(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172299
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】測量情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G01C 11/02 20060101AFI20231129BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20231129BHJP
G01C 15/06 20060101ALI20231129BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20231129BHJP
【FI】
G01C11/02
G01C15/00 103A
G01C15/06 T
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083998
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】396025447
【氏名又は名称】株式会社建設システム
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 義彦
(72)【発明者】
【氏名】相場 陽介
(72)【発明者】
【氏名】田中 克彦
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】建築現場の撮像画像における所定の基準点の位置座標を、より精度良く、かつ、より容易に取得することを可能とする、測量情報処理方法を提供する。
【解決手段】上記の測量情報処理方法は、一または複数の基準点の公共座標を示す計測情報を取得する取得工程と、取得工程において取得した各基準点の計測情報に対して各基準点の属性を示す情報である属性情報を紐付けする紐付け工程と、紐付け工程において紐付けされた計測情報と属性情報とを基準点情報として保存する保存工程と、を有し、基準点には、基準点の位置を含むマーカが設置され、計測情報は、マーカに基づいて取得され、マーカを撮像して、基準点のローカル座標を取得する第2取得工程と、基準点情報を参照して、基準点のローカル座標を公共座標に変換する変換工程と、をさらに有することを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事現場における一または複数の基準点の公共座標を示す計測情報を取得する取得工程と、
前記取得工程において取得した各基準点の前記計測情報に対して該各基準点の属性を示す情報である属性情報を紐付けする紐付け工程と、
前記紐付け工程において紐付けされた前記計測情報と前記属性情報とを基準点情報として保存する保存工程と、を有し、
前記基準点には、該基準点の位置を含むマーカが設置され、
前記計測情報は、前記マーカに基づいて取得され、
前記工事現場において前記マーカを撮像して、前記基準点のローカル座標を取得する第2取得工程と、
前記基準点情報を参照して、前記基準点のローカル座標を公共座標に変換する変換工程と、
をさらに有することを特徴とする、測量情報処理方法。
【請求項2】
前記マーカは、該マーカに係る前記基準点の位置および前記属性情報を読み取り可能なコードを有し、
前記第2取得工程においては、前記工事現場において前記マーカを撮像して、前記基準点のローカル座標および前記属性情報を取得することを特徴とする、請求項1に記載の測量情報処理方法。
【請求項3】
前記基準点の公共座標は、該基準点上に前記マーカを載置するとともに該基準点上に測量プリズムを配置し、該測量プリズムから離れた位置に設置されたトータルステーションによって前記測量プリズムの公共座標を計測することによって計測されることを特徴とする、請求項1に記載の測量情報処理方法。
【請求項4】
前記基準点の公共座標は、該基準点上に前記マーカを所定の支持部材によって支持して設置するとともに、該マーカから離れた位置に設置されたトータルステーションによって前記マーカの公共座標を直接計測することによって計測されることを特徴とする、請求項1に記載の測量情報処理方法。
【請求項5】
前記工事現場を撮像しつつ、撮像対象の外形上の点について距離を計測して前記撮像対象の外形上の点群の3次元座標を取得する点群計測工程と、
前記基準点の公共座標に基づいて、前記点群の3次元座標を公共座標に変換する点群変換工程と、をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の測量情報処理方法。
【請求項6】
前記点群計測工程においては、前記撮像対象を連続的に変更して撮像しつつ該撮像対象について点群を生成し、
前記マーカが撮像された場合に、前記点群計測工程を一旦休止して前記第2取得工程を実行し、
前記撮像されたマーカについての該第2取得工程が終了した場合に、前記点群計測工程を再開することを特徴とする、請求項5に記載の測量情報処理方法。
【請求項7】
