけでなく、燃料ガスの平均温度を上昇させることができ、発電性能がより向上する。
【0058】
上記した第1実施形態の変形例の固体酸化物形燃料電池100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0059】
固体酸化物形燃料電池100は、アノード流路6を流れる燃料ガスと、カソード流路を流れる空気とは、流れ方向が反対であり、改質反応促進部62は、アノード流路6における中央部65に形成され、改質反応抑制部61は、アノード流路6における流路入口63及び流路出口64付近に形成される。これにより、改質反応が起こり易いアノード流路6の入口63付近の改質反応、及びカウンターフローの燃料電池において温度が低下しやすいアノード流路6の出口64付近の改質反応が抑制され、アノード流路6の入口63付近及び出口64付近の温度低下が抑制される。従って、温度低下による発電性能の低下を抑制することができる。
【0060】
また、アノード流路6の入口63付近及び出口64付近の温度低下が抑制されるため、燃料ガス供給時におけるアノード流路6内の温度差が小さくなる。従って、アノード流路6内の燃料ガスの平均温度を上昇させることができ、発電性能をより向上させることができる。
【0061】
(第2実施形態)
図7及び図8を参照して、第2実施形態の固体酸化物形燃料電池100を説明する。本実施形態においては、アノード流路形成部材3に開口部35,36が設けられている点が、他の実施形態と異なる。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
図7は、第2実施形態の固体酸化物形燃料電池100によるアノード流路6の断面模式図であり、(a)はアノード流路6の上流側における、流れ方向に直交する方向(図2のA-A線に相当)に沿った断面の一部、(b)はアノード流路6の下流側における、流れ方向に直交する方向(図2のB-B線に相当)に沿った断面の一部を表した模式図である。また、図8は、流路形成部材3がアノード電極に接合する第1接合部32の上面から見た、流路形成部材3の上面図である。なお、図8において、燃料ガスは、図の右から左に向かって流れるものとし、燃料ガスとカソード流路を流れる空気とは、流れ方向が同一(即ち、コフロー)であるものとする。また、アノード電極、またはアノード電極及びアノード流路6に改質触媒が均一に配置されているものとする。
【0063】
図7の(b)及び図8に示すように、アノード電極(金属支持体22)とセパレータ5との間に配置された流路形成部材3は、アノード流路6の下流側において、アノード電極に接合する第1接合部32に、流路形成部材3を積層方向に貫通する開口部35が設けられている。また、セパレータ5に接合する第2接合部33には、流路形成部材3を積層方向に貫通する開口部36が設けられている。一方、図7の(a)及び図8に示すように、アノード流路6の上流側において、流路形成部材3は、第1接合部32及び第2接合部33が閉口している。これにより、アノード流路6の下流側の断面積は、上流側の断面積よりも大きくなる。なお、開口部35,36は、流路形成部材3をくり抜き加工すること等により、形成することができる。
【0064】
このように、本実施形態では、第1及び第2接合部32,33において流路形成部材3に開口部35,36を設けるか、または閉口するかによって、アノード流路6の流路断面積を変えている。即ち、アノード流路6の下流側の流路形成部材3に開口部35,36を設け、流路断面積を大きくし、上流側の流路形成部材3は第1及び第2接合部32,33を閉口し、下流側よりも流路断面積を小さくしている。従って、アノード流路6の上流側の流速が、下流側の流速よりも大きくなり、空間速度SVは、上流側が下流側よりも大きくなる。これにより、アノード流路6の上流側の改質率は、下流側の改質率よりも低くなり、アノード流路6には、改質反応が抑制される上流側の改質反応抑制部61と、改質反応が促進される下流側の改質反応促進部62とが形成される。
【0065】
前述のとおり、コフローの燃料電池においては、アノード流路の上流側において改質反応が起こり易く、下流側において発電による発熱が生じ易い。これに対し、本実施形態では、アノード流路6が上流側に改質反応を抑制する改質反応抑制部61を有し、発電による発熱が生じ易いアノード流路6の下流側に改質反応が促進される改質反応促進部62を有している。従って、改質反応の偏りと、発電による発熱の偏りを抑制することができる。即ち、改質集中による温度低下を抑制することができ、発電性能の低下を抑制することができる。また、燃料ガス供給時におけるアノード流路6内の温度差が低減されるため、燃料ガスの平均温度を上昇させることができ、発電性能をより向上させることができる。