前記点群変換工程は、前記撮像対象に対する点群計測工程が完了後に実行されることを特徴とする、請求項5に記載の測量情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量によって取得した測量情報を処理する測量情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報処理装置の撮像部によって工事現場を撮像するステップと、工事現場内に配置された指標の位置を示す計測情報を取得するステップと、撮像された画像内における指標の位置と取得された計測情報が示す指標の位置とを対応付けるステップと、建築物の3次元データを変換し、撮像部によって撮像された画像に変換した建築物の3次元データを重畳した画像を生成するステップとを含む情報処理方法が公知である。当該情報処理方法によって、計測器の処理負荷を抑えつつ撮像画像に対する3次元モデルのデータの重畳精度をより容易に高めることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、複数の指標が配された現実空間の画像を取得する取得工程と、取得工程で取得した画像中の指標を識別する識別工程と、識別工程で識別された全て若しくは一部の指標について、その現実空間中の位置姿勢を計算する計算工程とを備える画像処理方法も公知である。当該画像処理方法によって、自動的もしくは半自動的にキャリブレーションおよび位置合わせ処理に使用するマーカを選択することができる(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
例えば公共建築物を建築する目的で上記のような情報処理方法や画像処理方法を建築現場において活用する際には、上記のような情報処理方法や画像処理方法に含まれる建築現場を撮像する工程において取得した、建築現場の撮像画像における所定の基準点の位置座標を公共座標化することが必要な場合がある。困難である虞や、当該所定の基準点を特定するための属性情報を当該位置座標に付加することが煩雑となる虞がある。また、特定の位置座標を高精度に取得するために測量機器が余分に必須となる場合がある。なお、従来より、公共建設物の管理については、従前のアナログタイプの管理方法が踏襲されている場合が多く、取得された公共座標を長期管理することは困難であり、管理主体がブロックに分化されており、公共建設物の情報管理が統一的に行われていないという事情もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6733127号公報
【特許文献2】特開2008-064735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本件開示の技術は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、建築現場における所定の基準点の公共座標を、より精度良く、または、より容易に取得することを可能とする、測量情報処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本開示は、
工事現場における一または複数の基準点の公共座標を示す計測情報を取得する取得工程と、
前記取得工程において取得した各基準点の前記計測情報に対して該各基準点の属性を示す情報である属性情報を紐付けする紐付け工程と、
前記紐付け工程において紐付けされた前記計測情報と前記属性情報とを基準点情報とし
て保存する保存工程と、を有し、
前記基準点には、該基準点の位置を含むマーカが設置され、
前記計測情報は、前記マーカに基づいて取得され、
前記工事現場において前記マーカを撮像して、前記基準点のローカル座標を取得する第2取得工程と、
前記基準点情報を参照して、前記基準点のローカル座標を公共座標に変換する変換工程と、
をさらに有することを特徴とする、測量情報処理方法を含む。
【0008】
本発明においては、工事現場における一または複数の基準点に設置されたマーカに基づいて、基準点の公共座標を示す計測情報が取得される。そして、各基準点の計測情報に対して該各基準点の属性情報を紐付けた上で、基準点情報として保存しておく。さらに、工事現場の撮像を行う際には、該工事現場において前記のマーカを撮像して、基準点のローカル座標を取得し、前記基準点情報を参照して、基準点のローカル座標を公共座標に変換する。これによれば、より容易に、実質的に基準点の公共座標である計測情報と、基準点の属性を示す属性情報の両方を紐付けたデータベースとしての基準点情報を構築することが可能である。そして、工事現場を撮像する際には、基準点情報に基づいて、撮像時に得られるローカル座標を公共座標に容易に変換することが可能である。
【0009】
また、本開示においては、前記マーカは、該マーカに係る前記基準点の位置および前記属性情報を読み取り可能なコードを有し、前記第2取得工程においては、前記工事現場において前記マーカを撮像して、前記基準点のローカル座標および前記属性情報を取得することを特徴とする、測量情報処理方法としてもよい。これによれば、工事現場を撮像する際に、基準点に設置されたマーカを含めて現場を撮像するだけで、基準点のローカル座標系における座標を公共座標に変換することができる。