【0066】
なお、本実施形態では、流路形成部材3がアノード電極に接合する第1接合部32に開口部35が設けられているため、流路形成部材3とセパレータ5とで囲まれた空間にも燃料ガスを流してアノード電極に供給することができる。即ち、流路形成部材3とセパレータ5とで囲まれた空間もアノード流路6となる。そして、アノード流路6の下流側においては、開口部35を有していない上流側よりも、燃料ガスとアノード電極に配置された改質触媒との接触面積が大きくなる。これにより、アノード流路6の下流側の改質反応促進部62において、改質反応がより促進される。従って、アノード流路6の上流側と下流側の温度差がより小さくなり、アノード流路6内の平均温度をより上昇させることができる。
【0067】
上記した第2実施形態の固体酸化物形燃料電池100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0068】
固体酸化物形燃料電池100は、改質触媒がアノード電極に配置され、流路形成部材3が、改質反応促進部62において、アノード電極に接合する部位(第1接合部32)及びセパレータ5に接合する部位(第2接合部33)に、流路形成部材3を積層方向に貫通する開口部35,36が設けられている。即ち、流路形成部材3に開口部35,36を設けるか否かによってアノード流路6の流路断面積を変えて、改質反応抑制部61及び改質反応促進部62を形成している。従って、改質反応が起こり易い部分の付近における流路形成部材3を閉口し、発電による発熱が生じ易い部分の付近における流路形成部材3に開口部35,36を設けることで、改質反応の偏りを抑制することができる。よって、改質集中による温度低下を抑制することができ、温度低下による発電性能の低下を抑制することができる。
【0069】
また、燃料ガス供給時におけるアノード流路6内の温度差が低減されるため、燃料ガスの平均温度を上昇させることができ、発電性能をより向上させることができる。
【0070】
また、流路形成部材3が開口部35を備える改質反応促進部62において、燃料ガスとアノード電極に配置された改質触媒との接触面積が大きくなる。これにより、改質反応促進部62において、改質反応がより促進される。従って、発電による発熱が生じ易い部分の付近に改質反応促進部62を形成することで、アノード流路6内の温度差がより小さくなり、アノード流路6内の平均温度をより上昇させることができ、発電性能をさらに向上させることができる。
【0071】
なお、本実施形態においては、流路形成部材3が、下流側に開口部35,36(改質反応促進部62)を有する構成としたが、必ずしもこれに限られず、改質反応抑制部61及び改質反応促進部62を形成する箇所は、固体酸化物形燃料電池100の構成に合わせて、任意に決定することができる。例えば、前述の第1実施形態の変形例のように、カウンターフローの燃料電池においては、アノード流路6の中央部の流路形成部材3に開口部35,36を設けて、改質反応促進部62を形成することが好ましい。また、例えば、改質触媒が均一に配置されていない場合において、触媒の配置量が多い部分の流路形成部材3を閉口して改質反応抑制部61を形成し、触媒の配置量が少ない部分の流路形成部材3に開口部35,36を設けて改質反応促進部62を形成してもよい。なお、以下で説明するいずれの実施形態(第2実施形態の変形例、第3~第5実施形態)においても、アノード流路6が上流側に改質反応抑制部61、下流側に改質反応促進部62を有する構成としているが、同様に、これらに限られるものではなく、改質反応抑制部61及び改質反応促進部62を形成する箇所は、任意に決定することができる。
【0072】
また、本実施形態の図8では、流路形成部材3が、上流側と下流側とで2つに分割されているが、これに限られず、図9(流路形成部材3の上面図)に示すように、1つの部材で流路形成部材3を形成し、改質反応促進部62に開口部35を設けてもよい。
【0073】
また、本実施形態においては、改質触媒がアノード電極に配置されることが好ましいが、必ずしもこれに限られず、改質触媒が、アノード流路6のみに配置された構成であってもよい。このような構成であっても、少なくとも、流路断面積を変えることにより改質集中を緩和することができ、温度低下による発電性能の低下を抑制することができる。
【0074】
(第2実施形態の変形例)
図10及び図11を参照して、第2実施形態の変形例による固体酸化物形燃料電池100を説明する。本変形例においては、アノード流路形成部材3におけるアノード電極と接合する第1接合部32にのみ開口部35が設けられている点が、第2実施形態と異なる。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0075】
図10は、第2実施形態の変形例の固体酸化物形燃料電池100によるアノード流路6の断面模式図であり、(a)はアノード流路6の上流側における、流れ方向に直交する方向(図2のA-A線に相当)に沿った断面の一部、(b)はアノード流路6の下流側における、流れ方向に直交する方向(図2のB-B線に相当)に沿った断面の一部を表した模式図である。また、図11は、流路形成部材3がアノード電極に接合する第1接合部32の上面から見た、流路形成部材3の上面図である。なお、図11において、燃料ガスは、図の右から左に向かって流れるものとし、燃料ガスとカソード流路を流れる空気とは、流れ方向が同一(即ち、コフロー)であるものとする。また、改質触媒は、アノード電極(金属支持体22)、またはアノード電極及びアノード流路6の内周面に均一に配置されているものとする。
【0076】
また、後述するように、第2実施形態と同様に、本変形例においても流路形成部材3がアノード電極に接合する第1接合部32に開口部35を有しているため、流路形成部材3とセパレータ5とで囲まれた空間も燃料ガスが流れるアノード流路6となる。
【0077】
図10の(b)及び図11に示すように、本変形例では、流路形成部材3は、アノード流路6の下流側の第1接合部32に、流路形成部材3を積層方向に貫通する開口部35が設けられている。一方、アノード流路6の上流側の第1接合部32及び第2接合部33、及びアノード流路6の下流側における第2接合部33において、流路形成部材3は閉口している。これにより、アノード流路6の下流側の断面積が、上流側の断面積よりも大きくなり、アノード流路6には、流路断面積が小さい上流側の改質反応抑制部61と、上流側よりも流路断面積が小さい下流側の改質反応促進部62とが形成される。即ち、改質反応が起こり易いアノード流路6の上流側において改質反応が抑制され、改質反応が起こりにくい下流側の改質反応促進部62において、改質反応が促進される。従って、改質反応の偏りによる温度低下が抑制されるとともに、アノード流路6の上流側と下流側の温度差が小さくなるため、アノード流路6内の平均温度を上昇させることができる。
【0078】
また、アノード流路6の下流側においては、開口部35を有していない上流側よりも、燃料ガスとアノード電極に配置された改質触媒との接触面積が大きくなる。これにより、アノード流路6の下流側の改質反応促進部62において、改質反応がより促進される。従って、アノード流路6の上流側と下流側の温度差がより小さくなり、アノード流路6内の平均温度をより上昇させることができる。
【0079】
このように、本変形例では、改質触媒が発電セル2のアノード電極に配置され、流路形成部材3は、改質反応促進部62において、アノード電極に接合する部位(第1接合部32)に、流路形成部材3を積層方向に貫通する開口部35が設けられている。即ち、流路形成部材3の第1接合部32に開口部35を設けるか否かによってアノード流路6の流路断面積を変えている。このような構成によっても、第2実施形態と同様の効果を有する。
【0080】
なお、第2実施形態のように、第1接合部32及び第2接合部33の両方に開口部を設ける構成、または第2実施形態の変形例のように第1接合部32のみに開口部35を設ける構成にすることが好ましいが、必ずしもこれに限られず、第2接合部33のみに開口部を設ける構成であってもよい。このような構成であっても、アノード流路6の流路断面積を変えることができるため、改質反応の偏りをある程度是正することができる。
【0081】
また、本変形例の図11では、流路形成部材3が、上流側と下流側とで2つに分割されているが、これに限られず、1つの部材で流路形成部材3を形成してもよい。
【0082】
(第3実施形態)
図12及び図13を参照して、第3実施形態の固体酸化物形燃料電池100を説明する。本実施形態においては、アノード流路6の上流側にもアノード流路形成部材3に開口部が設けられている点が、第2実施形態と異なる。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0083】