【0010】
また、本開示においては、前記基準点の公共座標は、該基準点上に前記マーカを載置するとともに該基準点上に測量プリズムを配置し、該測量プリズムから離れた位置に設置されたトータルステーションによって前記測量プリズムの公共座標を計測することによって計測されることを特徴とする、測量情報処理方法としてもよい。これによれば、精度良く、かつ、容易に基準点の公共座標を示す計測情報を取得することができる。
【0011】
また、本開示においては、前記基準点の公共座標は、該基準点上に前記マーカを所定の支持部材によって支持して設置するとともに、該マーカから離れた位置に設置されたトータルステーションによって前記マーカの公共座標を直接計測することによって計測されることを特徴とする、測量情報処理方法としてもよい。これによれば、現場の基準点に測量プリズムを設置することが困難である場合でも、基準点の公共座標を計測することができる。
【0012】
また、本開示においては、前記工事現場を撮像しつつ、撮像対象の外形上の点について距離を計測して前記撮像対象の外形上の点群の3次元座標を取得する点群計測工程と、前記基準点の公共座標に基づいて、前記点群の3次元座標を公共座標に変換する点群変換工程と、をさらに備えることを特徴とする、測量情報処理方法としてもよい。これによれば、工事現場を撮像して点群の3次元座標を取得する場合に、基準点のマーカを含めて撮像することで、点群の3次元座標を、より容易にローカル座標から公共座標に変換することが可能である。
【0013】
また、本開示においては、前記点群計測工程においては、前記撮像対象を連続的に変更して撮像しつつ該撮像対象について点群を生成し、前記マーカが撮像された場合に、前記点群計測工程を一旦休止して前記第2取得工程を実行し、前記撮像されたマーカについて
の該第2取得工程が終了した場合に、前記点群計測工程を再開することを特徴とする、測量情報処理方法としてもよい。これによれば、より精度良く、かつ、容易に計測情報を既知点の位置座標として保存することができる。
【0014】
また、本開示においては、前記点群変換工程は、前記撮像対象に対する点群計測工程が完了後に実行されることを特徴とする、測量情報処理方法としてもよい。これによれば、より効率良く、工事現場における点群の公共座標を取得することが可能である。
【0015】
なお、上記の課題を解決するための手段は、可能な限り互いに組み合わせて用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本件開示の技術によれば、建築現場における所定の基準点の公共座標を、より精度良く、かつ、より容易に取得することを可能とする、測量情報処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、例えば、測量のためにトータルステーションを用いた場合について、実施例1に係る測量情報処理方法に用いる測量情報処理装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2AおよびBは、それぞれ、計測にトータルステーションを用いる場合であって、さらに計測用プリズムを用いる場合と用いない場合における基準点の位置座標の計測方法の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施例1に係る複数の基準点の位置座標を計測した後にこれらの位置座標を各基準点の属性情報に紐付けする方法の一例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、
図3において説明した測量情報処理方法の手順を簡易的に示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施例1に係る二次元コードを含む空間を測量情報処理装置としてのスマートフォンで撮影した際に、スマートフォン上におけるローカル座標を、基準点パッケージ情報を用いて、公共座標変換する場合について説明するための図である。
【
図6】
図6は、
図5において説明した測量情報処理方法の手順を簡易的に示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施例2に係る複数の基準点の位置座標を計測した後にこれらの位置座標を基準点に紐付けする方法の一例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、点群計測において、基準点の計測情報を取得する方法の一例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、
図8において説明した測量情報処理方法の手順を簡易的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔実施例1〕
以下、本発明の実施例に係る測量情報処理方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本開示の実施例に係る測量情報処理方法は、以下の構成に限定する趣旨のものではない。
【0019】
<システム構成>
図1は、例えば、測量のためにトータルステーション2を用いた場合について、実施例1に係る測量情報処理方法に用いる測量情報処理装置1の機能構成の一例を示す図である。測量情報処理装置1は、例えばスマートフォンにアプリケーションをインストールすることで実現され、例えば公共建築物が建築される予定の建築現場(以下、単に「現場」と
もいう)等において、公共建築物を建築するにあたって把握することが必要不可欠な所定の基準点(詳細は以下の
図3において説明する)の公共座標を把握する目的で用いられる。ここで、公共座標とは、国の管理する座標体系上の原点を基準とした絶対的な座標である。測量情報処理装置1は、工事に携わる工事関係者等のユーザによって操作される。測量情報処理装置1を実現するためのアプリケーションがインストールされる機器はスマートフォンに限られず、タブレット端末やPCであってもよい。
【0020】
本実施例に係る測量情報処理装置1は、取得部11、紐付け部12、RAM(Random Access Memory)13、保存部14、トータルステーション2等の外部装置との通信によってデータの送受信を行う通信部15、ユーザの操作を受け付けるタッチパネル等の操作部16、および二次元コード51~54(詳細は以下の
図3において説明する)や簡易コード71、72(詳細は以下の
図7において説明する)等のコードから情報を読み込む読み取り部17等を備えて構成される。なお、二次元コード51~54は、一例としてQRコード(登録商標)を用いてもよい。
【0021】
取得部11および紐付け部12は、測量情報処理装置1に含まれるCPU(Central Processing Unit)の構成要素の一例であり、RAM13等に展開された命令およびデータを処理することで、RAM13や保存部14等を制御する。取得部11は、測量情報処理装置1が有するカメラ(図示略)から取得した現場の撮像画像(撮像画像の一例は
図3に示す通りである)における基準点の位置座標を示す計測情報を通信部15から取得する。なお、基準点の位置座標の計測方法については、以下の
図2AおよびBにおいて詳細に説明する。
【0022】
紐付け部12は、取得部11が取得した計測情報に対して基準点の属性を示す情報である属性情報を紐付けする。なお、属性情報については、以下の
図3において詳細に説明する。基準点に係る属性情報は、現場に設置された基準点の位置を示す二次元コード51~54を読み取り部17で読み取ることによって把握することができる。保存部14は、紐付け部12が紐付けした計測情報と属性情報を、基準点パッケージ情報として保存する。保存部14は、SDカードのように可搬式の記憶媒体を含んでいてもよい。また、保存部14に保存した情報は、クラウド上に設けられたデータベースに保存することもできる。
【0023】
本実施例で用いられるトータルステーション2は、CPU21、RAM22、ROM(Read-Only Memory)23、記憶部24、通信部25、操作部26、ディスプレイ27、計測部28、およびカメラ29等がバスラインで接続されて構成されている。本実施例では、地球上の位置や海面からの高さが正確に測定された電子基準点、三角点、水準点等から構成され、地図作成や各種測量の基準となる既知点の情報が予め記憶部24に記憶されている。また、現場に建築予定の公共建築物に関する3次元モデルのデータも予め記憶部24に記憶されていてもよい。計測情報から取得される公共座標を基準としてこの3次元モデルを仮想的に重ね合わせることによって、実際に現場に公共建築物を建築した場合の、合成画像を得ることが可能となる。また、現場の地盤の歪みや傾き等に起因する公共建築物の安定性を検証することができる。
【0024】
<測量情報処理方法の手順>
図2AおよびBは、それぞれ、上述通りの計測にトータルステーション2を用いる場合であって、さらに計測用プリズム3を用いる場合と用いない場合における基準点T1の位置座標の計測方法の一例を示す図である。計測用プリズム3は、光を反射させるためにガラス等の光学的平面を有するものが一般的であり、トータルステーション2から照射された照射光を、照射された方向に反射する機能を有する。
図2Aには、トータルステーション2と計測用プリズム3を用いた場合の基準点T1の位置座標の計測方法を示す。基準点T1の位置座標の計測にあたり、まずトータルステーション2を既知点(国の測量機関に