図12は、第3実施形態の固体酸化物形燃料電池100によるアノード流路6の断面模式図であり、(a)はアノード流路6の上流側における、流れ方向に直交する方向(図2のA-A線に相当)に沿った断面の一部、(b)はアノード流路6の下流側における、流れ方向に直交する方向(図2のB-B線に相当)に沿った断面の一部を表した模式図である。また、図13は、流路形成部材3がアノード電極に接合する第1接合部32の上面から見た、流路形成部材3の上面図である。なお、図13において、燃料ガスは、図の右から左に向かって流れるものとし、燃料ガスとカソード流路を流れる空気とは、流れ方向が同一(即ち、コフロー)であるものとする。また、改質触媒は、アノード電極(金属支持体22)、またはアノード電極及びアノード流路6の内周面に均一に配置されているものとする。
【0084】
また、後述するように、第2実施形態と同様に、本実施形態においても流路形成部材3がアノード電極に接合する第1接合部32に開口部35A,35Bを有しているため、流路形成部材3とセパレータ5とで囲まれた空間も燃料ガスが流れるアノード流路6となる。
【0085】
図12の(a)及び図13に示すように、流路形成部材3は、アノード流路6の上流側において、アノード電極に接合する第1接合部32に、流路形成部材3を積層方向に貫通する開口部35Aが設けられ、セパレータ5に接合する第2接合部33には、流路形成部材3を積層方向に貫通する開口部36Aが設けられている。また、図12の(b)及び図13に示すように、流路形成部材3は、アノード流路6の下流側において、アノード電極に接合する第1接合部32に、流路形成部材3を積層方向に貫通する開口部35Bが設けられ、セパレータ5に接合する第2接合部33には、流路形成部材3を積層方向に貫通する開口部36Bが設けられている。
【0086】
ここで、アノード流路6の下流側における開口部35B,36Bは、上流側における開口部35A,36Aよりも開口幅が大きい。即ち、アノード流路6の下流側における開口部35B,36Bは、上流側における開口部35A,36Aよりも開口面積が大きい。これにより、アノード流路6の下流側の断面積は、上流側の断面積よりも大きくなる。
【0087】
このように、本実施形態では、流路形成部材3の開口部35,36の開口面積(開口幅)の大きさを変えることで、アノード流路6の流路断面積を変えている。即ち、アノード流路6の下流側の流路形成部材3の開口部35B,36Bの開口幅を大きくすることで、流路断面積を大きくし、上流側の流路形成部材3の開口部35A,36Aの開口幅を下流側の開口部35B,36Bより小さくすることで、流路断面積を小さくしている。従って、アノード流路6の上流側における燃料ガスの流速が、下流側の流速よりも大きくなり、空間速度SVは、上流側が下流側よりも大きくなる。これにより、アノード流路6の上流側の改質率は、下流側の改質率よりも低くなり、アノード流路6には、改質反応が抑制される上流側の改質反応抑制部61と、改質反応が促進される下流側の改質反応促進部62とが形成される。即ち、改質反応が起こり易い上流側における改質反応が抑制され、発電による発熱が生じ易い下流側において改質反応が促進されるため、改質反応の偏りと、発電による発熱の偏りを抑制することができる。よって、改質集中による温度低下を抑制することができ、発電性能の低下を抑制することができる。また、燃料ガス供給時におけるアノード流路6内の温度差が低減されるため、燃料ガスの平均温度を上昇させることができ、発電性能をより向上させることができる。
【0088】
また、流路形成部材3の開口幅が大きい改質反応促進部62においては、開口幅が小さい改質反応抑制部61に比べ、アノード流路6からアノード極への燃料ガスの拡散距離が短くなる(図12の矢印を参照)。従って、改質反応促進部62において、燃料ガスがアノード電極に配置された改質触媒に到達しやすくなり、改質反応促進部62における改質反応がより促進される。一方、開口幅が小さい改質反応抑制部61では、燃料ガスが改質触媒に到達しにくく、改質反応がより抑制される。これにより、燃料ガス供給時におけるアノード流路6内の温度差がより小さくなり、アノード流路6の流れ方向における熱応力が緩和される。また、温度差がより小さくなるため、燃料ガスの平均温度をより上昇させることができ、発電性能をさらに向上させることができる。
【0089】
上記した第3実施形態の固体酸化物形燃料電池100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0090】