よって与えられた位置座標や標高が既知である点)に設置し、既知点から離れた位置にある基準点T1に計測用プリズム3を固定する。次にトータルステーション2の望遠鏡(図示略)の視準先の角度情報を特定するために角度の原点位置を決定する。具体的には、望遠鏡の視準先が真北を向いている状態または作業者が望遠鏡で基準点T1を視準した状態を角度の原点位置に設定すればよい。そして、トータルステーション2のディスプレイ27に表示される角度を0に設定する。これによって、既知点の位置に対する基準点T1の位置の方角を計測することができる。また、ディスプレイ27に表示される高度角も0に設定する。これによって、既知点の位置と基準点T1の位置の高低差を計測することができる。次にトータルステーション2の受発光部(図示略)から計測用プリズム3の光学的平面に照射光(例えばレーザー光等)を発射する。照射光は光学的平面から反射し、受発光部は反射光を受光する。この照射光を発射してから反射光を検出するまでの飛行時間(TOF:Time Of Flight)に基づき、既知点から基準点T1までの距離を計測することができる。以上の既知点の位置に対する基準点T1の位置の方角、既知点の位置と基準点T1の位置の高低差、および既知点から基準点T1までの距離を計測することによって、基準点T1の位置座標を計測することができる。なお、
図2Aに示す計測方法を、以下ではプリズム計測と記載する。
【0025】
図2Bには、計測用プリズム3を用いない場合の基準点T3の位置座標の計測方法を示す。基準点T3の位置座標の計測にあたり、まず、トータルステーション2を既知点に設置し、三脚50等の支持部材に固定した二次元コード53(詳細は以下の
図3において説明する)を基準点T3に設置する。次に、
図2Aに示す計測方法と同様の方法で、既知点の位置に対する基準点T3の位置の方角、既知点の位置と基準点T3の位置の高低差、および既知点から基準点T3までの距離を計測することによって、基準点T3の位置座標を計測する。
図2Bに示す計測方法では、プリズム計測に比較して反射光量が少なく測定精度が低下する場合があるが、例えば基準点T3の周辺の地盤の状態が劣悪である場合のように、基準点T3に計測用プリズム3を固定することが困難である場合に有用である。なお、
図2Bに示す計測方法を、以下ではノンプリズム計測と記載する。
【0026】
図3は、実施例1に係る複数の基準点T1~T4の位置座標を計測した後にこれらの位置座標を各基準点の属性情報に紐付けする方法の一例を説明するための図である。ここで、
図3(
図5、
図7および
図8(後述)も同様)には、現場に公共建築物として流水溝を建築する目的で、現場の地盤を掘って曲線状の窪みを形成し、その窪みの底部に一連のコンクリート構造物4を並べている最中の様子を模式的に示している(地盤を掘って形成した窪みは図示を省略している)。また、
図3においては、コンクリート構造物4の周辺に、公共座標を属性情報とともに記憶しておく基準点T1~T4が配置されている。
図3においては、基準点T1およびT2の位置座標はプリズム計測によって計測し、基準点T3およびT4の位置座標はノンプリズム計測によって計測したものとするが、基準点T1~T4は各々、プリズム計測とノンプリズム計測のいずれの計測方法によって計測してもよい。また、基準点の数は四に限られない。
【0027】
ここで、プリズム計測またはノンプリズム計測によって、基準点T1~T4の位置座標を計測することは可能であるが、これらの位置座標を示す計測情報を取得した後に、基準点T1~T4が管理上如何なる点であるかを的確に把握しておく必要がある。そこで、基準点T1~T4に適切な属性情報を付与し、計測情報と属性情報を紐づけ部12によって、紐付けた上で保存する。この時点では、トータルステーション2を用いて測定された計測情報に対して、属性情報を入力して追加し、保存部14に一旦保存してもよい。なお、
図3においては、基準点T1~T4の位置を示すマーカとして、二次元コード51~54の各々を基準点T1~T4の各々の位置に対応させて設置する。二次元コード51~54の各々には、基準点T1~T4の位置座標を特定するための指標と、基準点T1~T4の各々の属性情報が含まれている。ここで、属性情報とは、例えば二次元コード51であれ
ば、二次元コード51に対応する基準点T1に別途付与されるIDを含んでいてもよい。また、二次元コード51の3つの角部に設けられた矩形の指標、および中心の十字の印は、それぞれが基準点T1の位置を特定する。よって、二次元コード51~54の各々を読み取ることによって、基準点T1~T4の各々の位置と属性情報とを取得することができる。
【0028】
図3に示す例では、基準点T1およびT2の位置座標をプリズム計測によって計測するにあたり、二次元コード51および52については地面に直に設置し、それらの上にプリズム3を設置してもよい。その際、地面の上に台や三脚の支持部材を介して設置してもよく、地面や地面に設けられた杭、壁等に接着や釘打ちにより固定してもよい。また、基準点T3およびT4の位置座標をノンプリズム計測で計測するにあたり、二次元コード53および54については三脚50に固定されて設置されてもよい。なお、二次元コード53および54は、なるべくトータルステーション2に正対するように設置される。これにより、トータルステーション2への反射光量を増加させ、測定精度を向上させることが可能である。また、二次元コード51~54は、後にスマートフォン1によりこれらのローカル座標が取得される(後述)まで動かないように確実に設置される。
【0029】
図4は、
図3において説明した段階までの測量情報処理方法の手順を簡易的に示すフローチャートである。本フローが実行されると、まず、ステップS11において、基準点T1~T4の位置座標を計測する準備を行う。具体的には、まず、現場にトータルステーション2を設置する(ステップS111)。その際、トータルステーション2は公共座標が分かっている既知点に設置してもよい(この場合、後視点は1点)し、公共座標が分かっていない任意点(この場合、後視点は2点)に設置してもよい。また、この時点で、基準点T1~T4の属性情報が表示された二次元コード51~54が出力され、基準点T1~T4の各々の位置に対応して設置する(ステップS112)。
【0030】
次に、ステップS12において、プリズム計測またはノンプリズム計測によって、基準点T1~T4の位置座標を計測する。次に、ステップS13において、取得部11が基準点T1~T4の位置座標を示す計測情報を取得する。ここで、ステップS13は、本開示における取得工程に相当する。なお、この時に計測される基準点T1~T4の位置座標はトータルステーション2によって計測される座標であり、実質的に公共座標でもある。次に、ステップS14において、取得した計測情報に対して紐付け部12が基準点T1~T4に対して予め準備された属性情報を紐付けする。ここで、ステップS14は、本開示における紐付け工程に相当する。紐付け工程においては、本実施例では、取得工程で取得した基準点T1~T4の位置座標を、基準点番号(T1~T4)、属性情報と紐づけて基準点パッケージ情報(本開示における基準点情報に相当する)とする。
【0031】
最後に、ステップS15において、保存部14が紐付け部12によって作成された基準点パッケージ情報を保存する。ここで、ステップS15は、本開示における保存工程に相当する。S15においては、基準点パッケージ情報は、保存部14に一旦保存される。そして、その場合には、基準点パッケージ情報は適切なタイミングで保存部14から、クラウド上に設けられたデータベースにアップロードされる(ステップS151)。なお、ステップS15においては、S14で属性情報と紐づけられた位置情報が直接、クラウド上に設けられたデータベースに保存されてもよい。しかしながら、基準点パッケージ情報の保存先はクラウド上のデータベースに限られない。例えば、外部に別途設けられた大容量記憶装置に記憶しても構わない。
【0032】
図5は、実施例1に係る二次元コード51~54を含む空間を測量情報処理装置1としてのスマートフォン1で撮影した際に、スマートフォン1上におけるローカル座標を、上述の基準点パッケージ情報を用いて、公共座標変換する場合について説明するための図で
ある。
図5においては、まず、スマートフォン1に、クラウド上のデータベースから、基準点パッケージ情報をダウンロードする。そして、スマートフォン1を用いて、基準点T1~T4の画像を取り込みつつ現場の撮影を行う。そして、現場の撮影を行いつつ、基準点T1~T4の二次元コード51~54を読み取る。二次元コード51~54の読み取りは、スマートフォン1の読み取り部17によって実行される。例えば二次元コード51を読み取ると、スマートフォン1には、基準点T1のスマートフォン1におけるローカル座標系(撮影開始時の中心の座標を原点とする位置座標)における基準点T1の座標と、属性情報としてのその位置座標のIDが表示される。また、基準点パッケージ情報において当該IDと紐づけられた基準点T1の位置座標が、公共座標として表示される。このことは、基準点T1のローカル座標系における座標が公共座標に変換されることに相当する。そして、撮像画像における基準点T1~T4のIDと、公共座標が保存部14に保存される。
【0033】
なお、ローカル座標から公共座標への変換は、上述の例では、スマートフォン1による基準点T1~T4の撮影後に、スマートフォン1において実行された。しかしながら、スマートフォン1による撮像時には、必要なパラメータのみを保存部14、クラウド上のデータベースまたは、外部の記憶装置に保存しておくようにしてもよい。そして、撮像終了後に、当該クラウド上のサーバや外部のPCにおいて、保存されたパラメータを取得して、ローカル座標から公共座標への変換を実行してもよい。
【0034】
また、上述の通り、保存部14に保存した情報は、クラウド上のデータベースにアップロードすることもでき、さらにクラウド上のデータベースからスマートフォン1にダウンロードすることもできる。これによって、基準点T1~T4と二次元コード51~54を含めて現場を撮像するだけで、基準点T1~T1のローカル座標系における座標を公共座標に変換することができる。また、基準点T1~T1の公共座標とID番号を蓄積して将来的に再利用することが可能である。
【0035】
図6は、