固体酸化物形燃料電池100は、改質触媒がアノード電極に配置され、流路形成部材3は、改質反応促進部62及び改質反応抑制部61において、アノード電極に接合する部位(第1接合部32)及びセパレータ5に接合する部位(第2接合部33)に、流路形成部材3を貫通する開口部35,36が設けられる。そして、改質反応促進部62における開口部35B,36Bは、改質反応抑制部61における開口部35A,36Aよりも、開口面積が大きい。従って、改質反応が起こり易い部分の付近における流路形成部材3に開口面積の小さい開口部35A,36Aを設け、発電による発熱が生じ易い部分の付近における流路形成部材3に開口面積の大きい開口部35B,36Bを設けることで、改質反応の偏りを抑制することができる。即ち、改質集中による温度低下を抑制することができ、温度低下による発電性能の低下を抑制することができる。
【0091】
また、流路形成部材3が開口面積の大きい開口部35B,36Bを備える改質反応促進部62において、燃料ガスがアノード電極に配置された改質触媒に到達しやすくなり、改質反応促進部62における改質反応がより促進される。一方、流路形成部材3が開口面積の小さい開口部35A,36Aを備える改質反応抑制部61においては、燃料ガスが改質触媒に到達しにくくなり、改質反応がより抑制される。従って、燃料ガス供給時におけるアノード流路6内の温度差がより小さくなり、アノード流路6の流れ方向における熱応力が緩和される。また、温度差がより小さくなるため、燃料ガスの平均温度をより上昇させることができ、発電性能をさらに向上させることができる。
【0092】
固体酸化物形燃料電池100は、改質触媒がアノード電極に配置され、流路形成部材3は、改質反応促進部62及び改質反応抑制部61において、アノード電極に接合する部位(第1接合部32)及びセパレータ5に接合する部位(第2接合部33)に、流路形成部材3を貫通する開口部35,36が設けられる。そして、改質反応促進部62における開口部35B,36Bは、改質反応抑制部61における開口部35A,36Aよりも、開口幅が大きい。従って、改質反応が起こり易い部分の付近における流路形成部材3に開口幅の小さい開口部35A,36Aを設け、発電による発熱が生じ易い部分の付近における流路形成部材3に開口幅の大きい開口部35B,36Bを設けることで、改質反応の偏りを抑制することができる。即ち、改質集中による温度低下を抑制することができ、温度低下による発電性能の低下を抑制することができる。
【0093】
なお、本実施形態においては、改質触媒がアノード電極に配置されることが好ましいが、必ずしもこれに限られず、改質触媒が、アノード流路6のみに配置された構成であってもよい。このような構成であっても、少なくとも、流路断面積を変えることにより改質集中を緩和することができ、温度低下による発電性能の低下を抑制することができる。
【0094】
また、本実施形態の図13においては、流路形成部材3が上流側と下流側とで2つに分割さし、開口部の幅を2段階に変えているが、これに限られず、図14(流路形成部材3の上面図)に示すように、1つの部材で流路形成部材3を形成し、開口部の幅を2段階に変えてもよい。
【0095】
また、本実施形態の図13においては、流路形成部材3の開口部の幅を2段階に変えているが、これに限られず、3種類以上の開口幅に段階的に変えるものであってもよい。また、図15(流路形成部材3の上面図)に示すように、流路形成部材3の開口部35,36の開口幅を連続的に変えるものであってもよい。この場合、開口部35,36の開口幅が所定の長さ以下の部分が改質反応抑制部61、所定の長さより大きい部分が改質反応促進部62となる。
【0096】
また、本実施形態においては、改質反応抑制部61における開口部35A,36Aの開口幅を小さくし、改質反応促進部62における開口部35B,36Bの開口幅を大きくするものとしたが、必ずしもこれに限られない。即ち、改質反応促進部62における開口部35B,36Bの開口面積が、改質反応抑制部61における開口部35A,36Aの開口面積よりも大きい構成であれば、どのような構成であってもよい(例えば、後述する第4実施形態を参照)。
【0097】
(第4実施形態)
図16を参照して、第4実施形態の固体酸化物形燃料電池100を説明する。本実施形態においては、アノード流路6の上流側(入口付近)の開口部35Aが間隔を置いて複数設けられる点が第3実施形態と異なる。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0098】
図16は、第4実施形態の固体酸化物形燃料電池100によるアノード流路6の上面図であり、アノード流路形成部材3がアノード電極に接合する第1接合部32の上面からアノード流路6を見た図である。なお、図16において、燃料ガスは、図の右から左に向かって流れるものとし、燃料ガスとカソード流路を流れる空気とは、流れ方向が同一(即ち、コフロー)であるものとする。また、改質触媒は、アノード電極(金属支持体22)、またはアノード電極及びアノード流路6に均一に配置されているものとする。
【0099】
また、後述するように、第2、第3実施形態と同様に、本実施形態においても流路形成部材3がアノード電極に接合する第1接合部32に開口部35A,35Bを有しているため、流路形成部材3とセパレータ5とで囲まれた空間も燃料ガスが流れるアノード流路6となる。
【0100】
図16に示すように、流路形成部材3は、アノード流路6の上流側(入口付近)において、流路形成部材3を積層方向に貫通する開口部35Aが、燃料ガスの流れ方向に間隔を置いて複数設けられている。即ち、アノード流路6の上流側(入口付近)の流路形成部材3には、間隔を置いた複数の開口部35Aと、開口部35A間の梁部37とが形成されている。一方、開口部35Aと梁部37とが形成された部分よりも下流側(以下、下流側とする)の流路形成部材3には、流路形成部材3を積層方向に貫通する1つの開口部35Bが、アノード流路6に沿って形成されている。
【0101】
ここで、アノード流路6の上流側(入口付近)においては、開口部35Aが間隔を置いて複数設けられているため、開口部35Aの流路形成部材3における単位面積当たりの開口面積が、下流側の開口部35Bの開口面積よりも小さくなる。従って、開口部35Aが設けられているアノード流路6の上流側(入口付近)におけるアノード流路6の流路断面積(の平均値)は、下流側におけるアノード流路6の流路断面積(の平均値)よりも小さい。即ち、アノード流路6の上流側(入口付近)における燃料ガスの流速が、下流側の流速よりも大きくなる。これにより、アノード流路6の上流側(入口付近)の改質率は、下流側の改質率よりも低くなり、アノード流路6には、改質反応が抑制される上流側(入口付近)の改質反応抑制部61と、改質反応が促進される下流側の改質反応促進部62とが形成される。即ち、改質反応が起こり易い上流側(入口付近)における改質反応が抑制され、発電による発熱が生じ易い下流側において改質反応が促進されるため、改質反応の偏りと、発電による発熱の偏りを抑制することができる。よって、改質集中による温度低下を抑制することができ、発電性能の低下を抑制することができる。また、燃料ガス供給時におけるアノード流路6内の温度差が低減されるため、燃料ガスの平均温度を上昇させることができ、発電性能をより向上させることができる。
【0102】
また、アノード流路6の下流側においては、開口部35Bが上流側(入口付近)の開口部35Aよりも、開口面積が大きいため、燃料ガスとアノード電極に配置された改質触媒との接触面積が大きくなる。一方、アノード流路6の上流側(入口付近)では、開口部35Aが間隔を置いて設けられるため、燃料ガスとアノード電極に配置された改質触媒とが接触しない領域が生じる。従って、アノード流路6の下流側の改質反応促進部62において、改質反応がより促進され、上流側(入口付近)の改質反応抑制部61において、改質反応がより抑制される。従って、アノード流路6の上流側と下流側の温度差がより小さくなり、アノード流路6内の平均温度をより上昇させることができるため、発電性能がより向上する。
【0103】
また、アノード流路6の上流側(入口付近)の流路形成部材3が、開口部35A間の梁部37を有しているため、梁部37がアノード流路6の幅方向の導電通路となる。これにより、アノード流路6の上流側(入口付近)の改質反応抑制部61では、抵抗によるジュール熱により温度が上昇するため、上流側(入口付近)の温度低下がさらに抑制され、発電性能の低下がさらに抑制される。
【0104】
上記した第4実施形態の固体酸化物形燃料電池100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0105】
固体酸化物形燃料電池100は、改質触媒がアノード電極に配置され、改質反応抑制部61において流路形成部材3に設けられる開口部35Aは、アノード流路6における燃料ガスの流れ方向に間隔を置いて複数設けられる。これにより、改質反応抑制部61における開口部35Aの開口面積が小さくなる。従って、改質反応が起こり易い部分の付近における流路形成部材3に開口面積の小さい開口部35Aを設けることで、改質反応の偏りを抑制することができる。即ち、改質集中による温度低下を抑制することができ、温度低下による発電性能の低下を抑制することができる。
【0106】
また、改質反応抑制部61における開口部35Aが間隔を置いて設けられるため、改質反応抑制部61において、燃料ガスとアノード電極に配置された改質触媒とが接触しない領域が生じる。従って、改質反応抑制部61において、改質反応がより抑制される。従って、改質反応が起こり易い部分の付近に改質反応抑制部61を形成することで、アノード流路6内の温度差をより小さくすることができ、アノード流路6内の平均温度をより上昇させることができる。よって、発電性能がより向上する。