図5において説明した段階における測量情報処理方法の手順を簡易的に示すフローチャートである。本フローが実行されると、まず、ステップS16において、保存された基準点T1~T4の公共座標を引用する。具体的には、クラウド上のデータベースから基準点パッケージ情報をダウンロードする(ステップS161)。次に、ステップS17において、スマートフォン1で現場の画像を撮像するとともに撮像された二次元コード51~54を各々スマートフォン1で読み取る。ここで、ステップS17は、本開示における第2取得工程に相当する。このとき、属性情報が紐付けされた基準点T1~T4の計測情報を取得することができる(ステップS171)。最後に、ステップS18において、クラウド上のデータベースからダウンロードした基準点パッケージ情報に基づき、スマートフォン1で撮影された基準点T1~T4のローカル座標系における座標を公共座標に変換する。ここで、ステップS18は、本開示における変換工程に相当する。上述の通り、例えばステップS17において、二次元コード51を読み取った場合は、ステップS18において、基準点T1の計測情報を公共座標に変換してスマートフォン1に表示する。なお、本フローにおいては、二次元コード51~54を各々スマートフォン1で撮影して属性情報を読み取った後にクラウド上のデータベースに蓄積された基準点パッケージ情報をダウンロードして引用してもよい。すなわち、ステップS17の後にステップS16を実施してもよい。
【0036】
なお、本実施例では、基準点パッケージ情報を取得するにあたり、基準点T1~T4の位置座標を、トータルステーション2を用いたプリズム計測またはノンプリズム計測によって計測する例を説明した。しかしながら、基準点T1~T4の位置情報は、他の方法によって計測してもよい。例えば、GNSS受信機によるGNSS(Global Navigation Satellite System)計測によって計測してもよい。ま
た、基準点T1~T4を、公共座標が既知である既知点の上に設け、既知点の位置情報から基準パッケージ情報を取得してもよい。また、本実施例では、基準点は、基準点T1~T4の四つとして説明したが、基準点の数は四つに限られないことは当然である。スマートフォン1自体のGNSS機能、空間認識機能を利用して基準点の必要数を減少させてもよい。
【0037】
〔実施例2〕
次に本発明の実施例2について説明する。実施例2は、トータルステーション等の測量器を使わず、基準点に設置されたマーカを、スマートフォン等で撮像することで、その位置情報を取得する例である。なお、本実施例において説明するものが、実施例1において説明したものと同一である場合には、同一の符号を付し、改めての説明は省略する。
【0038】
図7は、実施例2に係る複数の基準点T5、T6の位置座標を計測した後にこれらの位置座標を基準点T5、T6に紐付けする方法の一例を示す図である。本実施例においては、実施例1で説明した二次元コード51~54と比較して少ない情報量を有する簡易コード71、72を現場に設置した場合について模式的に示している。この簡易コード71、72は
図7に示すように、四分割した正方形の一の対角における分割領域を黒、他の対角における分割領域を白または黄色とすることで、正方形の中心点をスマートフォン等で認識可能としたものである。属性情報は簡易コード71、72には含まれていない。また、
図7に示す通り、簡易コード71については、コンクリート構造物4に直に設置し、簡易コード72については、固定用のピン等の支持部材に固定してコンクリート構造物4に設置している。
【0039】
基準点T5、T6の位置座標は、トータルステーションを用いたプリズム計測またはノンプリズム計測によって計測してもよく、また、上述したようなGNSS受信機を用いたGNSS計測によって計測してもよい。さらに、プリズム計測、ノンプリズム計測あるいはGNSS計測と比較して簡易的な方法で計測することもできる。本実施例では、スマートフォン1の空間認識機能を用いた簡易測量によって、基準点T5、T6のローカル座標または公共座標を算出する。これによって、スマートフォン1で簡易コード71、72を撮像することで、各簡易コードにおける正方形の中心点の位置情報を取得する。簡易コード71、72には、上述の通り、基準点T5、T6の属性情報が紐付けされていない。そこで、スマートフォン1によって読み取った計測情報を保存する際に、属性情報を入力やダウンロード、インポート等の別手法で紐付けしておく。これによって、例えば簡易コード71を用いて読み取った計測情報に属性情報を紐づけることが可能で、さらに、自動紐付けとは別手法で行うことから、属性情報を高い自由度で紐付けすることができる。ここで、属性情報には、
図3において説明したようなIDの他、工事名(例えばどの国道でどのような目的で行われる工事であるかを示す情報)、工事の発注者、工事の施工会社、およびコンクリート構造物4の製造社といった情報が含まれていてもよい。なお、簡易コード71、72の模様については、
図7に示す限りではなく、例えば矩形の中心に円が示された模様であってもよい。手動で紐付けした計測情報と属性情報は、クラウド上のデータベースにアップロードしてもよい。
【0040】
また、例えば現場で地盤を掘っている最中に過去の公共建築物が地中から発見されることがある。このような場合に、基準点T5、T6の計測情報と属性情報とを紐づけてクラウド上のデータベースに基準点パッケージ情報としてアップロードしておく。そうすれば、次回に再度、当該公共建築物が地中から発見された場合に、クラウド上のデータベースにアップロードされた過去の基準点パッケージ情報に基づき、その公共建築物が何であるか容易に識別することも可能である。