【0107】
また、改質反応抑制部61における開口部35Aが間隔を置いて設けられるため、改質反応抑制部61において、開口部35A間に、アノード流路6の幅方向の導電通路となる梁部37が形成される。これにより、改質反応抑制部61では、抵抗によるジュール熱により温度が上昇するため、改質反応抑制部61における温度低下がさらに抑制され、発電性能の低下がさらに抑制される。
【0108】
なお、本実施形態においても、改質触媒がアノード電極に配置されることが好ましいが、必ずしもこれに限られず、改質触媒が、アノード流路6のみに配置された構成であってもよい。このような構成であっても、少なくとも、流路断面積を変えることにより改質集中を緩和することができ、温度低下による発電性能の低下を抑制することができる。
【0109】
また、本実施形態においては、流路形成部材3がアノード電極に接合する第1接合部32に開口部35A,35Bを設ける構成としたが、流路形成部材3がセパレータ5に接合する第2接合部33にも同様の開口部を設けてもよい。さらに、第2接合部33のみに、同様の開口部を設ける構成であってもよい。この場合でも、少なくとも、流路断面積を変えることにより改質集中を緩和することができ、温度低下による発電性能の低下をある程度抑制することができる。
【0110】
また、本実施形態の図16においては、流路形成部材3が上流側と下流側とで2つに分割されているが、これに限られず、図17(アノード流路6の上面図)に示すように、1つの部材で流路形成部材3を形成し、改質反応抑制部61に開口部35Aを間隔を置いて設けてもよい。
【0111】
(第5実施形態)
図18を参照して、第5実施形態の固体酸化物形燃料電池100を説明する。本実施形態においては、アノード流路形成部材3が多孔質材料により構成される点が、他の実施形態と異なる。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0112】
図18は、燃料ガスの流れ方向に沿ったアノード流路6の断面模式図である。なお、図18において、燃料ガスは、図の右から左に向かって流れるものとし、燃料ガスとカソード流路を流れる空気とは、流れ方向が同一(即ち、コフロー)であるものとする。また、改質触媒は、アノード電極(金属支持体22)及びアノード流路6の内周面の少なくとも一方に、均一に配置されているものとする。
【0113】
図18に示すように、本実施形態においては、流路形成部材3は、多孔質材料により構成された多孔質体である。
【0114】
また、図18に示すように、流路形成部材3は、アノード流路6の上流側が、下流側よりも密に構成されている。即ち、流路形成部材3は、アノード流路6の上流側の空隙率が、下流側の空隙率よりも小さい。従って、アノード流路6は、下流側の流路断面積が、上流側の流路断面積よりも大きい。これにより、アノード流路6の上流側における燃料ガスの流速が、下流側の流速よりも大きくなり、アノード流路6の上流側の改質率は、下流側の改質率よりも低くなる。このように、アノード流路6には、改質反応が抑制される上流側の改質反応抑制部61と、改質反応が促進される下流側の改質反応促進部62とが形成される。従って、改質反応が起こり易い上流側における改質反応が抑制され、発電による発熱が生じ易い下流側において改質反応が促進されるため、改質反応の偏りと、発電による発熱の偏りが抑制される。よって、改質集中による温度低下を抑制することができ、発電性能の低下を抑制することができる。また、燃料ガス供給時におけるアノード流路6内の温度差が低減されるため、燃料ガスの平均温度を上昇させることができ、発電性能をより向上させることができる。
【0115】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0116】
上記した各実施形態は、それぞれ単独の実施形態として説明したが、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1、セルユニット,2、発電セル,3、アノード流路形成部材(流路形成部材),5、セパレータ,6、アノード流路,21、膜電極接合体,51、シムプレート,61、改質反応抑制部,62、改質反応促進部,100、固体酸化物形燃料電池
図1
図2
図3
図4
図5
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図18