【0041】
〔実施例3〕
次に本発明の実施例3について説明する。実施例3は、スマートフォンによる出来形の点群計測において、基準点に設置されたマーカを用いて位置情報を取得する例である。なお、本実施例において説明するものが、実施例1において説明したものと同一である場合には、同一の符号を付し、改めての説明は省略する。
【0042】
図8は、点群計測において、基準点T1~T4の計測情報を取得する方法の一例を説明するための図である。点群計測を利用する場合は、スマートフォン1が、例えばLiDAR(Light Detection And Ranging)機能を利用して、スマートフォン1によって撮影された箇所の3次元の点群データを取得する機能を備えているものとする。点群計測を利用して基準点T1~T4の計測情報を取得するにあたっては、まず、コンクリート構造物4や二次元コード51~54を含めて、現場を多様な角度から撮像する。なお、
図8において点線で囲って示したスマートフォン1については、現場を多様な角度から撮像する際の態様を示している。これによって、スマートフォン1において、撮像画像における現場に、現場を3次元の点群データで示した仮想空間(図示略)を重ね合わせて表示することができる。
【0043】
3次元の点群データを用いることによって、現場における広い範囲の位置座標を一度に計測することや、CADモデルを作成して2次元の図面を作成することや、3Dシミュレーションを実行することが可能となる。
【0044】
また、本実施例では、点群計測と併せて、
図5において説明したように、二次元コード51~54をスマートフォン1で読み取る。これによって、上記の仮想空間内における基準点T1~T4の計測情報及び属性情報を取得し、これらの計測情報に基づいて、点群計測によって得られた点群の座標を公共座標に変換することが可能である。
【0045】
図9は、
図8において説明した測量情報処理方法の手順を簡易的に示すフローチャートである。本フローにおいては、まず、ステップS21において、保存された基準点T1~T4の基準点パッケージ情報を引用する。具体的には、クラウド上のデータベースから基準点パッケージ情報をダウンロードする(ステップS211)。次に、ステップS22において、点群計測を実行する。点群計測とは、
図8において説明した通り、現場を多様な角度から撮像し(ステップS221)、スマートフォン1において、撮像画像における現場に、現場を3次元の点群データで示した仮想空間を重ね合わせて表示する(ステップS222)一連の処理をいう。また、その際に、二次元コード51~54をスマートフォン1で読み取る(ステップS223)一連のフローをいう。より詳細には、点群計測にて現場の3次元の点群データを作成し、仮想空間を重ね合わせて表示している最中に、基準点T1~T4が撮像範囲に入った場合には、3次元の点群データの表示を一旦休止し、撮像範囲に入った基準点の二次元コードの読み取りを行う。そして、二次元コードの読み取りが終わると、3次元の点群データの作成及び表示を再開する。この動作を、必要な現場画像が撮像され、全ての基準点T1~T4における二次元コード51~54が読み取られるまで繰り返す。ここで、ステップS22は、本開示における点群計測工程に相当する。
【0046】
次に、ステップS23において、基準点T1~T4の公共座標に基づき、3次元の点群データの位置座標を公共座標に変換する。この3次元の点群データから公共座標への変換は、上述のステップS22において、全ての点群データの作成が完了し、全ての基準点T1~T4における二次元コード51~54が読み取られた後に実行されるようにしてもよい。これによって、全ての点群データの公共座標をまとめて取得できるため、効率が良い。ここで、ステップS23は、本開示における点群変換工程に相当する。最後に、ステップS24において、保存部14に点群データ及び基準点T1~T4の公共座標を保存する。また、
図4に示すステップS241と同様に、保存部14に保存された点群データ及び基準点T1~T4の公共座標はクラウド上のデータベースにアップロードされる(ステッ
プS241)。なお、最終的な保存先はクラウド上のデータベースに限らない。
【0047】
また、実施例2の
図7に示す簡易コード71、72を用いた測量情報処理方法は、実施例1の
図3と
図5に示す二次元コード51~54を用いた測量情報処理方法や、実施例3の
図8に示す点群計測を利用した測量情報処理方法と組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 :測量情報処理装置(スマートフォン)
11 :取得部
12 :紐付け部
13 :RAM
14 :保存部
15 :通信部
16 :操作部
17 :読み取り部
2 :トータルステーション
21 :CPU
22 :RAM
23 :ROM
24 :記憶部
25 :通信部
26 :操作部
27 :ディスプレイ
28 :計測部
29 :カメラ
3 :計測用プリズム
4 :コンクリート構造物
51~54 :二次元コード
6 :三脚
71、72 :簡易コード